説明

有機EL素子、液晶パネル、及び有機EL素子の製造方法

【課題】 面内における輝度ムラが低減された有機EL素子、液晶パネル、及び有機EL素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ガラス基板(透明基板)1と、ガラス基板1の上に形成された透明陽極膜2と、透明陽極膜2の上に形成され、少なくとも有機発光膜5、6、8を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層11と、有機層11の上に形成された陰極13とを有し、面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性が面内で変化していることを特徴とする有機EL素子40による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子、液晶パネル、及び有機EL素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子は、それ自身で発光する自発光特性を有すると共に、高速応答が可能なことから、フラットパネルディスプレイ等の様々なデバイスへの適用が期待されている。
【0003】
その有機EL素子は、正孔輸送性と電子輸送性のそれぞれの有機薄膜を積層してなる積層型素子が非特許文献1で報告されて以来、10V以下の低電圧で発光する大面積発光素子として関心を集めている。積層型有機EL素子は、基本的には、陽極/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極をこの順に積層してなる。このうち、有機発光層は、上記した非特許文献1の二層型素子のように、正孔輸送層或いは電子輸送層がその機能を兼ねることもできる。更に、高発光効率の有機EL素子を得るために、一種類の材料よりなる単独膜を有機発光層として使用する以外に、主成分であるホスト材料中に蛍光発光性の高い色素分子を少量ドープしてなる色素ドープ膜を有機発光層とすることが非特許文献2に開示されている。
【0004】
上記のような有機EL素子は、近年の材料開発や素子構成の最適化により、発光効率と素子寿命が共に大幅に改善され、エリアカラーパネルやフルカラーパネルにも実用化され始めている。
【0005】
更に、薄型、軽量、及び大面積発光といった特徴により、有機EL素子を照明装置として使用する動きもある。そのような照明装置としては、例えば液晶表示装置のバックライトがあるが、特に携帯電話等の携帯機器では、薄型かつ軽量の液晶表示装置が求められているため、有機EL素子は携帯機器の液晶装置用のバックライトとして好適に使用し得る。
【0006】
ところで、有機EL素子を構成する陰極としては、アルミニウム等の金属膜が採用されるのに対し、その陽極としては、光を取り出す必要から遮光性の金属膜を使用することができず、代わりにITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜が採用される。
【0007】
しかしながら、照明装置等に適用するために有機EL素子を大面積化した場合、表示領域の周辺部から電圧を印加すると、陽極の透明導電膜の抵抗が高いため、抵抗に起因する電圧降下が陽極の面内で発生し、陽極の電圧分布が面内で一様でなくなってしまう。その結果、有機発光層に印加される電圧も面内で一様でなくなるので、表示領域の周辺部では輝度が明るくなるのに対し、中央付近では暗くなるというように、輝度分布にムラが発生する。
【0008】
このような不都合を解消するために、電圧を供給する高伝導性の補助配線を陽極の表面に形成することも考えられる。しかし、この方法では、補助配線が形成された部分で遮光されるので、光を面内で均一に取り出すことができない。
【0009】
また、特許文献1では、有機層の厚さを表示領域の周辺部で厚くし、中央付近で薄くすることにより、周辺部での有機層の抵抗を高くして電流量を低下させ、輝度分布のムラを防止する方法が開示されている。しかしながら、このように有機層の厚さに分布を持たせると、光の干渉によって色度ムラが発生するという新たな問題が発生するので、好ましくない。
【0010】
この他に、本発明に関連する技術が特許文献2及び特許文献3にも開示されている。
【特許文献1】特開平11−40362号公報
【特許文献2】特開2002−198172号公報
【特許文献3】特開2003−234194号公報
【非特許文献1】C. W. Tang and S. A. VanSlyke, Applied Physics Letters vol.51, 913 (1987)
【非特許文献2】C. W. Tang, S. A. VanSlyke, and C. H. Chen, Applied Physics Letters vol.65, 3610 (1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、面内における輝度ムラが低減された有機EL素子、液晶パネル、及び有機EL素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、透明基板と、前記透明基板の上に形成された透明陽極膜と、前記透明陽極膜の上に形成され、少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層と、前記有機層の上に形成された陰極とを有し、面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性が面内で変化している有機EL素子が提供される。
【0013】
有機層の膜厚は、光の干渉による色度ムラを防止するために面内において実質的に一定である必要がある。但し、本明細書でいう実質的に一定の厚さとは、成膜装置の性能限界によって発生する厚さの変動を含むものであり、典型的には面内均一性が5%以下となる厚さを指す。
【0014】
また、電圧−輝度特性を変化させるための構成は特に限定されない。
【0015】
例えば、透明陽極膜の仕事関数をその中央部から周辺部に向かって低くし、透明電極と有機層との仕事関数の差を周辺部で大きくすることにより、周辺部においてキャリアが有機発光膜に注入され難くし、中央部と周辺部とで電圧−輝度特性を異ならせるようにしてもよい。
【0016】
このようにすると、透明陽極膜の抵抗に起因する電圧降下で周辺部から中央部に向かって透明陽極膜の電圧値が低下しても、その電圧値の低下に伴う輝度変化が上記の電圧−輝度特性によって相殺されるので、輝度ムラの低減された一様な発光が実現される。
【0017】
また、透明陽極膜と有機発光膜との間に正孔注入膜を形成し、その正孔注入膜の抵抗を、中央部から周辺部に向けて高くしてもよい。
【0018】
これによれば、周辺部における正孔注入膜の高い抵抗により、上記と同様に周辺部でキャリアが有機膜に注入され難くなる。そのため、周辺部と中央部とで電圧−輝度特性が異なるようになり、上記と同様の理由で輝度ムラを低減することが可能となる。
【0019】
更に、有機層と陰極との間に電子注入膜を形成し、該電子注入膜の抵抗をその中央部から周辺部に向かって高くしても、上記と同様にして輝度ムラの低減された一様な発光が得られる。
【0020】
そして、有機発光膜と陰極との間に電子輸送膜を形成し、電子輸送膜の抵抗をその中央部から周辺部に向かって高くしても、上記と同様の利点を得ることができる。
【0021】
本発明の別の観点によれば、透明陽極膜、少なくとも有機発光膜を有して膜厚が面内において実質的に一定の有機層、及び陰極を透明基板の一方の面上に順に形成してなる有機EL素子を備えたバックライトと、前記透明基板の他方の面側に設けられた液晶パネルとを有し、面内における輝度が均一になるように、前記有機EL素子の電圧−輝度特性が面内で変化している液晶表示装置が提供される。
【0022】
本発明の更に別の発明によれば、透明基板の上に透明陽極膜を形成する工程と、少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層を前記透明陽極膜の上に形成する工程と、前記有機層の上に陰極を形成する工程とを有し、前記透明陽極膜、前記有機層、及び前記陰極のいずれかを形成する工程において、面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性を面内で変化させる有機EL素子の製造方法が提供される。
【0023】
電圧−輝度特性を面内で変化させるには、例えば、透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって照射密度が小さくなるように、該透明陽極膜に酸素プラズマを照射すればよい。このようにすると、周辺部における酸素プラズマ照射の効果が薄れ、透明陽極膜の周辺部の仕事関数が中央部よりも低くなり、電圧−輝度特性を面内で変化させることができる。これにより、透明陽極膜の抵抗に起因する電圧降下で周辺部から中央部に向かって透明陽極膜の電圧値が低下しても、その電圧値の低下に伴う輝度変化が上記の電圧−輝度特性によって相殺されるので、輝度ムラの低減された一様な発光が実現される。
【0024】
また、回転軸を中心にして透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の回転軸にアクセプタ分子の蒸着源を配すると共に、該回転軸から外れた位置に正孔注入膜の蒸着源を配することにより、透明陰極の中央部から周辺部に向かってアクセプタ分子のドープ濃度が低下する正孔注入膜を蒸着法で透明陰極上に形成してもよい。
【0025】
このようにして形成された正孔注入膜は、中央部から周辺部に向かってアクセプタ分子の濃度が低下するので、周辺部での抵抗が中央部よりも低くなる。そのため、電圧−輝度特性が面内で変化し、上記と同様の理由により輝度ムラの低減された発光を得ることが可能となる。
【0026】
更に、回転軸を中心にして透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の回転軸に電子注入膜の蒸着源を配することにより、有機層の中央部から周辺部に向かって薄くなる電子注入膜を蒸着法で有機層の上に形成してもよい。
【0027】
これにより形成された電子注入膜は、その厚さが有機層の中央部から周辺部に向かって薄くなるので、周辺部に向かうほど抵抗が高くなる。その結果、輝度ムラを低減するのに有効な電圧−輝度特性を得ることができ、面内で一様な発光を実現することができる。
【0028】
また、回転軸を中心にして透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の前記回転軸にリチウムの蒸着源を配すると共に、該回転軸から外れた位置に電子輸送膜の蒸着源を配することにより、透明陰極の中央部から周辺部に向かってリチウムのドープ濃度が低下する電子輸送膜を形成してもよい。
【0029】
このようにして形成された電子輸送膜は、リチウムのドープ濃度が低い周辺部で抵抗が高くなるので、上記したのと同じ理由によって、輝度ムラの無い発光を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、面内における輝度が均一になるように有機EL素子の電圧−輝度特性を面内で変化させ、透明陽極膜での電圧降下に起因する輝度ムラをその電圧−輝度特性で相殺するようにしたので、輝度ムラの低減された一様な発光を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(1)第1実施形態
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の断面図であり、図4〜図6はその平面図である。
【0033】
本実施形態では、液晶のバックライト等に好適な大面積有機EL素子が作製される。
【0034】
最初に、図1(a)に示すように、平面サイズが13cm×15cmの長方形のガラス基板(透明基板)1の上に、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスをスパッタガスにして、スパッタ法によりITO膜を厚さ約150nmに全面に形成し、それを透明陽極膜2とする。その透明陽極膜2は、例えば10Ω/□程度のシート抵抗を有する。なお、このように透明陽極膜2を形成する代わりに、ITO膜が全面に予め形成されているガラス基板を業者から購入し、そのガラス基板に対して以下の工程を行ってもよい。
【0035】
次に、フォトリソグラフィにより透明陽極膜2をパターニングし、図4の平面図に示すように、後で陰極を取り出すための切り込み部2aを透明陽極膜2に形成する。なお、既述の図1(a)は、図4のI−I線に沿う断面図に相当する。
【0036】
その後に、透明陽極膜2を水中で超音波洗浄した後、透明陽極膜2上に洗浄されずに残存する有機物を除去するために、アセトン及びイソプロピルアルコール中にガラス基板1を順に浸し、これらの中で透明陽極膜2を洗浄する。
【0037】
次に、図1(b)に示すように、透明陽極膜2に酸素プラズマ28を照射することにより、透明陽極膜2の表面の酸素濃度を高め、該表面における透明陽極膜2の仕事関数を上昇させる。透明陽極膜2を構成するITOは、通常は4.8eV程度の仕事関数を有するが、このような酸素プラズマ処理により、透明陽極膜2の中央部での仕事関数の値が5.2eV程度にまで上昇する。その結果、透明陽極膜2の上に次に形成される正孔注入膜との仕事関数の差が小さくなり、透明陽極膜2から後述の正孔注入膜へ正孔がスムーズに注入される。
【0038】
本実施形態では、このような酸素プラズマ処理を次のようにして行う。
【0039】
図7は、この酸素プラズマ処理で使用される酸素プラズマ処理装置の構成図である。
【0040】
この装置は、内部が所望の圧力に減圧される筐体20を有し、酸素ガス導入口29と排気口24とがその筐体20に設けられる。そして、筐体20の外側には、酸素ガス導入口29から供給された酸素に高周波電力を印加するための一対の電極21が設けられ、このうちの一方の電極21には高周波電源22が接続される。
【0041】
酸素プラズマ処理を行う際には、酸素ガス導入口29から約0.2sccmの流量の酸素が筐体20内に導入され、筐体20内の圧力が約3×10-2Pa程度に減圧されると共に、周波数が13.56MHzでパワーが50Wの高周波電力が高周波電源22から筐体20内の酸素に対して印加される。
【0042】
一方、筐体20の内部には、ガラス基板1を載置するためのステージ25が配され、酸素プラズマ28を通す複数の開口23aを備えたステンレス等よりなるマスク23がステージ25の上方に設けられる。
【0043】
図8はこのマスク23の平面図である。これに示されるように、各開口23aは、平面形状が正方形であり、その中心C同士が等間隔になるようにマトリクス状に配される。また、開口23aの開口率Rは、その開口23aの面積Dと、各中心Cを頂点とする一辺の長さがL0の仮想正方形の面積L02との比D/L02で定義される。本実施形態では、その開口率Rが、マスク23の中央部aから周辺部bに向かって小さくなるようなマスク23を使用する。なお、この正方形の開口23aの一辺の長さは特に限定されないが、本実施形態では、中央部aで約250μmとし、周辺部bで約130μmとする。また、上記した中心C同士の間隔L0を約300μmとする。
【0044】
その結果、図1(b)に示したように、酸素プラズマ28の照射密度がガラス基板1の中央部から周辺部に向かって小さくなるので、その照射密度の小さい周辺部では、酸素プラズマ28の作用が弱くなる。
【0045】
次に、図1(c)に示すように、基板温度を室温に保ちながら、真空蒸着装置(不図示)内の圧力を1×10-6torrに維持して、透明陽極膜2の上に2−TNATA(4,4',4''−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)を蒸着法で140nmの厚さに形成し、それを正孔注入膜3とする。この蒸着法では、矩形状の窓を有する不図示のシャドウマスクが使用され、その窓に対応する平面形状に正孔注入膜3がパターニングされる。
【0046】
そして、この正孔注入膜3を構成する2−TNATAは、次の化1のような化学式で表される。
【0047】
【化1】

また、この正孔注入膜3は、透明陽極2から後述の発光層に正孔が注入され易くなるように機能する。
【0048】
次に、図2(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0049】
まず、既述のシャドウマスクを使用する蒸着法により、正孔注入膜3の上にα−NPD(N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン)を厚さ10nmに形成し、それを正孔輸送膜4とする。この正孔輸送膜4を構成するα−NPDは、次の化2のような化学式で表される。
【0050】
【化2】

続いて、上記の正孔輸送膜4の上に、既述のシャドウマスクを用いて、DCJTB(4-(dicyanomethylene)-2-t-butyl-6(1,1,7,7-tetramethyljulolidyl-9-enyl)-4H-pyran)とAlq3(トリス(8−ヒドロキシノリナート)アルミニウム)とを同時に蒸着し、これらの材料で構成される赤色有機発光膜5を厚さ約1nmに形成する。なお、DCJTBとAlq3の蒸着比は特に限定されないが、本実施形態ではDCJTB1分子に対してAlq3分子を99とする。また、そのDCJTBは、次の化3のような化学式で表される。
【0051】
【化3】

一方、Alq3は、次の化4のような化学式で表される。
【0052】
【化4】

続いて、既述のシャドウマスクを用いて、t(bp)py(1,3,6,8−テトラビフェニルピレン)とCBP(4,4'−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル)とを同時に赤色有機発光膜5の上に厚さ約20nmに蒸着し、これらを青色有機発光膜6とする。t(bp)pyとCBPとの蒸着比は特に限定されないが、本実施形態では、10分子のt(bp)pyに対しCBP分子を90とする。
【0053】
この青色有機発光膜6を構成するt(bp)pyは、次の化5のような化学式で表される。
【0054】
【化5】

そして、CBPは、次の化6のような化学式で表される。
【0055】
【化6】

更に、既述のシャドウマスクを使用する蒸着法により、青色有機発光膜6の上に正孔ブロッキング膜7としてBAlqを厚さ約10nmに形成する。そのBAlqは、次の化7に示すような化学式で表される。
【0056】
【化7】

次に、図2(b)に示すように、既述のシャドウマスクを用いながら、蒸着法によりAlq3を厚さ約30nmに形成し、それを緑色有機発光膜兼電子輸送膜8とする。
【0057】
ここまでの工程により、三つの有機発光膜5、6、8を有する有機層11が透明陽極膜2に形成されたことになる。その有機層11を構成する各膜3〜8は、いずれも蒸着法で形成されるが、典型的な蒸着装置の仕様では、蒸着された膜の厚さの面内均一性(ユニフォミティ)が5%以下に収まるので、上記の有機層11の面内均一性も5%以下となる。これについては、後述の各実施形態でも同様である。
【0058】
なお、膜の面内均一性は、面内での膜の厚さの最大値と最小値とをそれぞれTmax、Tminとする場合に、100×(Tmax−Tmin)/(Tmax+Tmin)で定義される。
【0059】
また、図5は、この工程を終了後の平面図であり、先の図2(b)は、図5のII−II線に沿う断面図に相当する。
【0060】
図5に示されるように、有機層11は、透明陽極膜2の切り込み部2aよりも外側に延在するように形成される。
【0061】
続いて、図2(c)に示すように、既述のシャドウマスクを用いながら、上記の有機層11の上に電子注入膜9としてフッ化リチウム(LiF)膜を厚さ約0.5nm形成する。電子注入膜9は、その上に次に形成される陰極から電子が有機層11に注入され易くなるように機能する。
【0062】
その後に、図3に示すように、不図示のシャドウマスクを使用して、電子注入膜9と透明陽極膜2のそれぞれの上に蒸着法によりアルミニウム膜を厚さ約100nmに形成することにより、電子注入膜9の上に形成されたアルミニウム膜を陰極13とすると共に、透明陽極膜2の上のアルミニウム膜を電圧供給パターン12とする。
【0063】
図6は、この工程を終了後の平面図であり、先の図3は、図6のIII−III線に沿う断面図に相当する。
【0064】
図6に示されるように、陰極13は、透明陽極膜2の切り込み部2aから外に延びる延長部13aを有しており、その延長部13aに直流電源19の陰極19aが電気的に接続される。一方、電圧供給パターン12は、透明陽極膜2の縁において、切り込み部2aを除いた部分に枠状に形成されており、直流電源19の陽極19bと電気的に接続される。
【0065】
以上により、本実施形態に係る有機EL素子40の基本構造が完成したことになる。
【0066】
その有機EL素子40では、図6に示したように、透明陽極2の縁の電圧供給パターン12から正電圧を印加して発光を行うが、透明陽極2を構成するITOのシート抵抗が10Ω/□と高いため、透明陽極膜2の中央部では電圧降下によって周辺部よりも電圧が低くなる。このような電圧分布の非均一性によって輝度が面内で異なるのを防ぐため、本実施形態では、図1(b)に示したように、透明陽極膜2の中央部から周辺部に向かって照射密度が小さくなるように、該透明陽極膜2に酸素プラズマを照射した。
【0067】
これによれば、酸素プラズマの照射密度が高い透明陽極膜2の中央部では、透明陽極膜2を構成するITOの仕事関数が酸素プラズマの作用によって高められるが、周辺部ではその作用が低いため、中央部よりもITOの仕事関数が低くなる。その結果、正孔注入膜3と透明陽極膜2のそれぞれの仕事関数の差が、透明陽極膜2の中央部では小さくなるのに対し、周辺部では大きくなる。そのため、透明陽極膜2の周辺部では、上記した仕事関数の差によって、中央部と比較して有機発光膜5、6、8にキャリアが注入され難くなり、中央部と周辺部とで電圧−輝度特性が異なることになる。なお、本明細書における電圧−輝度特性とは、発光領域の一点における透明陽極膜2と陰極13との間の電圧と、その点における輝度との関係を指す。
【0068】
図9(a)は、上記のような不均一な酸素プラズマ処理に代えて、照射密度を面内で一定とする酸素プラズマ処理を透明陽極膜2に施した比較例における電圧−輝度特性を示すグラフである。一方、図9(b)は、本実施形態に係る電圧−輝度特性を示すグラフである。なお、図9(a)、(b)におけるグラフでは、図3の有機EL素子40の中央部の場所Aと、周辺部の場所Bのそれぞれにおける電圧−輝度特性を併記してある。
【0069】
比較例では、図9(a)に示されるように、電圧−輝度特性が場所A、Bによらず同じであり、透明陽極膜2の電圧降下によって低い電圧となる場所Aでは、場所Bと比較して輝度が低くなる。
【0070】
このような特性を有する比較例に対し、透明陽極膜2と陰極13との間に9Vの電圧を印加したところ、発光領域の中央部での輝度が490cd/m2、CIE(Commission Internationale de I'Eclairage)色度が(x,y)=(0.32,0.35)となり、周辺部での輝度が850cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となった。これにより、比較例では、中央部と周辺部における輝度の差が360cd/m2もあり、一様な面発光が得られないことが明らかとなった。
【0071】
これに対し、本実施形態では、透明陽極膜2と正孔注入膜3との仕事関数の差が周辺部で大きいので、図9(b)に示すように、同じ電圧値であっても周辺部では中央部よりも輝度が低くなる。
【0072】
このように電圧−輝度特性が面内で変化することにより、本実施形態では、透明陽極膜2における電圧降下によって場所Aと場所Bにおける輝度が同じになり、輝度ムラが低減された一様な発光を実現することができる。
【0073】
本願発明者の調査結果によれば、透明陽極膜2と陰極13との間に9Vの電圧を印加したところ、発光領域の中央部での輝度が700cd/m2、CIE(Commission Internationale de I'Eclairage)色度が(x,y)=(0.32,0.35)となり、周辺部での輝度が730cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となった。これにより、発光領域の中央部と周辺部における輝度の差が殆ど無く、輝度ムラが面内で低減された一様な白色光を発光できることが確認された。また、周辺部と中央部との間の領域においても、輝度やCIE色度にムラは見られなかった。
【0074】
更に、本実施形態では、透明陽極膜2の仕事関数を面内で変化させることにより電圧−輝度特性を面内で変えており、特許文献1のように有機層の厚さを面内で変えていないので、光の干渉による色度ムラを防止しながら、上記のように輝度ムラを低減することができる。
【0075】
(2)第2実施形態
第1実施形態では、ITOよりなる透明陽極膜2に対し、その周辺部と中央部とで異なる照射密度の酸素プラズマ処理を施すことにより、面内における輝度が均一になるように有機EL素子の電圧−輝度特性を面内で変化させた。
【0076】
これに対し、本実施形態では、正孔注入膜3の抵抗値に面内分布を与えるにより、有機EL素子の電圧−輝度特性を面内で変化させ、第1実施形態のようなムラの無い輝度分布を実現する。
【0077】
図10は、そのような正孔注入膜3を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。
【0078】
この真空蒸着装置は、内部が減圧されるチャンバ30を有すると共に、ガラス基板1をフェイスダウンの状態で把持するホルダ31が回転可能な状態でそのチャンバ30内に配される。また、このホルダ31の下方には、正孔注入膜3を構成する2−TNATAの蒸着源33と、その2−TNATAにドープされるアクセプタ分子であるF4−TCNQ(2,3,5,6−tetrafluoro−7,7,8,8, tetracyanoquinodimethane)の蒸着源32とが設けられる。なお、各蒸着源32、33は、それぞれ溶融したF4−TCNQや2−TNATAとそれらを収容する坩堝とにより構成される。
【0079】
これらの蒸着源32、33のうち、F4−TCNQの蒸着源32は、ガラス基板1から距離H1、例えば80mmだけ下方の回転軸Rに位置する。これに対し、2−TNATAの蒸着源33は、回転軸Rから所定の距離D1、例えば150mmだけ外れた位置に配される。
【0080】
本実施形態では、このような真空蒸着装置を用い、チャンバ30内の圧力を約1×10-6Torr程度に保持しながら、基板温度を室温にして透明陽極膜2の上に正孔注入膜3を厚さ約140nmに形成する。また、この正孔注入膜3の成膜時にはホルダ31が回転させられるが、その回転数は特に限定されず、本実施形態では約12rpmとする。
【0081】
この真空蒸着法によれば、2−TNATAの蒸着源33が回転軸Rから外れているため、2−TNATAは透明陽極膜2上に略均一な厚さに形成される。これに対し、F4−TCNQは、その蒸着源32が2−TNATAの蒸着源33よりもガラス基板1に近く且つ回転軸R上に位置しているので、透明陽極膜2の中央部から周辺部に向かって濃度が低下するように2−TNATAにドープされることになる。そのF4−TCNQのドープ濃度は特に限定されないが、本実施形態では、長方形のガラス基板1の中央部でのドープ濃度を約0.1重量%とし、長方形の角におけるドープ濃度を約0.02重量%とした。このようなF4−TCNQのドープ濃度は、上記した蒸着源32、33の各距離H1、D1を変更することにより制御可能である。
【0082】
アクセプタ分子であるF4−TCNQのドープ濃度が透明陽極膜2の周辺部において上記のように低下すると、中央部と比較して周辺部ではキャリアが有機発光膜5、6、8に注入され難くなる。その結果、周辺部と中央部とでは、第1実施形態の図9(b)と同じように電圧−輝度特性が異なる。そのため、透明陽極膜2の抵抗に起因する電圧降下によって、透明陽極膜2に印加される電圧がその中央部で低下しても、電圧低下に起因する輝度の減少を電圧−輝度特性の面内分布で相殺することが可能となり、面内においてムラの無い一様な発光を実現することができる。
【0083】
本願発明者の調査結果によれば、透明陽極膜2と陰極13との間に9Vの電圧を印加したところ、発光領域の中央部での輝度が915cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となり、周辺部での輝度が950cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となった。これにより、発光領域の中央部と周辺部における輝度の差が殆ど無く、輝度ムラが面内で低減された一様な白色光を発光できることが確認された。また、周辺部と中央部との間の領域においても、輝度やCIE色度にムラは見られなかった。
【0084】
(3)第3実施形態
本実施形態では、電子注入膜9の厚さを面内で変化させることにより、第1、第2実施形態のように、電圧−輝度特性を面内で変化させる。
【0085】
図11は、電子注入膜9を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。なお、図11において、第2実施形態の図10で説明した要素には図10と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
この真空蒸着装置が図10で説明した装置と異なる点は、電子注入膜9を構成するフッ化リチウムの蒸着源34のみがチャンバ30内に配される点である。その蒸着源34は、溶融したフッ化リチウムを坩堝に収容してなり、ガラス基板1から距離H2、例えば160nmだけ下方の回転軸Rに位置する。
【0087】
本実施形態では、このような真空蒸着装置を用い、チャンバ30内の圧力を約1×10-6Torr程度に保持しながら、基板温度を室温にして緑色有機発光膜兼電子輸送膜8の上にフッ化リチウム膜を形成し、それを電子注入膜9とする。なお、この電子注入膜9の成膜時にはホルダ31が回転させられるが、その回転数は特に限定されず、本実施形態では約12rpmとする。
【0088】
その真空蒸着方法によれば、蒸着源34が回転軸R上に位置しており、ガラス基板1の中央部から周辺部に行くに従って蒸着源34との距離が離れるので、ガラス基板1の中央部から周辺部に向かって電子注入膜9の厚さが薄くなる。そのため、電子注入膜9の抵抗も中央部から周辺部に向かって高くなり、第1、第2実施形態と同様に、周辺部においてキャリアが有機発光膜5、6、8に注入され難くなる。これにより、図9(b)で説明したのと同じようにして、電圧−輝度特性が面内で異なるようになり、透明陽極膜2における電圧降下に起因する輝度ムラが上記の電圧−輝度特性によって打ち消され、面内においてムラの無い一様な発光を得ることができる。
【0089】
本願発明者の調査結果によれば、透明陽極膜2と陰極13との間に9Vの電圧を印加したところ、発光領域の中央部での輝度が670cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となり、周辺部での輝度が750cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となった。これにより、発光領域の中央部と周辺部における輝度の差が殆ど無く、輝度ムラが面内で低減された一様な白色光を発光できることが確認された。また、周辺部と中央部との間の領域においても、輝度やCIE色度にムラは見られなかった。
【0090】
(4)第4実施形態
本実施形態では、緑色有機発光膜兼電子輸送膜8の抵抗を面内で変化させることにより、第1〜第3実施形態のように、電圧−輝度特性を面内で変化させる。
【0091】
図12は、緑色有機発光膜兼電子輸送膜8を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。なお、図12において、第2実施形態の図10で説明した要素には図10と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
この真空蒸着装置は、緑色有機発光膜兼電子輸送膜8を構成するAlq3の蒸着源43と、このAlq3にドープされるリチウムの蒸着源42とがチャンバ30内に設けられる。なお、これらの蒸着源42、43は、それぞれ溶融したリチウムとAlq3とそれらを収容する坩堝とにより構成される。
【0093】
これらの蒸着源42、43のうち、リチウムの蒸着源42は、ガラス基板1から距離H3、例えば80mmだけ下方の回転軸Rに位置する。これに対し、Alq3の蒸着源43は、回転軸Rから所定の距離D2、例えば150mmだけ外れた位置に配される。
【0094】
本実施形態では、このような真空蒸着装置を用い、チャンバ30内の圧力を約1×10-6Torr程度に保持しながら、基板温度を室温にして正孔ブロッキング膜7の上に緑色有機発光膜兼電子輸送膜8を厚さ約30nmに形成する。また、この緑色有機発光膜兼電子輸送膜8の成膜時にはホルダ31が回転させられるが、その回転数は特に限定されず、本実施形態では約12rpmとする。
【0095】
この真空蒸着法によれば、Alq3の蒸着源43が回転軸Rから外れているため、Alq3は正孔ブロッキング膜7上に略均一な厚さに形成される。これに対し、リチウムは、その蒸着源42がAlq3の蒸着源43よりもガラス基板1に近く且つ回転軸R上に位置しているので、緑色有機発光膜兼電子輸送膜8の中央部から周辺部に向かって濃度が低下するようにAlq3にドープされることになる。そのリチウムのドープ濃度は特に限定されないが、本実施形態では、長方形のガラス基板1の中央部でのドープ濃度を約1.5重量%とし、長方形の角におけるドープ濃度を約0.3重量%とした。このようなリチウムのドープ濃度は、上記した蒸着源42、43の各距離H3、D2を変更することにより制御可能である。
【0096】
このようなリチウムのドープ濃度により、緑色有機発光膜兼電子輸送膜8の抵抗がその中央部から周辺部に向かって高くなり、周辺部と中央部とでは第1実施形態の図9(b)と同じように電圧−輝度特性が異なる。これにより、透明陽極膜2の抵抗に起因する電圧降下によって、透明陽極膜2に印加される電圧がその中央部で低下しても、電圧低下に起因する輝度の減少を電圧−輝度特性の面内分布で相殺することが可能となり、面内においてムラの無い一様な発光を実現することができる。
【0097】
本願発明者の調査結果によれば、透明陽極膜2と陰極13との間に9Vの電圧を印加したところ、発光領域の中央部での輝度が690cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となり、周辺部での輝度が740cd/m2、CIE色度が(x,y)=(0.32,0.35)となった。これにより、発光領域の中央部と周辺部における輝度の差が殆ど無く、輝度ムラが面内で低減された一様な白色光を発光できることが確認された。また、周辺部と中央部との間の領域においても、輝度やCIE色度にムラは見られなかった。
【0098】
(5)第5実施形態
第1〜第4実施形態で作製された大面積有機EL素子の用途は特に限定されないが、液晶表示装置のバックライトとしてそれを使用するのが好適である。そこで、本実施形態では、その液晶表示装置について説明する。
【0099】
図13は、本実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【0100】
この液晶表示装置では、バックライトとして機能する第1〜第4実施形態で説明した有機EL素子40が筐体50に収められており、その筐体50の最前面には、透過型の液晶パネル53が配される。液晶パネル53の種類は特に限定されず、TN(Twisted Nematic)型やVA(Vertically Aligned)型であってよい。
【0101】
また、有機EL素子40と液晶パネル53の間には、拡散シート51とプリズムシート52とがそれぞれ間隔をおいて配される。このうち、拡散シート51は、表面に細かな凹凸が多数形成された樹脂シートよりなり、有機EL素子40から発せられた光を均一に拡散させ、輝度分布を均一にする役割を担う。また、プリズムシート52は、断面形状が三角形の溝が互いに平行になるように多数形成された樹脂シートよりなり、拡散シート51を出た光を液晶パネル53に垂直に集光させる機能を有する。
【0102】
このような液晶表示装置によれば、第1〜第4実施形態で作製された有機EL素子40をバックライトとして使用する。そのため、面内における輝度ムラが低減された均一な強度の光を液晶パネル53に通すことができ、輝度ムラの無い綺麗な画像を得ることが可能となる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば、上記では、有機EL素子の発光色を白色としたが、緑色や他の色であってもよい。
【0104】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0105】
(付記1) 透明基板と、
前記透明基板の上に形成された透明陽極膜と、
前記透明陽極膜の上に形成され、少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層と、
前記有機層の上に形成された陰極とを有し、
面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性が面内で変化していることを特徴とする有機EL素子。
【0106】
(付記2) 前記有機層の膜厚の面内均一性が5%以下であることを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0107】
(付記3) 前記透明陽極膜の仕事関数が、該透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって低くなることを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0108】
(付記4) 前記透明陽極膜と前記有機発光膜との間に正孔注入膜が形成され、該正孔注入膜の抵抗が、該正孔注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0109】
(付記5) 前記正孔注入膜にアクセプタ分子がドープされ、該アクセプタ分子のドープ濃度が、前記正孔注入膜の中央部から周辺部に向かって低くなることを特徴とする付記4に記載の有機EL素子。
【0110】
(付記6) 前記有機層と前記陰極との間に電子注入膜が形成され、該電子注入膜の抵抗が、該電子注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0111】
(付記7) 前記電子注入膜の膜厚が、該電子注入膜の中央部から周辺部に向かって薄くなることを特徴とする付記6に記載の有機EL素子。
【0112】
(付記8) 前記電子注入膜はフッ化リチウム膜であることを特徴とする付記6に記載の有機EL素子。
【0113】
(付記9) 前記有機発光膜と前記陰極との間に電子輸送膜が形成され、該電子輸送膜の抵抗が、該電子輸送膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0114】
(付記10) 前記電子輸送膜にリチウムがドープされ、該リチウムのドープ濃度が、前記電子輸送膜の中央部から周辺部に向かって低くなることを特徴とする付記9に記載の有機EL素子。
【0115】
(付記11) 前記透明陽極膜の縁に、枠状の電圧供給パターンが電気的に接続されたことを特徴とする付記1に記載の有機EL素子。
【0116】
(付記12) 透明陽極膜、少なくとも有機発光膜を有して膜厚が面内において実質的に一定の有機層、及び陰極を透明基板の一方の面上に順に形成してなる有機EL素子を備えたバックライトと、
前記透明基板の他方の面側に設けられた液晶パネルとを有し、
面内における輝度が均一になるように、前記有機EL素子の電圧−輝度特性が面内で変化していることを特徴とする液晶表示装置。
【0117】
(付記13) 前記透明陽極膜の仕事関数が、該透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって低くなることを特徴とする付記12に記載の液晶表示装置。
【0118】
(付記14) 前記透明陽極膜と前記有機発光膜との間に正孔注入膜が形成され、該正孔注入膜の抵抗が、該正孔注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記12に記載の液晶表示装置。
【0119】
(付記15) 前記有機層と前記陰極との間に電子注入膜が形成され、該電子注入膜の抵抗が、該電子注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記12に記載の液晶表示装置。
【0120】
(付記16) 前記有機発光膜と前記陰極との間に電子輸送膜が形成され、該電子輸送膜の抵抗が、該電子輸送膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする付記12に記載の液晶表示装置。
【0121】
(付記17) 透明基板の上に透明陽極膜を形成する工程と、
少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層を前記透明陽極膜の上に形成する工程と、
前記有機層の上に陰極を形成する工程とを有し、
前記透明陽極膜、前記有機層、及び前記陰極のいずれかを形成する工程において、面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性を面内で変化させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0122】
(付記18) 前記透明陽極膜を形成する工程において、該透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって照射密度が小さくなるように、該透明陽極膜に酸素プラズマを照射することを特徴とする付記17に記載の有機EL素子の製造方法。
【0123】
(付記19) 前記酸素プラズマの照射は、中央部から周辺部に向かって開口率が小さくなるマスクに前記酸素プラズマを通し、該マスクを通った該酸素プラズマを前記透明陽極膜に照射することにより行われることを特徴とする付記18に記載の有機EL素子の製造方法。
【0124】
(付記20) 前記有機層を形成する工程は、前記有機発光膜を形成する前に、回転軸を中心にして前記透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の前記回転軸にアクセプタ分子の蒸着源を配すると共に、該回転軸から外れた位置に正孔注入膜の蒸着源を配することにより、前記透明陰極の中央部から周辺部に向かって前記アクセプタ分子のドープ濃度が低下する正孔注入膜を蒸着法で前記透明陰極上に形成する工程を有することを特徴とする付記17に記載の有機EL素子の製造方法。
【0125】
(付記21) 前記陰極を形成する工程は、回転軸を中心にして前記透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の前記回転軸に電子注入膜の蒸着源を配することにより、前記有機層の中央部から周辺部に向かって薄くなる電子注入膜を蒸着法で前記有機層の上に形成する工程を有することを特徴とする付記17に記載の有機EL素子の製造方法。
【0126】
(付記22) 前記有機層を形成する工程は、前記有機発光膜を形成した後に、回転軸を中心にして前記透明基板をフェイスダウンの状態で回転させながら、該透明基板の下方の前記回転軸にリチウムの蒸着源を配すると共に、該回転軸から外れた位置に電子輸送膜の蒸着源を配することにより、前記透明陰極の中央部から周辺部に向かってリチウムのドープ濃度が低下する電子輸送膜を蒸着法で有機発光膜上に形成する工程を有することを特徴とする付記17に記載の有機EL素子の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の断面図(その2)である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の断面図(その3)である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の平面図(その1)である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の平面図(その2)である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造途中の平面図(その3)である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態で使用される酸素プラズマ装置の構成図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態で使用される酸素プラズマ装置のマスクの平面図である。
【図9】図9(a)は、照射密度を面内で一定とする酸素プラズマ処理を透明陽極膜に施した比較例における電圧−輝度特性を示すグラフであり、図9(b)は、本発明の第1実施形態に係る電圧−輝度特性を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態において正孔注入膜を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態において電子注入膜を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。
【図12】図12は、本発明の第4実施形態において緑色発光膜兼電子輸送膜を形成するのに使用される真空蒸着装置の構成図である。
【図13】図13は、本発明の第5実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1…ガラス基板、2…透明陽極膜、3…正孔注入膜、4…正孔輸送膜、5…赤色発光膜、6…青色発光膜、7…正孔ブロッキング膜、8…緑色発光膜兼電子輸送膜、9…電子注入膜、10…陰極、11…有機層、12…電圧供給パターン、13…陰極、30…チャンバ、31…ホルダ、32…F4−TCNQの蒸着源、33…2−TNATAの蒸着源、34…フッ化リチウムの蒸着源、42…リチウムの蒸着源、43…Alq3の蒸着源、50…筐体、51…拡散シート、52…プリズムシート、53…液晶パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板の上に形成された透明陽極膜と、
前記透明陽極膜の上に形成され、少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層と、
前記有機層の上に形成された陰極とを有し、
面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性が面内で変化していることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記透明陽極膜の仕事関数が、該透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって低くなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記透明陽極膜と前記有機発光膜との間に正孔注入膜が形成され、該正孔注入膜の抵抗が、該正孔注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記有機層と前記陰極との間に電子注入膜が形成され、該電子注入膜の抵抗が、該電子注入膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記有機発光膜と前記陰極との間に電子輸送膜が形成され、該電子輸送膜の抵抗が、該電子輸送膜の中央部から周辺部に向かって高くなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記透明陽極膜の縁に、枠状の電圧供給パターンが電気的に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項7】
透明陽極膜、少なくとも有機発光膜を有して膜厚が面内において実質的に一定の有機層、及び陰極を透明基板の一方の面上に順に形成してなる有機EL素子を備えたバックライトと、
前記透明基板の他方の面側に設けられた液晶パネルとを有し、
面内における輝度が均一になるように、前記有機EL素子の電圧−輝度特性が面内で変化していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
透明基板の上に透明陽極膜を形成する工程と、
少なくとも有機発光膜を有し、膜厚が面内において実質的に一定な有機層を前記透明陽極膜の上に形成する工程と、
前記有機層の上に陰極を形成する工程とを有し、
前記透明陽極膜、前記有機層、及び前記陰極のいずれかを形成する工程において、面内における輝度が均一になるように、電圧−輝度特性を面内で変化させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項9】
前記透明陽極膜を形成する工程において、該透明陽極膜の中央部から周辺部に向かって照射密度が小さくなるように、該透明陽極膜に酸素プラズマを照射することを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項10】
前記酸素プラズマの照射は、中央部から周辺部に向かって開口率が小さくなるマスクに前記酸素プラズマを通し、該マスクを通った該酸素プラズマを前記透明陽極膜に照射することにより行われることを特徴とする請求項9に記載の有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−222392(P2006−222392A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36690(P2005−36690)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】