説明

有機系廃棄物の処理方法

【課題】有機系廃棄物を加熱乾留して乾留残渣とし、得られた固体状物質を溶融してスラグ化することによって、含有する重金属を無害化することが出来、かつ、有価物質に変換して有効利用することが出来る有機系廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】A工程として水分導入管16とガス導入管14とガス排出管15とを有する改質炉1とその大部分が改質炉で包囲され、その周面に複数のガス抜き管21を有する熱分解炉2を備え、有機系廃棄物の供給装置51が接続され、他端に排出装置52が設けられている炭化処理装置1Aを使用して、有機系廃棄物を加熱する乾留工程と、B工程として還元ガス供給口61を有する旋廻燃焼装置6とその底部に接続された溶融チャンバ8とから構成されたスラグ化処理装置1Bを使用し、A工程で得られた乾留残渣を前記旋廻燃焼装置に導入し、加熱還元して溶融する溶融スラグ化工程とから成る有機系廃棄物の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系廃棄物の処理方法に関し、詳しくは、有機系廃棄物を加熱乾留し、得られた乾留残渣を溶融スラグ化する有機系廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、厨芥(生ゴミ)、紙類、繊維類などの都市ゴミ、廃木材、間伐材、プラスチック類などの有機廃棄物の処理方法として、埋め立て処分または焼却による灰化埋め立て処分が行われている。しかしながら、埋め立て処分地の許容量が限界に近づいてきていることにより、有機廃棄物の再資源化を図り、埋め立て処分量を略零にすることが望まれている。その様な再資源化の方法の1つとして、都市ゴミを粉砕処理した後、乾留して炭化し、得られた炭化物(乾留残渣)を燃料として使用する方法が知られている。
【特許文献1】特許2001−288474号公報
【0003】
しかしながら、上述の処理方法で得られた炭化物は、重金属を含有しているため、燃料として使用した場合、当該重金属の捕集、回収のために、煙道に電気集塵器などを配置しなければならず経済的でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、有機系廃棄物を加熱乾留し、得られた乾留残渣を溶融してスラグ化することによって、有機系廃棄物に含有されている重金属を無害化すると共に、有機系廃棄物を有価物質に変換して有効利用することが出来る有機系廃棄物の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、有機系廃棄物を原料とする下記A工程より成る乾留工程および前記A工程で得られた乾留残渣を原料とする下記B工程より成る溶融スラグ化工程を包含することを特徴とする有機系廃棄物の処理方法に存する。
【0006】
A工程は、水および/またはスチームの水分導入管とガス導入管とガス排出管とを有する改質炉、および、その大部分が改質炉で包囲され、且つ、その周面に複数のガス抜き管を有する熱分解炉を備え、熱分解炉の一端に有機系廃棄物の供給装置が接続され、他端に排出装置が設けられている炭化処理装置を使用し、熱分解炉に有機系廃棄物を供給し、熱分解炉における加熱乾留により発生し且つガス抜き管から噴出した可燃性ガスと酸化剤とを改質炉中で混合し、可燃性ガスを少なくとも部分燃焼して熱分解炉を加熱する乾留工程である。
【0007】
B工程は、2つから成る少なくとも1組の還元ガス供給口を有する筒状の旋廻燃焼装置と、当該旋廻燃焼装置の底部に接続された溶融チャンバとから構成され、且つ、前記の各還元ガス供給口が、旋廻燃焼装置に対して互いに逆方向の渦流を生ずる様に旋廻燃焼装置の縦方向に間隔を設けて配置されたスラグ化処理装置を使用し、A工程で得られた乾留残渣を前記旋廻燃焼装置に導入し、加熱還元して溶融する溶融スラグ化工程である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機系廃棄物に含有される重金属を無害化すると共に、有機系廃棄物を有価物質の前駆体(スラグ)に変換して有効利用することが出来る。さらに、加熱乾留を行なうための燃料を著しく低減することが出来ると共に、乾留残渣を溶融してスラグ化するために必要な熱エネルギー量も低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る有機系廃棄物の処理方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る有機系廃棄物の処理方法を示す工程図である。図2は、A工程(乾留工程)において使用される炭化処理装置の構成要素を示す一部破断の側面図である。図3は、図2の炭化処理装置の熱分解炉の主要部の構造を示す側面図であり、図4は、図2の炭化処理装置の熱分解炉の内部構造を中心線に直交するB−B線に沿った断面で示した断面図である。
【0010】
本発明の有機系廃棄物の処理方法は、図1に示す様に、有機系廃棄物を原料とする下記A工程より成る乾留工程、および前記A工程で得られた乾留残渣を原料とする下記B工程より成る溶融スラグ化工程を包含する方法である。
【0011】
先ず、A工程(乾留工程)で使用する炭化処理装置(1A)について説明する。炭化処理装置(1A)は、図2に示す様に、水および/またはスチームを導入する水分導入管(16)とガス導入管(14)とガス排出管(15)とが付設された改質炉(1)と、改質炉(1)の内部に回転可能に挿通され且つその周面に複数のガス抜き管(21)が設けられた熱分解炉(2)とから主として構成され、熱分解炉(2)の一端(図2において左側の端部)には、有機系廃棄物の供給装置(51)が接続され、熱分解炉(2)の他端(図2において右側の端部)には、ゲートバルブを含む排出装置(52)が設けられる。
【0012】
改質炉(1)は、通常、基礎に設置される固定式の炉であり、上記のガス導入管(14)および水分導入管(16)は、改質炉(1)の一端側の底部近傍に接続され、ガス排出管(15)は、改質炉(1)の他端側の上部に接続される。改質炉(1)は、熱分解炉(2)の軸線を傾斜させるため、水平レベルに対して1〜2度程度傾斜した状態に設置される。
【0013】
熱分解炉(2)は、一般的な金属製ロータリーキルンに類似する構造の回転炉である。熱分解炉(2)は、改質炉(1)の内部のガスが外部に漏洩しない様に、改質炉(1)の両端部にシール部(1s)を介して回動自在に挿通され、熱分解炉(2)の両端部は、これら両端部の外周に装着された補強リング(22)を支持ローラー(42)で受けることにより回動自在に支持されている。一方、改質炉(1)の一端側の側方には電動機(3)が設置され、電動機(3)の駆動歯車(32)と熱分解炉(2)の一端外周部に取り付けられた歯車(23)とが噛合しており、熱分解炉(2)は、一方向に例えば0.3〜10rpmの速さで回転する様になされている。
【0014】
また、熱分解炉(2)の開放された一端は、摺動部材としてのシール部(41s)を介して装着されたフード(41)によって気密に封止される。更に、フード(41)には、破砕機により破砕された有機系廃棄物を装入するための供給装置(51)が設けられ、斯かる供給装置(51)は、例えば、ホッパー(51h)を備えたスクリューコンベヤによって構成される。従って、ホッパー(51h)に有機系廃棄物を投入することにより、回転状態の熱分解炉(2)に有機系廃棄物を供給することが出来る。
【0015】
他方、熱分解炉(2)の開放された他端は、摺動部材としてのシール部(43s)を介して装着されたフード(43)によって気密に封止される。更に、フード(43)の下部には、乾留残渣を取り出すための上記の排出装置(52)が設けられる。排出装置(52)は、上下方向にシャッター構造のゲートバルブを複数段配置して構成される。従って、熱分解炉(2)からは、排出装置(52)を操作することにより、当該熱分解炉で発生する可燃性ガスを漏出させることなく、得られた乾留残渣を装置外に取り出すことが出来る。
【0016】
また、熱分解炉(2)には、その内部で発生した可燃性ガスを改質炉(1)へ取り出すため、多数のガス抜き管(21)が取り付けられる。ガス抜き管(21)は、図3および図4に示す様に、熱分解炉(2)の周面部から当該熱分解炉の中心線の位置まで挿入されている。ガス抜き管(21)は、熱分解炉(2)の長さ方向に沿って一定のピッチで配列され、かつ、各隣接するガス抜き管(21)は、熱分解炉(2)の中心線を基準とした場合、周面部の互いに90°ずれた方向に伸長されている。すなわち、熱分解炉(2)の一端側から視た場合、多数のガス抜き管(21)は、スパイラル状に順次ずれた状態で中心から周面部に伸長されている。更に、熱分解炉(2)の中心部に位置する各ガス抜き管(21)の開口された先端部は、熱分解炉(2)の他端側、すなわち、被処理物(処理すべき有機系廃棄物)の流れ方向の下流側に向けて屈曲している。
【0017】
炭化処理装置(1A)においては、上記の様に、多数のガス抜き管(21)が熱分解炉(2)の全体に亙って略均等に配置されていることにより、熱分解炉(2)で発生した可燃性ガスを改質炉(1)へ効率的に排出することが出来、また、ガス抜き管(21)が熱分解炉(2)の中心線まで伸びていることにより、熱分解炉(2)において一層多量の有機系廃棄物を処理できる。しかも、熱分解炉(2)の内部でガス抜き管(21)の先端が屈曲していることにより、熱分解炉(2)内部の固形成分(有機系廃棄物やその乾留残渣)によるガス抜き管(21)の閉塞、および、固形成分の改質炉(1)への落下を防止することが出来る。なお、ガス抜き管(21)の構造としては、熱分解炉(2)内で発生した可燃性ガスだけが通過可能な構造である限り、フィルター構造などの各種の構造を採用し得る。
【0018】
次に、B工程で使用する乾留残渣のスラグ化処理装置(1B)について説明する。スラグ化処理装置(1B)は、2つから成る少なくとも1組、例えば、2つの還元ガス供給口(62)を有する略筒状の旋廻燃焼装置(6)と、当該旋廻燃焼装置の底部に接続されたサイクロンメルター(7)と、それに連結された溶融チャンバ(8)とから構成される。旋廻燃焼装置(6)は、高温の還元ガスによって乾留残渣を溶融してスラグを生成するためのチャンバーであり、通常、その本体は、例えば下端側が一部逆円錘台の外形の円筒状に形成され、その頂部に乾留残渣の挿入口を備えている。
【0019】
上記の各還元ガス供給口(62)は、通常、旋廻燃焼装置(6)の本体の上部に取り付けられる。これらは、旋廻燃焼装置(6)の内部で互いに逆方向の渦流を生ずる様に、旋廻燃焼装置(6)の本体の中心線に対して互いに反対側にずれた位置、例えば平行な2つの接線に略沿った位置で且つ上下方向に旋廻燃焼装置(6)本体の直径の1/4〜1倍程度の間隔を設けて配置される。これにより、一方向の渦流の場合における欠点、すなわち、旋廻燃焼装置(6)内に反気流が生じて上昇気流となり、乾留残渣が下降せずに旋廻燃焼装置(6)の内壁に付着して閉塞すると言う欠点が解消される。なお、各ガス導入管(62)には、還元ガスが供給するための還元ガス供給ライン(61)が接続されている。
【0020】
旋廻燃焼装置(6)の底部のサイクロンメルター(7)に連結される溶融チャンバ(8)は、均一なスラグを生成するための処理容器である。溶融チャンバ(8)の底部には、溶融スラグを取り出すための抜出し口(81)が設けられ、そして、溶融チャンバ(8)の上部には、旋廻燃焼装置(6)から導入された排ガスを抜き出すためのガス排出管(82)が設けられる。なお、ガス排出管(82)から抜き出された排ガスは、ガスタービン、ボイラ等の燃料としても利用可能である。
【0021】
次に、上記の炭化処理装置(1A)使用したA工程(乾留工程)及びスラグ化処理装置(1B)を使用したB工程(溶融スラグ化工程)を包含する本発明の処理方法について説明する。
【0022】
先ず、A工程(乾留工程)について説明する。A工程は、有機系廃棄物を乾留残渣と可燃性ガスとに分解する工程である。斯かる工程では、上記の炭化処理装置(1A)を使用し、熱分解炉(2)に有機系廃棄物を供給して加熱乾留をする。そして、熱分解炉(2)内で生成した可燃性ガスは、熱分解炉(2)の周面に設けられたガス抜き管(21)から改質炉(1)内に噴出する。噴出した可燃性ガスは、改質炉(1)内においてガス導入管(14)から供給された酸化剤と混合して可燃性ガスを少なくとも部分燃焼する共に、水分導入管(16)から供給された水および/またはスチームと混合して水性ガス化反応を生起し、可燃性ガスの軽質化および改質化をする。そして、前述の可燃性ガスの少なくとも部分燃焼により熱分解炉(2)が加熱され、有機系廃棄物を加熱乾留する。なお、前述の「少なくとも部分燃焼」とは、可燃性ガスの完全燃焼も含まれる。
【0023】
本発明においては、前記の加熱乾留を行なう際、改質炉(1)内の酸素濃度を通常12容量%以下に制御する。上述の改質炉(1)内の酸素濃度を12容量%以下に制御する方法は、酸化剤導入管(14)から改質炉(1)に供給する酸化剤の量を調整する。したがって、改質炉(1)内の酸素濃度は、通常12容量%以下、好ましくは8容量%以下である。改質炉(1)内の酸素濃度が12容量%を超えると、大容積のガス化炉を必要とし経済的でない。
【0024】
なお、改質炉(1)におけるダイオキシン類の発生を抑制するためには、可燃性ガスを完全燃焼することが必要である。それ故、改質炉(1)に供給する酸化剤量を多くして可燃性ガスを完全燃焼すれば、ダイオキシン類の発生を抑制する出来る。しかしながら、発生する可燃性ガスの量が多いため、供給される酸化剤の量も多くなり、その結果、大容積の熱分解炉および改質炉が必要となり経済的でない。
【0025】
従って、改質炉(1)内では、熱分解炉(2)中での有機系廃棄物の加熱乾留に必要な熱量を供給するに要する可燃性ガス量が燃焼される。そして、残りの可燃性ガスは、燃焼されることなく、ガス排出管(15)から排出され、次の方法で処理される。例えば、(i)B工程の旋廻燃焼装置に供給される還元ガスとして使用する方法、(ii)後工程で新たに設けた燃焼炉(図示は省略)で完全燃焼する方法、または、(iii)改質装置(図示は省略)で軽質化または改質して燃料として使用する方法が挙げられる。
【0026】
改質炉(1)内に供給される水および/またはスチームの量は、有機系廃棄物(絶乾状態)中の有機成分量に対して通常0.4〜5重量倍である。水および/またはスチームの量が0.4重量倍未満の場合は、熱分解炉(2)が過剰に過熱され、乾留運転の制御が困難となる。水および/またはスチームの量が5重量倍を超える場合は、可燃性ガスの軽質化および改質化をすることが困難である。
【0027】
供給された水および/またはスチームによって、改質炉(1)内で可燃性ガスの水性ガス反応が生起し、可燃性ガスを軽質化、改質化させる。さらに、可燃性ガスが改質炉(1)中でスチームによって稀釈されるため、可燃性ガスの重合化およびタール化が抑制される。そして、可燃性ガスの軽質化によりタール分やコークがガス化されて、改質炉(1)内面のコーキング進行速度を抑制する。
【0028】
さらに、有機系廃棄物の構成および性状が変動しても、改質炉(1)への水および/またはスチームの供給量を増減することによって、水性ガス反応量、それに伴う発熱量を容易に調節可能であるため、運転が暴走することなく、乾留運転の安定化を図ることが出来る。その結果、有機系廃棄物が加熱乾留が不十分のまま熱分解炉(2)から排出されたり、熱分解炉(2)が過剰に過熱されたりすることがない。
【0029】
改質炉(1)への水および/またはスチームの供給量は、熱分解炉(2)の外面温度を所定の温度範囲に維持する制御システム(図示は省略)によってコントロールされる。この運転安定化制御は、可燃性ガスの部分燃焼に伴う発熱と、水および/またはスチームからのスチームとの水性ガス反応に伴う吸熱(蒸発、加熱によるものも含まれる)とを利用したものである。なお、運転の安定化は、水および/またはスチームの供給量ばかりでなく、改質炉(1)への酸化剤の供給量、有機系廃棄物の供給量の調節によっても可能である。
【0030】
改質炉(1)内の温度は、通常600〜750℃、好ましくは600〜650℃である。そして、改質炉(1)内の圧力は、熱分解炉(2)内で発生した重質可燃性ガスが改質炉(1)へ噴出可能となる様に、熱分解炉(2)内のガス圧力よりも僅かに低く保持される。
【0031】
熱分解炉(2)内での有機系廃棄物の加熱乾留は、通常、空気遮断状態下で行われる。したがって、熱分解炉(2)内の酸素濃度は、通常0容量%である。しかしながら、原料の有機系廃棄物中に酸素が含有されている場合は、加熱乾留中の熱分解により、熱分解炉(2)内の可燃性ガス中に酸素ガスとして存在することがある。そして、熱分解炉(2)内の温度が可燃性ガスの着火温度よりも高い場合、生成した酸素ガスは、その酸素当量分の可燃性ガスを燃焼(部分燃焼)させることが出来る。
【0032】
したがって、熱分解炉(2)内の酸素濃度は、通常1容量%以下、好ましくは0.1容量%以下、より好ましくは零容量%である。酸素濃度が1容量%を超える場合は、有機系廃棄物の加熱乾留処理が困難になると共に、ダイオキシン類の発生を抑制することが困難となる。
【0033】
熱分解炉(2)内の温度は、通常500〜600℃、好ましくは550〜600℃である。
【0034】
上述の熱分解炉(2)内の部分燃焼によって、熱分解炉(2)内面に付着したタールやコークも燃焼する。なお、僅少とは言え、熱分解炉(2)内での部分燃焼によって発生する熱量分だけ、熱分解炉(2)の外側から伝えられる熱量が低減される。そのため、熱分解炉(2)の温度が低く抑えられ、それに対する負担(材料の耐熱性)が軽減され、耐熱性の低い材料の使用が可能になる。また、可燃性ガスが前述の部分燃焼によって生成したスチーム及びその他のガスにより稀釈されおよび/またはスチームと水性ガス反応することにより、熱分解炉(2)内のタールやコークの生成が抑制されると共に、コーキング進行速度が抑制され、連続運転期間を延長することが出来る。
【0035】
本発明によれば、熱分解炉(2)内の有機系廃棄物のガス化に必要な熱は、改質炉(1)内で可燃性ガスを少なくとも部分燃焼することによって十分賄われるため、精製された高価な燃料は殆ど不要である。
【0036】
生成した乾留残渣は、熱分解炉(2)の他端に接続されている排出装置(51)介して炭化処理装置(1A)から排出される。
【0037】
本発明の炭化処理装置(1A)の被処理物である有機系廃棄物としては、厨芥(生ゴミ)、紙類、繊維類などの都市ゴミ、廃木材、間伐材、プラスチック類、カーシュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residueとも呼ばれる)、廃電化製品、廃OA機器、下水汚泥などの廃棄物が挙げられる。
【0038】
本発明の炭化処理装置(1A)で使用する酸化剤としては、酸素ガスまたは酸素を含むガスが挙げられ、具体的には、空気、酸素、酸素富化空気が挙げられる。
【0039】
A工程(乾留工程)で得られた乾留残渣は、上述の被処理物を乾留処理した後の残渣から成り、主としてC、Si、Ca、Mg、Al、Fe等の元素を含有する。
【0040】
続いて、B工程(溶融スラグ化工程)について説明する。B工程は、スラグ化処理装置(1B)を使用し、A工程で得られた乾留残渣を旋廻燃焼装置(6)にその頂部から導入して高温の還元ガスにより加熱還元して溶融する溶融スラグ化工程である。
【0041】
上記の高温の還元ガスは、乾留残渣をスラグ化するためのガスであり、旋廻燃焼装置(6)内において互いに逆方向の渦流を形成する様に、還元ガス供給ライン(61)を通じて各還元ガス導入管(62)から旋廻燃焼装置(6)内に噴射される。そして、上部から供給された乾留残渣は、上述の高温の還元ガスの渦流によって十分に攪拌されて均一な懸濁状態となり、高温の還元ガスと接触してスラグ化し、落下しながら溶融する。
【0042】
旋廻燃焼装置(6)内の温度は、適切な溶融還元を行なう観点から、通常1350〜1500℃である。旋廻燃焼装置(6)内の温度が1350℃未満の場合は、乾留残渣がスラグ化されないことがある。また、温度が1500を超える場合は、温度が高い割には乾留残渣のスラグ化への寄与率が小さく不経済である。また、旋廻燃焼装置(6)に導入される高温の還元ガスの導入量は、旋廻燃焼装置(6)に導入される乾留残渣に対する量として、通常0.2〜1.2Nm/kg−乾留残渣である。
【0043】
還元ガス導入管(62)から導入される高温の還元ガスは、水素および/または一酸化炭素を含有するガスである。還元ガスとしては、A工程における炭化処理装置(1A)のガス排出管(15)から排出された可燃性ガスを使用する。これによりスラグ化のための必要な熱エネルギー量を低減することが出来る。炭化処理装置(1A)から排出された可燃性ガスだけで、旋廻燃焼装置(6)に導入する還元ガス量を賄えない場合には、気体、液体または固体の化石燃料、廃プラスチック、廃ゴム、ASR(Automobile Shredder Residue、シュレッダー・ダストとも呼ばれる)等の可燃性廃棄物を燃焼することにより製造されるガスを使用することも出来る。
【0044】
次いで、旋廻燃焼装置(6)にて溶融還元して得られたスラグは、旋廻燃焼装置(6)の底部のサイクロンメルター(7)を経由して、サイクロンメルター(7)に連結される溶融チャンバ(8)に送られて均質化され、溶融チャンバ(8)底部の抜出し口(81)から取り出される。また、旋廻燃焼装置(6)から送気された還元排ガスは、溶融チャンバ(8)の上部空間からガス排出管(82)を介して抜き出される。なお、溶融チャンバ(8)は、溶融したスラグが固化しない温度、例えば、通常1400〜1550℃に維持される。抜出し口(81)から取り出された溶融スラグ(有価物質の前駆体)は、冷却、粉砕して有価物質である路盤材を形成する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1:
A工程(乾留工程):先ず、図1に示す炭化処理装置(1A)を使用して有機系廃棄物の乾留工程を行った。すなわち、有機系廃棄物としての都市ゴミを供給装置(51)から熱分解炉(2)に供給すると共に、水分導入管(16)からスチームガス及びガス導入管(14)から空気を改質炉(1)に供給して加熱乾留を行い、乾留残渣を生成した。炭化処理装置(1A)の操作条件を表1示し、ガス排出管(15)からの排ガスの組成を表2に示し、乾留残渣の組成を表3に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
なお、表2におけるダスト濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、ダイオキシン類の濃度は夫々以下の方法で測定した。
【0050】
ダスト濃度は、JIS Z 8808.8に記載の方法に準じて行った。窒素酸化物濃度は、JIS K 0104.4.2に記載の方法に準じて行った。硫黄酸化物濃度は、JIS K0103.6.1に記載の方法に準じて行った。塩化水素濃度は、JIS K 0107.6.2に記載の方法に準じて行った。ダイオキシン類の濃度は、「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」(平成9年2月厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課)に記載の方法に準じて行った。
【0051】
【表3】

【0052】
なお、表3における乾留残渣の炭素は、公知の石炭類およびコークス類の工業分析法で、他の成分は、公知のX線分析法で測定した。
【0053】
B工程:図1に示すスラグ化処理装置(1B)を使用して乾留残渣の溶融スラグ化処理を行った。すなわち、A工程の炭化処理装置(1A)の排出装置(52)から排出された乾留残渣を旋廻燃焼装置(6)の頂部から導入して高温の還元ガスによって溶融還元した。次いで、溶融チャンバ(8)にて溶融スラグの均質化をし、冷却、粉砕した後、スラグ(有価物質の前駆体)を得た。乾留残渣の導入量は、25Kg/Hrで、高温の還元ガスの導入量は、8.0Nm3/Hrで、スラグの生成量は、12Kg/Hrであった。また、得られたスラグをランダムサンプリングし、X線による成分分析を行った結果、破断面は、サンプルにおいて成分のバラツキがほとんどなく、均質であった。その結果、有価物質である路盤材の前駆体として、適したものであった。旋廻燃焼装置(6)での溶融還元処理および溶融チャンバ(8)での溶融スラグの均質化の操作条件を表4示す。
【0054】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る有機系廃棄物の処理方法を示す工程図
【図2】A工程(乾留工程)において使用される炭化処理装置の構成要素を示す一部破断の側面図
【図3】図2の炭化処理装置の熱分解炉の主要部の構造を示す側面図
【図4】図2の炭化処理装置の熱分解炉の内部構造を中心線に直交するB−B線に沿った断面で示した断面図
【符号の説明】
【0056】
1A:炭化処理装置
1B:スラグ化処理装置
1 :改質炉
14:ガス導入管
15:ガス排出管
16:水分導入管
1s:シール部
2 :熱分解炉
21:ガス抜き管
22:補強リング
23:歯車
3 :電動機
32;駆動歯車
41:フード
41s:シール部
42:支持ローラー
43:フード
43s:シール部
51:供給装置
51h:ホッパー
52:排出装置
6 :旋廻燃焼装置
61:還元ガス供給ライン
62:還元ガス導入管
7 :サイクロンメルター
8 :溶融チャンバ
81:抜出し口
82:ガス排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物を原料とする下記A工程より成る乾留工程および前記A工程で得られた乾留残渣を原料とする下記B工程より成る溶融スラグ化工程を包含することを特徴とする有機系廃棄物の処理方法。
A工程:水および/またはスチームの水分導入管とガス導入管とガス排出管とを有する改質炉、および、その大部分が改質炉で包囲され、且つ、その周面に複数のガス抜き管を有する熱分解炉を備え、熱分解炉の一端に有機系廃棄物の供給装置が接続され、他端に排出装置が設けられている炭化処理装置を使用し、熱分解炉に有機系廃棄物を供給し、熱分解炉における加熱乾留により発生し且つガス抜き管から噴出した可燃性ガスと酸化剤とを改質炉中で混合し、可燃性ガスを少なくとも部分燃焼して熱分解炉を加熱する乾留工程
B工程:2つから成る少なくとも1組の還元ガス供給口を有する筒状の旋廻燃焼装置と、当該旋廻燃焼装置の底部に接続された溶融チャンバとから構成され、且つ、前記の各還元ガス供給口が、旋廻燃焼装置に対して互いに逆方向の渦流を生ずる様に旋廻燃焼装置の縦方向に間隔を設けて配置されたスラグ化処理装置を使用し、A工程で得られた乾留残渣を前記旋廻燃焼装置に導入し、加熱還元して溶融する溶融スラグ化工程
【請求項2】
改質炉から排出された排ガスが還元ガスとして旋廻燃焼装置に供せられる請求項1に記載の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−29869(P2007−29869A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217675(P2005−217675)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(598098467)株式会社 メッツコーポレーション (10)
【出願人】(300078615)広島ガステクノ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】