説明

有機金属錯体およびそれを用いた発光素子、発光装置、電子機器

【課題】燐光を発光することのできる有機金属錯体を提供することを課題とする。
【解決手段】一般式(1)において、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル,tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10属元素の中でも特に白金が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流励起によって発光することのできる物質に関し、特に電流励起によって発光する有機金属錯体に関する。また、その物質を用いた発光素子、発光装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間に発光物質を含む層を有する発光素子は、画素または光源等として用いられ、表示装置または照明装置等の発光装置に設けられている。発光素子において一対の電極間に電流が流されると、励起した発光物質から蛍光または燐光が発光される。
【0003】
蛍光と燐光とを比較すると、電流励起の場合、理論的には、燐光の内部量子効率は蛍光の内部量子効率の約3倍である。その為、蛍光よりも燐光を発光する発光物質を用いた方が発光効率が高くなると考えられ、これまでに、燐光を発光する物質の開発が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、イリジウムを中心金属とする金属錯体について記載されている。特許文献1によれば、この金属錯体を用いることによって、高効率有機発光デバイスを得ることができる。
【0005】
このように、金属錯体を用いることによって、効率良く動作する発光素子が得られている。しかし、金属錯体の中心金属として用いられるイリジウムや白金等の金属は高価である。その為、金属錯体を用いた場合に発光素子の製造に係る原材料費が高くなってしまうという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特表2005−506361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、燐光を発光することのできる有機金属錯体を提供することを課題とする。また、本発明は、収率良く合成できる有機金属錯体を提供することを課題とする。また、本発明は、効率良く発光すると共に、低コストで作製することができる発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一は、一般式(1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0009】
【化01】

【0010】
一般式(1)において、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは元素周期表における第9族元素または第10族元素を表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基,tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。
【0011】
本発明の一は、一般式(2)で表される有機金属錯体である。
【0012】
【化02】

【0013】
一般式(2)において、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは元素周期表における第9族元素または第10族元素を表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0014】
本発明の一は、一般式(3)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0015】
【化03】

【0016】
一般式(3)において、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。
【0017】
本発明の一は、一般式(4)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0018】
【化04】

【0019】
一般式(4)において、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0020】
一般式(2)、(4)で表される有機金属錯体において、Lは、具体的には、下記構造式(1)〜構造式(7)で表される配位子の中から選ばれるいずれかの配位子であることが好ましい。
【0021】
【化05】

【0022】
本発明の一は、一般式(5)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0023】
【化06】

【0024】
一般式(5)において、R〜R12は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは元素周期表における第9族元素または第10族元素を表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。
【0025】
本発明の一は、一般式(6)で表される有機金属錯体である。
【0026】
【化07】

【0027】
一般式(6)において、R13〜R16は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは元素周期表における第9族元素または第10族元素を表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0028】
本発明の一は、一般式(7)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0029】
【化08】

【0030】
一般式(7)において、R17〜R20は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。
【0031】
本発明の一は、一般式(8)で表される有機金属錯体である。
【0032】
【化09】

【0033】
一般式(8)において、R21〜R24は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、アリール基の中でも特にフェニル基が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0034】
一般式(6)、(8)で表される有機金属錯体において、Lは、具体的には、下記構造式(1)〜構造式(7)で表される配位子の中から選ばれるいずれかの配位子であることが好ましい。
【0035】
【化10】

【0036】
本発明の一は、一般式(9)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0037】
【化11】

【0038】
一般式(9)において、R25〜R30は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。また、Mは第元素周期表における9族元素または第10族元素を表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。
【0039】
本発明の一は、一般式(10)で表される有機金属錯体である。
【0040】
【化12】

【0041】
一般式(10)において、R31〜R36は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。また、Mは元素周期表における第9族元素または第10族元素を表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。また、第9族元素の中でも特にイリジウムが好ましく、第10族元素の中でも特に白金が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0042】
本発明の一は、一般式(11)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0043】
【化13】

【0044】
一般式(11)において、R37〜R42は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。
【0045】
本発明の一は、一般式(12)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0046】
【化14】

【0047】
一般式(12)において、R43〜R48は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。また、Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかを表す。ここで、アルキル基の中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれるいずれかの基であることが好ましい。また、化学的安定性が良くなる為、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましい。また、アルコキシ基の中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が好ましい。なお、nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1となる。
【0048】
一般式(10)、(12)で表される有機金属錯体において、Lは、具体的には、下記構造式(1)〜構造式(7)で表される配位子の中から選ばれるいずれかの配位子であることが好ましい。構造式(1)〜構造式(7)で表される配位子はいずれもモノアニオン性の配位子である。
【0049】
【化15】

【0050】
本発明の一は、一般式(1)で表される構造を含む有機金属錯体において、特に、R、Rが、それぞれ、水素またはフッ素であり、Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする有機金属錯体である。
【0051】
本発明の一は、一般式(2)で表される有機金属錯体において、特に、R、Rが、それぞれ、水素またはフッ素であり、Mがイリジウムまたは白金であり、Lがアセチルアセナト配位子、ピコリナト配位子、またはテトラキス(1−ピラゾリル)ボラート配位子のいずれかであることを特徴とする有機金属錯体である。具体的には、一般式(13)で表される有機金属錯体である。
【0052】
【化16】

一般式(13)においてR61、R62は、それぞれ、水素またはフッ素を表す。また、Mは、イリジウムまたは白金を表す。また、Lは構造式(36)〜(38)のいずれかで表される配位子を表す。nは、Mがイリジウムであるときはn=2、Mが白金であるときはn=1である。
【0053】
【化17】

【0054】
本発明の一は、一般式(1)〜(13)のいずれかで表される有機金属錯体を含む発光素子である。発光素子は、電極間に、一般式(1)〜(13)のいずれか一で表される有機金属錯体を含む層を有し、電極間に電流が流れたときに一般式(1)〜(13)のいずれか一で表される有機金属錯体が発光するように構成されていることが好ましい。このように、本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子は、燐光を得ることができる為、効率良く発光する。また、本発明の有機金属錯体は収率が良く合成でき生産性が良い為、本発明の有機金属錯体を用いることによって、原材料に係るコストが低減された発光素子を作製することができる。
【0055】
本発明の一は、一般式(1)〜(13)のいずれか一で表される有機金属錯体を含む発光素子を画素もしくは光源として利用した発光装置である。このように、本発明の発光素子は効率良く発光する為、本発明の発光素子を用いることによって低消費電力で駆動する発光装置を得ることができる。また、本発明の発光素子は低コストで作製できる為、本発明の発光素子を用いることによって、製造コストが低く、低価格な発光装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明を実施することによって、燐光を発光する有機金属錯体を得ることができる。また、本発明を実施することによって、収率良く合成することのできる有機金属錯体を得ることができる。
【0057】
本発明を実施することによって、燐光を発光でき、特に内部量子効率の高い発光素子を得ることができる。また、本発明を実施することによって、原材料に係るコストの低い発光素子を得ることができる。
【0058】
本発明を実施することによって、効率良く発光し、また製造コストの低い発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の一態様について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0060】
(実施の形態1)
本発明の一態様としては、構造式(8)〜構造式(34)で表される有機金属錯体が挙げられる。但し、本発明は、ここに記載したものに限定されず、一般式(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)のいずれかで表される構造を含む有機金属錯体、または一般式(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(13)のいずれかで表される有機金属錯体であればよい。
【0061】
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0062】
以上に示した本発明の有機金属錯体は燐光を発光する。その為、本発明の有機金属錯体を発光物質として用いることによって、内部量子効率が高く、発光効率の高い発光素子を作製することができる。
また、以上に示した本発明の有機金属錯体は収率良く合成することができる。その為、本発明の有機金属錯体を用いることによって、原材料に係るコストが低い発光素子を作製することができる。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の有機金属錯体の合成の態様について、以下に説明する。なお、本発明の有機金属錯体は、本形態で説明する合成方法によって得られたものにのみ限定されるわけではなく、一般式(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)のいずれかで表される構造を含む有機金属錯体、または一般式(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(13)のいずれかで表される有機金属錯体であればよい。
【0064】
[構造式(8)〜(25)で表される有機金属錯体]
構造式(8)〜(25)のいずれかで表される本発明の有機金属錯体は、以下の合成スキーム(a−1)〜(a−3)で表されるような合成方法によって得られる。先ず、合成スキーム(a−1)のようにして、α−ジケトンと1,2−シクロヘキサンジアミンとを脱水縮合させ、次いで塩化鉄(III)等を用いて脱水素させることにより、テトラヒドロキノキサリンを骨格に含む配位子を合成する。そして、合成された配位子を、合成スキーム(a−2)で表されるように、塩化イリジウム塩酸塩水和物と混合してイリジウムに配位させ、複核錯体を合成する。さらに、合成スキーム(a−3)で表されるように、先に合成した複核錯体とアセチルアセトンやピコリン酸等のモノアニオン性の配位子を反応させて、モノアニオン性の配位子をイリジウムに配位させることによって本発明の有機金属錯体を得ることができる。
【0065】
【化45】

【化46】

【化47】

【0066】
合成スキーム(a−1)〜(a−3)において、R49、R50は、それぞれ、水素、メチル基、フルオロ基、−CF基、メトキシ基、フェニル基のいずれかを表す。また、Lは、アセチルアセトン、ピコリン酸、テトラピラゾラトボロナートのいずれかを表す。
【0067】
本発明の有機金属錯体の合成方法は、合成スキーム(a−1)〜(a−3)で表されるものに限定されるものではない。但し、本形態の合成方法のように、1,2−シクロヘキサンジアミンを原料として用い配位子を得るステップを含む合成方法を適用することで、収率良く本発明の有機金属錯体を得ることができる。これは、1,2−シクロヘキサンジアミンを用いることによって、特に、合成スキーム(a−1)で表される配位子の合成における収率が高くなる為である。ここで、1,2−シクロヘキサンジアミンは、シス型またはトランス型のいずれでもよい。また、光学活性を有する1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよいし、光学活性を有しない1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよい。
【0068】
合成スキーム(a−1)において、R49、R50がエチル基、イソプロピル基、またはsec−ブチル基、エトキシ基のいずれかで表されるα−ジケトンを原料として用いることにより、構造式(8)〜(25)で表される有機金属錯体とは異なるその他の本発明の有機金属錯体を得られる。また、塩化イリジウム塩酸塩水和物に換えてテトラクロロ白金酸カリウム等の白金を含む塩を用いることによって、白金を中心金属として含む本発明の有機金属錯体を得ることもできる。また、アセチルアセトン及びピコリン酸、テトラピラゾラトボロナートに換えて、マロン酸ジメチル、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン等の配位子を用いることによって、構造式(2)、(4)〜(6)で表されるような配位子を含む、本発明の有機金属錯体を得ることもできる。
【0069】
[構造式(26)〜(30)で表される有機金属錯体]
構造式(26)〜(30)のいずれかで表される本発明の有機金属錯体は、以下の合成スキーム(b−1)〜(b−3)で表されるような合成方法によって得られる。合成スキーム(b−1)のようにしてα−ジケトンと1,2−シクロヘキサンジアミンとを脱水縮合させ、次いで塩化鉄(III)等を用いて脱水素させることにより、テトラヒドロキノキサリンを骨格に含む配位子を合成する。そして、合成された配位子を、合成スキーム(b−2)で表されるように、塩化イリジウム塩酸塩水和物と混合して、イリジウムに配位させる。さらに、合成スキーム(b−3)で表されるように、モノアニオン性の配位子をイリジウムに配位させ、複核錯体を合成する。さらに、合成スキーム(b−3)で表されるように、先に合成した複核錯体とアセチルアセトンやピコリン酸等のモノアニオン性の配位子を反応させて、モノアニオン性の配位子をイリジウムに配位させることによって本発明の有機金属錯体を得ることができる。
【0070】
【化48】

【化49】

【化50】

【0071】
合成スキーム(b−1)〜(b−3)において、R51〜R54は、それぞれ、メチル基、フルオロ基、−CF基、メトキシ基、フェニル基のいずれかを表す。また、Lは、アセチルアセトンを表す。なお、合成スキーム(b−1)の反応において用いられているα−ジケトンは、3位および5位がメチル基、フルオロ基、−CF基、メトキシ基、フェニル基のいずれかで置換されたベンゼンのグリニャール試薬と1,4−ジメチルピペラジン−2,3−ジオンとを反応させることによって得ることができる。
【0072】
本発明の有機金属錯体の合成方法は、合成スキーム(b−1)〜(b−3)で表されるものに限定されるものではない。但し、本形態の合成方法のように、1,2−シクロヘキサンジアミンを原料として用い配位子を得るステップを含む合成方法を適用することで、収率良く本発明の有機金属錯体を得ることができる。これは、1,2−シクロヘキサンジアミンを用いることによって、特に、合成スキーム(b−1)で表される配位子の合成における収率が高くなる為である。ここで、1,2−シクロヘキサンジアミンは、シス型またはトランス型のいずれでもよい。また、光学活性を有する1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよいし、光学活性を有しない1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよい。
【0073】
なお、合成スキーム(b−1)において、R51〜R54が、それぞれ、エチル基、イソプロピル基、またはsec−ブチル基、エトキシ基のいずれかで表されるα−ジケトンを原料として用いることにより、構造式(26)〜(30)で表される有機金属錯体とは異なるその他の本発明の有機金属錯体を得られる。また、塩化イリジウム塩酸塩水和物に換えてテトラクロロ白金酸カリウム等の白金を含む塩を用いることによって、白金を中心金属として含む本発明の有機金属錯体を得ることもできる。また、アセチルアセトンに換えて、ピコリン酸、マロン酸ジメチル、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、テトラピラゾラトボロナート等の配位子を用いることによって、構造式(2)〜(7)で表されるような配位子を含む、本発明の有機金属錯体を得ることもできる。
【0074】
[構造式(31)〜(34)で表される有機金属錯体]
構造式(31)〜(34)のいずれかで表される本発明の有機金属錯体は、以下の合成スキーム(c−1)〜(c−3)で表されるような合成方法によって得られる。合成スキーム(c−1)のようにしてα−ジケトンと1,2−シクロヘキサンジアミンとを脱水縮合させ、次いで塩化鉄(III)等を用いて脱水素させることにより、テトラヒドロキノキサリンを骨格に含む配位子を合成する。そして、合成された配位子を、合成スキーム(c−2)で表されるように、塩化イリジウム塩酸塩水和物と混合して、イリジウムに配位させる。さらに、合成スキーム(c−3)で表されるように、モノアニオン性の配位子をイリジウムに配位させ、複核錯体を合成する。さらに、合成スキーム(c−3)で表されるように、先に合成した複核錯体とアセチルアセトンやピコリン酸等のモノアニオン性の配位子を反応させて、モノアニオン性の配位子をイリジウムに配位させることによって本発明の有機金属錯体を得ることができる。
【0075】
【化51】

【化52】

【化53】

【0076】
ここで、合成スキーム(c−1)〜(c−3)において、R55〜R60は、それぞれ、メチル基、フルオロ基、−CF基、メトキシ基のいずれかを表す。また、Lは、アセチルアセトンを表す。合成スキーム(c−1)の反応において用いられているα−ジケトンは、3位、及び4位、5位がメチル基、フルオロ基、−CF基、メトキシ基で置換されたベンゼンのグリニャール試薬と1,4−ジメチルピペラジン−2,3−ジオンとを反応させることによって得ることができる。
【0077】
なお、本発明の有機金属錯体の合成方法は、合成スキーム(c−1)〜(c−3)で表されるものに限定されるものではない。但し、本形態の合成方法のように、1,2−シクロヘキサンジアミンを原料として用い配位子を得るステップを含む合成方法を適用することで、収率良く本発明の有機金属錯体を得ることができる。これは、1,2−シクロヘキサンジアミンを用いることによって、特に、合成スキーム(c−1)で表される配位子の合成における収率が高くなる為である。ここで、1,2−シクロヘキサンジアミンは、シス型またはトランス型のいずれでもよい。また、光学活性を有する1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよいし、光学活性を有しない1,2−シクロヘキサンジアミンであってもよい。
【0078】
なお、合成スキーム(c−1)において、R55〜R60が、それぞれ、エチル基、イソプロピル基、またはsec−ブチル基、エトキシ基のいずれかで表されるα−ジケトンを原料として用いることにより、構造式(31)〜(34)で表される有機金属錯体とは異なるその他の本発明の有機金属錯体を得られる。また、塩化イリジウム塩酸塩水和物に換えてテトラクロロ白金酸カリウム等の白金を含む塩を用いることによって、白金を中心金属として含む本発明の有機金属錯体を得ることもできる。また、アセチルアセトンに換えて、ピコリン酸、マロン酸ジメチル、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、テトラピラゾラトボロナート等の配位子を用いることによって、構造式(2)〜(7)で表されるような配位子を含む、本発明の有機金属錯体を得ることもできる。
【0079】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1、2に係る有機金属錯体を用いた発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
【0080】
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素子が表されている。そして、発光層113には、一般式(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)のいずれかで表される構造を含む有機金属錯体、または一般式(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(13)のいずれかで表される有機金属錯体が含まれている。
【0081】
第1の電極101と第2の電極102との間には、発光層113の他、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115、阻止層121等も設けられている。これらの層は、第1の電極101の電位が第2の電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加したときに、第1の電極101側から正孔が注入され第2の電極102側から電子が注入されるように積層されている。
【0082】
このような発光素子において、第1の電極101側から注入された正孔と、第2の電極102側から注入された電子とは、発光層113において再結合し、有機金属錯体は励起状態にされる。そして、励起状態の本発明の有機金属錯体は基底状態に戻るときに発光する。このように、本発明の有機金属錯体は発光物質として機能する。
【0083】
ここで、発光層113は本発明の有機金属錯体を含む層である。発光層113は本発明の有機金属錯体のみから形成された層であってもよいが、濃度消光を生じる場合は、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、発光物質が分散するように混合された層であることが好ましい。発光層113に本発明の有機金属錯体を分散して含ませることで、発光が濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。ここで、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。
【0084】
本発明の有機金属錯体を分散状態にするために用いる物質について特に限定はないが、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)のようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等が好ましい。これらの物質の中から一または二以上の物質を選択して本発明の有機金属錯体が分散状態となるように混合すればよい。このように複数の化合物を含む層は、共蒸着法を用いることで形成できる。ここで、共蒸着とは、一つの処理室内に設けられた複数の蒸着源からそれぞれ原料を気化させ、気化した原料を気相状態で混合し、被処理物上に堆積させる蒸着法をいう。
【0085】
また、第1の電極101と第2の電極102とについて特に限定はなく、インジウム錫酸化物(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いて形成することができる。また、アルミニウムの他、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムとの合金等も第1の電極101を形成するのに用いることができる。なお、第1の電極101及び第2の電極102の形成方法について特に限定はなく、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。なお、発光した光を外部に取り出すために、インジウム錫酸化物等を用いて、若しくは銀、アルミニウム等を数nm〜数十nmの厚さとなるように成膜して、第1の電極101と第2の電極102のいずれか一または両方を形成することが好ましい。
【0086】
また、第1の電極101と発光層113との間には、図1に示すように、正孔輸送層112を設けてもよい。ここで、正孔輸送層とは、第1の電極101側から注入された正孔を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、正孔輸送層112を設けることによって、第1の電極101と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第1の電極101に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、正孔輸送性の高い物質とは、電子よりも正孔の移動度が高く、好ましくは電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100よりも大きい物質である。正孔輸送層112を形成するのに用いることができる物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等が挙げられる。また、正孔輸送層112は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0087】
また、第2の電極102と発光層113との間には、図1に示すように、電子輸送層114を有していてもよい。ここで、電子輸送層とは、第2の電極102から注入された電子を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層114を設けることによって、第2の電極102と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第2の電極102に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、電子輸送性の高い物質とは、正孔よりも電子の移動度が高く、好ましくは正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100よりも大きい物質である。電子輸送層114を形成するのに用いることができる物質の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等が挙げられる。また、電子輸送層114は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0088】
なお、正孔輸送層112と電子輸送層114とは、それぞれ、先に記載した物質の他、バイポーラ性の物質を用いて形成してもよい。バイポーラ性の物質とは、電子または正孔のいずれか一方のキャリアの移動度と他方のキャリアの移動度とを比較したときに、一方のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは10以下である物質である。バイポーラ性の物質として、例えば、TPAQn、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔及び電子の移動度が1×10−6cm/Vs以上の物質を用いることが好ましい。また同一のバイポーラ性の物質を用いて、正孔輸送層112と電子輸送層114とを形成しても構わない。
【0089】
さらに、第1の電極101と正孔輸送層112との間には、図1に示すように、正孔注入層111を有していてもよい。正孔注入層111は、第1の電極101から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。正孔注入層111を設けることによって、第1の電極101と正孔輸送層112との間のイオン化ポテンシャルの差が緩和され、正孔が注入され易くなる。正孔注入層111は、正孔輸送層112を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが小さく、第1の電極101を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが大きい物質、または正孔輸送層112と第1の電極101との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。正孔注入層111を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子等が挙げられる。つまり、正孔注入層111におけるイオン化ポテンシャルが正孔輸送層112におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に小さくなるような物質を選択することによって、正孔注入層111を形成することができる。なお、正孔注入層111を設ける場合、第1の電極101は、インジウム錫酸化物等の仕事関数の高い物質を用いて形成することが好ましい。
【0090】
また、第2の電極102と電子輸送層114との間には、図1に示すように、電子注入層115を有していてもよい。ここで、電子注入層115は、第2の電極102から電子輸送層114へ電子の注入を補助する機能を有する層である。電子注入層115を設けることによって、第2の電極102と電子輸送層114との間の電子親和力の差が緩和され、電子が注入され易くなる。電子注入層115は、電子輸送層114を形成している物質よりも電子親和力が大きく第2の電極102を形成している物質よりも電子親和力が小さい物質、または電子輸送層114と第2の電極102との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。電子注入層115を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、アルカリ金属のフッ化物、アルカリ土類金属のフッ化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物等の無機物が挙げられる。また、無機物の他、BPhen、BCP、p−EtTAZ、TAZ、BzOs等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質も、これらの物質の中から、電子輸送層114の形成に用いる物質よりも電子親和力が大きい物質を選択することによって、電子注入層115を形成する物質として用いることができる。つまり、電子注入層115における電子親和力が電子輸送層114における電子親和力よりも相対的に大きくなるような物質を選択することによって、電子注入層115を形成することができる。なお、電子注入層115を設ける場合、第1の電極101は、アルミニウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成することが好ましい。
【0091】
以上に述べた本発明の発光素子において、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法、またはインクジェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成しても構わない。また、第1の電極101または第2の電極102についても、スパッタリング法または蒸着法等、いずれの方法を用いて形成しても構わない。
【0092】
また、正孔注入層111に換えて正孔発生層を設けてもよいし、または電子注入層115に換えて電子発生層を設けてもよい。正孔発生層若しくは電子発生層を設けることによって、層の厚さに依存した電圧の上昇が非常に少ない発光素子を作製することができる。
【0093】
ここで、正孔発生層とは、正孔を発生する層である。電子よりも正孔の移動度が高い物質の中から選ばれた少なくとも一の物質と、電子よりも正孔の移動度が高い物質に対して電子受容性を示す物質とを混合することによって、または、バイポーラ性の物質の中から選ばれた少なくとも一の物質と、バイポーラ性の物質に対して電子受容性を示す物質とを混合することによって正孔発生層を形成することができる。ここで、電子よりも正孔の移動度が高い物質としては、正孔輸送層112を形成するのに用いることのできる物質と同様の物質を用いることができる。また、バイポーラ性の物質についても、TPAQn等の先に記載したバイポーラ性の物質を用いることができる。また、電子よりも正孔の移動度が高い物質及びバイポーラ性の物質の中でも特にトリフェニルアミンを骨格に含む物質を用いることが好ましい。トリフェニルアミンを骨格に含む物質を用いることによって、正孔をより発生し易くなる。また、電子受容性を示す物質としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸化物等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0094】
また、電子発生層とは、電子を発生する層である。正孔よりも電子の移動度が高い物質と、正孔よりも電子の移動度が高い物質に対して電子供与性を示す物質とを混合することによって、または、バイポーラ性の物質の中から選ばれた少なくとも一の物質と、バイポーラ性の物質に対して電子供与性を示す物質とを混合することによって電子発生層を形成することができる。ここで、正孔よりも電子の移動度が高い物質としては電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質と同様の物質を用いることができる。また、バイポーラ性の物質についても、TPAQn等の先に記載したバイポーラ性の物質を用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。また、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等、具体的にはリチウム酸化物(LiO)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(NaO)、カリウム酸化物(KO)、マグネシウム酸化物(MgO)等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等、具体的には、窒化カルシウム、窒化マグネシウム等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。
【0095】
さらに、発光層113と正孔輸送層112との間、または発光層113と電子輸送層114との間に、阻止層を設けてもよい。阻止層とは、発光層113へ正孔若しくは電子を輸送すると共に、第1の電極101側から注入された正孔若しくは第2の電極102側から注入された電子が発光層を突き抜けて他方の電極側へ抜けていくことを抑制する機能、および発光層において生成された励起エネルギーが発光層から他の層へ移動してしまうことを抑制する機能を有する層を有する層である。図1で表されるように発光層113と電子輸送層114との間に設けられ、正孔が突き抜けていくのを抑制する機能を有する阻止層121は、特に正孔阻止層ともよばれる。阻止層を設けることによって、キャリアの突き抜けに起因した再結合効率の低減を抑制し、発光効率を高めることができる。また阻止層を設けることによって、励起エネルギーの移動に起因して発光物質とは異なる他の物質、例えば電子輸送層を形成している物質等が意に反して発光してしまうことを低減することができる。
【0096】
なお、以上に述べたような本発明の発光素子において、発光層とは異なるその他の層、具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を設けるか否かについては任意であり、発明の実施者が適宜選択すればよい。但し、正孔輸送層、電子輸送層を設けた場合には、電極あるいは正孔注入層、あるいは電子注入層等に含まれる金属に起因して消光が生じてしまうことを低減する効果を得られる。また、電子注入層、正孔注入層等を設けることによって、電極からの電子または正孔の注入を効率良く行うことができるという効果を得られる。
【0097】
以上に説明した本発明の発光素子は、例えば実施の形態1で構造式を列挙したような本発明の有機金属錯体を発光物質として用いている為、内部量子効率が高く、発光効率、具体的には、単位電圧当たりの輝度、或いは単位電流密度当たりの輝度が良好である。
また、本発明の発光素子において、本発明の有機金属錯体を発光物質として含ませた場合には、発光素子の作製に用いられる材料に係るコストが低減されるという効果も得られる。これは、実施の形態2でも説明したように本発明の有機金属錯体が収率良く合成できる、つまり製造コストが低減された有機金属錯体である為である。
【0098】
(実施の形態4)
本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた本発明の発光素子は、効率良く発光するため、本発明の発光素子を画素として用いた本発明の発光装置は、低消費電力で動作させることができる。これは、実施の形態3でも説明したように、本発明の発光素子は単位電圧当たりの輝度、或いは単位電流密度当たりの輝度が良好である為、本発明の発光素子を画素として用いることによって、或特定の輝度の発光をさせるのに必要な電力(=電流×電圧)を低減できる為である。
また、本発明の有機金属錯体を用いることによって低コストで作製された発光素子を画素として用いた本発明の発光装置は、製造コストが低く、低価格である。本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図2〜5を用いて説明する。
【0099】
図2は本発明を適用した発光装置(本実施の形態に係る発光装置)を上面からみた模式図である。図2において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
【0100】
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
【0101】
図3は、一画素を動作するための回路を表した図である。図3に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
【0102】
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれトランジスタの第1電極、トランジスタの第2電極と表記する。
【0103】
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
【0104】
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図4の上面図に表すように配置することができる。図4において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
【0105】
次に、駆動方法について説明する。図5は時間経過に伴ったフレームの動作について説明する図である。図5において、横方向は時間経過を表し、縦方向はゲート信号線の走査段数を表している。
【0106】
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え動作が繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とすることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作を行う期間を1フレーム期間という。
【0107】
1フレームは、図5に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレーム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられた発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサブフレーム503:第4のサブフレーム504=2:2:2:2=8:4:2:1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調を行えるようにしてもよい。
【0108】
1フレームにおける動作について説明する。まず、サブフレーム501において、1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に保持期間501bへと移る。当該保持期間において、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態となっている。また、保持期間501bが終了した行から順に次のサブフレーム502へ移り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。サブフレーム504の保持期間504b迄以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504における動作を終了する。サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブフレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることによって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
【0109】
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように制御することが好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態を保つ(この期間を非発光期間504dとする。)。そして、最終行目の書込期間が終了したら直ちに、一行目から順に次のサブフレーム(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによって、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重畳することを防ぐことができる。
【0110】
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並んでいるが、必ずしも本実施例のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものから順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
【0111】
ここで、書込期間および消去期間における、図3で示す回路の動作について説明する。
【0112】
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路と電気的に接続している。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に映像信号が入力される。なお、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって発光素子903は発光または非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。
【0113】
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
【0114】
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作によって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると共に、他の行(m行目(mは自然数)とする。)については書込期間となる場合がある。このような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目には書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するような動作させることが好ましい。
【0115】
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となった後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回路915と接続させる。そして、ソース信号線とソース信号線駆動回路915とを接続させる共に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そして、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目の信号線に選択的に信号が入力され、第1のトランジスタがオンすると共に、ソース信号線駆動回路915からは、1列目から最終列目迄のソース信号線に書込の為の信号が入力される。この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
【0116】
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線を電源916と接続する。また、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲート信号線911については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力して第1のトランジスタに信号をオンすると共に、電源916から消去信号が入力される。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間まで動作させればよい。
【0117】
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
【0118】
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設ける場合において、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にすると共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っても構わない。
【0119】
(実施の形態5)
本発明の発光素子を含む発光装置の断面構造の一態様について、図6を用いて説明する。
【0120】
図6において、点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14との間に正孔を発生する層と電子を発生する層と発光物質を含む層とが積層された層15を有する本発明の発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態において、基板10上に設けられている。
【0121】
なお、図6に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
【0122】
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0123】
なお、セミアモルファス半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端させる為に水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、またはSiFをグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。これらの気体ををH、又は、HとHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm以下とする。
【0124】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
【0125】
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
【0126】
さらに、第1層間絶縁膜16は、図6(A)、(B)、(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリルやシロキサン(なお、シロキサンとは、Si−O−Si結合を主骨格として有する化合物である。また、水素、またはメチル基等のアルキル基を置換基として有する。)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物および有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0127】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
【0128】
なお、図6(A)〜(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図6(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図6(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
【0129】
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、第2層絶縁膜19aと19bを含む多層でもよいし、または単層でもよい。第2層間絶縁膜19aはアクリルやシロキサン、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、第2層間絶縁膜19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物および有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0130】
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図6(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
【0131】
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
【0132】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明した。但し、アクティブ型の発光装置に限らず、パッシブ型の発光装置に本発明を適用してもよい。
【0133】
図7には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図7において、基板1901と基板1907との間には、電極1902と電極1906が設けられている。電極1902と電極1906とは交差するように設けられている。さらに、電極1902と電極1906との間には発光層1905(電極1902、隔壁層1904等の配置が分かるように破線で示している。)が設けられている。なお、発光層1905と電極1902との間、若しくは発光層1905と電極1906との間には正孔輸送層、電子輸送層等が設けられていてもよい。電極1902の端部は隔壁層1904で覆われている。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0134】
(実施の形態6)
本発明の発光素子を含む発光装置は低駆動電圧で動作させることができるため、本発明によって、消費電力が少なく経済的な電子機器を得ることができる。また本発明の発光素子を用いて作製された発光装置は製造コストが低い為、本発明の発光装置を表示部に用いることによって、低価格な電子機器を得ることができる。
【0135】
本発明を適用した発光装置を実装した本発明の電子機器の一実施例を図8に示す。
【0136】
図8(A)は、本発明に係るコンピュータであり、実施の形態1、2で説明した本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子がマトリクス状に配置された本発明の発光装置を表示部5523に含むことを特徴としている。このように、本発明の有機金属錯体を含む発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでコンピュータを完成できる。図8(A)のコンピュータには、表示部5523の他、ハードディスクおよびCPU等が実装された本体5521、表示部5523を保持する為の筐体5522、及びキーボード5524などが設けられている。このようなコンピュータは、収率よく合成された本発明の有機金属錯体を用いて完成されているため、原材料費が安く、低価格である。また、本発明に係るコンピュータは低消費電力で駆動する本発明の発光装置を表示部に用いている為、表示に係る消費電力が少なく、経済的である。
【0137】
図8(B)は、本発明に係る電話機であり、実施の形態1、2で説明した本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子がマトリクス状に配置された本発明の発光装置を、本体5552に組み込まれた表示部5551に含むことを特徴としている。このように、本発明の有機金属錯体を含む発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで電話機を完成できる。図8(B)の電話機には、表示部5551の他、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、アンテナ5553等が設けられている。このように、本発明の有機金属錯体を含む発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで電話機を完成できる。このような電話機は、収率よく合成された本発明の有機金属錯体を用いて完成されているため、原材料費が易く、低価格である。また、本発明に係る電話機は低消費電力で駆動する本発明の発光装置を表示部に用いている為、表示に係る消費電力が少なく、経済的である。
【0138】
図8(C)は、本発明に係るテレビ受像機であり、実施の形態1、2で説明した本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子がマトリクス状に配置された本発明の発光装置を表示部5531に含むことを特徴としている。このように、本発明の有機金属錯体を含む発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。図8(C)のテレビ受像機には、表示部5531の他、表示部5531を保持する為の筐体5532、スピーカー5533等が設けられている。このように、本発明の有機金属錯体を含む発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。このようなテレビ受像機は、収率よく合成された本発明の有機金属錯体を用いて完成されているため、原材料費が易く、低価格である。また、本発明に係るテレビ受像機は低消費電力で駆動する本発明の発光装置を表示部に用いている為、表示に係る消費電力が少なく、経済的である。
【0139】
以上のような、本発明の発光装置を表示部に含んでいることを特徴とする本発明の電子機器には、図8(A)〜(C)を用いて説明したようなコンピュータ、電話機等のみならず、ナビゲイション装置、ビデオ、或いはカメラ等の表示部に本発明の発光素子含む発光装置が実装された電子機器も含まれる。
【実施例1】
【0140】
〔合成例1〕
構造式(8)で表され本発明のひとつである有機金属錯体(名称:(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ジフェニル−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリナト]イリジウム(III)、略称:Ir(dpqtH)(acac))の合成法について説明する。
〔ステップ1:配位子(略称:DPQtH)の合成〕
まず、エタノール150mLを溶媒として、ベンジル[東京化成社製]を5.84gとtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン[関東化学社製]を3.17g混合し、3時間還流した。還流後、その混合物を室温まで放冷し、得られた析出物をろ過した。ろ物をエタノールで再結晶することにより、2,3−ジフェニル−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロキノキサリンを得た (淡黄色結晶、収率96%)。
次に、エタノール80mLを溶媒として、上記で得られた2,3−ジフェニル−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロキノキサリンを7.66gと塩化鉄(III)を8.62g混合し、その混合物を50℃程度で3時間おだやかに加熱攪拌した。撹拌後、その混合物に水を加えることにより、析出物を得た。その析出物をろ過によって採取することにより、配位子2,3−ジフェニル−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリン(略称:DPQtH)を得た(乳白色粉末、収率88%)。ステップ1の合成スキーム(d−1)を次に示す。
【0141】
【化54】

【0142】
〔ステップ2:複核錯体(略称:[Ir(dpqtH)Cl])の合成〕
次に、2−エトキシエタノール30mLと水10mLとの混合液を溶媒として、上記で得られた配位子DPQtHを3.98g、塩化イリジウム塩酸塩水和物(IrCl・HCl・HO)[シグマ・アルドリッチ製]を1.65g混合し、窒素雰囲気下で18時間還流した。その後、析出した固体をろ過し、[Ir(dpqtH)Cl] を得た(赤色粉末、収率98%)。ステップ3の合成スキーム(d−2)を次に示す。
【0143】
【化55】

【0144】
〔ステップ3:本発明の有機金属化合物(略称:Ir(dpqtH)(acac)の合成〕
さらに、2−エトキシエタノール30mLを溶媒として、上記で得られた[Ir(dpqtH)Cl] を2.06g、アセチルアセトンを0.40mL、炭酸ナトリウムを1.37g混合し、その混合物を窒素雰囲気下にて17時間還流した。その後、得られた析出物をろ過することで、橙色粉末を得た(収率53%)。ステップ3の合成に係る合成スキーム(d−3)を次に示す。
【0145】
【化56】

【0146】
得られた橙色粉末を核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって分析したところ、下記のような結果が得られ、本発明の有機金属錯体のひとつであり構造式(8)で表されるIr(dpqtH)(acac)であることが分かった。また、H−NMRのチャートを図9に示す。
【0147】
H−NMR.δ(CDCl):7.84(m,4H),7.50(m,6H),6.87(d,2H),6.54(4H),6.41(d,2H),5.04(s,1H),3.08(m,6H),2.69(2H),1.87(m,6H),1.73(2H),1.67(s,6H)
【0148】
また、得られた有機金属化合物Ir(dpqtH)(acac)の分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製 TG/DTA 320型)により測定したところ、T=332℃であり、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0149】
次に、Ir(dpqtH)(acac)のジクロロメタン中、室温における吸収スペクトル(紫外可視分光光度計 日本分光社製 V550型)および発光スペクトル(蛍光光度計 浜松ホトニクス株式会社製 FS920)の測定を行った。結果を図10に示す。なお、図10において、横軸は波長(nm)、縦軸は吸収及び発光の強度(任意単位)を表す。図10から分かるように、本発明の有機金属化合物Ir(dpqtH)(acac)の吸収スペクトルは331nm、441nm、500nmおよび550nmにピークを有している。また、Ir(dpqtH)(acac)の発光スペクトルは590nmにピークを有しており、橙色発光であった。
【0150】
また、得られたIr(dpqtH)(acac)を含むジクロロメタン溶液に酸素を含む気体を注入し、酸素を溶存させた状態でIr(dpqtH)(acac)を発光させたときの発光強度を調べた。また、得られたIr(dpqtH)(acac)を含むジクロロメタン溶液にアルゴンを注入し、アルゴンを溶存させた状態でIr(dpqtH)(acac)を発光させたときの発光強度を調べた。その結果、Ir(dpqtH)(acac)由来の発光は酸素を溶存させた状態における発光強度よりもアルゴンを溶存させた状態における発光強度の方が強いという、燐光を発光する物質と同様の傾向を示すことが分かった。このことから、Ir(dpqtH)(acac)由来の発光は燐光であると確認できた。
【0151】
〔合成例2〕
本合成例では、構造式(16)で表され本発明のひとつである有機金属錯体(名称:ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリナト](ピコリナト)イリジウム(III)、略称:Ir(FdpqtH)(pic))のの合成法について説明する。
【0152】
〔ステップ1:配位子(HfdpqtH)の合成〕
まず、エタノール300mLを溶媒として、4,4’−ジフルオロベンジル[東京化成製]を12.07gとtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン[東京化成製]を5.60g混合し、その混合物を窒素雰囲気下で3時間還流した。還流後、その混合液を室温まで放冷し、析出した結晶をろ過によって取り出すことにより、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロキノキサリンを得た (淡黄色板状結晶、収率94%)。
次に、エタノール150mLを溶媒として、上記で得られた2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロキノキサリンを6.90gと塩化鉄(III)を6.90g混合し、その混合物を50℃程度で3時間おだやかに加熱攪拌した。撹拌後、その混合物に水を加えて沈殿物を析出させ、得られた沈殿物をろ過によって取り出し、エタノールで洗浄した。洗浄された沈殿物をエタノールで再結晶することにより、配位子2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリン(略称:HfdpqtH)を得た(乳白色粉末、収率68%)。ステップ1の合成スキーム(e−1)を次に示す。
【0153】
【化57】

【0154】
〔ステップ2:複核錯体([Ir(FdpqtH)Cl]の合成〕
次に、2−エトキシエタノール30mLと水10mLとの混合液を溶媒として、上記で得られた配位子FDPQtHを4.70g、塩化イリジウム(III)水和物(IrCl・HO)[シグマ・アルドリッチ製]を1.74g混合し、その混合物を窒素雰囲気下で18時間還流した。その後、析出した固体をろ過することにより、複核錯体[Ir(FdpqtH)Cl] を黄橙色粉末として得た(収率93%)。ステップ2の合成スキーム(e−2)を次に示す。
【0155】
【化58】

【0156】
〔ステップ3:本発明の有機金属錯体(Ir(FdpqtH)(pic))の合成〕
さらに、2−エトキシエタノール20mLを溶媒として、上記で得られた[Ir(FdpqtH)Cl] を0.90g、ピコリン酸[東京化成製]を0.51g混合し、窒素雰囲気下にて20時間還流た。その後、析出した固体をろ過することにより、黄色粉末を得た(黄色粉末、収率59%)。ステップ3の合成スキーム(e−3)を次に示す。
【0157】
【化59】

【0158】
得られた黄色粉末を核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって分析したところ、下記のような結果が得られ、本発明の有機金属錯体のひとつであり構造式(16)で表されるIr(FdpqtH)(pic)であることが分かった。H−NMRの分析結果を下記に、また、H−NMRのチャートを図16(A)、(B)に示す。なお、図16(B)は図16(A)の一部を縦方向に拡大した図である。
【0159】
H−NMR.δ(CDCl):8.31(d,1H),8.26(d,1H),7.94(td,1H),7.85(m,2H),7.68(m,2H),7.53(m,1H),7.31−7.19(m,4H),6.97−6.86(m,2H),6.43(td,1H),6.33(td,1H),6.20(dd,1H),5.87(dd,1H),3.25−2.73(m,5H),1.91(m,2H),1.52(m,9H).
【0160】
また、得られた本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(pic)の分解温度T をTG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置 セイコー電子株式会社製 TG/DTA 320型)により測定したところ、T =342℃であり、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0161】
次に、Ir(FdpqtH)(pic)の吸収スペクトル(紫外可視分光光度計 日本分光社製 V550型)および発光スペクトル(蛍光光度計 浜松ホトニクス株式会社製 FS920)の測定を、脱気したジクロロメタン溶液を用いて室温で行った。結果を図17に示す。なお、図17において、横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図17からわかるように、本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(pic)は302nm、351nm、425nm、460nmおよび520nmに吸収ピークを有している。また、発光スペクトルは550nmに発光ピークを有する黄緑色発光であった。
【0162】
〔合成例3〕
本合成例では、構造式(22)で表され本発明のひとつである有機金属錯体(名称:ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリナト][テトラキス(1−ピラゾリル)ボラト]イリジウム(III)、略称:Ir(FdpqtH)(bpz))の合成法について説明する。
【0163】
まず、ジクロロメタン40mL溶媒に、合成例2のステップ2で得た複核錯体[Ir(FdpqtH)Cl] を1.10g懸濁させた。次に、その懸濁液にメタノール40mLを溶媒としてトリフルオロメタンスルホン酸銀(略称:Ag(OTf))を0.40g溶解させた溶液を滴下した。滴下後の混合物を室温にて2時間撹拌し、得られた懸濁溶液の遠心分離を行った。得られた上澄み液をデカンテーションにて取り分け、濃縮乾固した。さらに、アセトニトリル30mLを溶媒として、濃縮乾固して得られた固体と、テトラキス(1−ピラゾリル)ボラートカリウム塩(Acros Organics社製)を0.70g混合し、その混合物を窒素雰囲気下にて18時間還流することにより、黄色粉末を得た(黄色粉末、収率38%)。合成スキーム(f−1)を次に示す。
【0164】
【化60】

【0165】
得られた黄色粉末を核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって分析したところ、下記のような結果が得られ、本発明の有機金属錯体のひとつであり構造式(22)で表されるIr(FdpqtH)(bpz)であることが分かった。H−NMRの分析結果を下記に、また、H−NMRのチャートを図18(A)、(B)に示す。なお、図18(B)は図18(A)の一部を縦方向に拡大した図である。
【0166】
H−NMR.δ(ACETONE−d):7.70−7.63(m,6H),7.30−7.10(m,8H),6.92−6.83(m,2H),6.41−6.27(m,4H),6.20−6.14(m,2H),6.11−6.00(m,4H),2.89(m,2H),1.68−1.47(m,14H).
【0167】
また、得られた本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(bpz)の分解温度T をTG/DTAにより測定したところ、T =346℃であり、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0168】
次に、Ir(FdpqtH)(bpz)の吸収スペクトル(紫外可視分光光度計 日本分光社製 V550型)および発光スペクトル(蛍光光度計 浜松ホトニクス株式会社製 FS920)の測定を、脱気したジクロロメタン溶液を用いて室温で行った。結果を図19に示す。なお、図19において、横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図19からわかるように、本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(bpz)は344nm、412nm、440nm(sh)および475nm(sh)に吸収ピークを有している。また、発光スペクトルは600nmに発光ピークを有する橙色発光であった。
【0169】
〔合成例4〕
本合成例では、構造式(10)で表され本発明のひとつである有機金属錯体(名称:(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリナト]イリジウム(III)、略称:Ir(FdpqtH)(acac))のの合成法について説明する。
【0170】
2−エトキシエタノール30mLを溶媒として、合成例2のステップ2で得た複核錯体[Ir(FdpqtH)Cl] を2.26g、アセチルアセトンを0.47mL、炭酸ナトリウムを1.62g混合し、その混合物を窒素雰囲気下にて16時間還流した。その後、析出した固体をろ過することにより、橙色粉末を得た(橙色粉末、収率39%)。合成スキーム(g−1)を次に示す。
【0171】
【化61】

【0172】
得られた橙色粉末を核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって分析したところ、下記のような結果が得られ、本発明の有機金属錯体のひとつであり構造式(10)で表されるIr(FdpqtH)(acac)であることが分かった。H−NMRの分析結果を下記に、また、H−NMRのチャートを図20(A)、(B)に示す。なお、図20(B)は図20(A)の一部を縦方向に拡大した図である。
【0173】
H−NMR.δ(CDCl):7.81(t,4H),7.21(m,4H),6.85(m,2H),6.30(td,2H),6.03(dd,2H),5.06(s,1H),3.18−2.93(m,6H),2.67−2.58(m,2H),1.99−1.77(m,8H),1.68(s,6H).
【0174】
また、得られた本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(acac)の分解温度T をTG/DTAにより測定したところ、T =332℃であり、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0175】
次に、Ir(FdpqtH)(acac)の吸収スペクトル(紫外可視分光光度計 日本分光社製 V550型)および発光スペクトル(蛍光光度計 浜松ホトニクス株式会社製 FS920)の測定を、脱気したジクロロメタン溶液を用いて室温で行った。結果を図21に示す。なお、図21において、横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。図21からわかるように、本発明の有機金属錯体Ir(FdpqtH)(acac)は295nm、357nm、432nm、475nmおよび535nm(sh)に吸収ピークを有している。また、発光スペクトルは565nmに発光ピークを有する黄色発光であった。
【0176】
〔合成例5〕
本合成例では、下記構造式(35)で表され本発明のひとつである有機金属錯体(名称:(アセチルアセトナト)[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリナト]白金(II)、略称:Pt(FdpqtH)(acac))の合成法について説明する。
【0177】
【化62】

【0178】
まず、2−エトキシエタノール30mLと水10mLとの混合液を溶媒として、合成例2のステップ1で得た配位子Hfdpqtを2.15g、テトラクロロ白金酸カリウム(K[PtCl])を1.11g混合し、その混合物を窒素雰囲気下で17時間、80℃にて加熱攪拌した。撹拌後、その混合物から溶媒を除去し、得られた粉末をエタノールにて洗浄し、減圧下にて一晩乾燥した。次に、2−エトキシエタノール30mLを溶媒として、該粉末、及びアセチルアセトンを0.41mL、炭酸ナトリウムを1.42g混合し、その混合物を窒素雰囲気下にて16時間還流した。得られた析出物をろ過した後、ろ物ををメタノールにて洗浄し、ジクロロメタンにて再結晶することにより橙色粉末を得た。合成スキーム(h−1)を次に示す。
【0179】
【化63】

【0180】
得られた橙色粉末を核磁気共鳴分光法(H−NMR)によって分析したところ、下記のような結果が得られ、本発明の有機金属錯体のひとつであり構造式(10)で表されるPt(FdpqtH)(acac)であることが分かった。H−NMRの分析結果を下記に、また、H−NMRのチャートを図22(A)、(B)に示す。なお、図22(B)は図22(A)の一部を縦方向に拡大した図である。
【0181】
H−NMR.δ(CDCl):7.24(m,2H),7.24−7.13(m,3H),6.56(dd,1H),6.44(td,1H),5.55(s,1H),3.56(brm,2H),3.02(brm,2H),2.04(s,3H),1.98(s,3H),1.94(brm,4H).
【0182】
また、得られた本発明の有機金属錯体Pt(FdpqtH)(acac)の分解温度T をTG−DTAにより測定したところ、T =239℃であった。
【0183】
次に、Pt(FdpqtH)(acac)の吸収スペクトル(紫外可視分光光度計 日本分光社製 V550型)および発光スペクトル(蛍光光度計 浜松ホトニクス株式会社製 FS920)の測定を、脱気したジクロロメタン溶液を用いて室温で行った。結果を図23に示す。なお、図23において、横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図23からわかるように、本発明の有機金属錯体Pt(FdpqtH)(acac)は324nm、357nm、389nm、439nmおよび469nmに吸収ピークを有している。また、発光スペクトルは620nmに発光ピークを有する赤橙色発光であった。
【実施例2】
【0184】
本実施例では、合成例1に記載された方法によって合成されたIr(dpqtH)(acac)を発光物質として用いた発光素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。
【0185】
図11に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さは110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形の形状となるように形成した。
【0186】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0187】
次に、真空装置内を排気し、1×10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によって第1の電極302上に、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層303を共蒸着法によって形成した。本実施例ではモリブデン酸化物として六価のモリブデン酸化物(MoO)を用いた。第1の層303の厚さは50nmとなるようにした。また、NPBとモリブデン酸化物のモル比は1:2=NPB:モリブデン酸化物となるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作させたときに正孔発生層として機能する層である。
【0188】
次に、第1の層303の上に、第2の層304をNPBを用いて蒸着法によって形成した。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0189】
次に、第2の層304の上に、CBPとIr(dpqtH)(acac)とを含む第3の層305を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは30nmとなるようにし、CBPとIr(dpqtH)(acac)との質量比は1:0.025=CBP:Ir(dpqtH)(acac)(モル比に換算すると、1:0.014=CBP:Ir(dpqtH)(acac))となるようにした。これによって、Ir(dpqtH)(acac)はCBPから成る層に分散されたような状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。
【0190】
次に、第3の層305上に、第4の層306をBCPを用いて蒸着法によって形成した。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素子を動作させたときに、正孔阻止層として機能する層である。
【0191】
次に、第4の層306上に、第5の層307をAlqを用いて蒸着法によって形成した。第5の層307の厚さは30nmとなるようにした。この第5の層307は、発光素子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0192】
次に、第5の層307上に、第6の層308をフッ化カルシウムを用いて蒸着法によって形成した。第6の層308の厚さは1nmとなるようにした。この第6の層308は、発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0193】
次に、第6の層308の上に、アルミニウムを用いて第2の電極309を形成した。第2の電極309の厚さは200nmとなるようにした。
【0194】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極309の電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたIr(dpqtH)(acac)が基底状態に戻るときに発光するものである。
【0195】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0196】
測定結果を図12〜図14に示す。図12は電流密度−輝度特性について、図13は電圧−輝度特性について、図14は、輝度−電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。なお、図12において横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また図13において横軸は電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図14において横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。これらの結果から、本実施例で作製した発光素子は、8Vの電圧を印加したときに2.29mA/cmの電流密度で電流が流れ、490cd/mの輝度で発光することが分かった。なお、490cd/mの輝度で発光したときの電流効率は21cd/Aであり、外部量子効率(=フォトンの数/エレクトロンの数)に換算すると10%であった。本実施例に示したような積層構造を適用することで、本発明の有機金属錯体を由来した発光を良好に得ることができる。
【0197】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図15に示す。図15において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図15より、本実施例の発光素子は580nmに発光スペクトルのピークを有し、橙色系の発光を呈することが分かった。
【実施例3】
【0198】
本実施例では、合成例2において合成されたIr(FdpqtH)(pic)を発光物質として用いた発光素子の作製方法及びその動作特性について図24、25〜28を用いて説明する。
【0199】
図24に表すように、ガラス基板401上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法によって成膜し、第1の電極402を形成した。第1の電極402の厚さは110nmとなるようにした。
【0200】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極402が形成されたガラス基板401を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0201】
次に、真空装置内を1×10−4Paとなるように減圧した後、第1の電極402上に、DNTPDを用いて第1の層403を形成した。第1の層403の厚さは50nmとなるようにした。この第1の層403は、発光素子を動作させたときに正孔注入層として機能する層である。
【0202】
次に、第1の層403の上に、第2の層404をNPBを用いて蒸着法によって形成した。第2の層404の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層404は、発光素子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0203】
次に、第2の層404の上に、CBPとIr(FdpqtH)(pic)とを含む第3の層405を共蒸着法によって形成した。第3の層405の厚さは30nmとなるようにし、CBPとIr(FdpqtH)(pic)との質量比は1:0.05=CBP:Ir(FdpqtH)(pic)となるようにした。これによって、Ir(FdpqtH)(pic)はCBPを基質(マトリックス)とした層の中に含まれた状態となる。この第3の層405は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。このような場合、Ir(FdpqtH)(pic)はゲスト、CBPはホストと称される。
【0204】
次に、第3の層405上に、第4の層406をBCPを用いて蒸着法によって形成した。第4の層406の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層406は、発光素子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0205】
次に、第4の層406上に、AlqとLiとを含む第5の層407を共蒸着法によって形成した。第5の層407の厚さは30nmとなるようにした。また、AlqとLiとの質量比は1:0.01=Alq:Liとなるようにした。この第5の層407は、発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0206】
次に、第5の層407の上に、アルミニウムを用いて第2の電極408を形成した。第2の電極408の厚さは200nmとなるようにした。
【0207】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極402の電位が第2の電極408の電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3の層405において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたIr(FdpqtH)(pic)が基底状態に戻るときに発光するものである。
【0208】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0209】
測定結果を図25〜27に示す。図25は電流密度−輝度特性について、図26は電圧−輝度特性について、図27は輝度−電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図25において横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図26において横軸は電圧、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図27において横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。これらの結果から、本実施例の発光素子は、9Vの電圧を印加したときに3.86mA/cmの電流密度、942cd/mの輝度で発光することが分かった。また、この時の電流効率は24.4cd/A、外部量子効率は10.8%と、高い効率を示した。さらに、20.6cd/mの輝度で発光させたときに外部量子効率は最大値13.7%を示した。
【0210】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図28に示す。図28において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。さらに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.51,0.48)であり、本実施例の発光素子は黄色の発光を呈することが分かった。
【0211】
なお、図28からも分かるように、本実施例の発光素子からは550〜650nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく台形状の発光スペクトル(半値幅=140nm)を得られる。従って、本実施例の発光素子と、450〜550nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトルを示す発光素子とを、発光スペクトルが合成されるように組み合わせる(例えば、同時に発光させる)ことによって白色光を得ることができる。また、本実施例の発光素子に、さらに450〜550nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトルを示す発光物質を含む層を設け、Ir(FdpqtH)(pic)と該発光物質とが同時に発光するように、電極間に設けられた層を構成することによっても白色光を得ることができる。
【実施例4】
【0212】
本実施例では、合成例3において合成されたIr(FdpqtH)(bpz)を発光物質として用いた発光素子の動作特性について図29〜32を用いて説明する。
【0213】
本実施例で作製した発光素子は、Ir(FdpqtH)(pic)の代わりにIr(FdpqtH)(bpz)を用いるという点で実施例3の発光素子と異なるが、その他の構成(各層の形成に用いた物質、層の厚さ、質量比等)は、実施例3の発光素子と同じである。従って、作製方法、素子構成については実施例3の記載を参照するものとし、ここでは記載を省略する。
【0214】
作製した発光素子の動作特性についての測定結果を図29〜31に示す。図29は電流密度−輝度特性について、図30は電圧−輝度特性について、図31は輝度−電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図29において横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図30において横軸は電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図31において横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。これらの結果から、本実施例の発光素子は、9.2Vの電圧を印加したときに7.29mA/cmの電流密度、1050cd/mの輝度で発光することが分かった。また、この時の電流効率は14.4cd/A、外部量子効率は7.76%と、高い効率を示した。さらに、7.78cd/mの輝度で発光させたときに外部量子効率は最大値11.0%を示した。
【0215】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図32に示す。図32において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。さらに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.54,0.45)であり、本実施例の発光素子は黄橙色の発光を呈することが分かった。
【0216】
なお、図32からも分かるように、本実施例の発光素子からは550〜650nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトル(半値幅=145nm)が得られる。従って、本実施例の発光素子と、450〜550nmの波長帯域に幅広いピークを有する発光スペクトルを示す発光素子とを、発光スペクトルが合成されるように組み合わせる(例えば、同時に発光させる)ことによって白色光を得ることができる。また、本実施例の発光素子に、さらに450〜550nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトルを示す発光物質を含む層を設け、Ir(FdpqtH)(bpz)と該発光物質とが同時に発光するように、電極間に設けられた層を構成することによっても白色光を得ることができる。
【実施例5】
【0217】
本実施例では、合成例4において合成されたIr(FdpqtH)(acac)を発光物質として用いた発光素子の作製方法及びその動作特性について図24、33〜36を用いて説明する。
【0218】
図24に表すように、ガラス基板401上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法によって成膜し、第1の電極402を形成した。第1の電極402の厚さは110nmとなるようにした。
【0219】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極402が形成されたガラス基板401を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0220】
次に、真空装置内を1×10−4Paとなるように減圧した後、第1の電極402上に、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層403を共蒸着法によって形成した。本実施例ではモリブデン酸化物として六価のモリブデン酸化物(MoO)を用いた。第1の層403の厚さは50nmとなるようにした。また、NPBとモリブデン酸化物のモル比は1:1=NPB:モリブデン酸化物となるようにした。この第1の層403は、発光素子を動作させたときに正孔発生層として機能する層である。
【0221】
次に、第1の層403の上に、第2の層404をTCTAを用いて蒸着法によって形成した。第2の層404の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層404は、発光素子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0222】
次に、第2の層404の上に、CBPとIr(FdpqtH)(acac)とを含む第3の層405を共蒸着法によって形成した。第3の層405の厚さは30nmとなるようにし、CBPとIr(FdpqtH)(acac)との質量比は1:0.01=CBP:Ir(FdpqtH)(acac)となるようにした。これによって、Ir(FdpqtH)(acac)はCBPを基質(マトリックス)とした層の中に含まれた状態となる。この第3の層405は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。このような場合、Ir(FdpqtH)(acac)はゲスト、CBPはホストと称される。
【0223】
次に、第3の層405上に、第4の層406をTAZを用いて蒸着法によって形成した。第4の層406の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層406は、発光素子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0224】
次に、第4の層406上に、TAZとLiとを含む第5の層407を共蒸着法によって形成した。第5の層407の厚さは30nmとなるようにした。また、TAZとLiとの質量比は1:0.01=TAZ:Liとなるようにした。この第5の層407は、発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0225】
次に、第5の層407の上に、アルミニウムを用いて第2の電極408を形成した。第2の電極408の厚さは200nmとなるようにした。
【0226】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極402の電位が第2の電極408の電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3の層405において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたIr(FdpqtH)(acac)が基底状態に戻るときに発光するものである。
【0227】
この発光素子を、封止装置内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0228】
測定結果を図33〜35に示す。図33は電流密度−輝度特性について、図34は電圧−輝度特性について、図35は輝度−電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図33において横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図34において横軸は電圧、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図35において横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。これらの結果から、本実施例の発光素子は、6.4Vの電圧を印加したときに2.47mA/cmの電流密度で電流が流れ、915cd/mの輝度で発光することが分かった。また、この時の電流効率は37.0cd/A、外部量子効率は13.8%と、高い効率を示した。さらに、38.7cd/mの輝度で発光させたときに外部量子効率は最大値15.0%を示した。
【0229】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図36に示す。図36において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。さらに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.52,0.48)であり、本実施例の発光素子は黄色の発光を呈することが分かった。
【0230】
なお、図36からも分かるように、本実施例の発光素子からは550〜650nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトル(半値幅=100nm)が得られる。従って、本実施例の発光素子と、450〜550nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトルを示す発光素子とを、発光スペクトルが合成されるように組み合わせる(例えば、同時に発光させる)ことによって白色光を得ることができる。また、本実施例の発光素子に、さらに450〜550nmの波長帯域での発光強度の変化が少なく緩やかなピーク形状の発光スペクトルを示す発光物質を含む層を設け、Ir(FdpqtH)(acac)と該発光物質とが同時に発光するように、電極間に設けられた層を構成することによっても白色光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】本発明の発光装置の一態様について説明する図。
【図2】本発明を適用した発光装置について説明する図。
【図3】本発明を適用した発光装置に含まれる回路について説明する図。
【図4】本発明を適用した発光装置の上面図。
【図5】本発明を適用した発光装置のフレーム動作について説明する図。
【図6】本発明を適用した発光装置の断面図。
【図7】本発明を適用した発光装置について説明する図。
【図8】本発明を適用した電子機器の図。
【図9】合成例1において合成した有機金属錯体のH−NMRにて分析し、得られたチャート。
【図10】合成例1において合成した有機金属錯体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを表す図。
【図11】実施例1の発光素子の作製方法について説明する図。
【図12】実施例2の発光装置を動作させたときの電流密度−輝度特性を表す図。
【図13】実施例2の発光装置を動作させたときの電圧−輝度特性を表す図。
【図14】実施例2の発光装置を動作させたときの輝度−電流効率特性を表す図。
【図15】実施例2の発光装置を動作させたときに得られた発光スペクトルを表す図。
【図16】合成例2において合成した本発明の有機金属錯体のH−NMRにて分析し、得られたチャート。
【図17】合成例2において合成した有機金属錯体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを表す図。
【図18】合成例3において合成した本発明の有機金属錯体のH−NMRにて分析し、得られたチャート。
【図19】合成例3において合成した有機金属錯体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを表す図。
【図20】合成例4において合成した本発明の有機金属錯体のH−NMRにて分析し、得られたチャート。
【図21】合成例4において合成した有機金属錯体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを表す図。
【図22】合成例5において合成した本発明の有機金属錯体のH−NMRにて分析し、得られたチャート。
【図23】合成例5において合成した有機金属錯体の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを表す図。
【図24】実施例3、4の発光素子の作製方法について説明する図。
【図25】実施例3の発光装置を動作させたときの電流密度−輝度特性を表す図。
【図26】実施例3の発光装置を動作させたときの電圧−輝度特性を表す図。
【図27】実施例3の発光装置を動作させたときの輝度−電流効率を表す図。
【図28】実施例3の発光装置を動作させたときに得られた発光スペクトルを表す図。
【図29】実施例4の発光装置を動作させたときの電流密度−輝度特性を表す図。
【図30】実施例4の発光装置を動作させたときの電圧−輝度特性を表す図。
【図31】実施例4の発光装置を動作させたときの輝度−電流効率を表す図。
【図32】実施例4の発光装置を動作させたときに得られた発光スペクトルを表す図。
【図33】実施例5の発光装置を動作させたときの電流密度−輝度特性を表す図。
【図34】実施例5の発光装置を動作させたときの電圧−輝度特性を表す図。
【図35】実施例5の発光装置を動作させたときの輝度−電流効率を表す図。
【図36】実施例5の発光装置を動作させたときに得られた発光スペクトルを表す図。
【符号の説明】
【0232】
10 基板
11 トランジスタ
12 発光素子
13 第1の電極
14 第2の電極
15 層
16 層間絶縁膜
17 配線
18 隔壁層
19 層間絶縁膜
101 第1の電極
102 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
121 阻止層
301 基板
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第5の層
308 第6の層
309 第2の電極
401 基板
402 第1の電極
403 第1の層
404 第2の層
405 第3の層
406 第4の層
407 第5の層
408 第2の電極
501 サブフレーム
502 サブフレーム
503 サブフレーム
504 サブフレーム
901 トランジスタ
902 トランジスタ
903 発光素子
911 ゲート信号線
912 ソース信号線
913 書込用ゲート信号線駆動回路
914 消去用ゲート信号線駆動回路
915 ソース信号線駆動回路
916 電源
917 電流供給線
918 スイッチ
919 スイッチ
920 スイッチ
1001 トランジスタ
1002 トランジスタ
1003 ゲート信号線
1004 ソース信号線
1005 電流供給線
1006 電極
1901 基板
1902 電極
1904 隔壁層
1905 発光層
1906 電極
1907 基板
501a 書き込み期間
501b 保持期間
502a 書き込み期間
502b 保持期間
503a 書き込み期間
503b 保持期間
504a 書き込み期間
504b 保持期間
504c 消去期間
504d 非発光期間
5521 本体
5522 筐体
5523 表示部
5524 キーボード
5531 表示部
5532 筐体
5533 スピーカー
5551 表示部
5552 本体
5553 アンテナ
5554 音声出力部
5555 音声入力部
5556 操作スイッチ
6500 基板
6503 FPC
6504 プリント配線基盤(PWB)
6511 画素部
6512 ソース信号線駆動回路
6513 書込用ゲート信号線駆動回路
6514 消去用ゲート信号線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化01】

(式中、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項2】
一般式(2)で表される有機金属錯体。
【化02】

(式中、R、Rは、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1である。)
【請求項3】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項2に記載の有機金属錯体。
【化03】

【請求項4】
一般式(3)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化04】

(式中、R、Rは、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基のいずれかを表す。)
【請求項5】
一般式(4)で表される有機金属錯体。
【化05】

(式中、R、Rは、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。)
【請求項6】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項5に記載の有機金属錯体。
【化06】

【請求項7】
一般式(5)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化07】

(式中、R〜R12は、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項8】
一般式(6)で表される有機金属錯体。
【化08】

(式中、R13〜R16は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基、アリール基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1である。)
【請求項9】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項8に記載の有機金属錯体。
【化09】

【請求項10】
一般式(7)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化10】

(式中、R17〜R20は、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基のいずれかを表す。)
【請求項11】
一般式(8)で表される有機金属錯体。
【化11】

(式中、R21〜R24は、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。)
【請求項12】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項11に記載の有機金属錯体。
【化12】

【請求項13】
一般式(9)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化13】

(式中、R25〜R30は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項14】
一般式(10)で表される有機金属錯体。
【化14】

(式中、R31〜R36は、それぞれ、水素、またはアルキル基、ハロゲン基、−CF、アルコキシ基のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。nは、Mが9族元素であるときはn=2、Mが10族元素であるときはn=1である。)
【請求項15】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項14に記載の有機金属錯体。
【化15】

【請求項16】
一般式(11)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化16】

(式中、R37〜R42は、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表す。)
【請求項17】
一般式(12)で表される有機金属錯体。
【化17】

(式中、R43〜R48は、それぞれ、水素、または炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、−CF、炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。)
【請求項18】
前記モノアニオン性の配位子は、構造式(1)乃至構造式(7)のいずれか一項で表される配位子であることを特徴とする請求項17に記載の有機金属錯体。
【化18】

【請求項19】
一般式(13)で表される有機金属錯体。
【化19】

(式中、R49、R50は、それぞれ、水素またはフッ素を表す。また、Mは、イリジウムまたは白金を表す。また、Lは構造式(36)〜(38)のいずれかで表される配位子を表す。nは、Mがイリジウムであるときはn=2、Mが白金であるときはn=1である。)
【化20】

【請求項20】
一対の電極間に、請求項1乃至請求項19のいずれか一項で表される有機金属錯体を含む層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項21】
請求項20に記載の発光素子を画素または光源として用いていることを特徴とする発光装置。
【請求項22】
請求項21に記載の発光装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−153865(P2007−153865A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77996(P2006−77996)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】