説明

有機発光素子

【課題】放置劣化を抑制し、駆動電圧が低く、かつ高効率の有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極12と陰極17と、陽極12と陰極17との間に挟持され、少なくとも発光層14と有機化合物層15と電子注入層16とを順次積層してなる積層体と、から構成され、電子注入層16が、陰極17と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、有機化合物層15が下記一般式[I]で示される有機化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機発光素子について盛んに研究開発がなされている。ここで、有機発光素子の発光効率を向上させる要件として、素子への正孔、電子の注入の効率を向上させることが挙げられる。
【0003】
ここで有機発光素子の電子注入効率を向上させる方法として、電子供与性のドナードーパントとして機能する金属を有する電子注入層を設ける方法がある。具体例として、特許文献1に開示されている有機発光素子が挙げられる。また別の方法として、金属酸化物あるいは金属塩をドナードーパントとして有する電子注入層を設ける方法がある。具体例として、特許文献2に開示されている有機発光素子が挙げられる。
【0004】
一方、特許文献3及び4には、特許文献1及び2にてそれぞれ開示されているドナードーパントを有する層を設けた有機発光素子において、発光効率の経時的な低下(放置劣化)が起こり得ることが記載されている。
【0005】
他方、特許文献5にはジアザフルオレン化合物及びこれを用いた有機発光素子が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−270171号公報
【特許文献2】特開平10−270172号公報
【特許文献3】特開2005−063910号公報
【特許文献4】特開2005−332690号公報
【特許文献5】特開2004−091444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにドナードーパントを有する層が設けられている有機発光素子には、経時的に発光効率が低下する現象(放置劣化現象)が見られることがある。ここで放置劣化現象は、以下のようにして発生すると考えられる。
(i)まず電子注入層が有するドナードーパントそのもの、又はドナードーパント由来のアルカリ金属成分やアルカリ土類金属成分(以下、金属成分と呼ぶ)が、発光層へ拡散する。
(ii)次にこれら金属成分と発光層に含まれる励起子とが相互作用することにより、消光を引き起こす。
【0008】
従って、放置劣化現象を回避するためには、ドナードーパントを有する層を設けない方がよい、という考え方が生じ得る。しかしドナードーパントを有する層を設けないと、陰極からの電子注入性が低下するので、素子の駆動電圧が上昇してしまう。
【0009】
一方、ドナードーパントを有する層を設けた場合、ドーパント濃度を低くするか、あるいは発光層と電子注入層を空間的に隔離することによって放置劣化現象を抑制可能であることが特許文献3及び4に記載されている。しかし、膜厚やドーパント濃度を制限することなく、放置劣化を抑えることは難しかった。
【0010】
本発明の目的は、放置劣化を抑制し、駆動電圧が低く、かつ高効率の有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成され、該電子注入層が、該陰極と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、該有機化合物層が下記一般式[I]で示される有機化合物を含むことを特徴とする。
【0012】
【化1】

(式[I]において、R1及びR2は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、同じであっても異なっていてもよい。R3及びR4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは、1乃至10の整数を表す。nが2以上のとき異なるジアザフルオレン骨格に結合するR3同士及びR4同士は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放置劣化を抑制し、駆動電圧が低く、かつ高効率の有機発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成される。
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の有機発光素子について説明する。
【0016】
図1は本発明の有機発光素子の一実施形態を示す模式図である。図1の有機発光素子1は、基板11上に、陽極12、正孔輸送層13、発光層14、有機化合物層15、電子注入層16及び陰極17が順次設けられている。
【0017】
尚、本実施形態においては、陰極17が透明電極であるインジウム錫酸化物(ITO)であり、基板と反対側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション型素子の例で説明している。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、基板側から光を取り出すボトムエミッション型素子及び両面発光素子等にも適用することができる。
【0018】
また本発明の有機発光素子は、図1に示される実施形態に限定されない。例えば、正孔注入層等の介在層を設けてもよい。
【0019】
次に、本発明の有機発光素子の主要な構成部材について説明する。
【0020】
電子注入層16は、陰極17と電気的に接しており、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物をドナードーパントとして含む層である。ここで電気的に接触しているとは、電子注入層16と陰極17とが介在層を介さずに直接接しており、陰極17に発生する電子を電子注入層16へ直接注入できる状態をいう。
【0021】
電子注入層16に含まれるアルカリ金属として、カリウム、ナトリウム、リチウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。
【0022】
電子注入層16に含まれるアルカリ土類金属として、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。
【0023】
電子注入層16に含まれるアルカリ金属化合物として、カリウム化合物、ナトリウム化合物、リチウム化合物、ルビジウム化合物、セシウム化合物が挙げられる。好ましくは、セシウム化合物であり、より好ましくは、炭酸セシウムである。セシウム化合物は電子注入性に優れる。またセシウム等のアルカリ金属化合物は、炭酸塩にすると取り扱いが容易になる。
【0024】
電子注入層16に含まれるアルカリ土類金属化合物として、バリウム化合物、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物が挙げられる。
【0025】
ドナードーパントがアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物である場合、当該ドナードーパントは無機塩であってもよいし有機塩であってもよい。
【0026】
電子注入層16に含まれるドナードーパントに対するホストである有機化合物は、電子輸送性を有することが好ましい。電子輸送性を有する有機化合物として、例えばフェナントロリン化合物やトリス[8−ヒドロキシキノリナト]アルミニウム(アルミキノリン)等の金属錯体が好適に用いられる。
【0027】
電子注入層16に含まれるドナードーパントと有機化合物との混合比は、モル比で1:0.01〜1:100である。より好ましくは1:0.1〜1:10である。
【0028】
有機化合物層15は、下記一般式[I]で示される有機化合物を含む層である。
【0029】
【化2】

【0030】
式[I]において、R1及びR2は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0031】
1及びR2で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0032】
1及びR2で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0033】
1及びR2で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0034】
1及びR2で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0035】
1及びR2で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0036】
1及びR2で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0037】
1及びR2で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0038】
上記アルキル基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0039】
1及びR2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
式[I]において、R3及びR4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表す。
【0041】
3及びR4で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0042】
3及びR4で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0043】
3及びR4で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0044】
上記アルキル基、アリール基及び複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0045】
3及びR4は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
式[I]において、nは、1乃至10の整数を表す。nが2以上のとき異なるジアザフルオレン骨格に結合するR3同士及びR4同士は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
有機化合物層15は、式[I]で示される有機化合物の代わりに、下記一般式[II]で示される有機化合物を含む層であってもよい。
【0048】
【化3】

【0049】
式[II]において、R5及びR6は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0050】
5及びR6で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0051】
5及びR6で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0052】
5及びR6で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0053】
5及びR6で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0054】
5及びR6で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0055】
5及びR6で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0056】
5及びR6で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0057】
上記アルキル基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0058】
5及びR6は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
式[II]において、R7及びR8は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表す。
【0060】
7及びR8で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0061】
7及びR8で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0062】
7及びR8で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0063】
上記アルキル基、アリール基及び複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0064】
7及びR8は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
有機化合物層15は、式[I]で示される有機化合物の代わりに、下記一般式[III]で示される有機化合物を含む層であってもよい。
【0066】
【化4】

【0067】
式[III]において、R9及びR10は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0068】
9及びR10で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0069】
9及びR10で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0070】
9及びR10で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0071】
9及びR10で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0072】
9及びR10で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0073】
9及びR10で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0074】
9及びR10で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0075】
上記アルキル基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、メチルチエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0076】
9及びR10は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
式[III]において、R11及びR12は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表す。
【0078】
11及びR12で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0079】
11及びR12で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0080】
11及びR12で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0081】
上記アルキル基、アリール基及び複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0082】
11及びR12は、同じであっても異なっていてもよい。
【0083】
有機化合物層15は、式[I]で示される有機化合物の代わりに、下記一般式[IV]で示される有機化合物を含む層であってもよい。
【0084】
【化5】

【0085】
式[IV]において、R13及びR14は、それぞれ置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基又は置換あるいは無置換の縮合多環複素環基を表す。
【0086】
13及びR14で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0087】
13及びR14で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0088】
上記縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0089】
13及びR14は、同じであっても異なっていてもよい。
【0090】
式[IV]において、R15及びR16は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表す。
【0091】
15及びR16で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0092】
15及びR16で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0093】
15及びR16で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0094】
上記アルキル基、アリール基及び複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0095】
15及びR16は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0096】
ここで、一般式[I]乃至[IV]で示される有機化合物において、R1,R2,R5,R6,R9,R10,R13又はR14は、好ましくは、下記一般式[V]乃至[X]のいずれかで示される縮合多環芳香族基である。
【0097】
【化6】

【0098】
式[V]において、R17は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0099】
17で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0100】
17で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0101】
17で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0102】
17で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0103】
17で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0104】
17で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0105】
17で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0106】
上記アルキル基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0107】
式[V]において、R18及びR19は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表す。
【0108】
18及びR19で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0109】
18及びR19で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0110】
18及びR19で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0111】
上記アルキル基、アリール基及び複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0112】
18及びR19は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0113】
式[VI]乃至[IX]において、R20乃至R23は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0114】
20乃至R23で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0115】
20乃至R23で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0116】
20乃至R23で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0117】
20乃至R23で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0118】
20乃至R23で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0119】
20乃至R23で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0120】
20乃至R23で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0121】
20乃至R23で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0122】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0123】
式[X]において、R24及びR25は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0124】
24及びR25で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0125】
24及びR25で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0126】
24及びR25で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基等が挙げられる。
【0127】
24及びR25で表される縮合多環芳香族基として、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0128】
24及びR25で表される縮合多環複素環基として、カルバゾリル基、フェナントロリル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0129】
24及びR25で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0130】
24及びR25で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0131】
上記アルキル基、アリール基、複素環基、縮合多環芳香族基及び縮合多環複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等のアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0132】
24及びR25は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0133】
次に、有機化合物層15に含まれる有機化合物の代表例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化7】

【0135】
【化8】

【0136】
【化9】

【0137】
【化10】

【0138】
【化11】

【0139】
【化12】

【0140】
【化13】

【0141】
【化14】

【0142】
【化15】

【0143】
【化16】

【0144】
【化17】

【0145】
ところで、上述したように電子注入層16はドナードーパントを有する。ここでドナードーパントは、金属単体又は金属イオンとして存在する金属成分を含む。このため、この金属成分が他の層(特に発光層14)に侵入することによって起こる放置劣化(駆動させずに放置した後に発光特性が低下すること)を防止する必要がある。従って、金属成分の侵入防止のために、侵入防止層となる有機化合物層15を発光層14と電子注入層16との間に設ける必要がある。
【0146】
有機化合物層15が発光層14の電子注入層側の界面に接する場合、有機化合物層15は、金属成分の侵入を抑える特性を有していればよいだけではない。さらに発光層からホールや励起子が漏れること等に起因する素子の発光効率の低下を抑えるための特性も、別途求められる。
【0147】
ここで、発光層14と電子注入層16との間に、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物を含む層、即ち有機化合物層15を設けることで、素子の低電圧化及び高効率化が図れると共に、放置劣化を抑制することができる。
【0148】
発光層14と電子注入層16との間に、有機化合物層15を設けることで、金属成分の拡散を抑制できる理由として、少なくとも以下のように考察することができる。
【0149】
即ち、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物が有し、かつ金属成分と相互作用し得る二つの窒素原子の配置は、フェナントロリン化合物に対してわずかに異なる。この二つの窒素原子の配置の相違により、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物は、フェナントロリン化合物と比べて、金属成分との相互作用(例えば、金属成分と窒素原子との配位結合)が弱くなる。このため、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物は、金属成分をある程度拡散するというフェナントロリン化合物特有の作用を有しなくなる。以上のことから金属成分の拡散防止につながっている。
【0150】
一方で、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物を、有機化合物層15の構成材料とすることにより、素子の発光効率が向上する。これは、一般式[I]乃至[IV]に示される有機化合物が共通して有するジアザフルオレン骨格について、骨格自体のバンドギャップが比較的広く、また骨格自体のHOMOレベルが深いため、発光層から励起子やホールが漏れるのを抑制しやすくなるからである。
【0151】
有機化合物層15の膜厚は、好ましくは、1nm乃至100nmであり、より好ましくは、5nm乃至20nmである。有機化合物層15の膜厚が薄すぎる場合、具体的には膜厚が1nm未満の場合は、有機化合物層15が有する金属成分の拡散防止性を十分に発揮できない。また有機化合物層15の膜厚が厚すぎる場合、具体的には膜厚が100nmを超える場合は、素子の駆動電圧の上昇を招く。
【0152】
発光層14の構成材料として、公知の発光材料を適宜使用することができる。また発光層14は、一種類の発光材料のみで構成されていてもよいし、ホストとゲストとで構成されていてもよい。ゲストとしては、発光性ドーパント、電荷輸送性ドーパント、発光補助ドーパント等が挙げられる。発光領域は、発光層内の正孔注入側界面に存在する場合、発光層内の電子注入側界面に存在する場合、発光層全体に広がっている場合のいずれでもよい。ところで、発光材料によっては金属成分と相互作用することにより、その金属成分が発光層内に拡散する場合も考えられる。しかし本発明の有機発光素子は、上述した有機化合物層15によって、金属成分が発光層14へ拡散されないようになっているので、発光材料の金属成分の拡散性は考慮しなくてもよい。
【0153】
正孔輸送層13の構成材料として、公知の材料を適宜使用することができる。例えば、トリフェニルジアミン誘導体、オキソジアゾール誘導体、ポリフィリル誘導体、スチルベン誘導体等が使用できるが、これに限られるものではない。尚、発光層14が正孔輸送層を兼ねてもよいし、正孔輸送層13が正孔注入層と正孔輸送層のように複数の層から構成されていてもよい。
【0154】
陰極17の構成材料として、素子がトップエミッション型の場合は、ITO等の透明電極を使用する。一方、素子がボトムエミッション型の場合は、アルミニウム(Al)等の反射電極を使用する。
【0155】
陽極12の構成材料として、陽極12を反射電極にする場合は、例えばクロム、アルミニウム、銀、及びこれらの合金等を使用することができる。一方、陽極12を透明電極にする場合は、ITO等の金属酸化物等を用いることができる。しかし本発明の有機発光素子において、陽極12の構成材料はこれらに限定されるものではない。
【0156】
基板11として、石英、ガラス、樹脂、金属等からなる基板を使用することができる。また、基板11上に薄膜トランジスター等のスイッチング素子や制御用素子を備えてもよい。
【実施例】
【0157】
[実施例1]
図1に示される積層構造を有する有機発光素子を以下の手順により作製した。
【0158】
基板11上にクロム(Cr)をスパッタ法にて成膜し、陽極12を形成した。このとき陽極12の膜厚を200nmとした。この後、Cr膜が形成されている基板にUV/オゾン洗浄処理を施した。
【0159】
続いて、真空蒸着装置(アルバック株式会社製)に洗浄処理済みのCr膜付基板と、後述する有機発光素子の構成材料となる化合物とを、それぞれ取り付け1×10-3Paまで排気した。
【0160】
次に、陽極12上にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を成膜して正孔輸送層13を形成した。このとき正孔輸送層13の膜厚を50nmとした。次に、正孔輸送層13の上に、下記に示されるトリス[8−ヒドロキシキノリナト]アルミニウム(アルミキノリン)と下記に示されるクマリン6とを重量濃度比で99:1となるように共蒸着し、発光層14を形成した。このとき発光層14の膜厚を30nmとした。
【0161】
【化18】

【0162】
次に、この発光層14の上に、下記に示される例示化合物No.1を製膜し、有機化合物層15を形成した。このとき有機化合物層15の膜厚を10nmとした。
【0163】
【化19】

【0164】
次に、下記に示されるフェナントロリン化合物と炭酸セシウム(Cs2CO3)とを膜厚比92.5:7.5の割合で混合されるように各々の蒸着速度を調節しながら製膜し、電子注入層16を形成した。このとき電子注入層16の膜厚を40nmとした。
【0165】
【化20】

【0166】
続いて、電子注入層16まで成膜した基板を別のチャンバーへ移動させ、上記電子注入層16上にITOをスパッタ法にて成膜し陰極17を形成した。このとき陰極17の膜厚を150nmとした。最後に、窒素雰囲気下で基板11にガラスキャップを貼り付けて封止することにより、有機発光素子を得た。
【0167】
得られた有機発光素子に直流電圧を印加し、発光特性及び発光効率の経時変化を調べた。その結果、この素子について、電流密度を20mA/cm2としたときの電流効率は約5.2cd/Aであった。また126日経過後の劣化率は1.5%であり、放置劣化は抑制されていることがわかった。また、この素子について電流密度を10mA/cm2とするのに必要な印加電圧は4.3Vであり、素子が十分に低電圧で駆動できることがわかった。
【0168】
[比較例1]
実施例1において、例示化合物No.1の代わりに下記に示されるフェナントロリン化合物を膜厚10nmとなるように成膜し有機化合物層15を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法により有機発光素子を作製した。
【0169】
【化21】

【0170】
得られた素子について、実施例1と同様に評価したところ、電流密度を20mA/cm2としたときの電流効率は約4.6cd/Aであった。また126日経過後の劣化率は約96%であり、明らかな放置劣化が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の有機発光素子は、照明、ディスプレイ、電子写真方式の画像形成装置の露光光源等に利用できる。照明として使用する場合は、有機発光素子は1つあれば十分である。ディスプレイや電子写真方式の画像形成装置の露光光源として有機発光素子を使用する場合は、複数の有機発光素子を使用することが好ましい。尚、ここでいうディスプレイとは、テレビやパソコンの表示部や電子機器に搭載される表示部といった画像表示装置のことである。電子機器に搭載される表示部として、好ましくは、車内の表示部、デジタルカメラの画像表示部、あるいは複写機やレーザービームプリンタといった事務機器の操作パネルを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の有機発光素子の一実施形態を表す概略断面図である。
【符号の説明】
【0173】
1 有機発光素子
11 基板
12 陽極
13 正孔輸送層
14 発光層
15 有機化合物層
16 電子注入層
17 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成され、
該電子注入層が、該陰極と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、
該有機化合物層が下記一般式[I]で示される有機化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【化1】

(式[I]において、R1及びR2は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、同じであっても異なっていてもよい。R3及びR4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは、1乃至10の整数を表す。nが2以上のとき異なるジアザフルオレン骨格に結合するR3同士及びR4同士は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成され、
該電子注入層が、該陰極と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、
該有機化合物層が下記一般式[II]で示される有機化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【化2】

(式[II]において、R5及びR6は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、同じであっても異なっていてもよい。R7及びR8は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成され、
該電子注入層が、該陰極と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、
該有機化合物層が下記一般式[III]で示される有機化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【化3】

(式[III]において、R9及びR10は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、同じであっても異なっていてもよい。R11及びR12は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極との間に挟持され、少なくとも発光層と有機化合物層と電子注入層とを順次積層してなる積層体と、から構成され、
該電子注入層が、該陰極と電気的に接しており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含み、
該有機化合物層が下記一般式[IV]で示される有機化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【化4】

(式[IV]において、R13及びR14は、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基又は置換あるいは無置換の縮合多環複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。R15及びR16は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記R1,R2,R5,R6,R9,R10,R13又はR14が、下記一般式[V]乃至[X]のいずれかで示される縮合多環芳香族基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【化5】

(式[V]において、R17は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R18及びR19は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表し、同じであっても異なっていてもよい。)
【化6】

(式[VI]乃至[IX]において、R20乃至R23は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。)
【化7】

(式[X]において、R24及びR25は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記アルカリ金属化合物がセシウム化合物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記セシウム化合物が炭酸セシウムであることを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−117693(P2009−117693A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290547(P2007−290547)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】