説明

有機ELディスプレイ

【課題】 OLEDディスプレイにおいて発光効率を低下しにくくし、劣化現象を起きにくくすることにある。
【解決手段】
有機ELディスプレイは、基板と、前記基板上に配置され、第1の有機発光層を有する第1の色表示部分、及び、前記第1の有機発光層と異なる発光スペクトルを有する第2の有機発光層を有する第2の色表示部分を含む画素と、を備える。前記第1の色表示部分は、2つの副画素を有し、前記2つの副画素のいずれか一方はカラーフィルターを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティブマトリクスによる有機ELディスプレイ(OLEDディスプレイ)の開発が盛んにおこなわれている。有機ELディスプレイは、高速応答、高コントラスト、薄型などの特長を有するためである。
【0003】
カラーの有機ELディスプレイでは、RGBの3原色を発色するために、マトリクス状に形成された各画素はRを表示する赤表示画素、Bを表示する緑表示画素、Gを表示する青表示画素から構成されている。
【0004】
従来のOLEDディスプレイは、出現頻度の高い淡色を表示させるのに効率の悪いRやBの副画素の発光を利用するため、発光効率が低くなる。また、従来の白色発光する副画素を有するOLEDディスプレイは、白以外の色の表示を行なうためには効率の高いWの副画素からの発光を利用したとしても、残りの色をカラーフィルターのある他の副画素で補う必要があり、残りの色の発光効率が低くなる、という問題がある。
【0005】
また、発光効率が低い画素で明るい表示をさせようとすると、発光層に流れる電流を増加する必要があるため、発光効率が経時とともに低下するという劣化現象がおきやすくなる、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2002−0186214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、OLEDディスプレイにおいて発光効率を低下しにくくし、劣化現象を起きにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
有機ELディスプレイは、基板と、前記基板上に配置され、第1の有機発光層を有する第1の色表示部分、及び、前記第1の有機発光層と異なる発光スペクトルを有する第2の有機発光層を有する第2の色表示部分を含む画素と、を備える。前記第1の色表示部分は、2つの副画素を有し、前記2つの副画素のいずれか一方はカラーフィルターを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態による有機ELディスプレイの一部断面図。
【図2】第1の実施形態による有機ELディスプレイの一部平面図。
【図3】第1の実施形態による有機ELディスプレイの副画素の等価回路図。
【図4】第1の実施形態による有機ELディスプレイの有機発光層の発光スペクトルを示す図。
【図5】第1の実施形態による有機ELディスプレイのカラーフィルターの透過スペクトルを示す図。
【図6】第1の実施形態による有機ELディスプレイの第1の赤表示副画素、第1の緑表示副画素、第1の青表示副画素を透過した光スペクトルを示す図。
【図7】CIE1931xy色度図において第1の実施形態による有機ELディスプレイの各副画素からの光スペクトルの座標を示す図。
【図8】第2の実施形態による有機ELディスプレイの一部断面図。
【図9】第2の実施形態による有機ELディスプレイの一部平面図。
【図10】第2の実施形態による有機ELディスプレイの有機発光層の発光スペクトルを示す図。
【図11】第2の実施形態による有機ELディスプレイのカラーフィルターの透過スペクトルを示す図。
【図12】第2の実施形態による有機ELディスプレイの第1の赤表示副画素、第1の青表示副画素を透過した光スペクトルを示す図。
【図13】CIE1931xy色度図において第2の実施形態による有機ELディスプレイの各副画素からの光スペクトルの座標を示す図。
【図14】第3の実施形態による有機ELディスプレイの一部断面図。
【図15】第3の実施形態による有機ELディスプレイの一部平面図。
【図16】第3の実施形態による有機ELディスプレイの有機発光層の発光スペクトルを示す図。
【図17】第3の実施形態による有機ELディスプレイのカラーフィルターの透過スペクトルを示す図。
【図18】第3の実施形態による有機ELディスプレイの有機発光層の赤表示副画素、緑表示副画素、第1の青表示副画素を透過した光スペクトルを示す図。
【図19】CIE1931xy色度図において第3の実施形態による有機ELディスプレイの各副画素からの光スペクトルの座標を示す図。
【図20】第4の実施形態における有機ELディスプレイの有機発光層を示す断面拡大図。
【図21】第4の実施形態における他の有機ELディスプレイの有機発光層を示す断面拡大図。
【図22】比較例1の有機ELディスプレイを示す一部断面図。
【図23】CIE1931xy色度図において比較例1の有機ELディスプレイにおける各副画素の発光スペクトルを示すxy色座標。
【図24】映像信号での色の発生頻度の例を示す図。
【図25】比較例2の有機ELディスプレイを示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1実施形態によるアクティブマトリクス型薄膜トランジスタ(TFT)と組合わせた有機ELディスプレイは、複数の画素がマトリクス状に配置されている。有機ELディスプレイの一部断面図を図1に、平面図を図2に示す。図2の一点破線で囲まれた内側が1画素を表す。図1は図2のXX線断面図である。この有機ELディスプレイは、基板側から光を放出するボトムエミッション型のディスプレイである。
【0012】
透明な絶縁性基板1の上には、薄膜トランジスタ(TFT)アレイにより、マトリクス状の画素が形成されている。それぞれの画素は赤表示部分11、緑表示部分12、青表示部分13から構成され、赤表示部分11、緑表示部分12、青表示部分13はそれぞれ2つの副画素から構成されている。赤表示部分11は、第1の赤表示副画素14aと第2の赤表示副画素14bとを有する。緑表示部分12は、第1の緑表示副画素14bと第2の緑表示副画素15bとを有する。青表示部分13は、第1の青表示副画素14cと第2の青表示副画素15 cとを有する。すなわち、本実施例では1つの画素は6つの副画素から構成されていることになる。
【0013】
基板1上には1つの副画素につき画素回路3が1つずつ形成されている。第1の赤色表示副画素14a、第1の緑色表示副画素14b、第1の青色表示副画素14cそれぞれは、画素回路3上に第1の平坦化層161が設けられており、第1の平坦化層161上に主に赤色、緑色、青色の光を透過するカラーフィルター18a、18b、18cが設けられている。カラーフィルター18a、18b、18cの間および上面には第2の平坦化層162が設けられている。第1の赤表示副画素14a、第2の赤表示副画素15a、第1の緑表示副画素14b、第2の緑表示副画素15b、第1の青表示副画素14cと第2の青表示副画素15 cそれぞれの第2の平坦化層162上には、有機EL構造23が形成されている。すなわち、平坦化層162に近い方から、画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29cと、有機EL層35と、カソード電極20が設けられている。各画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29c同士の間にはバンク30が設けられている。
【0014】
画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29cおよびバンク30上には有機EL層35が形成されている。有機EL層35は、基板1に近い側から正孔注入層36、正孔輸送層32、有機発光層19a、19b、19c、電子輸送層33が積層されて形成されている。赤色表示画素11の正孔輸送層32上には赤色の光を主に含む第1の発光スペクトルを持つ有機発光層19aが設けられている。緑色表示画素12の正孔輸送層32上には緑色の光を主に含む第2の発光スペクトルを持つ有機発光層19bが設けられている。青色表示画素13の正孔輸送層32上には青色の光を主に含む第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19cが設けられている。
【0015】
電子輸送層33上には、カソード電極20が設けられており、カソード電極20上には保護膜34が設けられている。
【0016】
副画素の画素回路3の等価回路図を図3に示す。基板1上には、選択TFTを駆動するための走査線24、表示信号を印可するための信号線25、OLEDに電流を供給するためのVDD電源供給線26、蓄積容量線31が形成されている。一つの副画素には、蓄積容量27と、表示信号を蓄積容量27に書き込むための選択TFT21と、有機EL23と、有機EL23と直列に接続され、有機EL23に流れる電流量を制御する駆動TFT22とが形成されている。ここでは、一つの副画素に2つのTFTを含む回路構成を記載しているが、3つ以上のTFTを含む回路としても構わない。
【0017】
このような画素を有する有機ELディスプレイの製造方法の一例について説明する。まず、基板上に上述の画素回路3を形成する。走査線24、信号線25、VDD電源供給線26、蓄積容量線31と、選択TFT21、駆動TFT22は同時に形成することができる。絶縁性基板1としては、無アルカリガラス基板や、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのプラスチックフィルムを用いればよい。また、TFTは低温ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化物半導体等の材料をチャネル層に用いればよいが、これらに限らない。画素回路3上には透明な樹脂製の第1の平坦化層161を形成して上面を平坦にしておく。
【0018】
続いて、第1の赤表示副画素14aに赤色カラーフィルター18aを、第1の緑表示副画素14bに緑色カラーフィルター18bを、第1の青表示副画素14cに青色カラーフィルター18cを、順次フォトリソグラフィ法により形成する。カラーフィルターには透過スペクトルに対応した顔料や感光性材料を含んだ樹脂などを用いればよく、1〜2μmの膜厚で形成する。この時、第2の赤表示副画素15a、第2の緑表示副画素15b、第2の青表示副画素15cにはいずれのカラーフィルターも形成されない。
【0019】
続いて、透明有機樹脂からなる第2の平坦化層162を全面に形成し、カラーフィルターを形成することで生じた基板表面の凹凸を平坦化する。第2の赤表示副画素15a、第2の緑表示副画素15b、第2の青表示副画素15c上にも平坦化層を設ける。このとき、6つの副画素の高さは同等である。
【0020】
続いて、全ての副画素それぞれに透明導電膜からなる画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29cを形成する。画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29cは有機EL23のアノード電極として機能し、ITO膜や、ITO/銀/ITO積層膜などで、膜厚は100nm程度に形成する。第1の赤表示副画素14aの画素電極28a、第1の緑表示副画素14bの画素電極28b、第1の青表示副画素14cの画素電極28cはそれぞれ赤色カラーフィルター18a、緑色カラーフィルター18b、青色カラーフィルター18cと重なるように配置する。
【0021】
続いて、それぞれの画素電極28a、29a、28b、29b、28c、29c間にバンク30を形成する。バンク30はポリイミドやアクリルなどの樹脂を用いればよく、感光性を有する材料をフォトリソグラフィ法により膜厚0.2μm〜2μm程度で形成することができる。
【0022】
続いて、第1の赤表示副画素14a、第2の赤表示副画素15aに、正孔注入層36、正孔輸送層32、第1の発光スペクトルを持つ有機発光層19a、電子輸送層33を順次形成する。形成方法としてはマスク蒸着や、インクジェットによる印刷を用いることができる。正孔注入層36としてはDNTPD(N,N’-[p-di(m-tolyl)aminophenyl]-N,N’-diphenyl bendizine)やF4−TCNQなどを、正孔輸送層32としてはNPB(Napthylphenylbiphenyl)やTPD誘導体([{(Ph−Ph)2N−Ph−}2])などを、電子輸送層34としてはAlq3などを用いればよいが、これに限らない。また、必要に応じて電子輸送層33上に電子注入層を形成してもよい。また、第1の発光スペクトルを持つ有機発光層19aを形成する有機発光材料としては、ホスト材料の中にドーパント材料が分散されたものを用いる。例えば、ジフェニルキノキサリン−イリジウム化合物などのIr錯体のドーパント材料とAlq3(Tris−(8−hydroxyquinoline) aluminum)などのホスト材料を用いればよいが、これに限らない。第1の緑表示副画素14aと第2の緑表示副画素15b、第1の青表示副画素14cと第2の青表示副画素15cにも、同様にして正孔注入層36、正孔輸送層32、有機発光層、電子輸送層33を積層する。第1の緑表示副画素14a、第2の緑表示副画素15bに設ける有機発光層としては、第2の発光スペクトルを持つ有機発光層19bを形成する。第1の青表示副画素14c、第2の青表示副画素15cには、第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19cを形成する。第2の発光スペクトルを持つ有機発光層19bとしては、fac-tris(2-phenylpyridine) iridium complex(Ir(ppy)3)などのドーパント材料に用い、4,4’,4’’-tris(N-carbazolyl)-triphenyl-amine(TCTA)、4,4’-(N-carbazolyl)-biphenyl(CBP)などをホスト材料に用いた有機発光材料で形成することができる。第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19bとしては、iridium(III) bis[(4,6-di-fluorophenyl)-pyridinate-N,C2’] picolinate(FIrpic)などをドーパント材料に用い、2,2’-bis(4-carbazolylphenyl)-1,1’-biphenyl(4CZPBP)などをホスト材料に用いた有機発光材料で形成することができる。有機発光層19a、19b、19cの材料は、これらに限られない。
【0023】
さらに、電子輸送層33を覆うようにカソード電極20を形成する。カソード電極20としては、マグネシウム−銀等を用いればよい。さらに、全体を覆うように保護膜34を形成する。このようにして、ボトムエミッション型の有機ELディスプレイを形成できる。
【0024】
ここで、有機発光層19a、19b、19cの発光スペクトルを図4に、カラーフィルター18a、18b、18cの透過スペクトルを図5に示す。有機発光層19aの第1の発光スペクトルを図4(a)に、有機発光層19bの第2の発光スペクトルを図4(b)に、有機発光層19cの第3の発光スペクトルを図4(c)に示す。それぞれの図の縦軸の目盛りは同じである。
【0025】
第2の赤表示副画素15a、第2の緑表示副画素15b、第2の青表示副画素15cにはカラーフィルターが無いため、その3つの副画素からの発光はそれぞれ第1の発光スペクトル、第2の発光スペクトル、第3の発光スペクトルによって定まる。図7は、CIE1931xy色度図である。第1の発光スペクトル、第2の発光スペクトル、第3の発光スペクトルのピーク波長の座標は、図7の丸で囲まれた点15a、15b、15cに示すようになり、その三点を結んでできる、実線で示した三角形に囲まれた範囲は、カラーフィルターが無い第2の赤表示副画素15a、第2の緑表示副画素15b、第2の青表示副画素15cからの発光の組み合わせのみで表示できる。このため、この領域にある淡色の表示はカラーフィルターによる光利用効率の低下が発生しない。
【0026】
一方、第1の赤表示副画素14a、第1の緑表示副画素14b、第1の青表示副画素14cはそれぞれ第1、第2、第3の発光スペクトルがカラーフィルターを透過した後の光を用いており、そのスペクトルは図6に示すようになる。これらのCIE1931xy色度図での座標は図7の三角で囲まれた点14a、14b、14cに示すようになり、その三点を結んでできる、点線で示した三角形の大きさは、実線で示した三角形よりも大きい。実線で示した三角形の外側にあり、点線で示した三角形の内側にある濃色の表示色に対しては、第1の赤表示副画素14a、第1の緑表示副画素14b、第1の青表示副画素14cからの発光を利用して再現すればよいため、色再現域を広く取ることができる。
【0027】
このような構造をとることで、淡色の表示を行なう際には、効率が高く、色座標の異なる発光スペクトルを持つ複数の有機発光層からの発光を組み合わせればよく、カラーフィルターでの光利用効率の低下が生じない。また、カラーフィルターと組み合わせた副画素を用いることで広い色再現域を持つため、濃色の表示を行なうことも可能となる。白や淡色の発生頻度が高く、濃色も含まれるコンテンツを表示する際に、淡色の表示を行なう際の効率を高くでき、淡色の表示が多いディスプレイにおいて消費電力を低減することができる。また、同じ輝度の表示を行なうための電流量を低減できるため、発光効率が経時とともに低下するという有機EL層35の劣化現象を抑制できる。
【0028】
なお、本実施形態は一例であり、発明の範囲はこれに限定されない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本実施例においては、カラーフィルターは基板と画素電極との間に設けられることとしたが、有機発光層の上に設けることとしても良い。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2実施形態による有機ELディスプレイを、図面を用いて説明する。本実施形態の有機ELディスプレイは、複数の画素がマトリクス状に配置されており、1つの画素は5つの副画素から構成されている。有機ELディスプレイの一部断面図を図8に、平面図を図9に示す。図8は図9のYY線断面図である。
【0030】
透明な絶縁性基板1の上に、画素がマトリクス状に形成された薄膜トランジスタ(TFT)アレイを形成する。絶縁性基板1としては、無アルカリガラス基板や、PENなどのプラスチックフィルムを用いればよい。また、TFTは低温ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化物半導体等の材料をチャネル層に用いればよいが、これらに限らない。それぞれの画素は、第1の赤表示副画素14aと第2の赤表示副画素15aとを有する赤表示部分11、緑表示部分である緑表示副画素114b、第1の青表示副画素14cと第2の青表示副画素15cとを有する青表示部分13から構成される。赤表示部分11と青表示部分13はそれぞれ2つの副画素から構成されるが、発光効率の高い緑表示部分は分割されない。
【0031】
第1の赤表示副画素14aの上層には主に赤色の光を透過するカラーフィルター18aが設けられている。第1の青表示副画素14cの上層には、主に青色の光を透過するカラーフィルター18cが設けられている。緑表示副画素114bの上層には、カラーフィルターは設けられていない。他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0032】
画素回路3の等価回路図を図3に示す。一つの副画素には、蓄積容量27と、表示信号を蓄積容量27に書き込むための選択TFT21と、有機EL23と、有機EL23と直列に接続され、有機EL23に流れる電流量を制御する駆動TFT22が形成されている。
このような画素を有する有機ELディスプレイは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、基板1上に上述のような画素回路3を形成する。画素回路3上には透明な樹脂で第1の平坦化層161を形成して、上面を平坦にする。
【0033】
その後、第1の赤表示副画素14aに赤色カラーフィルター18aを、第1の青表示副画素14cに青色カラーフィルター18cを、順次フォトリソグラフィ法により形成する。カラーフィルター18a、18cには透過スペクトルに対応した顔料や感光性材料を含んだ樹脂などを用いればよく、フォトリソグラフィ法により1〜2μmの膜厚で形成する。この時、第2の赤表示副画素15a、緑表示副画素114b、第2の青表示副画素15cにはいずれのカラーフィルターも形成されない。
【0034】
続いて、透明有機樹脂からなる第2の平坦化層162を全面に形成し、カラーフィルターを形成することで生じた基板表面の凹凸を平坦化する。カラーフィルターが設けられていない第2の赤表示副画素15a、緑表示副画素114b、第2の青表示副画素15c上にも第2の平坦化層162を形成する。
【0035】
続いて、全ての副画素に透明導電膜からなる画素電極28a、29a、128b、28c、29cを形成する。画素電極28a、29a、128b、28c、29cは有機EL23のアノード電極として機能し、ITO膜や、ITO/銀/ITO積層膜などで、膜厚は100nm程度とすればよい。第1の赤表示副画素14aの画素電極28a、第1の青表示副画素14cの画素電極28cはそれぞれ赤色カラーフィルター18a、青色カラーフィルター18cと重なるように配置する。
【0036】
続いて、それぞれの画素電極28a、29a、128b、28c、29cの端部を覆うようにバンク30を形成する。バンク30はポリイミドやアクリルなどの樹脂を用いればよく、感光性を有する材料をフォトリソグラフィ法により膜厚0.2μm〜2μm程度で形成することができる。
【0037】
続いて、第1の赤表示副画素14a、第2の赤表示副画素15aに、正孔注入層36、正孔輸送層32、第1の発光スペクトルを持つ有機発光層19a、電子輸送層33を順次形成する。形成方法としてはマスク蒸着や、インクジェットによる印刷を用いることができる。正孔注入層36としてはDNTPD(N,N’-[p-di(m-tolyl)aminophenyl]-N,N’-diphenyl bendizine)やF4−TCNQなどを、正孔輸送層32としてはNPB(Napthylphenylbiphenyl)やTPD誘導体([{(Ph−Ph)2N−Ph−}2])などを、電子輸送層34としてはAlq3などを用いればよいが、これに限らない。また、必要に応じて電子輸送層の上に電子注入層を形成してもよい。緑表示副画素114b、青表示画素13上にも、同様にして正孔注入層36、正孔輸送層32、有機発光層、電子輸送層33を積層する。緑表示副画素114bに設ける有機発光層としては、第2の発光スペクトルを持つ緑色有機発光層119bを用いる。第1の青表示画素13に設ける有機発光層としては、第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19cを形成する。
【0038】
さらに、電子輸送層33を覆うようにカソード電極20を形成する。カソード電極20としては、マグネシウム−銀等を用いればよい。さらに、全体を覆うように保護膜34を形成する。このようにして、有機ELディスプレイの画素を形成できる。
【0039】
ここで、有機発光層19aの第1の発光スペクトルを図10(a)に、有機発光層19bの第2の発光スペクトルを図10(b)に、有機発光層19cの第3の発光スペクトルを図10(c)に示す。カラーフィルターの透過スペクトルを図11に示す。
【0040】
第2の赤表示副画素15a、緑表示副画素114b、第2の青表示副画素15cにはカラーフィルターが無いため、その3つの副画素からの発光はそれぞれ第1の発光スペクトル、第2の発光スペクトル、第3の発光スペクトルによって定まる。第1の発光スペクトル、第2の発光スペクトル、第3の発光スペクトルのピーク波長は、図13に示すCIE1931xy色度図で、丸で囲まれた点15a、114b、15cに示すように表される。この三点を結んでできる、実線で示した三角形に囲まれた範囲は、カラーフィルターが無い第2の赤表示副画素15a、緑表示副画素114b、第2の青表示副画素15cからの発光の組み合わせのみで表示できる。このため、この領域にある淡色の表示はカラーフィルターによる光利用効率の低下が発生しない。
【0041】
一方、第1の赤表示副画素14a、第1の青表示副画素14cはそれぞれ第1、第3の発光スペクトルがカラーフィルターを透過した後の光を用いており、そのスペクトルは図12に示すようになる。第1の赤表示副画素14a、第1の青表示副画素14cのスペクトルのCIE1931xy色度図での座標は図13の三角で囲まれた点14a、14cに示すようになる。点14a、14cと緑表示副画素114bの第2の発光スペクトル114bの三点を結んでできる、点線で示した三角形の大きさは、実線で示した三角形よりも大きい。実線で示した三角形の外側にあり、点線で示した三角形の内側にある表示色に対しては、第1の赤表示副画素14a、緑表示副画素114b、第1の青表示副画素14cからの発光を利用して再現すればよいため、色再現域を広く取ることができる。
【0042】
緑色有機発光層19bとして、図13のAに示される範囲となるスペクトルの発光をする材料を選択しても、Bに示される範囲のスペクトルの発光をする材料を選択しても、緑色の量子効率は大きく変わらない。従ってこのような緑表示副画素は、カラーフィルターを設けなくても濃い色を表示することができる。
【0043】
このような構造をとることで、実線で示した三角形の内側の色の表示を行なう際には、効率が高く、色座標の異なる発光スペクトルを持つ複数の有機発光層からの発光を組み合わせればよく、カラーフィルターでの光利用効率の低下が生じない。また、青や赤ではカラーフィルターと組み合わせた副画素を用いることで広い色再現域を持つため、実線で示した三角形の外側であり、かつ点線で示した三角形の内側の色の表示を行なうことも可能となる。白や淡色の発生頻度が高く、濃色も含まれるコンテンツを表示する際に、淡色の表示を行なう際の効率を高くでき、淡色の表示が多いディスプレイにおいて消費電力を低減することができる。また、同じ輝度の表示を行なうための電流量を低減できるため、発光効率が経時とともに低下するという劣化現象を抑制できる。
【0044】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3実施形態による有機ELディスプレイを、図面を用いて説明する。本実施形態の有機ELディスプレイは、複数の画素がマトリクス状に配置されており、1つの画素は5つの副画素から構成されている。有機ELディスプレイの一部断面図を図14に、平面図を図15に示す。図14は図15のZZ線断面図である。
【0045】
すなわち、1つの画素は赤緑表示部分136と青色表示部分13とを有する。赤緑表示画素136は、赤表示副画素114aと緑表示副画素114bと赤緑表示副画素115dとを有する。青色表示画素13は、第1の青表示副画素14cと第2の青表示副画素15cとを有する。赤表示副画素114aの上層には主に赤色の光を透過するカラーフィルター18aが設けられている。緑表示副画素114bの上層には主に緑色の光を透過するカラーフィルター114bが設けられている。第1の青表示副画素14cの上層には主に青色の光を透過するカラーフィルター18cが設けられている。
【0046】
赤緑色表示画素136の上層には、更に、第4の発光スペクトルを有し、赤緑色に発光する有機発光層119eが設けられている。青色表示画素13の上層には、更に、第3の発光スペクトルを有し青色に発光する有機発光層19cが設けられている。他の構成については第1の実施形態と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0047】
このような有機ELディスプレイの製造方法の一例は次のようである。すなわち、透明な絶縁性基板1の上に、画素がマトリクス状に形成された薄膜トランジスタ(TFT)アレイを含む図3の等価回路で示されるような回路を形成する。絶縁性基板1としては、無アルカリガラス基板や、PENなどのプラスチックフィルムを用いればよい。また、TFTは低温ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化物半導体等の材料をチャネル層に用いればよいが、これらに限らない。それぞれの画素は赤緑表示画素136、青表示部分13から構成され、赤緑表示画素136は3つの、青表示部分13は2つの副画素から構成される。すなわち、本実施例では1つの画素は5つの副画素から構成されていることになる。
【0048】
副画素の画素回路3の等価回路図を図3に示す。一つの副画素には、蓄積容量27と、表示信号を蓄積容量27に書き込むための選択TFT21と、有機EL23と、有機EL23と直列に接続され、有機EL23に流れる電流量を制御する駆動TFT22を構成している。ここでは、一つの副画素に2つのTFTを含む回路構成を記載しているが、3つ以上のTFTを含む回路としても構わない。
【0049】
このような画素を有する有機ELディスプレイの製造方法の一例について説明する。
【0050】
まず、基板1の上に上述のような画素回路3を形成する。画素回路3上には、透明な樹脂で平坦化層161を形成する。続いて、緑赤表示画素136の副画素の一つである赤表示副画素114aに赤色カラーフィルター18aを、緑赤表示画素136の副画素の一つである緑表示副画素114bに緑色カラーフィルター18bを、青表示部分13の副画素の一つである第1の青表示副画素14cに青色カラーフィルター18cを、順次フォトリソグラフィ法により形成する。カラーフィルターには透過スペクトルに対応した顔料や感光性材料を含んだ樹脂などを用いればよく、フォトリソグラフィ法により1〜2μmの膜厚で形成する。この時、緑赤表示画素136の副画素の一つである緑赤表示副画素115d、青表示部分13の副画素の一つである第2の青表示副画素15cにはいずれのカラーフィルターも形成されない。
【0051】
続いて、透明有機樹脂からなる第2の平坦化層162を全面に形成し、カラーフィルターを形成することで生じた基板表面の凹凸を平坦化する。カラーフィルターが設けられていない緑赤表示副画素115d、第2の青表示副画素15cの上にも第2の平坦化層162が設けられている。このときそれぞれの副画素の高さはほぼ同等になっている。
【0052】
続いて、全ての副画素に透明導電膜からなる画素電極128a、129d、128b、28c、29cを形成する。画素電極128a、129d、128b、28c、29cは有機EL23のアノード電極として機能し、ITO膜や、ITO/銀/ITO積層膜などで、膜厚は100nm程度とすればよい。
【0053】
赤表示副画素114aの画素電極128a、緑表示副画素114bの画素電極128b、第1の青表示副画素14cの画素電極28cはそれぞれ赤色カラーフィルター18a、緑色カラーフィルター18b、青色カラーフィルター18cと重なるように配置する。
【0054】
続いて、それぞれの画素電極128a、129d、128b、28c、29cの端部を覆うようにバンク30を形成する。バンク30はポリイミドやアクリルなどの樹脂を用いればよく、感光性を有する材料をフォトリソグラフィ法により膜厚0.2μm〜2μm程度で形成することができる。
【0055】
続いて、赤表示副画素114a、緑表示副画素114b、緑赤表示副画素115dに、正孔注入層36、正孔輸送層32、第4の発光スペクトルを持つ有機発光層19a、電子輸送層33を順次形成する。形成方法としてはマスク蒸着や、インクジェットによる印刷を用いることができる。正孔注入層36としてはDNTPD(N,N’-[p-di(m-tolyl)aminophenyl]- N,N’-diphenyl bendizine)やF4−TCNQなどを、正孔輸送層32としてはNPB(Napthylphenylbiphenyl)やTPD誘導体([{(Ph−Ph)2N−Ph−}2])などを、電子輸送層34としてはAlq3などを用いればよいが、これに限らない。また、必要に応じて正孔注入層や電子注入層を形成してもよい。また、第4の発光スペクトルを持つ有機発光層19aとしてはジフェニルキノキサリン−イリジウム化合物などのIr錯体をドーパント材料として用い、Alq3(Tris−(8−hydroxyquinoline) aluminum)などをホスト材料として用いたものを挙げられるが、これに限らない。
【0056】
同様に、第1の青表示副画素14c、第2の青表示副画素15cに、正孔注入層36、正孔輸送層32、第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19c、電子輸送層33を積層する。
【0057】
さらに、電子輸送層33を覆うようにカソード電極20を形成する。カソード電極20としては、マグネシウム−銀等を用いればよい。さらに、全体を覆うように保護膜34を形成する。このようにして、絶縁性透明基板1の側から光を取出すボトムエミッション型の有機ELディスプレイを形成できる。
【0058】
ここで、第4の発光スペクトルを持つ有機発光層119e、第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19cの発光スペクトルを図16に、カラーフィルターの透過スペクトルを図17に示す。有機発光層119cの発光スペクトルを図16(a)に示し、有機発光層19cの発光スペクトルを図16(b)に示す。
【0059】
赤緑表示副画素115d、第2の青表示副画素15cにはカラーフィルターが無いため、その3つの副画素からの発光はそれぞれ第4の発光スペクトル、第3の発光スペクトルによって定まる。第4の発光スペクトル、第3の発光スペクトルのピーク波長は、CIE1931xy色度図での座標はそれぞれ図19の点A´、点B´に示すようになる。
【0060】
また、赤表示副画素114a、緑表示副画素114b、第1の青表示副画素14cはカラーフィルターを透過した後の光を用いており、そのスペクトルは図18に示すようになり、それぞれのスペクトルはxy色度座標系でそれぞれ点C、点D、点Eに示すようになる。
【0061】
すなわち、三角形A´B´Cで囲まれる範囲の色を表現するには第2の青表示副画素15c、緑赤表示副画素115d、赤表示副画素114aのみを発光させればよく、また三角形A´B´Dで囲まれる範囲の色を表現するには第2の青表示副画素15c、緑赤表示副画素115d、緑表示副画素114bのみを発光させればよい。このため、三角形A´B´Cまたは三角形A´B´Dで囲まれた範囲の色を表示する際にはカラーフィルターによる光利用効率の低下が少なく、線A´B´に近い範囲では赤表示副画素114aや緑表示副画素114bの発光は弱くてよいため、カラーフィルターによる光利用効率の低下をより少なく抑えることができる。
【0062】
点114a、点114b、14cで囲まれる三角形の内側にあるが、三角形A´B´Cまたは三角形A´B´Dの外側にある範囲の色を表示するには、カラーフィルターが形成された副画素である赤表示副画素114a、緑表示副画素114b、第1の青表示副画素14cのうち2つ以上を発光する必要があり、光利用効率は低くなるが、色再現域を広く取ることができる。
【0063】
このような構造をとることで、淡色の表示を行なう際には、効率が高く、色座標の異なる発光スペクトルを持つ複数の有機発光層からの発光を組み合わせればよく、カラーフィルターでの光利用効率の低下を少なく抑えることができる。また、カラーフィルターと組み合わせた副画素を用いることで広い色再現域を持つため、濃色の表示を行なうことも可能となる。白や淡色の発生頻度が高く、濃色も含まれるコンテンツを表示する際に、淡色の表示を行なう際の効率を高くでき、淡色の表示が多いディスプレイにおいて消費電力を低減することができる。また、同じ輝度の表示を行なうための電流量を低減できるため、発光効率が経時とともに低下するという劣化現象を抑制できる。
【0064】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、有機EL層が縦方向に複数積層された、いわゆる積層構造を有する有機ELディスプレイについて説明する。図20に有機EL層が2層、図21に有機EL層が3層積層された構成の一部断面拡大図を示す。いずれの有機ELディスプレイにおいても、第2の平坦化層162と、第2の平坦化層162上に設けられた画素電極28と、画素電極28の上に設けられた複数の有機EL層と、有機EL層の上に設けられたカソード電極20を有する。
【0065】
図20に示す有機EL層は、画素電極28に近いほうから、第1の正孔注入層36a、第1の正孔輸送層32a、有機発光層219a、第1の電子輸送層33a、第1の電荷生成層37a、第2の正孔注入層36b、第2の正孔輸送層32b、有機発光層219b、第2の電子輸送層33bが設けられている。
【0066】
図21に示す有機EL層は、第2の電子輸送層33bの上に第2の電荷生成層37bが設けられており、第2の電荷生成層37bの上に第3の正孔注入層36c、第3の正孔輸送層33c、有機発光層219c、第3の電子輸送層33cが積層されている。
【0067】
他の構成については、第1の実施形態と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0068】
有機発光層219aと有機発光層219bと有機発光層219cの発光スペクトルは、それぞれ異なる。例えば2層の有機発光層の場合、画素電極28に近い方の有機発光層219aが青色に発光し、他方の有機発光層219bが赤緑色に発光することとする。このような有機EL層は、2つの有機発光層の光が足し合わされて、例えば青色成分を多く含む白色や、緑色成分を多く含む白色、赤色成分を多く含む白色に発光する。有機発光層219a、219b、219cに含まれるドーパント材料の量を変えると、発光色を調整することができる。従って、赤表示部分、緑表示部分、青表示部分それぞれに形成する有機発光層を同じ材料で形成し、ドーパント材料の量を変えることによって、発光スペクトルを変えることとしても良い。
【0069】
このような有機EL層を第1の実施形態の有機ELディスプレイに用いる場合には、この有機EL層を2つの副画素に形成し、一方の副画素にはカラーフィルターを設け、他方の副画素にはカラーフィルターを設けない。例えば有機EL層が青色成分を多く含む白色に発光することとし、この有機EL層が設けられた2つの副画素のうちの一方には青色の光を透過するカラーフィルターをもうけることとする。カラーフィルターが設けられていない方の副画素では、淡色の青色を高い効率で表示することができる。またカラーフィルターが設けられた方の副画素では、濃色の青色を表示することができる。
【0070】
図21のように3層の有機EL層を形成する場合には、例えば、3つの有機発光層のうち画素電極28に近い有機発光層219aは青色に発光し、中央の有機EL層219bは緑色に発光し、カソード電極20に近い有機発光層219cは赤色に発光することとする。
【0071】
このような有機EL層の製造方法の一例は以下の通りである。画素電極28上に第1の正孔注入層36a、第1の正孔輸送層32a、第1の発光スペクトルを持つ有機発光層19a、第1の電子輸送層33aを順次形成後、第1の電荷生成層37aを形成する。
【0072】
続いて、第1の電荷生成層37aの上に第2の正孔注入層36b、第2の正孔輸送層32b、第2の発光スペクトルを持つ有機発光層19b、第2の電子輸送層33bを順次形成後、第2の電荷生成層37bを形成する。
【0073】
続いて、図21に示すように有機EL層を3層にする場合には、第2の電荷生成層37bの上にさらに第3の正孔注入層36c、第3の正孔輸送層32c、第3の発光スペクトルを持つ有機発光層19c、第3の電子輸送層33cを順次形成する。
【0074】
有機EL層が2層の場合には第2の電子輸送層33bの上に、有機EL層が3層の場合には第3の電子輸送層33cの上にカソード電極20を形成する。
【0075】
積層されたOLED層を構成する複数の層のうちの一部について、異なる副画素で同一の層を使用してもよい。また、異なる副画素の有機発光層において、ホスト材料を共通とし、ドーパント材料の濃度や種類を変えることで、副画素からの発光スペクトルを制御してもよい。
【0076】
このように、有機EL層を積層構造にすることによっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、4層以上の複数の積層構造からなる有機EL層を形成することも可能である。
【0077】
(比較例1)
比較例1の有機ELディスプレイの画素断面構造を図22に示す。それぞれの画素は赤表示副画素114a、緑表示副画素114b、青表示副画素114cから構成されており、それぞれの副画素は赤色有機発光層119a、緑色有機発光層119b、青色有機発光層119cを持つ。いずれの副画素にもカラーフィルターは設けられていない。画素回路3を覆う平坦化層16の上には画素電極28が形成されている。他の構成については第1の実施形態と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0078】
このような構造において、色再現域を決めているのはR、G、Bの有機発光層119a、119b、119cの発光スペクトルである。図23に、CIE1931xy色度図と、赤色有機発光層119a、緑色有機発光層119b、青色有機発光層119cの発光スペクトル座標を示す。このような有機ELディスプレイは、R、G、Bそれぞれの発光スペクトルから定まる色座標で形成された三角形の内側のみ再現することができる。図23では、赤色有機発光層119aのピーク波長を114a、緑色有機発光相119bのピーク波長を114b、青色有機発光層119cのピーク波長を114cで表している。すなわち、ディスプレイが広い色域を再現するには、R、G、Bの発光スペクトルから定まるCIE1931xy色度図上の点が色度図の端の方にある必要がある。例えば、青い色を表示するためには、Bのみ発光させればよく、白や白っぽい淡色を表示するためには、R、G、Bそれぞれを発光させる必要がある。
【0079】
図24は実際の映像信号での色の発生頻度の例を色座標上でヒストグラムとして表示したものであり、色座標の中心にある淡色の表示が多いことがわかる。一般に、青や赤の発光効率は淡色の発光効率より低く、特に青は純度が高くなる、すなわち色座標においてx座標、y座標の値が小さくなると発光効率は低くなる。このため、色再現域を広くするためにR、Bの純度を高くすると、頻度の高い淡色を表示する際の発光効率が低くなってしまう虞がある。
【0080】
(比較例2)
比較例2の有機ELディスプレイの画素断面構造を図25に示す。それぞれの画素は赤表示副画素114a、緑表示副画素114b、青表示副画素114c、白表示副画素114dから構成されている。有機発光層19は赤、緑、青の波長を含む白色OLED材料を用いている。赤表示副画素114aには赤色カラーフィルター18aが、緑表示副画素114bには緑色カラーフィルター18bが、青表示副画素114cには青色カラーフィルター18cが形成されている。このような方式では、R、G、Bのカラーフィルターを透過した後のスペクトルから定まる色座標で形成された三角形の内側のみ再現することができる。カラーフィルターを透過した光を用いて表示する場合には、広い波長域で発光した光の一部のみ利用することになるため、純度の高い色を表示する際には発光効率が低くなるものの、白を表示させる場合にはWの画素の光を利用すればよいため、第1のOLEDディスプレイと比較して発光効率が高くなる。淡色を表示するためには、できるだけWで発光させ、足りない分だけをR、G、Bで補っている。例えば、淡い赤色を表示したい場合には、WとRの副画素のみ発光させて、GとBの副画素は発光させなければよいため、カラーフィルターを透過しない、効率のよいWの副画素からの発光を有効に利用できる。しかしながら、R、G、Bの副画素からの発光ではカラーフィルターによる効率の低下が生じてしまう虞がある。
【符号の説明】
【0081】
1 絶縁性基板
3 画素回路
11 赤表示部分
12 緑表示部分
13 青表示部分
14a 第1の赤表示副画素
14b 第1の緑表示副画素
14c 第1の青表示副画素
15a 第2の赤表示副画素
15b 第2の緑表示副画素
15c 第2の青表示副画素
161 第1の平坦化層
162 第2の平坦化層
18a 赤色カラーフィルター
18b 緑色カラーフィルター
18c 青色カラーフィルター
19 有機発光層
19a 第1の発光スペクトルを持つ有機発光層
19b 第2の発光スペクトルを持つ有機発光層
19c 第3の発光スペクトルを持つ有機発光層
20 カソード電極
21 選択TFT
22 駆動TFT
23 有機EL
24 走査線
25 信号線
26 VDD電源供給線
27 蓄積容量
28 画素電極
28a 第1の赤表示副画素の画素電極
28b 第1の緑表示副画素の画素電極
28c 第1の青表示副画素の画素電極
29a 第2の赤表示副画素の画素電極
29b 第2の緑表示副画素の画素電極
29c 第2の青表示副画素の画素電極
30 バンク
31 蓄積容量線
32 正孔輸送層
32a 第1の正孔輸送層
32b 第2の正孔輸送層
32c 第3の正孔輸送層
33 電子輸送層
33a 第1の電子輸送層
33b 第2の電子輸送層
33c 第3の電子輸送層
34 保護層
35 有機EL素子
36 正孔注入層
36a 第1の正孔注入層
36b 第2の正孔注入層
36c 第3の正孔注入層
37 電荷生成層
37a 第1の電荷生成層
37b 第2の電荷生成層
114a 赤表示副画素
114b 緑表示副画素
114c 青表示副画素
114d 白表示副画素
115d 緑赤表示副画素
119a 赤色有機発光層
119b 緑色有機発光層
119c 青色有機発光層
119d 有機発光層
119e 第1の発光スペクトルを持つ有機発光層
128a 赤表示副画素の画素電極
128b 緑表示副画素の画素電極
129d 緑赤表示副画素の画素電極
136 緑赤表示画素
219a 有機発光層
219b 有機発光層
219c 有機発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、第1の有機発光層を有する第1の色表示部分、及び、前記第1の有機発光層と異なる発光スペクトルを有する第2の有機発光層を有する第2の色表示部分を含む画素と、
を備え、
前記第1の色表示部分は、2つの副画素を有し、
前記2つの副画素のいずれか一方はカラーフィルターを有する有機ELディスプレイ。
【請求項2】
前記画素はさらに、前記第1の有機発光層および前記第2の有機発光層と異なる発光スペクトルを有する第3の有機発光層が設けられた第3の色表示部分を備える、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項3】
前記第1の色表示部分、前記第2の色表示部分、および前記第3の色表示部分は、それぞれカラーフィルターが設けられた副画素とカラーフィルターが設けられていない副画素を有する、請求項2に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項4】
前記第1の色表示部分、前記第2の色表示部分、および前記第3の色表示部分のうち、カラーフィルターが形成された3つの副画素により再現される色域は、カラーフィルターが形成されていない3つの副画素により再現される色域より広い、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項5】
前記第1の色表示部分、前記第2の色表示部分、および前記第3の色表示部分のうちの2つの色表示部分はそれぞれカラーフィルターを有する副画素とカラーフィルターを有しない副画素の2つの副画素を有する、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項6】
前記第1の色表示画素は第1の光透過スペクトルを有する第1のカラーフィルターが設けられた第1の副画素と、第2の光透過スペクトルを有する第2のカラーフィルターが設けられた第2の第2の副画素と、カラーフィルターが設けられていない第3の副画素とを有する、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項7】
前記カラーフィルターは、前記カラーフィルターと同じ副画素に設けられた発光層の光スペクトルよりも狭い波長範囲の光を透過する請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項8】
前記第1の有機発光層および前記第2の有機発光層の少なくとも一方は、異なる発光スペクトルを有する有機発光材料が積層された、請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項9】
前記第1の有機発光層および前記第2の有機発光層は、ホスト材料とドーパント材料を有する有機発光材料が積層され、
前記第1の有機発光層および前記第2の有機発光層は同じ材料で形成されており、含まれるドーパント材料の濃度が異なる、請求項8に記載の有機ELディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−69436(P2012−69436A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214423(P2010−214423)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】