説明

有機ELパネル

【課題】 温度上昇を抑制することができる有機ELパネルを提供する。
【解決手段】 有機ELパネル11は、少なくとも第一電極17と有機層20と第二電極21とを有する積層体13を基板12に形成し、有機層20を覆う封止部材14を設けたものである。熱伝導層16は、基板12に形成され、封止部材14から一部が露出する。放熱部材15は、封止部材14から露出した熱伝導層16の一部に設けられる。放熱部材15は、複数の放熱フィン15aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一電極と第二電極の間に有機層を挟持した有機EL素子を含む積層体を基板上に形成した有機ELパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機ELパネルを種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。有機ELパネル1は、ガラス基板2上に積層体3を形成したものであり、この積層体3は、第一電極4,絶縁層5,有機層6,アルミニウム(Al)からなる第二電極7を有する(図7参照)。第一電極4は、ITO(Indium Tin Oxide)からなるものである。有機層6は、蒸着等の方法によって正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層及び電子注入層を順次形成したものである。
【特許文献1】特開2003−288984号公報
【0003】
積層体3は封止ガラス8に覆われており、この封止ガラス8はガラス基板2に紫外線硬化性の接着剤9で固着されている。第一電極4は、陽極部4aと、陰極端子部4bとを有している。有機層6は、陽極部4aと第二電極7に挟持されており、第二電極7は、陰極端子部4bに電気的に接続されている。陽極部4a及び陰極端子部4bに電源を接続し、陽極部4aと第二電極7の間に駆動電圧を印加することにより、有機層6が発光する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機ELパネル1の発光表示に伴って、有機ELパネル1の温度が上昇し、有機層6が劣化する虞があった。つまり、駆動電圧の印加によって有機層6が発熱し、この熱によって有機層6が劣化し、有機ELパネル1の発光輝度が低下するという問題があった。本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、有機層の発熱による温度上昇を抑制することができる有機ELパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、請求項1に記載したように、少なくとも第一電極17と有機層20と第二電極21とを有する積層体13を基板12に形成し、前記有機層20を覆う封止部材14を設けた有機ELパネル11において、前記基板12に形成され前記封止部材14から一部が露出する熱伝導層16を設けたものである。
【0006】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記封止部材14から露出した前記熱伝導層16の前記一部に放熱部材15を設けたものである。
【0007】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記放熱部材15は、複数の放熱フィン15aを有するものである。
【0008】
また、本発明は、請求項4に記載したように、少なくとも第一電極17と有機層20と第二電極21とを有する積層体13を基板12に形成し、前記有機層20を覆う封止部材24を設けた有機ELパネル11において、前記有機層20が発した熱を前記封止部材24に伝える熱伝導層16を前記基板12に形成したものである。
【0009】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記封止部材24は、金属材料からなるものである。
【0010】
また、本発明は、請求項6に記載したように、前記熱伝導層16は不導体材料からなり、前記第一電極17は前記熱伝導層16に形成されるものである。
【発明の効果】
【0011】
基板に熱伝導層を形成し、この熱伝導層を介して、有機層の発熱を放出することができ、有機ELパネルの温度上昇が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を添付の図面に基づいて説明する。図1乃至図4は、第一実施形態を示すものである。
有機ELパネル11は、ガラス基板12上に積層体13を形成すると共に、封止ガラス14(封止部材)及びヒートシンク15(放熱部材)を設けたものである。積層体13は、熱伝導層16,第一電極17,絶縁層18,リブ部19,有機層20,第二電極21を有している。
【0013】
熱伝導層16は、窒化アルミニウム(AlN)等の不導体材料からなるものであり、ガラス基板12の片面の略全域に形成されている。第一電極17は、酸化インジウム(InO)と酸化スズ(SnO)の混合物であるITO(Indium
Tin Oxide)からなるものであり、スパッタリング或いは蒸着等の手段によって、熱伝導層16上に形成されている。第一電極17は、所定間隔をあけて配置された縦方向のストライプ状の陽極部17aと、第二電極21の陰極部21aに導通される陰極端子部17bとを有している。
【0014】
絶縁層18は、ポリイミド系の絶縁材料からなるものであり、フォトリソグラフィー法等の手段によって形成されている。絶縁層18は、有機層20よりも広い領域に形成されており、マトリクス状に配置された画素に対応する矩形の開口18aと、陰極端子部17bと陰極部21aを電気的に接続させるコンタクトホール18bとを有している。
【0015】
リブ部19は、フェノール系の絶縁材料からなるものであり、フォトリソグラフィー法等の手段によって形成されている。リブ部19は、絶縁層18上に形成されており、逆テーパ形状になっている。リブ部19は、陽極部17aと直交する方向に平行線状に設けられており、有機層20及び第二電極21をストライプ状に分断する。
【0016】
有機層20は、正孔注入層20a,正孔輸送層20b,発光層20c及び電子輸送層20dからなるものであり、白色発光するものである(図4参照)。なお、有機層20は、少なくとも発光層20cがあれば良いが、本実施形態のように正孔注入層20a,正孔輸送層20b及び電子輸送層20dを設けることにより、発光輝度を向上させることができる。第二電極21は、アルミニウム(Al)からなるものであり、リブ部19によって、第一電極17の陽極部17aに直交する方向のストライプ状に分断され、陰極部21aが形成されている。
【0017】
封止ガラス14には凹部14aが設けられており、紫外線硬化性の接着剤22によって、ガラス基板12に形成された熱伝導層16上に接合されている。ヒートシンク15は、アルミニウム(Al)からなるものであり、複数の放熱フィン15aを有している。ヒートシンク15は、封止部材14から露出した熱伝導層16の一部にシリコーン系材料からなる熱伝導性の接着剤23によって接合されている。
【0018】
第一実施形態によれば、有機層20が発した熱は、熱伝導層16を介して、ヒートシンク15から放出されるため、有機ELパネル11の温度上昇を抑制することができる。なお、ヒートシンク15は無くとも良く、図5に示す第二実施形態のように、熱伝導層16の一部が封止ガラス14から露出していれば良い。
【0019】
図6は、第三実施形態を示す図である。第三実施形態は、封止キャップ24(封止部材)及び接着剤32が異なるだけであり、他の構成は第一実施形態と同一であるので、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0020】
封止キャップ24は、アルミニウム(Al)等の金属材料からなるものであり、凹部24a及びフランジ部24bを有するキャップ形状になっている。封止キャップ24は、接着剤32によって、フランジ部24bで熱伝導層16上に接合されている。
第三実施形態によれば、有機層20が発した熱は、熱伝導層16を介して、金属材料からなる封止キャップ24から放出されるため、有機ELパネル11の温度上昇を抑制することができる。
【0021】
なお、本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、銀(Ag)等の導体材料にて熱伝導層16を形成し、熱伝導層16と第一電極17の間に絶縁層を設けても良いが、熱伝導層16を不導体材料にて形成することによって、熱伝導層16と第一電極17の間には絶縁層が不要になり、熱伝導層16上に第一電極17を形成することができる。また、熱伝導層16の材料は、窒化アルミニウムに限定されるものではなく、例えば、酸化アルミニウムであっても良い。また、各実施形態は、ドットマトリクス型の有機ELパネル11であったが、セグメント型の有機ELパネルであっても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態を示す断面図。
【図3】同上実施形態を示す断面図。
【図4】同上実施形態を示す有機層の拡大正面図。
【図5】本発明の第二実施形態を示す断面図。
【図6】本発明の第三実施形態を示す断面図。
【図7】従来例を示す断面図。
【符号の説明】
【0023】
11 有機ELパネル
12 ガラス基板(基板)
13 積層体
14 封止ガラス(封止部材)
15 ヒートシンク(放熱部材)
16 熱伝導層
17 第一電極
17a 陽極部
17b 陰極端子部
20 有機層
21 第二電極
21a 陰極部
24 封止キャップ(封止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一電極と有機層と第二電極とを有する積層体を基板に形成し、前記有機層を覆う封止部材を設けた有機ELパネルにおいて、
前記基板に形成され前記封止部材から一部が露出する熱伝導層を設けたことを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記封止部材から露出した前記熱伝導層の前記一部に放熱部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記放熱部材は、複数の放熱フィンを有することを特徴とする請求項2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
少なくとも第一電極と有機層と第二電極とを有する積層体を基板に形成し、前記有機層を覆う封止部材を設けた有機ELパネルにおいて、
前記有機層が発した熱を前記封止部材に伝える熱伝導層を前記基板に形成したことを特徴とする有機ELパネル。
【請求項5】
前記封止部材は、金属材料からなることを特徴とする請求項4に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
前記熱伝導層は不導体材料からなり、前記第一電極は前記熱伝導層に形成されることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の有機ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−210216(P2006−210216A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22522(P2005−22522)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】