説明

有機薄膜太陽電池

【課題】本発明は、電極間での短絡が起こり難く、大面積であっても光電変換効率の良好な有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、上記透明基板の一方の面にパターン状に形成された内側補助電極と、上記内側補助電極上に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、上記透明基板を貫通し、上記外側補助電極および上記内側補助電極を電気的に接続する接続導電部と、上記外側補助電極上に形成され、上記外側補助電極および上記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大面積化が可能な有機薄膜太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、2つの異種電極間に、電子供与性および電子受容性の機能を有する有機薄膜を配置してなる太陽電池であり、シリコンなどに代表される無機太陽電池に比べて製造工程が容易であり、かつ低コストで大面積化が可能であるという利点を持つ。
【0003】
太陽電池において、受光側の電極は透明電極とされる。従来、この透明電極には、ITO等の金属酸化物などが用いられており、中でも、導電性や透明性が高く、仕事関数が高いことから、ITOが主に使用されている。しかしながら、有機薄膜太陽電池に用いられるITO電極は、厚みが150nm程度と薄く、シート抵抗が20Ω/□程度と大きいため、発生した電流がITO電極を通過する際に消費され、発電効率が低下するという問題がある。この現象は、有機薄膜太陽電池の面積が大きくなるにつれて顕著に現れる。
【0004】
近年、電極の導電性を向上させるために、シリコン太陽電池や色素増感太陽電池において、透明電極上に金属メッシュを積層することが提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、金属メッシュは光を遮るため、透明電極上に金属メッシュを積層することにより入射光量が低減し、結果として発電効率が低下するという問題がある。そこで、透明基板の受光面側に凸レンズなどの導光手段を配置することが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−243989号公報
【特許文献2】特開2000−243990号公報
【特許文献3】特開2007−78909号公報
【特許文献4】特開2003−346927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機薄膜太陽電池においても、発電効率向上のために、透明電極上に金属メッシュを積層することが考えられる。
しかしながら、シリコン太陽電池や色素増感太陽電池に用いられる金属メッシュの厚みは2μm〜20μm程度と非常に厚い。一方、有機薄膜太陽電池では、光電変換層等の有機層の厚みは100nm〜200nmと非常に薄い。そのため、有機薄膜太陽電池に、シリコン太陽電池や色素増感太陽電池に用いられる金属メッシュをそのまま適用すると、光電変換層等の有機層の厚みが薄いために、厚い金属メッシュによる凹凸を有機材料で均一にコーティングすることが難しく、結果として電極間で短絡が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電極間での短絡が起こり難く、大面積であっても光電変換効率の良好な有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、透明基板と、上記透明基板の一方の面にパターン状に形成された内側補助電極と、上記内側補助電極上に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、上記透明基板を貫通し、上記外側補助電極および上記内側補助電極を電気的に接続する接続導電部と、上記外側補助電極上に形成され、上記外側補助電極および上記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
【0009】
本発明によれば、接続導電部により外側補助電極と内側補助電極と透明電極とが電気的に接続されているので、透明電極のシート抵抗が比較的高くても、外側補助電極の抵抗値が十分に低ければ、電極全体としての抵抗を十分に低くすることが可能となる。よって、本発明の有機薄膜太陽電池は大面積であっても、発生した電力を効率良く集電することが可能となる。また本発明によれば、外側補助電極の厚みは電極間での短絡に影響しないので、厚みを比較的厚く、また線幅を比較的小さくし、開口面積を大きくすることが可能であり、電極間での短絡が生じることなく、採光性に優れ、かつ集電機能の高い太陽電池とすることが可能である。さらに本発明によれば、透明基板の受光面側に光学部材が形成されているので、光学部材の光の収束、発散、屈折等の作用によって光電変換層に効率的に光を入射させることができる。したがって本発明においては、高い発電効率を得ることができる。
【0010】
また、本発明は、透明基板と、上記透明基板の一方の面に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、上記透明基板を貫通し、上記外側補助電極および上記透明電極を電気的に接続する接続導電部と、上記外側補助電極上に形成され、上記外側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
【0011】
本発明によれば、接続導電部により外側補助電極と透明電極とが電気的に接続されているので、透明電極のシート抵抗が比較的高くても、外側補助電極の抵抗値が十分に低ければ、電極全体としての抵抗を十分に低くすることが可能となる。よって、本発明の有機薄膜太陽電池は大面積であっても、発生した電力を効率良く集電することが可能となる。また本発明によれば、外側補助電極の厚みは電極間での短絡に影響しないために、厚みを比較的厚く、また線幅を比較的小さくし、開口面積を大きくすることができるので、かつ、透明基板および光電変換層の間にパターン状の補助電極は形成されていないので、電極間での短絡が生じることなく、採光性に優れ、かつ集電機能の高い太陽電池とすることが可能である。さらに本発明によれば、透明基板の受光面側に光学部材が形成されているので、光学部材の光の収束、発散、屈折等の作用によって光電変換層に効率的に光を入射させることができる。したがって本発明においては、高い発電効率を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明は、透明基板と、上記透明基板の一方の面に順不同に積層された透明電極およびパターン状の内側補助電極と、上記透明電極および内側補助電極の上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面に形成され、上記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有し、上記内側補助電極の厚みが、上記透明電極および内側補助電極と上記対向電極との間で短絡が生じない厚みであることを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
【0013】
本発明によれば、陽極側の電極は内側補助電極と透明電極とが積層されたものであるので、透明電極のシート抵抗が比較的高くても、内側補助電極の抵抗値が十分に低ければ、陽極全体としてのシート抵抗を十分に低くすることが可能となる。したがって、本発明の有機薄膜太陽電池は大面積であっても、発生した電力を効率良く集電することが可能となる。また本発明によれば、内側補助電極の厚みが、内側補助電極および透明電極と対向電極との間で短絡が生じない厚みであるので、電極間での短絡を防ぐことができる。さらに本発明によれば、透明基板の受光面側に光学部材が形成されているので、光学部材の光の収束、発散、屈折等の作用によって光電変換層に効率的に光を入射させることができる。したがって本発明においては、高い発電効率を得ることができる。
【0014】
上述の発明においては、上記光学部材がレンズ部材であることが好ましい。光学部材として凸レンズを使用した場合、発電部であるパターン状の補助電極の開口部に多くの光を集光することが可能となり、パターン状の補助電極により遮光され発電に寄与できない部分の発電量を、集光により補うことが可能となる。その結果、太陽電池の発電量としては、パターン状の補助電極を有さない太陽電池と同等もしくはそれと同等以上を確保することが可能となる。また、光学部材として凹レンズを使用した場合、平面の透明基板に比べ入光面の表面積を大きくすることが出来、また、透明基板の厚みと凹レンズを最適に設計することで、遮光領域となるパターン状の補助電極の下側に光を照射することが可能となる。その結果、太陽電池の発電量は、パターン状の補助電極を有さない太陽電池と同等もしくはそれと同等以上を確保することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、上記補助電極のパターン形状がメッシュ状であることが好ましい。補助電極の抵抗値をより低くすることができるからである。
【0016】
さらに、上記発明においては、上記内側補助電極の厚みが10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。内側補助電極の厚みが厚すぎると、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。
【0017】
この場合、上記透明基板上に上記内側補助電極および上記透明電極の順に積層されていることが好ましい。透明電極と光電変換層や正孔取出し層等との接触面積が大きい方が、界面の接合性が良いからである。
【0018】
また、上記透明基板上に上記透明電極および上記内側補助電極の順に積層されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、電極間での短絡の発生を防ぐとともに、補助電極が形成されていても光電変換層への入射光量の大幅な低下を抑制することが可能であり、有機薄膜太陽電池を大面積化したとしても高い発電効率を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機薄膜太陽電池における外側補助電極および内側補助電極の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の有機薄膜太陽電池における外側補助電極および内側補助電極の他の例を示す模式図である。
【図9】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
【図10】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図11】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図12】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図13】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図15】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図16】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図17】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図18】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図19】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池について詳細に説明する。
本発明の有機薄膜太陽電池は、補助電極の構成により3つの実施態様に分けることができる。以下、各実施態様に分けて説明する。
【0022】
I.第1実施態様
本発明の有機薄膜太陽電池の第1実施態様は、透明基板と、上記透明基板の一方の面にパターン状に形成された内側補助電極と、上記内側補助電極上に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、上記透明基板を貫通し、上記外側補助電極および上記内側補助電極を電気的に接続する接続導電部と、上記外側補助電極上に形成され、上記外側補助電極および上記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有することを特徴とするものである。
【0023】
本実施態様の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示す例において、有機薄膜太陽電池1は、透明基板2と、透明基板2の一方の面にメッシュ状に形成された内側補助電極3と、内側補助電極3上に形成された透明電極4と、透明電極4上に形成された正孔取出し層5と、正孔取出し層5上に形成された光電変換層6と、光電変換層6上に形成された対向電極7と、透明基板2の他方の面にメッシュ状に形成され、透明電極4よりも抵抗値の低い外側補助電極8と、透明基板2を貫通し、外側補助電極8および内側補助電極3を電気的に接続する接続導電部9と、外側補助電極8上に形成され、外側補助電極8および内側補助電極3が設けられている遮光領域10に入射した光を光電変換層6に導く凸レンズ11aとを有している。
【0024】
なお、透明基板の一方の面に内側補助電極および透明電極が形成され、透明基板の他方の面に外側補助電極が形成されているとは、透明基板の内側補助電極および透明電極が形成されている面とは反対側の面に外側補助電極が形成されていることを意味する。
また、遮光領域とは、外側補助電極および内側補助電極が設けられている領域をいう。
【0025】
図1に例示する有機薄膜太陽電池1においては、まず、入射光Lが凸レンズ11aに入射し、この凸レンズの光の収束作用により集光されて透明基板2、透明電極4および正孔取出し層5を透過し、光電変換層6に入射する。この際、遮光領域10の凸レンズ11aに入射した光Lは、凸レンズの光の収束作用により集光されるので、外側補助電極8および内側補助電極3によって遮られることなく光電変換層6に効率的に入射することができる。そして、入射光Lにより光電変換層6内で電荷(正孔および電子)が発生する。次いで、発生した電荷(正孔)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して正孔取出し層5へと取り出され、正孔取出し層5および透明電極4の接触界面にて透明電極4へと取り出される。一方、発生した電荷(電子)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して光電変換層6および対向電極7の接触界面にて対向電極7へと取り出される。
【0026】
図2は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。図2に示す有機薄膜太陽電池1は、上記の図1に示す有機薄膜太陽電池1において凸レンズ11aの替わりに凹レンズ11bが形成されたものである。
図2に例示する有機薄膜太陽電池1においては、まず、入射光Lが凹レンズ11bに入射し、この凹レンズの光の発散作用により拡散されて透明基板2、透明電極4および正孔取出し層5を透過し、光電変換層6に入射する。この際、遮光領域10の凹レンズ11bに入射した光Lは、凹レンズの光の発散作用により拡散されるので、外側補助電極8および内側補助電極3によって遮られることなく光電変換層6に効率的に入射することができる。
【0027】
図3は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。図3に示す有機薄膜太陽電池1は、上記の図1に示す有機薄膜太陽電池1において凸レンズ11aの替わりにプリズム11cが形成されたものである。
図3に例示する有機薄膜太陽電池1においては、まず、入射光Lがプリズム11cに入射し、このプリズムの光の分散・屈折作用により光の進行方向が曲げられて透明基板2、透明電極4および正孔取出し層5を透過し、光電変換層6に入射する。この際、遮光領域10のプリズム11cに入射した光Lは、プリズムの光の分散・屈折作用により光の進行方向が曲げられるので、外側補助電極8および内側補助電極3によって遮られることなく光電変換層6に効率的に入射することができる。
【0028】
このように本実施態様によれば、凸レンズ、凹レンズ、プリズムなどの遮光領域に入射した光を光電変換層に導く光学部材が形成されているので、外側補助電極および内側補助電極が形成されていても、入射光量を大幅に減少させることなく、効率的な発電が可能である。
【0029】
また、本実施態様によれば、外側補助電極および内側補助電極が接続導電部により電気的に接続されており、陽極側の電極が外側補助電極と内側補助電極と透明電極とから構成されるので、透明電極のシート抵抗が比較的高い場合であっても、陽極全体としての抵抗を低減することができる。すなわち、外側補助電極により、発生した電力を効率良く集電することができる。したがって、有機薄膜太陽電池を大面積化したとしても、高い発電効率を維持することが可能である。
【0030】
さらに、本実施態様によれば、外側補助電極は透明基板の受光面側に形成されているので、外側補助電極の厚みは電極間での短絡に影響しない。そのため、外側補助電極の厚みを比較的厚くすることもできる。したがって、外側補助電極の開口率および厚みを調整することで、大きな開口率を確保した状態で陽極全体としての抵抗を制御することが可能である。
【0031】
また、透明基板上に内側補助電極および透明電極が積層されているので、接続導電部と内側補助電極と透明電極との界面の接合を良好なものとすることができる。
以下、本実施態様の有機薄膜太陽電池における各構成について説明する。
【0032】
1.光学部材
本実施態様に用いられる光学部材は、外側補助電極上に形成され、外側補助電極および内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を光電変換層に導くものである。
【0033】
光学部材としては、遮光領域に入射した光を光電変換層に導くことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、凸レンズ、凹レンズ、プリズム、反射防止膜等を用いることができる。中でも、凸レンズ、凹レンズなどのレンズ部材が好適である。レンズ部材を適正な設計にすることにより、平行光である太陽光を適切な箇所に照射する制御がもっとも容易だからである。例えば、凸レンズを設けた場合、発電部であるパターン状の外側補助電極および内側補助電極の開口部に多くの光を集光することが可能となり、パターン状の外側補助電極および内側補助電極により遮光され発電に寄与できない部分の発電量を、集光により補うことが可能となる。その結果、太陽電池の発電量としては、パターン状の補助電極を有さない太陽電池と同等もしくはそれと同等以上を確保することが可能となる。また、凹レンズを設けた場合、平面の透明基板に比べ入光面の表面積を大きくすることができ、また、透明基板の厚みと凹レンズを最適に設計することで、遮光領域となるパターン状の内側補助電極の下側に光を照射することが可能となる。その結果、太陽電池の発電量は、パターン状の外側補助電極および内側補助電極を有さない太陽電池と同等もしくはそれと同等以上を確保することが可能となる。
【0034】
特に、光学部材は、遮光領域の光電変換層に光を導くことができるものであることが好ましい。ここで、光電変換層は、光が照射されない場合は絶縁体であり、光が照射された場合には導体となる。そのため、光が照射される部分と光が照射されない部分とが存在すると、光が照射される部分は導体となり、光が照射されない部分は絶縁体のままとなる。よって、発電効率向上のためには、光が照射されない部分ができるだけ少ない方が好ましい。光学部材が設けられていない場合、遮光領域の光電変換層には光が入射しにくくなる。したがって、遮光領域の光電変換層に光を導くことができる光学部材が好ましいのである。
【0035】
このような光学部材としては、凸レンズおよび凹レンズが好ましく、中でも凹レンズが好ましく用いられる。凸レンズにより光を集光し、単位面積あたりの入射光を増幅させた場合、太陽光により加熱され太陽電池素子温度の上昇が大きなものとなり、太陽電池素子へのダメージが大きくなるおそれがある。よって、凹レンズにより光を回折させるほうが好適である。
【0036】
光学部材の配置としては、遮光領域に入射した光を光電変換層に導くことができればよく、光学部材の種類や外側補助電極および内側補助電極のパターン形状に応じて適宜選択される。
【0037】
例えば、光学部材が凸レンズまたは凹レンズである場合、図1および図2に例示するように、凸レンズ11aおよび凹レンズ11bの端部が遮光領域10に位置するように凸レンズおよび凹レンズが配置されていることが好ましい。これにより、遮光領域の凸レンズおよび凹レンズに入射した光を光電変換層に効率的に導くことができるからである。
また、光学部材が凸レンズまたは凹レンズである場合であって、外側補助電極および内側補助電極のパターン形状が六角形の格子状(ハニカム状)である場合には、光学部材は凸レンズおよび凹レンズがハニカム状に配列されたレンズアレイであることが好ましい。このようなレンズアレイであれば、凸レンズおよび凹レンズの端部を遮光領域10に位置させることができるからである。
光学部材が凸レンズまたは凹レンズである場合であって、外側補助電極および内側補助電極のパターン形状が四角形の格子状である場合には、例えば、四角形の開口部に外接するようなレンズ形状とすることができる。
【0038】
一方、例えば、光学部材がプリズムである場合、図3に例示するように、プリズム11cが遮光領域10のみに配置されていることが好ましい。これにより、遮光領域に入射した光を光電変換層に効率的に導くことができるからである。
【0039】
凸レンズおよび凹レンズの径、ピッチ、曲率などは、外側補助電極および内側補助電極の開口部の径やピッチ、外側補助電極および内側補助電極の線幅などに応じて適宜調整される。また、プリズムの幅、高さなどは、外側補助電極および内側補助電極の線幅などに応じて適宜調整される。
【0040】
凸レンズ、凹レンズ、プリズム等を構成する材料としては、通常、樹脂が用いられる。樹脂としては、凸レンズ、凹レンズ、プリズムの形成材料として一般的に用いられるものを採用することができる。
【0041】
凸レンズ、凹レンズ、プリズム等の形成方法としては、例えば、金型を用いる方法が挙げられる。
【0042】
2.接続導電部
本実施態様に用いられる接続導電部は、透明基板を貫通し、外側補助電極および内側補助電極を電気的に接続するものである。
【0043】
接続導電部の形成材料としては、通常、金属が用いられる。接続導電部に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0044】
接続導電部の形状としては、透明基板を貫通する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、円柱状、円錐状などとすることができる。
接続導電部が金属箔上に形成された導電性バンプ(突起物)を由来とするものである場合、導電性バンプの形成工程に依拠して、接続導電部の形状は厚み方向に径が変化した円錐状となる。この場合、図4に例示するように、接続導電部9の形状は、内側補助電極3側が小径、外側補助電極8側が大径となる円錐状であることが好ましい。導電性バンプが形成されている金属箔をパターニングすることにより、外側補助電極を形成することができるからである。
【0045】
接続導電部9は、図1〜図4に例示するように透明基板2に設けられた貫通孔をすべて埋めるように形成されていてもよく、図5に例示するように透明基板2に設けられた貫通孔の壁面を覆うように形成されていてもよい。
図5に例示するように接続導電部9が透明基板2に設けられた貫通孔の壁面を覆うように形成されている場合、貫通孔の壁面以外の部分は、例えば樹脂12等で充填されていることが好ましい。内側補助電極を形成するために透明基板全面にスパッタリング法等の蒸着法により金属薄膜を成膜する場合には、樹脂等が充填されていないと、金属薄膜の形成材料が孔を通過してしまい、透明基板全面に金属薄膜を形成するのが困難になるからである。
中でも、接続導電部は、透明基板に設けられた貫通孔をすべて埋めるように形成されていることが好ましい。導電性を高めることができるからである。
【0046】
接続導電部の形成位置としては、接続導電部により外側補助電極および内側補助電極が電気的に接続されるように配置されていればよい。中でも、接続導電部、外側補助電極および内側補助電極自体が基本的に光を透過せず、外側補助電極および内側補助電極の開口部から光電変換層に光が入射するので、光電変換層に入射する光量を十分に確保するために、接続導電部は、外側補助電極および内側補助電極が設けられた領域に配置されていることが好ましい。
【0047】
また、接続導電部は、外側補助電極および内側補助電極を電気的に接続していればよいので、通常、接続導電部の密度は、外側補助電極および内側補助電極の密度より小さくなる。接続導電部の密度としては、所望の抵抗値や、接続導電部の径等に応じて適宜選択される。
【0048】
接続導電部の径としては、光電変換層に入射する光量を十分に確保するため、外側補助電極および内側補助電極の線幅等に応じて適宜設定される。
【0049】
接続導電部の形成方法としては、例えば、透明基板に貫通孔を形成し、貫通孔に導電ペーストを充填して、透明基板を貫通する接続導電部を形成する方法、および、金属箔上に導電性バンプを形成し、金属箔の導電性バンプが形成された面に透明基板を積層して、導電性バンプを透明基板に貫通させ、透明基板を貫通する接続導電部を形成する方法などを用いることができる。なお、接続導電部の形成方法については、後述の「12.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0050】
3.外側補助電極
本実施態様に用いられる外側補助電極は、透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低いものである。
【0051】
外側補助電極の形成材料としては、通常、金属が用いられる。外側補助電極に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、アルミニウム合金、ステンレス系金属、鉄(Fe)および鉄−ニッケル合金等の導電性金属を挙げることができる。これらの導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
【0052】
また、対向電極の形成材料の仕事関数等に応じて、好ましい金属を選択してもよい。例えば、対向電極の形成材料の仕事関数等を考慮する場合には、透明電極は正孔取出し電極であるので、外側補助電極に用いられる金属は仕事関数の高いものであることが好ましい。具体的には、Alが好ましく用いられる。
【0053】
外側補助電極は、単層であってもよく、複数層から構成されるものであってもよい。例えば、金属箔上に接続導電部となる導電性バンプ(突起物)を形成し、導電性バンプを透明基板に押し当てて貫通させ、導電性バンプが形成されている金属箔をパターニングする場合には、外側補助電極は金属箔に由来する単層となる。また例えば、金属薄膜をパターニングして導電パターンを形成した後に、導電パターンにめっきを施す場合には、外側補助電極は導電パターンおよびめっき層から構成されるものとなる。
【0054】
外側補助電極が外側補助電極用導電パターンおよびめっき層から構成される場合、外側補助電極用導電パターンは、上述の導電性金属からなる単層であってもよく、また透明基板との付着強度を確保するために導電性金属層の透明基板側にコンタクト層が積層されたものであってもよい。コンタクト層に用いられる金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等を挙げることができる。
【0055】
外側補助電極のパターン形状としては、開口部を有するパターンであれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、多角形や円形の格子状などのメッシュ状、ストライプ状、櫛歯状等が挙げられる。中でも、メッシュ状が好ましい。外側補助電極の抵抗値をより低くすることができるからである。
【0056】
外側補助電極の形成位置としては、外側補助電極および内側補助電極自体が基本的に光を透過せず、外側補助電極および内側補助電極の開口部から光電変換層に光が入射するので、光電変換層に入射する光量を十分に確保するために、外側補助電極は内側補助電極が設けられた領域に配置されていることが好ましい。
【0057】
また、外側補助電極の厚みは電極間の短絡に影響しないので比較的厚くすることができるのに対し、内側補助電極の厚みは電極間の短絡に影響するため比較的薄いことが好ましい。そのため、外側補助電極が内側補助電極が設けられた領域に配置されている場合、外側補助電極の密度は内側補助電極の密度より小さくてもよい。すなわち、図6に例示するように、外側補助電極8が、内側補助電極3が設けられた領域に配置され、内側補助電極3よりも粗に形成されていてもよい。この場合、例えば図7(a)、(b)に示すように内側補助電極3の形状が六角形の格子状(ハニカム状)である場合には、外側補助電極8の形状は図7(a)のような櫛歯状や図7(b)のような格子状とすることができる。また例えば図8(a)、(b)に示すように内側補助電極3の形状が四角形の格子状である場合には、外側補助電極8の形状は図8(a)のようなストライプ状や図8(b)のような格子状とすることができる。
【0058】
上述したように外側補助電極自体は基本的に光を透過しないので、外側補助電極の開口部から光電変換層に光が入射する。そのため、外側補助電極の開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、外側補助電極の開口部の比率は、50%〜95%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜95%の範囲内である。開口部の比率が上記範囲未満であると、充分に光を透過させることができないからである。また、開口部の比率が上記範囲を超えると、外側補助電極に所望の抵抗値を付与するために、外側補助電極の厚みを大きくする必要が生じ、生産効率が低下するからである。
【0059】
外側補助電極の開口部のピッチおよび外側補助電極の線幅は、外側補助電極が内側補助電極が設けられた領域に配置されるように設定されていることが好ましく、外側補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0060】
外側補助電極の厚みとしては、特に限定されるものではないが、0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、中でも1μm〜7μmの範囲内、特に3μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。外側補助電極の厚みが薄すぎると、陽極全体としての抵抗を低減する効果が十分に得られない場合があるからである。また、外側補助電極の厚みが厚すぎると形成が困難になる場合があるからである。
【0061】
外側補助電極のシート抵抗としては、透明電極のシート抵抗よりも低ければよいが、中でも内側補助電極のシート抵抗よりも低いことが好ましい。具体的に、外側補助電極のシート抵抗は1Ω/□以下であることが好ましく、中でも0.5Ω/□以下、特に0.1Ω/□以下であることが好ましい。外側補助電極のシート抵抗が上記範囲より大きいと、所望の発電効率が得られない場合があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0062】
なお、外側補助電極の形成方法については、後述の「12.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0063】
4.内側補助電極
本実施態様に用いられる内側補助電極は、透明基板の一方の面にパターン状に形成されるものである。
【0064】
内側補助電極の形成材料としては、通常、金属が用いられる。
なお、内側補助電極に用いられる金属については、上記外側補助電極に用いられる金属と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
内側補助電極は、上述の導電性金属からなる単層であってもよく、また透明基板や透明電極との付着強度を確保するために導電性金属層とコンタクト層とが積層されたものであってもよい。コンタクト層の形成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等が挙げられる。コンタクト層は、付着強度を確保するために導電性金属層に積層するものであり、導電性金属層のいずれか一方の面に積層してもよく、また導電性金属層の両方の面に積層してもよい。
【0066】
内側補助電極のパターン形状としては、開口部を有するパターンであれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、多角形や円形の格子状などのメッシュ状、ストライプ状、櫛歯状等が挙げられる。中でも、メッシュ状が好ましい。内側補助電極の抵抗値をより低くすることができるからである。
【0067】
内側補助電極自体は基本的に光を透過しないので、内側補助電極の開口部から光電変換層に光が入射する。そのため、内側補助電極の開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、内側補助電極の開口部の比率は、50%〜95%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜95%の範囲内である。開口部の比率が上記範囲未満であると、充分に光を透過させることができないからである。また、開口部の比率が上記範囲を超えると、内側補助電極の面積が小さくなって、内側補助電極での電荷の移動効率が低下するおそれがあるからである。
【0068】
内側補助電極の開口部のピッチおよび内側補助電極の線幅は、内側補助電極が設けられた領域に外側補助電極が配置されるように設定されていることが好ましく、内側補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0069】
内側補助電極の厚みは、透明電極および対向電極の間で短絡が生じない厚みであれば特に限定されるものではなく、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層等の厚みに応じて適宜選択される。具体的には、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層などの、透明電極および対向電極の間に形成される層の総膜厚を1とすると、内側補助電極の厚みは、1以下であることが好ましく、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。内側補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。より具体的には、内側補助電極の厚みは、500nm以下であることが好ましく、中でも300nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。内側補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。一方、内側補助電極の厚みの下限は30nmであることが好ましい。膜厚が30nm未満である場合、金属薄膜が連続膜になっておらず、抵抗値が非常に大きくなる可能性があるからである。
【0070】
内側補助電極の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属薄膜を全面に成膜した後にメッシュ状にパターニングする方法、メッシュ状の導電体を直接形成する方法等が挙げられる。これらの方法は、内側補助電極の形成材料や厚み等に応じて適宜選択される。
【0071】
金属薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法であることが好ましい。すなわち、内側補助電極は真空成膜法にて形成された金属薄膜であることが好ましい。真空成膜法により成膜した金属種は、めっき膜に比べ介在物が少なく比抵抗を小さくでき、Agペースト等を用いて成膜したものと比較しても比抵抗を小さくできるからである。また、1000nm以下の金属薄膜を制御良く、均一な厚みにて成膜する方法としても、真空製膜法が好適である。
金属薄膜のパターニング方法としては、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトエッチング法等を挙げることができる。
【0072】
5.透明電極
本実施態様に用いられる透明電極は、上記内側補助電極上に形成されるものである。本発明においては、外側補助電極側が受光面となるため、透明電極は、通常、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)とされる。
【0073】
透明電極の構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されなく、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。中でも、後述する対向電極の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば対向電極の構成材料を仕事関数の低い材料とした場合には、透明電極の構成材料は仕事関数の高い材料であることが好ましい。導電性および透明性を有し、かつ仕事関数の高い材料としては、ITOが好ましく用いられる。
【0074】
透明電極の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。透明電極の全光線透過率が上記範囲であることにより、透明電極にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
【0075】
透明電極のシート抵抗は、20Ω/□以下であることが好ましく、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0076】
透明電極は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この透明電極の膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、透明電極のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0077】
透明電極は、基板上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0078】
透明電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
【0079】
6.光電変換層
本実施態様に用いられる光電変換層は、透明電極および対向電極の間に形成されるものである。なお、「光電変換層」とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
【0080】
光電変換層は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく(第1態様)、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様に分けて説明する。
【0081】
(1)第1態様
本実施態様における光電変換層の第1態様は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であり、電子供与性材料および電子受容性材料を含有するものである。この光電変換層では、光電変換層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。
【0082】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子の電子伝達機構は、主にπスタッキングによる分子間のホッピング伝導であるため、高分子の主鎖方向のみならず、光電変換層の膜厚方向への電荷輸送も有利である。さらに、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることで湿式塗工法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
【0083】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
【0084】
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。
なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4-phenyleneethynylene-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)-1,4-phenyleneethene-1,2-diyl-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)ethene-1,2-diyl])の合成方法については、Macromolecules, 35, 3825 (2002) や、Mcromol. Chem. Phys., 202, 2712 (2001) に詳しい。
【0085】
また、電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
【0086】
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
【0087】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
【0088】
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。
また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0089】
光電変換層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、光電変換層における体積抵抗が高くなる場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0090】
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
【0091】
光電変換層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法が好ましく用いられる。湿式塗工法であれば、大気中で光電変換層を形成することができ、コストの削減が図れるとともに、大面積化が容易だからである。
【0092】
光電変換層用塗工液の塗布方法としては、光電変換層用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
【0093】
光電変換層用塗工液の塗布後は、形成された塗膜を乾燥する乾燥処理を施してもよい。光電変換層用塗工液に含まれる溶媒等を早期に除去することにより、生産性を向上させることができるからである。
乾燥処理の方法として、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥等、一般的な方法を用いることができる。
【0094】
(2)第2態様
本実施態様における光電変換層の第2態様は、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものである。以下、電子受容性層および電子供与性層について説明する。
【0095】
(電子受容性層)
本実施態様に用いられる電子受容性層は、電子受容性の機能を有するものであり、電子受容性材料を含有するものである。
【0096】
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0097】
電子受容性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子受容性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0098】
電子受容性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0099】
(電子供与性層)
本実施態様に用いられる電子供与性層は、電子供与性の機能を有するものであり、電子供与性材料を含有するものである。
【0100】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0101】
電子供与性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子供与性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0102】
電子供与性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0103】
7.対向電極
本実施態様に用いられる対向電極は、上記透明電極と対向する電極である。通常、対向電極は、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)とされる。本実施態様においては、外側補助電極側が受光面となるので、対向電極は透明性を有さなくともよい。
【0104】
対向電極の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、対向電極は電子取出し電極であるので、仕事関数の低いものであることが好ましい。具体的に仕事関数の低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。
【0105】
対向電極は、単層であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
対向電極の膜厚は、単層である場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、対向電極のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚い場合には全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0106】
対向電極は、光電変換層上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0107】
対向電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、メタルマスクによるパターン蒸着法を使用することができる。
【0108】
8.透明基板
本実施態様に用いられる透明基板としては、特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
【0109】
上記の中でも、透明基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等の種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
【0110】
9.正孔取出し層
本実施態様においては、図1に例示するように、光電変換層6と透明電極4(正孔取出し電極)との間に正孔取出し層5が形成されていることが好ましい。正孔取出し層は、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から正孔取出し電極への正孔取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0111】
正孔取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、トリフェニルジアミン(TPD)が好ましく用いられる。
【0112】
正孔取出し層の膜厚としては、上記有機材料を用いた場合は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、上記金属薄膜である場合は、0.1nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
【0113】
10.電子取出し層
本実施態様においては、光電変換層と対向電極(電子取出し電極)との間に電子取出し層が形成されていてもよい。電子取出し層は、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から電子取出し電極への電子取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0114】
電子取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適な材料としては、バソキュプロイン(BCP)または、バソフェナントロン(Bphen)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
【0115】
11.その他の構成
本実施態様の有機薄膜太陽電池は、大面積であっても良好な発電効率を示すものである。有機薄膜太陽電池の面積としては、特に限定されるものではないが、50mm□以上であることが好ましい。
【0116】
本実施態様の有機薄膜太陽電池は、上述した構成部材の他にも、必要に応じて後述する構成部材を有していてもよい。例えば、本実施態様の有機薄膜太陽電池は、保護シート、充填材層、バリア層、保護ハードコート層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、封止材層等の機能層を有していてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層が形成されていてもよい。
なお、これらの機能層については、特開2007−73717号公報等に記載のものと同様とすることができる。
【0117】
12.有機薄膜太陽電池の製造方法
本実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法には、接続導電部の形成工程により好ましい2つの態様がある。以下、各態様に分けて説明する。
【0118】
(1)有機薄膜太陽電池の製造方法の第1態様
本実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の第1態様は、透明基板に貫通孔を形成し、上記貫通孔に導電ペーストを充填して、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する接続導電部形成工程と、上記接続導電部が形成された透明基板の一方の面に内側補助電極用金属薄膜を形成し、上記接続導電部が形成された透明基板の他方の面に外側補助電極用金属箔膜を形成し、上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に接続導電部と接するように内側補助電極用導電パターンを形成し、上記透明基板の他方の面に接続導電部と接するように外側補助電極用導電パターンを形成するパターン形成工程、および、上記内側補助電極用導電パターン上に保護層を配置し、上記外側補助電極用導電パターン上にめっきを施すめっき工程を有し、上記透明基板の一方の面に内側補助電極を形成し、上記透明基板の他方の面に外側補助電極を形成する補助電極形成工程と、上記補助電極形成工程後、上記内側補助電極上に透明電極を形成する透明電極形成工程とを有するものである。
【0119】
図9および図10は、本態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、透明基板2にレーザーにより貫通孔21を形成する(図9(a)、(b))。次いで、貫通孔21にスクリーン印刷法により導電ペースト9aを充填し、透明基板を貫通する接続導電部9を形成する(図9(c))。
次に、接続導電部9が設けられた透明基板2の一方の面に内側補助電極用金属薄膜3aを形成し、透明基板2の他方の面に外側補助電極用金属薄膜8aを形成する(図9(d))。次いで、外側補助電極用金属薄膜8aおよび内側補助電極用金属薄膜3aの上にそれぞれレジスト22a,23aを配置し(図9(e))、露光および現像を行い、レジスト画像22b,23bを形成する(図9(f))。続いて、レジスト画像22b,23bをマスクとして露出している外側補助電極用金属薄膜8aおよび内側補助電極用金属薄膜3aをエッチングし(図9(g))、レジスト画像22b,23bを除去して、透明基板2の一方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の内側補助電極用導電パターン3bを形成し、透明基板2の他方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の外側補助電極用導電パターン8bを形成する(図10(a))。これにより、内側補助電極用導電パターン3bから構成される内側補助電極3を得る。
次に、透明基板2の他方の面に形成された内側補助電極3上に保護層25を配置し(図10(b))、透明基板2の一方の面に形成された外側補助電極用導電パターン8b上に電解めっきを施してめっき層8cを形成し、外側補助電極用導電パターン8bおよびめっき層8cから構成される外側補助電極8を得る(図10(c))。続いて、保護層25を除去する(図10(d))。
次に、内側補助電極3上に透明電極4を形成する(図10(e))。
【0120】
その後、図示しないが、透明電極上に正孔取出し層および光電変換層を形成し、光電変換層上に対向電極を形成するとともに、外側補助電極上に光学部材を形成する。必要に応じて、光電変換層上に電子取出し層を形成し、電子取出し層上に対向電極を形成してもよい。
【0121】
図9(d)〜(g)に示す例においては、外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜を同一形状にパターニングしているが、これに限定されるものではなく、外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜を異なる形状にパターニングしてもよい。
以下、本態様の有機薄膜太陽電池の製造方法における各工程について説明する。
【0122】
(i)接続導電部形成工程
本態様における接続導電部形成工程は、透明基板に貫通孔を形成し、上記貫通孔に導電ペーストを充填して、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する工程である。
【0123】
透明基板に貫通孔を形成する方法としては、一般的な貫通孔の形成方法を適用することができ、透明基板の種類に応じて適宜選択される。透明基板が透明樹脂フィルム等の透明なフレキシブル材である場合、貫通孔の形成方法としては、レーザーを用いる方法等が挙げられる。一方、透明基板が石英ガラス等の透明なリジット材である場合、貫通孔の形成方法としては、ドリルを用いる方法、サンドブラスト法等が挙げられる。
レーザーとしては、エキシマレーザー、YAGレーザー等の短波長のレーザーを用いることができる。
【0124】
貫通孔の径としては、所望の接続導電部の径に応じて適宜設定される。
【0125】
導電ペーストは、樹脂中に金属微細粒を分散させたものである。金属微細粒としては、上記接続導電部に用いられる金属を使用することができる。
【0126】
貫通孔に導電ペーストを充填する方法としては、貫通孔のすべてを導電ペーストで埋めることができる方法であればよく、例えば、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0127】
接続導電部形成工程においては、貫通孔に導電ペーストを充填して接続導電部を形成する方法に替えて、めっきにより貫通孔を埋める方法(ビアフィリング)や、めっきにより貫通孔の壁面を覆うように接続導電部を形成する方法(スルーホールめっき)を適用することもできる。
【0128】
(ii)補助電極形成工程
本態様における補助電極形成工程は、上記接続導電部が形成された透明基板の一方の面に内側補助電極用金属薄膜を形成し、上記接続導電部が形成された透明基板の他方の面に外側補助電極用金属箔膜を形成し、上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に接続導電部と接するように内側補助電極用導電パターンを形成し、上記透明基板の他方の面に接続導電部と接するように外側補助電極用導電パターンを形成するパターン形成工程と、上記内側補助電極用導電パターン上に保護層を配置し、上記外側補助電極用導電パターン上にめっきを施すめっき工程とを有しており、上記透明基板の一方の面に内側補助電極を形成し、上記透明基板の他方の面に外側補助電極を形成する工程である。
以下、補助電極形成工程における各工程について説明する。
【0129】
(パターン形成工程)
本態様におけるパターン形成工程は、上記接続導電部が形成された透明基板の一方の面に内側補助電極用金属薄膜を形成し、上記接続導電部が形成された透明基板の他方の面に外側補助電極用金属箔膜を形成し、上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に接続導電部と接するように内側補助電極用導電パターンを形成し、上記透明基板の他方の面に接続導電部と接するように外側補助電極用導電パターンを形成する工程である。
【0130】
外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0131】
レジストとしては、電極の形成に用いられる一般的なレジストを使用することができる。
外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜の上にレジストを配置する方法としては、例えば、外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜の上にレジスト材料を塗布してもよく、外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜の上にドライレジストフィルムを積層してもよい。
レジストの露光方法および現像方法としては、一般的な方法を適用することができる。
【0132】
レジストの露光および現像後は、露出している外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜をエッチング除去する。
【0133】
外側補助電極用金属薄膜および内側補助電極用金属薄膜のエッチング後は、レジストを除去する。レジストの除去方法としては、一般的な方法を適用することができる。
【0134】
(めっき工程)
本態様におけるめっき工程は、上記内側補助電極上に保護層を配置し、上記外側補助電極用導電パターン上にめっきを施す工程である。
【0135】
透明基板の他方の面に配置される保護層としては、上記レジストを用いることができる。
【0136】
めっき方法としては、外側補助電極用導電パターンにめっきを施すことができる方法であれば特に限定されるものではなく、通常は電解めっきが用いられる。
【0137】
電解めっきの条件としては、所望の厚みのめっき層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、一般的な条件とすることができる。
【0138】
めっきの厚みとしては、特に限定されるものではないが、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.5μm〜5μmの範囲内、特に0.7μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。めっきの厚みが薄すぎると、電極全体としての抵抗を低減する効果が十分に得られない場合があるからである。また、めっきの厚みが厚すぎると形成が困難になる場合があるからである。
【0139】
(iii)透明電極形成工程
本態様における透明電極形成工程は、上記補助電極形成工程後、上記内側補助電極上に透明電極を形成する工程である。
なお、透明電極の形成方法については、上記透明電極の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0140】
(2)有機薄膜太陽電池の製造方法の第2態様
本実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の第2態様は、金属箔上に導電性バンプを形成し、上記金属箔の上記導電性バンプが形成された面に透明基板を積層して、上記導電性バンプを上記透明基板に貫通させ、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する接続導電部形成工程と、上記透明基板の金属箔が設けられている面とは反対側の面に内側補助電極用金属薄膜を形成し、上記金属箔および内側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記金属箔および内側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に上記接続導電部と接するように内側補助電極を形成し、上記透明基板の他方の面に上記接続導電部と接するように外側補助電極を形成する補助電極形成工程と、上記内側補助電極上に透明電極を形成する透明電極形成工程とを有するものである。
【0141】
図11および図12は、本態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、金属箔8d上に導電ペーストを用いてスクリーン印刷法により導電性バンプ9bを形成する(図11(a))。次いで、金属箔8dの導電性バンプ9bが形成された面に透明基板2を積層して、加圧し、導電性バンプ9bの頂部が露出するように導電性バンプ9bを透明基板2に貫通させる(図11(b))。続いて、導電性バンプ9bの頂部を研磨し、透明基板2表面を平坦化し、接続導電部9を形成する(図11(c))。
次に、透明基板2の金属箔8dが形成された面とは反対側の面に内側補助電極用金属薄膜3aを形成する(図11(d))。次いで、金属箔8dおよび内側補助電極用金属薄膜3aの上にそれぞれレジスト22a,23aを配置し(図11(e))、パターン露光および現像を行い、レジスト画像22b、23bを形成する(図12(a))。続いて、レジスト画像22b,23bをマスクとして露出している金属箔8dおよび内側補助電極用金属薄膜3aをエッチングし(図12(b))、レジスト画像22b,23bを除去して、透明基板2の一方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の内側補助電極3を形成し、透明基板2の他方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の外側補助電極8を形成する(図12(c))。
次に、内側補助電極3上に透明電極4を形成する(図12(d))。
【0142】
その後、図示しないが、透明電極上に正孔取出し層および光電変換層を形成し、光電変換層上に対向電極を形成するとともに、外側補助電極上に光学部材を形成する。必要に応じて、光電変換層上に電子取出し層を形成し、電子取出し層上に対向電極を形成してもよい。
以下、本態様の有機薄膜太陽電池の製造方法における各工程について説明する。
【0143】
(i)接続導電部形成工程
本態様における接続導電部形成工程は、金属箔上に導電性バンプを形成し、上記金属箔の上記導電性バンプが形成された面に透明基板を積層して、上記導電性バンプを上記透明基板に貫通させ、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する工程である。
【0144】
金属箔を構成する金属としては、導電性バンプを形成することが可能なものであればよく、上記外側補助電極に用いられる金属を挙げることができる。
【0145】
導電性バンプの形成方法としては、例えば、導電ペーストを用いたスクリーン印刷法が挙げられる。
導電性ペーストとしては、上記第1実施態様に記載のものを用いることができる。
【0146】
導電性バンプを透明基板に貫通させる際には、金属箔の導電性バンプが形成された面に透明基板を積層して、加熱・加圧し、導電性バンプの頂部が露出するようにすることが好ましい。さらに、導電性バンプを透明基板に貫通させた後は、露出した導電性バンプの頂部を研磨し、透明基板表面を平坦化することが好ましい。
【0147】
透明基板としては、導電性バンプが貫通できるものであればよく、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が好ましく用いられる。
【0148】
(ii)補助電極形成工程
本態様における補助電極形成工程は、上記透明基板の金属箔が設けられている面とは反対側の面に内側補助電極用金属薄膜を形成し、上記金属箔および内側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記金属箔および内側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に上記接続導電部と接するように内側補助電極を形成し、上記透明基板の他方の面に上記接続導電部と接するように外側補助電極を形成する工程である。
【0149】
なお、レジスト、レジストの配置方法、レジストの露光方法、レジストの現像方法、金属箔のエッチング方法、レジストの除去方法等については、上記第1態様に記載したものと同様である。
【0150】
(iii)透明電極形成工程
本態様における透明電極形成工程は、上記内側補助電極上に透明電極を形成する工程である。
なお、透明電極の形成方法については、上記透明電極の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0151】
II.第2実施態様
本発明の有機薄膜太陽電池の第2実施態様は、透明基板と、上記透明基板の一方の面に形成された透明電極と、上記透明電極上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、上記透明基板を貫通し、上記外側補助電極および上記透明電極を電気的に接続する接続導電部と、上記外側補助電極上に形成され、上記外側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有することを特徴とするものである。
【0152】
本実施態様の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図13は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図13に示す例において、有機薄膜太陽電池1は、透明基板2と、透明基板2の一方の面に形成された透明電極4と、透明電極4上に形成された正孔取出し層5と、正孔取出し層5上に形成された光電変換層6と、光電変換層6上に形成された対向電極7と、透明基板2の他方の面にメッシュ状に形成され、透明電極4よりも抵抗値の低い外側補助電極8と、透明基板2を貫通し、外側補助電極8および透明電極4を電気的に接続する接続導電部9と、外側補助電極8上に形成され、外側補助電極8が設けられている遮光領域10に入射した光を光電変換層6に導く凸レンズ11aとを有している。
【0153】
なお、透明基板の一方の面に透明電極が形成され、透明基板の他方の面に外側補助電極が形成されているとは、透明基板の透明電極が形成されている面とは反対側の面に外側補助電極が形成されていることを意味する。
また、遮光領域とは、外側補助電極が設けられている領域をいう。
【0154】
図13に例示する有機薄膜太陽電池1においては、まず、入射光Lが凸レンズ11aに入射し、この凸レンズの光の収束作用により集光されて透明基板2、透明電極4および正孔取出し層5を透過し、光電変換層6に入射する。この際、遮光領域10の凸レンズ11aに入射した光Lは、凸レンズの光の収束作用により集光されるので、外側補助電極8によって遮られることなく光電変換層6に効率的に入射することができる。そして、入射光Lにより光電変換層6内で電荷(正孔および電子)が発生する。次いで、発生した電荷(正孔)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して正孔取出し層5へと取り出され、正孔取出し層5および透明電極4の接触界面にて透明電極4へと取り出される。一方、発生した電荷(電子)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して光電変換層6および対向電極7の接触界面にて対向電極7へと取り出される。
【0155】
このように本実施態様によれば、凸レンズなどの遮光領域に入射した光を光電変換層に導く光学部材が形成されているので、外側補助電極が形成されていても、入射光量を大幅に減少させることなく、効率的な発電が可能である。
【0156】
また、本実施態様によれば、外側補助電極および透明電極が接続導電部により電気的に接続されており、陽極側の電極が外側補助電極と透明電極とから構成されるので、透明電極のシート抵抗が比較的高い場合であっても、陽極全体としての抵抗を低減することができる。すなわち、外側補助電極により、発生した電力を効率良く集電することができる。したがって、有機薄膜太陽電池を大面積化したとしても、高い発電効率を維持することが可能である。
【0157】
さらに、本実施態様によれば、外側補助電極は透明基板の受光面側に形成されているので、外側補助電極の厚みは電極間での短絡に影響しない。そのため、外側補助電極の厚みを比較的厚くすることもできる。したがって、外側補助電極の開口面積を大きくした場合でも、外側補助電極の厚みを大きくすることで、所望の抵抗値を容易に得ることが可能である。外側補助電極の厚みを調整することで、陽極全体としての抵抗を制御することができるのである。
【0158】
なお、透明基板、透明電極、光電変換層、対向電極、光学部材、正孔取出し層、電子取出し層等については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本実施態様の有機薄膜太陽電池における他の構成について説明する。
【0159】
1.接続導電部
本実施態様に用いられる接続導電部は、透明基板を貫通し、外側補助電極および透明電極を電気的に接続するものである。
【0160】
なお、接続導電部の形成材料、形状、形成位置、径、および形成方法等については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
接続導電部は、外側補助電極および透明電極を電気的に接続していればよいので、通常、接続導電部の密度は、外側補助電極の密度より小さくなる。接続導電部の密度としては、所望の抵抗値や、接続導電部の径等に応じて適宜選択される。
【0162】
2.外側補助電極
本実施態様に用いられる外側補助電極は、透明基板の他方の面にパターン状に形成され、透明電極よりも抵抗値の低いものである。
【0163】
なお、外側補助電極の形成材料、構成、パターン形状、開口部の比率、厚み、シート抵抗、および形成方法等については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0164】
外側補助電極の開口部のピッチおよび外側補助電極の線幅は、外側補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0165】
3.有機薄膜太陽電池の製造方法
本実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法には、接続導電部の形成工程により好ましい2つの態様がある。
【0166】
まず、一つ目の態様は、透明基板に貫通孔を形成し、上記貫通孔に導電ペーストを充填して、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する接続導電部形成工程と、上記接続導電部が形成された透明基板の一方の面に外側補助電極用金属薄膜を形成し、上記外側補助電極用金属薄膜上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記外側補助電極用金属薄膜をパターニングして、上記透明基板の一方の面に上記接続導電部と接するように導電パターンを形成するパターン形成工程、および、上記透明基板の他方の面に保護層を配置し、上記外側補助電極用導電パターン上にめっきを施すめっき工程を有し、上記透明基板の一方の面に外側補助電極を形成する補助電極形成工程と、上記補助電極形成工程後、上記透明基板の他方の面に透明電極を形成する透明電極形成工程とを有するものである。
【0167】
図14および図15は、上記態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、透明基板2にレーザーにより貫通孔21を形成する(図14(a)、(b))。次いで、貫通孔21にスクリーン印刷法により導電ペースト9aを充填し、透明基板を貫通する接続導電部9を形成する(図14(c))。
次に、接続導電部9が設けられた透明基板2の一方の面に外側補助電極用金属薄膜8aを形成する(図14(d))。次いで、外側補助電極用金属薄膜8a上にレジスト22aを配置し、透明基板2の他方の面に保護層24を配置し(図14(e))、レジスト22aに対してパターン露光および現像を行い、レジスト画像22bを形成する(図14(f))。続いて、レジスト画像22bをマスクとして露出している外側補助電極用金属薄膜8aをエッチングし(図14(g))、レジスト画像22bおよび保護層24を除去して、透明基板2の一方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の外側補助電極用導電パターン8bを形成する(図15(a))。
次に、透明基板2の他方の面に再度保護層25を配置し(図15(b))、外側補助電極用導電パターン8b上に電解めっきを施してめっき層8cを形成し、外側補助電極用導電パターン8bおよびめっき層8cから構成される外側補助電極8を得る(図15(c))。続いて、保護層25を除去する(図15(d))。
次に、透明基板2の他方の面に透明電極4を形成する(図15(e))。
【0168】
その後、図示しないが、透明電極上に正孔取出し層および光電変換層を形成し、光電変換層上に対向電極を形成するとともに、外側補助電極上に光学部材を形成する。必要に応じて、光電変換層上に電子取出し層を形成し、電子取出し層上に対向電極を形成してもよい。
【0169】
なお、一つ目の態様における各工程については、上記第1実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の第1態様における各工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0170】
次に、二つ目の態様は、金属箔上に導電性バンプを形成し、上記金属箔の上記導電性バンプが形成された面に透明基板を積層して、上記導電性バンプを上記透明基板に貫通させ、上記透明基板を貫通する接続導電部を形成する接続導電部形成工程と、上記金属箔上にレジストを配置し、フォトエッチング法により上記金属箔をパターニングして、上記透明基板の一方の面に上記接続導電部と接するように外側補助電極を形成する補助電極形成工程と、上記透明基板の他方の面に透明電極を形成する透明電極形成工程とを有するものである。
【0171】
図16および図17は、上記態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、金属箔8d上に導電ペーストを用いてスクリーン印刷法により導電性バンプ9bを形成する(図16(a))。次いで、金属箔8dの導電性バンプ9bが形成された面に透明基板2を積層して、加圧し、導電性バンプ9bの頂部が露出するように導電性バンプ9bを透明基板2に貫通させる(図16(b))。続いて、導電性バンプ9bの頂部を研磨し、透明基板2表面を平坦化し、接続導電部9を形成する(図16(c))。
次に、金属箔8d上にレジスト22aを配置し、透明基板2の他方の面に保護層24を配置し(図16(d))、レジスト22aに対して露光および現像を行い、レジスト画像22bを形成する(図16(e))。続いて、レジスト画像22bをマスクとして露出している金属箔8dをエッチングし(図17(a))、レジスト画像22bおよび保護層24を除去して、透明基板2の一方の面に接続導電部9に接するようにメッシュ状の外側補助電極8を形成する(図17(b))。
次に、透明基板2の他方の面に透明電極4を形成する(図17(c))。
【0172】
その後、図示しないが、透明電極上に正孔取出し層および光電変換層を形成し、光電変換層上に対向電極を形成するとともに、外側補助電極上に光学部材を形成する。必要に応じて、光電変換層上に電子取出し層を形成し、電子取出し層上に対向電極を形成してもよい。
上記態様においては、補助電極形成工程後に透明電極形成工程を行ってもよく、接続導電部形成工程後で補助電極形成工程前に透明電極形成工程を行ってもよい。
【0173】
なお、二つ目の態様における各工程については、上記第1実施態様の有機薄膜太陽電池の製造方法の第2態様における各工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0174】
III.第3実施態様
本発明の有機薄膜太陽電池の第3実施態様は、透明基板と、上記透明基板の一方の面に順不同に積層された透明電極およびパターン状の内側補助電極と、上記透明電極および内側補助電極の上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された対向電極と、上記透明基板の他方の面に形成され、上記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を上記光電変換層に導く光学部材とを有し、上記内側補助電極の厚みが、上記透明電極および内側補助電極と上記対向電極との間で短絡が生じない厚みであることを特徴とするものである。
【0175】
本実施態様の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図18は、本実施態様の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図18に示す例において、有機薄膜太陽電池1は、透明基板2と、透明基板2の一方の面にメッシュ状に形成された内側補助電極3と、内側補助電極3上に形成された透明電極4と、透明電極4上に形成された正孔取出し層5と、正孔取出し層5上に形成された光電変換層6と、光電変換層6上に形成された対向電極7と、透明基板2の他方の面に形成され、内側補助電極3が設けられている遮光領域10に入射した光を光電変換層6に導く凸レンズ11aとを有している。そして、内側補助電極3は、内側補助電極3および透明電極4と対向電極8との間で短絡が生じないような厚みを有している。
【0176】
なお、透明基板の一方の面に透明電極および内側補助電極が形成され、透明基板の他方の面に光学部材が形成されているとは、透明基板の透明電極および内側補助電極が形成されている面とは反対側の面に光学部材が形成されていることを意味する。
また、遮光領域とは、内側補助電極が設けられている領域をいう。
【0177】
図18に例示する有機薄膜太陽電池1においては、まず、入射光Lが凸レンズ11aに入射し、この凸レンズの光の収束作用により集光されて透明基板2、透明電極4および正孔取出し層5を透過し、光電変換層6に入射する。この際、遮光領域10の凸レンズ11aに入射した光Lは、凸レンズの光の収束作用により集光されるので、内側補助電極3によって遮られることなく光電変換層6に効率的に入射することができる。そして、入射光Lにより光電変換層6内で電荷(正孔および電子)が発生する。次いで、発生した電荷(正孔)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して正孔取出し層5へと取り出され、正孔取出し層5および透明電極4の接触界面にて透明電極4へと取り出される。一方、発生した電荷(電子)は、光電変換層6の膜厚方向に移動して光電変換層6および対向電極7の接触界面にて対向電極7へと取り出される。
【0178】
このように本実施態様によれば、凸レンズなどの遮光領域に入射した光を光電変換層に導く光学部材が形成されているので、内側補助電極が形成されていても、入射光量を大幅に減少させることなく、効率的な発電が可能である。
【0179】
また、本実施態様によれば、陽極側の電極は内側補助電極と透明電極とが積層されたものであるので、透明電極のシート抵抗が比較的高い場合であっても、内側補助電極のシート抵抗を十分に低くすることで、陽極全体としてのシート抵抗を低減することができる。したがって、有機薄膜太陽電池を大面積化したとしても、発生した電力を効率良く集電することが可能となり、高い発電効率を維持することが可能である。
【0180】
さらに、本実施態様によれば、内側補助電極の厚みが、内側補助電極および透明電極と対向電極との間で短絡が生じない厚みであるので、有機薄膜太陽電池が内側補助電極を有していても、電極間で短絡が起こるのを防ぐことができる。
【0181】
なお、透明基板、透明電極、光電変換層、対向電極、光学部材、正孔取出し層、電子取出し層等については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本実施態様の有機薄膜太陽電池における他の構成について説明する。
【0182】
(内側補助電極)
本実施態様に用いられる内側補助電極はパターン状の電極であり、内側補助電極の厚みは内側補助電極および透明電極と対向電極との間で短絡が生じない厚みとなっている。
【0183】
内側補助電極の厚みは、内側補助電極および透明電極と対向電極との間で短絡が生じない厚みであれば特に限定されるものではなく、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層等の厚みに応じて適宜選択される。具体的には、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層などの、内側補助電極および透明電極と対向電極との間に形成される層の総膜厚を1とすると、内側補助電極の厚みは、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1.5以下である。内側補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。より具体的には、内側補助電極の厚みは、10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内、中でも200nm〜800nmの範囲内、特に300nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。内側補助電極の厚みが上記範囲より薄いと、内側補助電極のシート抵抗が大きくなりすぎる場合があるからである。また、内側補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。
【0184】
内側補助電極の形成材料としては、通常、金属が用いられる。内側補助電極に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、アルミニウム合金等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
また、内側補助電極は、上述のような導電性金属からなる単層であっても良く、また透明基板や透明電極との密着性向上のために、導電性金属層とコンタクト層とを適宜積層したものであっても良い。コンタクト層の形成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等が挙げられる。コンタクト層は所望の内側補助電極と透明基板や透明電極との密着性を得るために導電性金属層に積層されるものであり、導電性金属層の片側にのみ積層してもよく、導電性金属層の両側に積層してもよい。
【0185】
また、対向電極の形成材料の仕事関数等に応じて、好ましい金属を選択してもよい。例えば、対向電極の形成材料の仕事関数等を考慮する場合には、内側補助電極は正孔取出し電極であるので、上記金属は仕事関数の高いものであることが好ましい。具体的には、Alが好ましく用いられる。
【0186】
内側補助電極のパターン形状としては、開口部を有するパターンであれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、多角形や円形の格子状などのメッシュ状、ストライプ状、櫛歯状等が挙げられる。中でも、メッシュ状が好ましい。内側補助電極の抵抗値をより低くすることができるからである。
【0187】
内側補助電極自体は基本的に光を透過しないので、内側補助電極の開口部から光電変換層に光が入射する。そのため、内側補助電極の開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、内側補助電極の開口部の比率は、50%〜95%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜95%の範囲内である。開口部の比率が上記範囲未満であると、充分に光を透過させることができないからである。また、開口部の比率が上記範囲を超えると、内側補助電極の面積が小さくなって、内側補助電極での電荷の移動効率が低下するおそれがあるからである。
【0188】
内側補助電極の開口部のピッチおよび内側補助電極の線幅は、内側補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0189】
内側補助電極のシート抵抗は5Ω/□以下であることが好ましく、中でも3Ω/□以下、特に1Ω/□以下であることが好ましい。内側補助電極のシート抵抗が上記範囲より大きいと、所望の発電効率が得られない場合があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0190】
内側補助電極の形成位置としては、図18に例示するように透明基板2上に内側補助電極3および透明電極4の順に積層されていてもよく、図19に例示するように透明基板2上に透明電極4および内側補助電極3の順に積層されていてもよい。中でも、透明基板上に内側補助電極および透明電極の順に積層されていることが好ましい。透明電極と光電変換層や正孔取出し層等との接触面積が大きい方が、界面の接合性が良く、正孔の移動効率を高くすることができるからである。
【0191】
内側補助電極の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属薄膜を全面に成膜した後にパターニングする方法、パターン状の導電体を直接形成する方法等が挙げられる。これらの方法は、内側補助電極の形成材料や構成等に応じて適宜選択される。
【0192】
金属薄膜の成膜方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法であることが好ましい。すなわち、内側補助電極は真空成膜法にて形成された金属薄膜であることが好ましい。真空成膜法により成膜した金属種はめっき膜に比べ介在物が少なく比抵抗を小さく出来る。また、真空成膜法にて形成された金属薄膜は、Agペースト等を用いて成膜したものと比較しても比抵抗を小さくできる。また、厚み1μm以下の金属薄膜を、膜厚を精密に制御し、均一な厚みに成膜する方法としても、真空成膜法が好適である。
金属薄膜のパターニング方法としては、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトエッチング法等を挙げることができる。
【0193】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0194】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
外形サイズ60mm□のPEN基材を用い、所望の位置にレーザー照射にて直径100μmの貫通孔を形成した。貫通孔内部にスクリーン印刷にてAgペーストを充填し、接続導電部とした。その後、スパッタリング法(成膜圧力:0.1Pa、成膜パワー:180W、時間:3分/12分/3分)にて、基板の両側にNi/Cu/Niを厚み20nm/300nm/20nmで積層し、基板の表裏で同じ位置にパターンが来るようにエッチング加工を実施し、メッシュ状補助電極を形成した。また、その際、貫通孔は、接続導電部の上下面が基板の両側に形成されたメッシュ状補助電極に接するような形状とした。
【0195】
次いで、PEN基材の一方のメッシュ状補助電極上の全面に透明のUV硬化樹脂を所望の膜厚で塗布した。メッシュ状補助電極の開口部の所望の位置に凸レンズが形成されるように、凸レンズ形状が形成可能なように作製された金型を配置し、UV硬化樹脂に押し付け、さらにUV照射によりUV硬化樹脂を成型し、PEN基材の受光面側に凸レンズ形状を形成した。
【0196】
続いて、PEN基材の他方のメッシュ状補助電極の上面に、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法(パワー:3.7kW、酸素分圧:73%、製膜圧力:0.3Pa、製膜レート:150nm/min、基板温度:20℃)により透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:20Ω/□)を成膜した。次いで、上記ITO膜が形成された基板をアセトン、基板洗浄液、IPAを用いて洗浄した。これにより、ITO電極の見かけシート抵抗(ITO電極およびメッシュ状補助電極の積層体としてのシート抵抗)が0.1Ω/□にまで低減した。
【0197】
次に、導電性高分子ペースト(ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)分散品)をスピンコート法にて上記ITO膜が形成された基板上に製膜した後に、150℃で30分間乾燥させ、正孔取出し層(膜厚:100nm)を形成した。
次に、ポリチオフェン(P3HT:poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))とC60PCBM([6,6]-phenyl-C61-butyric acid mettric ester)をブロモベンゼンに溶解させ、固形分濃度1.4wt%の光電変換層用塗工液を準備した。次いで、光電変換層用塗工液を正孔取出し層上にスピンコート法にて回転数600rpmの条件で塗布して、光電変換層を形成した。その後、上記光電変換層が形成された基板を大気曝露した。
【0198】
次に、光電変換層上にCa/Al(厚み:60nm/200nm)を真空蒸着法にて形成して、金属電極とした。
次に、温度150℃のホットプレート上で上記光電変換層等が形成された基板を加熱乾燥した。最後に、封止用ガラス材および接着性封止材により金属電極上から封止して有機薄膜太陽電池とした。
【0199】
[比較例1]
凸レンズ形状を形成しない以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0200】
[比較例2]
凸レンズ形状を形成せず、PEN基材の両側にメッシュ状補助電極を形成しない以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0201】
[評価]
実施例1および比較例1の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極の見かけシート抵抗:0.1Ω/□)と、比較例2の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極のシート抵抗:20Ω/□)とについて、発電評価を実施した。評価方法として、A.M1.5、擬似太陽光(100mW/cm2)を照射光源とし、ソースメジャーユニット(HP社製、HP4100)で電圧印加により電流電圧特性の評価を行った。
比較例2の有機薄膜太陽電池の発電効率が0.05%であったのに対し、比較例1の有機薄膜太陽電池の発電効率は1.5%にまで向上した。さらに、実施例1の有機薄膜太陽電池では、発電効率が1.8%まで向上した。ITO電極上にメッシュ状補助電極を配置することで、光透過性は低減するが、ITO電極の見かけの抵抗値が低減したことによる電力ロスは低減され、結果として変換効率が向上することが確認された。さらに、受光面側に凸レンズを配置し、入射光を遮光領域となるメッシュ状補助電極ではなく、メッシュ状補助電極の開口部に効率的に照射することで、発電効率はさらに向上することが確認された。実施例1では、透明基板の両面に遮光領域となるメッシュ状補助電極が形成されているため、透明基板の受光面に凸レンズを配置して、メッシュ状補助電極が設けられた遮光領域に入射する光をメッシュ状補助電極の開口部に集光することにより、入射光量を確保することができた。
【0202】
[実施例2]
外形サイズ50mm□のPEN基材を用い、所望の位置にレーザー照射にて直径100μmの貫通孔を形成した。貫通孔内部にスクリーン印刷にてAgペーストを充填し、接続導電部とした。その後、基板の受光面側にのみスパッタリング法(成膜圧力:0.1Pa、成膜パワー:180W、時間:3分/12分/3分)にてNi/Cu/Niを厚み20nm/300nm/20nmで積層し、所望の形状になるようにエッチング加工を実施し、メッシュ状補助電極を形成した。また、基板のメッシュ状補助電極形成面の反対側の面には、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法(パワー:3.7kW、酸素分圧:73%、製膜圧力:0.3Pa、製膜レート:150nm/min、基板温度:20℃)により透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:20Ω/□)を成膜した。メッシュ状補助電極とITO電極が接続導電部を介して接続された基板を得た。
【0203】
次に、メッシュ状補助電極上の全面に透明のUV硬化樹脂を所望の膜厚で塗布した。メッシュ状補助電極の開口部の所望の位置に凹レンズが形成されるように、凹レンズ形状が形成可能なように作製された金型を配置し、UV硬化樹脂に押し付け、さらにUV照射によりUV硬化樹脂を成型し、PEN基材の受光面側に凹レンズ形状を形成した。
【0204】
その後、実施例1と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製した。
【0205】
[比較例3]
凹レンズ形状を形成しない以外は、実施例2と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0206】
[比較例4]
凹レンズ形状を形成せず、PEN基材の受光面側にメッシュ状補助電極を形成しない以外は、実施例2と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0207】
[評価]
実施例2および比較例3の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極の見かけシート抵抗:0.1Ω/□)と、比較例4の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極のシート抵抗:20Ω/□)とについて、発電評価を実施した。評価方法として、A.M1.5、擬似太陽光(100mW/cm2)を照射光源とし、ソースメジャーユニット(HP社製、HP4100)で電圧印加により電流電圧特性の評価を行った。
比較例4の有機薄膜太陽電池の発電効率が0.05%であったのに対し、比較例3の有機薄膜太陽電池の発電効率は1.2%にまで向上した。さらに、実施例2の有機薄膜太陽電池では、発電効率が1.6%まで向上した。ITO電極上にメッシュ状補助電極を配置することで、光透過性は低減するが、ITO電極の見かけの抵抗値が低減したことによる電力ロスは低減され、結果として変換効率が向上することが確認された。さらに、受光面側に凹レンズを配置し、入射光を遮光領域となるメッシュ状補助電極の下側に導入することで、発電効率はさらに向上することが確認された。実施例2では、透明基板の受光面側に遮光領域となるメッシュ状補助電極が形成されているため、透明基板の受光面に凹レンズを配置して、メッシュ状補助電極が設けられた遮光領域に入射する光をメッシュ状補助電極の下側に導入することにより、入射光量を確保することができた。
【0208】
[実施例3]
外形サイズ50mm□のPEN基材を用い、PEN基材の受光面の反対側にスパッタリング法(成膜圧力:0.1Pa、成膜パワー:180W、時間:3分/12分/3分)にてNi/Cu/Niを厚み20nm/300nm/20nmで成膜し、所望のメッシュ形状になるようにエッチング加工を実施し、メッシュ状補助電極を形成した。メッシュ状補助電極の上面に、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法(パワー:3.7kW、酸素分圧:73%、製膜圧力:0.3Pa、製膜レート:150nm/min、基板温度:20℃)により透明電極であるITO膜(膜厚:150nm、シート抵抗:20Ω/□)を成膜した。メッシュ状補助電極およびITO電極が形成された透明基材を得た。
その後、PEN基材のメッシュ状補助電極形成面とは反対側の面の全面に透明のUV硬化樹脂を所望の膜厚で塗布した。メッシュ状補助電極の開口部の所定の位置に凸レンズが形成されるように、凸レンズが形成可能なように作製された金型を配し、UV硬化樹脂に押し付け、さらにUV照射によりUV硬化樹脂を成型し、PEN基材の受光面側に凸レンズ形状を形成した。
【0209】
その後、実施例1と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製した。
【0210】
[比較例5]
凸レンズ形状を形成しない以外は、実施例3と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0211】
[比較例6]
凸レンズ形状を形成せず、PEN基材の受光面の反対側にメッシュ状補助電極を形成しない以外は、実施例3と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0212】
[評価]
実施例3および比較例5の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極の見かけシート抵抗:0.1Ω/□)と、比較例6の50mm□サイズの有機薄膜太陽電池(ITO電極のシート抵抗:20Ω/□)とについて、発電評価を実施した。評価方法として、A.M1.5、擬似太陽光(100mW/cm2)を照射光源とし、ソースメジャーユニット(HP社製、HP4100)で電圧印加により電流電圧特性の評価を行った。
比較例6の有機薄膜太陽電池の発電効率が0.05%であったのに対し、比較例5の有機薄膜太陽電池の発電効率は1.6%にまで向上した。さらに、実施例3の有機薄膜太陽電池では、発電効率が1.9%まで向上した。ITO電極上にメッシュ状補助電極を配置することで、光透過性は低減するが、ITO電極の見かけの抵抗値が低減したことによる電力ロスは低減され、結果として変換効率が向上することが確認された。さらに、受光面側に凸レンズを配置し、入射光を遮光領域となるメッシュ状補助電極ではなく、メッシュ状補助電極の開口部に効率的に照射することで、発電効率はさらに向上することが確認された。実施例3では、透明基板の受光面の反対側に遮光領域となるメッシュ状補助電極が形成されているため、透明基板の受光面に凸レンズを配置して、メッシュ状補助電極が設けられた遮光領域に入射する光をメッシュ状補助電極の開口部に集光することにより、入射光量を確保することができた。
【符号の説明】
【0213】
1 … 有機薄膜太陽電池
2 … 基板
3 … 内側補助電極
4 … 透明電極
5 … 正孔取出し層
6 … 光電変換層
7 … 対向電極
8 … 外側補助電極
9 … 接続導電部
10 … 遮光領域
11a … 凸レンズ(光学部材)
11b … 凹レンズ(光学部材)
11c … プリズム(光学部材)
L … 入射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板の一方の面にパターン状に形成された内側補助電極と、
前記内側補助電極上に形成された透明電極と、
前記透明電極上に形成された光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された対向電極と、
前記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、前記透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、
前記透明基板を貫通し、前記外側補助電極および前記内側補助電極を電気的に接続する接続導電部と、
前記外側補助電極上に形成され、前記外側補助電極および前記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を前記光電変換層に導く光学部材と
を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
透明基板と、
前記透明基板の一方の面に形成された透明電極と、
前記透明電極上に形成された光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された対向電極と、
前記透明基板の他方の面にパターン状に形成され、前記透明電極よりも抵抗値の低い外側補助電極と、
前記透明基板を貫通し、前記外側補助電極および前記透明電極を電気的に接続する接続導電部と、
前記外側補助電極上に形成され、前記外側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を前記光電変換層に導く光学部材と
を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
透明基板と、
前記透明基板の一方の面に順不同に積層された透明電極およびパターン状の内側補助電極と、
前記透明電極および内側補助電極の上に形成された光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された対向電極と、
前記透明基板の他方の面に形成され、前記内側補助電極が設けられている遮光領域に入射した光を前記光電変換層に導く光学部材とを有し、
前記内側補助電極の厚みが、前記透明電極および内側補助電極と前記対向電極との間で短絡が生じない厚みであることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記光学部材がレンズ部材であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記補助電極のパターン形状がメッシュ状であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項6】
前記内側補助電極の厚みが10nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項7】
前記透明基板上に前記内側補助電極および前記透明電極の順に積層されていることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項8】
前記透明基板上に前記透明電極および前記内側補助電極の順に積層されていることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−232351(P2010−232351A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77231(P2009−77231)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】