説明

有機電界発光素子、有機ELディスプレイ及び有機EL照明

【課題】本発明は、湿式成膜法で形成された、アリールアミン化合物を含む発光層を有する有機電界発光素子において、駆動電圧が低く、また電流効率が高い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【解決手段】基板上に、陽極、電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に有し、該電荷輸送層と該発光層は隣接して設けられ、該電荷輸送層、及び該発光層は湿式成膜法で形成された有機電界発光素子であって、該電荷輸送層は、末端基が、アルキル基、アルコキシ基および芳香族基よりなる群から選ばれる基を置換基として有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物を含む組成物で形成した層であり、該発光層は、アリールアミン化合物を含む層であることを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、並びに有機ELディスプレイ及び有機EL照明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層及びその形成用の塗布液に様々な機能をもった複数の材料を混合することが容易である等の利点がある。
特許文献1及び2には、正孔輸送層及び発光層を湿式成膜法により形成され、正孔輸送層は高分子材料を含む組成物を用いて形成され、発光層は、発光材料としてアリールアミン化合物を含む組成物を用いて形成されることが開示されているが、電流効率、駆動電圧の面で更なる改良が必要であった。
【0003】
また、特許文献3には、末端基が芳香族炭化水素基である高分子化合物を有機電界発光素子の材料として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−73814号公報
【特許文献2】特開2008−166629号公報
【特許文献3】特開2004−292782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、湿式成膜法で形成された、アリールアミン化合物を含む発光層を有する有機電界発光素子において、駆動電圧が低く、また電流効率が高い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アリールアミンを含有する発光層に隣接して形成される、高分子化合物を含有する電荷輸送層において、該高分子化合物が末端基を有することによって、上記課題を解決することを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明は、基板上に、陽極、電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に有し、該電荷輸送層と該発光層は隣接して設けられ、該電荷輸送層、及び該発光層は湿式成膜法で形成された有機電界発光素子であって、該電荷輸送層は、末端基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物を含む組成物を用いて形成された層であり、該発光層は、アリールアミン化合物を含む層であることを特徴とする有機電界発光素子、並びにこれを備えた有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機電界発光素子は、高い電流効率及び低い駆動電圧を有し、さらに、定電流駆動時の発光輝度の低下、電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生、短絡欠陥等が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の有機電界発光素子、並びに有機ELディスプレイ及び有機EL照明の実施態様を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に有し、該電荷輸送層と該発光層は隣接して設けられ、該電荷輸送層、及び該発光層は湿式成膜法で形成された有機電界発光素子であって、該電荷輸送層は、末端基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物を含む組成物で形成した層であり、該発光層は、アリールアミン化合物を含む層であることを特徴とする有機電界発光素子である。
【0010】
<発光層>
以下、発光層の構成要件について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[アリールアミン化合物]
本発明における発光層は、湿式成膜法で形成された、アリールアミン化合物を含有する層である。
【0011】
アリールアミン化合物としては、耐久性に優れる点からから下記式(I’)で表される、N,N,N’,N’−テトラアリールアリーレンジアミン化合物が好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式(I’)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。)
Ar〜Arの芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。
【0014】
中でも、電流効率が高い点で、Arはクリセン環由来の基であることが好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
(式(I)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。)
Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。Ar〜Arの芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基が挙げられる。特に、青色の発光を得るためにはフェニル基が好ましい。
【0017】
Ar〜Arにおける芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましく、特に、親油性置換基のアルキル基が好ましい。
また、置換基の分子量は、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
Ar1〜Arが置換基を有する場合、その置換位置は、窒素原子の置換位置に対して、パラ位、メタ位であることが好ましく、特にパラ位であることが好ましい。
【0018】
アリールアミン化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。アリールアミン化合物の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来たしたりする場合がある。一方、アリールアミン化合物の分子量が大き過ぎると、アリールアミン化合物の精製が困難となってしまったり、溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
【0019】
以下に、式(I)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<式(I)で表される化合物の具体例>
【0020】
【化3】

【0021】
[発光材料]
本発明の有機電界発光素子は、発光層に、アリールアミン化合物を含有するが、本発明の効果を損なわない限り、その他の発光材料を含有していてもよい。
以下、その他の発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光発光材料は以下の例示物に限定されるものではない。
【0022】
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光発光材料)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光発光材料)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
【0023】
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光発光材料)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光発光材料)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0024】
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
【0025】
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0026】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0027】
発光材料として用いる化合物の分子量は、前記[アリールアミン化合物]の項に記載のものと同様である。また、好ましい態様も同様である。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0028】
[電荷輸送材料]
本発明における電荷輸送材料とは、正孔輸送性や電子輸送性などの電荷輸送性を有する化合物である。
本発明においては、電荷輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層において、発光性低分子化合物をドーパント材料とし、電荷輸送材料をホスト材料として用いることが好ましい。
電荷輸送材料は、従来有機電界発光素子の発光層に用いられている化合物であればよく、特に発光層のホスト材料として使用されている化合物が好ましい。
【0029】
電荷輸送材料として具体的には、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、シラナミン系化合物、ホスファミン系化合物、キナクリドン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、カルバゾール系化合物、ピリジン系化合物、フェナントロリン系化合物、オキサジアゾール系化合物、シロール系化合物等が挙げられる。
【0030】
例えば、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4''−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン系化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン系化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のフルオレン系化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)などのオキサジアゾール系化合物、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール系化合物、バソフェナントロリン(BPhen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)などのフェナントロリン系化合物等が挙げられる。
【0031】
(発光層の形成方法)
本発明における発光層は、湿式成膜法で形成される。
湿式成膜法で形成するには、前記アリールアミン化合物、及び必要に応じてその他の発光材料、又は電荷輸送材料に、更に溶媒を含む組成物を用いる。
発光層を形成する為の組成物(以下、「発光層形成用組成物」と称する場合がある)に含まれる溶媒は、発光性低分子化合物及び電荷輸送材料が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されない。
【0032】
溶媒の溶解性としては、常温・常圧下で、発光性低分子化合物および電荷輸送材料を、各々、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上溶解することが好ましい。
以下に溶媒の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。
【0033】
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
【0034】
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶媒が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
【0035】
溶媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、発光層形成用組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。含有量が下限を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、上限を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。なお、発光層形成用組成物として2種以上の溶媒を混合して用いる場合には、これらの溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。
【0036】
また、本発明における発光層形成用組成物は、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
発光層形成用組成物の塗布後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用溶媒を除去することにより、発光層が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、例えば、後述の<電荷輸送能>[成膜方法]の項で記載した湿式成膜法が挙げられ、中でも好ましくは、スピンコート法及びインクジェット法である。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0037】
<電荷輸送層>
本発明における電荷輸送層は、末端基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物を含む組成物で形成した層である。
末端基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、ベンゾフェナントレン環等の、ベンゼン環、或いは、ベンゼン環の2〜5個が縮合してなる縮合環由来の基、フルオレン環由来の基、インデノフルオレン環由来の基などが挙げられる。中でも、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、2−フルオレニル基が電荷輸送性及び電気化学的耐久性の点から好ましい。
【0038】
末端基における芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられ、中でも、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、2−フルオレニル基などの芳香族炭化水素基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−カルバゾリル基、N,N−ビス(4−ジフェニル)アミノ基などのジアリールアミノ基が電荷輸送性及び電気化学的耐久性の点から好ましい。
【0039】
本発明における高分子化合物は、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0040】
【化4】

【0041】
(式(II)中、qは0〜3の整数を表し、 Ar11及びAr12は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は直接結合を表し、 Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0042】
但し、Ar11及びAr12のいずれもが、直接結合であることはない。) 式(II)中、Ar11及びAr12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0043】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0044】
溶媒に対する溶解性、及び耐熱性の点から、Ar11〜Ar15は、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基が好ましい。
また、Ar11〜Ar15としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基及びターフェニレン基、がさらに好ましい。
Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の不溶化基以外に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記[置換基群Z]から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0045】
[置換基群Z]
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
【0046】
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
【0047】
Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の不溶化基以外に有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
溶解性の点から、Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
【0048】
なお、mが2以上である場合、前記式(II)で表される繰り返し単位は、2個以上のAr14及びAr15を有することになる。その場合、Ar14同士及びAr15同士は、各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar14同士、Ar15同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
【0049】
[qの説明]
前記式(II)においてqは、0〜3の整数を表す。
qは、通常0以上であり、通常3以下、好ましくは2以下である。qが2以下である方が、原料となるモノマーの合成が容易である。
[繰り返し単位の割合等]
本発明における高分子化合物は、1種又は2種以上の式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0050】
本発明における高分子化合物が2種以上の繰り返し単位を有する場合は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。溶媒に対する溶解性の点からランダム共重合体であることが好ましい。電荷輸送能がさらに高められる点で交互共重合体であることが好ましい。
【0051】
[不溶化基]
本発明における高分子化合物は、置換基として不溶化基を含む基を有することが好ましい。
不溶化基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により反応する基であり、反応後は反応前に比べて有機溶媒や水への溶解性を低下させる効果を有する基である。
本発明においては、不溶化基は、解離基又は架橋性基であることが好ましい。
高分子化合物は、置換基として不溶化基を含む基を有するが、不溶化基を有する位置は、式(II)で表される繰り返し単位中にあってもよく、また式(II)で表される繰り返し単位以外の部分、例えば、末端基に有していてもよい。
【0052】
(解離基)
本発明における高分子化合物は、不溶化基として、解離基を有していることが不溶化後(解離反応後)の電荷輸送能に優れる点で好ましい。
【0053】
ここで、解離基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、溶媒に対して可溶性を示すとは、化合物が熱及び/又は活性エネルギー線の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0054】
このような解離基として好ましくは、芳香族炭化水素環側に極性基を形成せずに熱解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
【0055】
解離基の具体例は、以下の通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
解離基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の解離基群A>の通りである。
<2価の解離基群A>
【0056】
【化5】

【0057】
解離基が1価の基である場合の具体例は、以下の<1価の解離基群B>の通りである。
<1価の解離基群B>
【0058】
【化6】

【0059】
(解離基の位置と割合)
本発明において、1つの高分子化合物鎖の中に含まれる解離基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。この下限値を下回ると加熱前の該高分子化合物の塗布溶媒に対する溶解性が低い場合があり、またさらに加熱後の化合物の溶媒への溶解性の低下の効果も低くなる可能性がある。
【0060】
また、本発明における高分子化合物が有する解離基の数は、高分子化合物の分子量1000あたり、通常0.01個以上、好ましくは0.1個以上であり、さらに好ましくは0.2個以上であり、また、通常10個以下、好ましくは5個以下である。この範囲内であると、不溶化(解離反応)前後で、適度な溶解度差が得られるため好ましい。
尚、本発明における高分子化合物が、不溶化基として解離基を有する場合、Ar11、Ar12又はAr14が少なくとも一つが<2価の解離基群A>から選ばれる基であってもよく、またAr13及びAr15が<1価の解離基群B>から選ばれる基であってもよい。
【0061】
(架橋性基)
また、本発明における高分子化合物は、不溶化基として、架橋性基を有していることが、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で好ましい。
ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
架橋性基としては、不溶化がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
【0062】
[架橋性基群T]
【0063】
【化7】

【0064】
(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Ar31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
【0065】
シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環由来の基などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環由来の基が特に好ましい。
架橋性基は分子内の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合することが好ましい。
【0066】
[合成法]
末端基を有する化合物は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。
末端基を有する化合物は、下記式のように一般式(Va)で表されるハロゲン化物と、一般式(Vb)で表される二級アミン化合物とを、炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、逐次重合した後、同様の条件で、一般式(Vd)で表されるハロゲン化物および一般式(Ve)で表される二級アミン化合物と反応させることで得られる。必要に応じて、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒を用いることも出来る。
また、末端基を有する化合物は、下記式のように一般式(Va)で表されるハロゲン化物と、一般式(Vc)であらわされるホウ素化合物とを、炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、逐次重合した後、同様の条件で、一般式(Vd)で表されるハロゲン化物および一般式(Vf)で表されるホウ素化合物と反応させることで得られる。必要に応じて、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒を用いることも出来る。
【0067】
つまり、末端基を有する化合物は、式(Va)と式(Vb)とをN−Ar結合を形成する反応(例えば、Buchwald-Hartwigカップリング、Ullmannカップリングなど)により、また、式(Va)と式(Vc)とをAr−Ar結合を形成する反応(例えば、Suzukiカップリングなど)によって、それぞれ逐次重合させ、ポリマーを形成した後、両側の末端基と反応し得る試薬を作用させることによって得られる。
【0068】
【化8】

【0069】
(式中、Xはハロゲン原子又は、CFSOO−基のようなスルホン酸エステル基を示し、Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、R’はヒドロキシ基又は互いに結合して環を形成してもよいアルコキシ基を示し、Ara〜Arは各々独立に置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。)
末端基を有する化合物は、Ar又はAr、並びにAr又はAr、の少なくとも1つは下記式(VI)で表される2価の基を含むことが好ましい。
【0070】
【化9】

【0071】
(式中、R51、及びR52は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R51、及びR52は互いに結合して環を形成してもよい。)
以下に、Ara、及びArの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
【化10】

【0073】
【化11】

【0074】
【化12】

【0075】
以下に、式(Vb)の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
【化13】

【0077】
以下に、式(Vb)の、好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化14】

【0079】
【化15】

【0080】
以下に、Ar及びArの、好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化16】

【0082】
以下に、式(Ve)の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【化17】

【0084】
化合物の精製方法としては、「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分および難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ ピー シー発行)、あるいは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法をはじめとし、公知の技術を利用可能である。具体的には、抽出(懸濁洗浄、煮沸洗浄、超音波洗浄、酸塩基洗浄を含む)、吸着、吸蔵、融解、晶析(溶剤からの再結晶、再沈殿を含む)、蒸留(常圧蒸留、減圧蒸留)、蒸発、昇華(常圧昇華、減圧昇華)、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー、移動相分類:ガス、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー)などが挙げられる。
【0085】
生成物の確認や純度の分析方法としては、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(高分子化合物)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)、質量分析(MS、LC/MS,GC/MS,MS/MS)、核磁気共鳴装置(NMR(1HNMR,13CNMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、紫外可視近赤外分光高度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)、透過型電子顕微鏡(TEM−EDX)電子線マイクロアナライザー(EPMA)、金属元素分析(イオンクロマトグラフ、誘導結合プラズマ−発光分光(ICP−AES)原子吸光分析(AAS)、蛍光X線分析装置(XRF))、非金属元素分析、微量成分分析(ICP−MS,GF−AAS,GD−MS)等を必要に応じ、適用可能である。
【0086】
[高分子化合物の分子量など]
本発明における高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常20000以上、好ましくは40000以上であり、また通常2000000以下、好ましくは1000000以下である。
また、数平均分子量(Mn)は、通常1000000以下、好ましくは800000以下、より好ましくは500000以下であり、また通常5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上である。
【0087】
重量平均分子量がこの上限値を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、また重量平均分子量がこの下限値を下回ると、ガラス転移温度及び、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
また、本発明の高分子化合物の分散度(Mw/Mn:Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す)は、通常2.40以下、好ましくは2.10以下、より好ましくは2.00以下であり、また好ましくは1.00以上、さらに好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.20以上である。この上限値を上回ると、精製が困難となったり、溶媒に対する溶解性が低下したり、電荷輸送能が低下したりする等、本発明の効果が得られないおそれがある。
【0088】
通常、重量平均分子量及び数平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。
【0089】
ここで、SEC測定条件を示す。
カラムは、TSKgel GMHXL(東ソー社製)又はこれと同等以上の分離能を示すもの、すなわち、
粒子径:9mm
カラムサイズ:7.8mm内径×30cm長さ
保証理論段数:14000TP/30cm程度
のものを2本用い、カラム温度は40℃とする。
【0090】
移動層はテトラヒドロフラン、クロロホルムのうち充填材への吸着のないものを選択し、流量は1.0ml/分とする。インジェクション濃度は0.1重量%とし、インジェクション量は0.10mlとする。検出器としてはRIを用いる。
分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、分子量分布が決定される。なお、SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなる。
【0091】
尚、本発明の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を測定するのに用いる測定機器は、上記と同等の測定が可能であれば、上記の測定機器に限定されるものではなく、その他の測定機器を用いてもよいが、上記の測定機器を用いることが好ましい。
以下に、本発明における、末端基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<高分子化合物の具体例>
【0092】
【化18】

【0093】
(組成物)
電荷輸送層を湿式成膜法により形成する場合、電荷輸送層を構成する正孔輸送性化合物、及び必要に応じて、その他の成分を適切な溶媒と混合して成膜用の組成物(以下、「電荷輸送層形成用組成物」と称する場合がある)を調製して用いる。
電荷輸送層形成用組成物における、正孔輸送性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、電荷輸送層形成用組成物には、正孔輸送性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
【0094】
本発明にかかる、電荷輸送層形成用組成物は、通常溶媒を含む。
本発明にかかる、電荷輸送層形成用組成物に含有される溶媒としては、特に制限されるものではないが、通常0.1重量%、好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは1.0重量%以上溶解する溶媒である。
溶媒の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
【0095】
具体例としては、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
電荷輸送層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、各種の電子受容性化合物、発光材料、バインダー樹脂、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤などが挙げられる。尚、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任煮の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陽極と発光層との間に有機層が一層である場合、つまり、電荷輸送層のみである場合は、電荷輸送層形成用組成物に、電子受容性化合物を含有することが好ましい。
【0097】
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
【0098】
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物等が好ましい。また、種々の溶媒に対する溶解性が高く湿式成膜法で膜を形成するのに適用可能である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物等が好ましい。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好ましい例も同様である。例えば、下記構造式で表わされる化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
【化19】

【0100】
なお、電子受容性化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
電荷輸送層形成用組成物における、電子受容性化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層形成用組成物には、電子受容性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
【0101】
また、レベリング剤を含む場合、レベリング剤の例としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。レベリング剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。第一の電荷輸送層形成用組成物中におけるレベリング剤の含有率は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、また、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の範囲である。レベリング剤の含有率が低すぎるとレベリング不良となる場合があり、高すぎると膜の電荷輸送能が低下する場合がある。
【0102】
また、消泡剤を含む場合、消泡剤の例としては、シリコンオイル、脂肪酸エステル、リン酸エステルなどが挙げられる。消泡剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。第一の電荷輸送層形成用組成物中における消泡剤の含有率は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、また、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の範囲である。消泡剤の含有率が低すぎると消泡効果が十分でない場合があり、高すぎると膜の電荷輸送能が低下する場合がある。
【0103】
[成膜方法]
本発明における電荷輸送層は、湿式成膜法で形成される。
尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる塗布用組成物特有の液性に合うためである。
【0104】
湿式成膜法で層を形成する場合、通常は、電荷輸送層の材料を適切な溶媒と混合して成膜用の組成物を用意して、該組成物を適切な手法により、下層に該当する層上に塗布して、乾燥することにより成膜する。この乾燥は、加熱乾燥であっても、減圧乾燥であってもよい。
不溶化性化合物を用いて膜を形成する場合は、上記の通り塗布後、加熱及び/または活性エネルギー線の照射により、不溶化性化合物が不溶化反応を起こして層を形成する。
【0105】
不溶化方法が加熱による場合、加熱の手法は特に限定されないが、加熱条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下に成膜された膜を加熱する。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。
また、加熱手段としては特に限定されないが、形成された膜を有する基板あるいは積層体をホットプレート上にのせたり、オーブン内で加熱したりするなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0106】
不溶化方法が活性エネルギー線の照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。また、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0107】
加熱及び/または活性エネルギー線の照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び/または活性エネルギー線の照射は、実施後に層が含有する水分及び/または層の表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で加熱及び/または活性エネルギー線の照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも上の層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
このようにして形成される本発明における不溶化膜の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、また通常100nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0108】
<本発明が効果を奏する理由>
本発明の構成とすることで、得られる素子の電流効率が高く、定電流時駆動時の発光輝度の低下、電圧上昇などの効果が得られる理由を以下の通り推測する。
発光層を湿式成膜法で形成する場合、真空蒸着法で形成した場合に比べて、発光層の下層、本発明における、発光層の陽極側に隣接して設けられる電荷輸送層との相互作用が、塗布液が下層へ浸透しやすく、また、下層の成分が発光層へ溶出しやすいため、大きい。
さらに、電荷輸送層に含有する高分子化合物の末端基が、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であると、該末端基から、構造が類似したアリールアミン化合物への電荷の受け渡しが行われる。
これより、末端基が芳香族炭化水素基であると、上記の効果を奏するものと推測される。
【0109】
<有機電界発光素子>
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成およびその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
【0110】
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
尚、図1に示す素子の場合、正孔輸送層が電荷輸送層に相当する。
【0111】
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0112】
(陽極)
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0113】
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0114】
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0115】
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
【0116】
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0117】
<湿式成膜法による正孔注入層の形成>
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
【0118】
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物および溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0119】
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
【0120】
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0121】
【化20】

【0122】
(式(I)中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0123】
【化21】

【0124】
(上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または任意の置換基を表す。))
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
【0125】
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
およびRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
【0126】
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
【0127】
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
【0128】
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0129】
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0130】
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0131】
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
【0132】
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
【0133】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
【0134】
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
【0135】
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
【0136】
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
【0137】
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
【0138】
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
【0139】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
【0140】
[正孔輸送層]
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。
正孔輸送層を形成する材料、及び成膜方法は、前記<電荷輸送層>の項で記載した材料及び方法を用いることができる。好ましい態様も同様である。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0141】
{発光層}
正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層を形成するための材料、及び方法は、前記<発光層>の項で記載の材料及び方法で形成する。好ましい態様も同様である。
【0142】
{正孔阻止層}
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
【0143】
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0144】
{電子輸送層}
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の電流効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極
9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0145】
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0146】
{電子注入層}
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0147】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0148】
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0149】
{陰極}
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8または発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0150】
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0151】
{その他の層}
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0152】
<電子阻止層>
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3または正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0153】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
【0154】
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0155】
さらに陰極9と発光層5または電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70,pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
【0156】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
【0157】
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、電流効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0158】
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0159】
<有機ELディスプレイ及び有機EL照明>
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を備えるものである。有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
(合成例1)
【0161】
【化22】

【0162】
アニリン(0.951g、10.2mmol)、化合物M1(0.125g、0.642mmol)、化合物M2(3.50g、5.43mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(3.34g、34.8mmol)、トルエン(25ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.11g、0.11mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.18g、0.87mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、化合物M2(3.22g、5.00mmol)を添加した。2時間加熱還流した後、さらに、化合物M2(0.07g、0.11mmol)を添加した。さらに2時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール(250ml)中に滴下し、粗ポリマーを晶出させた。
【0163】
得られた粗ポリマーをトルエン200mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.34g、2.1mmol)、tert−ブトキシナトリウム(3.34g、34.8mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.06g、0.06mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.09g、0.48mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2.5時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.84g、10.9mmol)のトルエン(2ml)溶液、及び、再度調製した溶液Dを添加し、さらに、6時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエンを留去した後、エタノール(300ml)中に滴下し、粗ポリマーを得た。
【0164】
この粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより3回精製し、目的物1を得た(3.59g)。
【0165】
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0166】
まず、下記式(PX1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子材料(重量平均分子量:93000,数平均分子量:55000)、下記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートおよび安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚40nmの正孔注入層3を得た。
【0167】
【化23】

【0168】
<正孔注入層形成用塗布液>
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 PX1:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 3時間
【0169】
引き続き、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子材料(重量平均分子量:55000,数平均分子量:35000)(合成例1で合成した目的物1)を含有する有機電界発光素子用組成物を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により不溶化させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【0170】
【化24】

【0171】
<正孔輸送層形成用組成物>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
固形分濃度 P1:1.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間

次に、発光層5を形成するにあたり、下記式(H1)及び(D1)を用いて下記に示す有機電界発光素子組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートして膜厚40nmで発光層5を得た。
【0172】
【化25】

【0173】
<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 H1:3.40重量%
D1:0.34重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 減圧下(0.1MPa)、130℃、1時間
【0174】
ここで、発光層5までを成膜した基板を、窒素グローブボックスに連結された真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.5×10−4Pa以下になるまで排気した後、下記式(C1)を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層6を得た。蒸着速度を0.5〜1.5Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔阻止層6を形成した。蒸着時の真空度は2〜4×10−5Paであった。
【0175】
【化26】

【0176】
続いて、下記式3(C2)で表される化合物を加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着時の真空度は2〜4×10−5Pa、蒸着速度は0.5〜1.0Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層7を形成した。
【0177】
【化27】

【0178】
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を正孔阻止層6、および電子輸送層7を蒸着したチャンバーに連結されたチャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させた。
【0179】
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.08〜0.15Å/秒、真空度2.5〜5.5×10−5Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、陰極9としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.5〜1.5Å/秒、真空度2.0〜5.5×10−5Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0180】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
【0181】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の特性を表1に表す。
【0182】
【表1】

表1に示すが如く、本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高い素子であることが分かる。
(合成例2)
【0183】
【化28】

【0184】
アニリン(5.955g、63.94mmol)、化合物M1(0.657g、3.365mmol)、9,9−ヘキシルー2,7−ジブロモフルオレン(16.56g、33.64mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(20.6g、215mmol)、トルエン(100ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.7g、0.67mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(1.1g、5.38mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(10.29g、32.98mmol)を添加した。1.5時間加熱還流した後、反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、粗ポリマーを晶出させ、濾取、乾燥させた。
【0185】
得られた粗ポリマー25.9gをトルエン500mlに溶解させ、ブロモベンゼン(4.2g、26.5mmol)、tert−ブトキシナトリウム(8.2g、85.3mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.28g、0.27mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(43g、2.16mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(13.2g、78.1mmol)を添加し、さらに、4.5時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水混合液中に滴下し、粗ポリマーを晶出させ、濾取、乾燥させた。
【0186】
得られた粗ポリマー24.1gをトルエン490mlに溶解させ、N,N−ジフェニルアミン(6.6g、33.64mmol)、tert−ブトキシナトリウム(10.3g、107mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液E)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.35g、0.34mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.55g、2.96mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液F)。窒素気流中、溶液Eに溶液Fを添加し、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水混合液中に滴下し、粗ポリマーを晶出させ、濾取、乾燥させた。
【0187】
この粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、16.0gの目的物2を得た。
【0188】
(合成例3)
アニリン(5.955g、63.94mmol)、化合物M1(0.657g、3.365mmol)、9,9−ヘキシルー2,7−ジブロモフルオレン(16.56g、33.64mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(20.6g、215mmol)、トルエン(100ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.7g、0.67mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(1.1g、5.38mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(10.29g、32.98mmol)を添加した。1.5時間加熱還流した後、反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、粗ポリマーを晶出させ、濾取、乾燥させた。
【0189】
得られた粗ポリマー25.9gをトルエン500mlに溶解させ、ブロモベンゼン(4.2g、26.5mmol)、tert−ブトキシナトリウム(8.2g、85.3mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.28g、0.27mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(43g、2.16mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(13.2g、78.1mmol)を添加し、さらに、4.5時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水混合液中に滴下し、粗ポリマーを晶出させ、濾取、乾燥させた。
この粗ポリマーをトルエンに溶解し、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、16.0gの目的物3を得た。
【0190】
(実施例2)
実施例1と同様にして正孔注入層3まで形成した。
引き続き、合成例2で合成した目的物2を含有する有機電界発光素子用組成物を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により不溶化させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【0191】
<正孔輸送層形成用組成物>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
固形分 ポリマー2−1:1.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
【0192】
次に、発光層5を形成するにあたり、下記式(H2)及び(D1)を用いて下記に示す有機電界発光素子組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートして膜厚40nmで発光層5を得た。
【0193】
【化29】

【0194】
<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 H2:3.40重量%
D1:0.34重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 減圧下(0.1MPa)、130℃、1時間
【0195】
続いて、実施例1と同様にして正孔阻止層6を形成した。
続いて、膜厚30nmとなるようにトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。
続いて、実施例1と同様にして、電子注入層8、陰極9を形成し、封止処理を行った。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の特性を表2に表す。
【0196】
(実施例3)
実施例2において、目的物2のかわりに、合成例3で合成した目的物3を用いた他は、実施例2と同様にして、有機電界発光素子を作成した。
この素子の特性を表2に表す。
【0197】
【表2】

【0198】
表2に示すが如く、本発明の有機電界発光素子は、電流効率および電力効率が高い素子であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0200】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極、電荷輸送層、発光層、及び陰極をこの順に有し、該電荷輸送層と該発光層は隣接して設けられ、該電荷輸送層、及び該発光層は湿式成膜法で形成された有機電界発光素子であって、該電荷輸送層は、末端基が、アルキル基、アルコキシル基および芳香族基よりなる群から選ばれる基を置換基として有してもよい芳香族炭化水素基である高分子化合物を含む組成物を用いて形成された層であり、
該発光層は、アリールアミン化合物を含む層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
上記アリールアミン化合物が下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化1】

(式(I)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素
基を表す。)
【請求項3】
上記高分子化合物が下記式(II)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【化2】

(式(II)中、qは0〜3の整数を表し、Ar11及びAr12は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は直接結合を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。但し、Ar11及びAr12のいずれもが、直接結合であることはない。)
【請求項4】
上記高分子化合物が、不溶化基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
上記不溶化基が、架橋性基であることを特徴とする、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
架橋性基が、下記架橋性基群Tの中から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の有機電界発光素子。
<架橋性基群T>
【化3】

【請求項7】
前記不溶化基が、解離基であることを特徴とする、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
解離基が、下記<2価の解離基群A>及び<1価の解離基群B>の中から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子。
<2価の解離基群A>
【化4】

<1価の解離基群B>
【化5】

【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機EL照明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−239134(P2010−239134A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56022(P2010−56022)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】