説明

有機発光表示装置及びその製造方法

【課題】本発明は、画素領域を保護すると共に、画素領域の外側の有機物層を効果的に除去して、上部電極及び上部電極電源ラインの接続時にこれらの間の接触抵抗を最少化し、有機発光素子の発光特性を向上させることができる有機発光表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有機発光表示装置の製造方法は、基板上の画素領域の外側に上部電極電源ラインを形成し、画素領域に下部電極を形成し、画素領域と画素領域の外側に少なくとも一層の有機物層を形成し、画素領域に上部電極を形成し、上部電極の外側に露出された有機物層部位を選択的に除去して上部電極電源ラインを露出させ、常圧条件で上部電極及び上部電極電源ラインと重なるように上部電極及び上部電極電源ラインの間に導電物質を塗布して接続部を形成する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光表示装置に関し、より詳しくは、上部電極電源ラインと電気的に接続される上部電極及びこの上部電極を含む有機発光表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、複数の画素を含む画素領域を含む。各画素は、赤色、緑色、及び青色の複数の副画素で構成され、各副画素には下部電極、有機発光層、及び上部電極を含む有機発光素子が形成される。有機発光層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を含む多重膜で形成される。
【0003】
画素領域の外側には画素領域に電源電圧を提供するための上部及び下部電源電圧ラインと、画素領域に選択信号を出力するスキャンドライバーと、画素領域にデータ信号を出力するデータドライバーと、上部電極に駆動電圧を提供するための上部電極電源ラインとが備えられる。
【0004】
上部電極電源ラインは絶縁層で覆われ、絶縁層に少なくとも一つのコンタクト孔が形成されて上部電極電源ラインの一部を露出させる。また、上部電極が画素領域全体及び画素領域の外側、つまり少なくとも一つのコンタクト孔にわたって形成され、上部電極電源ラインとの接触によってこれと電気的に接続される。
【0005】
有機発光素子を形成する過程で、少なくとも一つの有機物層(例えば、正孔注入層及び正孔輸送層)がスピンコーティング(spin coating)などの液状塗布法によって形成される。しかし、液状塗布法によって形成された有機物層は、画素領域だけでなく、その外側領域であるスキャンドライバー、データドライバー、及び上部電極電源ラインのコンタクト孔などの意図しなかった領域にも共に形成される。
【0006】
画素領域の外側に形成された有機物層を除去しなければ、後続工程を円滑に行うことができない。例えば、有機物層は、コンタクト孔によって露出された上部電極電源ライン上にも形成されるため、この有機物層を除去しなければ、その後の上部電極を形成する過程で上部電極及び上部電極電源ラインを接続することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、画素領域を保護すると共に、画素領域の外側の有機物層を効果的に除去して、上部電極及び上部電極電源ラインの接続時にこれらの間の接触抵抗を最少化し、有機発光素子の発光特性を向上させることができる、有機発光表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法は、基板上の画素領域の外側に上部電極電源ラインを形成する段階と、画素領域に下部電極を形成する段階と、画素領域及び画素領域の外側に少なくとも一層の有機物層を形成する段階と、画素領域に上部電極を形成する段階と、上部電極の外側に露出された有機物層部位を選択的に除去して上部電極電源ラインを露出させる段階と、常圧条件で上部電極及び上部電極電源ラインと重なるように上部電極及び上部電極電源ラインの間に導電物質を塗布して接続部を形成する段階とを含む。
【0009】
有機物層は、正孔注入層及び正孔輸送層の多重層である。有機発光表示装置の製造方法は、上部電極を形成する前に、画素領域上の正孔輸送層上に発光層、電子輸送層、及び電子注入層を形成する段階をさらに含むことができる。
一方、有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層の多重層であってもよい。有機発光表示装置の製造方法は、電子輸送層を形成する前に、画素領域上の正孔輸送層上に発光層を形成する段階をさらに含むことができる。
発光層は、インクジェット印刷法で画素領域上の副画素毎に一つずつ形成される。上部電極は、真空蒸着法及びスパッタリング法のうちのいずれか一つの方法によって形成される。
【0010】
上部電極で画素領域を保護した状態で、レーザー照射法及びプラズマエッチング法のうちのいずれか一つの方法で上部電極の外側に露出された有機物層部位を選択的に除去する。
接続部は、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ノズル印刷法、及びオフセット印刷法のうちのいずれか一つの方法によって形成される。接続部は、アルミニウム、銅、金、パラジウム、及び白金のうちの少なくとも一つの金属ナノ粒子を含み、厚さが20nm乃至1mmである。
【0011】
上部電極電源ラインは、画素領域上の薄膜トランジスターと同時に形成される。薄膜トランジスターは、ゲート電極、及び層間絶縁膜を間においてゲート電極の上部に位置するソース電極及びドレイン電極を含み、上部電極電源ラインは、ソース電極及びドレイン電極と同時に形成される。
【0012】
ソース電極、ドレイン電極、及び上部電極電源ライン上に絶縁膜を形成し、絶縁膜にドレイン電極を露出させるコンタクト孔及び上部電極電源ラインを露出させる少なくとも一つのコンタクト孔を形成する。
下部電極は、絶縁膜のコンタクト孔を通してドレイン電極と接続される。接続部は、上部電極及び絶縁膜のコンタクト孔によって露出された上部電極電源ラインを接続することができる。
【0013】
本発明の第1実施形態による有機発光表示装置は、i)基板上の画素領域に形成されて、下部電極、有機発光層、及び上部電極を含む複数の有機発光素子と、ii)画素領域の外側に形成される上部電極電源ラインと、iii)上部電極及び上部電極電源ラインと重なるように上部電極及び上部電極電源ラインの間に形成される接続部とを含む。接続部は、アルミニウム、銅、金、パラジウム、及び白金のうちの少なくとも一つの金属ナノ粒子を含み、厚さが20nm乃至1mmである。
上部電極は、厚さが5nm乃至200nmであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、画素領域を保護すると共に、画素領域の外側の有機物層を効果的に除去して、上部電極及び上部電極電源ラインの接続時にこれらの間の接触抵抗を最少化し、有機発光素子の発光特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の平面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図2B】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図2C】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図2D】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図2E】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図2F】本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法を示した工程図である。
【図3A】本実施形態の有機発光表示装置のうちの上部電極及び接続部の平面形状を概略的に示した平面図である。
【図3B】本実施形態の有機発光表示装置のうちの上部電極及び接続部の平面形状を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は多様な形態に具現され、ここで説明する実施形態に限られない。
本発明を明確に説明するために、説明に不要な部分は省略し、明細書全体で同一または類似する構成要素については、同一な符号を付けた。また、図面に示された各構成要素のサイズ及び厚さは説明の便宜のために任意に示したものであるため、本発明は示した例に限られない。
【0017】
図面では、多数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。また、図面では、説明の便宜のために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分がある部分の「上」または「上部」にあるとする時、これはある部分の「真上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0018】
図1は本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の平面図である。
図1を参照すると、本実施形態の有機発光表示装置100は、画素領域(PA)、上部電源電圧ライン10、下部電源電圧ライン11、及び画素電源電圧ライン13を含む。
画素領域(PA)は、複数の画素が形成された領域である。上部電源電圧ライン10は、画素領域(PA)の上側及び左右側に配列されて、画素領域(PA)に電源電圧を提供する。下部電源電圧ライン11は、画素領域(PA)の下側に配列されて、画素領域(PA)に電源電圧を提供する。画素電源電圧ライン13は、上部電源電圧ライン10及び下部電源電圧ライン11と接続されるように画素領域(PA)に形成される。
【0019】
また、有機発光表示装置100は、画素領域(PA)に選択信号を出力するスキャンドライバー14、画素領域(PA)にデータ信号を出力するデータドライバー15、画素領域(PA)及び上部電源電圧ライン10の間に位置する上部電極電源ライン16を含む。スキャンドライバー14及びデータドライバー15は、画素領域(PA)の外側に位置する。
【0020】
各画素は、赤色、緑色、及び青色の複数の副画素で構成され、各副画素毎に有機発光素子(図示せず)が形成される。有機発光素子は、下部電極、有機発光層、及び上部電極17を含む。上部電極17は、共通電極として画素領域(PA)全体に形成され、接続部18が上部電極17及び上部電極電源ライン16の間に形成されて、上部電極17及び上部電極電源ライン16を電気的に接続する。
【0021】
以下、図2A乃至図2Fを参照して、本発明の第1実施形態による有機発光表示装置の製造方法について説明する。図2A乃至図2Fは、図1のII-II線による断面図であり、画素領域に位置する一つの副画素及び画素領域の外側に位置する上部電極電圧ラインを示す。
【0022】
図2Aを参照すると、画素領域(PA)及びその外側領域を含む基板20全体にバッファー層21を形成する。バッファー層21は、基板20の真上に形成されて、基板20から流出される不純物から後続工程で形成される薄膜トランジスターを保護する役割を果たす。バッファー層21は、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)、及び酸窒化ケイ素(SiO)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0023】
次に、画素領域(PA)のバッファー層21上に半導体層22を形成する。半導体層22は、多結晶シリコン膜で形成したり、非晶質シリコン膜を蒸着後に結晶化して形成する。半導体層22は、不純物がドーピングされないチャンネル領域23、及びチャンネル領域23の両側に位置して、不純物がドーピングされたソース領域24及びドレイン領域25を含む。ソース領域24及びドレイン領域25にドーピングされるイオン物質は、ホウ素(B)などのp型不純物である。
【0024】
薄膜トランジスターは、p型不純物を使用したPMOS構造以外にも、n型不純物を使用したNMOS構造、またはc型不純物を使用したCMOS構造の薄膜トランジスターであってもよい。
半導体層22を覆うようにバッファー層21上にゲート絶縁膜26を形成する。ゲート絶縁膜26は、窒化ケイ素(SiN)または酸化ケイ素(SiO)を含むことができる。また、ゲート絶縁膜26上にゲート電極27を含むゲート配線を形成する。ゲート電極27は、半導体層22の一部、特にチャンネル領域23と重なるように形成される。
【0025】
次に、ゲート絶縁膜26上にゲート電極27を覆う層間絶縁膜28を形成する。層間絶縁膜28は、ゲート絶縁膜26と同様に窒化ケイ素(SiN)または酸化ケイ素(SiO)を含むことができる。また、層間絶縁膜28及びゲート絶縁膜26を一部除去して、ソース領域24及びドレイン領域25を露出させるコンタクト孔を形成する。
【0026】
層間絶縁膜28上にソース電極29及びドレイン電極30を含むデータ配線を形成する。ソース電極29はコンタクト孔を通して半導体層22のソース領域24と接続され、ドレイン電極30はコンタクト孔を通して半導体層22のドレイン領域25と接続される。これによって、半導体層22、ゲート電極27、ソース電極29、及びドレイン電極30を含む薄膜トランジスター(TR)を完成する。
【0027】
有機発光表示装置100は、一つの副画素毎にスイッチング薄膜トランジスター、駆動薄膜トランジスター、及びキャパシターを含むことができ、図2Aでは、便宜上、駆動薄膜トランジスターだけを示した。駆動薄膜トランジスターの構成は前述した例に限定されずに多様に変形することができる。また、有機発光表示装置100は、一つの副画素毎に3つ以上の薄膜トランジスター及び2つ以上のキャパシターを含むこともできる。
【0028】
一方、画素領域(PA)の外側に上部電極電源ライン16を形成する。上部電極電源ライン16は、薄膜トランジスター(TR)と同時に形成される。具体的に、上部電極電源ライン16は、ゲート絶縁膜26上にゲート電極27と同時に形成されたり、層間絶縁膜28上にソース電極29及びドレイン電極30と同時に形成される。図2Aでは、上部電極電源ライン16が層間絶縁膜28上でソース電極29及びドレイン電極30と同時に形成される場合を示した。
【0029】
ここで、上部電極電源ライン16がソース電極29及びドレイン電極30と同時に形成されるということは、層間絶縁膜28上に導電物質を蒸着して導電膜を形成した後に導電膜をパターニングして、ソース電極29、ドレイン電極30、及び上部電極電源ライン16を共に形成したことを意味する。これによって、上部電極電源ライン16は、ソース電極29及びドレイン電極30と同一な成分を含み、厚さが同一である。
【0030】
図2Bを参照すると、層間絶縁膜28上にソース電極29、ドレイン電極30、及び上部電極電源ライン16を覆う絶縁膜31を形成する。絶縁膜31上に平坦化膜を追加的に形成したり、絶縁膜31そのものが平坦化膜で構成される。平坦化膜は、それ以前に形成された部材の段差または表面の屈曲を全てカバーして平らに形成される。従って、平坦化膜は、その上に形成される有機発光素子を平らにして、発光効率を向上させる。絶縁膜31の一部を除去して、ドレイン電極30を露出させるコンタクト孔311及び上部電極電源ライン16を露出させるコンタクト孔312を形成する。
【0031】
絶縁膜31は、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly phenylenethers resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(polyphenylenesulfides resin)、及びベンゾシクロブテン(benzocyclobutene、BCB)のうちの一つ以上の物質を含むことができる。
【0032】
次に、画素領域(PA)の絶縁膜31上に有機発光素子の下部電極32を形成する。下部電極32は、画素電極として副画素毎に一つずつ位置して、絶縁膜31のコンタクト孔311を通してドレイン電極30と接続される。下部電極32は、正孔注入電極であり、透明な導電物質または半透過型導電物質で形成される。
【0033】
下部電極32の形成のための透明な導電物質として、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、酸化亜鉛(ZnO)、及びIn(indium oxide)などの物質を使用することができ、半透過型導電物質として、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、及びアルミニウム(Al)のうちの一つ以上の物質を使用することができる。
【0034】
図2Cを参照すると、画素領域(PA)の絶縁膜31上に下部電極32を覆う画素定義膜33を形成し、画素定義膜33に開口部331を形成して下部電極32を露出させる。画素定義膜33が形成された部分は、複数の副画素間の領域に相当する。つまり、実際に発光する発光層(図示せず)が後に画素定義膜33の開口部331に形成されるため、画素定義膜33は、副画素別に発光層が形成される領域を定義する役割を果たす。
【0035】
画素定義膜33は、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、窒化ケイ素(SiN)、及び酸化ケイ素(SiO)系の無機物のうちのいずれか一つを含むことができる。この時、画素定義膜33は、画素領域(PA)にだけ形成され、この場合、画素領域(PA)の外側の上部電極電源ライン16及び絶縁膜31を覆わない。
【0036】
次に、画素領域(PA)及びその外側領域にスピンコーティング(spin coating)などの液状塗布法で少なくとも一つの有機物層34を形成する。液状塗布法を適用すれば、厚さが薄くて均一な有機物層34を容易で迅速に形成することができる。ここで、有機物層34は、正孔注入層(hole injection layer、HIL)341及び正孔輸送層(hole transporting layer、HTL)342である。
【0037】
液状塗布法によって形成された有機物層34は、画素領域(PA)だけでなく、その外側領域まで全て形成されるため、上部電極電源ライン16を覆う。つまり、有機物層34は、画素領域(PA)の外側の絶縁膜31、及び絶縁膜31のコンタクト孔312によって露出された上部電極電源ライン16上にも形成される。従って、画素領域(PA)の外側の有機物層34を除去して上部電極電源ライン16を再び露出させなければならない。
【0038】
図2Dを参照すると、画素領域(PA)の外側の有機物層34を除去する前に、画素定義膜33の開口部331に対応する正孔輸送層342上に発光層35を形成する。発光層35は、画素定義膜33の開口部331に対応する領域にだけ選択的に形成され、このために、インクジェット噴射法で発光層形成物質を特定の領域にだけ噴射して、発光層35を形成する。発光層35は、インクジェット噴射法以外の他の方法でも形成される。
次に、発光層35上に電子輸送層(electron transporting layer、ETL)343及び電子注入層(electron injection layer、EIL)344を形成する。これによって、正孔注入層341、正孔輸送層342、発光層35、電子輸送層343、及び電子注入層344で構成された有機発光層が完成される。
【0039】
電子輸送層343及び電子注入層344は、発光層35上にだけ形成されたり、スピンコーティングなどの液状塗布法によって形成されて、画素領域(PA)及びその外側領域全体に位置する。図2Dでは後者の場合を例示した。後者の場合、画素領域(PA)及びその外側領域に共に形成された有機物層34は、前述した正孔注入層341及び正孔輸送層342以外に電子輸送層343及び電子注入層344も含む。
【0040】
図2Eを参照すると、画素領域(PA)全体に真空蒸着またはスパッタリングなどの薄膜工程を適用して共通電極の上部電極17を形成する。上部電極17は、画素領域(PA)より大きい面積に形成される。上部電極17は、電子注入電極であり、反射型導電物質で形成される。これによって、有機発光表示装置100は、背面発光型に構成される。つまり、発光層35から放出された光は上部電極17によって反射されて、下部電極32、薄膜トランジスター(TR)、及び基板20を透過して画像を表示する。
【0041】
上部電極17は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム/カルシウム(LiF/ Ca)、及びフッ化リチウム/アルミニウム(LiF/Al)のうちの少なくとも一つを含むことができる。また、上部電極17は、透明な導電物質及び反射型導電物質の多重層にも形成される。
【0042】
上部電極17は、真空蒸着またはスパッタリングなどの薄膜工程によって形成された薄膜(thin film)であり、厚さが約5nm乃至200nmである。具体的に、蒸着マスクを備えた蒸着チャンバー(図示せず)の内部で導電物質を気化させて、上部電極17を形成する。この時、蒸着マスクは、画素領域(PA)に対応する一つの開口部を形成し、蒸着チャンバーの内部は高真空状態を維持する。
【0043】
上部電極17が画素領域(PA)に形成されるため、有機物層34のうちの画素領域(PA)に対応する部位は上部電極17で覆われ、画素領域(PA)の外側に対応する部位は外部に露出される。従って、上部電極17を利用して画素領域(PA)を保護すると共に、外部に露出された有機物層34部位を選択的に除去する。このために、基板20を蒸着チャンバーから取り出した後、レーザー設備(図示せず)またはプラズマエッチング設備(図示せず)に移動する。
【0044】
レーザー除去法を適用する場合、外部に露出された有機物層34部位にレーザービームを照射して、レーザービームのエネルギーで有機物層34を気化させて除去する。この過程で、上部電極17は、気化した有機物が画素領域(PA)の有機物と接触するのを防止して、画素領域(PA)の発光特性が変化するのを防止する。レーザービームとしては、エキシマ(excimer)レーザー、炭酸ガス(CO)レーザー、またはNd:YAGレーザーなどを使用することができ、100mJ/cm乃至1000mJ/cmのエネルギー範囲及び193nm乃至351nmの波長範囲のレーザーを使用することができる。
【0045】
プラズマエッチング法を適用する場合、上部電極17がエッチングマスクとして機能するため、外部に露出された有機物層34部位だけプラズマと反応する。これによって、プラズマとの反応で有機物層34をエッチングして除去する。プラズマガスとしては、酸素(O)、窒素(N)、またはアルゴン(Ar)などを使用することができ、常圧や高真空条件の全てにおいてプラズマエッチングが可能であり、有機発光素子の変成を防止するために、100℃以下の温度でプラズマエッチングを行う。
【0046】
図2Fを参照すると、レーザー除去法またはプラズマエッチング法で有機物層34のうちの上部電極17の外側に露出された部位が除去されるため、前段階で有機物層34で覆われていた絶縁膜31及び上部電極電源ライン16が露出される。図2Fに示した状態では画素領域(PA)に上部電極17が存在するが、上部電極17は、上部電極電源ライン16と分離されているため、有機発光素子40の駆動に必要な電圧が提供されない。
次に、常圧条件で上部電極17及び上部電極電源ライン16と重なるように上部電極17及び上部電極電源ライン16の間に導電物質を塗布して接続部18を形成する。接続部18は、上部電極17とは異なって、真空蒸着やスパッタリングなどの薄膜工程で形成されずに、常圧で実施可能な厚膜工程で形成される。つまり、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ノズル印刷、及びオフセット印刷のうちのいずれか一つの印刷法で接続部18を形成する。
【0047】
接続部18は、有機発光層と接触する電極ではなく、上部電極17及び上部電極電源ライン16を接続する導電パスであるため、材料、厚さ、及び形成方法などに大きな制約がない。また、接続部18を形成する際に高水準の精密度が要求されないため、工程費用が安い印刷法によって形成することができる。従って、薄膜工程に比べて材料費及び工程費用を節減させることができるため、大量生産に有利である。
【0048】
しかし、接続部18を形成する際に最も重要な要素は導電性である。接続部18は、導電性が優れているアルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)のうちの少なくとも一つの金属ナノ粒子を含む。ここで、ナノ粒子とは、1nm乃至1,000nmの範囲のサイズの粒子を意味する。
【0049】
具体的には、前述した金属ナノ粒子にビヒクル及びバインダーなどの有機物質を混合して印刷に適した粘度の混合物を製造し、この混合物をスクリーン印刷、インクジェット印刷、ノズル印刷、及びオフセット印刷のうちのいずれか一つの印刷法で塗布した後、乾燥または熱処理工程を経て接続部18を形成する。このように厚膜工程で形成された接続部18は、厚さが約20nm乃至1mmであり、比抵抗が約100Ω/□ 以下である。
【0050】
仮に接続部18を真空蒸着で形成すると仮定すると、接続部18は、上部電極17と形状が異なるため、上部電極形成用蒸着マスクと異なる形状の蒸着マスクが設置された別途の蒸着チャンバーが必要である。つまり、接続部18を形成するために蒸着チャンバーを追加しなければならない。また、蒸着チャンバーの真空度を高めて上部電極17を形成し、真空度を低くして基板20を取り出した後、画素領域(PA)の外側の有機物層34を除去して、蒸着チャンバーの真空度を高めて接続部18を形成しなければならない。従って、製造工程が複雑になり、製作に多くの時間がかかる。
【0051】
しかし、本実施形態では、画素領域(PA)の外側の有機物層34を除去した後、常圧で印刷法で接続部18をそのまま形成することによって、上部電極17の形成以降に真空度を調節する必要がなく、真空蒸着より安い費用で接続部18を容易に形成することができる。本実施形態の有機発光表示装置100において、接続部18は、上部電極17より厚く形成され、高い導電性を確保するために、前述した金属ナノ粒子を含む。
【0052】
図3A及び図3Bは本実施形態の有機発光表示装置のうちの上部電極及び接続部の平面形状を概略的に示した平面図である。
図3Aを参照すると、上部電極17は、上部電極電源ライン16に向かった一側が画素領域の外側にのびて、接続部18が画素領域の外側で上部電極17の一部及び上部電極電源ライン16全体と重なるように形成される。上部電極電源ライン16上には一つまたは複数のコンタクト孔312が形成され、接続部18は、コンタクト孔312を通して上部電極電源ライン16と接触する。図3Aでは複数のコンタクト孔312が形成されたことを示した。
【0053】
図3Bを参照すると、上部電極17は、上部電極電源ライン16に向かう一側が画素領域の外側にのびて、上部電極電源ライン16上に複数のコンタクト孔312が上部電極電源ライン16の長さ方向に沿って形成される。そして、接続部181は、コンタクト孔312の数に対応して複数形成され、それぞれの接続部181が画素領域の外側で上部電極17の一部及び一つのコンタクト孔312と重なるように形成される。
【0054】
接続部18、181の形状は前述した例に限定されず、上部電極17及び上部電極電源ライン16を接続することができる形状であれば全て適用可能である。
前述した構成の有機発光表示装置100は、画素領域(PA)を上部電極17で保護した状態で、画素領域(PA)の外側の有機物層34を効果的に除去することができる。また、常圧条件で実施可能な印刷法を適用するため、低い費用及び単純化された工程で接続部18を容易に形成することができる。また、接続部18が導電性が優れている金属ナノ粒子を含むことによって、上部電極17及び上部電極電源ライン16の間の電気抵抗を最少化して、有機発光素子40の発光特性を向上させることができる。
【0055】
以上で、本発明の望ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付図面の範囲内で多様に変形して実施することができ、これらも本発明の範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0056】
100 有機発光表示装置
10 上部電源電圧ライン
11 下部電源電圧ライン
13 画素電源電圧ライン
14 スキャンドライバー
15 データドライバー
16 上部電極電源ライン
17 上部電極
18 接続部
181 接続部
20 基板
21 バッファー層
22 半導体層
23 チャンネル領域
24 ソース領域
25 ドレイン領域
26 ゲート絶縁膜
27 ゲート電極
28 層間絶縁膜
29 ソース電極
30 ドレイン電極
31 絶縁膜
32 下部電極
33 画素定義膜
34 有機物層
35 発光層
40 有機発光素子
311、312 コンタクト孔
331 開口部
341 正孔注入層
342 正孔輸送層
343 電子輸送層
344 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の画素領域の外側に上部電極電源ラインを形成する段階、
前記画素領域に下部電極を形成する段階、
前記画素領域及び前記画素領域の外側に少なくとも一層の有機物層を形成する段階、
前記画素領域に上部電極を形成する段階、
前記上部電極の外側に露出された前記有機物層部位を選択的に除去して前記上部電極電源ラインを露出させる段階、及び
常圧条件で前記上部電極及び前記上部電極電源ラインと重なるように前記上部電極及び前記上部電極電源ラインの間に導電物質を塗布して接続部を形成する段階を含むことを特徴とする、有機発光表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機物層は、正孔注入層及び正孔輸送層の多重層であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記上部電極を形成する前に、前記画素領域上の前記正孔輸送層上に発光層、電子輸送層、及び電子注入層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層の多重層であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記電子輸送層を形成する前に、前記画素領域上の前記正孔輸送層上に発光層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記発光層は、インクジェット印刷法で前記画素領域上の副画素毎に一つずつ形成されることを特徴とする、請求項3または5に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記上部電極は、真空蒸着法及びスパッタリング法のうちのいずれか一つの方法によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記上部電極で前記画素領域を保護した状態で、レーザー照射法及びプラズマエッチング法のうちのいずれか一つの方法で前記上部電極の外側に露出された前記有機物層部位を選択的に除去することを特徴とする、請求項7に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記上部電極で前記画素領域を保護した状態で、前記レーザー照射法で前記上部電極の外側に露出された前記有機物層部位を選択的に除去する際に、前記上部電極は、気化した前記有機物が前記画素領域の前記有機物と接触するのを防止して、前記画素領域の発光特性が変化するのを防止することを特徴とする、請求項8に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記上部電極で前記画素領域を保護した状態で、プラズマエッチング法で前記上部電極の外側に露出された前記有機物層部位を選択的に除去する際に、前記上部電極がエッチングマスクとして機能することを特徴とする、請求項8に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記接続部は、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ノズル印刷法、及びオフセット印刷法のうちのいずれか一つの方法によって形成されることを特徴とする、請求項1または8に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記接続部は、アルミニウム、銅、金、パラジウム、及び白金のうちの少なくとも一つの金属ナノ粒子を含み、厚さが20nm乃至1mmであることを特徴とする、請求項9に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記上部電極電源ラインは、前記画素領域上の薄膜トランジスターと同時に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記薄膜トランジスターは、ゲート電極、及び層間絶縁膜を間において前記ゲート電極の上部に位置するソース電極及びドレイン電極を含み、
前記上部電極電源ラインは、前記ソース電極及びドレイン電極と同時に形成されることを特徴とする、請求項11に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記上部電極電源ライン上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜に前記ドレイン電極を露出させるコンタクト孔及び前記上部電極電源ラインを露出させる少なくとも一つのコンタクト孔を形成することを特徴とする、請求項12に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記下部電極は、前記絶縁膜のコンタクト孔を通して前記ドレイン電極と接続されることを特徴とする、請求項13に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記接続部は、前記上部電極及び前記絶縁膜のコンタクト孔によって露出された前記上部電極電源ラインを接続することを特徴とする、請求項13に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項18】
基板上の画素領域に形成されて、下部電極、有機発光層、及び上部電極を含む複数の有機発光素子、
前記画素領域の外側に形成される上部電極電源ライン、及び
前記上部電極及び前記上部電極電源ラインと重なるように前記上部電極及び前記上部電極電源ラインの間に形成される接続部を含み、
前記接続部は、アルミニウム、銅、金、パラジウム、及び白金のうちの少なくとも一つの金属ナノ粒子を含み、厚さが20nm乃至1mmであることを特徴とする、有機発光表示装置。
【請求項19】
前記上部電極は、厚さが5nm乃至200nmであることを特徴とする、請求項16に記載の有機発光表示装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−124199(P2011−124199A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29922(P2010−29922)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】