説明

有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理方法並びにそのシステム

【課題】原料を選択せずに様々な原料が混在したまま炭素素材及びその他の副成物を回収することができ、回収後の炭素素材及びその他の副成物の有効利用を可能にする。
【解決手段】炭素化した原料を収納している収納機器から炭素化物を回収し、回収した炭素化物に混在している金属やその他の物質を破砕分離し、破砕分離によって発生する超微粉炭素化物を回収する工程(後処理工程c)と、該工程(後処理工程c)で発生する分解ガスを保温管理導管によって気液回収部Dへ導き、間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する工程(気液回収工程d)と、気液回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用や液化回収して他所で利用することができるように加工する工程(残存ガス回収工程e)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の炭素素材を製造する原料である原油やプラスチックに頼らず、自然界に存在する有機物から効率的に炭素素材及びその他の副成物の回収を可能にした回収処理方法並びにそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の有機物による炭素素材の製造装置として、例えば特許文献1に開示されているように、加熱分解部を相互に分離可能な独立した複数個の加熱分解室により構成することにより、修理などの際はその加熱分解室毎に交換をするだけで良く、修理による時間の浪費を無くして素早く対応することができ、また、設置稼働後において、需要に応じて作業能力を増減させる場合は、この加熱分解室部の増減を行うだけで対応することができるものとした炭素素材の製造装置なるものが存在する。
【0003】
更に、特許文献2に開示されているように、炭素素材の連続式製造装置を、それぞれ一つずつの予備室、予備加熱室、加熱分解室、3つの組成分離室、2つの冷却室及び1つの冷却予備室とから構成し、原料に塩素を含む高分子化合物が多く含まれているために加熱分解に要する時間が長くなったときには、加熱分解室を増加させ、また、原料に水分が多く含まれているため予備加熱に長い時間を要するときには加熱分解室を一つ予備加熱用に用途変更するものとした炭素素材の連続式製造装置なるものが存在する。
【0004】
また、特許文献3に開示されているように、処理物を熱分解する前の処理が行われる複数の炭化前処理室と、処理物を加熱して熱分解する炭化室と、処理物を熱分解した後の処理が行われる複数の炭化後処理室と、直列に並ぶ前記各炭化前処理室と前記炭化室と前記各炭化後処理室をそれぞれ閉塞する遮断扉と、この遮断扉を開閉して処理物を搬送する搬送手段と、前記各炭化前処理室と前記炭化室と前記各炭化後処理室から排出されるガスを燃焼させて外部に排出する第一、第二消臭消煙装置とを備え、前記炭化室に隣接しない前記炭化前処理室と前記炭化室に隣接しない前記炭化後処理室とから排出されるガスを集めて前記第一消臭消煙装置に導く第一排気通路と、前記炭化室と前記炭化室に隣接する前記炭化前処理室と前記炭化室に隣接する前記炭化後処理室とから排出されるガスを集めて前記第二消臭消煙装置に導く第二排気通路とを備えて成る炭素化装置なるものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3946292号公報
【特許文献2】特開2003−105340号公報
【特許文献3】特開2008−222901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、炭素素材を製造する場合、製造する炭素素材の均一化を図るために原料を吟味し同一原料にする必要があった。更に、その製造工程において可燃性ガスが発生し、爆発や発火や粉塵爆発等が発生する虞があり、非常に危険性の高い装置として取扱し、且つ管理しなければならなかった。
【0007】
また、上記した特許文献1乃至3の場合では、原料の投入方法や量、又は質によって加熱分解時間が著しく変わるため、その対処方法は加熱分解室、又は炭化室の増減によって対処しなくてはならなかった。
【0008】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、原料を選択しなくても良く、様々な原料が混在したまま炭素素材及びその他の副成物を回収することができ、爆発や発火等の危険性が無く、加熱時間の一定時間化と短縮とを実現でき、炭素素材の収率も従来の方法より向上し、こまめな自動制御を行うことでランニングコストの低減が図れると同時に、回収後の炭素素材及びその他の副成物の有効利用を可能にした有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理方法並びにそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理方法にあっては、
炭素化された原料が収納されている収納機器から炭素化物を回収し、回収された炭素化物に混在している金属やその他の物質を破砕分離し、破砕分離によって発生する超微粉炭素化物を回収する工程(後処理工程c)と、
該工程(後処理工程c)で発生する分解ガスを保温管理導管によって気液回収部Dへ導き、間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する工程(気液回収工程d)と、
気液回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用及び/又は液化回収して他所で利用することができるように加工する工程(残存ガス回収工程e)とを備えて成ることを特徴とする。
【0010】
気液回収部Dは、水蒸気を含む分解ガスが50℃以下となるよう冷却温度が制御されるものとした。
【0011】
一方、本発明に係る有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理システムにあっては、
炭素化された原料が収納されている収納機器から炭素化物を取り出すための炭素化物回収システム、回収された炭素化物に混在している金属やその他の物質を分離する破砕分離システム及び破砕分離工程で発生する超微粉炭素化物を回収する微粉炭回収システムとで構成された後処理部Cと、
冷却時に発生する分解ガスを気液回収システムへ導くための保温管理導管システム及び間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する液化物回収システムとで構成された気液回収部Dと、
気液回収システムで回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用及び/又は液化回収して他所で利用することができるように加工する回収改質システムとで構成された残存ガス回収部Eとから成ることを特徴とする。
【0012】
後処理部C全体をドーム状に覆いを付けると共に、後処理工程c毎にも覆いを付け、最頂部に吸引廃風装置を取り付け、各覆い毎の吸引廃風装置には湿式のフィルタを取り付けると共に、静電気等の発生を防止するシステムを整備してなるものとした。
【0013】
保温管理導管システムは、水蒸気を含む分解ガスを気液回収システムへ導くための導管に対し保温及び加熱を行うと同時に、導管の後方に向かい傾斜を付与してなるものとした。
【0014】
液化物回収システムは、圧力調整のための負圧となった場合に窒素ガス注入と逆止弁の閉鎖を同時に行えるような制御機構を施したバッファタンクを整備してなるものとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原料を選択しなくても良く、様々な原料が混在したまま炭素素材及びその他の副成物を回収することができ、爆発や発火等の危険性が無く、加熱時間の一定時間化を実現でき、炭素素材の収率も従来の方法より向上し、こまめな自動制御を行うことでランニングコストの低減が図れると同時に、回収後の炭素素材及びその他の副成物の有効利用を可能にした。例えば、炭素素材の回収、ナフサ・重油等の回収、木酢・竹酢・草酢等の回収、非鉄・金属類の回収、レアメタルの回収、その他の副成物の回収、及びそれらの有効利用が可能となり、また発生するガスの処理、ゴミ汚水の処理も同時に行える。
【0016】
また、気液回収部Dは、水蒸気を含む分解ガスが50℃以下になるよう冷却温度が制御されるので、分解ガスを可燃性ガスとして回収することができる。
【0017】
後処理部C全体をドーム状に覆いを付けると共に、後処理工程c毎にも覆いを付け、最頂部に吸引廃風装置を取り付け、各覆い毎の吸引廃風装置には湿式のフィルタを取り付けると共に、静電気等の発生を防止するシステムを整備したので、粉塵爆発による事故を防止することができる。
【0018】
保温管理導管システムは、水蒸気を含む分解ガスを気液回収システムへ導くための導管に対し保温及び加熱を行うと同時に、導管の後方に向かい傾斜を付与して成るので、導管を接続室内と同温度とすることができ、接続室内で発生した水蒸気を含む分解ガスが導管内で液化及び固化するのを防止することができる。特に、保温加熱を怠った場合は導管がその液化物及び固化物により閉塞され、ガスの逆流が起き危険な事態となる。また、導管の後方に向かい傾斜を付けることで、水蒸気を含む分解ガスが液化或いは固化した場合に接続室内に逆流し、流れ込んで危険な状態となることを防止することができる。
【0019】
液化物回収システムは、圧力調整のための負圧となった場合に窒素ガス注入と逆止弁の閉鎖を同時に行えるような制御機構を施したバッファタンクを整備したので、水蒸気及び分解ガスの残存ガスがより負圧の大きい場所へと逆流するのを防止することができる。すなわち、水蒸気を含む分解ガスは、各種分解ガスによってそれぞれ冷却による体積の収縮率が違うこと並びに体積の収縮により配管内が負圧になって外気、他室の水蒸気及び分解ガスの残存ガスがより負圧の大きい場所へと逆流する虞があるため、配管は全て個々に整備し、圧力調整のための負圧となった場合に窒素ガス注入と逆止弁の閉鎖とを同時に行えるように制御機構を施したバッファタンクを整備することでこの問題を容易に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するための系統の一形態を示す構成図である。
【図2】同じく説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、その製造工程において従来の酸化による製造とは異なり、無酸化により炭素素材を製造可能とし、爆発及び異常発火等の事故を全く生じさせないように常に安全性と経済性とを求めながら炭素素材の製造量の増量を重視した製造方法としている。
【0023】
すなわち、本発明に係る有機物による炭素素材製造システムは、図1及び図2に示すように、前処理部A、炭素化部B、後処理部C、気液回収部D、残存ガス回収部Eの5つの目的別の構造部分によって概ね構成されている。これらシステム構成は、各室及び各部所にセンサを設置し、モニターしながら各種制御を全自動で行っている。
【0024】
また、本システムの各工程における稼働及び作動、加温、温度制御等は全て電力を利用しており、均一な炭素素材が製造可能で、分解時に発生する分解ガスの総量も従来の方式よりはるかに少なくて済み、大気放出のガスも著しく少なくでき、しかも対応機器を装備することによりガスを全く排出しない方式とすることも可能である。
【0025】
前処理部Aは、原料に対して熱分解させるために必要な最適の大きさに揃えるための破砕システムと、破砕された原料に対して均一に熱が伝わって加熱分解時間を統一するために行う圧縮成型システムと、原料に熱を均等に伝えながら搬送するための収納機器システム及び収納機器Pに収納された原料の中の水分のみを除去する水分除去室とで構成される。
【0026】
炭素化部Bは、プラスチック等の高分子化合物を分解する低温分解室と、原料を炭素原料化する炭素化室と、後部素材冷却部内が高温の収納機器Pと高温の炭素素材を受け入れることにより急激な熱膨張や内気圧の急激な変化を起こすことを調整する温圧調整室並びに炭素化部Bにおいて原料化された素材の酸化反応及び還元反応が起きない温度まで低下させることを目的とした素材冷却室とで構成される。
【0027】
後処理部Cは、炭素化された原料が収納されている収納機器Pから炭素化物を取り出すための炭素化物回収システムと、回収された炭素化物に混在している金属やその他の物質を分離する破砕分離システム及び破砕分離工程で発生する超微粉炭素化物を回収する微粉炭回収システムとで構成される。
【0028】
気液回収部Dは、前処理部Aと炭素化部B及び後処理部Cの冷却室で発生する分解ガスを気液回収システムへ導くための保温管理導管システム並びに間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する液化物回収システムとで構成される。
【0029】
残存ガス回収部Eは、気液回収システムで回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用及び/又は液化回収して他所で利用することができるように加工する回収改質システムで構成される。
【0030】
なお、上記各部は単独でもその性能は確保され、作業効率や熱エネルギーの効率的利用及び設置場所の効率的利用によって各部を連結することもできる。
【実施例1】
【0031】
次に、上記した各部のシステム構成の更に具体的な構成、及びその構成に基づく炭素素材の具体的な製造方法(動作)に関する実施例について詳細に説明する。
【0032】
(前処理部A)
原料を破砕機によって裁断し、磁気力による大まかな選別を施して金属を除去した後、第1、第2、第3、第4の4組の対面式ローラで徐々にプレスをかけ圧縮成型する。これら4組のローラは、第1から徐々にプレス厚を狭め、第4のローラによるプレスでは大凡30mm厚とし、原料表面に無数の凹みを付ける。その圧縮により原材料に対して50%以下の体積とすることができる。その後、収納機器付属のトレーの大きさに合わせ、適宜長さに裁断し、トレーに収納する。
【0033】
原料の厚さは最大30mmを超えないこととする。その厚さの基準は実験によって求められたものであって、原料とする材料を大きなコンテナにそのまま投入し、窒素充満状態のもとで加熱した場合、表面より50mm程度が炭化し、その炭化したものが断熱材となり、その後の炭化は進まないことが確認されている。本システムで原料の厚さを30mmとしたことは、圧縮してトレーに収納した場合に、厚さがリバウンドすることを考慮したものである。
【0034】
また、前処理部Aにおいて、施設が大規模な場合には、本発明の炭素素材製造システムのラインが複数設置されることになり、被処理物である原材料をある程度事前に区分けして圧縮成型する方が合理的なことがある。このとき、前処理部A段階において原材料を区分けすることが有効となる。例えば、1のラインは原料にプラスチックが大部分の場合、2のラインはプラスチックとその他の有機物が半々の場合、3のラインは有機物が大部分の場合、など目視で判断し、始業時にその作動形態にあったラインを指示することにより各処理部が連動して作業が行われるようにする。
【0035】
このように原料物の成型後の厚さを30mmとし、成型後の周囲表面に凹みを付けることにより材料に対して均等な加熱と加熱時間の短縮が可能となり、ランニングコストの削減が可能となる。更に、水分除去のためにトレーQを収納した収納機器Pを乾燥室により、水分交換による除湿を行うことで、乾燥室を設置するためのイニシャルコストが必要となるが、素材製造量が大量の場合は極めて有効となる。水分交換の場合、ランニングコストは実験で水分1リットルの除湿に対する費用は凡そ4円程度であった。
【0036】
前処理部Aの一部と炭素化部Bの内部全体とでは、還元雰囲気や酸化雰囲気となった場合に原材料から想定外の物質が発生することが予想されるため、各所に酸素濃度計や各種ガス検知システムを整備し、還元や酸化の雰囲気にならないよう窒素発生装置Nにより完全窒素雰囲気としている(図2参照)。この使用窒素は大気中から抽出しているもので非常に安定した性質がある。原料収納機器Pが装置内部に収容される場合、水分除去室の入口部には内部に存在する臭気や水蒸気等のガスが外部大気中に拡散されることを防ぐ目的で内外隔室を1室設ける。内外隔室と水分除去室との境界には、内外隔室に所属する室内の密閉精度を確保するために熱による膨張率の影響が少ない鋳造製の隔壁と該隔壁を隔壁受けに圧着させるための機器とを装備する。該隔壁は自重によって密閉度を確保する目的により水分除去室側に向かって傾斜が付されており、内外隔室側は機械加工により研磨する。入口側にも内外隔室内の機密性を確保するために断熱構造を有する上下可動式の扉が設けられる。
【0037】
(前処理部A内の水分除去室)
ここでは室内温度を80℃〜210℃の範囲で加熱を行う。80℃は原料の中にアルコールが存在した場合にそのアルコールが蒸発する最低の温度である。また、210℃は材料に混入していると想定されるプラスチック類の熱分解が始まる温度よりも低い限界温度である。そのため、設定温度を210℃とする。但し、水分除去室では材料が水分含有率15%以下となるような水分除去は行わない。室内には、発生すると想定される水分や水道水などに含まれる塩素の浸み込みを防止し、正常な管理の下で加熱するためにガラスや金属により特別に密閉された発熱体を備える。各水分除去室には水分除去室毎に内外隔室と同様の隔壁を整備し、隔壁圧着機器は前室用として装備する。各水分除去室の隔壁傾斜は後部室に向い付けられる。水分除去室は3室設置する。全ての水分除去室の温度管理は必要温度に達した時には温度センサにより通電を中止し、温度変化をモニターし、常に必要温度を確保すると共に、必要温度以下となった場合にのみ通電によって加温する制御方式を採用している。
【0038】
(炭素化部B内の低温分解室)
プラスチック等の高分子化合物を分解ガス化する低温分解室であり、室内温度を210℃〜320℃の範囲で加熱を行う。210℃はその温度以上でプラスチックの分解が始まり、340℃では材料に混入が想定されるポリスチレンが引火する温度であるため、設定温度を320℃に設定する。室内にはプラスチック類が分解する場合に発生する分解ガスの浸み込みの無いガラスや金属で特別に密閉された発熱体を備える。水分除去室において水分含有率15%を残余させることは、材料に混入していると想定される塩素含有プラスチックが分解されたときに同時に発生する塩素を塩化水素として回収除去のために必要なものである。低温分解室は3室整備を基本とし、高分子化合物が多量の場合は炭素化室の一部をそれに充てることも可能な構造とする。低温分解室毎に前室同様の隔壁が設置されるが、炭素化室との境界の隔壁はプラスチック類の熱分解が急激に始まり、内気圧が上昇しやすくなるため、隔壁の傾斜は低温分解室側となる。全ての低温分解室の温度管理は温度センサによりモニターし、必要温度に達した時には通電を中止し、温度変化をモニターし、常に必要温度を確保すると共に、必要温度以下となった場合にのみ通電によって加温する制御方式を採る。
【0039】
(炭素化部B内の炭素化室)
水分及び高分子化合物の除去後の原料を固定炭素とその他の組成に分離する炭素化室であり、室内温度は410℃〜530℃の範囲で加熱を行う。410℃は材料内の含有有機物が炭素化分解する最低温度であり、530℃は有機物が分解されるときに発生すると想定される一酸化炭素や炭化水素系ガスを含む可燃性ガスの引火限界温度である。有機物は通常の炭化の場合410℃で炭化が始まり、備長炭などは1000℃を超えた温度で処理されるが、本システムは炭素化原料を製造する目的のため、設定温度を530℃とする。炭素化室は4室整備する。室内には各種分解ガスが発生するため、その影響の無いガラス及び/又は金属で密閉された加熱体を装備することは言うまでもない。炭素化室の隔壁傾斜は後室に向かって付けられる。全ての炭素化室内の温度は温度センサによりモニターし、必要温度に達した時に通電を停止し、必要温度以下となった時のみ通電により加温される制御方法を採る。また、低温分解室及び炭素化室等の各室Rと、複数のトレーQが多段的に収納される原料収納機器Pとの容積比は2倍〜3倍程度とする。
【0040】
(炭素化部B内の温圧調整室)
炭素化処理されて410℃〜530℃と高温となった収納機器Pと素材が素材冷却室に送られた時に、素材冷却室に残留している分解ガス及び室内使用機器が急激な熱膨張や内気圧の急激な変化による不具合を起こすことを防止するために炭素化部B内に温圧調整室を設置する。温圧調整室には加熱用設備や冷却用設備は装備せず、同室後部隔壁を開放した時に起こる素材冷却室の急激な温度変化により内気圧の上昇時に、その余剰膨張気体を受け入れるための予備空間の確保と、素材冷却室内に急激に高温膨張気体が移行しないように隔壁の上昇時間を通常の5倍の時間を使って開放する制御を行う。温圧調整室の隔壁の傾斜は温圧調整室側に向けられる。温圧調整室は1室装備する。温圧調整室には加熱設備の装備は無く、温度センサのモニターにより530℃以上となった場合のみ保管窒素を注入し温度上昇を防ぐ。
【0041】
このように温度センサを利用して、必要温度に達した時に通電を停止し、必要温度以下となった時に通電して加熱を行う制御方式により、必要最小限の必要電力量での作業となりランニングコストの低減が図れる。更に、内外隔室、水分除去室、低温分解室、炭素化室及び温圧調整室のそれぞれを連結することにより、また各室は全ての外壁が断熱構造で、放熱は入口と出口のみとなるため、熱ロスを最小限とすることができ、加熱費用の低減が図れる。
【0042】
(炭素化部B内の素材冷却室)
炭素化室において、原料化された素材の酸化反応及び還元反応並びに化学的反応が起きない温度まで低下させることを目的として炭素化部B内に素材冷却室を設置する。その室内はもちろん窒素雰囲気であり、間接的な冷却のために内壁に沿って熱伝導性が高く各種分解ガスに耐食性がある金属パイプを約100mm間隔で配置し、内部に冷却物質を循環させることで冷却性能を確保する。収納機器P及び炭素素材の冷却時間の確保のため、素材冷却室は4室整備される。隔壁は後室に向かい傾斜が付される。前記した全ての鋳造隔壁には傾斜に向かい内側を機械加工研磨として隔壁受けに圧着させる構造とし、傾斜に向かって外側に圧着機器が付くことになる。
【0043】
(後処理部C内の炭素化物回収システム)
これは炭素化された素材が収納されている収納機器Pから素材のみを取り出すためのシステムであり、トレーQ掴みと回転動作によりトレーQ内の素材を取り出す作業工程によるものである。
【0044】
(後処理部C内の破砕分離システム)
これは、投入素材には炭素化物と混入されていた金属類、或いは銅、アルミ、ステンレス等の非鉄金属類、更にはガラス、土砂等の不燃物等が混在する可能性があるため、後処理用破砕装置にて10mm以下に再破砕し、振動篩により粉体物と固形物とを分離し、粉体物を回収するシステムである。この粉体物はほぼ固定炭素であり、数%の土砂粉末、金属類粉末及びガラス粉末等が含まれる。その後、粉体物の磁気力選別装置にかけられ、粉体物からは鉄分とアルミ分が除去される。残りの粉体物はサイクロン装置に送られ比重によって再分別され、およそ固定炭素含有が85%以上の炭素素材とその他の粉体に分離される。その他の粉体には非鉄金属、ガラス及び土砂等の粉体が含まれる。その他の粉体が大量に回収される状況となった場合は非鉄金属とその他を比重による選別を行い、回収することもできる。その他の固形物は別の磁気力選別装置によって鉄分、アルミ分を分離回収する。残余の固形物には非鉄金属、ガラス及び土砂等が含まれている。その他の固形物が大量に回収される状況である場合は、ローラによる圧砕を施すことにより、各種金属は箔となり、土砂及びガラス類は粉末となる。各種金属の箔は常温ではお互いに合金となることは無く、それぞれの特徴をもった個別の種類の箔となる。この箔は比重による選別を行うことでそれぞれの材料別に回収することができる。
【0045】
(後処理部Cの微粉炭回収システム)
後処理部C全体から発生する粉塵は超微粉炭(ナノカーボン相当)が多く含まれるため、本システムでは、後処理部C全体をドーム状に覆いを付けると共に、後処理工程c毎にも覆いを付け、最頂部に吸引廃風装置を取り付ける。各覆い毎の吸引廃風装置には湿式のフィルタを取り付けると共に、静電気等の発生を防止するシステムを整備し、粉塵爆発による事故を防止する。
【0046】
(気液回収部Dの保温管理導管システム)
保温管理導管システムは、前処理部Aの一部と炭素化部Bで発生する水蒸気を含む分解ガスを気液回収システムへ導くために各室に専用の導管を配備することになるが、その接続された各室内温度と同温度をそれぞれの導管が確保するために保温及び加熱を行うシステムである。このとき、各室に導管を接続する位置が接続導管の最頂部となるものとし、後方に向かい傾斜を付けている。導管を接続室内と同温度とすることは、接続室内で発生した水蒸気を含む分解ガスが導管内で液化及び固化するのを防止するためであり、保温加熱を怠った場合は導管がその液化物及び固化物により閉塞され、ガスの逆流が起きて危険な事態となる。また、傾斜を付けることは、水蒸気を含む分解ガスが液化或いは固化した場合に接続室内に逆流し、流れ込んで危険な状態となることを防止するためである。
【0047】
(気液回収部Dの液化物回収システム)
前処理部Aの一部及び炭素化部Bから保温導管を経由して個々に接続されている液化物回収システムは耐熱性を有する鉄製で、内部には分解ガスを間接的に冷却するために中央に螺旋状のパイプを装備し、該パイプ内部は冷却材が循環する。冷却温度は水蒸気を含む分解ガスが50℃以下になるように制御する。50℃以下に冷却された水蒸気は100%、分解ガスは75%が液状化するが、低沸点の一部の分解ガスはそのまま50℃で可燃性ガスとなって残る。残存ガスを完全に冷却することで残存ガス内に油分は含まれないこととなる。液状化されたものはそれぞれ個々の導管により個々の保存タンクへ導かれる。保存タンクは耐酸性で耐高温性のあるプラスチックで製作する。水蒸気を含む分解ガスは、各種分解ガスによってそれぞれ冷却による体積の収縮率が違うことと、体積の収縮により配管内が負圧になって外気並びに他室の水蒸気及び分解ガスの残存ガスがより負圧の大きい場所へと逆流する虞があるため、配管は全て個々に整備し、圧力調整のための負圧となった場合に窒素ガス注入と逆止弁の閉鎖を同時に行えるような制御機構を施したバッファタンクを整備する。液状化物は、それぞれ処理室内の温度が違うため、その温度によって分解される物の分解ガス液状化物であり、それぞれ個々の特性を有する。分解ガスは冷却終了後も残存ガス回収部Eに至るまでそれぞれが合流することは無い。
【0048】
(残存ガス回収部E)
液化物回収システムで液状化ができなかった低沸点ガスは施設内の冷暖房用のボイラー等の燃料補助材や燃焼用空気の一部として利用することで、ほぼ100%再利用される。処理量が大きく低沸点ガスの残存量が多量の場合、圧縮除冷により液化物として回収し他所でのエネルギー源として利用できる。
【0049】
以上のように、本システムでは回収後の炭素素材及びその他の副成物の有効利用を可能にしている。例えば、本システムにより、炭素素材の回収、ナフサ・重油等の回収、木酢・竹酢・草酢等の回収、非鉄・金属類の回収、レアメタルの回収、その他の副成物の回収、及びそれらの有効利用が可能となり、また発生するガスの処理、ゴミ汚水の処理も同時に行える。
【0050】
本設備全体の使用金属は市販の装備以外は全てスチールを使用することとする。炭素素材原料を選別していないため、多種多様な物質が存在すると予想され、その物質が熱分解をした時の分解ガスには多種多様な成分が存在する。例えば、導管や隔壁等をステンレスとした場合、酸化には非常に耐性があるが塩素の中では目視不可能なピンホールができ、当該箇所がガス漏れ等の事故の原因となる場合がある。また、チタン材のような部材を使用した場合は、費用対効果に疑問が出てくる。本設備のスチールは様々なガスに晒された場合、目視確認ができるため、それによる修繕等ができ、安全性の確保が可能となる。更に、導管、配管及び排出管等全てに予備ラインを設け、点検修理や不慮の事態に該予備ラインを使用することで対応可能となる。
【0051】
本システム全体において、各室内部を駆動させる動力を伝達するために対象室から外部に貫通させたシャフトの先端に原動機を取り付ける。各室外壁のシャフトの貫通部には耐熱シール材を設置し、更にそのシール部分を覆う状態の金属製覆いを取り付け、内部に窒素ガスを充填し、内部の水蒸気及び各種分解ガスが外部に漏れることを防止すると共に、外気の侵入を防止する設備を装備する。更に、その覆いを覆う状態に冷却水が循環できる構造の金属覆いを取り付け、室内温度がシャフトを通じて外部に伝導しないようにすることで伝導熱による火災等の事故を防止する手段とする。
【0052】
(修繕と作業実施形態)
a.修繕について
本システムは収納機器Pの大きさで処理能力の増減ができるが、収納機器Pは3タイプのみを規格とする。従って、本システムは3タイプの規格のみの形態であり、修繕が必要と判断された部所はその形式と同一規格の同型を脱着することで修繕時間の短縮ができ、修理の必要な部所は工場での修繕が基本となる。システム設定工事では、装置本体に永久基礎は必要ではなく、水平を取ったH型鋼材及び同等の鋼材へのボルト止めで行う。本システムで使用する原動機全てが一つの原動機で一種類の作業のみの駆動しか行わないため、駆動システムの連結による事故や故障は無い。更に、本システムによって使用される原動機の稼働時間は最大で15分毎に8秒間であり、メーカの使用保証時間に達しない。
b.作業実施形態について
作業実施管理は全て機械化されたコンピュータによって制御される。炭素化物製造に対する材料別実施時間設定は5つの実施形態を予め設定する。例えば、1は原料にプラスチックが大部分の場合、2はプラスチックとその他の有機物が半々の場合、3は有機物が大部分の場合、など目視で判断し、始業時にその作動形態にあった番号で指示することにより各処理部が連動し、各部所、各室、加熱時間、冷却時間、総処理時間等の選択が自動的に決定され作業開始されるが、総作業時間は全て同一時間となる。
【0053】
本発明に基づき実証したところ、原材料成分を水分47.79%、灰分8.57%、可燃分43.46%(内合成樹脂分20%)、その他0.18%の組成の廃棄物を処理した場合の実際の作業時間は各室滞留時間として15分で良く、この場合の炭素素材の収率は20.28%(計測による)であった。
【符号の説明】
【0054】
A 前処理部
B 炭素化部
C 後処理部
D 気液回収部
E 残存ガス回収部
N 窒素発生装置
a 前処理工程
b 炭素化工程
c 後処理工程
d 気液回収工程
e 残存ガス回収工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素化された原料が収納されている収納機器から炭素化物を回収し、回収された炭素化物に混在している金属やその他の物質を破砕分離し、破砕分離によって発生する超微粉炭素化物を回収する工程と、
該工程で発生する分解ガスを保温管理導管によって気液回収部へ導き、間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する工程と、
気液回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用及び/又は液化回収して他所で利用することができるように加工する工程とを備えて成ることを特徴とした有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理方法。
【請求項2】
気液回収部は、水蒸気を含む分解ガスが50℃以下となるよう冷却温度が制御される請求項1記載の有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理方法。
【請求項3】
炭素化された原料が収納されている収納機器から炭素化物を取り出すための炭素化物回収システム、回収された炭素化物に混在している金属やその他の物質を分離する破砕分離システム及び破砕分離工程で発生する超微粉炭素化物を回収する微粉炭回収システムとで構成された後処理部と、
冷却時に発生する分解ガスを気液回収システムへ導くための保温管理導管システム及び間接冷却によって液化物と気体とに分離して回収する液化物回収システムとで構成された気液回収部と、
気液回収システムで回収できない低沸点のガスを施設内の冷暖房のエネルギーとしての利用及び/又は液化回収して他所で利用することができるように加工する回収改質システムとで構成された残存ガス回収部とから成ることを特徴とする有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理システム。
【請求項4】
後処理部全体をドーム状に覆いを付けると共に、後処理工程毎にも覆いを付け、最頂部に吸引廃風装置を取り付け、各覆い毎の吸引廃風装置には湿式のフィルタを取り付けると共に、静電気等の発生を防止するシステムを整備してなる請求項3記載の有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理システム。
【請求項5】
保温管理導管システムは、水蒸気を含む分解ガスを気液回収システムへ導くための導管に対し保温及び加熱を行うと同時に、導管の後方に向かい傾斜を付与して成る請求項3又は4記載の有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理システム。
【請求項6】
液化物回収システムは、圧力調整のための負圧となった場合に窒素ガス注入と逆止弁の閉鎖を同時に行えるような制御機構を施したバッファタンクを整備してなる請求項3乃至5のいずれかに記載の有機物による炭素素材及びその他の副成物の回収処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236099(P2011−236099A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110833(P2010−110833)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510132370)株式会社ビジネス・コミュニケーションズ (3)
【Fターム(参考)】