説明

有機物のための圧力ゲージ

デバイスの層を形成するのに使用される気化した有機物又は無機物の圧力を測定するためのピラニ型の真空ゲージであって、5ミクロン以下の厚さを有し、かつ、0.0035/℃より高い抵抗温度係数を有する延長フィラメントであって、気化した有機物又は無機物に曝されるフィラメント;前記有機物の分子構造を壊さないように前記フィラメントの温度が650℃未満であるように、フィラメントに電流を印加する手段;及び抵抗の変化又は電流の変化に応答して、気化した有機物又は無機物の圧力の関数であるフィラメントからの熱損失を測定する手段を含む真空ゲージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化した有機物又は無機物の圧力を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空環境での物理蒸着は、小分子OLEDデバイスに使用される有機物膜を堆積させる主な手段である。そのような方法は周知である。所望の層の最終厚さを制御するために物質の堆積速度を知ることが必要である。蒸着システムは、多くの場合、気化される物質の堆積速度を測定するのに、石英結晶モニターに頼ってきた。蒸気は石英振動子上に凝縮し、これにより振動子の質量及び剛性を変化させる。この外乱が、振動子上に堆積した凝縮物質の厚さに比例する信号に変換される。これらのセンサーは、その表面に堆積した膜が非常に薄く、表面に良好に付着し、高密度を有する場合には、信頼できる堆積速度及び堆積厚さの情報を与えることができるが、堆積した膜の厚さの増加につれてその正確さは急速に低下する。この問題は、有機物などの低密度膜では特に厄介であり、振動子の頻繁な交換及び製造プロセスの中断を必然的に伴った。低堆積速度では、能動素子がその有用な堆積範囲の終わりに達した時、新しいセンサーを定位置へと回転させるタレットセンサーアセンブリ(turreted sensor assembly)の使用により、製造プロセスの中断を最低限に抑えることがなされてきた。石英結晶モニターの寿命を延ばすためにシャッターを使用することもなされてきたが、シャッターが閉まっているとき、堆積速度情報は全く得られず、堆積膜厚の情報は失われる。高堆積速度では、気化した物質が短時間のうちにモニター上で臨界厚さに達するので、これら解決策の両方は不十分である。
【0003】
マニホールドからの気化した有機物の堆積速度はマニホールド内の気化した有機物の圧力に依存するであろうから、圧力を測定しそれを堆積速度に関連づけることは可能である。真空条件下で気体の圧力を求める周知の方法の1つはピラニゲージである。ピラニゲージは、気体中で電気的に加熱されたワイヤによる熱損失を測定するものである。気体の熱伝導率はある範囲の圧力にわたり圧力とともに直線的に変化するため、ワイヤがその周囲に熱を失う速度は、気体圧力の関数であるため、存在する気体の圧力に換算できる。ピラニゲージ中のワイヤは、典型的には、ホイートストンブリッジ回路の1つのアーム中の可変抵抗素子である。ゲージは、定温、定電圧または定電流モードで動作可能である。定温モードでは、ワイヤを定温に保つのに必要な電力は気体圧力の変化とともに変化し、従って、供給される電力は真空の尺度としての役割を果たす。定電流モード及び定電圧モードでは、電圧又は電流は、それぞれ圧力の尺度としての役割を果たす。これらの2つのモードでは、ワイヤの温度は圧力の上昇とともに低下する。これは、高圧で圧力センサーの感度を低下させるという望ましくない効果を有する。
【0004】
しかし、標準的なピラニゲージは、OLEDデバイスに望まれる有機物の薄膜を得るのに必要な圧力の測定にいくつかの問題点を有する。標準的なピラニゲージは、有機蒸気の凝縮温度より高くゲージが加熱されている場合に、かかるコーティングに要する圧力に対して十分な感度を必ずしも持たない。ゲージの感度を向上させるには、ワイヤの温度を周囲の温度よりもはるかに高く上げる必要がしばしばある。例えば、市販のいくつかのピラニゲージの検出ワイヤは、1700℃近くで動作するようになっている。このように高い温度は、この温度では分解することが多い有機物を測定するには全く適さず、高価な原料の損失並びに初期デバイス及びコーティング装置上への炭素の堆積をもたらす。
【0005】
従って、従来技術の制約を克服する、蒸着システムにおいて堆積速度を測定する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、センサー性能の低下なしに動作寿命が長くなり、また、有機物又は無機物の減成のおそれが低減された、蒸着システムにおける堆積速度を測定する有効な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、デバイスの層を形成するのに使用される気化した有機物の圧力を測定するためのピラニ型の真空ゲージであって、
a)5ミクロン以下の厚さを有し、かつ、0.0035/℃より高い抵抗温度係数を有する延長フィラメントであって、気化した有機物又は無機物に曝されるフィラメント;
b)前記有機物の分子構造を壊さないようにフィラメントの温度が650℃未満であるように、フィラメントに電流を印加する手段;及び
c)抵抗の変化又は電流の変化に応答して、気化した有機物又は無機物の圧力の関数であるフィラメントからの熱損失を決定する手段;
を含む真空ゲージにより達成される。
【0008】
本発明の利点は、有機物の減成のおそれを著しく低減しつつ、有機物又は無機物の圧力を測定でき、従ってその堆積速度を測定できることである。本発明のさらなる利点は、気化した有機物又は無機物の圧力を、当該圧力に対して有効な感度で測定できることである。本発明のさらなる利点は、センサー上に凝縮する物質が全くないので、感度の低下なしに長い操作期間にわたって堆積速度を連続測定することに使用できることである。当該圧力センサーは、フィラメントが外部電流により駆動されてない場合、温度センサーとしてさらに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明による真空ゲージのための延長フィラメントユニットの一実施形態の断面図である。
【図2】図2は、図1の延長フィラメントユニットの3次元断面図である。
【図3】図3は、本発明に有用なフィラメントの二重螺旋構造である。
【図4】図4は、上記の二重螺旋構造の一部の側面図である。
【図5】図5は、本発明に係る真空ゲージにフィラメントを組み込んだ制御回路である。
【図6】図6は、2つの異なるフィラメント温度での、本明細書に記載のタイプのフィラメントでの電圧対圧力のグラフである。
【図7】図7は、2つの異なるフィラメント温度での、まっすぐなニッケルクロム合金ワイヤフィラメントの電流対ワイヤ直径のグラフである。
【図8A−8B】図8A及び8Bは、市販のピラニゲージと比較した、本明細書に記載のタイプのフィラメントの2つの電圧対圧力のグラフである。
【図9】図9は、本発明に係る真空ゲージのための延長フィラメントユニットの他の実施形態の3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には、デバイスの層の形成に使用される気化した有機物の圧力を測定するための、本発明に係る真空ゲージの一部の一実施形態の断面図が示されている。延長フィラメントユニット10は、ピラニ型の真空ゲージの一部であり、マニホールド内に取り付けられるように設計されている。このユニットは二重螺旋構造の延長フィラメント20を含み、これについては以下でさらに説明する。このユニットは、ねじ山60を有するハウジング80を含み、ねじ山60はマニホールドと係合して真空気密シールを生成し、また、マニホールドとハウジングが実質的に同じ温度であるようにマニホールドからハウジングに熱を伝える役割を果たす。マニホールドへの開口部30は、フィラメントがマニホールド内部の気化した物質に曝されるようにマニホールド内側の真空とフィラメント20が接触することを可能にする。一実施形態において、マニホールド内側の気化した物質は、気化した有機物である。フィラメント20は支持体70により支持されており、真空シール50を通じて導線40に接続されている。導線40は、望ましくは抵抗温度係数の低い金属、例えばコンスタンタンで形成される。抵抗温度定数という用語は、物質の抵抗の温度依存性を意味する。抵抗温度係数は、以下の式中のαにより表される。
α=(T−T0)[(Rτ/R0)−1]
ここで、R0 は金属の初期抵抗、T0 は初期温度、Rτは温度Tでの金属の抵抗である。抵抗温度係数という用語は、抵抗率の温度係数として、又は単に温度係数としても知られ、℃-1の次元を持つ。点90Aから90Bまでの距離であるフィラメント20の見掛け長さは1cmより長い。図2には、図1の延長フィラメントユニットの3次元断面図が示されている。図1に示される特徴に加え、図2は、延長位置で支持体70がフィラメント20を支持する様子を示している。
【0011】
フィラメント20は、通常、螺旋状に巻かれており、望ましくは得られた螺旋が第2の螺旋に形成されている。これを本明細書で二重螺旋構造と呼ぶ。これは、短い距離で蒸気に曝されるワイヤの比較的大きい表面積を与える。図3には、かかる構成が示されている。フィラメント20は、0.0035/℃を超える抵抗温度係数を有する金属から作られた一本鎖のワイヤである。かかる要件を満たす金属としては、タングステン、モリブデン、ニッケル、白金、銅、鉄及びそれらの合金(ただし、かかる合金は、必要な抵抗温度係数を有することを条件とする)が挙げられる。フィラメント20は5ミクロン以下の厚さ、望ましくは4ミクロン以下の厚さを有する。フィラメント20は、例えばマンドレル120の周りに螺旋状に巻かれていて、外径130の螺旋110を形成する。外径130は望ましくは35〜115ミクロンである。次いで、螺旋に巻かれたフィラメントはさらに、例えばより大きいマンドレル150の周りに螺旋状に巻かれて、外径160の第2の螺旋140をさらに形成する。外径160は望ましくは125〜375ミクロンである。そのような多重螺旋化は、例えばSakaiらの米国特許第6,784,605号に記載されており、前記特許の内容を参照により本願に組み込む。
【0012】
図4には、上記の二重螺旋構造の一部の側面図が示されている。フィラメント20はマンドレル120の周りに螺旋状に巻かれており、螺旋の一巻きの間の距離135を持つ螺旋110を形成している。距離135は、螺旋110の直径の1倍から3倍であることができ、望ましくはその直径の1.5から2倍である。次いで、得られた螺旋110は、Sakaiらにより記載されているように、第2のマンドレルの周囲に巻かれて第2の螺旋を形成することができる。
【0013】
一実施形態において、二重螺旋構造フィラメントは、CM1835電球などの市販の白熱電球により提供することができるが、これは55ボルトを導き50ミリアンペアを流すように設計されている業界標準の小型白熱電球である。
【0014】
図5には、本発明に係るピラニ型の真空ゲージにフィラメントを組み込んだ制御回路が示されている。回路200はホイートストンブリッジ回路であり、抵抗器210、220、230及び延長フィラメントユニット10が4つの抵抗器である。回路200は2つの目的を果たす。第1に、回路200は、フィラメント20に電流を印加する機構である。第2に、回路200は、抵抗の変化に応答して、フィラメント20からの熱損失を決定する。フィラメントに印加される電流は、気化した有機物の堆積したものの分子構造を壊さないように、フィラメントの温度が650℃未満に保たれるように選択される。抵抗器210、220及び230は固定抵抗器であり、延長フィラメントユニット10の抵抗はフィラメント20の抵抗である。回路200の平衡条件は以下の式:
20=R210×R230/R220
により与えられる。
【0015】
使用の際には、差動増幅器240がブリッジに電圧を供給し、常にブリッジが平衡を保ったままであるようにする。この実施形態において、フィラメント20のホット抵抗(hot resistance)は、一定のままでいるよう平衡をとっている。このようにして、回路200は、一定のフィラメント温度を維持するための機構として働く。これは、ブリッジの他のアームの不変抵抗により制御されている。フィラメントからの熱損失は、フィラメントにより検知された、例えば気化した有機物の圧力の関数である。フィラメント20における圧力が増加するにつれ、例えばフィラメントからの熱損失は、気化した有機物の圧力の関数として増加し、延長フィラメントユニット10の抵抗に変化を起こし、電流を変化させる。差動増幅器240は、電流の変化に応答し、従って、抵抗の変化に応答し、フィラメントの温度変化が測定する。差動増幅器240は、その平衡を確保するためにブリッジへの電圧を増加させる。この動作モードでは、供給される電圧は、フィラメントからの熱損失を測定するために使用される。ゲージの較正により、供給電圧から圧力への変換が可能である。
【0016】
定電流モードでは、電流を印加する回路は定電流源である。かかる定電流源は周知である。フィラメントの温度は、例えば低圧力では620℃で始まる。圧力が増加するにつれ、フィラメントからの熱損失が増加してフィラメントが冷え、そして、フィラメントが冷えることはその抵抗を減少させ、駆動電圧を低下させる。このようにして、駆動電圧は圧力に換算できる。
【0017】
定電圧モードでは、電流を印加する回路は定電圧源である。かかる定電圧は周知である。フィラメントの温度はやはり、例えば低圧力では620℃で始まる。圧力が増加するにつれ、フィラメントからの熱損失が増加してフィラメントが冷え、今度は抵抗が減少し、駆動電流を増加させる。増加した電流は、フィラメントに供給される加熱エネルギーが増えるにつれてフィラメントの冷却を打ち消す傾向があるが、タングステンフィラメントを使用すると、この効果は圧力増加によるフィラメント温度の低下を妨げない。このようにして、駆動電流はこの動作モードにおいて圧力に換算できる。
【0018】
図6には、定電圧モードで運転する場合の2種の異なる初期フィラメント温度での本明細書に記載のタイプのフィラメントの電圧対圧力のグラフが示されている。曲線270は620℃でのフィラメントの応答を示し、曲線280は410℃でのフィラメントの応答を示す。延長フィラメントユニット10の周囲のボディ(例えばハウジング80)の温度は400℃に保たれた。両方の場合で、窒素環境中で圧力をゆっくりと増加させながら、フィラメントと直列になっている固定抵抗器にかかる電圧を測定し、より迅速に圧力を低下させることにより曲線を得た。これらの曲線は、フィラメントが圧力の遅い変化にも迅速な変化にも同様に応答し、圧力変化の方向を反転してもヒステリシスがほとんど又は全くないことを示す。さらに、曲線280は、フィラメント20とハウジング80の温度の違いがわずか10℃の場合に非常に感度のよい応答を示す。図6に示される感度は、センサーが定温モードで操作される場合さらに向上する。この感度の機構は理解されておらず、予想もされなかった。
【0019】
図7には、2つの異なる温度における、まっすぐなニッケルクロム合金フィラメントに対するワイヤの平衡電流対ワイヤ直径のグラフが示されている。曲線330は427℃であり、曲線335は538℃である。ある電流で、ワイヤ直径が減少すると平衡温度が劇的に上昇した。その結果として、非常に小さな電流が細いワイヤ中に高温を生じさせる。巻かれたワイヤをある平衡温度にする電流は、まっすぐなワイヤの場合のおよそ半分である。従って、あるフィラメント温度を得るための電流が、ワイヤ直径の低下及び巻かれたフィラメントの形状とともにほとんど無いくらいに小さくなるにつれ、ワイヤを加熱するための単位長さあたり利用可能な総電力もほとんど無いくらいに小さくなる。同時に、表面積対断面積の比も、ワイヤ直径の低下とともに増加する。従って、断面積及び単位長さあたりの加熱電力も、ワイヤ直径の低下ともに低下する一方で、伝熱に利用可能な表面積の相対的な影響は増加しつつある。
【0020】
このほとんど無いくらい小さい単位長さあたりの加熱電力及び非常な細線における表面積の相対的な重要性の増大は、測定すべき気体の熱伝導率の変化に対する、本開示のセンサーの優れた感度の原因であると考えられる。フィラメントの長さは、フィラメント直径に対して二次的な重要性を持つと考えられている。従来技術のピラニゲージはフィラメントとその周囲との間の温度差を最大にすることにより感度を得てきたが、本発明は、有機蒸気に対して破壊的なフィラメント温度に頼ることなく同等の感度を得る。
【0021】
図8A及び8Bには、市販のピラニゲージ(両方のグラフで曲線320)と比較した本明細書に記載のタイプのフィラメント(両方のグラフで曲線310)の2つの電圧対圧力のグラフが示されている。初期のフィラメント20の温度はどちらの場合も620℃である。ハウジング80の温度は、図8Aでは400℃、図8Bでは360℃である。両グラフで、市販ピラニゲージのボディは室温に保たれるが、検出素子はおよそ1700℃で動作する。測定される圧力の範囲は1〜500マイクロトルである。データから、定電圧モードで動作させる場合の本発明の圧力ゲージの応答は市販のピラニゲージと同じ程度の感度を持つことが判る。しかし、本発明の圧力ゲージは、650℃未満で動作し有効な応答を与えるフィラメントを有する。本発明は、有機物の圧力を測定するのに特に有利であるが、フィラメントの温度より低い温度で気化する無機物、例えば真空条件下のリチウムなどの圧力の測定にも使用できる。市販のピラニゲージは、およそ1700℃で動作する検出素子を有するので、気化した有機物の圧力測定には適切でない。
【0022】
図9には、本発明による真空ゲージの延長フィラメントユニットの他の実施形態の3次元図が示されている。延長フィラメントユニット340は、近接して配置された2つのフィラメント、例えば、抵抗温度係数が同じであるが抵抗が異なるフィラメント350及び360を利用する。これは、わずかに異なる直径のワイヤで同じ金属のフィラメントを作製することにより達成される。これらのフィラメントは、上記のような0.0035/℃より大きい抵抗温度係数を有する金属を含む。一実施形態において、フィラメント350及び360は、螺旋直径180ミクロンで螺旋状に巻かれた、それぞれ直径が35及び37ミクロンのタングステンワイヤを含む。フィラメント350及び360はそれぞれ見掛け長さが65mmであり、直列に接続されており、それらを流れる共通の電流はそれらを異なる温度に加熱し、例えばフィラメント350は600℃に加熱されうるが、フィラメント360は500℃に加熱されうる。これらのフィラメントは、1mm離間して互いに平行にセラミック支持体370上に支持されており、シールドを定温に保つ加熱素子を具備する加熱シールド380に封入されている。これらのフィラメントは、望ましくは抵抗温度係数が低い金属、例えばコンスタンタンである導線390に接続され、延長フィラメントユニット340を遠隔駆動及び測定電子機器に結合させる。フィラメント350及び360は、ホイートストンブリッジの1つのアーム中の2つの能動素子を構成し、一方の能動素子の抵抗の増加は他方の能動素子の抵抗の低下を伴う。直列に接続したフィラメントを通る電流は等しく、螺旋構造のフィラメントの表面積は実質的に等しい。フィラメント350及び360のそれぞれに運ばれる熱エネルギーは、それを通る電流の二乗×抵抗で与えられるので、2つの素子の温度比はそれらの抵抗比に等しく、ここでは放射及び最終伝導損は無視できる。これはこの適用例において妥当な近似である。その理由は、加熱シールド380を含む延長フィラメントユニット340の素子の全ては、有機物の凝縮及び減成の両方を防ぐため、互いに数百度内に加熱されなければならないからである。各フィラメント350及び360から加熱シールド340への気体伝熱損失は、フィラメントと加熱シールドの間の温度差に比例し、そのため加熱シールド380への気体輸送によるフィラメントの抵抗の変化は、フィラメント抵抗に比例する。これらの条件下で、2つのフィラメントの抵抗値の比は、加熱シールド380の温度変動に応答して一定のままであり、周囲気体の熱伝導率変化に応答する場合にのみ変化する。従って、熱伝導における圧力誘起変化を、筺体温度誘起変化(enclosure-temperature-induced changes)から分離することが可能である。
【0023】
延長フィラメントユニット340は、加熱シールド380の温度がより低温のフィラメントの温度より100℃を超えて低い場合、非常に良好な圧力への感度を示す。例えば、フィラメントの温度が600℃及び500℃である場合、加熱シールド380は400℃未満でなくてはならない。従って、延長フィラメントユニット340は、室温で、又は比較的低い温度で気化する物質で非常にうまく使用できる。しかし、加熱シールド380の温度は、シールド上への物質の凝縮を防止するために十分に高くなければならず、その一方でより高温のフィラメントの温度は、気化した物質の減成を防止するために十分低くなければならない。従って、およそ400℃を超える気化温度を必要とする気化した有機物の圧力に対するこの装置の感度は低くなるであろう。
【符号の説明】
【0024】
10 延長フィラメントユニット
20 延長フィラメント
30 開口部
40 導線
50 真空シール
60 ねじ山
70 支持体
80 ハウジング
90A 点
90B 点
110 螺旋
120 マンドレル
130 外径
135 距離
140 螺旋
150 マンドレル
160 外径
200 回路
210 抵抗器
220 抵抗器
230 抵抗器
240 差動増幅器
270 曲線
280 曲線
310 曲線
320 曲線
330 曲線
335 曲線
340 延長フィラメントユニット
350 フィラメント
360 フィラメント
370 セラミック支持体
380 加熱シールド
390 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの層を形成するのに使用される気化した有機物又は無機物の圧力を測定するためのピラニ型の真空ゲージであって、:
a)5ミクロン以下の厚さを有し、かつ、0.0035/℃より高い抵抗温度係数を有する延長フィラメントであって、気化した有機物又は無機物に曝されるフィラメント;
b)前記有機物の分子構造を壊さないようにフィラメントの温度が650℃未満であるように、フィラメントに電流を印加する手段;及び
c)抵抗の変化又は電流の変化に応答して、気化した有機物又は無機物の圧力の関数であるフィラメントからの熱損失を決定する手段;
を含む真空ゲージ。
【請求項2】
前記フィラメントが螺旋状に巻かれている、請求項1に記載の真空ゲージ。
【請求項3】
前記の螺旋状に巻かれたフィラメントがさらに二次螺旋に形成されている、請求項2に記載の真空ゲージ。
【請求項4】
前記の螺旋状に巻かれたフィラメントが、1cmを超える見掛け長さを有する、請求項3に記載の真空ゲージ。
【請求項5】
前記電流印加手段が定電流源である、請求項1に記載の真空ゲージ。
【請求項6】
前記電流印加手段が、一定のフィラメント温度を維持するための回路をさらに含む、請求項1に記載の真空ゲージ。
【請求項7】
前記フィラメントが、タングステン、モリブデン、ニッケル、白金、銅、鉄、又は必要な抵抗温度係数を有するそれらの合金から作られている、請求項1に記載の真空ゲージ。
【請求項8】
前記フィラメントが4ミクロン以下の厚さを有する、請求項1に記載の真空ゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−502949(P2010−502949A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526627(P2009−526627)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/018349
【国際公開番号】WO2008/027226
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】