説明

有機発光デバイス

【課題】有機発光デバイス(OLED)を提供すること。
【解決手段】有機発光デバイスは、電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料の混合物を含むエレクトロルミネセンス材料層と、トリアジンを含む電子輸送層とを備える。このOLEDを備えるディスプレイ・デバイスもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光デバイス(OLED)はディスプレイへの応用が有望な技術を表す。従来のデバイス構造は、(1)透明な前面電極、(2)少なくとも1種の低分子または高分子の有機エレクトロルミネセンス材料を含む有機多層発光部分(通常少なくとも2層)、および(3)裏面電極、を備える。OLEDは、通常、基材上に積層されている。前面または裏面の電極の一方が電子注入カソードであり、他方が正孔注入アノードである。これらの電極間に電圧を加えると、発光部分から発光し、透明な前面電極を通り、見ている人に光が到達する。通常、発光部分は、(1)カソードに近い少なくとも1つの電子輸送材料層、(2)アノードに近い少なくとも1つの正孔輸送材料層、および(3)正孔輸送層と電子輸送層との間にあるエレクトロルミネセンス材料層、を備えている。
【0003】
多くのOLEDが有機ルミネセンス材料の積層により製造されてきた。このようなデバイスは、エレクトロルミネセンス物質として、例えば米国特許第3530325号(この開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に記載されている単結晶アントラセン類のような、単結晶材料を含んでいる。これらのタイプのデバイスでは100ボルト程度あるいはそれ以上の励起電圧が必要であり得る。
【0004】
前述したように、OLEDは、通常、多層構造体として形成される。正孔輸送を担うアノードに隣接する1つの有機層と、電子輸送を担うカソードに隣接する別の1つの有機層とを備え、デバイスのエレクトロルミネセンス部分として機能する2層発光部分をもつOLEDが、米国特許第4356429号、米国特許第4539507号、米国特許第4720432号、および米国特許第4769292号(これらの開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0005】
米国特許第4769292号は、正孔輸送層、エレクトロルミネセンス層、および、電子輸送層を備えるエレクトロルミネセンス材料層を有し、蛍光ドーパント材料が発光層に添加された通常のOLEDを開示する。例えば米国特許第4720432号に記載されているもののような他の従来のOLED構造体では、OLEDは、正孔輸送層とアノードとの間に配置された緩衝層をさらに備える。正孔輸送層と緩衝層との組合せは、2層正孔輸送層を形作る。これは、S. A. Van Slykeら、「Organic Electroluminescent Devices with Improved Stability」、Appl. Phys. Lett. 69、2160〜2162頁(1996)(この開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0006】
混合層、例えば、正孔輸送材料と発光性電子輸送材料とを1つの層に一緒に混合した層を含むOLEDからエレクトロルミネセンスを得ようとする試みもあった。例えば以下を参照。Kidoら、「Organic Electroluminescent Devices Based On Molecularly Doped Polymers」、Appl. Phys. Lett. 61、761〜763頁(1992)、S. Nakaら、「Organic Electroluminescent Devices Using a Mixed Single Layer」、Jpn. J. Appl. Phys. 33、L1772〜L1774頁(1994)、W. Wenら、Appl. Phys. Lett 71、1302(1997)、および、C. Wuら、「Efficient Organic Electroluminescent Devices Using Single-Layer Doped Polymer Thin Films with Bipolar Carrier Transport Abilities」、IEEE Transactions on Electron Devices 44、1269〜1281頁(1997)。発光材料は正孔輸送および電子輸送の材料の1つであり得る。一実施形態によれば、正孔輸送および電子輸送の材料に加えて、発光する第3の材料が存在し得る。
【0007】
正孔輸送材料と電子輸送材料を含む単一の有機層で形作られたOLEDの他の例を、例えば、米国特許第5853905号、米国特許第5925980号、米国特許第6114055号、および米国特許第6130001号(これらの開示は全て参照を通じて本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。S.Naka等による文献に示されているように、これらの単一混合層OLEDの効率は、多層有機発光デバイスより劣り得る。これらのデバイスは、正孔輸送材料(例えば、NPB(N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン))と、発光性電子輸送材料(例えば、AlQ(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)とを混合した単一層のみを含み、不安定であり、効率が悪い。これらのデバイスの不安定性は、混合層中の電子輸送材料と正孔注入材料との間の直接接触によって、(1)不安定な陽イオン電子輸送材料の生成、および(2)混合層/カソードの界面の不安定性、を結果的に生じることにより引き起こされると考えられている。
【0008】
商業的用途では、OLDEディスプレイが高効率(例えば、25mA/cmの電流密度で5V未満の駆動電圧であること)と、十分な使用安定性(operational stability)(例えば、少なくとも500cd/mの初期輝度で1000時間を超える半減期)との両方を示すと有益であろう。低駆動電圧の低分子OLEDが過去に例示された(例えば、Huangら、APL 80、139頁、2002)。しかし、このようなOLEDには、十分な使用安定性がないために、商業用途にそれらは不適切である可能性がある。混合発光層OLEDを用いることによって、高い使用安定性が実現され、駆動電圧は特定の電圧、例えば5Vを超えることが多かった。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3530325号
【特許文献2】米国特許第4356429号
【特許文献3】米国特許第4539507号
【特許文献4】米国特許第4720432号
【特許文献5】米国特許第4769292号
【非特許文献1】S. A. Van Slykeら、「Organic Electroluminescent Devices with Improved Stability」、Appl. Phys. Lett. 69、2160〜2162頁(1996)
【非特許文献2】Kidoら、「Organic Electroluminescent Devices Based On Molecularly Doped Polymers」、Appl. Phys. Lett. 61、761〜763頁(1992)
【非特許文献3】S. Nakaら、「Organic Electroluminescent Devices Using a Mixed Single Layer」、Jpn. J. Appl. Phys. 33、L1772〜L1774頁(1994)
【非特許文献4】W. Wenら、Appl. Phys. Lett 71、1302頁(1997)
【非特許文献5】C. Wuら、「Efficient Organic Electroluminescent Devices Using Single-Layer Doped Polymer Thin Films with Bipolar Carrier Transport Abilities」、IEEE Transactions on Electron Devices 44、1269〜1281頁(1997)
【特許文献6】米国特許第5853905号
【特許文献7】米国特許第5925980号
【特許文献8】米国特許第6114055号
【特許文献9】米国特許第6130001号
【非特許文献6】Huangら、APL 80、139頁、2002
【特許文献10】米国特許第5151629号
【特許文献11】米国特許第5150006号
【特許文献12】米国特許第5141671号
【特許文献13】米国特許第5516577号
【特許文献14】米国特許第5846666号
【特許文献15】米国特許第5925472号
【非特許文献7】Baldoら、「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Letters to Nature、395、151〜154頁(1998)
【特許文献16】米国特許第6225467号
【特許文献17】米国特許第6229012号
【特許文献18】米国特許出願第11/122290号(代理人整理番号第0010.0024号)
【特許文献19】米国特許第4885221号
【特許文献20】米国特許第5429884号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低駆動電圧と十分な使用安定性との両方を示すOLEDが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な実施形態により、本明細書では、(a)アノードと、(b)正孔輸送層と、(c)電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料を含むエレクトロルミネセンス材料層と、(d)トリアジンを含む電子輸送層と、(e)カソードとを備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である有機発光デバイスが開示される。
【0012】
本開示の別の態様によれば、(a)アノードと、(b)正孔輸送層と、(c)電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料を含むエレクトロルミネセンス材料層と、(d)トリアジンを含む電子輸送層と、(e)カソードとを備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である有機発光デバイスの少なくとも1つを備えるディスプレイが提供される。
【0013】
本開示のさらに別の態様によれば、(a)アノードと、(b)正孔輸送層と、(c)(i)電子輸送材料、(ii)正孔輸送材料、および(iii)バイポーラ輸送材料、の少なくとも2つを含むエレクトロルミネセンス材料層と、(d)トリアジンを含む電子輸送層と、(e)カソードとを備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である有機発光デバイスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一実施形態において、図1を参照すると、OLED10は、順次、支持基板20、例えばガラス;アノード30、例えば、約1から約500nm(例えば約30から約100nm)の厚さのインジウム・スズ酸化物;任意選択の緩衝層40、例えば、約1nmから約300nmの厚さの銅フタロシアニンまたはプラズマ重合されたCHF;正孔輸送有機層50、例えば、約1から約200nm(例えば約5から約100nm)の厚さのNPB;エレクトロルミネセンス層60、例えば、正孔輸送/電子輸送/バイポーラ輸送の材料を含む組成物からなり、厚さが約5から約50nmの層;電子輸送層70、例えば、約5から約300nm(例えば、約10から約100nm)の厚さのトリアジン;および、これに接触する仕事関数の小さい金属カソード80;を備える。任意選択の保護層90をカソード80の上に形作ってもよい。別の実施形態によれば、図2に例示されているように、OLED15において、支持基板20がカソード80に隣接しており、任意選択の保護層90がアノード30に隣接している。
【0015】
様々な実施形態において、OLEDは、支持基板20を備え得る。支持基板20の実例には、ガラスおよびその類似物、ポリマー部材(MYLAR(登録商標)のようなポリエステル、ポリカルボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスルホンが含まれる)、石英などが含まれる。他の基板20もまた、他の層を有効に支えることができ、デバイス機能の遂行を阻害しなければ、選択され得る。基板20の厚さは、例えばデバイスの構造上の要求に応じて、例えば約25から約1,000μm、あるいはそれ以上(例えば約50から約500μm)の範囲であり得る。
【0016】
様々な実施形態によれば、OLEDは、基板に隣接し得るアノード30を含み得る。アノード30の適切で非限定的な例には、インジウム・スズ酸化物、スズ酸化物、金、白金、のような正電荷注入電極、あるいは、例えば、約4eV(エレクトロンボルト)以上、より指定すると約4eVから約6eVの仕事関数をもつ他の適切な材料、例えば、導電性カーボン、π−共役ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリピロール)などが含まれる。アノードの厚さは約1から約500nmの範囲であり得るが、適切な範囲は、アノード材料の光学定数を考慮して選択される。アノードの厚さの適切な1つの範囲は約30から約100nmである。
【0017】
任意選択で、緩衝層40がアノードに隣接していてもよい。緩衝層は、アノードからの正孔の効率的な注入を円滑にし、アノードと正孔輸送層との間の接着性を向上させる(こうして、デバイスの使用安定性をさらに向上させる)機能を果たすことができ、緩衝層には、ポリアニリンおよびそれに酸をドープした形のもの、ポリピロール、ポリ(フェニレンビニレン)のような導電性材料、ならびに、知られている有機半導体材料;米国特許第4356429号(この開示は参照を通じて本明細書に全体として組み込まれる)に開示されているポルフィリン誘導体、例えば、1,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II);銅フタロシアニン、銅テトラメチルフタロシアニン;亜鉛フタロシアニン;酸化チタン・フタロシアニン;マグネシウム・フタロシアニン;などが含まれる。緩衝層は、電子・正孔輸送材料として適切な第3級アミンを含み得る。緩衝層は、知られている方法、例えば蒸着またはスピン・コーティングによって、前記化合物の1つを薄膜にすることにより形成され得る。こうして形成される緩衝層の厚さは、特に限定されないが、約5nmから約300nm(例えば約10nmから約100nm)の範囲であり得る。
【0018】
様々な実施形態において、OLEDは、正孔輸送材料を含む正孔輸送層50を備え得る。正孔輸送材料の適切で非限定的な例には、芳香族第3級アミン、例えば;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD);N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン)(NPB);N,N’−ビス(p−ビフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(BP−TPD);ならびに、米国特許第4539507号に開示されている芳香族第3級アミン(この開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)が含まれる。適切な芳香族第3級アミンには、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;などが含まれる。
【0019】
正孔輸送材料として適切な芳香族第3級アミンの別の種類は、多核芳香族アミン、例えば、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]アニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)4−ビフェニリル]アニリン;N,N−ビス−[4’−{N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−クロロアニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−クロロアニリン;およびN,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−1−アミノナフタレン、などである。
【0020】
正孔輸送層50に有用なさらなる正孔輸送材料には、カルバゾール、例えば、N,N’−ジカルバゾリル−4,4’−ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)−1,1’−ビフェニル(TPCB)、および、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル化合物類が含まれる。4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル化合物類の実例には、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル、および、4,4’−ビス(3−メチル−9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニルなどが含まれる。適切な正孔輸送材料の別の種類は、インドカルバゾール、例えば、5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾール(NIC)である。正孔輸送層50の厚さは、約1nmから約200nmの範囲であり得る。別の実施形態によれば、この厚さは、約5nmから約100nmの範囲である。
【0021】
本明細書に開示されているOLEDはエレクトロルミネセンス層を備え得る。様々な実施形態によれば、エレクトロルミネセンス材料層60は、電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料を含む。エレクトロルミネセンス層60に使用され得る材料には、これらに限定されないが、正孔輸送材料、電子輸送材料、およびバイポーラ輸送材料が含まれる。様々な正孔輸送、電子輸送、およびバイポーラ輸送材料が、望みの色の発光を実現するのはそれらの組合せ選択なのであるが、当技術分野において知られている。さらに、望みの発光色をもたらすこのような材料の選択は、慣例化した実験を通じて、当業者により容易に実施され得る。
【0022】
様々な実施形態において、エレクトロルミネセンス層60は正孔輸送材料を含み得る。エレクトロルミネセンス層に適する正孔輸送材料の非限定的な例には、芳香族第3級アミン、多核芳香族アミン、カルバゾール、およびインドカルバゾールが含まれる。例えば、エレクトロルミネセンス層60は、本明細書において正孔輸送層50に適すると認められた正孔輸送材料の少なくとも1種を含み得る。
【0023】
エレクトロルミネセンス層60にはまた、少なくとも1種の電子輸送材料、例えば、AlQおよびビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlQ)のような金属キレート、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)のようなスチルベン類、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール類、ならびに、トリアジン電子輸送層として認められるトリアジン類を含めて、4,4’−ビス−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル(T1)のようなトリアジン類が含まれ得る。使用され得る電子輸送材料の実例には、これらに限定されないが、米国特許第4539507号;米国特許第5151629号;米国特許第5150006号;および米国特許第5141671号(これらの各々は参照を通して本明細書に組み込まれる)に開示されている8−ヒドロキシキノリンの金属キレートが含まれる。具体例には、ビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq);トリス(8−ヒドロキシキノリネート)ガリウム;ビス(8−ヒドロキシキノリネート)マグネシウム;ビス(8−ヒドロキシキノリネート)亜鉛;トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム;トリス(7−プロピル−8−キノリノラト)アルミニウム;ビス[ベンゾ{f}−8−キノリネート]亜鉛;ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウム;が含まれる。
【0024】
エレクトロルミネセンス層60に適する電子輸送材料の別の適切な種類には、スチルベン誘導体、例えば、米国特許第5516577号(参照を通じて本明細書に組み込まれる)に開示されているものが含まれる。適切なスチルベン誘導体は、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルである。適切な電子輸送材料のさらに別の種類は、米国特許第5846666号(参照を通じて本明細書に組み込まれる)に例示されている金属チオキシノイド(metal thioxinoid)化合物である。これらの材料には、次の金属チオキシノイド化合物、ビス(8−キノリンチオラト)亜鉛;ビス(8−キノリンチオラト)カドミウム;トリス(8−キノリンチオラト)ガリウム;トリス(8−キノリンチオラト)インジウム;ビス(5−メチルキノリンチオラト)亜鉛;トリス(5−メチルキノリンチオラト)ガリウム;トリス(5−メチルキノリンチオラト)インジウム;ビス(5−メチルキノリンチオラト)カドミウム;ビス(3−メチルキノリンチオラト)カドミウム;ビス(5−メチルキノリンチオラト)亜鉛;ビス[ベンゾ{f}−8キノリンチオラト]亜鉛;ビス[3−メチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラト]亜鉛;ビス[3,7−ジメチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラト]亜鉛、などが含まれる。さらなる適切な材料には、ビス(8−キノリンチオラト)亜鉛;ビス(8−キノリンチオラト)カドミニウム;トリス(8−キノリンチオラト)ガリウム;トリス(8−キノリンチオラト)インジウム;および、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラト]亜鉛が含まれる。
【0025】
エレクトロルミネセンス層60に有用で適切な電子輸送材料のさらに別の種類は、米国特許第5925472号(参照を通じて組み込まれる)に開示されているオキサジアゾール金属キレートである。これらの材料には、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]リチウム;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム:ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス[5−(4−クロロフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−α−(2−ヒドロキシナフチル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(2−チオフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラト]亜鉛;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラト]ベリリウム;ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラト]亜鉛;およびビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラト]ベリリウム、などが含まれる。
【0026】
様々な実施形態において、エレクトロルミネセンス層60は、バイポーラ輸送材料を、独立に、あるいは、電子および/または正孔輸送材料の代わりに含み得る。適切なバイポーラ材料には、2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(DNA)、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(DPA)、9−ビス(フェニル)アントラセン(BPA)のようなアントラセン類、スピロ−BPAおよびスピロ−DPA、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(BD2)のようなペリレン類、ルブレンのようなテトラセン類、ならびに、広く他の炭化水素材料が含まれる。
【0027】
様々な実施形態において、エレクトロルミネセンス層60は、電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料の混合物を含み得る。電子と正孔の輸送能力が異なる前記2種の材料は、異なる正孔移動度および/または異なる電子移動度をもつ2種の材料であってよい。一般に、ある材料は、その正孔移動度がその電子移動度より少なくとも約10倍大きい場合に、正孔輸送材料であると見なされている。一般に、ある材料は、その電子移動度がその正孔移動度より少なくとも約10倍大きい場合に、電子輸送材料であると見なされている。一般に、ある材料は、その正孔移動度がその電子移動度と等しい場合、その正孔移動度がその電子移動度の10倍を超えない場合、あるいは、その電子移動度がその正孔移動度の10倍を超えない場合、バイポーラ材料であると見なされている。電子と正孔の輸送能力が異なる2種の材料を、正孔輸送材料、電子輸送材料およびバイポーラ輸送材料から独立に選択することができ、これらの実例は上に記載されている。例えば、2種の材料は正孔輸送材料であってもよく、2種の材料は電子輸送材料であってもよく、2種の材料はバイポーラ輸送材料であってもよく、一方の材料が正孔輸送材料であって他方の材料が電子輸送材料であってもよく、一方の材料が正孔輸送材料であって他方の材料がバイポーラ輸送材料であってもよく、あるいは、一方の材料が電子輸送材料であって他方の材料がバイポーラ輸送材料であってもよい。混合物が2種の正孔輸送材料を含む実施形態において、この2種の材料は、一方の材料の正孔移動度が他方の材料の正孔移動度より少なくとも2倍大きいように選択される。混合物が2種の電子輸送材料を含む実施形態において、この2種の材料は、一方の材料の電子移動度が他方の材料の電子移動度より少なくとも2倍大きいように選択される。混合物が2種のバイポーラ輸送材料を含む実施形態において、この2種の材料は、一方の材料の正孔移動度が他方の材料の正孔移動度より少なくとも2倍大きく、また/あるいは、一方の材料の電子移動度が他方の材料の電子移動度より少なくとも2倍大きいように選択される。混合部分は、前記2種の材料の一方を約5体積パーセントから約95体積パーセント、また前記2種の材料の他方を約95体積パーセントから約5体積パーセント含み得る。任意選択で、混合部分は、約0.01体積パーセントから約25体積パーセントのドーパント材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、混合部分は、前記2種の材料の一方を約30体積パーセントから約70体積パーセント、前記2種の材料の他方を約70体積パーセントから約30体積パーセント含み、任意選択で、約0.05体積パーセントから約10体積パーセントのドーパント材料をさらに含み得る。別の実施形態では、混合部分は、前記2種の材料の一方を約40体積パーセントから約60体積パーセント、前記2種の材料の他方を約60体積パーセントから約40体積パーセント含み、任意選択で、約0.1体積パーセントから約2体積パーセントのドーパント材料をさらに含み得る。別の実施形態では、混合部分のドーパント材料は、約5体積パーセントから約20体積パーセントの量で存在し得る。
【0028】
エレクトロルミネセンス層60は、正孔と電子の再結合の結果として発光可能な少なくとも1種の材料を含み得る。この少なくとも1種の材料は蛍光または燐光材料であるか、あるいは、電子と正孔の輸送能力が異なる2種の材料の一方または両方であり得る。別法として、発光可能なこの少なくとも1種の材料は他の材料であり得る。
【0029】
エレクトロルミネセンス層60は蛍光材料を含み得る。蛍光材料の実例には、例えば、クマリン、ジシアノメチレンピラン類、ポリメチン、オキサベンズアントラセン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル(carbostyl)、ペリレン、およびキナクリドン誘導体から選択される染料が含まれる。キナクリドン染料の実例には、キナクリドン、2−メチルキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2−クロロキナクリドン、2−フルオロキナクリドン、1,2−ベンゾキナクリドン、N,N’−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−メチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2,9−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−クロロキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−フルオロキナクリドン、N,N’−ジメチル−1,2−ベンゾキナクリドンなどが含まれる。蛍光成分は、例えば、層の約0.01から約10重量パーセント(例えば、約1から5重量パーセント)の量で存在し得る。
【0030】
エレクトロルミネセンス層60は、燐光材料、例えば、強いスピン−軌道相互作用を生じる重金属原子を含む有機金属化合物(例えば、Baldoら、「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Letters to Nature、395、151〜154頁(1998)(参照を通じてその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているもの)を含み得る。適切で非限定的な例には、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H23H−ポルフィン白金(II)(PtOEP)、および、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムが含まれる。
【0031】
低駆動電圧を実現するために、エレクトロルミネセンス層の厚さは約5nmから約50nmであり得る。一実施形態によれば、この厚さは約10nmから約40nmの範囲である。別の実施形態によれば、この厚さは約15nmから約30nmの範囲である。
【0032】
本明細書において開示されるOLEDは、トリアジンを含む電子輸送層70を備え得る。電子輸送層70を形作るのに適する多くのトリアジンがある。適切なトリアジンには、米国特許第6225467号および米国特許第6229012号(これらの開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に開示されているものが含まれる。適切なトリアジンの非限定的例には、トリフェニルトリアジン;4,4’−ビス[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル(T1);2,4,6−トリス(4−ビフェニリル)−1,3,5−トリアジン;2,4,6−トリス[4−(4’−メチルビフェニリル)]−1,3,5−トリアジン;2,4,6−トリス[4−(4’−tert−ブチルビフェニリル)−1,3,5−トリアジン;2,4,6−トリス[4−(3’,4’−ジメチルビフェニリル)]−1,3,5−トリアジン;2,4,6−トリス[4−(4’−メトキシビフェニリル)]−1,3,5−トリアジン;2,4,6−トリス[4−(3’−メトキシビフェニリル)]−1,3,5−トリアジン;2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン;2,4−ビス(4−ビフェニリル)−6−m−トリル−1,3,5−トリアジン;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジ−m−トリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジ−p−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジ−m−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4−β−ナフチル−6−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス−[2−(4,6−ジ−ビフェニリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;4−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−4’−[2−(4,6−ジ−m−トリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニル;2,7−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]フッ素;2,7−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]−9,9−ジメチルフルオレン;2,7−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]−9,9−ジエチルフルオレン;2,7−ビス−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−9,9−ジフェニルフルオレン;2,7−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]−9,10−ジヒドロフェナントレン;4,9−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]ジベンゾフラン;4,9−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]ジベンゾチオフェン;2,7−ビス−[2−(4,6−ジ−フェニル−1,3,5−トリアジニル)]−9,9−ジメチル−9−シラフルオレン;などが含まれる。電子輸送層は、全てトリアジンからなるか、あるいは、それは、他の材料と混合されたトリアジンを含み得る。例えば、トリアジンは、米国特許出願第11/122290号(代理人整理番号第0010.0024号、本出願と同時出願、その開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に記載されているように、有機および無機材料の少なくとも1種によりドープされていてもよい。特定の実施形態において、トリアジンを含む電子輸送層70は、エレクトロルミネセンス層60に有用であるとして開示された電子輸送材料少のなくとも1種をさらに含み得る。特定の実施形態において、電子輸送層70は、少なくとも50体積%の量でトリアジンを含む。通常、電子輸送層70の厚さは、約1nmから約200nm、例えば、約5nmから約100nm(例えば、約20nmから約70nm)の範囲である。
【0033】
様々な実施形態において、本発明のOLEDはカソード80を含む。カソード80は金属のような適切な材料を含み得る。この材料は、仕事関数の大きい、例えば約4.0eVから約6.0eVのeVの成分を含み得る。カソードは、仕事関数の小さい成分、例えば約2.5eVから約4.0eVのeVをもつ金属を含み得る。カソードは、仕事関数の小さい1種の金属(約4eV、例えば約2eVから約4eV)と少なくとも1種の他の金属との組合せから得られ得る。
【0034】
仕事関数の小さい金属と第2のまたは追加の金属との効果的な比率は、約0.1重量パーセント未満から約99.9重量パーセントである。仕事関数の小さい金属の実例には、アルカリ金属(例えば、リチウムもしくはナトリウム)、IIA族またはアルカリ土類金属(例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウム)、ならびに、希土類金属およびアクチノイドを含めてのIII族の金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ユウロピウム、テルビウム、もしくはアクチニウム)が含まれる。リチウム、マグネシウムおよびカルシウムは仕事関数が小さい適切な金属である。
【0035】
カソード80の厚さは、例えば、約10nmから約500nmの範囲であり得る。米国特許第4885211号(この開示は参照を通じて本明細書に組み込まれる)のMg:Agのカソードは、適切なカソード構成の1つである。別の適切なカソードは米国特許第5429884号(この開示は参照を通じて本明細書に全体として組み込まれる)に記載されており、そのカソードは、アルミニウムやインジウムのような仕事関数が大きい他の金属とのリチウム合金からなる。
【0036】
本明細書に開示されているOLEDは通常の方法によって作製され得る。様々な実施形態において、支持基板20(例えばガラス)が供用される。アノード30がガラス上に配置され、例えば、約1から約500nm(例えば約30から約100nm)の厚さのインジウム・スズ酸化物からなり得る(本開示を通して、各層の厚さの範囲は例として与えられている−適切な他の厚さが選択され得る)。アノードに接触する緩衝層40は任意選択で付けられ、約5から約500nm(例えば約10から約100nm)の厚さの導電性成分または正孔輸送材料からなり得る。有機正孔輸送層50は、アノード30または緩衝層40上に配置され、1から約200nm(例えば約5から約100nm)の厚さであり得る。エレクトロルミネセンス層60は、正孔輸送層50に接して付けられ得る。電子輸送層70は、エレクトロルミネセンス層60に接して付けられ、約5から約300nm(例えば約10から約100nm)の厚さであり得る。例えば仕事関数の小さい金属を含むカソード80は電子輸送層70に接して存在し得る。
【0037】
本開示によれば、本明細書において開示されているOLEDの実施形態は、交流(AC)および/または直流(DC)の駆動条件の下で作動され得る。いくつかの場合において、AC駆動条件が、特にデバイスの高温動作状態において、使用寿命を延ばすのに適切であり得る。適切な動作電圧は、少なくとも約100cd/mの輝度、典型的には少なくとも約500cd/mの輝度(例えば、約1000cd/mの輝度)を得るのに十分な電流を流すのに必要とされる外部印加駆動電圧である。このような電圧は、例えば、約0.5ボルトから約20ボルト(例えば約1ボルトから約15ボルト)の範囲であり得る。様々な実施形態によれば、動作電圧は、約6ボルト未満、例えば約5.5ボルト未満である。適切な駆動電流は、例えば、約1から約1000mA/cm(例えば約10mA/cmから約200mA/cm)の範囲であり、例えば約25mA/cmである。これらの範囲外の駆動電圧および電流もまた使用され得る。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は例示であり本教示の限定ではない。
【0039】
一群の有機発光デバイスを、物理蒸着(physical vapor deposition)を用いて作製した。全てのデバイスが、ガラス基板上にコーティングされたインジウム・スズ酸化物アノードと、Mg:Agのカソードを備えていた。全てのデバイスは、アノードとカソードとの間に配置された3層の発光部分をもっており、この部分は、下の表に記載した様々な組成の、正孔輸送層、エレクトロルミネセンス層および電子輸送層を備えていた。作製した後、デバイスを、25mA/cmの一定電流で作動させた。この電流での各デバイスの駆動電圧と輝度を求めた。次に、デバイスを、31.25mA/cmの一定電流で作動させて、輝度が初期輝度(L)の50%に低下するまでの時間(t1/2で表す)を求めた。次いで、初期輝度500cd/mからの半減期(t1/2)を計算した。
【0040】
【表1】

【0041】
比較のデバイス1および4は、エレクトロルミネセンス層がそれぞれBH2およびAlQだけを含み、第2のホスト材料を含まないので、安定性が低い。比較デバイス5の駆動電圧は、同様に電子輸送層がトリアジンを含んでいないために、5Vを超えている。対照的に、本発明のデバイス2、3、および6〜9は混合エレクトロルミネセンス層をもち、1000時間を超える半減期を実際に示し、5V未満の駆動電圧をもっている。
【0042】
これらの結果から、比較デバイスと異なり、本発明の実施形態によるOLEDは、低駆動電圧(5V未満)と十分な使用安定性(少なくとも500cd/mの初期輝度で1000時間を超える半減期)の両方を示し得る。本発明の実施形態はまた、発光色の異なる様々なデバイスを得るための様々な組成物のOLEDにおいて利用され得る。
【0043】
本明細書および添付の請求範囲では、そうではないと指摘されなければ、量、パーセンテージまたは比率を表す全ての数字と、本明細書および請求範囲において用いられている他の数値は、全ての事例において「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうではないと指摘されなければ、本明細書および添付の請求範囲に記載されている数値パラメータは、本開示により得られようとしている望みの性質に応じて変わり得る近似値である。最低でも、また請求範囲に対する等価物(equivalent)の教示の適用を制限するためでなく、各数値パラメータは、報告されている有効桁数を考慮に入れて、また通常の丸めの方法によって少なくとも解釈されるべきである。
【0044】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、名詞の単数形は、1つの指示物に明示的に明確に限定されていなければ、複数の指示物を含むことを記しておく。こうして、例えば、「ドーパント」の指示内容には2種以上のドーパントが含まれる。本明細書では、「含む」という用語とその文法的変形は非限定的であろうとするものであり、一連の項目の列挙は、列挙された項目に置換または付加され得る他の類似の項目の排除ではない。
【0045】
特定の実施形態が説明されたが、代案、修正、変更、改善、ならびに、現時点では予期されない、もしくは予期され得ない実質的な等価物が、出願人または他の当業者に思いつかれるかもしれない。したがって、出願され、補正され得る添付の特許請求の範囲は、このような全ての代案、修正、変更、改善、および実質的な等価物の全てを包含すると想定されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本開示による有機発光デバイスを示す図である。
【図2】本開示による別の有機発光デバイスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アノードと、
(b)正孔輸送層と、
(c)電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料を含むエレクトロルミネセンス材料層と、
(d)トリアジンを含む電子輸送層と、
(e)カソードと
を備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である有機発光デバイス。
【請求項2】
前記トリアジンが、前記電子輸送層に、前記電子輸送層の全体積に対して、少なくとも約50体積%の量で存在する請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記トリアジンが、4,4’−ビス[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1’−ビフェニルである請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記トリアジンが、無機および有機材料の少なくとも1種によりドープされている請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
電子と正孔に対する容量が異なる前記2種の材料の少なくとも1種が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムである請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
電子と正孔に対する容量が異なる前記2種の材料の一方が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムであり、他方が芳香族第3級アミン、アントラセン類およびテトラセン類から選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記芳香族第3級アミンが、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンであり、前記アントラセンが、2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンであり、前記テトラセンがルブレンである請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記エレクトロルミネセンス材料が、電子輸送材料および正孔輸送材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記エレクトロルミネセンス材料層が電子輸送材料およびバイポーラ輸送材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エレクトロルミネセンス材料層が正孔輸送材料およびバイポーラ輸送材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記エレクトロルミネセンス材料層が、正孔と電子の再結合の結果として発光可能な少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記発光可能な材料が蛍光材料および燐光材料から選択される請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも20mA/cmの電流密度、5V未満の駆動電圧で動作可能な請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも500cd/mの初期輝度で少なくとも1000時間の半減期を特徴とする使用安定性をもつ請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記エレクトロルミネセンス層の厚さが、約10から約50nm未満までの範囲である請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記エレクトロルミネセンス層の厚さが、約10から約30nmの範囲である請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
発光波長が約400nmから約700nmである請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
(a)アノードと、
(b)正孔輸送層と、
(c)電子と正孔の輸送能力が異なる少なくとも2種の材料を含むエレクトロルミネセンス材料層と、
(d)トリアジンを含む電子輸送層と、
(e)カソードと
を備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である少なくとも1つの有機発光デバイスを備えるディスプレイ。
【請求項19】
(a)アノードと、
(b)正孔輸送層と、
(c)(i)電子輸送材料、
(ii)正孔輸送材料、および
(iii)バイポーラ輸送材料、
の少なくとも2つを含むエレクトロルミネセンス材料層と、
(d)トリアジンを含む電子輸送層と、
(e)カソードと
を備え、前記エレクトロルミネセンス材料層の厚さが50nm未満である有機発光デバイス。
【請求項20】
(i)、(ii)、および(iii)の2つが、5:95から95:5の範囲の比率で存在する請求項19に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−313909(P2006−313909A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−128300(P2006−128300)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(501426046)エルジー.フィリップス エルシーデー カンパニー,リミテッド (732)
【Fターム(参考)】