説明

有機EL素子および発光装置

【課題】 電子注入層を備えた有機EL素子の該電子注入層の酸化を防止し、高い信頼性と製造歩留まりを有する有機EL素子および発光装置を提供する。
【解決手段】 透明ガラス基板11上に第1の電極取り出し配線12および第2の電極取り出し配線13が形成され、第1の電極取り出し配線12に接続する陽極電極14が形成される。そして、陽極電極14上に正孔輸送層15、電子輸送性発光層16および電子注入層17の積層した有機EL層18が形成され、電子注入層17を被覆する有機保護層19が形成される。ここで、有機保護層19は、含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物のような有機材料から成る。そして、有機保護層19上に、第2の電極取り出し配線13に接続して陰極電極20が設けられ、封止缶22により全体が気密封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子および発光装置に係り、詳しくは、一対の電極間に有機発光層を含有する有機EL層が狭持され、該有機EL層中の電子注入層の酸化を防止する有機保護層が形成された有機EL素子および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜のエレクトロルミネセンス(EL)現象を利用して、一対の対向する電極間に有機発光層を含有する有機EL層を挟み、その電極間に電圧を印加し有機EL層に電流を流して発光させる有機EL素子は、その実用化に向けた種々の検討が精力的に進められている。この有機EL素子は、FPD(フラットパネルディスプレイ)のような表示装置、非自発光素子で成る液晶表示装置の面光源バックライトあるいは照明灯のような照明装置に好適な自発光素子である。以下、上記有機EL素子を用いる表示装置および照明装置を総称して有機EL発光装置という。
【0003】
上記有機EL発光素子の対向する一電極には、ITO(インジウム錫酸化物)やZnO(酸化亜鉛)等の光透過性金属材料から成る透明電極が必須になる。通常、上記透明電極は、上記有機EL層に正孔を注入し易くするところの仕事関数の大きい金属材料から成り、陽極電極として使用される。そして、一方の対向する電極には、上記透明電極よりも仕事関数が小さく有機EL層に電子注入し易い金属材料が使用され、その電極が陰極電極になる。
【0004】
しかし、後述する有機EL層に含まれる電子注入層を有効に使用すると、上記陰極電極として上記透明電極を含めて種々の金属材料を使用することが可能になる。同様に、有機EL層に含まれる正孔注入層の有効な使用、あるいは、上記陰極電極における透明電極の使用を通して、上記陽極電極として上記透明電極に限定されることなく種々の金属材料を使用することができるようになる。
【0005】
そして、上記有機EL層には、例えば、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下、α−NPDと略記する)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(以下、Alq3と略記する)の積層する有機薄膜が使用される。ここで、α−NPDは、正孔輸送層であり例えば上記陽極電極側に配置される。そして、Alq3は、電子輸送性発光層であり陰極電極側に配置される。この有機EL層は、その他に種々の構造のものが検討され提案されている。上述したように電極の金属材料の種類によっては、有機発光層のみの単層の構造が使用される。あるいは、上述した電子注入層、正孔注入層を上記電極との間に配置するような構造のものが使用される。更に、電子輸送層、電子阻止層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層の一層以上と有機発光層との積層した多層になる構造であってもよい。
【0006】
また、最近では、高輝度を得るために、複数の有機EL層を中間導電層を介して積層させる、マルチフォトンエミッション(MPE;Multi-Photo-Emission)といわれる構造のものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ここで、中間導電層は、一方の面が正孔注入性を有し、かつ、他方の面が電子注入性を有する材料から成る電荷発生層である。
【0007】
上述したように、対向する電極に用いる金属材料あるいは有機EL層の構造を種々に変えることにより、極めて多数の構造の有機EL素子が可能になる。そこで、有機EL素子の適用される有機EL発光装置に好適なその構造について、その発光効率、発光輝度、輝度ムラ等の特性、あるいは発光寿命、特性の経時変化等の信頼性に関する検討が、その実用化に向けて精力的に進められている。
【0008】
以下、従来の電子注入層を有する有機EL素子が適用された有機LED(Light
Emitting Diode)の有機EL発光装置について、図8,9を参照して説明する。図8は従来の有機ELD装置の構造を示す断面図であり、図9はそのMPE型有機LED装置の構造を示す断面図である。
【0009】
図8に示すように、有機EL発光装置100では、透明ガラス基板101上に例えばAl(アルミニウム)の金属材料により、第1の電極取り出し配線102および第2の電極取り出し配線103が形成されている。そして、例えばAlの金属材料あるいはITOの金属材料により陽極電極104が形成されている。
更に、上記陽極電極104上に正孔輸送層105が例えばα−NPDにより形成され、この正孔輸送層105に積層して電子輸送性発光層106が例えばAlq3により形成してある。また、上記電子輸送性発光層106に電子注入層107が設けてある。これ等の積層する正孔輸送層105、電子輸送性発光層106および電子注入層107により有機EL層108が構成される。ここで、電子注入層は、仕事関数の小さい(例えば3eV以下)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これ等金属の合金、上記金属のハロゲン化合物、あるいは、これ等の金属と有機物の混合層により形成される。
そして、上記電子注入層107を被覆して有機EL層108上に陽極電極104に対向して光透過性金属材料から成る陰極電極109が設けられ、上記陽極電極104は第1の電極取り出し配線102を通して電源に接続し、上記陰極電極109は第2の電極取り出し配線103を通して別の電源につながっている。そして、接着剤110による接合を通して、ガラス製あるいはステンレス製の封止缶111により全体が気密封止されている。
【0010】
上記有機EL発光装置100においては、上記陽極電極104と有機EL層108と陰極電極109により有機EL素子が構成される。そして、電子輸送性発光層106からのEL光は、例えばガラス製の封止缶111あるいは透明ガラス基板101から出射することになる。
また、有機EL発光装置100の上記有機EL素子は、特に酸素あるいは水分によって劣化し易い。そこで、上記封止缶111による気密封止がなされている。また、図示しないが、封止缶111内には、例えば酸化バリウム粉末等の乾燥剤が封入され、酸素ガスあるいは水分等を吸着するようになっている。
【0011】
図9に示すように、MPE型有機LEDの有機EL発光装置100aでは、図8で説明したのと同様にして、透明ガラス基板101上に第1の電極取り出し配線102および第2の電極取り出し配線が形成され、例えばITOのような透明電極により陽極電極104が形成されている。そして、上記陽極電極104上に積層する上記正孔輸送層105、電子輸送性発光層106および電子注入層107が第1の有機EL層108として形成されている。
そして、上記電子注入層107を被覆して中間導電層(以下、電荷発生層ともいう)112が形成されている。ここで、中間導電層112は、V(五酸化バナジウム)、InZnO(インジウム亜鉛酸化物)、あるいは、これ等の酸化物と有機物の混合層により形成される。
そして、上記中間導電層112上に積層するように正孔輸送層113、電子輸送性発光層114および電子注入層115が第2の有機EL層116として形成されている。このようにして、第2の有機EL層116上に陽極電極104に対向する陰極電極109がAl金属材料により設けられ、上記陽極電極104は第1の電極取り出し配線102を通して電源に接続し、陰極電極109は第2の電極取り出し配線103を通して別の電源につながっている。そして、接着剤110による接合を通して、ガラス製あるいはステンレス製の封止缶111により全体が気密封止してある。
【0012】
上記有機EL発光装置100aにおいては、上記陽極電極104、第1の有機EL層108、中間導電層112、第2の有機EL層108および陰極電極109により有機EL素子が構成される。そして、複数の電子輸送性発光層106,114からのEL光が、透明ガラス基板101側から高輝度に出射するようになる。
そして、この場合も、有機EL発光装置100aの有機EL素子は、特に酸素あるいは水分によって劣化し易いので、封止缶111内には、例えば酸化バリウム粉末等の乾燥剤が封入され、酸素ガスあるいは水分等を吸着するようになっている。
【特許文献1】特開平11−329748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有した電子注入層を有している有機EL素子では、上記電子注入層が酸素あるいは水分と極めて反応して劣化し易くなることから、有機EL素子の信頼性に大きな問題があった。すなわち、上記有機EL素子の構造では、それを適用した例えば図8,9に示した有機EL発光装置100,100aの動作において、発光効率あるいは輝度が経時変化により動作時間と共に大きく低下し、また、駆動電圧がその動作時間と共に増大するようになる。これは、電子注入層を被覆して形成された透明電極中あるいは中間導電層中の酸素により、電子注入層の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が徐々に酸化されていくために生じる。あるいは、上記透明電極あるいは中間導電層を電子注入層に被覆して成膜する工程において、電子注入層の活性な上記金属が微量な水分、酸素、中間酸化物等と反応するからである。
【0014】
また、上記有機EL素子が適用される有機EL発光装置では、その製造時において、上記電子注入層の一部が製造工程で酸化され易いために、その製造管理が複雑化するようになり、それが製造コスト増大の一因になっていた。そして、上記電子注入層の一部酸化は、有機EL発光装置の製造歩留まりの向上が難しくなる要因ともなっていた。
【0015】
上記電子注入層の酸化による劣化は、有機EL素子の有機EL層が図8,9で説明した構造以外の場合でも同様に生じる。例えば、有機EL層が電子注入層と有機発光層の積層した構造であっても、あるいは、図8,9の構造に上述した正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層等が更に積層された構造であっても、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する電子注入層があると、上記問題は回避できないことであった。
【0016】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する電子注入層を備えた有機EL素子および発光装置において、電子注入層の酸化を簡便に防止して、高い信頼性、高い製造歩留まりを有する有機EL素子および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明にかかる有機EL素子は、対向する陽極電極と陰極電極の間に、少なくとも一層の有機発光層と電子注入層が積層されている有機EL素子において、前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、前記陰極電極は、金属と酸素の結合を有する金属材料からなり、前記電子注入層と前記陰極電極との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持される、という構成になっている。
【0018】
あるいは、本発明にかかる有機EL素子は、対向する陽極電極と陰極電極との間に、複数の有機発光層と、電子注入層と、前記電子注入層に積層する電荷発生層を有する有機EL素子において、前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、前記電荷発生層は、金属と酸素の結合を有し、正孔注入性と電子注入性とを有する材料からなり、前記電子注入層と前記電荷発生層との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持される、という構成になっている。
【0019】
上記発明により、陰極電極あるいは電荷発生層中の酸素が、有機保護層によって効果的に阻止され、電子注入層に侵入しなくなる。そして、電子注入層中の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化が防止される。また、上記陰極電極あるいは電荷発生層を成膜する工程において、有機保護層は、その成膜工程で生じる酸素、水分が電子注入層中の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と反応するのを阻止する機能を有する。これ等のために、有機EL素子の発光輝度の経時変化が小さくなり、その駆動電圧の経時変化はほとんど無くなる。このように、有機EL素子の信頼性が大幅に向上すると共にその製造歩留まりも向上する。
【0020】
また、上記有機保護層の挟持により、酸素あるいは水分に対して非常に活性な材料により電子注入層を形成することが可能になり、注入特性に優れた低電圧駆動の有機EL素子が実現できるようになる。あるいは、上記有機保護層により、低抵抗の陰極電極、あるいは正孔および電子の注入特性に優れた電荷発生層を形成することが可能になる。
【0021】
上記発明の好適な一態様では、前記有機保護層は、含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物からなる。ここで、前記含窒素縮合三環系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)、4,7−フェナントロリン、3,8−フェナントロリン、2,7−フェナントロリン、アクリジン、カルバゾール、フェナジン、フェナントリジンからなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなる。また、前記層状結合の含窒素環化合物は、フタロシアニン、金属フタロシアニン誘導体、ポルフィリン、金属ポルフィリン誘導体からなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなる。そして、前記含窒素縮合三環系化合物あるいは前記層状結合の含窒素環化合物の膜厚は、5nm〜20nmの範囲にあると好適である。
【0022】
上記有機保護層は、高い電子輸送性を有することから、上記電子注入層の電子注入性に大きな影響を及ぼすことなく、発光特性に優れた有機EL素子を可能にする。
【0023】
そして、本発明にかかる発光装置は、透明基板上において、対向する陽極電極と陰極電極の間に、少なくとも一層の有機発光層と電子注入層を有する発光装置であって、前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、前記陰極電極は、金属と酸素の結合を有する金属材料からなり、前記電子注入層と前記陰極電極との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持され、前記透明基板および封止缶により気密封止される構成になっている。
ことを特徴とする発光装置。
【0024】
あるいは、本発明にかかる発光装置は、透明基板上において、対向する陽極電極と陰極電極の間に、複数の有機発光層と、電子注入層と、前記電子注入層に積層する電荷発生層を有する発光装置であって、前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、前記電荷発生層は、金属と酸素の結合を有し、正孔注入性と電子注入性とを有する材料からなり、前記電子注入層と前記電荷発生層との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持され、前記透明基板および封止缶により気密封止される構成になっている。
【0025】
上記発明により、発光装置内の電子注入層および有機発光層が酸素あるいは水分から保護されるようになり、発光装置は、その発光特性の経時変化が小さくなり、その長期信頼性に優れたものになる。また、有機保護層は、発光装置の電子注入層の成膜工程で生じる酸素、水分が電子注入層中の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と反応するのを阻止する。このために、発光装置の製造歩留まりが向上するようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の構成によれば、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する電子注入層を備えた有機EL素子および発光装置において、電子注入層の酸化を簡便に防止して、高い信頼性、高い製造歩留まりを有する有機EL素子および発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態のいくつかを図面を参照して説明する。この図面では、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付す。
(実施の形態1)
本発明の第1の実施形態について図1ないし4を参照して説明する。図1は本実施形態の好適な有機EL素子が適用された有機EL発光装置の断面図であり、図2はその製造方法を示す工程別断面図である。そして、図3,4は本実施形態の効果を説明するための有機EL発光装置の信頼性に関するグラフである。
【0028】
図1に示すように、有機EL発光装置10では、図8で説明した従来の技術の場合と同様に、透明ガラス基板11上に第1の電極取り出し配線12および第2の電極取り出し配線13が形成され、更に陽極電極14が形成されている。そして、陽極電極14上に、例えばα−NPDで成る正孔輸送層15、例えばAlq3で成る電子輸送性発光層16および電子注入層17が積層し、有機EL層18が形成されている。
【0029】
ここで、電子注入層17は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これ等金属の合金、上記金属のハロゲン化合物、あるいは、これ等の金属と有機物の混合層のように、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料により形成される。例えば、Li、Mg等の金属、Li−Mg、Li−Al、Mg−Agのような合金、LiF、LiCl、MgF、CaFのような化合物、Cs混合のバソクプロインあるいはLi混合のAlq3のような材料が好適である。
【0030】
そして、電子注入層17を被覆する有機保護層19が形成されている。この有機保護層19は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機材料からなり、含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物のような有機材料により形成されると好適である。
【0031】
ここで、含窒素縮合三環系化合物としては、式(1)で示されるようなフェナントロリン化合物であって、式(2)で示される2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)、4,7−フェナントロリン、3,8−フェナントロリン、2,7−フェナントロリンが特に好適である。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
また、上記含窒素縮合三環系化合物としては、式(3)で示されるアクリジン、式(4)で示されるカルバゾール、式(5)で示されるフェナジン、式(6)で示されるフェナントリジンであってもよい。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
そして、上記層状結合の含窒素環化合物は、式(7)で示されるフタロシアニン、式(8)で示されるポルフィリン、あるいは、金属フタロシアニン誘導体、金属ポルフィリン誘導体が特に好適である。
【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
また、上記有機保護層19は、上述した含窒素縮合三環系化合物からなる群より選択された少なくとも一種の有機材料の混合層あるいは積層した複合層により形成してもよい。また、上記層状結合の含窒素環化合物からなる群より選択された少なくとも一種の有機材料の混合層あるいは積層した複合層により形成してもよい。更には、上記含窒素縮合三環系化合物と層状結合の含窒素環化合物の混合層あるいは積層した複合層により形成してもよい。
【0043】
このようにして上記電子注入層17を被覆して設けられた有機保護層19上に、ITOのような金属酸化物の光透過性金属材料から成る陰極電極20が陽極電極14に対向して設けられている。そして、陽極電極14は第1の電極取り出し配線12を通して電源に接続し、上記陰極電極20は第2の電極取り出し配線13を通して別の電源につながっている。更に、接着剤21による接合を通して、ガラス製あるいはステンレス製の封止缶22により全体が気密封止されている。
【0044】
上記有機EL発光装置10においては、上記陽極電極14、有機EL層18、有機保護層19および陰極電極19により有機EL素子が構成される。そして、電子輸送性発光層16からのEL光は、ガラス製の封止缶22あるいは透明ガラス基板11から出射することになる。
また、有機EL発光装置10の上記有機EL素子は、従来の技術で説明したのと同様に酸素あるいは水分によって劣化し易い。そこで、上記封止缶22による気密封止がなされ、図示しないが、封止缶22内には、例えば酸化バリウム粉末等の乾燥剤が封入され、酸素ガスあるいは水分等を吸着するようになっている。
【0045】
次に、上記有機EL発光装置10の製造方法について説明する。その製造方法では、透明ガラス基板11を洗浄した後に、例えばAlのような低抵抗金属膜をスパッタリング法で成膜する。そして、公知のフォトリソグラフィとウェットエッチングにより上記低抵抗金属膜を所定のパターンに加工する。このようにして、図2(a)に示すように、透明ガラス基板11上に第1の電極取り出し配線12と第2の電極取り出し配線13を形成する。
【0046】
更に、金属物成膜用金属マスクを用いたスパッタリング法によるAl材料の成膜、あるいはITOのような光透過性金属材料の成膜により、陽極電極14を形成する。ここで、陽極電極14は、第1の電極取り出し配線12に電気接続する。
【0047】
次に、有機物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により、図2(b)に示すように、陽極電極14上に正孔輸送層15と電子輸送性発光層16を形成する。そして、図2(c)に示すように、電子輸送性発光層16上に電子注入層17を形成し有機EL層18とする。ここで、従来の技術で説明したように、正孔輸送層15は例えばα−NPDであり、電子輸送性発光層16は例えばAlq3である。そして、電子注入層17は、例えば金属LiあるいはLiFである。
【0048】
次に、図2(d)に示すように、有機物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により、電子注入層17に被覆して有機保護層19を形成する。ここで、有機保護層19は、上述したような含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物である。例えば、有機保護層19として、その膜厚が5nm〜20nmの範囲のバソクプロインを被覆させる。上記有機保護層19の成膜は、有機EL層18の積層膜を形成した後、真空蒸着装置内に設けた例えばバソクプロイン入りの抵抗加熱ボートを加熱して、連続して行うとよい。なお、有機EL層18の正孔輸送層15、電子輸送性発光層16および電子注入層17は、同じ真空蒸着装置内において、例えばα−NPD入りの抵抗加熱ボート、Alq3入りの抵抗加熱ボート、金属Li等の蒸着源をそれぞれ順番に加熱して形成される。
【0049】
次に、図2(e)に示すように、金属物成膜用金属マスクを用いたスパッタリング法により、有機保護層19を被覆し、第2の電極取り出し配線13に電気接続する陰極電極20を形成する。ここで、陰極電極20は、ITOのような光透過性金属材料から成る。そして、ITOの成膜は、上記真空蒸着装置に連結したスパッタリング装置内において、ITOスパッタリングターゲットを用い酸素とAr(アルゴン)の混合ガスの雰囲気で行われる。
【0050】
このようにした後に、非透湿性のガラス製あるいはステンレス製の封止缶22により、図1に示したように全体を気密封止する。この気密封止の工程では、封止缶22の縁端部にUV硬化型の接着剤21を塗布し、透明ガラス基板11表面、第1の電極取り出し配線12および第2の電極取り出し配線13の表面と張り合わせる。そして、UV光が有機EL層18を照射しないようにして上記接着剤21をUVキュアーする。このようにして、前記接着剤21を介して封止缶22を透明ガラス基板11に接合させる。図示しないが、封止缶22内には、例えば酸化バリウム粉末等の乾燥剤を封入しておき、酸素ガスあるいは水分等が吸着されるようにしておく。
【0051】
次に、上記実施形態で説明した有機EL発光装置10駆動における信頼性について図3,4を参照して説明する。図3は、有機LED装置の発光効率あるいは輝度の経時変化を示し、上記有機EL素子に一定電流を流して駆動させた場合のデータである。図4は、駆動電圧の経時変化を示し、有機EL素子に一定電流を流す場合のデータである。そして、これらのデータは、上記有機保護層19が有る場合と無い場合の有機LED装置の動作の長時間変化を比較して調べた結果となっている。ここで、有機LED装置において、上記有機保護層19の有無以外の構造は同一であり、図2に説明した製造方法で形成した構造になっている。なお、電子注入層17は金属Liで構成されている。そして、有機保護層19は膜厚が10nmのバソクプロインで構成されている。また、陽極電極14はAl金属材料により形成している。
【0052】
図3の○印で示しているように、電子注入層17を上記有機保護層19で被覆することにより、有機LED装置の輝度の経時変化が大幅に改善される。この場合、4000時間の動作後であっても、有機LED装置の相対輝度は50%以上になっている。これに対して、有機保護層19が無い場合には、図3の●印で示しているように、有機LED装置の相対輝度は、その動作初期に急減する傾向にあり、200時間程度の動作後には50%以下になってしまう。
【0053】
そして、図4の○印で示しているように、電子注入層17を有機保護層19で被覆することにより、有機LED装置の駆動電圧の経時変化も大幅に改善する。この場合、4000時間の動作後であっても、有機LED装置の駆動電圧は、初期の22Vが23V程度になるがほとんど変化していない。これに対して、有機保護層19が無い場合には、図4の●印で示しているように、有機LED装置の駆動電圧は、その動作初期に急激に増加し、200時間程度の動作後には、初期の20Vが30Vに変化する。しかし、その後は、この増加した駆動電圧はほとんど変化しない。
【0054】
以上に説明したように、電子注入層17を有機保護層19により被覆することで、有機EL素子の信頼性が大きく向上することが判る。この有機保護層19の被覆による効果は、バソクプロイン以外の上述した含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物の場合であっても同様に生じるものである。また、電子注入層17が上記金属Li以外の場合であっても、上記有機保護層19の同様な被覆の効果が生じる。
【0055】
上記効果は、陰極電極20中の酸素の電子注入層17への侵入が、有機保護層19によって効果的に阻止されるために生じてくる。従来に技術で電子注入層の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属において徐々に生じていた酸化が、上記阻止により簡便に防止される。あるいは、上記陰極電極20を成膜する工程、例えば上記ITOスパッタリングターゲットを用い酸素とArの混合ガスによる反応性スパッタリングにおいて、上記有機保護層19は、ITOスパッタリングターゲットから生じる酸素、水分あるいは上記混合ガスの酸素が電子注入層17の活性な上記金属と反応するのを阻止する機能を有するからである。
【0056】
上述した含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物は、上記酸素あるいは水分の電子注入層17への侵入を阻止する機能を有し、更に電子輸送性化合物である。ここで、上記有機保護層19の膜厚は、5nm〜20nmの範囲に設定すると好適である。この膜厚が5nmより薄くなると、上記酸素あるいは水分を阻止する機能が不充分になってくる。また、その膜厚が20nmを超えてくると、有機保護層19の電気抵抗が増大し有機EL素子の駆動電圧が高くなり不適合になる。
【0057】
電子注入層17を被覆する有機保護層19は、上述した含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物の他、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機材料であればよい。しかし、この場合、その有機材料は、電子輸送性化合物であり上記電子注入層17の電子注入性に大きな影響を及ぼさないものが好ましい。
【0058】
上記第1の実施形態に示した有機保護層の効果は、上記有機LED装置の有機EL素子に限らず、電子注入層を有する種々の構造の有機EL素子において生じる。例えば、有機EL層が電子注入層と有機発光層の積層した構造であっても、あるいは、図1の構造に正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層等が更に積層された構造であっても、同様に生じる。
【0059】
また、上記有機保護層は、有機EL素子の製造時において、上記電子注入層の一部が製造工程で酸化されるのを防止する。このために、電子注入層の酸化を防止するための複雑な製造管理は不要になり、製造コストが低減するようになる。そして、有機EL素子の製造歩留まりが向上する。
【0060】
更に、上記有機保護層を用いることにより、酸素あるいは水分に対して非常に活性な材料により電子注入層を形成することが可能になり、電子注入層の構成材料の選択肢が増加することで、注入特性のよい低電圧駆動の有機EL素子が実現できるようになる。また、陰極電極に使用する金属材料の選択肢が増加することで、従来に較べて低抵抗の陰極電極が可能になる。
【0061】
上記実施形態では、有機EL素子の適用される有機EL装置が有機LEDのような照明装置の場合について具体的に説明しているが、これに限定されるものでは全くない。上記有機EL装置は面光源バックライトのような照明装置であっても、あるいはFPDのような表示装置であっても、それに適用される有機EL素子の上記有機保護層による同様な効果が生じる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について図5ないし7を参照して説明する。図5は本実施形態の好適な有機EL素子が適用された有機EL発光装置の断面図であり、図6,7はその製造方法を示す工程別断面図である。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の有機EL発光装置10aでは、図9に示した従来の技術の場合と同様にして、透明ガラス基板11上に第1の電極取り出し配線12および第2の電極取り出し配線が形成され、例えばITOのような透明電極により陽極電極14が形成されている。そして、上記陽極電極14上に積層する上記正孔輸送層15、電子輸送性発光層16および電子注入層17が第1の有機EL層18として形成してある。
【0064】
そして、図1で説明したのと同様に、電子注入層17を被覆する有機保護層19が形成されている。この有機保護層19は、上述した含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物のような有機材料により形成されると好適である。
そして、上記有機保護層19を被覆して電荷発生層23が形成されている。ここで、電荷発生層23は、上述したようにV、InZnO、あるいは、これ等の酸化物と有機物の混合層により形成される。
そして、図9で示した従来の技術の場合と同様にして、上記電荷発生層23上に積層する正孔輸送層24、電子輸送性発光層25および電子注入層26が第2の有機EL層27として形成されている。この第2の有機EL層27上に陽極電極14に対向する陰極電極20がAl金属材料により設けられ、上記陽極電極14は第1の電極取り出し配線12を通して電源に接続し、陰極電極20は第2の電極取り出し配線13を通して別の電源につながっている。そして、接着剤21による接合を通して、ガラス製あるいはステンレス製の封止缶22により全体が気密封止してある。
【0065】
上記有機EL発光装置10aにおいては、上記陽極電極14、第1の有機EL層18、有機保護層19、電荷発生層23、第2の有機EL層27および陰極電極20により有機EL素子が構成される。そして、複数の電子輸送性発光層16,25からのEL光が、透明ガラス基板11側から高輝度に出射するようになる。
また、この場合も、有機EL発光装置10aの上記有機EL素子は、特に酸素あるいは水分によって劣化し易いので、封止缶22内には、例えば酸化バリウム粉末等の乾燥剤が封入され、酸素ガスあるいは水分等を吸着するようになっている。その他は、第1の実施形態で説明したのと同様であるので説明を省略する。
【0066】
次に、上記有機EL発光装置10aの製造方法について説明する。その製造方法では、透明ガラス基板11を洗浄した後に、例えばAlのような低抵抗金属膜をスパッタリング法で成膜する。そして、公知のフォトリソグラフィとウェットエッチングにより上記低抵抗金属膜を所定のパターンに加工する。このようにして、図6(a)に示すように、透明ガラス基板11上に第1の電極取り出し配線12と第2の電極取り出し配線13を形成する。引続いて、金属物成膜用金属マスクを用いたスパッタリング法による例えばITOのような光透過性金属材料の成膜により、陽極電極14を形成する。ここで、陽極電極14は、第1の電極取り出し配線12に電気接続する。
【0067】
次に、有機物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により、図6(b)に示すように、陽極電極14上に正孔輸送層15、電子輸送性発光層16および電子注入層17を形成し有機EL層18とする。ここで、第1の実施形態で説明したように、正孔輸送層15は例えばα−NPDであり、電子輸送性発光層16は例えばAlq3であり、電子注入層17は、例えば金属LiあるいはLiFである。
【0068】
次に、図6(c)に示すように、有機物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により、電子注入層17に被覆して有機保護層19を形成する。ここで、有機保護層19は、図2で説明したのと同様にして、その膜厚が5nm〜20nmの範囲のバソクプロインを被覆させる。ここで、有機EL層18の正孔輸送層15、電子輸送性発光層16および電子注入層17の成膜、そして有機保護層19の成膜は、同一の有機物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により行われる。
【0069】
次に、図6(d)に示すように、金属物成膜用金属マスクを用いた真空蒸着法により、有機保護層19を被覆して電荷発生層23を形成する。なお、上記真空蒸着法に代えてスパッタリング法を採用することもできる。ここで、電荷発生層23は、Vのような材料から成る。そして、Vの成膜は、例えば上記真空蒸着装置内において、粉末Vを用い真空中で行われる。
【0070】
次に、このスパッタリング装置から上記真空蒸着装置に戻されて、第1の有機EL層18の成膜の場合と同様にして、図7(a)に示すように電荷発生層23上に積層して正孔輸送層24、電子輸送性発光層25を成膜し、更に、図7(b)に示すように電子注入層26を成膜して第2の有機EL層27を形成する。このようにして、図7(c)に示すように、陽極電極14に対向するように第2の有機EL層27上に陰極電極20をAl金属材料により形成する。ここで、陰極電極20は第2の電極取り出し配線13に接続させる。そして、第1の実施形態で説明したのと同様にして、接着剤21による接合を通して、非透湿性のガラス製あるいはステンレス製の封止缶22により、図5に示したように全体を気密封止する。
【0071】
上記第2の実施形態では、電荷発生層23中の酸素の電子注入層17への侵入が、有機保護層19によって効果的に阻止されるようになり、電子注入層17の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の徐々の酸化が防止されるようになる。このために、第1の実施形態の図3,4で説明したのと全く同様に有機EL発光装置10aの駆動における信頼性が、従来の有機保護層19の無い場合の較べて大幅に向上するようになる。
【0072】
また、上記電荷発生層23を成膜する工程、例えば上記粉末Vを用いた抵抗加熱蒸着において、上記有機保護層19は、粉末Vから生じる酸素、水分あるいは上記混合ガスによるV分解物であるVOxが電子注入層17の活性なアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と反応するのを阻止する機能を有する。
【0073】
このようにして、第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明したのと全く同様の効果が生じてくる。そして、このような効果は、上記有機LED装置10aで説明した有機EL素子に限らず、電子注入層を有する種々の構造の有機EL素子においても生じる。例えば、有機EL層が電子注入層と有機発光層の積層した構造であっても、あるいは、図2の構造の有機EL層に正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層等が更に積層された構造であっても、同様に生じる。
【0074】
上記第2の実施形態における有機EL素子の適用される有機EL装置は、有機LEDの照明灯あるいは面光源バックライトのような照明装置であってもよいし、また、FPDのような表示装置であってもよい。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる有機EL発光装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる有機EL発光装置の製造方法を示す工程別断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる有機EL発光装置の発光輝度の経時変化を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる有機EL発光装置の駆動電圧の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる有機EL発光装置を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる有機EL発光装置の製造方法を示す工程別断面図である。
【図7】図6に示す工程の続きの工程別断面図である。
【図8】従来の技術にかかる有機EL発光装置を示す断面図である。
【図9】従来の技術にかかる別の有機EL発光装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
10,10a 有機EL発光装置
11 透明ガラス基板
12 第1の電極取り出し配線
13 第2の電極取り出し配線
14 陽極電極
15、24 正孔輸送層
16,25 電子輸送性発光層
17,26 電子注入層
18 (第1の)有機EL層
19 有機保護層
20 陰極電極
21 接着剤
22 封止缶
23 電荷発生層
27 第2の有機EL層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極電極と陰極電極の間に、少なくとも一層の有機発光層と電子注入層が積層されている有機EL素子において、
前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、
前記陰極電極は、金属と酸素の結合を有する金属材料からなり、
前記電子注入層と前記陰極電極との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
対向する陽極電極と陰極電極との間に、複数の有機発光層と、電子注入層と、前記電子注入層に積層する電荷発生層を有する有機EL素子において、
前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、
前記電荷発生層は、金属と酸素の結合を有し、正孔注入性と電子注入性とを有する材料からなり、
前記電子注入層と前記電荷発生層との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項3】
前記有機保護層は、含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記含窒素縮合三環系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)、4,7−フェナントロリン、3,8−フェナントロリン、2,7−フェナントロリン、アクリジン、カルバゾール、フェナジン、フェナントリジンからなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなることを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記層状結合の含窒素環化合物は、フタロシアニン、金属フタロシアニン誘導体、ポルフィリン、金属ポルフィリン誘導体からなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなることを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記含窒素縮合三環系化合物あるいは前記層状結合の含窒素環化合物の膜厚は、5nm〜20nmの範囲にあることを特徴とする請求項4又は5に記載の有機EL素子。
【請求項7】
透明基板上において、対向する陽極電極と陰極電極の間に、少なくとも一層の有機発光層と電子注入層を有する発光装置であって、
前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、
前記陰極電極は、金属と酸素の結合を有する金属材料からなり、
前記電子注入層と前記陰極電極との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持され、
前記透明基板および封止缶により気密封止されていることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
透明基板上において、対向する陽極電極と陰極電極の間に、複数の有機発光層と、電子注入層と、前記電子注入層に積層する電荷発生層を有する発光装置であって、
前記電子注入層は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含有する材料からなり、
前記電荷発生層は、金属と酸素の結合を有し、正孔注入性と電子注入性とを有する材料からなり、
前記電子注入層と前記電荷発生層との間に、前記アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と酸素との反応を阻止する有機保護層が挟持され、
前記透明基板および封止缶により気密封止されていることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
前記有機保護層は、含窒素縮合三環系化合物あるいは層状結合の含窒素環化合物からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記含窒素縮合三環系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)、4,7−フェナントロリン、3,8−フェナントロリン、2,7−フェナントロリン、アクリジン、カルバゾール、フェナジン、フェナントリジンからなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなることを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記層状結合の含窒素環化合物は、フタロシアニン、金属フタロシアニン誘導体、ポルフィリン、金属ポルフィリン誘導体からなる群より選択された少なくとも一種の有機材料からなることを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項12】
前記含窒素縮合三環系化合物あるいは前記層状結合の含窒素環化合物の膜厚は、5nm〜20nmの範囲にあることを特徴とする請求項10又は11に記載の発光装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−80600(P2007−80600A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264758(P2005−264758)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】