説明

有機EL基板検査装置及び検査方法

【課題】撮像画像から精度よく隔壁と有機発光層を判別し、表示装置に重大な欠陥を与える欠陥モードのみを検出する検査装置および検査方法を提供すること。
【解決手段】TFT基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層の上にパターン配列された隔壁及び有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査装置であって、前記有機EL基板を載置しXY平面上を移動させる試料移動手段と、前記有機EL基板の有機発光層側へ照明光を照射する光照射手段と、前記有機EL基板からの反射光を電気信号に変換し、データ化する撮像手段と、前記撮像手段により得られた画像データに対して演算処理を行う画像処理手段とを有し、前記画像処理手段において、以下の処理を行うことを特徴とする有機EL基板検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL基板を用いた表示装置は、薄型であることによる省スペース性及び軽量性、10V程度の印加電圧であっても高輝度な発光が得られるなどの特徴から、近年ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
有機EL基板は、エンボス加工や隔壁により区切られた空間に、発光可能な電子材料層を保持し、その電子材料層を一対の電極間に挟持する構造を有する。電極間に電圧を印加することにより、電子材料層の発光層に正孔と電子が注入され、エレクトロルミネセンス発光現象が発生し、表示装置として機能する。
【0004】
電極としては、光を取り出す側に例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極を用い、対向する基板に例えばアルミニウムなどの反射金属電極を用いる。
【0005】
電子材料は、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を積層したものである。発光層は、有機電子材料が用いられている。正孔輸送層や電子輸送層は発光層の発光効率を増大させるために用いられている。
【0006】
このような構成において、両電極より各々電子と正孔を、電子輸送層及び正孔輸送層を介して発光層に注入し、発光層において電子と正孔を再結合させて発光させる。カラー映像を表示させる表示装置は三原色(RGB)の有機EL(素子)画素を順序良く基板上に並べた構造となっており、それぞれの有機EL素子がサブピクセルとなる。
【0007】
表示装置の駆動方式として、アクティブマトリクス方式が挙げられる。この方式においては、薄膜トランジスタ(TFT)を設けた基板上に各層を形成する。発光層からの発光をTFT基板の反対側から取り出す構造(トップエミッション構造)とすることで、TFT基板上の配線に関係なく光を取り出せるので、開口率を上げることが可能である。
【0008】
上記の構成でTFT基板上に有機ELパネルが形成されるが、最終的な表示装置として機能するためには、外部からの酸素や水分の侵入を防ぐために、例えばガラスのような透明な基板で封止する必要がある。
【0009】
上記の構成で、有機EL素子上に異物または発光層の抜け(白抜け)が存在する場合、そのまま封止工程を経て表示装置として駆動させた場合、その素子にかかる電圧は異物や白抜けの箇所を通じて電流となって流れてしまうため、素子全体が非発光状態(滅点)となってしまう。そのため、封止工程前に有機EL基板全体の異物・白抜け検査を行う必要がある。
【0010】
また、有機EL基板の白抜け検査に関しては、基板全体のうち、実際に発光するエリアだけに限定されてよい。なぜならば、隔壁上で白抜けが発生しても、隔壁上はもともと発光しないため表示装置上での欠陥とはならない。そのため、白抜け検査に関しては、検査エリアを適切に限定して行うことが求められる。
【0011】
有機EL基板の検査に関しては系統だった検査技術は報告されていないが、繰り返しパターンを有する基板の外観検査に関しては、特許文献1で採用されている比較処理を行う方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−71521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、撮像画像から精度よく隔壁と有機発光層を判別し、表示装置に重大な欠陥を与える欠陥モードのみを検出する検査装置および検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、TFT基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層の上にパターン配列された隔壁及び有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査装置であって、
前記有機EL基板を載置しXY平面上を移動させる試料移動手段と、
前記有機EL基板の有機発光層側へ照明光を照射する光照射手段と、
前記有機EL基板からの反射光を電気信号に変換し、データ化する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに対して演算処理を行う画像処理手段とを有し、前記画像処理手段において、以下の処理を行うことを特徴とする有機EL基板検査装置である。
[a]前記画像データの注目画素に対して、前記有機EL基板の持つ繰り返しピッチ分だけ離れた点を比較画素とし、注目画素に対して上下左右方向に位置する比較画素4点を設定する。
[b]前記注目画素と前記比較画素の輝度値を参照し、予め設定した閾値Bを超える輝度値を持つ画素が3点以上の場合、前記注目画素を隔壁部と判定し、閾値Bを超える輝度値を持つ前記比較画素が2点以下の場合、前記注目画素を有機発光層部と判定する。
[c]前記注目画素と前記比較画素の輝度値5点をソートし、前記注目画素の輝度値とソート処理した中央値との差分を行う。
[d]前記差分値に対する閾値Dを隔壁部および有機発光層部の各々に予め別々に設定しておき、前記注目画素が隔壁部の場合は、隔壁部における閾値D1を超えた該注目画素を隔壁部欠陥とし、前記注目画素が有機発光層部の場合は、有機発光層部における閾値D2を超えた該注目画素を有機発光層部欠陥と判定する。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記光照射手段の発光スペクトルが単一波長であり、好ましくは800nm〜850nm付近に発光ピークを持つことを特徴とする請求項1に記載の有機EL基板検査装置である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記有機EL基板からの反射光のうち、正反射光のみを前記撮像手段においてデータ化し、好ましくは前記光照射手段および前記撮像手段が、前記有機EL基板に対する垂直面から40°〜45°傾いた配置をとることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL基板検査装置である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、前記画像処理手段において、前記閾値D2を正負の各々に予め設定しておき、正の閾値を超えた前記注目画素を白欠陥、負の閾値を越えた前記注目画素を黒欠陥と分類し、前記有機発光層部において検出された白欠陥を前記有機発光層の抜けに由来したもの、黒欠陥を前記有機発光層上に存在する異物に由来したものと判定し、前記隔壁部において検出された黒欠陥のうち、予め設定した閾値Eを超えた該黒欠陥を前記隔壁部上に存在する異物に由来するものと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL基板検査装置である。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、TFT基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層の上にパターン配列された隔壁及び有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査方法であって、
前記有機EL基板を載置しXY平面上を移動させる試料移動手段と、
前記有機EL基板の有機発光層側へ照明光を照射する光照射手段と、
前記有機EL基板からの反射光を電気信号に変換し、データ化する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに対して演算処理を行う画像処理手段とを用いて、前記画像処理手段において、以下の処理を行うことを特徴とする有機EL基板検査方法である。
[a]前記画像データの注目画素に対して、前記有機EL基板の持つ繰り返しピッチ分だけ離れた点を比較画素とし、注目画素に対して上下左右方向に位置する比較画素4点を設定する。
[b]前記注目画素と前記比較画素の輝度値を参照し、予め設定した閾値Bを超える輝度値を持つ画素が3点以上の場合、前記注目画素を隔壁部と判定し、閾値Bを超える輝度値を持つ前記比較画素が2点以下の場合、前記注目画素を有機発光層部と判定する。
[c]前記注目画素と前記比較画素の輝度値5点をソートし、前記注目画素の輝度値とソート処理した中央値との差分を行う。
[d]前記差分値に対する閾値Dを隔壁部および有機発光層部の各々に予め別々に設定しておき、前記注目画素が隔壁部の場合は、隔壁部における閾値D1を超えた該注目画素を隔壁部欠陥とし、前記注目画素が有機発光層部の場合は、有機発光層部における閾値D2を超えた該注目画素を有機発光層部欠陥と判定する。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、前記光照射手段の発光スペクトルが単一波長であり、好ましくは800nm〜850nm付近に発光ピークを持つことを特徴とする請求項5に記載の有機EL基板検査方法である。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、前記有機EL基板からの反射光のうち、正反射光のみを前記撮像手段においてデータ化し、好ましくは前記光照射手段および前記撮像手段が、前記有機EL基板に対する垂直面から40°〜45°傾いた配置をとることを特徴とする請求項5または6に記載の有機EL基板検査方法である。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、前記画像処理手段において、前記閾値Dを正負の各々に予め別々に設定しておき、正の閾値を超えた前記注目画素を白欠陥、負の閾値を越えた前記注目画素を黒欠陥と分類し、前記有機発光層部において検出された白欠陥を前記有機発光層の抜けに由来したもの、黒欠陥を前記有機発光層上に存在する異物に由来したものと判定し、前記隔壁部において検出された黒欠陥のうち、予め設定した閾値Eを超えた該黒欠陥を前記隔壁部上に存在する異物に由来するものと判定することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の有機EL基板検査方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、有機EL基板の品質検査において、基板上に存在する欠陥のうち、隔壁上の異物、有機発光層上の異物や抜けを検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の検査対象である有機EL基板を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る有機基板検査装置の模式図。(a)有機EL基板検査装置全体を示す図。(b)光照射部と撮像部の光学配置を表した模式図。
【図3】有機EL基板を撮像した時に得られる画像の中の特徴を説明するための図。(a)画像の模式図。(b)画像のラインプロファイル。
【図4】本発明に係る比較処理を説明するための図。(a)注目画素と比較画素を説明するための図。(b)比較処理後を説明するための図。
【図5】本発明に係る検査処理を説明するためのフローチャート図。
【図6】検査処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の検査対象である有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板を模式的に示す図である。検査対象である有機EL基板は、透光性基板6上にTFT素子4がパターン配置されており、その上に隔壁3が形成されている。隔壁3で区切られたエリア内では、透明電極層5および、透明機能層2、有機発光層1が積層されている。また、有機発光層1は赤色、緑色、青色の発光ピークを持つ有機電子材料で順々に繰り返し配置されている。
【0026】
なお、有機EL基板の構成としては、透明電極、機能性材料、有機電子材料で構成されていればよく、機能性材料には種々の材料が使用されていても構わない。
【0027】
透光性基板6はガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートによって構成されている。プラスチック製のフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートを用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。透明電極層5が形成されたい他方の面に、セラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレンー酢酸ビニル共重合体鹸化物などのガスバリア性フィルムを積層してもよい。
【0028】
透明電極層5の材質としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化インジウム・亜鉛(IZO)や亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物、酸化錫(SnO2)や酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムなどを用いることが出来る。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体を塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法によって形成することが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0029】
隔壁3は有機発光層1が混合することを防止するため、囲いの形状をしている。隔壁3はポジ型またはネガ型の感光性樹脂によって構成されており、透光性基板6上にスピンコータやバーコータ、ロールコータ、ダイコータ、グラビアコータ等の塗布方法を用いて感光性樹脂を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を用いて所定の形状にパターニングされることによって形成される。適用可能な感光性樹脂としては、ポリイミド系やアクリル樹脂系、ノボラック樹脂系が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
透明機能層2として正孔輸送層を配する。正孔輸送層は透明電極層5より注入された正孔を対向電極方向へ進め、正孔を通しながらも電子が透明電極層5方向へ進行することを防止する機能を有している。また、正孔輸送層は機能性材料である正孔輸送材料の溶解液または分散液をスピンコートやバーコート、ワイヤーコート、スリットコートなどのウェ
ットコーティング法を用いて形成することが出来るが、これに限定されるものではない。
【0031】
透明機能層2としての正孔輸送層に使用可能な材料としては、ポリアニン誘導体、ポリチオフィン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、PEDOT(ポリ(3,4−エチレチオキシオフォン))PEDOTとポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)との混合物などが挙げられる。また、溶解または分散させる溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シキロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などのうちいずれかまたはこれらの混合液が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、上述した正孔輸送材料の溶解液または分散液には、必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などを添加してもよい。
【0032】
透明機能層2としての正孔輸送層は隔壁形成後に積層されるため、隔壁3によって囲まれた箇所では中央が平坦で、隔壁3近傍で膜厚が厚くなってしまう。つまりは、隔壁3によって囲まれた箇所での透明機能層2はバスタブ型になる。
【0033】
有機発光層1は透明電極と対向電極との間に電圧を印加することによって発光する機能性材料であって、赤色、緑色または青色の機能性材料の溶解液または分散液を、所定位置の隔壁3内部の透明機能層2上に付着することにより形成される。形成方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
図2は、本発明に係る有機基板検査装置の概略を示している。
【0035】
検査対象物である有機EL基板10は試料移動手段であるステージ11上に載置される。有機EL基板10の有効範囲全てを撮像部8で撮像できるようにするため、ステージ11はXY方向への移動が出来るようになっている。
【0036】
ステージ11表面には、位置決めピンを差し込むための穴を規則的な配列で予め形成しておき、有機EL基板10の形状や大きさが変化した場合でも、位置決めを容易に行える機構としてもよい。また、ステージ11表面は、光照射部9からの光をなるべく反射しないような色で塗装したりツヤ消し加工を施したり、さらにはステージ移動時に位置ズレを発生しないようなすべり止めの機能を持つ材質を備えることが好ましい。
【0037】
撮像手段である撮像部8には電荷結合素子(Charge Coupled Device)を用いているが、これに限定されるものではない。光照射手段である光照射部9には850nm付近に発光ピークを持つLED光源を用いているが、これに限定されるものではない。また、撮像部8と光照射部9および有機EL基板10の位置関係は図2(b)で示すような配置をとり、有機EL基板10に対して45°傾いて入射した光の正反射を捉える配置となっているが、この配置に限定されるものではない。
【0038】
撮像部8において得られた有機EL基板10からの反射光を電気信号に変換し、画像処理手段である画像処理部7に伝送する。画像処理部7にて、以下で示すようなデータ処理を行い、有機EL基板10上に存在する欠陥を抽出する。
【0039】
図3に図2(b)で示した光学配置で撮像した際の、輝度値のラインプロファイルを示す。図3(a)のなかの矢印12で示す位置の、輝度値を0から255(すなわち256段階で)プロットしている。有機発光層ありの場合を参照すると、有機発光層がない隔壁13と有機発光層14では輝度が異なっていることが分かる(最大50程度)。このことにより、適切な閾値を用いれば、輝度値により隔壁13と有機発光層14を判別すること
ができる。
【0040】
また、有機発光層ありと有機発光層なしのラインプロファイルを比較すると、有機発光層14のエリアにおいては、輝度が異なっていることが分かる(最大30程度)。このことにより、可視光に対して透明性をもつ有機発光層14においても、45°正反射配置かつ850nm単一波長光源を用いれば、精度よく有機発光層の抜けを発見することが出来る。
【0041】
次に、十字比較処理の概略を示す。図4で示すように、注目画素16に対して比較対象となる点を上下左右方向4点設定する。上下方向に対しては、同色のセルが並んでいるので、最隣接セルを対象として、繰り返しピッチPn離れた点を比較画素15、18とする。また、左右方向に対しては、3つのセル(赤色、緑色、青色)で1表示ピクセルを構成しているので、繰り返しピッチPm離れた点を比較画素17、19とする。
【0042】
注目画素16、比較画素15、17、18、19の計5点の輝度をソート処理し、注目画素の輝度値と中央値との差分を行う。注目画素16の輝度値を、算出した差分値に適当なオフセット値(例えば128)を加えた値で置き換えることにより、図4(b)に示すように、繰り返しパターンが消去され、欠陥20のみが特徴点として出現する。
【0043】
上述した基板部位と輝度値の関係、および十字比較処理を用いることにより、検出すべき欠陥のみを抽出できる。詳細な処理内容について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
まず、図2の有機EL検査装置の撮像部8で有機EL基板10を撮像して、得られた画像データを画像処理部7に転送する(図5のステップS1)。この際、画像データの各画素の輝度値は4bit〜10bit程度のデジタルデータとして量子化されるのが一般的であり、本実施形態では8bit(0〜255)の形式をとっている。
【0045】
注目画素16の設定は、より詳しく図6に示したように、撮像画像から得られた画素(1,1)座標の画素を起点として設定する(図5のステップS2)。ここで、図6の座標(1,1)は有効検査エリア内の撮像時刻の一番早い時点で取り込まれた画像データの座標で、(m,n)は一番遅い時刻に取り込まれた画像データの座標を示す。
【0046】
次に、比較画素を、注目画素から1パターンピッチ離れた画素すなわち(10,1)座標の画素に設定する(図5のステップS3)。図では、注目画素に対して右方向に位置する比較画素のみ示されているが、実際は上下左右方向に位置する比較画素4点を設定する。繰り返しパターン端部では、比較画素の設定が不適切になってしまう場合があるが、その場合は比較画素数を減らすなどの処理を行えばよい。
【0047】
次に、注目画素16のエリア判定を行う(図5のステップS4)。図3(b)で示したように、隔壁3と有機発光層1では輝度値が大きく異なるので、その間に閾値Bを設定しておくことにより、注目画素16が隔壁3または有機発光層1のどちらに位置しているのかを判定することが出来る。エリア判定には注目画素16と比較画素15、17、18、19の計5点の輝度値を用いる。各々閾値Bと比較し、エリアを判定する。そこで、過半数を占めるエリアを注目画素16の位置するエリアと判定する(図5のステップS5)。この処理により、欠陥が存在した時の誤判定を防ぐことが出来る。
【0048】
注目画素16が隔壁3と判定された場合(図5のステップS6)、注目画素16と比較画素15、17、18、19の間で比較処理を行い(図5のステップS8)、差分値が閾値D1を超えた画素を欠陥候補と判定する(図5のステップS12)。検出された欠陥が
黒欠陥だった場合(図5のステップS14)、差分値と閾値Eを比較し、閾値Eを超えた場合に(図5のステップS17)、隔壁3上の異物が検出されたと判定する。閾値Eを設ける理由は、隔壁3上にも有機発光層1の塗工残りが存在する場合があり、その塗工残りの膜厚差が黒欠陥として検出される場合があるからである。両者の輝度値は大きく異なっているため、閾値Eで判別することが可能である。
【0049】
注目画素16が有機発光層1と判定された場合、(図5のステップS7)、注目画素16と比較画素15、17、18、19の間で比較処理を行い(図5のステップS9)、差分値が閾値D2を超えた画素を欠陥候補と判定する。検出された欠陥候補が白欠陥だった場合は有機発光層1の抜けと判定し(図5のステップS15)、黒欠陥だった場合は有機発光層1上の異物と判定する(図5のステップS16)。
【0050】
上記の処理を繰り返すことにより(図5のステップS20)、基板全体の中で検出された欠陥のモードを判別し、検出したい欠陥のみを抽出することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の有機EL基板検査装置および検査方法によれば、有機EL基板上に存在する欠陥のうち、隔壁上の異物、有機発光層上の異物・抜けを判別して、検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・有機発光層
2・・・透明機能層
3・・・隔壁
4・・・TFT素子
5・・・透明電極層
6・・・透光性基板
7・・・画像処理部
8・・・撮像部
9・・・光照射部
10・・・有機EL基板
11・・・ステージ
12・・・ラインプロファイルの方向
13・・・隔壁部のプロファイル
14・・・有機発光層部のプロファイル
15・・・比較画素
16・・・注目画素
17・・・比較画素
18・・・比較画素
19・・・比較画素
20・・・欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFT基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層の上にパターン配列された隔壁及び有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査装置であって、
前記有機EL基板を載置しXY平面上を移動させる試料移動手段と、
前記有機EL基板の有機発光層側へ照明光を照射する光照射手段と、
前記有機EL基板からの反射光を電気信号に変換し、データ化する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに対して演算処理を行う画像処理手段とを有し、前記画像処理手段において、以下の処理を行うことを特徴とする有機EL基板検査装置。[a]前記画像データの注目画素に対して、前記有機EL基板の持つ繰り返しピッチ分だけ離れた点を比較画素とし、注目画素に対して上下左右方向に位置する比較画素4点を設定する。
[b]前記注目画素と前記比較画素の輝度値を参照し、予め設定した閾値Bを超える輝度値を持つ画素が3点以上の場合、前記注目画素を隔壁部と判定し、閾値Bを超える輝度値を持つ前記比較画素が2点以下の場合、前記注目画素を有機発光層部と判定する。
[c]前記注目画素と前記比較画素の輝度値5点をソートし、前記注目画素の輝度値とソート処理した中央値との差分を行う。
[d]前記差分値に対する閾値Dを隔壁部および有機発光層部の各々に予め別々に設定しておき、前記注目画素が隔壁部の場合は、隔壁部における閾値D1を超えた該注目画素を隔壁部欠陥とし、前記注目画素が有機発光層部の場合は、有機発光層部における閾値D2を超えた該注目画素を有機発光層部欠陥と判定する。
【請求項2】
前記光照射手段の発光スペクトルが単一波長であり、好ましくは800nm〜850nm付近に発光ピークを持つことを特徴とする請求項1に記載の有機EL基板検査装置。
【請求項3】
前記有機EL基板からの反射光のうち、正反射光のみを前記撮像手段においてデータ化し、好ましくは前記光照射手段および前記撮像手段が、前記有機EL基板に対する垂直面から40°〜45°傾いた配置をとることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL基板検査装置。
【請求項4】
前記画像処理手段において、前記閾値D2を正負の各々に予め設定しておき、正の閾値を超えた前記注目画素を白欠陥、負の閾値を越えた前記注目画素を黒欠陥と分類し、前記有機発光層部において検出された白欠陥を前記有機発光層の抜けに由来したもの、黒欠陥を前記有機発光層上に存在する異物に由来したものと判定し、前記隔壁部において検出された黒欠陥のうち、予め設定した閾値Eを超えた該黒欠陥を前記隔壁部上に存在する異物に由来するものと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL基板検査装置。
【請求項5】
TFT基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層の上にパターン配列された隔壁及び有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板の検査方法であって、
前記有機EL基板を載置しXY平面上を移動させる試料移動手段と、
前記有機EL基板の有機発光層側へ照明光を照射する光照射手段と、
前記有機EL基板からの反射光を電気信号に変換し、データ化する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像データに対して演算処理を行う画像処理手段とを用いて、前記画像処理手段において、以下の処理を行うことを特徴とする有機EL基板検査方法。
[a]前記画像データの注目画素に対して、前記有機EL基板の持つ繰り返しピッチ分だけ離れた点を比較画素とし、注目画素に対して上下左右方向に位置する比較画素4点を設
定する。
[b]前記注目画素と前記比較画素の輝度値を参照し、予め設定した閾値Bを超える輝度値を持つ画素が3点以上の場合、前記注目画素を隔壁部と判定し、閾値Bを超える輝度値を持つ前記比較画素が2点以下の場合、前記注目画素を有機発光層部と判定する。
[c]前記注目画素と前記比較画素の輝度値5点をソートし、前記注目画素の輝度値とソート処理した中央値との差分を行う。
[d]前記差分値に対する閾値Dを隔壁部および有機発光層部の各々に予め別々に設定しておき、前記注目画素が隔壁部の場合は、隔壁部における閾値D1を超えた該注目画素を隔壁部欠陥とし、前記注目画素が有機発光層部の場合は、有機発光層部における閾値D2を超えた該注目画素を有機発光層部欠陥と判定する。
【請求項6】
前記光照射手段の発光スペクトルが単一波長であり、好ましくは800nm〜850nm付近に発光ピークを持つことを特徴とする請求項5に記載の有機EL基板検査方法。
【請求項7】
前記有機EL基板からの反射光のうち、正反射光のみを前記撮像手段においてデータ化し、好ましくは前記光照射手段および前記撮像手段が、前記有機EL基板に対する垂直面から40°〜45°傾いた配置をとることを特徴とする請求項5または6に記載の有機EL基板検査方法。
【請求項8】
前記画像処理手段において、前記閾値Dを正負の各々に予め別々に設定しておき、正の閾値を超えた前記注目画素を白欠陥、負の閾値を越えた前記注目画素を黒欠陥と分類し、前記有機発光層部において検出された白欠陥を前記有機発光層の抜けに由来したもの、黒欠陥を前記有機発光層上に存在する異物に由来したものと判定し、前記隔壁部において検出された黒欠陥のうち、予め設定した閾値Eを超えた該黒欠陥を前記隔壁部上に存在する異物に由来するものと判定することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の有機EL基板検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−198604(P2011−198604A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63887(P2010−63887)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】