説明

有機性廃水の処理装置及び方法

【課題】嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を対象とした、高性能な上向流嫌気性汚泥床処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】有機性廃水の嫌気性処理装置において、槽内にグラニュール汚泥と嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができる固形物が存在している嫌気反応槽を具備することを特徴とする有機性廃水の処理装置、及び方法。前記固形物は、グラニュール汚泥より分離できるものであることが好ましく、具体的には粉状又は粒状の活性炭である。嫌気性反応槽は、上向流嫌気性汚泥処理装置であり、装置の本体側壁に、側壁との角度が35度以下、かつ各占有面積が該装置の横断面積の2分の1以上の邪魔板を多段に有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工場、下水、し尿、畜産業施設等より排出される有機性の廃水又は有機性の廃棄物等を対象とし、これを無害化する嫌気性汚泥床処理装置及び方法に関し、更に詳しくは嫌気性処理に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水の処理に際して該物質の影響を少なくした有機性廃水の上向流嫌気性汚泥床処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性の廃水あるいは有機性の廃棄物等は、嫌気性処理によって分解処理されることがある。こうした分解処理方法として、例えば上向流嫌気性汚泥床法(以後、UASBとも記す)や、グラニュール汚泥膨張床(以後、EGSBとも記す)がある。これは近年普及してきた方法で、メタン菌等の嫌気性菌をグラニュール状に造粒化することにより、リアクター内のメタン菌の濃度を高濃度に維持できるという特徴があり、その結果、廃水中の有機物の濃度が相当高い場合でも効率よく処理できる。例えば、この方法を具体化した装置では、重クロム酸カリウムを酸化剤として測定したCODcr(以後CODと記す)の容積負荷が20〜30kg/m/dの廃水、廃棄物でも効率よく運転できるという特徴がある。
【0003】
嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質としては、高級脂肪酸、クロロフェノールやニトロフェノールなどの芳香族化合物、紙パルプ廃水に含まれるテルペン類や樹脂酸などが知られている。ここで阻害とは、嫌気性菌の活性度を低下させる、あるいは嫌気性菌を死滅させることを意味する。嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を嫌気性処理する手法としては、以下の手法が挙げられる。
(a)予め阻害物質を除去した後、嫌気性処理を行う。
(b)系外から供給する希釈水等により希釈を行い、阻害の影響の無い濃度に下げた後、嫌気性処理を行う。
(c)嫌気性菌を阻害物質に馴養させた後、低負荷で嫌気性処理を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を嫌気性処理する方法には、以下に示すような課題がある。
(イ)予め阻害物質を除去した後、嫌気性処理を行う場合には前処理設備が必要となる。
(ロ)系外から供給する希釈水等により希釈を行い、阻害の影響の無い濃度に下げた後、嫌気性処理を行う場合、希釈倍率が高い時には、大量の希釈水により嫌気性処理装置などの設備が過大となる。
(ハ)嫌気性菌を阻害物質に馴養させた後、低負荷で嫌気性処理を行う場合には嫌気性処理装置の設備が過大となる。
【0005】
このような欠点を解消すべく、本発明は、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を対象とした、高性能な上向流嫌気性汚泥床処理装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に記載する手段によって前記課題を解決した。
(1)有機性廃水の嫌気性処理装置において、槽内にグラニュール汚泥と嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができる固形物が存在している嫌気反応槽を具備することを特徴とする有機性廃水の処理装置。
(2)前記固形物は、グラニュール汚泥より分離できるものであることを特徴とする前記(1)記載の有機性廃水の処理装置。
(3)前記固形物は、粉状又は粒状の活性炭であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の有機性廃水の処理装置。
【0007】
(4)前記嫌気性反応槽は、上向流嫌気性汚泥処理装置であり、該装置の本体側壁に、該側壁との角度が35度以下、かつ各占有面積が該装置の横断面積の2分の1以上の邪魔板を多段に有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
(5)前記嫌気性反応槽の前段に酸発酵槽を設けたことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
(6)前記嫌気性反応槽により処理された処理水を前記酸発酵槽及び/又は前記嫌気性反応槽の流入部又は原液送液管に循環させる配管を設けたことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
【0008】
(7)有機性廃水の嫌気性処理方法において、槽内にグラニュール汚泥と嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができる固形物が存在している嫌気反応槽に有機性廃水を導入し嫌気性処理することを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【0009】
本発明の骨子は、「嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができ、かつ、嫌気性汚泥よりも沈降速度の小さい固形物を添加し、原水を処理水の循環液や系外から供給する希釈水により必要に応じて適宜希釈を行う」ことにより、一貫して、流入水のリアクター内部における装置断面積基準の通水速度が1〜5m/hとなるように調節することができるようにして、添加した固形物はリアクター内にとどまることなく処理水とともに系外に流出し、さらにその際の嫌気性処理装置として、「ガス・液・固分離部を多段に有する上向流嫌気性汚泥床処理装置」を用いることで、リアクター内のガス・液・固分離性能が高まるため、リアクター内にグラニュール汚泥を高濃度に保持することが可能となり、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を対象とした、高性能な上向流嫌気性汚泥床処理が達成できるようにしたことにある。
【0010】
本発明において、固形物は、その目的からして、原水中に含まれる嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着し、かつ、グラニュール汚泥より分離できるものでなければならない。その点からもグラニュール汚泥より沈降速度が小さいものがよく、好ましくは流入水のリアクター2内部の通水速度1〜5m/hよりも沈降速度の小さいものである。これらの点を考慮すると、使用する固形物としては、具体的には、活性炭や好気性処理工程で発生する微生物である活性汚泥などが適用できる。活性炭の場合、その大きさとしては、粉状、粒状などで、粒径が1mm以下、好ましくは0.2mm以下の範囲のものが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水の処理において、「嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させる固形物を添加し、」、かつ「添加した固形物はリアクター内にとどまることなく処理水とともに系外に流出する」ことにより、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質による悪影響を無くしてし、有機性廃水を高効率で処理をすることができる。
さらに、高いCOD負荷で処理をすることができる。また、その際の嫌気性処理装置として、特定の構造を有する「ガス・液・固分離部を多段に有する上向流嫌気性汚泥床処理装置」を用いることで、リアクター内のガス・液・固分離性能が高まるため、リアクタ一内にグラニュール汚泥を高濃度に保持することが可能となり、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を含む有機性廃水を対象とした、高性能な上向流嫌気性汚泥床処理が可能で、高いCOD除去能力を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、嫌気性処理方法を実施するのに好ましい本発明の上向流嫌気性処理装置の一形態の概要を例示した図である。
【0013】
原水送液管1が連通し、上下を閉塞した筒状のリアクター(嫌気反応槽)2内部の左右両側壁には、それぞれに一方の端部を固定し、他方の端部を反対側の側壁方向に向かって下降しながら延ばしている邪魔板3が設置されている。邪魔板3は、上下方向に2箇所左右交互に設けてあって、リアクター側壁との間にそれぞれ鋭角の区分スラッジゾーン4a〜4bを形成している。リアクター2側壁と邪魔板3のなす角度θは35度以下の鋭角であり、占有面積は装置断面積の1/2以上である。35度を越える角度の場合には、スラッジゾーン4a,4bの邪魔板3にグラニュール汚泥が堆積し、流動性が不十分となり、デッドスペースが形成される。また、邪魔板3の占有面積が1/2以下であると、発生ガスの捕捉が不十分となり、気・液・固の分離に不具合を生じる。すなわち、リアクター2の中心よりガスが上方へ抜けてしまい、後記のGSS部5にガスを十分に集積することができなくなる。
【0014】
区分スラッジゾーン4a、4b上部はGSS部5を形成している。反応が開始すると発生ガスが集まる気相部5aには、外部と通じる発生ガス回収配管6の排出口を設けてある。
なお、気相部5aから接続されている発生ガス回収配管6の吐出口は、水を充填した水封槽7の水中内で開口している。開口位置は水圧が異なる適宜な水深位にあり、水封槽7には発生ガス回収配管6から吐き出されたガス流量を測定するガスメータ8を設けてある。ガスメータ8の先には、ガスホルダー11が設けられている。また、リアクター2上端には上澄み液を排出する処理水配管9が開口している。
【0015】
リアクター2は、嫌気性菌からなるグラニュール汚泥を投入して使用する。本発明の対象となる嫌気性処理は、30℃〜35℃を至適温度とした中温メタン発酵処理、50℃〜55℃を至適温度とした高温メタン発酵処理など、全ての温度範囲の嫌気性処理を対象としている。リアクター2に嫌気性菌からなるグラニュール汚泥を投入し、有機性廃棄物などを含んだ原水を送液管1からリアクター2へ導入する。原水を処理水の循環液や系外から供給する希釈水等により必要に応じて適宜希釈を行い、流入水のリアクター2内部での通水速度が1〜5m/hとなるように調節する。
【0016】
固形物を原水に予めリアクター2への流入部に固形物流入配管15より加え、原水は、原水中の嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質が固形物に吸着あるいは付着した状態で、リアクター2内を通り抜ける。そのため、原水は嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質の影響を受けずに、嫌気性処理をすることが可能となる。固形物は、原水中に含まれる嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着し、かつ、グラニュール汚泥よりも沈降速度が小さく、好ましくは流入水のリアクター2内部の通水速度1〜5m/hよりも沈降速度の小さいものとする。具体的には、活性炭や好気性処理工程で発生する微生物である活性汚泥などが適用できる。原水の性状によっては、リアクターに流入する前に酸発酵槽で酸発酵処理を行う。酸発酵処理は4時間〜4日程度が妥当である。この場合には、固形物を酸発酵槽に供給することで、原水中に含まれる嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質の吸着あるいは付着の効果が大きくなる。
【0017】
リアクター2内では、嫌気性菌からなるグラニュール汚泥の介在によって有機性廃棄物が分解し、分解ガスが発生する。発生したガスは、各区分スラッジゾーン4a〜4b上端のGSS部5に別れて集まり、それぞれに気相部5aを形成し、発生ガス回収配管6を通じて水封槽7に至る。こうした発生ガスは、ガスメータ8でその排出量が記録され、ガスホルダー11に送られる。発生ガスの一部は、区分スラッジゾーン4a〜4b内でグラニュール汚泥に付着し、その見かけ比重を軽減させるとともに、グラニュール汚泥を同伴してGSS部5の水面に達する。こうした発生ガスは、気泡を形成して水面気泡部5bに一時的に滞留する。水面気泡部5bに集合した気泡はやがて破裂し、発生ガスとグラニュール汚泥とが分離され、グラニュール汚泥はもとの比重を回復して水中に潜り、発生ガスは発生ガス回収配管6から水封槽7を経由して、系外に排出される。有機物が分解して清澄になって水はリアクター上端から、処理水配管9を経由して系外に排出される。
【0018】
各GSS部5の気相部5aのガス圧は異なるので、その差圧は水封槽7で調整するとよい。原水送液側に近い順に水封圧は高く保つ必要がある。ガス回収の圧調整は水封槽7を使う方法以外にも多くの方法がある。例えば圧力弁等を使用してもよい。本発明の嫌気性処理方法では、各区分スラッジゾーン毎にそこで発生する発生ガスを回収できるため、リアクター単位断面積当たりの発生ガス量が少なくなる。特に処理水を流出させる処理水配管9に最も近い所では、リアクターの単位断面積当たりのガス量が小さくなる。そのため、グラニュール汚泥の系外流出量は非常に少なくすることができる。
【0019】
GSS部を多段に設置したリアクターでは通水速度を1〜5m/hとすることにより、グラニュール汚泥層の流動状態が良好となり、また、リアクター内の90%以上のグラニュール汚泥は粒径が0.5〜1.5mm、沈降速度が5〜40m/hとなる。そのため、固形物の沈降速度が5〜40m/h以下、好ましくはリアクター内の通水速度よりも小さい1〜5m/h以下であれば、固形物はリアクター内に堆積することなく処理水とともに流出する。一方、固形物よりも沈降速度の大きいグラニュール汚泥はリアクター内にとどまる。
【0020】
発泡性の原水の場合には、GSS部5内の気相部5a及び発生ガス回収配管6が閉塞し、発生ガスの回収が困難となる。このような場合、リアクター2流入水に予め消泡剤10を加えることで、GSS部5内での発泡を抑えることができる。GSS部5内に消泡剤を滴下、噴霧する方法に比べ、本手法は密閉空間での消泡に効果的である。消泡剤10は原水性状に応じた消泡効果を有し、発酵液の消泡に適した、中温(30〜35℃)あるいは高温(50〜55℃)において消泡効果をなくすことのない消泡剤を使用する。消泡剤の種類としてはシリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤の何れも適用が可能である。
【0021】
原水が高SS等の理由により、スカムを形成しやすい場合には、GSS部5内の気泡部5b表面及び内部にスカムを形成し、発生ガスの回収が困難となる。このような場合には、発生ガス吹き込み配管13を発生ガス回収配管6あるいは散気管12に接続し、ガスホルダー11内の発生ガスをGSS部5内に供給することで、スカムの破壊あるいはスカムの形成防止が可能となる。
【0022】
発生ガス吹き込み配管13を発生ガス回収配管6に接続し、GSS部5−1内に発生ガスを吹き込むことにより、GSS部5−1内のスカムを破壊・除去する場合は、吹き込バルブ14aを閉じ、発生ガス吹き込み配管13から発生ガスを発生ガス回収配管6に送り、GSS部5−1内に発生ガスを入れてGSS部5−1内全体を気相部5−1−aとすることにより、GSS部5−1からスカムを排出する。この排出されたスカムは上昇してその上にあるGSS部5−2内に入って、そこにとどまるため、次いでバルブ14bを閉じて、発生ガスをGSS部5−2内に入れることによりGSS部5−2内全体を気相部5−2−aとし、GSS部5−2からスカムを排出し、これを処理水とともに流出させる。
【0023】
また、発生ガス吹き込み配管13を散気管12に接続する場合は、散気管12から吹き込まれる気泡によりスカムが破壊され、破壊されたスカムはリアクター2内の液の流れとともに処理水として排出される。本手法の場合にはバルブ14(14a、14bのいずれかをいうため、単に「14」という。以下同様)の開閉は問わない。バルブ14を開けて操作する場合は、散気管12から吹き込まれた気体は発生ガス回収配管6より回収される。バルブ14を閉じて操作する場合は、散気管12から吹き込まれる気泡によるスカムの破壊効果に加え、前記発生ガス吹き込み配管13を発生ガス回収配管6に接続した場合のスカム排出効果も期待できる。なお、GSS部5内部のスカムを破壊・除去するために、GSS部5内に吹き込む気体は窒素ガス等の酸素を含まない、メタン発酵等の生物処理に影響を与えない気体を適用できるが、嫌気性処理によって発生したガスを使用することが望ましい。GSS部5内にガスを吹き込む頻度は廃水の性状にもよるが、1日に1回から1週間に1回とすることでGSS部5内部のスカムの破壊・除去の効果がある。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0025】
実施例及び比較例
図1に実験に用いた上向流式嫌気性汚泥床装置の概要を示す。
A〜C系列の装置は同一構造であり、傾斜する邪魔板を2ヶ取り付け、装置側壁と邪魔板との角度を30度とし、原水に消泡剤を添加し、散気管から発生ガスを吹き込むスカムの破壊・除去機能を付加した。発生ガスの散気管からの吹き込みは1日当たり1回とした。
【0026】
液層部の容量は1mである。リアクター内の水温は35℃になるように温度制御されている。原水には、糖質系廃水(COD:約20000mg/リットル、SS約500mg/リットル)に無機栄養塩類(窒素、リンなど)を添加し、嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質としてテルペン類を1000mg/リットル添加したものを用いた。テルペン類の阻害濃度を第1表に示す(R.Sierra−Alvarez and G.Lettinga, Biological Wastes,33(3),211−226(1990))。A系列では原水を酸発酵処理した後、リアクターに供給した。B系列では原水を酸発酵処理した後、テルペン類の阻害の影響が無いように系外から希釈水により酸発酵処理水を20倍希釈し、これをリアクターに供給した。C系列では原水に活性汚泥処理設備の余剰汚泥(MLSS約20000mg/リットル)を加え、SS 5000mg/リットルに調整し、酸発酵処理した後、リアクターに供給した。C系列では流出液を酸発酵処理水とともにリアクターに流入させ、通水速度を2m/hに設定した。C系列は本発明に基づく系列である。
【0027】
図2〜5に実験経過を、第2表に処理成績結果を示す。A〜Cの各系列では、処理の馴らしの関係で、COD負荷を図2に示すように段々大きくなるように設定する。
A系列ではCOD負荷を1kg/m/dで実験を開始したが、テルペン類の阻害により、CODはほとんど除去されなかった。このため、実験は30日で停止した。(図3参照)
【0028】
B系列では、80日目までは、COD負荷15kg/m/d、酸発酵処理水の溶解性CODが18000mg/リットル、処理水の溶解性CODが400mg/リットル、溶解性COD除去率53%の処理であった。80日後以降にCOD負荷を20kg/m/dとしたところ、リアクター内の通水速度が高くなり、グラニュール汚泥が大量に流出し、処理水の溶解性COD860mg/リットルとなり、希釈水により濃度は低くなっているが、CODは除去されなかった。実験は100日行った。(図4参照)
C系列では120日後以降にCOD負荷30kg/m/dで酸発酵処理水の溶解性COD13500mg/リットル、処理水の溶解性CODが2000mg/リットル以下、溶解性COD除去率85%の処理が可能であった。(図5参照)
本発明法であるC系列ではCOD負荷30kg/m/dの高負荷時においても、従来法のA、B系列に比べ、高いCOD除去性能を示した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の有機性廃水の処理装置の構成の一形態を例示した模式図である。
【図2】実験に用いたA〜C系列のCOD負荷と経過日数の関係を示す図である。
【図3】従来(A系列)の溶解性CODと経過日数の関係を示す図である。
【図4】従来(B系列)の溶解性CODと経過日数の関係を示す図である。
【図5】本発明(C系列)の溶解性CODと経過日数の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 原液送液管
2 リアクター
3 邪魔板
4a 区分スラッジゾーン
4b 区分スラッジゾーン
5−1a 気相部
5−2a 気相部
5−1b 液相部
5−2b 液相部
6 発生ガス回収配管
7 水封槽
8 ガスメータ
9 処理水配管
10 消泡剤注入配管
11 ガスホルダー
12 散気管
13 発生ガス吸込配管
14a バルブ
14b バルブ
15 固形物流入配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水の嫌気性処理装置において、槽内にグラニュール汚泥と嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができる固形物が存在している嫌気反応槽を具備することを特徴とする有機性廃水の処理装置。
【請求項2】
前記固形物は、グラニュール汚泥より分離できるものであることを特徴とする請求項1記載の有機性廃水の処理装置。
【請求項3】
前記固形物は、粉状又は粒状の活性炭であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の有機性廃水の処理装置。
【請求項4】
前記嫌気性反応槽は、上向流嫌気性汚泥処理装置であり、該装置の本体側壁に、該側壁との角度が35度以下、かつ各占有面積が該装置の横断面積の2分の1以上の邪魔板を多段に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
【請求項5】
前記嫌気性反応槽の前段に酸発酵槽を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
【請求項6】
前記嫌気性反応槽により処理された処理水を前記酸発酵槽及び/又は前記嫌気性反応槽の流入部又は原液送液管に循環させる配管を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理装置。
【請求項7】
有機性廃水の嫌気性処理方法において、槽内にグラニュール汚泥と嫌気性処理工程に阻害を及ぼす物質を吸着あるいは付着させることができる固形物が存在している嫌気反応槽に有機性廃水を導入し嫌気性処理することを特徴とする有機性廃水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−281215(P2006−281215A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201994(P2006−201994)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【分割の表示】特願2002−140070(P2002−140070)の分割
【原出願日】平成14年5月15日(2002.5.15)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】