有機機能性薄膜熱処理装置および有機機能性素子の製造方法
【課題】有機機能性薄膜をアニール処理した際に、結晶化や熱劣化の危険を避け、高品質・高性能な有機機能性素子を製造可能とすることを課題とする。
【解決手段】チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置及び、基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度或いは沸点以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程とを有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
【解決手段】チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置及び、基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度或いは沸点以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程とを有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された有機機能性薄膜及び有機機能性薄膜を用いた素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部材の薄層軽量化やフレキシブル化を目標とした、有機機能性材料を用いた有機EL素子、有機太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの有機機能性素子の開発が盛んに行われている。これらの有機機能性素子に用いられる有機機能性材料は、一般に数十から数千nm程度の膜厚を有する有機機能性薄膜として基板上に形成され、用いられる。
【0003】
これらの有機機能性薄膜に用いられる有機機能性材料としては、低分子系の物と高分子系の物が挙げられる。
【0004】
低分子系の有機機能性薄膜は抵抗加熱蒸着法等にて成膜する事が多い。これは、低分子系の材料はアモルファス性が低く凝集もし易いため、塗布法では均一なアモルファス性の有機機能薄膜を形成しにくいためである。
【0005】
一方、高分子系の有機機能性材料はアモルファス性が高いため、有機機能性材料を溶媒に溶解若しくは分散させた塗工液(インキ)にし、これをウェットプロセスにて薄膜形成する方法が広く用いられている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法等がある。特に高精細にパターニングするには、塗り分け、パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
いずれの有機機能性薄膜の場合も、膜の集合状態としては、アモルファス状態である事が好ましいとされている。何故ならば薄膜を形成する材料が多結晶体であると、その薄膜には多くの結晶粒界や欠陥が生じてしまい、その結果素子にもリークなどの欠陥が生じやすくなり、不安定なものと成ってしまうためである(非特許文献2参照)。
【0007】
ところで、これらの有機機能性薄膜は、膜質の改善や下地との密着性の向上を目的とした加熱処理(アニール処理)を施されることが多い。これは、例えば有機EL素子をフレキシブル化する際には、基板の変形に耐えうる各層の密着性、そして画素内での均質な発光特性が要求されるためである。アニール処理を施すことにより、層の界面での密着性、アモルファス性の向上による膜質の改善が期待できる。
【0008】
有機機能性薄膜においては、一般に酸素や水と反応しやすいため、そのアニール処理は窒素やアルゴンに置換された雰囲気や真空下などの、不活性な雰囲気で行われる。そのためアニール処理はグローブボックス内や減圧及び気体置換可能な気密なチャンバー内で行われるが、生産性の面で有利なため気密なチャンバー内で行う事が多い。チャンバー内で用いられる加熱機構にはホットプレートが広く用いられる。そのため、アニール温度及び時間は制御されているが、昇温及び冷却のプロファイルについては特に制御しないものが多い。
【0009】
有機機能性薄膜は、ガラス転移温度(Tg)前後でアニール処理を行うことが多い(特許文献2参照)。特に、低分子系材料の有機機能性薄膜をTg以上に加熱すると結晶化が起き易く、有機機能性素子としての性能の低下が指摘されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしながら、画素内の膜厚の均質化、基板、有機機能層薄膜各層界面との密着性を鑑みると、加熱温度が高い方が好ましいと考えられる。このため、ガラス転移温度が高い有機機能性材料が求められてきたが、未だに十分な解決は為されていない(例えば特許文献4参照)。一方、アニール処理の面では、これまで処理方法としての大きな改善は為されてこなかった。
【0011】
【特許文献1】特開2003−17261号公報
【特許文献2】特開平11−40352号公報
【特許文献3】特開2005−310639号公報
【特許文献4】特開平9−205237号公報
【非特許文献1】情報科学用有機材料第142委員会C部会(有機光エレクトロニクス)第5回研究会資料 印刷プロセスによる有機薄膜太陽電池(20〜27ページ)
【非特許文献2】有機ELディスプレイ、時任静士他、株式会社オーム社、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、有機機能性薄膜をアニール処理した際に、結晶化や熱劣化の危険を避け、高品質・高性能な有機機能性素子を製造可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
まず有機機能性薄膜熱処理装置に係る発明として、
(1) チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置。
(2) (1)の有機機能性薄膜熱処理装置において、加熱手段が、赤外線ヒーターであり、かつ基板設置部の基板設置側表面が、該赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対する反射率が80%以上である物質で構成されていること。
(3) さらに、前記赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つこと。
(4) また、基板冷却手段が、前記基板設置部の前記チャンバー外部露出面への冷媒の噴霧であること。
【0014】
また有機機能性薄膜及び有機機能性素子の形成方法に係る発明として、
(5) 基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度或いは沸点以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程とを有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
(6) 基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層のうち最もガラス転移温度或いは融点が高い有機機能層のガラス転移温度以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、を有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
(7) 有機機能層を含む有機機能性素子の製造工程において、そのうち少なくとも一層の有機機能層を、請求項5乃至8に記載の有機機能性薄膜の形成方法を用いることを特徴とする、有機機能性素子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
(1)の発明により、密閉された不活性ガス雰囲気内で加熱処理を行うため有機機能性材料の酸素や水との反応による劣化を防ぐ事が出来、また、加熱手段と、冷却手段が別々の位置に設置され、冷却手段が直接基板設置部に接続されていることで、加熱後、迅速に急冷が可能となった。特に、(4)の発明により、冷媒を噴霧することにより、効率よく均一に基板を冷却でき、また冷却時間の制御も容易であるような有機機能性薄膜熱処理装置となった。
【0016】
さらに(3)のように加熱手段として赤外線ヒーターを用いて、さらに該赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つものであることによって、有機機能性薄膜に化学変化や損傷等の劣化作用を与えることなく、効率的に加熱することができる。
【0017】
また、(2)の発明により、基板設置部の表面において赤外線ヒーターから放射される赤外線の大部分が反射されることによって、基板設置部自体が赤外線により加熱されることがないために、冷却時の効率を上げることができ、さらに基板設置部分では、透過した赤外線が基板背面からも反射されて基板に向けて照射されることになるので、効率的に基板を加熱することができる。
【0018】
また、(5)〜(7)に記載された工程により有機機能性薄膜の処理を行い、有機機能性薄膜及び有機機能性素子を形成することにより、加熱した後に急冷することにより、アモルファス状態を保持することができるため、例えば有機EL素子においては素子寿命、発光特性の優れた素子の製造が可能となる。また、ガラス転移温度以上、さらには融点以上に加熱することにより、下部層との密着性、及び平坦性に優れた有機機能性薄膜、ひいては高品質な有機機能性素子とすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0020】
(有機機能性薄膜熱処理装置)
図1に本発明における有機機能性薄膜熱処理装置の概要を示す。本装置は有機機能性薄膜担持基板107(以後基板と記す)が設置された冷却体108と、それに対峙した加熱体106を有する。また、基板107上の有機機能材料が加熱時に酸化反応を起こさぬよう、基板を含む空間は不活性雰囲気を保つことが出来るアニールチャンバー101内に設置される。
【0021】
アニールチャンバー101は窒素やアルゴンなどの不活性な雰囲気に置換するために、排気弁104や給気弁105につながっている。冷却チャンバー102は特にその雰囲気を限定されないが、冷媒が漏れないような設計である必要がある。
【0022】
加熱体106としては基板107を遠隔加熱できるものであればよいが、赤外線、特に波長λ=3〜25μmに光エネルギーのピークを持つ赤外線を放射可能な遠赤外線ヒーターである事が好ましい。何故ならば、有機化合物にはその領域に吸収体を持つものが多いため、効率的に加熱を行う事が可能と成るからである。尚、波長λ=0.74〜3μmの近赤外線はガラスを透過しやすい。そのため、基板107にガラスを用いた場合にはその加熱が効率よく行われない。更に短い波長の光を用いた場合には有機化合物の電子励起し、有機機能性薄膜が劣化するおそれがあるために不適である。
【0023】
加熱体106の個数や配置は、基板107が均一に加熱されるよう適宜設計することができるし、加熱体106、基板107、冷却体108の位置関係は図1の様でなくても構わない。例えば、加熱体は基板を覆うような半円筒形にして、加熱効率を考慮した形状にすることも可能である。
【0024】
冷却体は、基板設置部と基板冷却部を兼ね備えたものである。冷却体108を構成する素材としては、当然のことながら熱伝導度が高い物質を用いることが好ましい。また、少なくとも冷却体の基板側の表面においては、赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対して反射率が80%以上である物質を用いることが好ましい。冷却体表面において加熱体から放射される赤外線の大部分が反射されることによって、冷却体が加熱されることがなく、冷却時の効率を上げることができ、さらには基板設置部分においては、透過した赤外線が、基板背面からも反射されて基板に向けて照射されることになるので、効率的に基板を加熱することができるためである。
【0025】
上記の二点を満たすような物質としては、例えばAg,Al,Au,Cu等を挙げることが出来る。また、冷却体108の最表面のみをその様な物質でコーティングして用いても良い。また、冷却体108の厚みは、薄すぎると機械的な強度不足や熱の不均一性の原因と成り、厚過ぎると熱伝導に時間が掛かるために冷媒による冷却がスムーズに行えない。従って、材質にもよるが、その厚みは1から50mm程度である事が好ましい。
【0026】
冷却体108を介して基板を冷却する方法としては、冷却体の内部若しくは裏面に熱交換媒体(冷媒)が通過する水路を設けておき、そこに冷媒を流す方法が良く行われている。しかしながら、この方法で数十センチ角以上の広い面積を均一に冷やすためには、冷媒の流れを緻密に制御する必要が有る。また、冷媒の移動によって冷却するために、冷却を停止するためには冷媒を冷却体内から抜き出す必要があるため、動作の切り替え(冷却のON・OFF)が瞬時にできないという欠点がある。
【0027】
そこで本発明ではより簡便で、且つ迅速に冷却体を冷却する方法として冷媒噴霧法を提案する。この方法では冷却体の裏面全面に冷媒を噴霧するため、冷却体の均一な冷却が可能とであり、また噴霧装置による冷却のON・OFFとなるため、冷却時間の制御も容易である。
【0028】
冷媒を噴霧するための手段としては、冷媒の吐出量を制御可能で、冷媒を冷却体裏面全面に均一にかけることが可能な手段であれば特に限定はしないが、例えば1流体スプレーノズルや2流体スプレーノズルを用いることが出来る。ノズル109の個数や配置は、冷却体108が均一に冷却されるよう適宜設計することが出来る。
【0029】
冷媒113としては、冷却体108や冷媒噴霧ノズル109、チャンバーを腐食せず、目的とする冷却温度で液体であるものであれば特に制限はないが、引火点や発火点を持ったり人体に有毒なものは避けるべきである。従って、例えば水や液体窒素、不燃性のフッ素溶媒等が好適である。
【0030】
冷却体108の裏面は冷媒と接するため冷却チャンバー102内に露出しているが、基板107を担持する面はアニールチャンバー101側に露出している。そして、冷媒113が冷却チャンバー102側からアニールチャンバー101側に漏れださないように、冷却体108の端面部分はしっかりとシールしてある。あるいは、基板設置部を含むチェンバー底面全体により、冷却体を構成するようにしてもよい。このように、真空もしくは不活性ガス雰囲気に置換可能なチャンバー内と、冷却機構を接続された部分との両面に冷却体が露出していることにより、冷却機構自体は大気圧で構成することがきるため、上記のように、冷媒噴霧による基板冷却が可能となり、また冷却装置の構成の自由度も高いものとなる。
【0031】
冷却体108にあたった冷媒113は、その後冷媒回収ライン110により回収タンクに回収し、再冷却した後に再びノズルにて冷媒の噴霧に用いることができる。回収・再冷却機構としては、冷媒を冷却する熱交換器や、ノズルつまりの原因と成るゴミをカットするフィルター、冷媒を循環させるポンプの組み合わせを適宜選択して用いてもよい。冷媒として液体窒素等の装置の動作環境で気体の物質や、コスト・環境的に回収の必要がない物質を用いた場合には当然ながら回収の機構は不要である。
【0032】
(有機機能性薄膜の形成方法)
次に上記本発明の装置を用いた有機機能性薄膜の形成方法について説明する。有機機能性薄膜の処理方法は、有機EL素子、有機太陽電池、有機薄膜トランジスタ等の、有機機能性材料を用いた素子、及びその各有機機能層に用いることができる。例えば図2に示したような有機EL素子の構成図では、電荷輸送層203a、有機発光層203bが本発明での有機機能性薄膜に当たる。
【0033】
背景技術で述べたように、有機機能性材料には大別すると低分子材料、高分材料の2つがあるが、薄膜成膜方法についても種類に応じてドライプロセス、ウェットプロセスそれぞれ使い分けられている。主に低分子材料では真空蒸着等のドライプロセス、高分子材料では溶媒に材料を分散あるいは溶解させたインキを塗工するウェットプロセスを用いる。
【0034】
ウェットプロセスでの成膜工程の一例として、図3に凸版印刷法の説明図を示す。ステージ307には被印刷基板306が固定されており、本発明によってパターン形成された印刷用凸版304は版胴305に固定され、印刷用凸版304はインキ供給体であるアニロックスロール303と接しており、アニロックスロール303はインキ補充装置301とドクター302を備えている。
【0035】
まず、インキ補充装置301からアニロックスロール303へインキを補充し、アニロックスロール303に供給されたインキ308のうち余分なインキは、ドクター302により除去される。インキ補充装置301には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター302にはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール303は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。
【0036】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール303表面にドクターによって均一に保持されたインキ304は、版胴305に取り付けられた印刷用凸版306の凸部パターンに転移、供給される。そして、版胴305の回転に合わせて印刷用凸版306の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキはステージ308上にある被印刷基板306の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターンを形成する。
【0037】
次にアニール工程であるが、低分子材料、高分子材料のいずれにしても、ガラス転移温度付近で物性が大きく変化するために、薄膜形成後にアニール処理することにより、薄膜の均質化等の効果があるとされている。
【0038】
低分子材料を用いた場合には、ガラス転移温度以下の温度で加熱処理することにより、アモルファス状態となるために特性の良い有機機能性薄膜となるが、融点以上の高い温度では、室温に冷却される過程で結果的に結晶化し、素子寿命や発光特性が悪くなることが知られている。そのため、背景技術で述べたように、従来ガラス転移温度以上、あるいは融点付近までの加熱は行われてこなかった。ただし、結晶化した薄膜に対して、融点まで過熱することによって融解され、この状態においては、アモルファス状態となるために均質な薄膜の状態となっている。
【0039】
また、高分子系の有機機能性薄膜についても加熱処理し、ガラス転移温度以上の温度でアニール処理を行うことで素子の駆動寿命が大幅に改善されるという報告されている。その理由としては、Tg以上のアニール処理により膜面が平滑に成る(“Effect of thermal annealing on the lifetime of polymer light−emitting diodes”,Jinook Kim et al,Appl.Phys.Lett.82,4238−4240(2003)参照)、膜内の高分子鎖のパッキング状態が良くなり移動度が向上する(“Hole and electron transport in poly(9,9−dioctylfluorene9 and poly(9,9−dioctylfluorene−co−benzothiadiazole)”, T. Kreouzis et al, Proc. of SPIE 5214,141−149(2004)参照)等が挙げられている。
【0040】
上記のような背景から、一旦ガラス転移温度あるいは融点以上に加熱した状態の有機機能性薄膜ではアモルファス状態となっており、一旦融点以上にする事で、良好なアモルファス状態と成り平滑性の高い均一な膜面が得られ、下層との密着性も向上すると考えられる。
【0041】
そこで本発明では、有機機能性薄膜をガラス転移温度以上、さらには融点以上に加熱した後、これを急冷することにより、有機機能性薄膜の状態を保持することを可能とした。特に低分子系の有機機能層薄膜に関しては、一旦溶かすためTg以上の加熱による結晶化が問題に成らなくなる。更には、一旦結晶化しても融点以上の加熱に続く急冷により良好なアモルファス膜が得られるため、従来結晶化が問題と成って容易には成し得なかった塗布成膜が可能に成る。また、高分子材料についても、ガラス転移温度以上に加熱することにより官能基の配向がランダム化されることにより、均質な膜が形成されると考えられる。
【0042】
具体的な工程としては、各層を成膜後、必要に応じて本発明のアニール処理を行う。例えば低分子系の材料を印刷にて形成したのち、結晶化により不均一となったその印刷面を、一旦融点以上に加熱した後、10℃/min以上の冷却速度で、融解した材料のガラス転移温度以下まで急冷することで均一なアモルファス面を得る事が可能と成る。冷却速度が速いほど結晶化が起き難く成るが、基板を構成する他の素材が急冷により破損したり、熱膨張係数の差が大きく界面で剥離が起きたりする恐れがある場合は、冷媒の温度や流量を適宜調整し最適速度とする必要がある。
【0043】
また、高分子系材料のように融点が非常に高く、且つ膜面の均一性が良い材料に関しては一旦Tg以上融点未満に加熱した後に冷却しても十分なアニール効果を得る事が可能と成る。その場合に於いても、必要以上の加熱は熱劣化を引き起こす恐れが有るので10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却するとよい。
【0044】
これらのアニール処理により、有機機能性薄膜の膜質改善や密着性の向上が図られ、その結果素子特性が向上する。また、複数の有機機能性薄膜を積層する場合、各有機機能性薄膜形成ごとに行うこともできるし、各有機機能性薄膜形成後、アニール処理することも可能である。各層の有機機能性材料の特性によって工程を決定する必要があるが、複数の有機機能性薄膜を形成した後にアニール処理する場合には、最もガラス転移温度が高い有機機能性材料薄膜のガラス転移温度あるいは融点以上に加熱し、次に少なくとも最もガラス転移温度が低い有機機能性材料薄膜のガラス転移温度以下まで急冷することが好ましい。
【0045】
(有機機能性素子及び有機機能性素子の製造方法)
有機機能性素子の一例として、図2に示した有機EL素子を挙げ、説明する。但し、前述したように本発明は有機機能性材料を用いた有機機能性薄膜を有する物全般に関するものであり、有機ELに限定するものではない。
【0046】
本発明に用いられる基板201としては、透光性があり、ある程度の強度がある基板なら制限はないが、具体的にはガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。0.2〜1mmの薄いガラス基板を用いれば、バリア性が非常に高い薄型の有機EL素子を作製することができる。
【0047】
透明導電層202としては、透明または半透明の電極を形成することのできる導電性材料なら特に制限はない。具体的には酸化物としてインジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)、インジウムと亜鉛の複合酸化物(以下IZOという)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等があるが、低抵抗であること、対溶剤性があること、透明性があること等からITOを好ましく用いることができ、前記透光性基板201上に蒸着またはスパッタリング法により製膜することもできる。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体を基板上に塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法等により形成することもできる。あるいは、金属としてアルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものを用いることができる。あるいはポリアニリン等の有機半導体も用いることができる。
【0048】
上記、透明導電層202は、必要に応じてエッチングによりパターニングを行う、またはUV処理、プラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよい。
【0049】
本発明における有機機能層203は、単層若しくは複数の機能性層を積層させてもよい。有機EL素子の場合では、陽極および陰極の電極間に少なくとも有機発光層を設ける必要があるが、その他にも機能性層として正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の電荷輸送層を設けることができ、その構成は任意である。
【0050】
主に透明導電層102に隣接して設けられる電荷輸送層203aに用いる材料としては、一般に正孔輸送材料として用いられているものであれば良く、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1―ビス(4―ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’―ジフェニル―N,N’−ビス(3−メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル−4,4’―ジアミン(TPD)、N,N’―ジ(1―ナフチル)―N,N’―ジフェニル−1,1’―ビフェニル−4,4’―ジアミン等の芳香族アミン系などの低分子や、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子材料を用いることが出来る。また、ポリパラフェニレン(PPP)等のポリアリーレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)等のポリアリーレンビニレン系等の導電性高分子若しくはポリスチレン(PS)等の高分子に、アリールアミン類、カルバゾール誘導体、アリールスルフィド類、チオフェン誘導体、フタロシアニン誘導等の低分子の電荷輸送性を示す材料を混合した物を用いても良い。
【0051】
有機EL素子における有機発光層203bに用いる発光体としては、クマリン系、ペリレン系、ピレン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系、白金錯体系、ユーロピウム錯体系等の低分子発光性色素や、それら低分子系材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解若しくは高分子に共重合させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系等の高分子発光体を用いることができる。
【0052】
これらの材料は低分子の場合は蒸着法を用いて成膜しても良いが、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗布液として用い、スピンコート法、カーテンコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、スリットコート法といったコーティング法や、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法により成膜することが可能である。
【0053】
ただし、有機EL素子をフルカラー表示させるには、有機発光層をR(赤)G(緑)B(青)三色にパターニングする必要がある。このように、有機発光層をパターニングする際には、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができ、発光色の異なる有機発光層を画素ごとにパターン形成することができる。また、有機EL素子において、正孔輸送層や電子輸送層といった電荷輸送層は、隣接する画素への電流のリークを防止するために、画素ごとにパターニングすることが好ましい。この場合においても、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができる。
【0054】
各層を成膜後、必要に応じて本発明のアニール処理を行う。例えば低分子系の材料を印刷にて形成したのち、結晶化により不均一となったその印刷面を、一旦融点以上に加熱した後、10℃/min以上の冷却速度で、融解した材料のガラス転移温度以下まで急冷することで均一なアモルファス面を得る事が可能と成る。冷却速度が速いほど結晶化が起き難く成るが、基板を構成する他の素材が急冷により破損したり、熱膨張係数の差が大きく界面で剥離が起きたりする恐れがある場合は、冷媒の温度や流量を適宜調整し最適速度とする必要がある。
【0055】
また、高分子系材料のように融点が非常に高く、且つ膜面の均一性が良い材料に関しては一旦Tg以上融点未満に加熱した後に冷却しても十分なアニール効果を得る事が可能と成る。その場合に於いても、必要以上の加熱は熱劣化を引き起こす恐れが有るので10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却するとよい。
【0056】
これらのアニール処理により、有機機能性薄膜の膜質改善や密着性の向上が図られ、その結果素子特性が向上する。このアニール処理は有機機能性素子作製過程の任意のタイミングで行う事が可能である。
【0057】
有機機能性薄膜形成後、有機機能層203の上から陰極からなる電極層205を形成する。電極層としてはMg、Al、Yb、Ba、Ca等の金属単体を用いたり、発光媒体材料と接する界面にLiやLiF等の化合物を1nm程度はさんで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いることが可能である。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数の低い金属と安定な金属との合金系、例えばMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。陰極の形成方法は材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法を用いることができる。電極層の厚さは、10nmから1000nm程度が望ましい。
【0058】
最後にこれらの有機機能性積層体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子を得ることができる。また、透光性基板が可撓性を有する場合は封止剤と可撓性フィルムを用いて密閉封止をおこなう。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例として、有機EL素子を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、TPD(融点170〜171℃、ガラス転移点60℃)をトルエンに溶解した液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布し、基板107とした。
トルエンが揮発した状態での膜面は結晶化のため白濁していた。
【0061】
この膜面を図1に示した装置にてアニール処理した。
【0062】
基板107をアニールチャンバー101に入れ、窒素置換を十分に行いチャンバー内の酸素濃度を1ppmとし、露点を−60℃とした。
【0063】
その後、遠赤外線ヒーター106にて基板107を表面温度180℃となるまで加熱し、1minキープした後、銅製の冷却体108を−10℃に冷却したソルカン365mfc(日本ソルベイ社製)を噴霧して基板温度が20℃となるまで冷却した。この加熱工程、冷却工程の各工程で掛かった時間は、室温(25℃)の基板が180℃まで昇温するのに3min、180℃から60℃までの冷却に2min、60℃から20℃までに1minであった。
【0064】
得られたTPD膜は厚み50nmで、膜表面の中心線平均粗さRaは0.1nmの均一な透明膜であった。
【0065】
この基板上にAlq3、フッ化リチウム、アルミニウムをそれぞれ50nm、0.5nm、200nm真空蒸着により成膜し、有機EL素子を得た。
【0066】
得られた有機EL素子に6Vの電圧を印可したところ、1000cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度1000cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は100hrであった。
【0067】
(比較例1)
TPDを印刷した後にアニール処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に素子を作製した。
【0068】
得られた有機EL素子に電圧を印可したところ電流は流れたが、発光は確認されなかった。15Vまで印加した所、有機層がこげて素子が破壊された。
【0069】
(比較例2)
TPDの成膜も真空蒸着にて行い、アニール処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に素子を作製した。
【0070】
得られた有機EL素子に6Vの電圧を印可したところ、1000cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度1000cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は50hrであった。
【0071】
(実施例2)
ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を水に分散させた液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布した。この基板を200℃にて3min、大気下にて乾燥させた。乾燥後の厚さは50nmであった。
【0072】
また、ポリアリーレンビニレン系高分子発光体であるポリ(2−(2−エチルヘキシロキシメトキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン)(ガラス転移温度196℃)をトルエンに溶解し、基板上に、凸版印刷法により基板上にパターン状に塗布し、基板107を得た。
【0073】
この膜面を図1に示した装置にてアニール処理した。
【0074】
基板107をアニールチャンバー101に入れ、窒素置換を十分に行いチャンバー内の酸素濃度を1ppmとし、露点を−60℃とした。
【0075】
その後、遠赤外線ヒーター106にて基板107を表面温度200℃となるまで加熱し、1minキープした後、銅製の冷却体108を−10℃に冷却したソルカン365mfc(日本ソルベイ社製)を噴霧して基板温度が20℃となるまで冷却した。この加熱工程、冷却工程の各工程で掛かった時間は、室温(25℃)の基板が200℃まで昇温するのに3min、200℃から60℃までの冷却に2min、60℃から20℃までに1minであった。
【0076】
この基板上にフッ化リチウム、アルミニウムをそれぞれ0.5nm、200nm真空蒸着により成膜し、有機EL素子を得た。
【0077】
得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は3000hrであった。また、下記(剥離性評価方法)に示す剥離性評価方法を用いて剥離試験を行ったところ、剥離率は20%であった。
【0078】
(比較例3)
発光体薄膜をアニール処理しなかったこと以外は、すべて実施例2と同様に素子を作製した。得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は1500hrであった。また、同様な剥離試験を行ったところ剥離率は70%であった。
【0079】
(剥離性評価方法)
任意の有機機能性薄膜表面と、その層以下の界面の中で最も密着性が弱い界面における密着性は、JIS K5400−1990にある試験を用いる事が可能である。特に8.5.2に準拠した碁盤目テープ法付着性試験が最も適している。ただし、上記試験の条件では有機機能性素子の薄膜の剥離性の基準に適用することは困難であるために、以下のようにいくつか変更して用いた。
【0080】
まずアニール処理まで行った基板107の発光体薄膜を1mmの隙間間隔のカッターガイドを用いてカッターナイフで傷を付け、1cm角の中に100個の碁盤目をつくり、その表面に0.17mN/25mmの粘着テープ(寺岡製作所製No.605)を消しゴムで押し付けて貼り付け、剥離した。
【0081】
JIS K5400−1990 8.5.1に於いては、碁盤目試験の評価点数は傷の状態により0点から10点で評価する。しかしながら、我々は有機機能性薄膜の評価に関しては、その点数法ではなく、碁盤目の総面積に対していくつの碁盤目が剥離したかを面積比で示した剥離率で考察した方がよいと結論付けた。すなわち、
(剥離率)% = (剥離した碁盤目面積)÷(粘着テープを貼り付けた碁盤目面積)×100
にて剥離率が40%以下と成るときに、素子特性の向上が確認され、アニール効果が十分に得られたと結論付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明における有機機能性薄膜熱処理装置の一例の断面図である。
【図2】本発明における有機機能性素子の一例の断面図である。
【図3】凸版印刷法による有機機能性薄膜形成方法の説明図である。
【符号の説明】
【0083】
101・・・アニールチャンバー
102・・・冷却チャンバー
103・・・動力ボックス
104・・・排気弁
105・・・給気弁
106・・・加熱体
107・・・有機機能性薄膜担持基板
108・・・冷却体
109・・・冷媒噴霧ノズル
110・・・冷媒回収ライン
111・・・冷媒回収タンク
112・・・冷媒輸送ポンプ
113・・・冷媒
201・・・透光性基板
202・・・透明導電層
203・・・有機機能性薄膜
203a・・電荷輸送層
203b・・有機発光層
204・・・電極層
301・・・インキ補充装置
302・・・ドクター
303・・・アニロックスロール
304・・・インキ
305・・・版胴
306・・・印刷用凸版
307・・・被印刷基板
308・・・ステージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された有機機能性薄膜及び有機機能性薄膜を用いた素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部材の薄層軽量化やフレキシブル化を目標とした、有機機能性材料を用いた有機EL素子、有機太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの有機機能性素子の開発が盛んに行われている。これらの有機機能性素子に用いられる有機機能性材料は、一般に数十から数千nm程度の膜厚を有する有機機能性薄膜として基板上に形成され、用いられる。
【0003】
これらの有機機能性薄膜に用いられる有機機能性材料としては、低分子系の物と高分子系の物が挙げられる。
【0004】
低分子系の有機機能性薄膜は抵抗加熱蒸着法等にて成膜する事が多い。これは、低分子系の材料はアモルファス性が低く凝集もし易いため、塗布法では均一なアモルファス性の有機機能薄膜を形成しにくいためである。
【0005】
一方、高分子系の有機機能性材料はアモルファス性が高いため、有機機能性材料を溶媒に溶解若しくは分散させた塗工液(インキ)にし、これをウェットプロセスにて薄膜形成する方法が広く用いられている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法等がある。特に高精細にパターニングするには、塗り分け、パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
いずれの有機機能性薄膜の場合も、膜の集合状態としては、アモルファス状態である事が好ましいとされている。何故ならば薄膜を形成する材料が多結晶体であると、その薄膜には多くの結晶粒界や欠陥が生じてしまい、その結果素子にもリークなどの欠陥が生じやすくなり、不安定なものと成ってしまうためである(非特許文献2参照)。
【0007】
ところで、これらの有機機能性薄膜は、膜質の改善や下地との密着性の向上を目的とした加熱処理(アニール処理)を施されることが多い。これは、例えば有機EL素子をフレキシブル化する際には、基板の変形に耐えうる各層の密着性、そして画素内での均質な発光特性が要求されるためである。アニール処理を施すことにより、層の界面での密着性、アモルファス性の向上による膜質の改善が期待できる。
【0008】
有機機能性薄膜においては、一般に酸素や水と反応しやすいため、そのアニール処理は窒素やアルゴンに置換された雰囲気や真空下などの、不活性な雰囲気で行われる。そのためアニール処理はグローブボックス内や減圧及び気体置換可能な気密なチャンバー内で行われるが、生産性の面で有利なため気密なチャンバー内で行う事が多い。チャンバー内で用いられる加熱機構にはホットプレートが広く用いられる。そのため、アニール温度及び時間は制御されているが、昇温及び冷却のプロファイルについては特に制御しないものが多い。
【0009】
有機機能性薄膜は、ガラス転移温度(Tg)前後でアニール処理を行うことが多い(特許文献2参照)。特に、低分子系材料の有機機能性薄膜をTg以上に加熱すると結晶化が起き易く、有機機能性素子としての性能の低下が指摘されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしながら、画素内の膜厚の均質化、基板、有機機能層薄膜各層界面との密着性を鑑みると、加熱温度が高い方が好ましいと考えられる。このため、ガラス転移温度が高い有機機能性材料が求められてきたが、未だに十分な解決は為されていない(例えば特許文献4参照)。一方、アニール処理の面では、これまで処理方法としての大きな改善は為されてこなかった。
【0011】
【特許文献1】特開2003−17261号公報
【特許文献2】特開平11−40352号公報
【特許文献3】特開2005−310639号公報
【特許文献4】特開平9−205237号公報
【非特許文献1】情報科学用有機材料第142委員会C部会(有機光エレクトロニクス)第5回研究会資料 印刷プロセスによる有機薄膜太陽電池(20〜27ページ)
【非特許文献2】有機ELディスプレイ、時任静士他、株式会社オーム社、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、有機機能性薄膜をアニール処理した際に、結晶化や熱劣化の危険を避け、高品質・高性能な有機機能性素子を製造可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
まず有機機能性薄膜熱処理装置に係る発明として、
(1) チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置。
(2) (1)の有機機能性薄膜熱処理装置において、加熱手段が、赤外線ヒーターであり、かつ基板設置部の基板設置側表面が、該赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対する反射率が80%以上である物質で構成されていること。
(3) さらに、前記赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つこと。
(4) また、基板冷却手段が、前記基板設置部の前記チャンバー外部露出面への冷媒の噴霧であること。
【0014】
また有機機能性薄膜及び有機機能性素子の形成方法に係る発明として、
(5) 基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度或いは沸点以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程とを有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
(6) 基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層のうち最もガラス転移温度或いは融点が高い有機機能層のガラス転移温度以上に加熱する工程と、次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、を有することを特徴とする有機機能性薄膜の形成方法。
(7) 有機機能層を含む有機機能性素子の製造工程において、そのうち少なくとも一層の有機機能層を、請求項5乃至8に記載の有機機能性薄膜の形成方法を用いることを特徴とする、有機機能性素子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
(1)の発明により、密閉された不活性ガス雰囲気内で加熱処理を行うため有機機能性材料の酸素や水との反応による劣化を防ぐ事が出来、また、加熱手段と、冷却手段が別々の位置に設置され、冷却手段が直接基板設置部に接続されていることで、加熱後、迅速に急冷が可能となった。特に、(4)の発明により、冷媒を噴霧することにより、効率よく均一に基板を冷却でき、また冷却時間の制御も容易であるような有機機能性薄膜熱処理装置となった。
【0016】
さらに(3)のように加熱手段として赤外線ヒーターを用いて、さらに該赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つものであることによって、有機機能性薄膜に化学変化や損傷等の劣化作用を与えることなく、効率的に加熱することができる。
【0017】
また、(2)の発明により、基板設置部の表面において赤外線ヒーターから放射される赤外線の大部分が反射されることによって、基板設置部自体が赤外線により加熱されることがないために、冷却時の効率を上げることができ、さらに基板設置部分では、透過した赤外線が基板背面からも反射されて基板に向けて照射されることになるので、効率的に基板を加熱することができる。
【0018】
また、(5)〜(7)に記載された工程により有機機能性薄膜の処理を行い、有機機能性薄膜及び有機機能性素子を形成することにより、加熱した後に急冷することにより、アモルファス状態を保持することができるため、例えば有機EL素子においては素子寿命、発光特性の優れた素子の製造が可能となる。また、ガラス転移温度以上、さらには融点以上に加熱することにより、下部層との密着性、及び平坦性に優れた有機機能性薄膜、ひいては高品質な有機機能性素子とすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0020】
(有機機能性薄膜熱処理装置)
図1に本発明における有機機能性薄膜熱処理装置の概要を示す。本装置は有機機能性薄膜担持基板107(以後基板と記す)が設置された冷却体108と、それに対峙した加熱体106を有する。また、基板107上の有機機能材料が加熱時に酸化反応を起こさぬよう、基板を含む空間は不活性雰囲気を保つことが出来るアニールチャンバー101内に設置される。
【0021】
アニールチャンバー101は窒素やアルゴンなどの不活性な雰囲気に置換するために、排気弁104や給気弁105につながっている。冷却チャンバー102は特にその雰囲気を限定されないが、冷媒が漏れないような設計である必要がある。
【0022】
加熱体106としては基板107を遠隔加熱できるものであればよいが、赤外線、特に波長λ=3〜25μmに光エネルギーのピークを持つ赤外線を放射可能な遠赤外線ヒーターである事が好ましい。何故ならば、有機化合物にはその領域に吸収体を持つものが多いため、効率的に加熱を行う事が可能と成るからである。尚、波長λ=0.74〜3μmの近赤外線はガラスを透過しやすい。そのため、基板107にガラスを用いた場合にはその加熱が効率よく行われない。更に短い波長の光を用いた場合には有機化合物の電子励起し、有機機能性薄膜が劣化するおそれがあるために不適である。
【0023】
加熱体106の個数や配置は、基板107が均一に加熱されるよう適宜設計することができるし、加熱体106、基板107、冷却体108の位置関係は図1の様でなくても構わない。例えば、加熱体は基板を覆うような半円筒形にして、加熱効率を考慮した形状にすることも可能である。
【0024】
冷却体は、基板設置部と基板冷却部を兼ね備えたものである。冷却体108を構成する素材としては、当然のことながら熱伝導度が高い物質を用いることが好ましい。また、少なくとも冷却体の基板側の表面においては、赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対して反射率が80%以上である物質を用いることが好ましい。冷却体表面において加熱体から放射される赤外線の大部分が反射されることによって、冷却体が加熱されることがなく、冷却時の効率を上げることができ、さらには基板設置部分においては、透過した赤外線が、基板背面からも反射されて基板に向けて照射されることになるので、効率的に基板を加熱することができるためである。
【0025】
上記の二点を満たすような物質としては、例えばAg,Al,Au,Cu等を挙げることが出来る。また、冷却体108の最表面のみをその様な物質でコーティングして用いても良い。また、冷却体108の厚みは、薄すぎると機械的な強度不足や熱の不均一性の原因と成り、厚過ぎると熱伝導に時間が掛かるために冷媒による冷却がスムーズに行えない。従って、材質にもよるが、その厚みは1から50mm程度である事が好ましい。
【0026】
冷却体108を介して基板を冷却する方法としては、冷却体の内部若しくは裏面に熱交換媒体(冷媒)が通過する水路を設けておき、そこに冷媒を流す方法が良く行われている。しかしながら、この方法で数十センチ角以上の広い面積を均一に冷やすためには、冷媒の流れを緻密に制御する必要が有る。また、冷媒の移動によって冷却するために、冷却を停止するためには冷媒を冷却体内から抜き出す必要があるため、動作の切り替え(冷却のON・OFF)が瞬時にできないという欠点がある。
【0027】
そこで本発明ではより簡便で、且つ迅速に冷却体を冷却する方法として冷媒噴霧法を提案する。この方法では冷却体の裏面全面に冷媒を噴霧するため、冷却体の均一な冷却が可能とであり、また噴霧装置による冷却のON・OFFとなるため、冷却時間の制御も容易である。
【0028】
冷媒を噴霧するための手段としては、冷媒の吐出量を制御可能で、冷媒を冷却体裏面全面に均一にかけることが可能な手段であれば特に限定はしないが、例えば1流体スプレーノズルや2流体スプレーノズルを用いることが出来る。ノズル109の個数や配置は、冷却体108が均一に冷却されるよう適宜設計することが出来る。
【0029】
冷媒113としては、冷却体108や冷媒噴霧ノズル109、チャンバーを腐食せず、目的とする冷却温度で液体であるものであれば特に制限はないが、引火点や発火点を持ったり人体に有毒なものは避けるべきである。従って、例えば水や液体窒素、不燃性のフッ素溶媒等が好適である。
【0030】
冷却体108の裏面は冷媒と接するため冷却チャンバー102内に露出しているが、基板107を担持する面はアニールチャンバー101側に露出している。そして、冷媒113が冷却チャンバー102側からアニールチャンバー101側に漏れださないように、冷却体108の端面部分はしっかりとシールしてある。あるいは、基板設置部を含むチェンバー底面全体により、冷却体を構成するようにしてもよい。このように、真空もしくは不活性ガス雰囲気に置換可能なチャンバー内と、冷却機構を接続された部分との両面に冷却体が露出していることにより、冷却機構自体は大気圧で構成することがきるため、上記のように、冷媒噴霧による基板冷却が可能となり、また冷却装置の構成の自由度も高いものとなる。
【0031】
冷却体108にあたった冷媒113は、その後冷媒回収ライン110により回収タンクに回収し、再冷却した後に再びノズルにて冷媒の噴霧に用いることができる。回収・再冷却機構としては、冷媒を冷却する熱交換器や、ノズルつまりの原因と成るゴミをカットするフィルター、冷媒を循環させるポンプの組み合わせを適宜選択して用いてもよい。冷媒として液体窒素等の装置の動作環境で気体の物質や、コスト・環境的に回収の必要がない物質を用いた場合には当然ながら回収の機構は不要である。
【0032】
(有機機能性薄膜の形成方法)
次に上記本発明の装置を用いた有機機能性薄膜の形成方法について説明する。有機機能性薄膜の処理方法は、有機EL素子、有機太陽電池、有機薄膜トランジスタ等の、有機機能性材料を用いた素子、及びその各有機機能層に用いることができる。例えば図2に示したような有機EL素子の構成図では、電荷輸送層203a、有機発光層203bが本発明での有機機能性薄膜に当たる。
【0033】
背景技術で述べたように、有機機能性材料には大別すると低分子材料、高分材料の2つがあるが、薄膜成膜方法についても種類に応じてドライプロセス、ウェットプロセスそれぞれ使い分けられている。主に低分子材料では真空蒸着等のドライプロセス、高分子材料では溶媒に材料を分散あるいは溶解させたインキを塗工するウェットプロセスを用いる。
【0034】
ウェットプロセスでの成膜工程の一例として、図3に凸版印刷法の説明図を示す。ステージ307には被印刷基板306が固定されており、本発明によってパターン形成された印刷用凸版304は版胴305に固定され、印刷用凸版304はインキ供給体であるアニロックスロール303と接しており、アニロックスロール303はインキ補充装置301とドクター302を備えている。
【0035】
まず、インキ補充装置301からアニロックスロール303へインキを補充し、アニロックスロール303に供給されたインキ308のうち余分なインキは、ドクター302により除去される。インキ補充装置301には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター302にはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール303は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。
【0036】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール303表面にドクターによって均一に保持されたインキ304は、版胴305に取り付けられた印刷用凸版306の凸部パターンに転移、供給される。そして、版胴305の回転に合わせて印刷用凸版306の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキはステージ308上にある被印刷基板306の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターンを形成する。
【0037】
次にアニール工程であるが、低分子材料、高分子材料のいずれにしても、ガラス転移温度付近で物性が大きく変化するために、薄膜形成後にアニール処理することにより、薄膜の均質化等の効果があるとされている。
【0038】
低分子材料を用いた場合には、ガラス転移温度以下の温度で加熱処理することにより、アモルファス状態となるために特性の良い有機機能性薄膜となるが、融点以上の高い温度では、室温に冷却される過程で結果的に結晶化し、素子寿命や発光特性が悪くなることが知られている。そのため、背景技術で述べたように、従来ガラス転移温度以上、あるいは融点付近までの加熱は行われてこなかった。ただし、結晶化した薄膜に対して、融点まで過熱することによって融解され、この状態においては、アモルファス状態となるために均質な薄膜の状態となっている。
【0039】
また、高分子系の有機機能性薄膜についても加熱処理し、ガラス転移温度以上の温度でアニール処理を行うことで素子の駆動寿命が大幅に改善されるという報告されている。その理由としては、Tg以上のアニール処理により膜面が平滑に成る(“Effect of thermal annealing on the lifetime of polymer light−emitting diodes”,Jinook Kim et al,Appl.Phys.Lett.82,4238−4240(2003)参照)、膜内の高分子鎖のパッキング状態が良くなり移動度が向上する(“Hole and electron transport in poly(9,9−dioctylfluorene9 and poly(9,9−dioctylfluorene−co−benzothiadiazole)”, T. Kreouzis et al, Proc. of SPIE 5214,141−149(2004)参照)等が挙げられている。
【0040】
上記のような背景から、一旦ガラス転移温度あるいは融点以上に加熱した状態の有機機能性薄膜ではアモルファス状態となっており、一旦融点以上にする事で、良好なアモルファス状態と成り平滑性の高い均一な膜面が得られ、下層との密着性も向上すると考えられる。
【0041】
そこで本発明では、有機機能性薄膜をガラス転移温度以上、さらには融点以上に加熱した後、これを急冷することにより、有機機能性薄膜の状態を保持することを可能とした。特に低分子系の有機機能層薄膜に関しては、一旦溶かすためTg以上の加熱による結晶化が問題に成らなくなる。更には、一旦結晶化しても融点以上の加熱に続く急冷により良好なアモルファス膜が得られるため、従来結晶化が問題と成って容易には成し得なかった塗布成膜が可能に成る。また、高分子材料についても、ガラス転移温度以上に加熱することにより官能基の配向がランダム化されることにより、均質な膜が形成されると考えられる。
【0042】
具体的な工程としては、各層を成膜後、必要に応じて本発明のアニール処理を行う。例えば低分子系の材料を印刷にて形成したのち、結晶化により不均一となったその印刷面を、一旦融点以上に加熱した後、10℃/min以上の冷却速度で、融解した材料のガラス転移温度以下まで急冷することで均一なアモルファス面を得る事が可能と成る。冷却速度が速いほど結晶化が起き難く成るが、基板を構成する他の素材が急冷により破損したり、熱膨張係数の差が大きく界面で剥離が起きたりする恐れがある場合は、冷媒の温度や流量を適宜調整し最適速度とする必要がある。
【0043】
また、高分子系材料のように融点が非常に高く、且つ膜面の均一性が良い材料に関しては一旦Tg以上融点未満に加熱した後に冷却しても十分なアニール効果を得る事が可能と成る。その場合に於いても、必要以上の加熱は熱劣化を引き起こす恐れが有るので10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却するとよい。
【0044】
これらのアニール処理により、有機機能性薄膜の膜質改善や密着性の向上が図られ、その結果素子特性が向上する。また、複数の有機機能性薄膜を積層する場合、各有機機能性薄膜形成ごとに行うこともできるし、各有機機能性薄膜形成後、アニール処理することも可能である。各層の有機機能性材料の特性によって工程を決定する必要があるが、複数の有機機能性薄膜を形成した後にアニール処理する場合には、最もガラス転移温度が高い有機機能性材料薄膜のガラス転移温度あるいは融点以上に加熱し、次に少なくとも最もガラス転移温度が低い有機機能性材料薄膜のガラス転移温度以下まで急冷することが好ましい。
【0045】
(有機機能性素子及び有機機能性素子の製造方法)
有機機能性素子の一例として、図2に示した有機EL素子を挙げ、説明する。但し、前述したように本発明は有機機能性材料を用いた有機機能性薄膜を有する物全般に関するものであり、有機ELに限定するものではない。
【0046】
本発明に用いられる基板201としては、透光性があり、ある程度の強度がある基板なら制限はないが、具体的にはガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。0.2〜1mmの薄いガラス基板を用いれば、バリア性が非常に高い薄型の有機EL素子を作製することができる。
【0047】
透明導電層202としては、透明または半透明の電極を形成することのできる導電性材料なら特に制限はない。具体的には酸化物としてインジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)、インジウムと亜鉛の複合酸化物(以下IZOという)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等があるが、低抵抗であること、対溶剤性があること、透明性があること等からITOを好ましく用いることができ、前記透光性基板201上に蒸着またはスパッタリング法により製膜することもできる。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体を基板上に塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法等により形成することもできる。あるいは、金属としてアルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものを用いることができる。あるいはポリアニリン等の有機半導体も用いることができる。
【0048】
上記、透明導電層202は、必要に応じてエッチングによりパターニングを行う、またはUV処理、プラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよい。
【0049】
本発明における有機機能層203は、単層若しくは複数の機能性層を積層させてもよい。有機EL素子の場合では、陽極および陰極の電極間に少なくとも有機発光層を設ける必要があるが、その他にも機能性層として正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の電荷輸送層を設けることができ、その構成は任意である。
【0050】
主に透明導電層102に隣接して設けられる電荷輸送層203aに用いる材料としては、一般に正孔輸送材料として用いられているものであれば良く、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1―ビス(4―ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’―ジフェニル―N,N’−ビス(3−メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル−4,4’―ジアミン(TPD)、N,N’―ジ(1―ナフチル)―N,N’―ジフェニル−1,1’―ビフェニル−4,4’―ジアミン等の芳香族アミン系などの低分子や、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子材料を用いることが出来る。また、ポリパラフェニレン(PPP)等のポリアリーレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)等のポリアリーレンビニレン系等の導電性高分子若しくはポリスチレン(PS)等の高分子に、アリールアミン類、カルバゾール誘導体、アリールスルフィド類、チオフェン誘導体、フタロシアニン誘導等の低分子の電荷輸送性を示す材料を混合した物を用いても良い。
【0051】
有機EL素子における有機発光層203bに用いる発光体としては、クマリン系、ペリレン系、ピレン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系、白金錯体系、ユーロピウム錯体系等の低分子発光性色素や、それら低分子系材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解若しくは高分子に共重合させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系等の高分子発光体を用いることができる。
【0052】
これらの材料は低分子の場合は蒸着法を用いて成膜しても良いが、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗布液として用い、スピンコート法、カーテンコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、スリットコート法といったコーティング法や、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法により成膜することが可能である。
【0053】
ただし、有機EL素子をフルカラー表示させるには、有機発光層をR(赤)G(緑)B(青)三色にパターニングする必要がある。このように、有機発光層をパターニングする際には、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができ、発光色の異なる有機発光層を画素ごとにパターン形成することができる。また、有機EL素子において、正孔輸送層や電子輸送層といった電荷輸送層は、隣接する画素への電流のリークを防止するために、画素ごとにパターニングすることが好ましい。この場合においても、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができる。
【0054】
各層を成膜後、必要に応じて本発明のアニール処理を行う。例えば低分子系の材料を印刷にて形成したのち、結晶化により不均一となったその印刷面を、一旦融点以上に加熱した後、10℃/min以上の冷却速度で、融解した材料のガラス転移温度以下まで急冷することで均一なアモルファス面を得る事が可能と成る。冷却速度が速いほど結晶化が起き難く成るが、基板を構成する他の素材が急冷により破損したり、熱膨張係数の差が大きく界面で剥離が起きたりする恐れがある場合は、冷媒の温度や流量を適宜調整し最適速度とする必要がある。
【0055】
また、高分子系材料のように融点が非常に高く、且つ膜面の均一性が良い材料に関しては一旦Tg以上融点未満に加熱した後に冷却しても十分なアニール効果を得る事が可能と成る。その場合に於いても、必要以上の加熱は熱劣化を引き起こす恐れが有るので10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却するとよい。
【0056】
これらのアニール処理により、有機機能性薄膜の膜質改善や密着性の向上が図られ、その結果素子特性が向上する。このアニール処理は有機機能性素子作製過程の任意のタイミングで行う事が可能である。
【0057】
有機機能性薄膜形成後、有機機能層203の上から陰極からなる電極層205を形成する。電極層としてはMg、Al、Yb、Ba、Ca等の金属単体を用いたり、発光媒体材料と接する界面にLiやLiF等の化合物を1nm程度はさんで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いることが可能である。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数の低い金属と安定な金属との合金系、例えばMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。陰極の形成方法は材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法を用いることができる。電極層の厚さは、10nmから1000nm程度が望ましい。
【0058】
最後にこれらの有機機能性積層体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子を得ることができる。また、透光性基板が可撓性を有する場合は封止剤と可撓性フィルムを用いて密閉封止をおこなう。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例として、有機EL素子を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、TPD(融点170〜171℃、ガラス転移点60℃)をトルエンに溶解した液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布し、基板107とした。
トルエンが揮発した状態での膜面は結晶化のため白濁していた。
【0061】
この膜面を図1に示した装置にてアニール処理した。
【0062】
基板107をアニールチャンバー101に入れ、窒素置換を十分に行いチャンバー内の酸素濃度を1ppmとし、露点を−60℃とした。
【0063】
その後、遠赤外線ヒーター106にて基板107を表面温度180℃となるまで加熱し、1minキープした後、銅製の冷却体108を−10℃に冷却したソルカン365mfc(日本ソルベイ社製)を噴霧して基板温度が20℃となるまで冷却した。この加熱工程、冷却工程の各工程で掛かった時間は、室温(25℃)の基板が180℃まで昇温するのに3min、180℃から60℃までの冷却に2min、60℃から20℃までに1minであった。
【0064】
得られたTPD膜は厚み50nmで、膜表面の中心線平均粗さRaは0.1nmの均一な透明膜であった。
【0065】
この基板上にAlq3、フッ化リチウム、アルミニウムをそれぞれ50nm、0.5nm、200nm真空蒸着により成膜し、有機EL素子を得た。
【0066】
得られた有機EL素子に6Vの電圧を印可したところ、1000cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度1000cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は100hrであった。
【0067】
(比較例1)
TPDを印刷した後にアニール処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に素子を作製した。
【0068】
得られた有機EL素子に電圧を印可したところ電流は流れたが、発光は確認されなかった。15Vまで印加した所、有機層がこげて素子が破壊された。
【0069】
(比較例2)
TPDの成膜も真空蒸着にて行い、アニール処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に素子を作製した。
【0070】
得られた有機EL素子に6Vの電圧を印可したところ、1000cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度1000cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は50hrであった。
【0071】
(実施例2)
ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を水に分散させた液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布した。この基板を200℃にて3min、大気下にて乾燥させた。乾燥後の厚さは50nmであった。
【0072】
また、ポリアリーレンビニレン系高分子発光体であるポリ(2−(2−エチルヘキシロキシメトキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン)(ガラス転移温度196℃)をトルエンに溶解し、基板上に、凸版印刷法により基板上にパターン状に塗布し、基板107を得た。
【0073】
この膜面を図1に示した装置にてアニール処理した。
【0074】
基板107をアニールチャンバー101に入れ、窒素置換を十分に行いチャンバー内の酸素濃度を1ppmとし、露点を−60℃とした。
【0075】
その後、遠赤外線ヒーター106にて基板107を表面温度200℃となるまで加熱し、1minキープした後、銅製の冷却体108を−10℃に冷却したソルカン365mfc(日本ソルベイ社製)を噴霧して基板温度が20℃となるまで冷却した。この加熱工程、冷却工程の各工程で掛かった時間は、室温(25℃)の基板が200℃まで昇温するのに3min、200℃から60℃までの冷却に2min、60℃から20℃までに1minであった。
【0076】
この基板上にフッ化リチウム、アルミニウムをそれぞれ0.5nm、200nm真空蒸着により成膜し、有機EL素子を得た。
【0077】
得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は3000hrであった。また、下記(剥離性評価方法)に示す剥離性評価方法を用いて剥離試験を行ったところ、剥離率は20%であった。
【0078】
(比較例3)
発光体薄膜をアニール処理しなかったこと以外は、すべて実施例2と同様に素子を作製した。得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/m2のパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は1500hrであった。また、同様な剥離試験を行ったところ剥離率は70%であった。
【0079】
(剥離性評価方法)
任意の有機機能性薄膜表面と、その層以下の界面の中で最も密着性が弱い界面における密着性は、JIS K5400−1990にある試験を用いる事が可能である。特に8.5.2に準拠した碁盤目テープ法付着性試験が最も適している。ただし、上記試験の条件では有機機能性素子の薄膜の剥離性の基準に適用することは困難であるために、以下のようにいくつか変更して用いた。
【0080】
まずアニール処理まで行った基板107の発光体薄膜を1mmの隙間間隔のカッターガイドを用いてカッターナイフで傷を付け、1cm角の中に100個の碁盤目をつくり、その表面に0.17mN/25mmの粘着テープ(寺岡製作所製No.605)を消しゴムで押し付けて貼り付け、剥離した。
【0081】
JIS K5400−1990 8.5.1に於いては、碁盤目試験の評価点数は傷の状態により0点から10点で評価する。しかしながら、我々は有機機能性薄膜の評価に関しては、その点数法ではなく、碁盤目の総面積に対していくつの碁盤目が剥離したかを面積比で示した剥離率で考察した方がよいと結論付けた。すなわち、
(剥離率)% = (剥離した碁盤目面積)÷(粘着テープを貼り付けた碁盤目面積)×100
にて剥離率が40%以下と成るときに、素子特性の向上が確認され、アニール効果が十分に得られたと結論付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明における有機機能性薄膜熱処理装置の一例の断面図である。
【図2】本発明における有機機能性素子の一例の断面図である。
【図3】凸版印刷法による有機機能性薄膜形成方法の説明図である。
【符号の説明】
【0083】
101・・・アニールチャンバー
102・・・冷却チャンバー
103・・・動力ボックス
104・・・排気弁
105・・・給気弁
106・・・加熱体
107・・・有機機能性薄膜担持基板
108・・・冷却体
109・・・冷媒噴霧ノズル
110・・・冷媒回収ライン
111・・・冷媒回収タンク
112・・・冷媒輸送ポンプ
113・・・冷媒
201・・・透光性基板
202・・・透明導電層
203・・・有機機能性薄膜
203a・・電荷輸送層
203b・・有機発光層
204・・・電極層
301・・・インキ補充装置
302・・・ドクター
303・・・アニロックスロール
304・・・インキ
305・・・版胴
306・・・印刷用凸版
307・・・被印刷基板
308・・・ステージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、赤外線ヒーターであり、かつ基板設置部の基板設置側表面が、該赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対する反射率が80%以上である物質で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、赤外線ヒーターであり、該赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項4】
前記基板冷却手段が、前記基板設置部の前記チャンバー外部露出面への冷媒の噴霧であることを特徴とする請求項1から3に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項5】
基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、
前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程と
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項6】
基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、
前記有機機能性薄膜を融点以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下に冷却する工程と
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項7】
基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が高い有機機能層のガラス転移温度以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項8】
基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層のうち最も融点が高い有機機能層の融点以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項9】
有機機能層を含む有機機能性素子の製造工程において、
そのうち少なくとも一層の有機機能層を、請求項5乃至8に記載の有機機能性薄膜の形成方法を用いることを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【請求項1】
チャンバー内部に設置された基板設置部と、前記チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段と、前記基板設置部に対峙して設けられた加熱手段と、前記基板設置部に接続された基板冷却手段と、具備することを特徴とする有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、赤外線ヒーターであり、かつ基板設置部の基板設置側表面が、該赤外線ヒーターの照射する赤外線の波長に対する反射率が80%以上である物質で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、赤外線ヒーターであり、該赤外線ヒーターより照射される赤外線が波長3〜25μmに光エネルギーのピークを持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項4】
前記基板冷却手段が、前記基板設置部の前記チャンバー外部露出面への冷媒の噴霧であることを特徴とする請求項1から3に記載の有機機能性薄膜熱処理装置。
【請求項5】
基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、
前記有機機能性薄膜をガラス転移点温度以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下まで冷却する工程と
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項6】
基板上に有機機能性薄膜を形成する工程と、
前記有機機能性薄膜を融点以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度でガラス転移点温度以下に冷却する工程と
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項7】
基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が高い有機機能層のガラス転移温度以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項8】
基板上に複数の有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層のうち最も融点が高い有機機能層の融点以上に加熱する工程と、
次に10℃/min以上の冷却速度で前記有機機能層のうち最もガラス転移温度が低い有機機能層のガラス転移温度以下に冷却する工程と、
を有することを特徴とする有機機能性薄膜の製造方法。
【請求項9】
有機機能層を含む有機機能性素子の製造工程において、
そのうち少なくとも一層の有機機能層を、請求項5乃至8に記載の有機機能性薄膜の形成方法を用いることを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−226642(P2008−226642A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63128(P2007−63128)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]