説明

有機電界発光表示装置の製造方法及び有機電界発光表示装置

【課題】基板上にバンクを有し、該バンクにより区切られた画素領域にインクジェット法等で有機物を含有する液体材料(塗布液)を塗布することを含む有機電界発光表示装置の製造方法において、バンクへの有機物の付着量を低減することができる有機電界発光表示装置の製造方法を提供すること。該有機電界発光表示装置の製造方法により製造された有機電界発光表示装置を提供すること。
【解決手段】液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液、及び曲率を有するバンクを用いると共に、純水に対する接触角について所定の関係を満たす有機電界発光表示装置の製造方法、及び、該有機電界発光表示装置の製造方法により製造された有機電界発光表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光表示装置の製造方法及び有機電界発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLED、有機EL素子ともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
有機EL素子は、発光層及びその他の有機層を、例えば蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。湿式法の一形態として、インクジェット法若しくはノズルプリンティング法を利用して有機化合物を含む液体材料を充填し薄膜のパターンを形成する方式がある。しかしながら、この場合吐出された液体材料が隣接する画素に流出する等の問題が生じている。
このような問題に対して、通常、異なる薄膜領域を仕切る凸状の仕切部材(「バンク」また「凸部」とも呼ばれる)を設け、該仕切部材で囲まれた画素領域に異なる薄膜となる液体材料を充填する方法が採用されている。しかしながら、有機化合物を含む塗布液を、インクジェット法若しくはノズルプリンティング法で成膜するにあたり、着弾の位置ずれ等により、画素を分割するバンク(例えば、絶縁膜)へ有機物が付着するという問題が生じる。このような問題に対し、通常、バンクへの撥液性の付与や、インクジェット法の駆動方法の制御により、有機物の付着量を低減することが試みられている。
【0004】
例えば特許文献1には、上述のようなバンクを用いた薄膜形成方法において、バンクの幅、高さ、被塗布領域(画素領域)の幅、及び薄膜層を形成する液体材料の液滴径を、所定の条件を満たすようにする方法や、バンク表面を改質し撥液性を付与する方法が開示されている。このように工夫を凝らしたバンクを用い、該バンクにより区切られた画素領域にインクジェット法で液体材料を塗布し、成膜することで液体材料がバンクを超えて流れ出るという事態を防止する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1で使用される有機物はポリマー等であり、バンクに有機物が付着した場合に、有機物がバンクから流れ落ちにくく、画素領域に形成されるべき有機物が損失することが問題であり、その改善が求められている。また特許文献1には、有機物を選択することにより、バンクへの有機物の付着量を低減する技術については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3328297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上にバンクを有し、該バンクにより区切られた画素領域にインクジェット法等で有機物を含有する液体材料(塗布液)を塗布し、成膜する方法において、従来の技術に対しバンクへの有機物の付着量を更に低減することが求められている。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、基板上にバンクを有し、該バンクにより区切られた画素領域にインクジェット法等で有機物を含有する液体材料(塗布液)を塗布することを含む有機電界発光表示装置の製造方法において、バンクへの有機物の付着量を低減することができる有機電界発光表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
また本発明の別の目的は、該有機電界発光表示装置の製造方法により製造された有機電界発光表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液、及び曲率を有するバンクを用いると共に、純水に対する接触角について後述の所定の関係を満たすことで、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
〔1〕 基板上に、曲率を有するバンクと、該バンクにより区切られた画素領域とを有するパターニンング基板を備えた有機電界発光表示装置の製造方法であって、
前記画素領域に、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液を、パターン状に塗布すること含み、かつ、前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2、及び前記バンクの純水に対する接触角θ3が下記式(1)及び(2)の関係を満たす、有機電界発光表示装置の製造方法。
|θ2−θ1|<|θ3−θ2| 式(1)
θ2<θ3 式(2)
〔2〕 前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3である、上記〔1〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔3〕 前記塗布液の塗布後、前記パターニング基板への加熱を行うことを含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔4〕 前記パターニング基板への加熱が、80℃〜220℃で行われる、上記〔3〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔5〕 前記バンクが平坦部を有しない、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔6〕 前記液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物が、発光層形成用材料である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔7〕 前記画素領域に形成された正孔注入層又は正孔輸送層上に、前記塗布液を塗布する、上記〔6〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔8〕 前記塗布液が塗布される塗布面が正孔注入層又は正孔輸送層の表面であり、該正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4と、前記θ2及びθ3が下記式(3)の関係を満たす、上記〔7〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
|θ2−θ4|<|θ3−θ2| 式(3)
〔9〕 前記正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3である、上記〔8〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔10〕 前記塗布液が、液晶性を有する有機物を含有し、該液晶性を有する有機物が液晶性を有するトリフェニレン誘導体である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔11〕 前記塗布液が、液晶性を有する有機物を含有し、該液晶性を有する有機物が液晶性を有するピレン誘導体である、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔12〕 前記塗布液が、液体の有機物を含有し、該液体の有機物が80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔13〕 前記80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物が、非対称構造のカルバゾール誘導体である、上記〔12〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
〔14〕 前記非対称構造のカルバゾール誘導体が、下記一般式(ACz)で表される、上記〔13〕に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(ACz)中、RAsはtert−ブチル基、tert−アミル基、又はトリメチルシリル基を表す。
〔15〕 上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法により製造された、有機電界発光表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上にバンクを有し、該バンクにより区切られた画素領域にインクジェット法等で有機物を含有する液体材料(塗布液)を塗布することを含む有機電界発光表示装置の製造方法において、バンクへの有機物の付着量を低減することができる有機電界発光表示装置の製造方法を提供することができる。また本発明によれば、該有機電界発光表示装置の製造方法により製造された有機電界発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るパターニング基板の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るパターニング基板の画素領域に、正孔注入層又は正孔輸送層が形成され、更にその上に発光層が形成された構成の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、トップエミッション方式の有機電界発光表示装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0016】
本発明の有機電界発光表示装置の製造方法は、基板上に、曲率を有するバンクと、該バンクにより区切られた画素領域とを有するパターニンング基板を備えた有機電界発光表示装置の製造方法であって、前記画素領域に、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液を、パターン状に塗布すること含み、かつ、前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2、及び前記バンクの純水に対する接触角θ3が下記式(1)及び(2)の関係を満たす。
|θ2−θ1|<|θ3−θ2| 式(1)
θ2<θ3 式(2)
【0017】
なお“塗布液をパターン状に塗布する”とは、本発明に係る塗布液を、基板上に形成された画素領域のパターンに沿って塗布液を塗布することを言う。
画素領域のパターンとしては、有機電界発光表示装置において適用される従来公知の画素領域のパターンが挙げられる。
上記本発明の方法により、バンクへの有機物の付着量を低減することができる理由は定かではないが、以下のように推測される。
有機物として液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を使用することにより、これら有機物を含有する塗布液は、有機物としてポリマー等の上記以外の有機物を含有する場合と比較して、粘度が小さくなる。このような塗布液は、自己修復性を有し、具体的には、セルフレベリングの特性から自然に塗布液が水平な液面を形成するように修復すると共に、バンクに付着した液滴もバンクとの親疎水性が異なることにより塗布液本体へ移動する傾向がある。これによりバンクに付着した液滴の付着量が低減され、有機物の損失が少なく、塗布液を薄膜の形成に利用することができる。
また本発明の方法に係るバンクは、曲率を有することにより、バンクに付着した液滴は曲面に沿って画素領域へと移動することができ、平坦な表面に付着した場合と比べ、バンク壁面に液滴が留まり難いことから、バンクへの有機物の付着が更に低減されるものと推測される。
更に、純水に対する接触角が上記の関係を満たすことで、有機物を含む塗布液(すなわち、油相)の親和性は、バンクに対するものよりも、該塗布液が塗布される塗布面に対するものの方が大きくなり、塗布液が塗布面へと移動する傾向が更に強くなると考えられる。
【0018】
本発明の方法において、前記塗布液の塗布後、前記パターニンング基板への加熱を行うことが、上述のセルフレベリングによる効果を促進するため好ましい。
この際のパターニンング基板への加熱は、30℃〜250℃で行われることが好ましく、より好ましくは80℃〜220℃、更に好ましくは80℃〜150℃である。
【0019】
以下、本発明の有機電界発光表示装置の製造方法に係る構成について説明する。
【0020】
[1]パターニング基板
本発明に係るパターニング基板を、図1を参照して説明する。パターニング基板21は、基板22と、基板22上に形成された曲率を有するバンク23と、該バンク23により区切られた画素領域24とを有する。なお図1においては、バンク23の全体が基板22上に位置するが、本発明はこれに限定されるものではなく、バンク23の少なくとも一部が基板22上に位置すればよい。本願において図示しないが、画素領域24はバンク23により囲われており、隣り合う画素領域24は、バンク23により全て仕切られている。
画素領域の形成パターンとしては、上述のように有機電界発光表示装置において使用される従来公知の画素領域のパターンが適用できる。
【0021】
基板22の材料としては、ガラス、PET、PEN、PC、PSF等が挙げられる。また、これら基板上には、透明電極としてITO、IZO、ZnO等の酸化物半導体や、銀、金等の金属やこれら合金などの電極層と、正孔注入層としてPEDOT/PSS、ポリアリールアミン、ポリフルオレン、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、重合性基を有するアリールアミン誘導体、Ir錯体など、公知の材料の積層体でもよい。
【0022】
曲率を有するバンク23は、図1においては円弧状の形状であるが、本発明に係るバンクの形状はこれに限定されず、少なくとも一部に曲率を有する(換言すると、少なくとも一部に曲面を有する)バンクであれば特に限定されない。
バンク23の幅は一般的には10〜50μmであり、好ましくは20〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。バンク23の高さは、一般的には1〜10μmであり、好ましくは2〜8μm、より好ましくは2〜5μmである。
バンク23の形状としては、円弧状、三角状、台形状等が挙げられるが、バンク23は平坦部を有しないことが好ましい。バンク23が平坦部を有しないことにより、バンクに付着した液滴はバンク壁面に留まり難くなり、より効率的に画素領域へと移動することができる。バンク23は、より好ましくは円弧状、三角状であり、更に好ましくは円弧状である。
【0023】
バンク23の材質は、上記の純水に対する接触角の関係を満たす限り特に限定されないが、ポリイミド、ノボラック系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、疎水性の観点から、好ましくはポリイミドである。なお、バンクは必要に応じて撥水処理を施してもよい。具体的な方法としては、CVDによりCFをバンクに成膜したり、長鎖のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤や、フッ素ポリマーをバンクに混合してもよい。
バンクの形成方法としては、(1)感光性レジストやポリイミドを用いたUV光によるパターニングと現像を用いる方法、(2)アルカリ現像が可能なポリイミド上にレジストを積層塗布し、UV光によるパターニングと現像を用いる方法、(3)エポキシ樹脂を用いたスクリーン印刷によるパターニングとUV架橋を用いる方法などが挙げられる。
【0024】
画素領域24はバンク23により囲われてなる領域であり、この領域に前記液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液が塗布される。なお必要に応じ、画素領域24への前記塗布液の塗布の前後に、その他の有機物を含む塗布液を画素領域24へ塗布することにより層を形成してもよい。
画素領域24の幅は、一般的には50〜500μmであり、好ましくは80〜300μmである。
本発明においては、上記画素領域は上記の大きさを有するものであれば、その形状については特に制限はなく、四角形(長方形,正方形,菱形を含む)、多角形(5角形、6角形等)、円形(真円形,楕円形を含む)等の環状形状、十字形、その他これに類する形状等いかなる形状も可能であるが、インクジェット法による塗布方式においては、液滴が濡れ易い形状であることが好ましいことから、特に、エッジ部(例えば、四角形における角部や頂点部)を有する形状のものにおいては、該エッジ部を曲面としたものが好ましい。このようにすることで、塗布液が画素領域に充填された時に、上記エッジ部分をぬれやすくすることができる。
上記画素領域には塗布液が塗布され画素電極が設けられる。塗布液に含有される有機物は薄膜発光素子を形成するための有機半導体材料である。この際、例えば、上記画素電極はITO電極膜である。
【0025】
[2]塗布液
本発明の塗布液は、少なくとも液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する。液体の有機物及び液晶性を有する有機物は、有機半導体材料であることが好ましく、発光層形成用材料であることがより好ましい。これは発光層の画素分割する必要があるためである。ここで有機半導体材料及び発光層形成用材料には、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を溶解又は相溶するための溶媒(塗布溶媒)は含まれない。
以下に、本発明の塗布液に含まれる液晶性を有する有機物、液体の有機物、及びこれら有機物を溶解又は相溶する溶媒(塗布溶媒)について説明する。
【0026】
[2−1]液晶性を有する有機物
液晶性を有する有機物としては、液晶性を有する公知の有機物が使用可能であるが、好ましくは液晶性を有する有機半導体材料であり、より好ましくは液晶性を有する発光層形成用材料であり、更に好ましくは液晶性を有するホスト材料又は液晶性を有する発光材料である。
液晶性を有するホスト材料としては、液晶性を有する、トリフェニレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられ、電荷の移動度の観点から、液晶性を有するトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0027】
〔液晶性を有するトリフェニレン誘導体〕
液晶性を有するトリフェニレン誘導体としては、従来から知られているディスコティック液晶性のトリフェニレン誘導体を使用できるが、例えば下記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体を挙げることができる。液晶性を有するトリフェニレン誘導体としては、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(N相)を発現するトリフェニレン誘導体であることが好ましい。本発明の塗布液が発光層形成用塗布液である場合、該塗布液から形成される発光層において、液晶性を有するトリフェニレン誘導体は、ホスト材料として機能する。液晶性を有するトリフェニレン誘導体は、高輝度で駆動させたときにも結晶化しにくい。また液晶性を有するトリフェニレン誘導体は配向しており、液晶性を示さないトリフェニレン誘導体と比較して、有機溶媒に対する溶解性が高い。
【0028】
【化2】

【0029】
上記一般式(T−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0030】
としては、具体的には、R−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0031】
は重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、重合性基を有する場合、アルキル基の最末端に重合性基を有することがN相の発現性の観点で好ましい。重合性基としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、重合の速度、合成の容易性及びコストの点で、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基が好ましく、アクリル酸エステル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0032】
としては、N相の発現性の観点で、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−が好ましく、R−O−Ph−COO−が更に好ましい。
【0033】
上記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体は、N相を発現するという点で、下記一般式(T−II)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0034】
【化3】

【0035】
上記一般式(T−II)において、R’は、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnT−O−Ph−CO−、又はR−O−Ph−CH=CH−CO−を表す。R、Ph、R、及びnの定義は、前記一般式(T−I)におけるR、Ph、R、及びnと同義である。また上記一般式(T−II)におけるR、Ph、R、及びnの具体例及び好ましい範囲も、前記一般式(T−I)におけるものと同様である。
【0036】
’は、N相の発現が良好であることから、以下の一般式(T−II−1)〜(T−II−5)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
上記一般式(T−II−1)〜(T−II−5)中、n及びn’はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
は、重合性基を表す。
【0039】
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは3〜10の整数である。
n’は、1以上の整数を表す。n’は、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
は、重合性基を表し、その具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(T−I)においてRで表されるアルキル基が有していてもよい重合性基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0040】
本発明における液晶性を有するトリフェニレン誘導体の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、更に好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0041】
本発明の塗布液における液晶性を有するトリフェニレン誘導体の含有量は、塗布液中の全固形分を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0042】
以下に、液晶性を有するトリフェニレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化5】

【0044】
液晶性を有する発光材料としては、液晶性を有する、ピレン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられ、色純度の観点から、液晶性を有するピレン誘導体であることが好ましい。
【0045】
〔液晶性を有するピレン誘導体〕
液晶性を有するピレン誘導体としては、例えば下記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体を挙げることができる。
【0046】
【化6】

【0047】
上記一般式(P−I)において、Rは、R−、又はR−CO−を意味する。pは、置換基数であり、1〜5の整数を表す。これら基を持つ化合物が全て液晶性ではないが、公知技術等に基づき液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0048】
としては、具体的には、R−、R−O−R−、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnP−O−Ph−CO−、R−O−Ph−CH=CH−CO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−CO−が挙げられる。ここで、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0049】
で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。Rで表されるアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、液晶性の点で直鎖であることが好ましい。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0050】
としては、溶解性の観点で、R−が好ましい。
pは、置換基数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2の整数である。一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、少なくともベンゼン環の4位に置換基を有することが液晶性の付与、溶解性の観点で好ましい。
【0051】
上記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、高い溶解性の点で、下記一般式(P−II)で表されるピレン誘導体であることが好ましい。
【0052】
【化7】

【0053】
上記一般式(P−II)中、Rは、一般式(P−I)におけるRと同義である。
【0054】
一般式(P−II)におけるRの具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(P−I)におけるものと同様である。
【0055】
液晶性を有するピレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0056】
【化8】

【0057】
本発明の塗布液における液晶性を有するピレン誘導体の含有量は、塗布液中の全固形分を基準として、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、1.5〜10質量%であることが更に好ましい。
[2−2]液体の有機物
本発明で使用される液体の有機物としては、25℃(室温)で液体の有機物(以下、“室温で液体の有機物”とも言う)のみならず、本発明の塗布液の塗布後の乾燥時の加熱により溶融し、液体となる有機物(以下、“加熱により溶融する有機物”とも言う)も含まれる。これら液体の有機物は、好ましくは液体の有機半導体材料であり、より好ましくは液体の発光層形成用材料であり、更に好ましくは液体のホスト材料である。
以下それぞれについて説明する。
【0058】
〔室温で液体の有機物〕
室温で液体の有機物としては、Applied Physics Letters 95,053304(2009)に記載の9−(2−エチルヘキシル)カルバゾール等がある。
【0059】
本発明の塗布液における室温で液体の有機物の濃度は、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0060】
〔加熱により溶融する有機物〕
加熱により溶融する有機物は、塗布液の塗布後の乾燥時の加熱温度以下で溶融し、液体となる有機物である。加熱により溶融する有機物は、80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物であることが好ましく、より好ましくは120℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物であり、更に好ましくは120℃〜180℃の範囲に融点を有する有機物である。
【0061】
上記80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物としては、非対称構造のカルバゾール誘導体や、特開2007−269772に記載の下記構造式の化合物(融解温度170度)、N−カルバゾール誘導体等が挙げられ、非対称構造のカルバゾール誘導体、N−カルバゾール誘導体であることが素子耐久性の観点で好ましい。非対称構造のカルバゾール誘導体としては、低融点の観点から、下記一般式(Acz)で表される非対称構造のカルバゾール誘導体が好ましい。
【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
一般式(ACz)中、RAsはtert−ブチル基、tert−アミル基、又はトリメチルシリル基を表す。
【0065】
上記一般式(ACz)で表される化合物において、RAsがtert−ブチル基の時、融点は125℃であり、tert−アミル基の時、融点は128℃であり、トリメチルシリル基の時、融点は135℃である。
【0066】
またN−カルバゾール誘導体としては、低融点の観点から、下記一般式(Ncz)で表されるN−カルバゾール誘導体が好ましい。
【0067】
【化11】

【0068】
一般式(NCz)中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。
【0069】
で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは1〜10の範囲であり、更により好ましくはメチル基、エチル基である。Rで表されるアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、液晶性の点で直鎖であることが好ましい。
で表されるアリール基は炭素数は、好ましくは6〜20の範囲であり、より好ましくは6〜12の範囲であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0070】
上記一般式(NCz)で表される化合物の具体例としては、9−エチルカルバゾール(融点 68℃)、9−メチルカルバゾール(融点 89℃)、9−フェニルカルバゾール(融点 88℃)等が挙げられる。
【0071】
本発明の塗布液における加熱により溶融する有機物の室温下における含有量は、塗布液中の全固形分を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0072】
本発明の塗布液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物以外の有機物を更に含有していてもよい。このような有機物としては、発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料等が挙げられる。
本発明の塗布液が上記の液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物以外の有機物を更に含有する場合、これら有機物の本発明の塗布液における含有量は、塗布液中の全固形分を基準として、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、1.5〜10質量%であることが更に好ましい。
【0073】
[2−3]溶媒
本発明の塗布液において、上述の液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を溶解又は相溶する溶媒(塗布溶媒)としては、有機物に応じて適宜従来公知の溶媒を適宜使用可能である。
塗布溶媒としては例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0074】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。
【0075】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。アルコール系溶媒の比誘電率は通常、10〜40である。
ケトン系溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ブタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の塗布液において、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物が発光層形成用材料である(すなわち、本発明の塗布液が発光層形成用塗布液である)ことが好ましく、このとき前記画素領域に形成された正孔注入層又は正孔輸送層上に発光層形成用塗布液を塗布することがより好ましい。
図2は本発明の塗布液により発光層25が、前記画素領域24に形成された正孔注入層又は正孔輸送層26上に形成された状態を示す。
発光層形成用塗布液から形成される発光層としては、膜厚5〜100nmで使用されることが好ましく、膜厚30〜50nmで使用されることがより好ましい。塗布液中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、成膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明の塗布液中の全固形分濃度は、一般的には0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の塗布液中の粘度は、吐出安定性の観点から、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0077】
本発明の塗布液は、上記の成分を所定の有機溶媒に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体又は層上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0078】
本発明の塗布液の塗布方法は特に限定されず、従来公知のいかなる塗布方法によっても形成可能である。例えば、インクジェット法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、転写法、印刷法等が挙げられる。
塗布後の加熱温度及び時間は、塗布液が乾燥する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、120℃〜160℃が好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、好ましくは1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜25分である。
【0079】
[3]純水に対する接触角
本発明の有機電界発光表示装置の製造方法において、本発明に係る塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1、該塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2、及びバンクの純水に対する接触角θ3が下記式(1)及び(2)の関係を満たす。
|θ2−θ1|<|θ3−θ2| 式(1)
θ2<θ3 式(2)
なお式(1)は、前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1と、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2との差分の絶対値が、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2と、前記バンクの純水に対する接触角θ3との差分の絶対値より小さいことを意味する。
θ1とθ2との差分の絶対値(|θ2−θ1|)は、好ましくは0〜10度であり、より好ましくは0〜5度である。θ2とθ3との差分の絶対値(|θ3−θ2|)は、10度より大きいことが好ましい。θ2とθ3との差分の絶対値は、一般的に100度以下であり、好ましくは80度以下である。
前記θ1、θ2及びθ3は下記の関係を満たすことが好ましい。
前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3
【0080】
接触角計(協和界面化学社製全自動接触角計DM−301など)を用いることで、接触角を測定できる。なお、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角は、前記塗布液から薄膜を形成し、流動性が発生しない温度で測定を行うことで求めることができる。本発明に係る塗布液が塗布される塗布面とは、前記画素領域に予め層が形成されていない場合には、基板表面であり、前記画素領域に予め層が形成されている場合には、該層の表面である。
前記塗布面の純水に対する接触角θ1は、好ましくは10〜90度であり、より好ましくは20〜80度、更に好ましくは20〜70度である。
前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2は、好ましくは30〜90度であり、より好ましくは30〜80度、更に好ましくは40〜80度である。
前記バンクの純水に対する接触角θ3は、好ましくは80〜110度であり、より好ましくは90〜110度である。
上記基板表面の純水に対する接触角やバンクの純水に対する接触角は、例えば、特許第3328297号に記載の方法により、基板表面及びバンクを表面処理することにより、上記範囲とすることもできる。
【0081】
本発明の塗布液が、発光層形成用塗布液である場合、発光層形成用塗布液は前記画素領域に形成された正孔注入層又は正孔輸送層上に塗布されることが好ましい。この場合、前記塗布液が塗布される塗布面が正孔注入層又は正孔輸送層の表面であり、該正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4と、前記θ2及びθ3が下記式(3)の関係を満たす。
|θ2−θ4|<|θ3−θ2| 式(3)
なお式(3)は、前記正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4と、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2との差分の絶対値が、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2と、前記バンクの純水に対する接触角θ3との差分の絶対値より小さいことを意味する。
θ4とθ2との差分の絶対値(|θ2−θ4|)は、好ましくは0〜10度であり、より好ましくは0〜5度である。θ2とθ3との差分の絶対値(|θ3−θ2|)は、前述と同様である。
前記θ4、θ2及びθ3は下記の関係を満たすことが、成膜性、及びバンクへの塗布液の付着防止の観点で好ましい。
前記正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3
【0082】
このとき、前記正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4は、好ましくは10〜90度であり、より好ましくは10〜80度である。
【0083】
[4]有機電界発光装置の構成
本発明は、上記有機電界発光装置の製造方法により製造された有機電界発光装置にも関する。
本発明における有機電界発光装置の構成について詳細に説明する。
【0084】
表示装置の具体的構成及び表示装置の製造方法については、例えば、特許第3328297号に記載の第3の実施例に詳述されており、この公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0085】
以下、前記有機電界発光素子の具体的な構成について詳細に説明する。
前記有機電界発光素子は、一対の電極すなわち陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0086】
前記有機電界発光素子は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0087】
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
【0088】
<有機層の構成>
有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0089】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/励起子ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0090】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0091】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0092】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0093】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0094】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0095】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタリング法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。
【0096】
本発明の塗布液から形成される層の他、有機層のいずれか一層は湿式法により成膜することが好ましく、正孔注入層又は正孔輸送層が湿式法により成膜することがより好ましい。また、他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタリング法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0097】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0098】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は発光材料を含有するが、該発光材料としては、燐光発光性化合物を含有することが好ましい。燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0099】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000−254171号の段落番号0152〜0180にもその具体例が記載されている。
【0100】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg.Chem.,30,1685,1991、Inorg.Chem.,27,3464,1988、Inorg.Chem.,33,545,1994、Inorg.Chim.Acta,181,245,1991、J.Organomet.Chem.,335,293,1987、J.Am.Chem.Soc.,107,1431,1985等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0101】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0102】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物を含有してもよい。
【0103】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0104】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0105】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有することが好ましい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0106】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0107】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0108】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0109】
(励起子ブロック層の説明)
励起子ブロック層は、発光層と正孔輸送層の界面、若しくは発光層と電子輸送層の界面のいずれか一方、又は両方に形成する層であり、発光層中で生成した励起子が正孔輸送層や電子輸送層へ拡散し、発光することなく失活するのを防止する層のことである。励起子ブロック層としては、カルバゾール誘導体からなることが好ましい。
【0110】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0111】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0112】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0113】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0114】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0115】
<トップエミッション方式の有機EL表示装置>
前記トップエミッション方式の有機EL表示装置は、例えば、図3に示すように、ガラス基板1(屈折率:約1.5)と、ガラス基板1上に配置され、SiNx、SiONなどからなるパシベーション層2と、パシベーション層2上に配置され、アクリル樹脂などからなる層間絶縁層3と、パシベーション層2上であって層間絶縁層3に隣接する位置に配置され、有機薄膜トランジスタ(TFT)4と、層間絶縁層3上に配置され、有機樹脂材料(屈折率:約1.5)、平坦化層6と、平坦化層6上に配置され、ITOなどからなる透明電極(陽極)7(屈折率:約1.9)と、透明電極(陽極)7上に配置され、発光層などを含む有機化合物層8(屈折率:約1.8)と、有機化合物層8上に配置され、アルミニウム、銀などからなる対向電極(半透過陰極)9と、平坦化層6上であって、透明電極(陽極)7、有機化合物層8及び対向電極(半透過陰極)9に隣接するように配置され、ポリイミド樹脂などからなるバンク10と、対向電極(半透過陰極)9上に配置され、SiNx、SiONなどからなる封止層11と、封止層11上に配置され、エポキシ樹脂などからなる接着剤層12と、接着剤層12上に配置され、ガラスなどからなる基板13とを備える。
層間絶縁層3及び平坦化層6は、有機薄膜トランジスタ(TFT)4を平坦化させる平坦化膜としての機能も有する。
層間絶縁層3及び平坦化層6にはビア14が形成され、透明電極(陽極)7と有機薄膜トランジスタ(TFT)4とが接続される。
また、平坦化層6は、厚みが2μm〜10μmと薄いので、ビア14を容易に形成することができ、もって製造コストを低減することができる。
平坦化層6中には、有機樹脂材料の屈折率よりも屈折率が高い微粒子が含まれている。
【0116】
前記有機電界発光表示装置は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、前記透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、前記発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
前記共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0117】
前記有機電界発光表示装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機電界発光素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機電界発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【実施例】
【0118】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0119】
(バンクの形成)
0.7mmの厚み、25mm角のガラス基板上に陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタリング蒸着したのち、エッチング及び洗浄した。ITOを成膜した基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
ITO電極上にポリイミド:HD−8820(日立化成デュポンマイクロシステムズ製品名)を用い、厚さ5μm、幅50μmのバンクを形成した。
このときの形状を、レーザーマイクロスコープ:VK−9700(キーエンス製品名)を用いて、測定したところ、台形状でかつテーパ部が幅50μmで高さ4μmであり、上辺部が幅40μmで高さ1μmの緩やかな曲率を有し、平坦部がないことを確認した。
【0120】
(バンクのフッ素化処理)
特許第3328297に記載の第8の実施例の方法に従い、バンク表面にフッ素処理を行った。
【0121】
(実施例1:Pt錯体)
<有機電界発光素子の作製>
以降のスピンコートと乾燥、アニール、ベーク処理は、グローブボックス(露点−60℃、酸素濃度10ppm)内で行った
次に、バンクを形成した陽極(ITO)の画素領域上に、下記構造式で表されるPTPDES(ケミプロ化成製、重量平均分子量=13000。nは括弧内の構造の繰り返し数を意味し、整数である。)2質量部を、電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解又は分散させた正孔注入層塗布液をコートした後、120℃で10分間乾燥し、160℃で60分間アニール処理することで、厚み40nmの正孔注入層を形成した。
【0122】
【化12】

【0123】
次に、下記構造の正孔輸送材料HTL−1(米国特許US2008/0220265に記載のHTL−1)4質量部を、メチルイソブチルケトン(関東化学製)996質量部に溶解させて、正孔輸送層塗布液を調製した。
この正孔輸送層塗布液を正孔注入層上にコートし、150℃で30分間乾燥することで厚み10nmの正孔輸送層を形成した。
【0124】
【化13】

【0125】
次いで発光層として、下記構造のホスト液晶化合物H−1を16.3質量部と、下記構造式で表される変性トリメチロールプロパントリアクリレートを1.7質量部と、下記構造式で表される光重合開始剤(IRGACURE 907)を0.5質量部と、下記構造の燐光発光材料E−1を2質量部とを、電子工業用2−ブタノン(関東化学製)979.5質量部に溶解又は分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ3A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、グローブボックス中でコートした。該塗布層は135℃の加熱により液晶相(Nd相)から等方相へ相転移することが確認できた。150℃で30分間アニール処理後、UVチャンバー:ELC−500(ELCTRO−LITE CORPORATION製)を用いてUV露光を10分間行い、80℃で30分間ベーク処理をして、厚み40nmの発光層を正孔輸送層上に形成した。
【0126】
【化14】

【0127】
【化15】

【0128】
隣接層として、下記構造のトリフェニレン化合物AD−1を真空蒸着法にて蒸着して、厚み5nmの層を発光層上に形成した。
【0129】
【化16】

【0130】
次に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み35nmの電子輸送層を隣接層上に形成した。
【0131】
【化17】

【0132】
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0133】
(実施例2:ピレン誘導体)
発光層を以下に記載されるように形成した以外は、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
発光層として、上記ホスト液晶化合物H−1を17質量部と、上記変性トリメチロールプロパントリアクリレートを2質量部と、上記光重合開始剤を0.5質量部と、下記構造の蛍光発光材料E−2(Jouranal of Materials Chemistry、2007、17、1392−1398)を0.4質量部とを、メチルイソブチルケトン(関東化学製)979.5質量部に溶解又は分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ3A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、グローブボックス中でコートした。該塗布層は120℃の加熱により液晶相(Nd相)から等方相へ相転移することが確認できた。130℃で30分間アニール処理後、UVチャンバー:ELC−500(ELCTRO−LITE CORPORATION製)を用いてUV露光を10分間行い、80℃で30分間ベーク処理をして、厚み40nmの発光層を正孔輸送層上に形成した。
【0134】
【化18】

【0135】
(実施例3)
発光層に使用されるホスト材料を、下記構造のホスト液晶化合物H−2(特開平10−321371に記載の化合物)に変更した以外には、実施例2と同様の発光材料を用いた。該塗布層は90℃で液晶相から等方相へ転移するのが確認できた。120℃で30分間アニール処理することで発光層を形成した。陰極としての金属アルミニウムの蒸着の代わりに、緩衝層として銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着法にて厚さ20nmに成膜し、次いで陰極としたAl:Li合金(重量比97:3)をスパッタリング法で成膜した以外には、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0136】
【化19】

【0137】
(実施例4)
正孔輸送層上に、ホスト材料としての下記構造式H−3で表される化合物(融解温度:125℃)4.75質量部と、燐光発光材料として商品名:Ir(ppy)(ケミプロ化成製)0.25質量部とを用い、150℃で30分間のアニール処理を行い、発光層を形成し、かつAD−1を成膜しない以外には、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0138】
【化20】

【0139】
(比較例1)
バンクのみにプラズマ照射されるようにメタルマスクを使用して、バンク上に大気圧プラズマ:S−5000BMを用い、プラズマ照射:1分間(トーチとの距離:5mm、使用ガス:窒素)により、親水化処理を行った。以降は、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0140】
<接触角の測定方法>
接触角計:Drop Master 300(協和界面科学社製)を用いて、純水を2μL滴下し、その接触角を測定した。なお、接触角は10箇所の平均値を代表値とした。
なお、発光層の接触角については、アニール処理とベーク処理まで行った膜の接触角を測定した。
【0141】
<表面粗さRa評価>
塗布直後と、アニール処理後の発光層を、顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)を用いて、観察エリア2.5mm×1.8mmの領域のRaを測定した。
<バンク上の発光層材料の確認>
発光層塗布前後で、バンク上部の形状をレーザーマイクロスコープ:VK−9700(キーエンス製品名)を用い、対物レンズ150倍の観察下で有機物の付着の有無を確認した。
【0142】
【表1】

【0143】
なお実施例1〜4及び比較例1において、正孔輸送層の接触角は87.5°であった。
表1から明らかのように、本発明に係る純水に対する接触角の関係を満たす実施例1〜4ではバンク上部における有機物の付着が無かったのに対し、該関係を満たさない比較例1ではバンク上部における有機物の付着が有った。
なおアニール前後の表面粗さの結果からわかるように、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液は、アニール処理(レベリング処理)によりセルフレベリングし、膜の平滑性が向上する、すなわち、表面粗さが小さくなった。セルフレベリングの特性は、液体の有機物に該当する前記化合物H−3を使用した実施例4において顕著であった。
【符号の説明】
【0144】
1・・・基板
2・・・パシベーション層
3・・・層間絶縁層
4・・・トランジスタ(TFT)
6・・・平坦化層
7・・・透明電極(陽極)
8・・・発光層(有機化合物層)
9・・・対向電極(陰極)
10・・・バンク
11・・・封止層
12・・・接着剤層
13・・・基板
14・・・ビア
100・・・有機電界発光表示装置
21・・・パターニング基板
22・・・基板
23・・・バンク
24・・・画素領域
25・・・発光層
26・・・正孔注入層又は正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、曲率を有するバンクと、該バンクにより区切られた画素領域とを有するパターニンング基板を備えた有機電界発光表示装置の製造方法であって、
前記画素領域に、液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物を含有する塗布液を、パターン状に塗布すること含み、かつ、前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1、前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2、及び前記バンクの純水に対する接触角θ3が下記式(1)及び(2)の関係を満たす、有機電界発光表示装置の製造方法。
|θ2−θ1|<|θ3−θ2| 式(1)
θ2<θ3 式(2)
【請求項2】
前記塗布液が塗布される塗布面の純水に対する接触角θ1≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3である、請求項1に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記塗布液の塗布後、前記パターニング基板への加熱を行うことを含む、請求項1又は2に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記パターニング基板への加熱が、80℃〜220℃で行われる、請求項3に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記バンクが平坦部を有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記液体の有機物若しくは液晶性を有する有機物が、発光層形成用材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記画素領域に形成された正孔注入層又は正孔輸送層上に、前記塗布液を塗布する、請求項6に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記塗布液が塗布される塗布面が正孔注入層又は正孔輸送層の表面であり、該正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4と、前記θ2及びθ3が下記式(3)の関係を満たす、請求項7に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
|θ2−θ4|<|θ3−θ2| 式(3)
【請求項9】
前記正孔注入層又は正孔輸送層の純水に対する接触角θ4≦前記塗布液から形成される膜の純水に対する接触角θ2<前記バンクの純水に対する接触角θ3である、請求項8に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記塗布液が、液晶性を有する有機物を含有し、該液晶性を有する有機物が液晶性を有するトリフェニレン誘導体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記塗布液が、液晶性を有する有機物を含有し、該液晶性を有する有機物が液晶性を有するピレン誘導体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記塗布液が、液体の有機物を含有し、該液体の有機物が80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記80℃〜220℃の範囲に融点を有する有機物が、非対称構造のカルバゾール誘導体である、請求項12に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記非対称構造のカルバゾール誘導体が、下記一般式(ACz)で表される、請求項13に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【化1】

一般式(ACz)中、RAsはtert−ブチル基、tert−アミル基、又はトリメチルシリル基を表す。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の有機電界発光表示装置の製造方法により製造された、有機電界発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−79897(P2012−79897A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223262(P2010−223262)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】