説明

有機ELディスプレイおよびその修復方法

【課題】欠陥画素の発生にもかかわらず、機能を回復することができる有機ELディスプレイを提供する。欠陥画素が発生した際に、有機ELディスプレイを正常に機能できるように、修復する方法を提供する。
【解決手段】有機ELディスプレイは、基板と、x方向に延びるストリップ形状を有する第1電極12と、y方向に延びるストリップ形状を有する第2電極14と、を具備する。第1電極12および第2電極14と、それらに挟まれる有機EL膜13とは、有機EL素子を構成している。第1電極12は、x方向に延びるとともに第2電極14の幅を超える長さを有するスリット17を、有機EL素子領域に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子として機能する複数の有機EL素子から構成される、有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、有機ELディスプレイの基本的な構造を示している。有機ELディスプレイ90は、透明な基板91と、複数の第1電極92と、複数の第2電極94と、を具備している。各第1電極92は、透明な導電材料からなり、x方向に延びるストリップの形状を有している。一方、各第2電極94は、導電材料からなり、x方向と直交するy方向に延びたストリップの形状を有している。複数の有機EL膜93は、マトリクス状に配列されている。各々の有機EL膜93は、1つの第1電極92と1つの第2電極94とによって挟まれている。さらに、有機ELディスプレイ90は、絶縁膜95と、保護膜96と、を具備している。絶縁膜95は、第1電極92と第2電極94との短絡を防ぐためのものであり、絶縁材料からなる。保護膜96は、第2電極94を覆っている。
【0003】
第1電極92と第2電極94を介して、電圧が選択的に有機EL膜93に印加されることにより、有機EL膜93は光を発する。この光は、第1電極92および基板91を順に透過する。ユーザは、基板91の側から、複数の有機EL膜93が作り出す画像を見ることができる。各有機EL膜93は、ユーザが見る画像を構成する画素の1つとして機能する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この有機ELディスプレイ90の製造過程において、ある確率で、欠陥のある有機EL膜93が作られてしまう。欠陥のある有機EL膜93は充分な耐圧を持たない。このため、第1電極92と第2電極94との絶縁が維持できなくなる。こうして短絡した第1電極92および第2電極94は正常に動作できないので、それらに接触するすべての有機EL膜93が発光できなくなる。換言すれば、1つの画素の欠陥は、その画素の機能不全のみならず、1つのライン全体の機能不全を招く。これは、有機ELディスプレイ90の製造歩留まりを低下させる原因となる。
【0005】
したがって、本発明は、欠陥画素の発生にもかかわらず、機能を回復することができる有機ELディスプレイを提供することを目的とする。さらに、本発明は、欠陥画素が発生した際に、有機ELディスプレイを正常に機能できるように、修復する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される有機ELディスプレイは、互いに直交する第1方向および第2方向の両方に広がる基板と、上記基板の上に設けられ、かつ、上記第1方向に延びるストリップ形状を有する第1電極と、上記第2方向に延びるストリップ形状を有する第2電極と、上記第1電極および上記第2電極が交差する有機EL素子領域に設けられ、かつ、上記第1電極および上記第2電極に挟まれている、有機EL膜と、を具備する。上記第1電極は、上記第1方向に延びるとともに上記第2電極の幅を超える長さを有する電極スリットを、上記有機EL素子領域に備えている。
【0007】
好ましくは、上記第1電極は、上記電極スリットに平行であるとともに上記第2電極の幅を超える長さを有する追加スリットを、さらに上記有機EL素子領域に有している。
【0008】
本発明によって提供される有機ELディスプレイの修復方法は、上記第1電極および上記第2電極を介して、電圧を、上記有機EL膜に印加する工程と、上記電圧を印加された上記有機EL膜が正常に発光しているかを調べることによって、上記第1電極および上記第2電極の絶縁を検査する工程と、上記電極スリットから延びる切断線に沿って、上記第1電極をレーザで切断することによって、上記検査する工程において発見された絶縁不良箇所を、上記第1電極から電気的に分離する工程と、からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態を示している。有機ELディスプレイ10は、例えばガラスからなる透明な基板11と、複数の第1電極12と、複数の第2電極14と、を具備している。各第1電極12は、例えばITOなどの透明な導電材料からなり、x方向に延びるストリップの形状を有している。各第1電極12は、特徴的に、スリット17を備えている。一方、各第2電極14は、金属などの導電材料からなり、x方向と直交するy方向に延びたストリップの形状を有している。複数の有機EL膜13は、電圧を印加されることによって発光するものであり、マトリクス状に配列されている。各々の有機EL膜13は、1つの第1電極12と1つの第2電極14とによって挟まれている。さらに、有機ELディスプレイ10は、絶縁膜15と、保護膜16とを具備している。絶縁膜15は、第1電極12と第2電極14との短絡を防ぐためのものであり、絶縁材料からなる。保護膜16は、有機ELディスプレイ10を保護するために第2電極14を覆うものであり、例えば樹脂からなる。
【0010】
図2は、基板11の側から見た有機ELディスプレイ10の平面図である。簡略化のため、同図においては、基板11、絶縁膜15、および、保護膜16は省略されている。1つの第1電極12と、1つの第2電極14とが交差する各領域には、1つの画素として機能する有機EL素子が形成されている。各有機EL素子は、1つの有機EL膜13を含んでいる。スリット17は、その有機EL素子領域に設けられており、かつ、第2電極14の幅、すなわちx方向の長さ、を超える長さを有している。したがって、同図から明らかなように、第2電極14および有機EL膜13のいずれもが、スリット17の中央にのみ配置されており、スリット17の両端には配置されていない。
【0011】
第1電極12と第2電極14を介して、電圧が選択的に有機EL膜13に印加されることにより、有機EL膜13は光を発する。この光は、第1電極12および基板11を順に透過する。ユーザは、基板11の側から、複数の有機EL膜13が作り出す画像を見ることができる。
【0012】
以上に説明した有機ELディスプレイ10が製造された後、出荷される前に、欠陥のある画素を発見するために、動作確認が行われる。以下、図2の絶縁不良箇所Pに起因する欠陥画素が発見された場合を考える。絶縁不良箇所Pは、多くの場合、有機EL膜13が充分な耐圧を持たないために発生する。第1電極12と第2電極14とは絶縁不良箇所Pにおいて短絡している。このため、当該欠陥画素に相当する有機EL素子は発光することができない。加えて、絶縁不良箇所Pを通過する第1電極12および第2電極14もまた、正常に動作することができず、ひいては、画像の1ラインすべての発光が阻害される。
【0013】
このような欠陥画素を持つ有機ELディスプレイ10を修復するために、レーザによる第1電極12の切断が行われる。すなわち、外部から透明な基板11を介してレーザを切断線Lに照射する。この結果、図3に示すように、第1電極12の絶縁不良箇所Pを含む領域は、第1電極12の他の部分から切り離される。これにより、第1電極12と第2電極14との短絡および耐圧不足は解消され、第1電極12および第2電極14は正常に機能することができる。切断線Lはスリット17の両端から延びており、第2電極14と重なりあっていない。このため、レーザによる切断が第2電極14または有機EL膜13を損傷することはない。この処置により、欠陥画素に相当する有機EL素子の半分は、第1電極12を失ったことにより機能できないものの、当該有機EL素子の残りの半分は発光機能を回復する。
【0014】
図4は、本発明の第2実施形態を示している。本実施形態は、1つの有機EL素子領域に、2つのスリットが設けられている点が、第1の実施形態と異なっている。本実施形態の持つ第1実施形態と同一または類似の要素には、同一または類似の参照番号を付し、説明を適宜省略することとする。
【0015】
1つの有機EL素子領域には、互いに平行なスリット17Aおよびスリット17Bが設けられている。これらのスリットのいずれもが、第1実施形態と同様に、第2電極14の幅を超える長さを有している。したがって、同図から明らかなように、第2電極14は、スリット17Aおよびスリット17Bの中央にのみ配置されており、スリット17Aおよびスリット17Bの両端には配置されていない。
【0016】
このような構成によれば、レーザによる絶縁不良箇所Pの分離の際に失われる第1電極12の面積を、より少なくできる。このため、欠陥画素に相当する有機EL素子の、より多くの面積が、発光機能を回復できる。本実施形態においても、レーザによる切断が第2電極14または有機EL膜13を損傷することはないのは明白である。
【0017】
図5は、本発明の第3実施形態を示している。本実施形態は、y方向に延びる3つ目のスリット17Cをさらに有する点が、第2の実施形態と異なっている。このような構成によれば、絶縁不良箇所Pの分離に際して失われる第1電極12の面積を、第2実施形態よりも少なくできる。
【0018】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明の各部の具体的な構成は、適宜に変更可能である。たとえば、1つの有機EL素子領域には3つ以上の平行なスリットが設けられていてもよい。スリットの形状は直線に限られず、曲線であってもよい。複数のスリットからなる、より複雑なパターンが、有機EL素子領域に形成されてもよい。さらに、第2電極がスリットを備えてもよい。この場合、第2電極は、レーザを透過できる材料からなる保護膜の側から照射されるレーザによって、切断されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機ELディスプレイの構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機ELディスプレイの構造を示す平面図である。
【図3】修復された有機ELディスプレイを示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る有機ELディスプレイの構造を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る有機ELディスプレイの構造を示す平面図である。
【図6】従来の有機ELディスプレイの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
10 有機ELディスプレイ
11 基板
12 第1電極
13 有機EL膜
14 第2電極
15 絶縁膜
16 保護膜
17、17A、17B、17C スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1方向および第2方向の両方に広がる基板と、
上記基板の上に設けられ、かつ、上記第1方向に延びるストリップ形状を有する第1電極と、
上記第2方向に延びるストリップ形状を有する第2電極と、
上記第1電極および上記第2電極が交差する有機EL素子領域に設けられ、かつ、上記第1電極および上記第2電極に挟まれている、有機EL膜と、
を具備する有機ELディスプレイであって、
上記第1電極は、上記第1方向に延びるとともに上記第2電極の幅を超える長さを有する電極スリットを、上記有機EL素子領域に備えていることを特徴とする、有機ELディスプレイ。
【請求項2】
上記第1電極は、上記電極スリットに平行であるとともに上記第2電極の幅を超える長さを有する追加スリットを、さらに上記有機EL素子領域に有している、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項3】
互いに直交する第1方向および第2方向の両方に広がる基板と、上記基板の上に設けられ、かつ、上記第1方向に延びるストリップ形状を有する第1電極と、上記第2方向に延びるストリップ形状を有する第2電極と、上記第1電極および上記第2電極が交差する有機EL素子領域に設けられ、かつ、上記第1電極および上記第2電極に挟まれている、有機EL膜と、を具備するものであり、かつ、上記第1電極は、上記第1方向に延びるとともに上記第2電極の幅を超える長さを有する電極スリットを、上記有機EL素子領域に備えている、有機ELディスプレイ、を修復する方法であって、
上記第1電極および上記第2電極を介して、電圧を、上記有機EL膜に印加する工程と、
上記電圧を印加された上記有機EL膜が正常に発光しているかを調べることによって、上記第1電極および上記第2電極の絶縁を検査する工程と、
上記電極スリットから延びる切断線に沿って、上記第1電極をレーザで切断することによって、上記検査する工程において発見された絶縁不良箇所を、上記第1電極から電気的に分離する工程と、
からなる、有機ELディスプレイの修復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−37841(P2009−37841A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200655(P2007−200655)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】