説明

有機発光素子

【課題】高効率高輝度の有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に配置される有機化合物を有する層と、から構成され、該有機化合物を有する層は式(1)で示される金錯体を有することを特徴とする有機発光素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金錯体を有する有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、陽極と陰極との間に蛍光性有機化合物又は燐光性有機化合物を含む薄膜を挟持する素子である。また、各電極から電子及びホール(正孔)を注入し蛍光性化合物又は燐光性化合物の励起子を生成させることにより、この励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放射する。
【0003】
有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は、低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、発光デバイスの薄型・軽量化が可能であることが挙げられる。このことから、有機発光素子は広汎な用途への可能性が示唆されている。
【0004】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気等による劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合には色純度のよい青、緑、赤の発光が必要となるが、これらの問題に関してもまだ十分解決されたとは言えない。
【0005】
近年、燐光性化合物を発光材料として用い、三重項状態のエネルギーをEL発光に用いる検討が多くなされている。プリンストン大学のグループにより、イリジウム錯体を発光材料として用いた有機発光素子が、高い発光効率を示すことが報告されている(非特許文献1)。また、金錯体、EL発光に用いる検討もなされている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature,395,151(1998)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−332747号公報
【特許文献2】特開2008−074905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、極めて高効率で、高輝度な光出力を有する有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって本発明は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に配置される有機化合物を有する層と、から構成され、該有機化合物を有する層は下記一般式(1)で示される金錯体を有することを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0010】
【化1】

【0011】
式中Rはアルキル基、アリール基、複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。Auは一価の金イオンを表す。前記アルキル基、前記アリール基、前記複素環基は置換基を有しても良い。前記置換基はアルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、極めて高効率で、高輝度の光出力が可能な有機発光素子を提供することができる。さらに本発明の有機発光素子は、真空蒸着、キャステイング法等を用いて作製が可能であり、比較的安価で大面積のものを容易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の合成例1におけるPLスペクトルである。
【図2】本発明の実施例1におけるELスペクトルである。
【図3】本発明の実施例2におけるELスペクトルである。
【図4】有機発光素子とそれに接続するスイッチング素子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に配置される有機化合物を有する層と、から構成され、該有機化合物を有する層は下記一般式(1)で示される金錯体を有することを特徴とする有機発光素子である。
【0016】
【化2】

【0017】
式中Rはアルキル基、アリール基、複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。Auは一価の金イオンを表す。
【0018】
Rを表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0019】
Rを表すアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0020】
Rを表す複素環基としては、ピラゾリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0021】
上記Rは置換基を有しても良い。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基などのアミノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子などが挙げられる。
【0022】
以下、本発明に用いられる上記一般式(1)で示される金錯体の具体的な構造式を下記に示す。但し、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。表中のMeはメチル基、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、nPrはノルマルプロピル基、tBuはターシャリーブチル基、Cyはシクロヘキシル基、Phはフェニル基を表す。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
本発明の金錯体の発光メカニズムについては以下の(1)乃至(6)に示すような幾つかの可能性が考えられる。
(1)LMCT(ligand−to−metal−charge−transfer)励起状態
(2)MLCT(metal−to−ligand−charge−transfer)励起状態
(3)LLCT(ligand−to−ligand−charge−transfer)励起状態
(4)金属中心励起状態
(5)配位子中心(ππ*)励起状態
(6)配位子中心(nπ*)励起状態
【0028】
本発明の燐光を強くする為には、配位子中心励起状態よりも、LMCT励起状態、MLCT励起状態、LLCT励起状態の様なCT性の励起状態の方が最低三重項励起エネルギからの発光強度を期待でき、本発明の金錯体はCT性の励起状態をとる事が好ましい。
【0029】
そのため、上記一般式(1)のRに、アリール基、複素環基が含まれることが好ましい。また、パイ電子が大きすぎると配位子中心(ππ*)励起状態からの発光も促進されてしまう為、上記一般式(1)のRは、ベンゼン環やピリジン環に代表される芳香環あるいは複素芳香環の単環の基を有することが好ましい。さらに、ヘテロ原子を有する環、即ち複素芳香環は、配位子中心(nπ*)励起状態を促進する場合があるので、Rは、フェニレン基及びフェニル基であることが特に好ましい。
【0030】
以上の観点から、本発明のより好ましい化合物は、例示化合物Au7乃至Au22であり、それらは、一般式(2)で表すことが出来る。
【0031】
よって、本発明の有機発光素子に用いられる金錯体は下記一般式(2)で示される金錯体を用いることが、さらに好ましい。
【0032】
【化7】

【0033】
式中Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。nは1乃至5の整数を表す。
【0034】
を表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R
を表すハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0035】
そして本発明に係る金錯体は青色発光素子に好ましく用いることができる。
【0036】
次に、本発明の有機発光素子について説明する。
【0037】
(本発明に係る有機発光素子について)
本発明に係る有機発光素子は、互いに対向しあう一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物を有する層(有機化合物層)とを少なくとも有する有機発光素子である。前記有機化合物層のうち発光材料を有する層が発光層である。そして本発明に係る有機発光素子は、前記有機化合物層が一般式(1)や(2)で示される金錯体を有する。
【0038】
本発明に係る有機発光素子としては、基板上に、順次陽極/発光層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。他にも順次陽極/ホール輸送層/電子輸送層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。また順次陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものや順次陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。あるいは順次陽極/ホール輸送層/発光層/ホール・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。
【0039】
ただしこれら五種の多層型有機発光素子の例はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明に係る金錯体を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、電子輸送層もしくはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
【0040】
素子形態としては、基板側の電極から光を取り出すいわゆるトップエミッション方式でも、基板と逆側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション方式でも良く、両面取り出しの構成でも使用することができる。
【0041】
本発明に用いられる金錯体は、高い発光効率を示し発光材料に適している。また、この金錯体は特に固体粉末状態において他の化合物と比べ強い発光を示す。
【0042】
一般的には希薄溶液で強く発光する化合物でも固体粉末状態においては、発光が極端に弱くなる物が多い。これらは、発光材料分子間の相互作用によって、基底状態において会合体を形成する、あるいは、励起会合体を形成し、本来の発光特性が得られなくなる現象であり、これは濃度消光現象として知られている。
【0043】
本発明に用いられる金錯体は、濃度消光に強い発光材料である。本発明に用いられる金錯体は、この濃度消光の制約が少ないため、濃度を濃くするあるいは、100%の発光層を形成することができ、高い発光効率を有し、かつ、生産性のよい発光素子を製造することができる。すなわち本発明に用いられる金錯体を発光層の発光材料として用いる場合、その含有量は、より具体的には発光層を構成する材料全体の重量に対して0.1重量%以上100重量%以下である。
【0044】
本発明の金錯体を含む層の膜厚は10μmより薄く、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.5μm以下である。
【0045】
本発明に係る有機発光素子は上述のように発光層が金錯体のみから構成されても良いが必要に応じて別の化合物を有しても良い。
【0046】
また本発明に係る有機発光素子は本発明に係る金錯体を発光層に用いるのではなく発光層とは別の層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子障壁層等に有しても良い。
【0047】
本発明に係る有機発光素子は本発明に係る金錯体を発光層及び発光層とは別の層に有しても良い。
【0048】
また本発明に係る有機発光素子を製造するにあたり、本発明に係る一般式(1)や(2)で示される金錯体を蒸着により成膜することができる。これは本発明に係る金錯体の分子量が低いためである。
【0049】
また本発明に係る有機発光素子を製造するにあたり、本発明に係る一般式(1)や(2)で示される金錯体をキャスティング法により成膜することができる。キャスティング法とは溶媒に金錯体を分散あるいは溶解させ、その液体を所望の面に塗布し乾燥して層を得る方法のことである。本発明に係る金錯体は一般式(1)や(2)で示される構造を有しているので、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。
【0050】
本発明に係る有機発光素子は本発明に係る金錯体以外にも、必要に応じて様々な低分子系及び高分子系の化合物を使用することができる。より具体的にはホール注入性化合物あるいは輸送性化合物あるいはホスト材料あるいは発光性化合物あるいは電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0051】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0052】
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入が容易で、注入されたホールを発光層へと輸送することができるように、ホール移動度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。
【0053】
主に発光機能に関わる発光材料としては、前述の燐光発光ゲスト材料、もしくはその誘導体以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
【0054】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入が容易で注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール注入輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0055】
陽極材料としては仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0056】
一方、陰極材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0057】
本発明に係る有機発光素子において、本発明に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0058】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0059】
(有機発光素子の用途)
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や、液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0060】
表示装置は本発明に係る有機発光素子を表示部に有する。表示部とは画素を有しており、該画素は本発明に係る有機発光素子を有する。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
【0061】
表示装置はデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置の表示部に用いられてもよい。撮像装置は該表示部と撮像するための撮像光学系を有する撮像部とを有する。
【0062】
図4は有機発光素子を画素部に有する画像表示装置の断面模式図である。本図では二つの有機発光素子と二つのTFTとが図示されている。一つの有機発光素子は一つのTFTと接続している。
【0063】
図中符号311は陽極、312は有機化合物を有する層、313は陰極であり有機発光素子を示す。
【0064】
図中符号3は画像表示装置、38はスイッチング素子であるTFT素子、31は基板、32は防湿膜、33はゲート電極、34はゲート絶縁膜、35は半導体層、36はドレイン電極、37はソース電極、39は絶縁膜である。また310はコンタクトホール、、314は第一の保護層、そして315は第二の保護層である。
【0065】
画像表示装置3は、ガラス等の基板31上に、その上部に作られる部材(TFT又は有機層)を保護するための防湿膜32が設けられている。防湿膜32を構成する材料は酸化ケイ素又は酸化ケイ素と窒化ケイ素との複合体等が用いられる。防湿膜32の上にゲート電極33が設けられている。ゲート電極33はスパッタリングによりCr等の金属を製膜することで得られる。
【0066】
ゲート絶縁膜34がゲート電極33を覆うように配置される。ゲート絶縁膜34は酸化シリコン等をプラズマCVD法又は触媒化学気相成長法(cat−CVD法)等により製膜し、パターニングして形成される膜である。パターニングされてTFTとなる領域ごとに設けられているゲート絶縁膜34を覆うように半導体層35が設けられている。この半導体層35はプラズマCVD法等により(場合によっては例えば290℃以上の温度でアニールして)シリコン膜を製膜し、回路形状に従ってパターニングすることで得られる。
【0067】
さらに、それぞれの半導体層35にドレイン電極36とソース電極37が設けられている。このようにTFT素子38はゲート電極33とゲート絶縁層34と半導体層35とドレイン電極36とソース電極37とを有する。TFT素子38の上部には絶縁膜39が設けられている。次に、コンタクトホール(スルーホール)310は絶縁膜39に設けられ、金属からなる有機発光素子用の陽極311とソース電極37とが接続されている。
【0068】
この陽極311の上には、発光層を含む多層あるいは発光層単層の有機層312と、陰極313とが順次積層されており、画素としての有機発光素子を構成している。
【0069】
有機発光素子の劣化を防ぐために第一の保護層314や第二の保護層315を設けてもよい。
【0070】
尚、スイッチング素子に特に限定はなく、上述のTFT素子の他にMIM素子も用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(合成例1)
(例示化合物Au7の合成)
アルゴン気流下、反応容器に、N,N−ビス(ジフェニルフォスフィノ)アミン429mg(1.11mmol)とテトラヒドロフラン25mlを仕込み、−78℃まで冷却し、1.6Mのノルマルブチルリチウム溶液0.7mlをゆっくりと滴下した。1時間撹拌した後、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)551mgを加え、さらに1時間撹拌を行った。反応溶液を室温に戻し、さらに12時間撹拌を行った。反応終了後、析出した結晶をろ過、乾燥を行い、白色の結晶の例示化合物Au7を612mg得た。(収率94%)
NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
H NMR(500MHz,d−THF):δ=7.81(m,16H),7.30(m,24H).
31P{H}NMR(200MHz,d−THF):δ=54.00(s).
得られた結晶のPLスペクトルを、日立分光蛍光光度計 F−7000を用いて測定した。
【0073】
スペクトルを図1に示す。
【0074】
(実施例1)
ガラス基板上に、陽極として酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて膜厚120nmで成膜した。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄した。以上の処理を施したガラス基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0075】
次に、透明導電性支持基板上に、下記に示されるTCTAのクロロホルム溶液をスピンコート法により30nmの膜厚で成膜して正孔輸送層を形成した。
【0076】
【化8】

【0077】
次に、他の有機層及び電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着して連続製膜して、素子を作製した。
【0078】
具体的には、まず発光層として、ホストである上記に示す化合物H1とゲストである例示化合物Au7を、化合物H1と例示化合物Au7の重量濃度比が90:10となるように共蒸着した。このとき発光層の膜厚は20nmとした。次に、エキシトンブロック層として、化合物H1を膜厚5nmで成膜した。その上に電子輸送層として、上記に示す化合物E1を膜厚25nmで成膜した。次に、第一の金属電極層として、LiFを膜厚0.5nmで成膜した。最後に、第二の金属電極層として、Alを膜厚100nmで成膜した。上記の第一の金属電極層(LiF膜)及び第二の金属電極層(Al膜)は陰極として機能する。以上のようにして、有機発光素子を得た。
【0079】
作製した有機発光素子についてその特性を調べた。具体的には、素子の電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、素子の発光輝度をトプコン社製BM7で測定した。本実施例の素子は6.4Vの印加電圧で、発光輝度100cd/m2の青色の発光が観測された。発光スペクトルを図28に示す。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【0080】
本発明に用いられる化合物は、固体でよく光り、発光材料のみで構成される発光層でも高効率を期待できるものではある。しかしながら、発光素子の高輝度領域では、三重項−三重項消滅により発光効率が低下してしまう可能性がるため、発光素子ではホスト材料にドープして発光材料といて使用することが特に好ましい。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様の手法を用いて正孔輸送層まで形成した。
【0082】
次に、他の有機層及び電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着して連続製膜して、素子を作製した。
【0083】
具体的には、まず発光層として、例示化合物Au7を100%膜で蒸着した。このとき発光層の膜厚は25nmとした。次に、電子輸送層として、上記に示す化合物E1を膜厚25nmで成膜した。次に、第一の金属電極層として、LiFを膜厚0.5nmで成膜した。最後に、第二の金属電極層として、Alを膜厚100nmで成膜した。上記の第一の金属電極層(LiF膜)及び第二の金属電極層(Al膜)は陰極として機能する。以上のようにして、有機発光素子を得た。
【0084】
作製した有機発光素子についてその特性を調べた。本実施例の素子は4.4Vの印加電圧で、発光輝度100cd/m2の青色の発光が観測された。発光スペクトルを(図3)に示す。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【0085】
(合成例2)
(例示化合物Au12の合成)
(合成中間体の合成)
アルゴン気流下、反応容器に、ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィン1g(3.6mmol)とトルエン10mlを仕込み、−5℃まで冷却した。1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルシラザン0.42mlをトルエン4mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。低温で30分撹拌した後、オイルバス中、80℃で6時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した後、ジクロロメタンを加え、不溶物を除去した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、白色結晶を得た。得られた結晶をメタノールで洗浄した後、真空乾燥を行い、合成中間体であるN,N−ビス[ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]アミンを346mg(0.69mmol、収率39%)得た。
【0086】
(例示化合物Au12の合成)
アルゴン気流下、反応容器に、N,N−ビス[ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]アミン108mg(0.22mmol)とテトラヒドロフラン10mlを仕込み、−78℃まで冷却し、1.6Mのノルマルブチルリチウム溶液0.14mlをゆっくりと滴下した。1時間撹拌した後、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)551mgを加え、さらに1時間撹拌を行った後、室温に戻し、さらに12時間撹拌を行った。反応終了後、溶媒を減圧留去した後、ジエチルエーテルを加え、不溶物を除去した。ろ液を少量まで濃縮した後、ゆっくりとヘキサンを加え、白色の結晶を得た。ろ過、真空乾燥を行い例示化合物Au12を129mg得た。(収率86%)
NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
H NMR(500MHz,d−THF):δ=7.49(s,16H),6.92(s,8H),2.25(s,48H).
31P{H}NMR(200MHz,d−THF):δ=51.56(s).
【0087】
(実施例3)
実施例1において、発光層を例示化合物Au7をAu12に変更した以外は、実施例1と同様の方法により素子を作製した。
【0088】
作製した有機発光素子についてその特性を調べた。本実施例の素子は6.6Vの印加電圧で、発光輝度100cd/m2の青色の発光が観測された。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【符号の説明】
【0089】
3 表示装置
38 スイッチング素子
311 陽極
312 有機化合物を有する層
313 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に配置される有機化合物を有する層と、から構成され、該有機化合物を有する層は下記一般式(1)で示される金錯体を有することを特徴とする有機発光素子。
【化1】


式中Rはアルキル基、アリール基、複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。Auは一価の金イオンを表す。前記アルキル基、前記アリール基、前記複素環基は置換基を有しても良い。前記置換基はアルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかである。
【請求項2】
前記金錯体が下記一般式(2)で示されることを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【化2】


式中Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。nは1乃至5の整数を表す。
【請求項3】
前記金錯体を含有する層が、発光層であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記有機発光素子が、青色発光素子であることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子を用いることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243931(P2011−243931A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117462(P2010−117462)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】