説明

有機発光素子、それを備えた表示装置、及び有機発光素子の製造方法

【課題】
高輝度かつ輝度ムラの少ない画像表示が可能な有機EL素子を提供する
【解決手段】
有機EL素子100は、絶縁基板111と、絶縁基板111上に配列された複数の第1電極120と、絶縁基板111上に設けられた壁状絶縁層140と、第1電極120の上に設けられた発光有機層130と、壁状絶縁層140の上に設けられた補助電極150と、壁状絶縁層140、補助電極150、及び複数の発光有機130の表面全体を被覆するように設けられ、補助電極150に電気的に接続された、発光層130の光を透過させる第2電極160とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、それを備えた表示装置、及び有機発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置は従来一般に使用されている陰極線管(CRT)よりも消費電力が少なく、薄型化が可能である。このため、近年の情報処理機器の多様化に伴って、平面表示装置に対する需要が高まってきている。平面表示装置としては、例えば、液晶表示装置やエレクトロルミネッセント表示装置(以下、「EL表示装置」と略称する。)が挙げられる。その中でも有機EL表示装置は、低電圧駆動、全固体型、高速応答性、自発光性という特徴を有するため、特に研究開発が盛んに行われている。
【0003】
有機EL表示装置は、その駆動方式により、パッシブマトリクス方式(以下、「PM方式」と略称する。)と、アクティブマトリクス方式(以下、「AM方式」と略称する。)とに大別される。
【0004】
PM方式の有機EL素子は線順次駆動される。よって、PM方式で高輝度な有機EL素子を実現するためには、各画素(発光層)に大きな瞬間電力を印加しなければならない。従って、PM方式の有機EL素子では、発光層の劣化が激しい。その結果、PM方式の有機EL素子は製品寿命が短いという問題がある。特に、走査電極数が多い(高精細な)有機EL素子では各画素に印加される電圧が大きくなる。このため、高精細な有機EL素子は特に製品寿命が短い。
【0005】
一方、AM方式の有機EL素子では、各画素ごとにスイッチング素子(例えば、TFT)が設けられているため、各画素ごとにスイッチングを行うことができる。そのため、AM方式の有機EL素子では、原理的に走査電極数に制約がなく、1フレーム期間のほぼ100%に近い表示が可能である。このため、AM方式の有機EL素子によれば、PM方式の有機EL素子に比べて瞬間輝度を低くした場合であっても、高輝度で高品位な表示を実現することができる。また、AM方式の有機EL素子では、PM方式の有機EL素子よりも瞬間輝度を低くすることができるので、低い駆動電圧、及び、長い製品寿命を実現することができる。従って、近年は、AM方式の有機EL素子の研究開発が特に盛んに行われている。
【0006】
図14は、従来の有機EL素子600の概略断面図である。
【0007】
有機EL素子600は、基板601と、基板601の上に設けられた発光有機層603と、発光有機層603を狭持するように設けられた第1電極602及び第2電極604とを有する。
【0008】
第1電極602は発光有機層603にホールを注入する。第2電極604は発光有機層603に電子を注入する。第1電極602から注入されたホールと、第2電極604から注入された電子とが発光有機層603において再結合することにより、発光有機層603が発光する。有機EL素子600では、基板601及び第1電極602は光透過性を有する。第2電極604は光反射性を有する。発光有機層603の発光は第1電極602及び基板601を透過して有機EL素子600から出射される(ボトムエミッション方式)。
【0009】
AM方式の有機EL素子600では、基板601上にTFTや電極(画素電極、ゲート電極、ソース電極等)を配設する必要がある。一般的に、TFTや電極は光透過性の低い材料で形成される。具体的には、TFTは光透過率の低いシリコン等で形成される。このため、有機EL素子600では、画素面積に対する発光面積の割合(開口率)が小さいという問題がある。
【0010】
AM方式の有機EL素子は、さらに電流駆動方式の有機EL素子と電圧駆動方式の有機EL素子とに分けることができる。電流駆動方式の有機EL素子は各画素の表示性能のばらつきを抑制し、発光材料の劣化による表示性能の劣化を効果的に抑制することができる。しかし、電流駆動方式の有機EL素子では、電圧駆動方式の有機EL素子と比較して、各画素に配設されるTFTの個数が多くなる。このため、電流駆動方式の有機EL素子では、さらに開口率が小さくなるという問題がある。
【0011】
係る問題に鑑み、上面発光方式の有機EL素子が提案されている(例えば、特許文献1等)。上面発光方式の有機EL素子では、第2電極が光透過性を有し、第1電極が光反射性を有する。このため、光透過率が低いTFTや電極が配設された基板とは反対側の第2電極側から発光有機層の発光を取り出すことができる。従って、上面発光方式の有機EL素子は下面発光方式の有機EL素子よりも大きな開口率を有する。その結果、上面発光方式を採用することによって、高輝度な有機素子を実現することができる。
【特許文献1】特開2004−127551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上面発光方式の有機EL表示装置では、発光有機層からの発光は第2電極側から取り出される。このため、第2電極は光透過率の高い透明電極材料により形成されていることが好ましい。透明導電材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等が挙げられる。
【0013】
しかし、ITO等の透明導電材料は、従来電極材料として用いられてきた銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の低抵抗金属材料と比較して高い電気抵抗を有する。そのため、透明導電材料により形成された第2電極は大きな面抵抗を有する。従って、駆動電圧が高いという問題がある。
【0014】
また、第2電極の面抵抗が高い場合、第2電極の一部で電圧低下が発生する。このため、電気抵抗の大きな透明導電材料により形成された第2電極には均一な電圧が印加されない。従って、均一性の高い画像表示をすることができないという問題がある。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高輝度かつ輝度ムラのない画像表示が可能である有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる有機発光素子は、基板と、基板上にマトリクス状に配列された複数の第1電極と、基板上に設けられ、複数の第1電極をそれぞれに区画する壁状絶縁層と、複数の第1電極のそれぞれの上に設けられた発光有機層と、壁状絶縁層の上に設けられた補助電極と、壁状絶縁層、補助電極、及び発光有機層の表面全体を被覆するように設けられ、補助電極に電気的に接続された、発光有機層の光を透過させる第2電極とを備えている。
【0017】
本発明に係る有機発光素子では、補助電極が壁状絶縁層の一部分に設けられており、補助電極が設けられた壁状絶縁層の部分は補助電極が設けられていない部分よりも幅広であってもよい。
【0018】
本発明に係る有機発光素子では、補助電極が設けられた壁状絶縁層の部分の幅は補助電極が設けられていない部分の幅の2倍以上であってもよい。
【0019】
本発明に係る有機発光素子では、相互に隣接した複数の発光有機層によって各々の画素が構成されており、補助電極が、壁状絶縁層のうち、複数の画素を各々に区画する幅広部分の上に設けられていてもよい。
【0020】
本発明に係る有機発光素子では、発光有機層が、各々、発光色の異なる複数種類の発光材料のいずれかで形成されており、発光有機層はその発光色によって相互に発光面積が異なり、補助電極が、壁状絶縁層のうち発光面積が最も小さい発光有機層に隣接する幅広部分の上に設けられていてもよい。
【0021】
本発明に係る有機発光素子は、補助電極と第2電極との間に設けられ、補助電極と第2電極とを連通させるスルーホールが形成された發液層をさらに有し、第2電極はスルーホールを経由して補助電極に電気的に接続されていてもよい。
【0022】
本発明に係る有機発光素子は補助電極と第2電極との間に設けられた単分子層からなる發液層をさらに有していてもよい。
【0023】
本発明に係る有機発光素子では、発光有機層が有機エレクトロルミネッセンス発光材料を含んでいてもよい。
【0024】
本発明に係る表示装置は本発明に係る有機発光素子を備えている。
【0025】
本発明に係る製造方法は、本発明に係る有機発光素子を製造する方法に関する。本発明に係る製造方法は、湿式塗布法によりインクを塗布する塗布工程と、塗布工程によって塗布されたインクを乾燥させることによって上記発光有機層を形成する乾燥工程とを含む。
【0026】
本発明に係る有機発光素子の製造方法では、有機溶媒をはじく性質を有する材料により壁状絶縁層を形成してもよい。
【0027】
本発明に係る製造方法では、補助電極の表層に發液層を形成するために發液処理を施してもよい。
【0028】
本発明に係る製造方法では、發液処理が酸素プラズマ処理及び/又は4フッ化炭素プラズマ処理であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電気導電率の高い補助電極により第2電極の電圧降下の発生を効果的に抑制することができるので、高輝度かつ輝度ムラの少ない画像表示をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(実施形態1)図1は実施形態1に係る有機EL素子100の概略平面図である。
【0032】
図2は図1中の切り出し線II−IIによって切り出された部分の概略断面図である。
【0033】
有機EL素子100は、薄膜トランジスタ(TFT)基板110と、TFT基板110上に所定配列で(例えば、マトリクス状に)配設された複数の第1電極120と、複数の第1電極120をそれぞれに区画する壁状絶縁層140と、第1電極120のそれぞれの上に設けられた発光有機層130と、壁状絶縁層140の上に設けられた補助電極150と、壁状絶縁層140、補助電極150、及び発光有機層130の表面全体を被覆するように設けられ、補助電極150に電気的に接続された第2電極160とを備えている。第2電極160は発光有機層130の光を透過させる。尚、説明の便宜上、図1には、第2電極160は描画していない。
【0034】
TFT基板110は、絶縁基板111と、所定配列で配設された複数の第1電極120のそれぞれに接続されたTFT114と、TFT114に電気的に接続されたソース電極112及びゲート電極113と、TFT基板110の発光有機層130側表面を平坦にする平坦化膜115とを有する。
【0035】
絶縁基板111は有機EL素子100の機械的強度を担保でき、絶縁性を有するものであることが好ましい。例えば、絶縁基板111は、石英、ソーダガラス等のガラス、セラミックス等の無機材料、又は、ポリイミド、ポリエステル等の有機材料からなる基板により構成することができる。
【0036】
TFT114は、ゲート電極113と、ゲート電極113の上に設けられたゲート絶縁膜117と、ゲート絶縁膜117によりゲート電極113と絶縁された島状半導体118と、島状半導体118の周辺部分を覆うように中抜き形状に形成されたTFT電極119とを有する(ボトムゲート構造)。尚、本発明において、TFTはボトムゲート構造を有するのものに限定されない。TFTは、例えばトップゲート構造を有するものであってもよい。
【0037】
第1電極120はTFT基板110の上に所定配列で(例えば、マトリクス状に)配設されている。第1電極120は、平坦化膜115に設けられた電気接続部(スルーホール)121を経由してTFT電極119に接続されている。第1電極120は、TFT114から入力される信号に応じて、発光有機層130にホールを注入する。
【0038】
第1電極120はゲート電極113、ソース電極112等と重畳しないように設けることが好ましい。第1電極120と電極112、113等が重畳する場合、大きな寄生容量が生じるため、表示品位が低下するためである。
【0039】
第1電極120の材料としては、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属材料、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の導電性酸化物などが挙げられる。
【0040】
発光有機層130への高いホール注入効率を実現する観点から、第1電極120は、インジウム錫酸化物(ITO)等の高い仕事関数を有する材料により形成することがより好ましい。また、有機EL素子100では、発光層130の発光は第2電極160を透過させて取り出されるため、第1電極120は光反射性であることが好ましい。言い換えれば、第1電極120を銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の光反射性を有する材料により形成することが好ましい。
【0041】
第1電極120を、高い導電性と高い光反射率を有するアルミニウム(Al)等の金属層と、大きな仕事関数を有するインジウム錫酸化物(ITO)等の電極層とを含む多層構造としてもよい。この構成によれば、第1電極120の高い光反射率と高いホール注入効率とを同時に実現することができる。従って、より高輝度な有機EL素子100を実現することができる。
【0042】
尚、本実施形態1に係る有機EL素子100では、第1電極120の各々が矩形に構成されているが、第1電極120の各々は種々の形状(円形、楕円形等)に形成してもよい。
【0043】
発光有機層130をインクジェット法やスピンコート法等の有機溶媒を用いた湿式塗布法により形成する場合は、第1電極120にUV/O3処理等により、第1電極120の表面を親液化(インクになじむ性質を付与)しておくことが好ましい。これにより、第1電極120と発光有機層130を形成するためのインクとの親和性が向上するので、より均一な発光有機層130を形成することができる。よって、欠損の少ない有機EL素子100を実現することができる。
【0044】
壁状絶縁層140は、所定配列で(マトリクス状に)配列された複数の第1電極120をそれぞれに区画するように格子状に設けられている。壁状絶縁層140は加熱による形状・特性等の変化が少ない材料により形成することが好ましい。壁状絶縁層140の材料としては、感光性ポリイミド、アクリル系樹脂、メタリル系樹脂、又は、ノボラック系樹脂等が挙げられる。
壁状絶縁層140は、感光性樹脂により形成することがより好ましい。壁状絶縁層140の材料として感光性樹脂を用いることによって、フォトリゾグラフィー工程による壁状絶縁層140のパターニングが可能となる。従って、壁状絶縁層140をエッチングや剥離プロセス等を行うことなく容易にパターニングできる。
【0045】
発光有機層130を湿式塗布法(インクジェット法やスピンコート法等)により形成する場合は、壁状絶縁層140を有機溶媒(インク)をはじく性質(以下、「發液性」と称呼する。)を有する材料により形成することが好ましい。この構成によれば、湿式塗布法により発光有機層130を形成する場合においても、供給されたインクが壁状絶縁層140に付着することが抑制される。このため、均一な発光有機層130を形成することができる。
【0046】
また、供給されるインク液滴の着弾位置がずれ、壁状絶縁層140の斜面部分にインク液滴が落ちた場合であっても、インク液滴は壁状絶縁層140の斜面部分を滑り落ち、所望の滴下位置にインクが配置される。このため、ムラの少ない発光有機層130を形成することができる。發液性を有する壁状絶縁層140の材料としては、ポリイミドやアクリル樹脂等の有機材料にフッ素やシリコン系の添加物をドープした材料が挙げられる。
【0047】
尚、壁状絶縁層140を形成した後に、壁状絶縁層140に發液性を付与してもよい。發液性を付与する方法としては、例えば、酸素プラズマ処理、4フッ化炭素プラズマ処理等が挙げられる。
【0048】
発光有機層130は格子状に形成された壁状絶縁層140によりそれぞれに区画された第1電極120の上に設けられている。発光有機層130はホール輸送層131と発光層132とを有する。但し、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、発光有機層130は発光層132のみからなるものであってもよい。発光有機層130を、発光層132と、ホール注入層、ホール輸送層131、電子輸送層、及び、電子注入層のうちのいずれか1種以上の層とにより構成してもよい。
【0049】
ホール輸送層131は、第1電極120から注入されたホールを発光層132に輸送する。ホール輸送層131は高いホール輸送効率を有することが好ましい。高い輸送効率を有し、ホール輸送層131に好適な低分子材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクドリン化合物、スチルアミン化合物等が挙げられる。具体的に、芳香族第3級アミン化合物としては、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)等が挙げられる。
【0050】
ホール輸送層131に好適な高分子材料としては、ポリアニリン、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネート(PEDT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン誘導体)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。ホール輸送層131に好適な高分子材料前駆体としては、ポリ(P−フェニレンビニレン)前駆体、ポリ(P−ナフタレンビニレン)前駆体等が挙げられる。
【0051】
ホール輸送層131は単層構造に限定されない。ホール輸送層131は多層構造であってもよい。また、ホール輸送層131と発光層132との間にホール注入層をさらに設けてもよい。ホール注入層を設けることによって、発光層132へのホール注入効率を向上させることができる。従って、より高輝度な有機EL素子100を実現することができる。
【0052】
第1電極120から注入されたホールと第2電極160から注入された電子とは発光層132において再結合され、発光層132中に励起子が形成される。励起子が基底状態へ失活する際に発光層132から光が出射される。
【0053】
発光層132は、低分子発光材料を含むものであっても、高分子発光材料を含むものであってもよい。発光層132が低分子発光材料を含むものである場合は、真空蒸着法等の方法により成膜することができる。一方、発光層132が高分子発光材料を含むものである場合は、インクジェット法やスピンコート法等の湿式塗布法により成膜することができる。湿式塗布法によれば、高精度かつ大面積TFT基板110を有する有機EL素子100を少ない工程で安価に製造することができる。
【0054】
発光層132の材料としては、ポリ(2−デシルオキシ−1、4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2、5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1、4−フェニル−アルト−1、4−フェニレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1、4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)等が挙げられる。
【0055】
第2電極160は、補助電極150、発光有機層130、及び壁状絶縁層140の表面全体を覆うように面状に形成されている。第2電極160は発光有機層130に電子を注入する。第2電極160は発光層132の光を透過させるため、第2電極160が高い光透過率を有することが好ましい。光透過率が高く、第2電極160に好適な材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等が挙げられる。
【0056】
発光有機層130への高い電子注入効率を実現する観点から、第2電極160を仕事関数の小さな材料により形成することが好ましい。仕事関数が小さい材料としてはカルシウム(Ca)やアルミニウム(Al)等が挙げられる。また、第2電極160を小さな仕事関数を有するカルシウム(Ca)やアルミニウム(Al)からなる金属層と、高い光透過率を有するインジウム錫酸化物(ITO)等からなる透明電極層との積層により構成してもよい。この構成によれば、第2電極160の高い電子注入効率と、高い光透過率を同時に実現することができる。従って、より高輝度な有機EL素子100を実現することができる。
【0057】
第2電極160は、金属等からなる極薄の薄膜により形成してもよい。
【0058】
尚、本実施形態1において、第2電極160は発光有機層130の表面全体を被覆するように設けられるが、第2電極160を2つ以上の面状電極によって構成してもよい。
【0059】
第2電極160は、その下に形成された補助電極150と電気的に接続されている。補助電極150は第2電極160と比べて低い電気抵抗を有する。このため、第2電極160の面抵抗を低下させることができる。従って、第2電極160が電圧降下することによる画像表示ムラの発生を効果的に抑制することができるので、均一な画像表示が可能な有機EL素子100を実現することができる。また、補助電極150により第2電極160の面抵抗を低下させることができるため、駆動電圧の低い有機EL素子100を実現することができる。
【0060】
補助電極150の材料としては低抵抗金属材料等が挙げられる。低抵抗金属材料の具体例としては、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等が挙げられる。
【0061】
図1に示すように、本実施形態1では補助電極150は壁状絶縁層140の全体の上に設けられている。しかし、本発明は何らこの構成に限定されるものではない。
【0062】
図3〜5は、補助電極150の形成例を示す概略平面図である。
【0063】
図3、図4、及び図5に示すように、補助電極150が壁状絶縁層140の一部分に形成されていてもよい。また、図5に示すように、補助電極150が断片的に形成されていてもよい。図3〜5に示した構成によっても、第2電極160の面抵抗を低下することができるので、第2電極160の電圧降下の発生を抑制することができる。
【0064】
補助電極150を壁状絶縁層140の一部分に形成する場合、補助電極150を形成しない壁状絶縁層140の部分を、補助電極150を形成する壁状絶縁層140の部分よりも幅狭に形成してもよい。言い換えれば、補助電極150が設けられた壁状絶縁層140の部分は補助電極150が設けられていない部分よりも幅広であってもよい。この構成によれば、有機EL素子100のうち、画像表示領域に対する、壁状絶縁層140の占める面積、すなわち、非発光領域の面積の比をより小さくすることができる。従って、より開口率が高く、高輝度な有機EL素子100を実現することができる。
【0065】
補助電極150が設けられている壁状絶縁層140の部分の幅は補助電極150が設けられていない壁状絶縁層140の部分の幅の2倍以上であることがより好ましい。壁状絶縁層140は、発光有機層130を形成する際に、隣接する発光有機層130が混じり合うことが抑制される。例えば、インクジェット法により発光有機層130を形成する場合、壁状絶縁層140の幅は、一般的に、インク液滴の着弾位置ずれが発生した場合であっても隣接する発光有機層130にインク液滴が混入しないような最低幅に設定されている。従って、補助電極150を形成する壁状絶縁層140の部分の幅を隣接する発光有機層130にインク液滴が混入しないような幅の2倍以上に設定することにより、発光有機層130を形成する際に、インク液滴の着弾位置ずれによって壁状絶縁層140の上の補助電極150がインクによって覆われてしまうことを抑止することができる。よって、補助電極150と第2電極160とが確実に電気的に接続された、製造容易な有機EL素子100を実現することができる。
【0066】
有機EL素子100が、それぞれ赤色(R)発光、緑色(G)発光、青色(B)発光である副画素(絵素)を有するカラー有機EL素子である場合は、壁状絶縁層140のうち、発光色が赤色(R)である副画素、緑色(G)である副画素、及び青色(B)である副画素により構成される画素を各々に区画する部分の上にのみ補助電極150を設けてもよい。
【0067】
尚、本明細書において、画素は2つ以上の副画素を含むものであり、相互に発光色の異なる3つの副画素で構成されているものに限定されるものではない。ひとつの画素に含まれる2つ以上の副画素のそれぞれは同一の発光色を有するものであってもよい。また、ひとつの画素に含まれる2つ以上の副画素のそれぞれは相互に異なる発光色を有するものであってもよい。例えば、各々発光色が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)である4つによってひとつの画素を構成してもよい。副画素とはひとつの発光有機層130によって構成されるものである。
【0068】
図6は、壁状絶縁層140のうち、画素を各々に区画する部分の上に補助電極150を設けた場合の有機EL素子100の概略断面図である。
【0069】
図6に示した構成では、発光色が赤色(R)である発光有機層130Rと、発光色が緑色(G)である発光有機層130Gと、発光色が青色(B)である発光有機層130Bとにより各々の画素が構成されている。そして、画素を各々に区画する部分、すなわち、発光有機層130Rと発光有機層130Bとの間に設けられた壁状絶縁層140aの上にのみ補助電極150が設けられている。発光有機層130Rと発光有機層130Gとの間に設けられた壁状絶縁層140b、及び発光有機層130Gと発光有機層130Bとの間に設けられた壁状絶縁層140bには補助電極150が設けられていない。補助電極150を壁状絶縁層140の全体に形成した場合は、補助電極150を形成しない場合と比べると、プロセス的に制約を受けることが多く、壁状絶縁層140の幅を広げることを余儀なくされることがあり、画素ひとつあたりの発光面積が小さくなる場合がある。しかしながら、この構成によれば、画素ひとつあたりの発光面積が小さくなることを必要最小限に抑えることができる。よって、高輝度な有機EL素子100を実現することができる。尚、図6に示した構成によっても、補助電極150による第2電極160の面抵抗を低減する効果が得られる。
【0070】
補助電極150を発光面積が最も小さい発光有機層130に隣接する壁状絶縁層140の部分の上に設けてもよい。具体的には、発光有機層130Gと発光有機層130Rとの間に設けられた壁状絶縁層140の部分の上に補助電極150を設けてもよい。尚、発光効率、色度、寿命特性の相互関係を考慮した場合、発光有機層130Gが最も小さい発光面積になり、次に発光有機層130Rが小さな発光面積になる。
【0071】
図7は発光有機層130Gと発光有機層130Rとの間に設けられた壁状絶縁層140aの上に補助電極150を設けた場合の有機EL素子100の概略断面図である。
【0072】
一般的に、発光材料のうち発光色が緑色(G)である発光材料が最も発光効率が高く、発光色が赤色(R)である発光材料が最も発光輝度が低い。発光色が青色(B)である発光材料は発光色が緑色(G)である発光材料の発光輝度と発光色が赤(R)である発光材料の発光輝度との間の発光輝度を有する。このため、赤色(R)の発光材料を含む発光有機層130R、緑色(G)の発光材料を含む発光有機層130G、青色(B)の発光材料を含む発光有機層130Bのそれぞれが同じ発光面積を有する有機EL素子では、すべての発光有機層130を同一輝度で発光させる場合、発光有機層130Rに他の発光有機層130G、130Bよりも大きな電流を流す必要がある。一方、素子寿命に関しては、発光有機層130Bが最も輝度減衰率が速い。このため、経時的に色バランスが変化し、表示画像に色ずれが発生する。
【0073】
そこで、発光有機層130Bを最も大きな発光面積とし、発光有機層130Gを最も小さな発光面積とすることによって、発光有機層130R,130Gに対する発光有機層130Bの相対的劣化速度を低減することができる。言い換えれば、発光有機層130R、130G、130Bの各々の輝度減衰速度を略同一にすることができる。このため、表示画像の色バランスが経時的に変化しにくく、製品寿命の長い有機EL素子100を実現することができる。
発光有機層130Bを最も大きな発光面積とし、発光有機層130Gを最も小さな発光面積とした場合、TFT基板110の設計上の制約から、発光面積の小さな発光有機層130Gと発光有機層130Rとの間の非発光領域が相対的に幅広になることがある。そこで、発光有機層130Gと発光有機層130Rとの間の幅の広い非発光領域に幅広の壁状絶縁層140を形成し、その上に補助電極150を形成することによって、開口率をほとんど犠牲にすることなく補助電極150を設けることができる。よって、この構成によれば、表示画像の色バランスが経時的に変化しにくく、製品寿命が長く、かつ、開口率が高い、高輝度な有機EL素子100を実現することができる。
【0074】
以下、有機EL素子100の製造方法について説明する。
【0075】
図8は有機EL素子100の製造工程の一部を表すフォローチャートである。
【0076】
まず、絶縁基板111の上にソース電極112、ゲート電極113、TFT114、及び平坦化膜115を形成する。ソース電極112、ゲート電極113、TFT114、及び平坦化膜115の成膜方法及びパターニング方法は限定されない。平坦化膜115の上に、アルミニウム(Al)等の導電性材料を、スパッタ法等により成膜する。成膜した導電膜をフォトリゾグラフィー技術等により所望の形状にパターニングすることにより第1電極120を形成する(ステップ1)。発光有機層130を湿式塗布法(インクジェット法、スピンコート法等)により形成する場合は、UV/O3処理等により、第1電極120の表面を親液化(インクジェット法等に用いる有機溶媒に馴染みやすく)しておくことが好ましい(ステップ2)。親液化しておくことによって、第1電極120と発光有機層130との親和性が向上し、より均一な発光有機層130を形成することができる。従って、欠損の少ない有機EL素子100を実現することができる。
【0077】
第1電極120を形成したTFT基板110上に、壁状絶縁層140を形成する(ステップ3)。壁状絶縁層140は、例えば以下に示す方法により形成することができる。まず、スピンコート法等を用いて、感光性ポリイミド等からなる薄膜を成膜する。形成したポリイミド等の薄膜を、フォトレジスト塗布、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、エッチング、及び、フォトレジスト剥離という一連のフォトレジスト工程により所望の形状にパターニングすることにより壁状絶縁層140を形成することができる。発光有機層130をインクジェット法やスピンコート法等の有機溶媒を用いた湿式塗布法により形成する場合は、例えば、壁状絶縁層140をフッ素やシリコン系の添加物をドープした、發液性を有する材料により形成することが好ましい。壁状絶縁層140を發液性材料により形成するかわりに、壁状絶縁層140の表面を發液化する処理(発光有機層130の材料を含んだ液体(インク)をはじく性質を付与する処理)を行ってもよい。發液化処理としては、酸素プラズマ処理、4フッ化炭素プラズマ処理等が挙げられる。このように壁状絶縁層140の表面を發液性にしておくことによって、発光有機層130の材料を含んだインク液滴の着弾位置ずれを効果的に防止することができる。
【0078】
壁状絶縁層140の上に補助電極150を形成する。補助電極150は、例えば、スパッタ法等により形成することができる。壁状絶縁層140によりマトリクス状に区画されたそれぞれの第1電極120上に、湿式塗布法(インクジェット法、スピンコート法等)を用いて、ホール輸送層131及び発光層132をそれぞれ成膜することにより、発光有機層130を形成する。発光有機層130をインクジェット法やスピンコート法等の湿式塗布法を用いて形成することにより、比較的少ない製造工程で安価に発光有機層130を形成することができる。
【0079】
湿式塗布法を用いて発光有機層130を形成する場合、具体的には発光有機層130の原料を含むインクを塗布する工程(ステップ4)及び塗布したインクを乾燥させる工程(ステップ5)を行う。以下、詳細に発光有機層130の形成工程を説明する。まず、ホール輸送層131の原料を含むインクを第1電極120上に塗布する(ステップ4)。塗布したインクを乾燥させることによってホール輸送層131を形成する(ステップ5)。次に、ホール輸送層131の上に、発光層132の原料を含むインクを塗布する(ステップ4)。塗布したインクを乾燥させることによって発光層132を形成する(ステップ5)。
【0080】
発光有機層130の表面全体を被覆するように第2電極160を形成する。第2電極160はスパッタ法等により形成することができる。
【0081】
図9は有機EL素子100を備えた有機EL表示装置Dの模式図である。
【0082】
上述のように、有機EL素子100は、高輝度かつ輝度ムラの少ない画像表示が可能であり、少ない製造工程により安価に製造することができるものである。従って、有機EL素子100を用いた有機EL表示装置Dもまた、高輝度かつ輝度ムラの少ない画像表示が可能であり、少ない製造工程により安価に製造することができる。
【0083】
(実施形態2)
実施形態2に係る有機EL素子200は、補助電極のパターン及び画素の構成を除いては実施形態1に係る有機EL素子100と同様の構成を有する。ここでは、実施形態2に係る有機EL素子200の補助電極パターン及び画素Pの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0084】
図10は本実施形態2に係る有機EL素子200の構成を表す平面図である。
【0085】
有機EL素子200は、発光色が青色(B)の発光有機層230Bと、発光色が赤色(R)の発光有機層230Rと、発光色が緑色(G)の発光有機層230Gとを有する。発光有機層230B、230R、230G中、発光有機層230Bの発光面積が最も大きく、発光有機層230Gの発光面積が最も小さい。発光有機層230Rの発光面積は発光有機層230Bの発光面積よりも小さく、発光有機層230Gの発光面積よりも大きい。例えば、各色の発光材料の特性等を考慮した上で、発光有機層630Gの発光面積SG、発光有機層630Rの発光面積SR、発光有機層630Bの発光面積SBの比、SG:SR:SBを1:2:10とすることができる。
【0086】
上述のように、一般的に、発光材料のうち発光色が緑色(G)である発光材料が最も発光効率が高く、発光色が赤色(R)である発光材料が最も発光輝度が低い。また、素子寿命に関しては、発光有機層230Bが最も輝度減衰率が速い。このため、経時的に色バランスが変化し、表示画像に色ずれが発生する。
【0087】
本実施形態2に係る有機EL素子200のように、発光色によって発光有機層230の発光寿命(輝度減衰速度)及び発光効率が異なることを考慮して、本実施形態2に係る有機EL素子200のように発光有機層230B、230R、230Gのそれぞれの発光面積を異ならしめることによって、経時的な色バランスの変化が抑制され、製品寿命の長い有機EL素子200を実現することができる。特に、各色の発光材料の特性を考慮すると、本実施形態3のように、発光有機層230Bの発光面積を最大とし、発光有機層230Gの発光面積を最小とすることが好ましい。
【0088】
有機EL素子200では、各々の画素Pが、発光有機層230B、230R、230Gを各々ひとつずつ備えている。ひとつの画素P内において、発光有機層230Bは発光有機層230R及び発光有機層230Gに隣接しており、発光有機層230Gは発光有機層230R及び発光有機層230Bに隣接している。言い換えれば、発光有機層230B、230R、230Gが略デルタ配列されている。本明細書において、「略デルタ配列」とは3つの発光領域の重心が三角形を形成する配列をいう。
【0089】
図10に示す有機EL素子200の場合、TFT基板の設計上の制約(特にスルーホールの位置的制約)から、発光面積が最も小さい発光有機層230Gの周辺に相対的に幅広の間隔が生じることがある。具体的には、発光有機層230Bと発光有機層230R及び230Gとの間に相対的に幅広の間隔が生じることがある。本実施形態2に係る有機EL素子200では、その幅広部分に設ける壁状絶縁層の幅を他の部分と比べて相対的に広くしている。そして、その壁状絶縁層の幅広部分に補助電極250を設けている。このような構成にすることによって、開口率をほとんど低下させることなく、補助電極250を設けることができる。従って、高輝度であり、表示ムラの少ない有機EL素子200を実現することができる。
【0090】
(実施形態3)
実施形態3に係る有機EL素子300は、補助電極のパターン及び画素の構成を除いては実施形態1に係る有機EL素子100と同様の構成を有する。ここでは、実施形態3に係る有機EL素子300の補助電極パターン及び画素Pの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0091】
図11は本実施形態3に係る有機EL素子300の構成を表す平面図である。
【0092】
有機EL素子300は、発光色が青色(B)の発光有機層330Bと、発光色が赤色(R)の発光有機層330Rと、発光色が緑色(G)の発光有機層330Gとを有する。発光有機層330B、330R、330G中、発光有機層330Bの発光面積が最も大きく、発光有機層330Gの発光面積が最も小さい。発光有機層330Rの発光面積は発光有機層330Bの発光面積よりも小さく、発光有機層330Gの発光面積よりも大きい。このため、本実施形態3に係る有機EL素子300は経時的な色バランスの変化が少なく、長い製品寿命を有する。
【0093】
有機EL素子300では、各々の画素Pが、発光有機層330B、330R、330Gを各々ひとつずつ備えている。ひとつの画素P内において、発光有機層330B、330R、330Gが略デルタ配列されている
図11に示す有機EL素子300の場合、TFT基板の設計上の制約(特にスルーホールの位置的制約)から、発光面積が最も小さい発光有機層330Gの周辺に相対的に幅広の間隔が生じることがある。本実施形態3に係る有機EL素子300では、発光有機層330Gと発光有機層330Rとの間、及び発光有機層330Gと発光有機層330Bとの間に補助電極350が設けられている。このような構成にすることによって、開口率をほとんど低下させることなく、補助電極350を設けることができる。従って、高輝度であり、表示ムラの少ない有機EL素子300を実現することができる。
【0094】
尚、本実施形態3では、複数の補助電極350が断片的に形成されているが、この場合であっても第2電極(上部共通電極)の面抵抗を低下させる効果が得られる。
【0095】
(実施形態4)
実施形態4に係る有機EL素子400は、補助電極のパターン及び画素の構成を除いては実施形態1に係る有機EL素子100と同様の構成を有する。ここでは、実施形態4に係る有機EL素子400の補助電極パターン及び画素Pの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0096】
図12は本実施形態4に係る有機EL素子400の構成を表す平面図である。
【0097】
有機EL素子400は、発光色が青色(B)の発光有機層430Bと、発光色が赤色(R)の発光有機層430Rと、発光色が緑色(G)の発光有機層430Gとを有する。発光有機層430B、430R、430G中、発光有機層430Bの発光面積が最も大きく、発光有機層430Gの発光面積が最も小さい。発光有機層430Rの発光面積は発光有機層430Bの発光面積よりも小さく、発光有機層430Gの発光面積よりも大きい。このため、本実施形態4に係る有機EL素子400は経時的な色バランスの変化が少なく、長い製品寿命を有する。
【0098】
有機EL素子400では、各々の画素Pが、発光有機層430B、430R、430Gを各々ひとつずつ備えている。ひとつの画素P内において、発光有機層430B、430R、430Gがストライプ配列されている。具体的には、それぞれ細長形状に形成された発光有機層430B、430R、430Gが相互に並行に配列されている。
【0099】
図12に示す有機EL素子400の場合、TFT基板の設計上の制約(特にスルーホールの位置的制約)から、発光面積が最も小さい発光有機層430Gの周辺に相対的に幅広の間隔が生じることがある。具体的には、発光有機層430Gと発光有機層430Rとの間に相対的に幅広の間隔が生じることがある。本実施形態4に係る有機EL素子400では、その幅広部分に設ける壁状絶縁層の幅を他の部分と比べて相対的に広くしている。そして、その壁状絶縁層の幅広部分に補助電極450を設けている。このような構成にすることによって、開口率をほとんど低下させることなく、補助電極450を設けることができる。従って、高輝度であり、表示ムラの少ない有機EL素子400を実現することができる。
【0100】
以上、実施形態1〜4として補助電極の種々のパターンについて説明したが、これらは一例であって、本発明は何らこれらの構成に限定されるものではない。
【0101】
(実施形態5)図13は実施形態5に係る有機EL素子500の概略断面図である。
【0102】
本実施形態5に係る有機EL素子500は、実施形態1に係る有機EL素子100の補助電極150と第2電極160との間にさらに發液層が設けられた構成となっている。
【0103】
具体的には、有機EL素子500は、TFT基板510と、TFT基板510上に所定配列で(例えば、マトリクス状に)配設された複数の第1電極520と、複数の第1電極520をそれぞれに区画する壁状絶縁層540と、第1電極520のそれぞれの上に設けられた発光有機層530と、壁状絶縁層540の上に設けられた補助電極550と、補助電極550を被覆する發液層570と、發液層570、壁状絶縁層540、及び発光有機層530の表面全体を被覆するように設けられ、スルーホール571を経由して補助電極550に電気的に接続された第2電極560とを備えている。発光有機層530はホール輸送層531と発光層532とを有する。第2電極560は発光層532の光を透過させる。
【0104】
TFT基板510は、絶縁基板511と、所定配列で配設された複数の第1電極520のそれぞれに接続されたTFT514と、TFT514に電気的に接続されたソース電極512及びゲート電極513と、TFT基板510の発光有機層530側を平坦にする平坦化膜515とを有する。
【0105】
發液層570は發液性を有する。このため、例えば、インクジェット法により発光有機層530を形成する際に、インク液滴の着弾ずれが起こり、發液層570の上にインク液滴が着弾した場合であっても、所望の位置に滑り落ちる。よって、インク液滴が發液層570の上に残留することが抑止される。従って、本実施形態5では、補助電極550と第2電極560との確実な電気的接続を確保することができる。
【0106】
發液層570の材料としては、例えばフッ素やシリコン系の材料をドープしたポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0107】
また、スピンコート法等を用いて、發液性を有さない膜を形成した後、その膜に發液処理を行うことによって發液性の發液層570を形成してもよい。發液処理としては、例えば酸素プラズマ処理、4フッ素プラズマ処理等が挙げられる。酸素プラズマ処理と4フッ素プラズマ処理とを併用してもよい。
【0108】
先に形成した補助電極550の表面に酸素プラズマ処理、4フッ素プラズマ処理等の發液処理を施すことにより補助電極550の表層に發液層570を形成してもよい。
【0109】
尚、發液層570を単分子層としてもよい。単分子層は非常に薄く、電気導電性を有する。このため、単分子層により發液層570を構成した場合は、發液層570にスルーホール571を設けることなく、補助電極550と第2電極560とを電気的に接続をすることができる。従って、より製造が容易な有機EL素子500を実現することができる。
【0110】
尚、単分子層の材料としてはステアリン酸等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施形態1に係る有機EL素子200の概略平面図である。
【図2】図1中の切り出し線II−IIによって切り出された部分の概略断面図である。
【図3】補助電極150の形成例を示す概略平面図である。
【図4】補助電極150の形成例を示す概略平面図である。
【図5】補助電極150の形成例を示す概略平面図である。
【図6】壁状絶縁層140のうち、画素を各々に区画する部分の上に補助電極150を設けた場合の有機EL素子100の概略断面図である。
【図7】発光有機層130Gと発光有機層130Rとの間に設けられた壁状絶縁層140aの上に補助電極150を設けた場合の有機EL素子100の概略断面図である。
【図8】有機EL素子100の製造工程の一部を表すフォローチャートである。
【図9】有機EL素子100を備えた有機EL表示装置Dの模式図である。
【図10】本実施形態2に係る有機EL素子200の構成を表す平面図である。
【図11】本実施形態3に係る有機EL素子300の構成を表す平面図である。
【図12】本実施形態4に係る有機EL素子400の構成を表す平面図である。
【図13】実施形態5に係る有機EL素子500の概略断面図である。
【図14】従来の有機EL素子600の概略断面図である。
【符号の説明】
【0112】
100、200、300、400、500、600 有機EL素子
110、510 TFT基板
111、511 絶縁基板
112、512 ソース電極
113、513 ゲート電極
114、514 TFT
115、515 平坦化膜
117 ゲート絶縁膜
118 島状半導体
119 TFT電極
120、520、620 第1電極
130、230、330、430、530、630 発光有機層
131、531、631 ホール輸送層
132、532、632 発光層
140、540、640 壁状絶縁層
150、250、350、450、550、650 補助電極
160、560 第2電極
570 發液層
571、680 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上にマトリクス状に配列された複数の第1電極と、
上記基板上に設けられ、上記複数の第1電極をそれぞれに区画する壁状絶縁層と、
上記複数の第1電極のそれぞれの上に設けられた発光有機層と、
上記壁状絶縁層の上に設けられた補助電極と、
上記壁状絶縁層、上記補助電極、及び上記発光有機層の表面全体を被覆するように設けられ、該補助電極に電気的に接続された、上記発光有機層の光を透過させる第2電極と、
を備える有機発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載された有機発光素子において、
上記補助電極は、上記壁状絶縁層の一部分に設けられており、
上記補助電極が設けられた壁状絶縁層の部分は該補助電極が設けられていない部分よりも幅広である有機発光素子。
【請求項3】
請求項2に記載された有機発光素子において、
上記補助電極が設けられた壁状絶縁層の部分の幅は上記補助電極が設けられていない部分の幅の2倍以上である有機発光素子。
【請求項4】
請求項2に記載された有機発光素子において、
相互に隣接した複数の上記発光有機層によって各々の画素が構成されており、
上記補助電極は、上記壁状絶縁層のうち、上記複数の画素を各々に区画する幅広部分の上に設けられている有機発光素子。
【請求項5】
請求項2に記載された有機発光素子において、
上記発光有機層は、各々、発光色の異なる複数種類の発光材料のいずれかで形成されており、
上記発光有機層はその発光色によって相互に発光面積が異なり、
上記補助電極は、上記壁状絶縁層のうち発光面積が最も小さい発光有機層に隣接する幅広部分の上に設けられている有機発光素子。
【請求項6】
請求項1に記載された有機発光素子において、
上記補助電極と上記第2電極との間に設けられ、該補助電極と該第2電極とを連通させるスルーホールが形成された發液層をさらに有し、
上記第2電極は上記スルーホールを経由して上記補助電極に電気的に接続されている有機発光素子。
【請求項7】
請求項1に記載された有機発光素子において、
上記補助電極と上記第2電極との間に設けられた単分子層からなる發液層をさらに有する有機発光素子。
【請求項8】
請求項1に記載された有機発光素子において、
上記発光有機層が有機エレクトロルミネッセンス発光材料を含む有機発光素子。
【請求項9】
請求項1に記載された有機発光素子を備えた表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載された有機発光素子を製造する方法であって、
湿式塗布法によりインクを塗布する塗布工程と、
上記塗布工程によって塗布された上記インクを乾燥させることによって上記発光有機層を形成する乾燥工程とを含む有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載された有機発光素子の製造方法において、
有機溶媒をはじく性質を有する材料により上記壁状絶縁層を形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載された有機発光素子の製造方法であって、
上記補助電極の表層に發液層を形成するために發液処理を施すことを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載された有機発光素子の製造方法において、
上記發液処理は酸素プラズマ処理及び/又は4フッ化炭素プラズマ処理であることを特徴とする有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−59796(P2006−59796A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92088(P2005−92088)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】