説明

有機物含有排水処理装置

【課題】充分高い反応率が得られ、安定した温度コントロールが可能な、水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する酸化分解反応器と、その水溶液を更に触媒により無機化する触媒反応器とを備える有機物含有排水処理装置を提供する。さらに反応熱を有効に回収することのできる有機物含有排水処理装置を提供する。
【解決手段】水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する酸化分解反応器と、その水溶液を更に触媒により無機化する触媒反応器とを備える有機物含有排水処理装置において、酸化分解反応器4、5は、少なくとも二個以上直列につながっており、それぞれの酸化分解反応器4、5は、内液を混合、撹拌する撹拌手段8、11と加熱、除熱する手段9、12とを備えており、それに続く触媒反応器6は、固体触媒充填層であり、押出し流れ型の反応器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有排水を直接高温高圧で酸化分解して水と炭酸ガスとに変換し、さらに高温高圧下での触媒反応により完全に分解無機化することにより、有機物含有排水を無害化処理する有機物含有排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、食品廃棄物、し尿その他の有機物含有排水の処理法には、(1)焼却処理法、(2)醗酵処理法、(3)活性汚泥処理法及び(4)湿式酸化処理法などの方法がある。
【0003】
焼却処理法は、補助燃料を焚いて有機物含有排水を焼却炉内で焼却処理する方法である。焼却に際しては、有機物含有排水を火炎中に直接噴霧して焼却処理する方法や、排熱を利用して有機物含有排水を気化させたのちに火炎と接触させて焼却処理する方法などがある。また、省エネルギーのために蓄熱式酸化炉を用いる方法がある。特許文献1には、排熱を利用して有機物含有廃水を気化させたのちに蓄熱式酸化炉で焼却処理する方法について述べられている。焼却処理法には、複雑な操作を伴わずに安定した処理性が得られるという利点がある一方で、多くの問題点をもっている。それらを挙げると、高温での燃焼のため多くのエネルギーを要する、特に大量に含まれる水の蒸発潜熱と燃焼温度までの顕熱を供給するため多くのエネルギーを要する。燃焼設備や排熱回収設備さらに排ガス処理設備などのコストがかかる。ダイオキシンの発生や、大量のエネルギー(補助燃料)消費に伴う地球温暖化ガスの発生などの問題がある。このため、焼却処理は有機物含有排水の処理法としては有利な方法とは言い難い。
【0004】
醗酵処理法は、醗酵槽に好気性菌及び好気性菌により分解される被分解有機物を混合した混合物を含有する菌床を貯留し、この菌床に空気を供給して菌床中の好気性菌を増殖させ、この好気性菌が生成する酵素の触媒作用により被分解有機物を醗酵分解させる方法である。特許文献2、特許文献3に、醗酵処理法に於いて菌床の調整法や空気の供給法に関する改良が述べられている。しかし、醗酵処理による方法は、品質の変化する廃水に対して安定した処理性や高い生産性を得るのは難しい。悪臭や廃棄物処理などの問題もあり工業規模の有機物含有排水の処理法にはなり難い。
【0005】
活性汚泥処理法は、比較的有機物濃度が薄く固形分(SS)が自然沈降し易い有機物含有排水の処理法として用いられる方法である。特許文献4には、有機物濃度が高く、またSS濃度も高く、自然沈降によって清澄な上澄液が得られないような有機物含有排水に対して、他の工業廃水を混ぜて後に静置法により清澄な上澄液を得てから活性汚泥処理をする方法が述べられている。また、特許文献5には、有機物濃度が高く且つSS濃度の高い廃液を予め加熱処理して発生する固形分を取り除いた後に活性汚泥処理をする方法について述べられている。しかし、活性汚泥処理法は、広い施設面積を要し余剰汚泥の処理も必要である。また悪臭対策が必要である。更に有機物濃度が高く且つSS濃度の高い排水に対して特許文献4や特許文献5の処理を加えるとすれば、設備コストやエネルギーその他の処理コストも大きくなり、有機物含有排水の処理法として有利な方法とは言い難い。
【0006】
湿式酸化処理法は、有機物含有排水に酸素を加えて高温・高圧容器内で酸化し水と炭酸ガスにまで分解するもので、液体の状態のままで処理するので比較的コンパクトな装置ですみ、しかも酸化開始温度にまで昇温するのに大きな蒸発潜熱を与える必要が無い。また有機物濃度がある程度(数%)以上であれば、一旦酸化分解が始まればその反応熱で反応を継続することができ、さらに余剰の熱を回収することもできる。湿式酸化処理法は、比較的高濃度の有機物含有排水の処理に適した方法である。特許文献6には廃棄物に含まれる固形状有機物をスラリー状にする手段と、該スラリーに含まれる有機物を湿式酸化分解・液化する手段と、該液化した処理液を触媒により無機化する手段とからなることを特徴とする有機廃棄物の無害化システムについて述べられている。また、特許文献7には、特許文献6のシステムに更に不純物吸着装置、高度浄水装置、炭酸ガス濃縮装置、更に炭酸ガスを水素と反応させてメタンガスを生成する炭酸ガス還元装置を備えていることを特徴とする有機廃棄物及び有機排水の再資源化システムについて述べられている。これらの二つの特許文献には、有機物含有廃水の湿式酸化処理に関する基本的なシステムが述べられている。
【特許文献1】特許公表2002−523718号公報
【特許文献2】特開平10−287485号公報
【特許文献3】特開平10−328643号公報
【特許文献4】特開平11−188370号公報
【特許文献5】特開2001−310197号公報
【特許文献6】特許第2879199号公報
【特許文献7】特許第3716286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湿式酸化処理法による有機物含有排水処理を、工業規模で効率よく経済的に行うためには、酸化分解反応を効率的に遂行する最適のプロセスを提供する必要がある。最適なプロセスのための要因として、反応液の混合、反応時間のコントロール、反応温度・圧力のコントロールなどが挙げられる。即ち、これらの要因に関して酸化分解反応を効率的に遂行するため最も良い形態を見出して、最適のプロセスとして具体化する必要がある。これらの観点から上記二つの特許文献を見ると、僅かに特許文献7に酸化分解反応器内部に半月板状のバッフル板を備えることや、供給した空気を有機物と接触し易くするための散気板を設けることの記述があるが、それ以外には酸化分解反応を最適に遂行するためのプロセスに関する特段の記述はない。
【0008】
本発明の目的は、充分高い反応率が得られ、安定した温度コントロールが可能な、水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する酸化分解反応器と、その水溶液を更に触媒により無機化する触媒反応器とを備える有機物含有排水処理装置を提供することである。さらに反応熱を有効に回収することのできる有機物含有排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成したのである。即ち、本発明は、水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する酸化分解反応器と、その水溶液を更に触媒により無機化する触媒反応器とを備える有機物含有排水処理装置において、酸化分解反応器は、少なくとも二個以上直列につながっており、それぞれの酸化分解反応器は、内液を混合、撹拌する撹拌手段と加熱、除熱する手段とを備えており、それに続く触媒反応器は、固体触媒充填層であり、押出し流れ型の反応器であることを特徴とする有機物含有排水処理装置である。
【0010】
また本発明の有機物含有排水処理装置は、前記構成に加え、酸化分解反応の酸素源として純酸素を使用し、所定量の純酸素を前記酸化分解反応器の各段と前記触媒反応器とに供給することを特徴とする。
【0011】
また本発明の有機物含有排水処理装置は、前記構成に加え、酸化分解反応の酸素源として空気及び/又は酸素富化空気を使用し、所定量の空気及び/又は酸素富化空気を前記酸化分解反応器の各段と前記触媒反応器とに供給することを特徴とする。
【0012】
また本発明の有機物含有排水処理装置は、前記構成に加え、前記触媒反応器に供給する純酸素、空気及び/又は酸素富化空気を直前の最終段の酸化分解反応器から供給することを特徴とする。
【0013】
また本発明の有機物含有排水処理装置は、前記構成に加え、さらに、前記酸化分解反応器及び前記触媒反応器で生じた反応熱を回収、再利用する熱回収再利用手段を備えることを特徴とする。
【0014】
課題から解決の手段への道筋、即ち本発明の技術的内容についてさらに詳しく説明を加える。本発明者らは、水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で湿式で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する処理法において、充分高い反応率が得られ、安定した温度コントロールが可能となる有機物含有排水処理装置とするためには、反応メカニズム、反応プロセスを検討しそれに合致した反応器の形式が特に重要と考え、次ぎのような検討を行い、発明を完成させた。
【0015】
流体が一定の流量で連続的に流れる流通式反応器の形式を内液の混合状態で分類すると、押出し流れ型反応器(Plug Flow Reactor:PFR)と完全混合槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor:CSTR)とに分けられる。押出し流れ型反応器は、流れの方向には流体の混合・拡散が無く、流れと直角な方向に均一な速度を有する流れを持つ反応器と定義される。したがって反応器に入った液は全て均一な滞留時間を持っている。一方、完全混合槽型反応器は、流入した流体が装置内で瞬間的に一様濃度に混合され、装置内濃度と装置出口流体濃度が等しい反応器と定義される。この場合、反応器に入った液の滞留時間は、ゼロから無限大まで幅広く分布する。
【0016】
一般に、有機物の酸化反応は逐次反応であり、有機物が一気に二酸化炭素と水に変化するのではなく、酸化の程度に応じた幾つかの中間酸化物を経ながら逐次的に酸化が進み、最終的に二酸化炭素と水に変化すると考えられる。多くの場合、中間酸化物として酢酸を経由するが、酢酸は比較的安定な物質であるためこれを更に酸化して水と炭酸ガスにまで転換するには充分な反応時間が必要である。廃液の酸化処理による無害化に於いては高い反応率を必要とするが、上述の様な反応で高い反応率を得るには、反応時間分布(反応液の反応器内滞留時間分布)の観点からみて均一な反応時間が得られる押出し流れ型反応器が望ましく、液の滞留時間に広い幅のある完全混合型反応器では高い反応率を得るのは難しい。それは、反応時間(滞留時間)に広い幅があるということは、反応器から出る液の反応率にも広い幅があることを意味しているからである。
【0017】
次に、有機物含有排水処理を経済的に遂行するためには、反応器の生産性を上げること即ち、反応速度を上げることが重要である。反応速度を上げるためには、最適の温度、圧力を与えると同時に反応液を充分に混合・撹拌することが重要である。特に酸化のために供給される酸素が有機物と充分に混ざっていることが重要である。反応器内の液の混合を良くすることは、完全混合型反応器では容易であるが、押出し流れ型反応器では難しい。つまり、反応速度を上げるために、混合・拡散を良くしようとすれば、完全混合槽型反応器を選択することになる。
【0018】
さらに、有機物含有水溶液の湿式酸化分解反応に於いては、反応温度を最適な温度に保つことが重要であるが、殆んどの水溶液では有機物濃度が高く反応による発熱量が大きいために、反応温度を所定の温度に維持するためには反応の進行に応じて反応液から熱を取り除く必要がある。この様な反応液からの除熱操作は、完全混合槽型反応器においては比較的容易に行うことができるが、押出し流れ型反応器では難しい。その理由は、例えば反応器に熱交換器を取り付けた場合に、完全混合槽型反応器においては反応液が充分に混合・撹拌されているので高い伝熱係数が得られ液の温度も均一になるのに対して、押出し流れ型反応器では反応液が混合・撹拌されていないので高い伝熱係数は得られず液の温度も均一にはならないからである。
【0019】
以上をまとめると、次のようになる。
(1)流通式反応器の形式を内液の混合状態で分類すると、押出し流れ型反応器と完全混合槽型反応器とに分けられる。
(2)湿式酸化反応で、高い反応率を得るには、押出し流れ型反応器でなければならない。
(3)湿式酸化反応で、高い反応速度を得るには、完全混合槽型反応器が有利である。
(4)湿式酸化反応で、反応温度をコントロールするには、完全混合槽型反応器が有利である。
【0020】
上記の知見を踏まえて、本発明者らは、押出し流れ型反応器と完全混合槽型反応器双方の利点を合わせ持つ湿式酸化反応プロセス、即ち、反応液が充分に混合・撹拌され、反応温度が均一に保たれ、そして反応時間(反応液の反応器内滞在時間)を均一に近づけることにより、効率よく高い反応率を得ることができるよう、本発明の有機物含有排水処理装置において、酸化分解反応器を、少なくとも二個以上直列に連結し、それぞれの酸化分解反応器に、内液を混合、撹拌する撹拌手段と加熱、除熱する手段とを設け、それに続く触媒反応器は、固体触媒充填層でかつ、押出し流れ型の反応器とした。即ち、酸化反応の前半(反応率の比較的低い領域)では、速度が高く効率の良い反応が得られるような反応器(混合槽型)とし、しかもそれを直列に多段に連結することで全体として押出し流れに近づけて反応率を可能な限り上げることとし、その後に固体触媒の助けにより高い反応速度を得ながら押出し流れ型の反応器により反応を完結することとしたのである。さらに酸化反応熱を有効に回収・利用できるように酸化分解反応器及び触媒反応器で生じた反応熱を回収・再利用する熱回収再利用手段を設けた。
【発明の効果】
【0021】
以上から明らかなように、本発明の有機物含有排水処理装置により、水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で湿式で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する処理法において、充分高い反応率が得られ、安定した温度コントロールが可能となる。さらに反応熱を有効に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態としての有機物含有排水処理装置1の概略的なプロセスフロー図である。また図2は、図1の有機物含有排水処理装置1の酸化分解反応器の変形例である外部循環型の酸化分解反応器45の構成を示す図である。以下に、図1及び図2に従って本有機物含有排水処理装置1の詳細について説明する。図1に示すように、本有機物含有排水処理装置1は、二個以上(但し、図1では二個の場合についてのみ描いている)直列に連結された完全混合槽型酸化分解反応器4、5と、それに続く押出し流れ型の固体触媒充填層反応器6、及び反応熱回収装置として機能する熱媒システム30とを主に構成されている。
【0023】
原料貯蔵槽21には、予め固形分が充分に粉砕されスラリー状に調製された有機物含有排水が貯蔵されている。有機物含有排水は、供給ポンプ22により昇圧されプロセスに供給される。供給ポンプ22により送液された有機物含有排水(供給液)は、熱交換器23を介して、固体触媒充填層反応器6から排出される酸化反応後の高温排出液と熱交換されて昇温される。
【0024】
次いで、昇温された供給液は、第1段目の酸化分解反応器4に入る。ここで酸素Oが加えられる。酸素が加えられる位置は、供給液が酸化分解反応器4に入る直前の配管24内または酸化分解反応器4内の何れでも良い。酸化分解反応器4は、反応液を混合・撹拌する手段と加熱・除熱する手段とを備えたものである。図1では混合・撹拌する手段として撹拌翼7付きの撹拌機8を示しているけれども、図2に示すように撹拌機によらず、循環ポンプ41と配管42とから成る外部循環装置40により反応液を循環することにより混合・撹拌を行うこともできる。また、加熱・除熱の手段としては、図1では酸化分解反応器4にジャケット9を設ける場合を示しているけれども、酸化分解反応器4内にコイル式伝熱管(図示を省略)を装着することもできる。また、図2に示すように反応液の外部循環装置40がある場合は、循環配管42の途中に熱交換器43を設けることも可能である。
【0025】
第1段目の酸化分解反応器4を出た反応液は、次いで第2段目の酸化分解反応器5に入る。ここでも酸素Oが加えられるが、その位置は第1段目の酸化分解反応器4と同様、酸化分解反応器5に入る直前の配管25内または酸化分解反応器5内の何れでも良い。また、ここでの混合・撹拌及び加熱・除熱の手段についても第1段目の酸化分解反応器4と同様、撹拌翼10付きの撹拌機11及びジャケット12を使用することができる。
【0026】
図1では酸化分解反応器は第2段までとして描いているが、第3段以上も考えられる。段数を多くすれば理論的には高い反応率が得られるが、それだけ設備費用も高くなる。従って費用対効果を見て最適な段数を選ぶべきである。
【0027】
第2段目の酸化分解反応器5を出た反応液は、最後に固体触媒充填層反応器6に送られる。固体触媒充填層反応器6は、円筒状の容器の内部に固体触媒充填層を形成する構造で、外側にジャケット13を設けてこれに熱媒を通して温度コントロールできる構造となっている。ここでの反応液の流れは押出し流れ型であり、ここで充分高い反応率にまで酸化反応と無機化の反応が進行する。前述のように酸化反応の中間生成物としての酢酸は、主としてここで酸化分解する。ここでも所定量の酸素Oが加えられるが、添加の位置については、第1段目の酸化分解反応器4、第2段目の酸化分解反応器5の場合と同様である。即ち、供給液の配管26内又は固体触媒充填層反応器6の入り口空間内である。固体触媒充填層反応器6の入り口空間に供給する場合は、反応液との混合を良くするために散気管(図示を省略)を取り付けると良い。またここで供給すべき酸素量を直前段の完全混合槽型反応器に加えておくこともできる。それは、直前段の完全混合槽型反応器を通過することで反応液と酸素との混合がより良く行われることが期待でき、また直前段の完全混合槽型反応器内では過剰に酸素が存在することで酸化反応速度がより高くなることが期待できるからである。
【0028】
酸化分解反応器4、5及び固体触媒充填層反応器6に於ける反応温度は、200℃以上水の臨界温度(374℃)以下とするのが望ましい。反応温度の下限は十分な反応速度が得られる温度で決まり、上限は反応液が液状で取扱えることにより決まる。また反応圧力は、反応温度に於いて反応液が充分に液体として存在し得る圧力以上とする。
【0029】
固体触媒充填層反応器6に充填される触媒としては、粒状あるいはペレット状のチタニア及びアルミナに、ルテニウム、パラジウム、白金などの貴金属を担持したものやゼオライトのような触媒を使用することができる。これらは特に限定されるものではない。
【0030】
固体触媒充填層反応器6を出た反応液は、含有する有機物が酸化されて水と炭酸ガスになり充分に無害化されている。この液は熱交換器23を通って供給液との熱交換により顕熱の一部を供給液に与えて自身は冷却される。更に必要に応じて冷却された後、大気圧にまで降圧されて排水として廃棄される。
【0031】
酸化分解反応器4、5及び固体触媒充填層反応器6に於ける反応量は原料である有機物含有排液の供給量(即ち反応時間)、反応器の温度、圧力、及び酸素の供給量によって決まる。特に各反応器間での反応量のバランスをとるには各反応器への酸素の供給量を調節するのが良い。また、酸素源としては純酸素(液化酸素又は気体酸素の何れでも良い)が好ましいが、空気、酸素富化空気又は空気と酸素富化空気との混合物を使用する装置とすることも可能である。ここで酸素富化空気とは、例えば空気から吸着分離法その他の方法により窒素を選択的に取除いた残りの酸素濃度の高い空気を指す。また、純酸素と空気とを混合することでも酸素富化空気を得ることができる。
【0032】
各反応器の温度コントロールは、各反応器に設けられたジャケット、コイル又は外部熱交換器に、別途集中的に温度管理された熱媒システムから熱媒を循環供給することにより行う。図1には熱媒システム30として蒸気ボイラー31を設け熱媒として熱水を各反応器4、5、6のジャケット9、12、13に循環供給する例を示した。この熱媒システム30は、反応熱を回収・再利用する熱回収再利用手段として機能する。図1に於いて、符号32は蒸気ドラム、符号33は熱水循環ポンプである。ここでは酸化反応熱は蒸気として回収・利用される。また、スタート・アップ時など予熱を必要とする場合は、逆に他から蒸気を受け入れるか、あるいは熱水循環系に電気ヒーターなどを設けて熱水を造りながら反応器系を加熱する方法をとることができる。熱媒システムとしては、蒸気ボイラー(即ち水系)に限らず、他の有機系または無機系の熱媒を使ったシステムとすることもできる。
【0033】
以上から明らかなように、本発明の有機物含有排水処理装置を使用することで、高濃度の有機物含有排水を物理化学的に、コンパクトな設備で効率よく無害化処理することができその経済効果は大きい。またエネルギーの消費も少なく、逆に反応熱を有効に回収・利用することでき、地球環境に優しいプロセスである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の有機物含有排水処理装置は、特に食品関係で派生する高濃度の有機物含有排水の処理に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態としての有機物含有排水処理装置1の概略的なプロセスフロー図である。
【図2】図1の有機物含有排水処理装置1の酸化分解反応器の変形例である外部循環型の酸化分解反応器45の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 有機物含有排水処理装置
4 酸化分解反応器
5 酸化分解反応器
6 固体触媒充填層反応器
8 撹拌機
9 ジャケット
11 撹拌機
12 ジャケット
30 熱媒システム
40 外部循環装置
43 熱交換器
45 酸化分解反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に含まれる有機物を高温高圧で酸化分解し水と炭酸ガスとに変換する酸化分解反応器と、その水溶液を更に触媒により無機化する触媒反応器とを備える有機物含有排水処理装置において、
酸化分解反応器は、少なくとも二個以上直列につながっており、それぞれの酸化分解反応器は、内液を混合、撹拌する撹拌手段と加熱、除熱する手段とを備えており、
それに続く触媒反応器は、固体触媒充填層であり、押出し流れ型の反応器であることを特徴とする有機物含有排水処理装置。
【請求項2】
酸化分解反応の酸素源として純酸素を使用し、所定量の純酸素を前記酸化分解反応器の各段と前記触媒反応器とに供給することを特徴とする請求項1に記載の有機物含有排水処理装置。
【請求項3】
酸化分解反応の酸素源として空気及び/又は酸素富化空気を使用し、所定量の空気及び/又は酸素富化空気を前記酸化分解反応器の各段と前記触媒反応器とに供給することを特徴とする請求項1に記載の有機物含有排水処理装置。
【請求項4】
前記触媒反応器に供給する純酸素、空気及び/又は酸素富化空気を直前の最終段の酸化分解反応器から供給することを特徴とする請求項2又は3に記載の有機物含有排水処理装置。
【請求項5】
さらに、前記酸化分解反応器及び前記触媒反応器で生じた反応熱を回収、再利用する熱回収再利用手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の有機物含有排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−149232(P2008−149232A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338149(P2006−338149)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【Fターム(参考)】