説明

有機溶剤系増粘・チキソトロピー付与剤、塗布組成物、機能性フィルム、および光学フィルム

【課題】塗布性に優れ、面状均一性の高いフイルムを形成しうる有機溶剤系塗布組成物に用いられる増粘剤またはチキソトロピー付与剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む有機溶剤系増粘剤ならびにチキソトロピー付与剤。


式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基、Zは(t+1)価の連結基、#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。tは2〜6までの整数。例示化合物として、式(2)が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤系増粘・チキソトロピー付与剤およびそれを含む塗布組成物に関する。また、本発明は、かかる塗布組成物を用いた機能性フィルムおよび光学フィルムにも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コーティング法を用いた材料の開発が進んでおり、特に数μm〜数10nmレベルの薄層塗布技術は、光学フイルム、印刷、フォトリソグラフィーなどで必要であり、薄膜化、基材の大型化、塗布の高速化などに伴い要求される塗布精度も高くなってきている。特に光学フイルムの製造においては、膜厚の制御が光学性能を左右する非常に重要なポイントであり、さらに生産性を高める必要もあるので、精度を高く保ちつつ塗布速度の高速化を実現できる技術への要求は高くなってきている。
しかしながら、溶剤を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶剤乾燥を一定に保つことが容易でなく、面状ムラが生じやすい。ここで言う面状ムラとは、塗布後のレベリング不良に起因する塗布スジや、溶剤乾燥速度差に起因する乾燥ムラ、乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラのことである。
【0003】
均一な膜を形成しつつ、ムラを防止するための一手段として、塗布液の粘度を高めて流動防止する方法が考えられる。塗布液の粘度を上昇させるためにはポリマー等の増粘剤を添加することが知られているが、単に塗布液の粘度を高めることは、レベリング性を悪化させ、塗布時にスジが発生することにつながる。乾燥時のムラ発生も、塗布時のスジ発生も防止する手段として、チキソトロピーをもつ添加剤(以下チキソ剤)を加えることにより、塗布液にチキソトロピーを付与する方法が考えられる。(非特許文献1)
本明細書中では、チキソトロピー(以下、チキソ性として略す場合もある)とは、高せん断速度下では低粘度、低せん断速度下では高粘度となる性質のことをいい、擬塑性流動特性、構造粘性と同義で用いる。粘度変化の時間依存性については問わない。
有機溶剤系塗料で用いられるチキソ剤の多くは、粒子分散系で用いられるものであり、無機微粒子シリカや有機ベントナイトなどが知られている。しかしながら、機能性材料を塗布する場合にはこれらの材料では諸性能が十分ではなく、低粘度の塗布液を少ない添加量で、機能性材料の本来の機能発現を妨げることなく粘度を制御できるものが望まれていた。
【0004】
一方、含フッ素化合物を含む機能性フィルムとしては、分子内にフッ化アルキル基含有長鎖アルキル基をもつ両親媒性化合物から二分子膜フィルムを作成でき、酸素の分離濃縮フィルムとして用いられる例が報告されている (例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、報告されているフィルムは水分散液から調製されており、含フッ素化合物の有機溶剤への溶解性や溶液の粘度がいかなるものかは知られていない。また、塗布組成物中に添加して用いられることはなく、このような化合物を含有する塗布組成物を実際に塗布した際に、均一な膜を形成できるか、厚みムラを抑制できるか、機能発現を妨げないかといったことについてはこれまでに知られていない。
【0005】
また、末端にフッ化アルキル基をもったオリゴマーが水やジメチルスルホキサイド(DMSO)といった極性溶媒をゲル化できることが報告されている。(例えば、非特許文献2参照。)しかしながら、これらのオリゴマーは有機溶剤系の塗布溶剤に対する溶解性が十分ではなく、また、塗布組成物中に添加して用いられることはないため、このような化合物を含有する塗布組成物を実際に塗布した際に、均一な膜を形成できるか、厚みムラを抑制できるか、機能発現を妨げないかといったことについてはこれまでに知られていない。
【非特許文献1】粘度制御技術、技術情報協会、1999年、101−115ページ、272−293ページ。
【特許文献1】特開2003−294941号公報
【非特許文献2】ポリマージャーナル、1998年、第30巻、797−804ページ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗布性に優れ、塗布により均一で面状ムラのない面状均一性の高いフイルムを形成しうる有機溶剤系塗布組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は上記の有機溶剤系塗布組成物を調製するのに好適な増粘・チキソトロピー付与剤を提供するものである。
そして本発明は塗布組成物の粘度を調節することで、乾燥ムラや風ムラが低減され、面状均一性が高い機能性フイルム、特に、光学フイルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、膜形成において均一な面状性を得るため鋭意検討の結果、ある種の含フッ素化合物が有機溶剤系においてチキソ性を発現することを見出し、この化合物を添加した塗布組成物を用いることにより、塗布液に擬塑性流動特性を発現させ、これにより、均一に塗布でき、塗布時に生じる塗布スジ、乾燥ムラ、風ムラを低減することができることを見出した。また、該含特定のフッ素ポリマーを用いることにより、高速塗布した場合にも、光学性能や物理性能のバラツキが小さく、面状均一性の高い光学フイルムを得ることができるという知見を得た。さらに、繰り返し単位を有するポリマーとすることで、有機溶剤、塗布組成物への溶解性が向上し、所望の粘度、チキソ性を発現可能であることを見出した。そして、これらの知見に基づき本発明をなすに至った。
【0008】
本発明の含フッ素ポリマーは塗布組成物中において、フッ化アルキル基の疎溶媒力によって会合がおこることにより、液粘度を上昇させ、また、この会合体の破壊と再形成によってチキソ性を発現していると考えられる。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、下記増粘・チキソトロピー付与剤および塗布組成物並びにそれを用いて塗布された機能性フイルム、特に、光学フイルムの発明により達成される。本発明における機能性フィルムとは、光学機能、導電機能、誘電機能、絶縁機能、バリア機能、高強度、耐熱機能などの機能を持ったフィルムを示す。機能性フイルムの種類は特に限定するものではなく、例えば透明ハードコート層、着色層、防眩層、反射防止層、光学補償層などを一つ或いはそれ以上有するフイルムが挙げられる。
【0010】
すなわち本発明は、以下の塗布組成物、機能性フィルム、光学フィルム、および有機溶剤系増粘・チキソトロピー付与剤を提供するものである。
(1)下記一般式(1)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む有機溶剤系増粘剤。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Zは(t+1)価の連結基を表し、#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。tは2〜6までの整数である。
(2)上記一般式(1)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む有機溶剤系チキソトロピー付与剤。
(3)前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(2)で表されることを特徴とする(1)または(2)項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【0013】
【化2】

【0014】
式中、R1およびRはそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つは少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、T、TおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
(4)前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(3)で表されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【0015】
【化3】

【0016】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
(5)前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、AおよびAはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。n11およびn21はそれぞれ独立に0〜6の整数を、n12およびn22はそれぞれ独立に3〜12の整数を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
(6)前記繰り返し単位がエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位であることを特徴とする(1)、(3)、(4)、または(5)項に記載の有機溶剤系増粘剤。
(7)前記繰り返し単位がエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれか1項に記載の有機溶剤系チキソトロピー剤。
(8)(1)、(3)、(4)、(5)、または(6)項記載の有機溶剤系増粘剤を含む塗布組成物。
(9)(2)、(3)、(4)、(5)、または(7)項記載の有機溶剤系チキソトロピー剤を含む塗布組成物。
(10)前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーの含有量(塗布組成物全体の質量に対する質量%)が塗布組成物全体の質量に対して0.01質量%〜10.0質量%であることを特徴とする(8)〜(9)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
(11)前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを少なくとも1種含み、下記条件(c)を満たすことを特徴とする(8)〜(10)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[条件(c)]0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において、塗布組成物より前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーのみを除いた液の粘度η01に対する、前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含有した塗布組成物粘度η11の値η11/η01が1.25以上である。
(12)前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを少なくとも1種含み、下記条件(d)を満たすことを特徴とする(8)〜(10)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[条件(d)]一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む塗布組成物において、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度x11における粘度η(x11)の、x21/x11=10であるせん断速度x21における粘度η(x21)に対する値η(x11)/η(x21)が1.25以上である。
(13)水の含率が30質量%以下であることを特徴とする(8)〜(12)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
(14)塗布組成物に液晶性化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする(8)〜(13)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
(15)塗布組成物が有機および/または無機微粒子分散物を含むことを特徴とする(8)〜(14)のいずれか1項に記載の塗布組成物。
(16)(8)〜(15)のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された機能性フイルム。
(17)(8)〜(15)のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された光学フイルム。
(18)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤を含有することで有機溶剤系において、液を増粘またはチキソトロピーを付与する方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の含フッ素ポリマーを含有した塗布組成物を用いることにより、均一に塗布でき、塗布時に生じる塗布スジや、乾燥ムラや風ムラを低減できる。また、本発明の含フッ素ポリマーを含有して用いることにより、高速塗布した場合にも、光学性能や物理性能のバラツキが小さく、面状均一性の高い光学フイルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で用いられる化合物について説明する。
【0021】
【化5】

【0022】
式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Zは(t+1)価の連結基を表し、#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。tは2〜6までの整数である。
【0023】
式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Rは少なくとも8個のフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0024】
Rとしては、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数4〜14がより好ましく、炭素数4〜14がさらに好ましい。また、Rに含まれるフッ素原子数は8個以上であれば特に限定はないが、好ましくは8個以上42個以下、より好ましくは、10個以上26個以下、さらに好ましくは10個以上23個以下である。Rの好ましい例を以下に示す。
【0025】
【化6】

【0026】
Rとしてさらに好ましくは,末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜14のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)n1−(CF2)n2Fで表される炭素数4〜14のアルキル基である(n1は0〜6の整数を表す。n2は3〜12の整数を表す)。具体的には、−(CH23−(CF24F、 −(CH22−(CF24F、−(CH26−(CF24F、−(CH22−(CF26F、−(CH23−(CF26F、−(CH22−(CF2F、−(CH23−(CF2F、−(CH22−(CF210F、−(CH23−(CF210F、等が挙げられ、いずれも好ましく用いられる。
【0027】
Zは(t+1)価の連結基を表し、Rと繰り返し単位を結びつけるものであれば特に制限はない。tは2から6までの整数であり、好ましくは、tは2から4までの整数であり、より好ましくは、tは2または3であり、最も好ましくは、tは2である。
二つ以上のRは同じであっても異なっていてもかまわない。合成適性の観点からは同じであることが好ましい。
【0028】
また、Zにおいて、Rのいずれか二つが結合している原子と原子の間に含まれる原子数
は13個以下であることが好ましく、9個以下であることがより好ましい。ここで、Rのいずれか二つが結合している原子と原子の間に含まれる原子数は、例えば、下記連結基(Z1)では、7個となるように数える。
【0029】
【化7】

【0030】
上記一般式(1)で表される部分構造の中でも、下記一般式(2)で表される部分構造が好ましい。
【0031】
【化8】

【0032】
式中、R1およびRはそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1およびR2の少なくとも1つは少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、T、TおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【0033】
前記一般式(2)中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数4以上であって、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。R1およびR2の少なくとも1つは少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基(以下、8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を「Rf」という)を表し、その具体例および好ましい範囲は一般式(1)中のRとして示したものとまったく同じである。R1およびR2はともに少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基すなわちRf基であることが好ましい。
【0034】
1およびR2がそれぞれRf以外のアルキル基、即ち、フッ素原子で置換されていないアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜24の置換または無置換のアルキル基、より好ましくは炭素数6〜24の置換または無置換のアルキル基である。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜24のアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0035】
とRの炭素数の総計は、6以上50以下であることが好ましく、12以上40以下であることがより好ましく、12以上36以下であることが最も好ましい。
【0036】
前記一般式(2)中、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子まは置換基を表す。
【0037】
該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(モノシクロアルキル、ビシクロアルキルなどのシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0038】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。)、アルケニル基(直鎖、分岐または環状であって置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、
【0039】
シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5もしくは6員であって置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0040】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
【0041】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0042】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルア
ミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチル
アミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシ
ルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換の
アルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボ
ニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイ
ルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニ
ルアミノ)、
【0043】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
【0044】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−ブチルフェニルチオ、4−ヘキサノイルアミノフェニルチオ、2−ベンズアミドフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ、1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)、
【0045】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0046】
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、
【0047】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
これらの官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。
【0048】
3、R4およびR5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0049】
前記式中、T1およびT2はそれぞれ2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアリーレン基、−O−、−S−または−NR21−(R21は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、R21として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは−O−、−S−または−NR21−である。T1およびT2としてより好ましくは、−O−または−NR21−であり、更に好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
【0050】
前記式中Lは2価の連結基または単結合を表す。2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR22−(R22は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5が表す置換基の例と同様であり、R22として好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR22−を単独またはそれらを組合せて得られる基である。
【0051】
上記一般式(1)で表される部分構造の中でも、下記一般式(3)で表される部分構造が好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【0054】
1およびRの具体例および好ましい範囲は一般式(1)中のRとして示したものとまったく同じである。また、Bの具体例および好ましい範囲も一般式(1)中のそれとまったく同じであり、Lの具体例および好ましい範囲も一般式(2)中のそれとまったく同じである。T、Tとしては、−O−、−S−または−NR23−はいずれも好ましく用いることができるが、−O−または−NH−がより好ましく、−O−がもっとも好ましい。R23は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR3、R4およびR5がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、R23として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0055】
上記一般式(1)で表される部分構造の中でも、下記一般式(4)で表される部分構造が好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
式中、AおよびAはそれぞれフッ素原子または水素原子を表す。n11およびn21は0〜6の整数を、n12およびn22は3〜12の整数を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【0058】
式中、L1は上記一般式(2)におけるL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。R23、T、Tは上記一般式(3)におけるそれらとまったく同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0059】
n11、n21はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、更に好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。n21、n22は3〜12の整数を表し、より好ましくは、3〜10であり、更に好ましくは4〜10である。これらのn11、n21、n12、n22のもっとも好ましい組合せとしては、n11、n21が2または3で、且つn12、n22は6、8、10であるものが好ましい。また、n11=n21、n12=n22であることが好ましい。
【0060】
およびAは、好ましくは、ともにフッ素原子である。
【0061】
一般式(1)〜(4)で表される部分構造を以下に示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。これらの部分構造は#で繰り返し単位に連結する。
【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
一般式(1)で表される部分構造が連結する繰り返し単位について説明する。
【0067】
本発明で用いられる繰り返し単位については特に構造の限定はない。ポリマーとしては、例えば、重縮合反応により得られるポリエステル、ポリアミド、ポリイミド類、エチレン性不飽和モノマーの付加重合反応により得られるポリマー、更に重付加反応、付加縮合反応、開環重合により得られるポリマー、また、セルロース、ポリペプチドなどのポリマーはいずれも使用することが出来る。
【0068】
重合反応の中では連鎖的に反応が進行する付加重合反応が好ましく用いられ、重合方法はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれも利用できる。使用可能なモノマー単位には特に制限はなく、通常のラジカル重合またはイオン重合法で重合可能なものであれば、好適に用いることができ、例えば、下記に示すモノマー群(1)〜(8)から独立かつ自由に組み合わせることができる。
【0069】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど
【0070】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど)
【0071】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど
【0072】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど
【0073】
(3e)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、メチレンビスアクリルアミドなど
【0074】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど
(5)スチレンおよびその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど
【0075】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど
【0076】
本発明で用いられる繰り返し単位は、一種類の繰り返し単位からなる単独の重合体であっても、二種類以上の繰り返し単位からなる共重合体であってもよい。
【0077】
以下に一般式(1)で表される部分構造が連結する繰り返し単位の好ましい例を示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0078】
【化15】

【0079】
また、本発明で用いるポリマーの質量平均分子量が小さすぎると、効率よく液粘度を上昇させることができず、一方、分子量が大きすぎると塗布や塗膜物性に支障を生じることがある。ポリマーの質量平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等の公知の測定方法によって求めることができる。本発明中に記載されている質量平均分子量の値は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒テトラヒドロフラン(THF)、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。測定には固形分濃度が0.01〜1質量%、好ましくは0.03〜0.5質量%のTHFに可溶な溶剤の溶液を用い、40℃で測定を行う。このようにして測定して得られる質量平均分子量は、5x10〜1x107が好ましく、1x103〜1x10がより好ましく、2x103〜2x10がもっとも好ましい。
【0080】
一般式(1)〜(4)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマー(以下、「ポリマーP」、または「含フッ素ポリマーP」ともいう)は、アニオン性、カチオン性の化合物も用いることは可能であるが、有機溶剤への溶解性を付与するという観点からは、ノニオン性の化合物であることが好ましい。ここでアニオン性の化合物とはマイナスの電荷をもっているものを、カチオン性の化合物とはプラスの電荷をもっているものをいい、ノニオン性の化合物とは電荷をもたない化合物のことをいう。特に、スルホン酸塩およびアンモニウム塩を含まないことがより好ましく、スルホン酸塩を含まないことが最も好ましい。これらの基を含むと、有機溶剤への溶解性が悪化し、本発明の効果を発現することが難しい。
【0081】
本発明のポリマーPはポリマー鎖の片側の末端に一般式(1)〜(4)で表される部分構造を有していればよいが、両末端に一般式(1)〜(4)で表される部分構造をもっていてもよい。この場合、一種類の一般式(1)〜(4)で表される部分構造をもっていても、二種類以上の一般式(1)〜(4)で表される部分構造をもっていてもよいが、合成適性の観点からは一種類の一般式(1)〜(4)で表される部分構造をもっているものが好ましい。
【0082】
本発明のポリマーPの好ましい例を以下に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【化16】

【0087】
ポリマーPの合成方法としては、末端含フッ素部分構造を有する連鎖移動剤や、開始剤、末端封し剤を用いて重合反応を行なってもよいし、また、末端含フッ素部分構造を持たないポリマーを重合反応により合成した後に、高分子反応を用いて末端含フッ素部分構造を導入することも可能であり、どちらも好ましい方法である。
【0088】
ここで、ラジカル重合による合成方法について説明する。
ラジカル重合開始剤の例としては、ラジカル熱重合開始剤やラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は分解温度以上に加熱することによりラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキシド(アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等)、ケトンパーオキシド(メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等)、ハイドロパーオキシド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等)、ジアルキルパーオキシド(ジーtert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド等)、パーオキシエステル(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバーレート等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾニトリル化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸のナトリウム塩等)、アゾエステル化合物(アゾビスイソ酪酸ジメチル等)、アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等)、環状アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩等)、アゾアミド化合物(2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等)等が挙げられ、一種類を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0089】
本発明で用いるポリマーは、溶液重合、乳化重合、分散重合、懸濁重合など通常の重合反応により得ることができる。これらの方法のうち、溶液重合法および乳化重合法が好ましく用いられる。
これらのポリマー化合物の製造方法は、「高分子科学実験法」(高分子学会編、東京化学同人、1981)などに記載されている。また、溶液重合法については米国特許第3451820号、特開昭62−276548号、特開昭60−218646号に、乳化重合法については、米国特許第4080211号に記載されている。さらに、乳化重合の一般的な方法については以下の成書に詳しい。「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1993))」。
【0090】
乳化重合法は、例えば、水あるいは水と水に混和しうる有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトンなど)との混合溶媒を分散媒とし、分散媒に対して5〜40質量%のモノマー混合物と、モノマーに対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量単位の乳化剤を用い、30〜100℃程度で3〜8時間、攪拌下重合させることにより行われる。分散媒、モノマーの濃度、開始剤量、乳化剤量、反応温度、時間、モノマー添加方法などの条件は使用するモノマーの種類に応じて、適宜設定される。
【0091】
溶液重合法は、例えば、適当な溶媒にモノマー混合物と、モノマーに対して0.05〜5質量%の重合開始剤を用い、0〜200℃程度で3〜48時間、攪拌下重合させることにより行われる。発生したラジカルが失活しないように溶液重合開始前、溶液重合中は不活性ガスによるパージを行うことが好ましい。用いる不活性ガスとしては通常窒素ガスが用いられる。溶媒、モノマーの濃度、開始剤量、反応温度、時間、モノマー添加方法などの条件は使用するモノマーの種類に応じて、適宜設定される。
【0092】
溶液重合法における重合開始剤の例としては、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾニトリル化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸のナトリウム塩等)、アゾエステル化合物(アゾビスイソ酪酸ジメチル等)、アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等)、環状アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩等)、アゾアミド化合物(2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等)等が挙げられる。
また、溶媒としては、通常大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内を有する化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる化合物であることが好ましく、好ましく用いられる溶媒の具体例を示すと、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、N,N−ジメチルホルムアミド、 N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。また、二種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。 より好ましく用いられる溶媒としては、水、エタノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、 N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0093】
ラジカル重合反応を用いる場合、含フッ素部分構造を有した連鎖移動剤やラジカル開始剤を用いてこれらの置換基を末端に導入することが可能である。また、含フッ素部分構造を持たない連鎖移動剤やラジカル開始剤を用いて重合反応を行った後に高分子反応によって末端含フッ素部分構造を導入することが可能である。
【0094】
本発明の化合物は例えばフマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体等を原料にして合成できる。フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体を原料とした場合には、それらの2重結合にマイケル付加反応を行なうことにより合成ができ、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体を原料とした場合には、それらのアミノ基をアミド化することで合成できる。本発明で用いられる含フッ素ポリマーPは例えば、特開2003−114504号公報に記載の方法により合成することができる。
【0095】
本発明の増粘剤は、有機溶剤に添加することで液粘度を上昇させる作用を有する。好ましくは、下記条件(a)を満たすものである。
【0096】
[条件(a)]0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において、溶剤の粘度をηに対する、該溶剤にポリマーPを10質量%以下の濃度で含有させた液の粘度ηの相対粘度η/ηが1.7以上である領域を有する。
ここで用いることができる溶剤としては、所望の効果が得られれば特に限定されないが、好ましくは、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、エタノール、メタノール、クロロホルム、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、およびシクロヘキサノンである。
より好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、シクロヘキサノンであり、最も好ましくはメチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、シクロヘキサノンである。
【0097】
ただし、本発明のポリマーPが溶剤に10質量%溶解しない場合は、溶解する濃度範囲で測定した粘度が上記条件を満たせばよい。
また、本発明のポリマーPを溶剤に10質量%含有した液の粘度が測定装置の測定範囲外となってしまうような場合(例えば、粘度の値が非常に大きい場合)も、濃度を調節して測定できる範囲内となったときの粘度が上記条件を満たせばよい。すなわち、上記条件(a)の粘度条件を10質量%以下の含有量で満たすものは本発明の範囲内である。
【0098】
相対粘度η/ηが1.7以上であれば本発明の範囲内であるが、好ましくは、2.5以上、より好ましくは5以上、最も好ましくは10以上である。本発明の化合物はチキソ性をあわせて有することが多く、せん断速度によっては相対粘度η/ηが1.7以上とならない範囲も存在するが、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において上記条件(a)を満たしていれば問題ない。0.01〜1000s−1の範囲のいずれかのせん断速度において、相対粘度η/ηが5以上であることが好ましく、0.01〜100s−1の範囲のいずれかのせん断速度において、相対粘度η/ηが10以上であることがより好ましい。
【0099】
また、上記条件(a)を10質量%で満たせば本発明の範囲内であるが、3質量%の含有量で上記条件(a)の粘度条件を満たすことが好ましく、2質量%の含有量で上記条件(a)の粘度条件を満たすことがより好ましい。一般に、10質量%以下の低含有量で上記条件(a)を満たせば、溶解する範囲内で、含有量を増加させても条件(a)を満たすものとみなす。
【0100】
上記条件(a)は0〜50℃の範囲内のいずれかの温度で満たせばよいが、10〜30℃の範囲で条件(a)を満たすことが好ましく、25℃で条件(a)を満たすことがより好ましい。
【0101】
本発明のチキソトロピー付与剤は、有機溶剤に含有することでチキソ性を付与する作用を有する。好ましくは、下記条件(b)を満たすものである。
【0102】
[条件(b)]溶剤にポリマーPを10質量%以下の濃度で含有させた液において、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度xにおける粘度η(x1)の、x2/x1≧10であるせん断速度xにおける粘度η(x2)に対する値η(x1)/η(x2)が1.5以上である。
ここで用いることができる溶剤としては、所望の効果が得られれば特に限定されないが、好ましくはトルエン、ヘキサン、イソプロパノール、エタノール、メタノール、クロロホルム、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、シクロヘキサノンである。
より好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、シクロヘキサノンであり、最も好ましくはメチルエチルケトン、2−メチルペンタノン、シクロヘキサノンである。
【0103】
ただし、本発明のポリマーPが溶剤に10質量%溶解しない場合は、溶解する濃度範囲で測定した粘度が上記条件を満たせばよい。
また、本発明のポリマーPを溶剤に10質量%含有した液の粘度が測定装置の測定範囲外となってしまうような場合(例えば、粘度の値が非常に大きい場合)も、濃度を調節して測定できる範囲内となったときの粘度が上記条件を満たせばよい。すなわち、上記条件(b)を10質量%以下の含有量で満たすものは本発明の範囲内である。
【0104】
η(x1)/η(x2)が1.5以上であれば本発明の範囲内であるが、好ましくは、2以上、より好ましくは3以上である。
さらに、0.01〜1000s−1の範囲のいずれかのせん断速度xとx(ただしx2/x1=10)において、η(x1)/η(x2)が2.5以上であることが好ましく、0.01〜100s−1の範囲のいずれかのせん断速度xとx(ただしx2/x1=10)において、η(x1)/η(x2)が2.5以上であることがより好ましい。
【0105】
また、上記条件(b)を10質量%で満たせば本発明の範囲内であるが、3質量%の含有量で上記条件(b)の粘度条件を満たすことが好ましく、2質量%の含有量で上記条件(b)の粘度条件を満たすことがより好ましい。一般に、10質量%以下の低含有量で上記条件(b)を満たせば、溶解する範囲内で、含有量を増加させても条件(b)を満たすものとみなす。
【0106】
また、好ましくは、1000s−1以上のせん断速度において、相対粘度の値が100以下であり、より好ましくは、50以下であり、最も好ましくは、25以下である。
【0107】
上記条件(b)は0〜50℃の範囲内のいずれかの温度で満たせばよいが、10〜30℃の範囲で条件(b)を満たすことが好ましく、25℃で条件(b)を満たすことがより好ましい。
【0108】
なお、粘度の測定には、市販の粘度計はいずれも用いることができるが、本発明中で明記している粘度は、R型粘度計(東機産業製RC−500)またはレオメーター(英弘精機製RS−150)を用いて25℃にて測定したものである。
【0109】
塗布組成物の調製方法について説明する。
乾燥ムラや風ムラを低減し、面状均一性が高い機能性フィルムを得るために、塗布組成物は塗布方式や塗布条件に応じた適切なチキソトロピー特性を付与する必要がある。チキソトロピーとは、高せん断速度下では低粘度、低せん断速度下では高粘度となる性質のことをいい、擬塑性流動特性、構造粘性と同義で用いる。乾燥時(低せん断速度時)に粘度が低すぎると塗布直後の塗布液の流動によって乾燥ムラや風ムラが発生しやすい。また、塗布時(高せん断速度時)に粘度が高すぎるとレベリング能が不足して塗布時にスジが発生しやすい。本発明においては、含フッ素ポリマーPの含有量を調整することで塗布組成物のチキソトロピー特性を調節し、粘度のせん断速度依存性を制御することが可能である。
本発明の含フッ素ポリマーPを塗布組成物に含有して用いる場合には、塗布方式や作製する機能性フィルムの性質に合わせて含有量は適宜調節すればよい。
【0110】
本発明の含フッ素ポリマーPを塗布組成物に含有して用いる場合には、下記条件(c)を満たすことが好ましい。
【0111】
[条件(c)]0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において、塗布組成物よりポリマーPのみを除いた液の粘度η01に対する、ポリマーPを含有した塗布組成物粘度η11の値η11/η01が1.25以上である。
【0112】
η11/η01が1.25以上であれば本発明の範囲内であるが、好ましくは、1.5以上、より好ましくは2以上、最も好ましくは5以上である。本発明の化合物はチキソ性をあわせて有することが多く、せん断速度によっては相対粘度η11/η01が1.25以上とならない範囲も存在するが、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において上記条件(c)を満たしていれば問題ない。0.01〜1000s−1の範囲のいずれかのせん断速度において、相対粘度η11/η01が2以上であることが好ましく、0.01〜100s−1の範囲のいずれかのせん断速度において、相対粘度η11/η01が2以上であることがより好ましい。
【0113】
本発明の含フッ素ポリマーPを塗布組成物に含有して用いる場合には、下記条件(d)を満たすことが好ましい。
【0114】
[条件(d)]ポリマーPを含む塗布組成物において、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度x11における粘度η(x11)の、x21/x11=10であるせん断速度x21における粘度η(x21)に対する値η(x11)/η(x21)が1.25以上である。
【0115】
η(x11)/η(x21)が1.25以上であれば本発明の範囲内であるが、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、最も好ましくは5以上である。さらに、0.01〜1000s−1の範囲のいずれかのせん断速度x11とx21(ただしx21/x11=10)において、η(x11)/η(x21)が2以上であることが好ましく、0.01〜100s−1の範囲のいずれかのせん断速度x11とx21(ただしx21/x11=10)において、η(x11)/η(x21)が2以上であることがより好ましい。
【0116】
上記条件(c)または(d)は実際に塗布組成物を塗布に使用する温度で満たすことが好ましい。
【0117】
塗布組成物中の本発明の含フッ素ポリマーPの含有量には特に制限はないが、通常塗布組成物中に0.01〜10質量%(塗布組成物全体の質量に対する質量%)、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%含有させることができる。また、本発明の含フッ素ポリマーPは1種類のみ含有させても、複数種類含有させても良い。
【0118】
本発明の含フッ素ポリマーPは、25℃において塗布溶剤に対する溶解度が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0119】
本発明の含フッ素ポリマーP含有後の塗布組成物について、1000s−1以上のせん断速度で測定した粘度は、好ましくは0.1〜100mPa sであり、より好ましくは、0.3〜50mPa sであり、もっとも好ましくは0.5〜20mPa sである。
【0120】
本発明の含フッ素ポリマーPを含有する塗布組成物は様々な用途に使うことができる。本発明の含フッ素ポリマーPを含む塗布組成物を塗布することにより製造する機能性フイルムと製造方法について以下に示す。
【0121】
本発明における機能性フィルムとは、光学機能、導電機能、誘電機能、絶縁機能、バリア機能、高強度、耐熱機能などの機能を持ったフィルムを示す。機能性フイルムの種類は特に限定するものではなく、例えば透明ハードコート層、着色層、防眩層、反射防止層、光学補償層などを一つ或いはそれ以上有するフイルムが挙げられる。膜厚、面状の均一性が厳しく要求される防眩層、反射防止層、光学補償層などを有する光学機能フイルムを製造するに当たって本発明の製造方法は有用である。本発明の機能性フイルムを光学フイルムとして用いる場合について更に以下に説明する。光学フィルムとは、光学機能をもったフィルムのことを示し、例えば、反射防止、選択反射、光位相変換、光学補償といった光学機能をもつ層を一つ或いはそれ以上有するフィルムが挙げられる。
【0122】
本発明の機能性フイルムを構成する光学機能層は、上記含フッ素ポリマーPを含有する塗布組成物を調製した後、この塗布組成物を塗布して形成する。含フッ素ポリマーPを含有した塗布組成物は、塗布適性に優れるとともに、均一でムラの無い層を形成することが可能となる。
本発明で形成しうる機能性フィルム層の厚さは特に制限はないが、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは10nm〜50μmである。
本発明の機能性フイルムの成膜後の溶媒種の含量は少なければ少ないほどよいが好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下とする。
【0123】
本発明に係る機能性層を形成するために用いる塗布組成物中に含まれる溶媒種としては有機溶剤でも有機溶剤と水の混合溶剤でも良いが、水の含率は低いことが好ましく、0〜30質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、0〜5質量%がもっとも好ましい。また、塗布組成物中の有機溶剤の含有率は20〜99.5質量%が好ましく、25〜99質量%がより好ましく、30〜99質量%がもっとも好ましい。
【0124】
前記塗布組成物中に含まれる溶媒組成としては、単独および混合のいずれでもよく、全溶媒中、沸点が120℃以下の溶媒が50〜100質量%を占めることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは100質量%である。また、さらに好ましくは、全溶媒中、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100質量%を占めることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、もっとも好ましくは100質量%である。沸点が100℃以下の溶媒が50質量%以下であると、乾燥速度が非常に遅くなり、塗布面状が悪化し、塗布膜厚にもムラが生じるため、反射率などの光学特性も悪化するおそれがあり好ましいものではない。本発明では、沸点が100℃以下の溶媒を多く含む塗布組成物を用いる事により、この問題を解決することができる。
【0125】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0126】
沸点が100℃以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBK、115.9)、1−ブタノール(117.7)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノン、である。
【0127】
塗布組成物中に含まれる成分についてさらに説明する。
【0128】
本発明の含フッ素ポリマーPを含む塗布組成物は、前述の成分の他に、特に制限無く該含フッ素化合物以外の成分を含有することができる。即ち、飽和炭化水素類(n−ヘキサン、n−オクタン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、クロロベンゼンなど)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなど)、アルコール類(メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリノンなど)、ハロゲン系溶剤(1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム、パーフルオロオクタンなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)等の有機溶剤、水などを含有することができる。
【0129】
また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂類、有機・無機顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、棒状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物等の液晶化合物、単官能或いは多官能の重合性化合物、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフロロエチレン)、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート等の有機微粉末、感光剤、重合開始剤、耐光性向上剤、耐候性向上剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、消泡剤、粘度調整剤、艶調整剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等の各種添加剤等を、目的に応じて選択した各種成分を使用することが可能である。
【0130】
これらのうち、特に重要な成分は、(1)光学的異方性を発現させるために用いられる液晶性化合物(棒状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物、高分子液晶化合物など)、および(2)屈折率を調整するための有機および無機微粒子分散物(二酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)である。本発明の含フッ素ポリマーPを含有した塗布組成物は(1)または(2)のいずれかの成分を含むことが好ましい。以下に本発明で好ましく用いられる液晶性化合物および有機および無機微粒子分散物について説明する。
【0131】
液晶性化合物について説明する。本発明に用いられる液晶性化合物の基本骨格は多くの文献に記載されており、例えば松本正一、角田市良共著「液晶の基礎と応用(工業調査会1992年刊)」、日本化学会編、季刊化学総説、No.22、「液晶の化学(1994年刊)」を参考にする事ができ、例えば棒状液晶化合物、コレステリック液晶化合物およびディスコティック液晶化合物が挙げられる。
【0132】
棒状液晶化合物の具体的化合物としては、季刊化学総説 第22巻 液晶の化学(1994年)日本化学会編の第4章、第7章,第10章、および液晶デバイスハンドブック 日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載の化合物が挙げられる。例えば、ビフェニル誘導体、安息香酸フェニルエステル誘導体、ベンジリデンアニリン誘導体、アゾベンゼン誘導体、アゾキシベンゼン誘導体、スチルベン誘導体および、それらのベンゼン環が飽和になったものあるいは複素環に置き換わったものが挙げられる。
【0133】
本発明のディスコティック液晶性化合物とは、ディスコティック液晶相を示し得る化合物であり、円盤状のコア部とそれを中心として放射状に伸びる側鎖部分とから構成されている。ディスコティック液晶相は、円盤状分子の中心コアが分子間力で柱状に積み重なった柱状相(columnar phase)と、円板状分子が乱雑に凝集したディスコティックネマティック相と、カイラルディスコティックネマティック相に大別できることが知られている。
【0134】
具体的化合物として挙げると、例えば日本化学会編、季刊化学総説No.22「液晶の化学」第5章、第10章2節(1994年刊 学会出版センター)、W.H.de jeuの研究報告、Physical propertiesof liquid crystalline materials(1980 by Gordon and Breach,Science Publishers)C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、111頁(1981年)、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)、J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhang、J.S.Mooreらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.,116巻、2655頁(1994年)に記載の母核化合物の誘導体が挙げられる。
【0135】
例えば、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体およびフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体が挙げられる。さらに、日本化学会編、“化学総説No.15 新しい芳香族の化学”(1977年 東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。また好ましく用いられる具体的化合物の構造は、特開2004−198511号公報の段落番号[0065]〜[0080]にも記載されている。
【0136】
これらを分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造によりディスコティック液晶化合物が形成される。母核化合物として好ましくは、ディスコティックネマティック(ND )相を形成するものであり、特に好ましくはトリフェニレンおよびトルキセンが挙げられる。側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中にアリール基、複素環基を含んでいても良い。また、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165〜195頁(アメリカ化学会)に記載されている置換基で置換されていてもよく、代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していても良い。
【0137】
液晶性化合物の配向状態は、長期間または温度、湿度や機械的変形に対し,安定に維持するのが困難な場合が多い。したがって、液晶性化合物としては、十分な硬化性を確保し、層の耐熱性を向上する観点から、分子内に重合性基あるいは架橋性基を有する液晶性化合物が好ましい。重合性基としては、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリニジル基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
【0138】
次に有機および無機微粒子分散物について説明する。本発明で用いられる有機または無機微粒子分散物は、好ましくは、屈折率を調整するためのものであり、これらを含む塗布組成物を用いて、防眩性反射防止フイルムを作製することができる。以下では、防眩性反射防止フイルムを作製する際に用いられる塗布組成物中の有機または無機微粒子分散物の具体例を示すが、本発明で用いることのできる微粒子分散物はこれらに限定されるものではない。
【0139】
防眩性反射防止フイルムは透明支持体上に防眩性ハードコート層を有し、さらにその上の低屈折率層を有してなるが、必要に応じ、防眩性ハードコート層の下層に平滑なハードコート層を設けることができる。防眩性反射防止フイルムのハードコート層には、高屈折率を有する金属酸化物超微粒子を添加して用いられる。
【0140】
高屈折率を有する金属酸化物超微粒子の例として、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなる粒径100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子を挙げることができる。微粒子の好ましい例としては、ZrO2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrO2が好ましく用いられる。
【0141】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与と防眩性ハードコート層の干渉による反射率悪化防止、色むら防止の目的で、樹脂または無機化合物の粒子が用いられ、例えば、シリカ粒子やTiO2粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、などが好ましく用いられる。平均粒径は1.0乃至10.0μmが好ましく、1.5乃至7.0μmがより好ましい。また、粒子の形状としては、真球、不定形、のいずれも使用できる。異なる2種以上の粒子を併用して用いてもよい。
【0142】
一方、低屈折率層に用いられる無機微粒子としては非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物が特に好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いても良い。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。該無機微粒子の平均粒径は0.001乃至0.2μmであることが好ましく、0.005乃至0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。該無機微粒子は表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。該無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。
【0143】
これらの素材を含む膜を形成するために、バインダーとしてポリマーや架橋性基を含有する化合物を添加し、塗布および乾燥後に光、熱、電子線などにより架橋反応を起こさせても良い。用途にもよるが、膜は強度が要求される場合が多く、一般にバインダーとして多官能モノマーや架橋性基を含むポリマーを用いることが多い。先に述べた機能を発現するための素材が架橋性基を有していてバインダーを兼ねていても良い。
【0144】
多官能モノマー中の重合性基としては、エチレン性不飽和基((メタ)アクリル酸誘導体、ビニルエーテル誘導体、スチレン誘導体など)、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタン基など)等が挙げられる。
【0145】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0146】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0147】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0148】
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名イルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0149】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0150】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0151】
本発明では特に塗布組成物のポットライフの観点から、放射線の作用によりラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0152】
また、1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物も好ましく使用される。このような硬化剤としては、1分子中に複数のグリシジル基または3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物が良く知られており、本発明ではいずれも有用であるが、保存時の液安定性の観点から特にグリシジル基を有する硬化剤が好ましい。また屈折率の観点からは、特に脂肪族のものが好ましい。エポキシ硬化剤としては官能基密度が高く、かつ分子量が高すぎずある程度の運動性があり硬化効率が良いという観点からグリシジル基3〜10個程度を有するものが特に好ましい。
【0153】
上記1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物としては、例えば市販のものでは、デナコールEX314,同411,同421,同521,同611,同612等(以上ナガセ化成工業株式会社製 いずれも商品名)、セロキサイド、GT301,同401等(以上ダイセル工業株式会社製 いずれも商品名)等を挙げることができる。
【0154】
本発明において上記1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物を硬化剤として用いる時には、塗布組成物中に硬化触媒を配合することができる。該硬化触媒としては、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のプロトン酸、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール等の3級アミン、2−メチルー4−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トルエンスルホン酸シクロへキシルエステル、トルエンスルホン酸イソプロピルエステル等の加熱により分解してプロトン酸を発生する化合物、あるいは以下に記載する放射線の作用により酸触媒を発生する各種化合物を挙げることができるが本発明では特に皮膜形成用組成物のポットライフの観点から、放射線の作用により酸を発生する化合物が好ましい。
【0155】
放射線の作用により酸を発生する化合物としては、例えば有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号等に種々の例が記載されておりこれら公知の化合物を使用することができる。具体的には、RSO−(Rはアルキル基、アリール基を表す)、AsF6−、SbF6−、PF6−、BF−等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やS−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。これらの放射線の作用により、酸を発生する化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0156】
本発明の光学フイルムについてさらに詳しく説明する。
【0157】
本発明の光学フイルムは液晶表示装置用の光学補償層を設けて光学補償フイルムとして用いることができる。光学補償層は配向膜を塗布、適宜配向処理した後に液晶化合物を塗布、配向させることにより製造することができる。光学補償フイルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明の光学補償フイルムは、以下に示すような様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。更に、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0158】
本発明の光学補償フイルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、および特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143やJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0159】
本発明の光学補償フイルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0160】
本発明の光学補償フイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。
【0161】
VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。本発明の光学補償フイルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0162】
本発明のセルロースアシレートフイルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。本発明のセルロースアシレートフイルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0163】
上記光学補償フイルムにさらに反射防止層、防眩性層、λ/4層、λ/2層として機能を付与してもよい。
【0164】
本発明の光学フイルムには、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。
【0165】
基材面に(中屈折層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚光の波長に対しある値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出し得る。本発明の光学フイルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施すことによって、透明樹脂フイルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。カール防止層は基材の防眩層又は反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは、例えば透明樹脂フイルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、又逆面にカール防止加工を塗設するような態様が挙げられる。
【0166】
本発明の光学フイルムには、透明ハードコート層を設けることができる。透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂或いは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151110号公報に記載されている。
【0167】
本発明の光学フィルムの透明支持体としては、プラスチックフイルムを用いることが好ましい。プラスチックフイルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製 商品名TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0168】
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、特開平7−11055号公報等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフイルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0169】
本発明の機能性フイルムは、以下の方法で各層を透明支持体上に塗設し製造することができるが、この方法に制限されない。
【0170】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、この塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法およびエクストルージョンコート法が好ましく、ワイヤーバーコート法およびエクストルージョンコート法がさらに好ましい。その後、光照射あるいは加熱して、機能性層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより機能性層が形成される。ここで、必要であれば他の機能性層この上に同様な方法で塗布してもよい。
【実施例】
【0171】
本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【0172】
[合成例1]
以下のスキームに従い例示化合物P−12を合成した。
【0173】
【化17】

【0174】
チオリンゴ酸6.0g、パーフルオロオクチルエタノール(40.84g)、p−トルエンスルホン酸(1.52g)をトルエン200mlに懸濁させ、この混合物を、ディーンシュタルク装置によって生成する水を除去しながら12時間加熱還流した。その後、室温に冷却し、メタノール150mlを添加し撹拌したのち、析出した結晶を濾取した。この結晶を乾燥させ、(BM−3)を36.7g白色固体として得た。
【0175】
例示化合物P−12の合成
攪拌装置、モノマー供給槽、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた200mlの三口フラスコに、(BM−3)5.20g、(CoM−16)9.90g、MEK28.6gを加え、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。次にこの反応溶液にアゾビスイソ酪酸ジメチル0.72gをMEK6.60gに溶解させた液を1時間おきに3回に分けて添加した。添加終了後、4時間加熱攪拌を続けた。その後、室温に冷却し、ゆっくりとn−ヘキサン200mlに添加した。減圧ろ過して、例示化合物P−12を白色固体として12.6g得た。テトラヒドロフラン溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定では、ポリスチレン換算の質量平均分子量は4.0x103であった。
【0176】
実施例1
[液粘度の測定]
下記試料101−110の溶液を作成し、R型粘度計(東機産業製RC−500)を用いて、25℃にて溶液粘度を測定した。表101に、溶媒の粘度をηとして、相対粘度η/ηを算出した結果を示した。なお、表中の溶媒のMEKはメチルエチルケトン(せん断速度95.8s−1におけるη=0.51mPa・s)、MeOHはメタノール(せん断速度95.8s−1におけるη=0.77mPa・s)を示す。
本発明の化合物はいずれのせん断速度においても相対粘度が1以上になっており、増粘していることがわかる。また、0.01〜5000s−1の範囲内に相対粘度が2.5以上になっているせん断速度の領域が存在し、本発明の条件(a)を満たしていることがわかる。
また、チキソトロピーをあらわす値として、η(95.8)/η(958)=η(95.8s−1での粘度)/η(958s−1での粘度)を算出した結果を示した。本発明の化合物を添加することでこの値は1以上になっており、チキソ性が発現していることがわかる。さらに、η(95.8)/η(958)が1.5以上になっており、本発明の条件(b)を満たしていることがわかる。
比較化合物(REF1)(REF2)は有機溶剤への溶解性が不足しており、いずれも増粘効果もチキソトロピーも持たないため、好ましくないことがわかる。
【0177】
【化18】

【0178】
【表4】

【0179】
本発明の条件(a)、(b)を満たしている試料について、レオメーター(英弘精機製RS−150)を用いて、さらに詳細に粘度を調べた。表102に、1s−1,10s−1,100s−1における粘度より算出した相対粘度の値を、さらに、チキソトロピーをあらわす値としてη(1)/η(10)=η(1s−1での粘度)/η(10s−1での粘度)、η(10)/η(100)=η(10s−1での粘度)/η(100s−1での粘度)、を示した。表よりわかるように、よりせん断速度の小さい領域において、相対粘度は上昇し、また、チキソトロピーも大きくなっている。
なお、比較化合物(REF1)(REF2)はいずれも測定できるすべてのせん断速度の領域で、本装置の測定範囲以下の粘度であった。
【0180】
【表5】

【0181】
実施例2
[機能性フイルムの作製]
(光学異方性フイルムの作製)
トリアセチルセルロース(TAC)フイルム上に下記の組成の配向膜塗布液を#14のワ
イヤーバーコーターで24ml/mで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温
風で150秒乾燥する。その後、ラビング処理を実施することで配向膜を作成する。
【0182】
(配向膜塗布液組成)
下記式の変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド 2質量部
クエン酸 0.08質量部
クエン酸モノエチルエステル 0.29質量部
クエン酸ジエチルエステル 0.27質量部
クエン酸トリエチルエステル 0.05質量部
【0183】
【化19】

【0184】
得られた配向膜に室温にて、下記塗布組成物201を塗布し、乾燥後130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させる。次に100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させ、その後室温まで放冷することにより、光学異方性フイルム201を得る。
(塗布組成物201)
特開平7−306317号公報記載の例示化合物(TP−53)
(ディスコチック液晶化合物) 41.01g
V#360(大阪有機化学(株)製)(多官能性モノマー)
4.06g
イルガキュア−907(チバガイギー社製)(光重合開始剤)
1.35g
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)(増感剤)
0.45g
2−ブタノン 88g
【0185】
以下の表201のとおり含フッ素ポリマーPを添加し、その添加量だけ2−ブタノンの量を減らした以外は塗布組成物201と全く同様にして塗布組成物202〜209を作製する。これらを上記の光学異方性フイルム201と同様の方法で塗布、処理することにより、光学異方性フイルム202〜209を得る。
【0186】
【表6】

【0187】
得られた光学異方性フイルムの面状を二枚の偏光板を介して目視で調べ、スジやムラの
程度を以下の三段階で評価する。
○;ほとんどスジまたはムラは見られない
△;注意深く見ると部分的にスジまたはムラが見られる
×;スジまたはムラが多い
【0188】
上記試料中の本発明の全試料(光学異方性フイルム202〜206)において、塗布面状ムラが改良され、塗布液に本発明のポリマーを含有する効果が確認できる。また、光学異方性フイルム209より、PEMA(ポリエチルメタクリレート)を用いた場合、本発明の試料と同程度の粘度に調整することで乾燥時のムラを抑制しようとすると、塗布スジが多く発生してしまい好ましくないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む有機溶剤系増粘剤。
【化1】

式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Zは(t+1)価の連結基を表し、#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。tは2〜6までの整数である。
【請求項2】
下記一般式(1)で表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む有機溶剤系チキソトロピー付与剤。
【化2】

式中、Rは、炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Zは(t+1)価の連結基を表し、#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。tは2〜6までの整数である。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1または2記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【化3】

式中、R1およびRはそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表すが、R1
よびR2の少なくとも1つは少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を
表す。R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、T、TおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【化4】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数4以上の少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表し、kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤。
【化5】

式中、AおよびAはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。n11およびn21はそれぞれ独立に0〜6の整数を、n12およびn22はそれぞれ独立に3〜12の整数を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。kは0または1である。#はポリマーの繰り返し単位に連結する位置を表す。
【請求項6】
前記繰り返し単位がエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1、3、4、または5記載の有機溶剤系増粘剤。
【請求項7】
前記繰り返し単位がエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の有機溶剤系チキソトロピー剤。
【請求項8】
請求項1、3、4、5、または6記載の有機溶剤系増粘剤を含む塗布組成物。
【請求項9】
請求項2、3、4、5、または7記載の有機溶剤系チキソトロピー剤を含む塗布組成物。
【請求項10】
前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーの含有量(塗布組成物全体の質量に対する質量%)が塗布組成物全体の質量に対して0.01質量%〜10.0質量%であることを特徴とする請求項8または9記載の塗布組成物。
【請求項11】
前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを少なくとも1種含み、下記条件(c)を満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[条件(c)]0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度において、塗布組成物より前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーのみを除いた液の粘度η01に対する、前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含有した塗布組成物粘度η11の値η11/η01が1.25以上である。
【請求項12】
前記一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを少なくとも1種含み、下記条件(d)を満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[条件(d)]一般式(1)〜(4)のいずれか表される部分構造を繰り返し単位の末端に有するポリマーを含む塗布組成物において、0.01〜5000s−1の範囲内のいずれかのせん断速度x11における粘度η(x11)の、x21/x11=10であるせん断速度x21における粘度η(x21)に対する値η(x11)/η(x21)が1.25以上である。
【請求項13】
水の含率が30質量%以下であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の塗布組成物。
【請求項14】
塗布組成物に液晶性化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の塗布組成物。
【請求項15】
塗布組成物が有機および/または無機微粒子分散物を含むことを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の塗布組成物。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された機能性フイルム。
【請求項17】
請求項8〜15のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された光学フイルム。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機溶剤系増粘剤またはチキソトロピー付与剤を含有することで有機溶剤系において、液を増粘またはチキソトロピーを付与する方法。

【公開番号】特開2006−96795(P2006−96795A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281361(P2004−281361)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】