説明

有機EL素子の製造方法、有機EL素子および表示装置

【課題】簡素な工程で、異物等に起因した短絡を低減することが可能な有機EL素子の製造方法、有機EL素子および表示装置を提供する。
【解決手段】基板11に、第1電極14、発光層を含む有機層16、第2電極17および抵抗層18を順に形成する。抵抗層18,第2電極17および有機層16には、異物等53の逆テーパ状側面53Aの下に、途切れ部分51が生じている。抵抗層18の上に、窒化ケイ素などの絶縁材料よりなる埋込み層を形成し、途切れ部分51以外の埋込み層を異方性エッチングにより除去して、途切れ部分51に絶縁材料よりなる埋込み部52を設ける。抵抗層18および埋込み部52の上に第3電極19を設ける。途切れ部分51で第1電極14と第3電極19とが接触して短絡を生じることが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)素子の製造方法、有機EL素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、通常、基板に下部電極、有機発光材料よりなる発光層を含む有機層、および上部電極を順に積層した構成を有している。ところが、製造工程において下部電極の表面に異物または突起(以下、「異物等」という。)が存在すると、その異物等の周辺で有機層が途切れ、その途切れ部分に露出した下部電極に上部電極が接触して短絡を生じる場合がある。このような短絡は、アクティブマトリクス方式では点欠陥、パッシブマトリクスでは線欠陥の原因となる。特に大型の表示装置では、単位面積当たりの許容欠陥数が少なくなるので、異物等に起因した短絡による表示品質の低下が大きな問題となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、下部電極を2層以上とし、有機層に近い層ほど高抵抗にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−338916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異物等の大きさや形状はさまざまであり、また異物等の発生それ自体をなくすことは極めて困難である。上述した従来方法でも、異物等の大きさや形状によっては十分に短絡を抑えることが難しく、更に改良の余地があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な工程で、異物等に起因した短絡を低減することが可能な有機EL素子の製造方法、有機EL素子および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の有機EL素子の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を含むものである。
(A)基板に、第1電極、発光層を含む有機層、第2電極および抵抗層を順に形成する工程
(B)抵抗層の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成する工程
(C)抵抗層,第2電極および有機層に生じた途切れ部分以外の埋込み層を異方性エッチングにより除去し、途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設ける工程
(D)抵抗層および埋込み部の上に第3電極を形成する工程
【0008】
本発明による第2の有機EL素子の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を含むものである。
(A)基板に、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を順に形成する工程
(B)第2電極の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成する工程
(C)第2電極および有機層に生じた途切れ部分以外の埋込み層を異方性エッチングにより除去し、途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設ける工程
(D)第2電極および埋込み部の上に、抵抗層および第3電極を形成する工程
【0009】
本発明による第1の有機EL素子は、以下の(A)〜(F)の構成要素を備えたものである。
(A)基板に設けられた第1電極
(B)発光層を含み、第1電極の上に設けられた有機層
(C)有機層の上に設けられた第2電極
(D)第2電極の上に設けられた抵抗層
(E)絶縁材料により構成され、抵抗層,第2電極および有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部
(F)抵抗層および埋込み部の上に設けられた第3電極
【0010】
本発明による第2の有機EL素子は、以下の(A)〜(F)の構成要素を備えたものである。
(A)基板に設けられた第1電極
(B)発光層を含み、第1電極の上に設けられた有機層
(C)有機層の上に設けられた第2電極
(D)絶縁材料により構成され、第2電極および有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部
(E)第2電極および埋込み部の上に設けられた抵抗層
(F)抵抗層の上に設けられた第3電極
【0011】
本発明による第1および第2の表示装置は、上記本発明による第1および第2の有機EL素子をそれぞれ備えたものである。
【0012】
本発明の第1の有機EL素子、または本発明の第1の表示装置では、抵抗層,第2電極および有機層に生じた途切れ部分に、絶縁材料よりなる埋込み部が設けられ、その上に第3電極が設けられているので、途切れ部分で第1電極と第3電極とが接触して短絡を生じることが抑えられる。
【0013】
本発明の第2の有機EL素子、または本発明の第2の表示装置では、第2電極および有機層に生じた途切れ部分に、絶縁材料よりなる埋込み部が設けられ、その上に抵抗層および第3電極が設けられているので、途切れ部分で第1電極と第3電極とが接触して短絡を生じることが抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の有機EL素子の製造方法によれば、基板に、第1電極、発光層を含む有機層、第2電極および抵抗層を順に形成したのち、この抵抗層の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成し、抵抗層,第2電極および有機層に生じた途切れ部分以外の埋込み層を異方性エッチングにより除去して、途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設けるようにしたので、簡素な工程で、異物等に起因した短絡を低減することが可能となる。
【0015】
本発明の第2の有機EL素子の製造方法によれば、基板に、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を順に形成したのち、この第2電極の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成し、第2電極および有機層に生じた途切れ部分以外の埋込み層を異方性エッチングにより除去して、途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設けるようにしたので、簡素な工程で、異物等に起因した短絡を低減することが可能となる。
【0016】
本発明の第1の有機EL素子、または本発明の第1の表示装置によれば、抵抗層,第2電極および有機層に生じた途切れ部分に、絶縁材料よりなる埋込み部を設けるようにしたので、異物等に起因した短絡を低減し、表示品質を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の第2の有機EL素子、または本発明の第2の表示装置によれば、第2電極および有機層に生じた途切れ部分に、絶縁材料よりなる埋込み部を設けるようにしたので、異物等に起因した短絡を低減し、表示品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した有機層の構成を表す断面図である。
【図5】図3に示した有機EL素子の一部を拡大して表す断面図である。
【図6】図4に示した有機EL素子の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】図8に示した第1電極,有機層,第2電極および抵抗層の一部を拡大して表す断面図である。
【図10】図9に続く工程を表す断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す断面図である。
【図12】図11に続く工程を表す断面図である。
【図13】図12に示した第1電極,有機層,第2電極,抵抗層および第3電極の一部を拡大して表す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る有機EL素子の一部を拡大して表す断面図である。
【図15】図14に示した有機EL素子の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図16】図15に続く工程を表す断面図である。
【図17】図16に続く工程を表す断面図である。
【図18】図17に続く工程を表す断面図である。
【図19】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図20】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図21】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図22】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図23】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図24】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図25】実施例の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(抵抗層を形成したのちに埋込み部を形成する例)
2.第2の実施の形態(第2電極を形成したのちに埋込み部を形成する例)
3.適用例
4.実施例
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、後述する複数の有機EL素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0021】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する第1電極14の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10R(または10G,10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0022】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0023】
また、表示領域110には、赤色の光を発生する有機EL素子10Rと、緑色の光を発生する有機EL素子10Gと、青色の光を発生する有機EL素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に配置されている。なお、隣り合う有機EL素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0024】
図3は図1に示した表示領域110の断面構成を表したものである。有機EL素子10R,10G,10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1、平坦化絶縁膜13、陽極としての第1電極14、電極間絶縁膜15、後述する発光層16Cを含む有機層16、第2電極17、抵抗層18および陰極としての第3電極19がこの順に積層された構成を有している。
【0025】
このような有機EL素子10R,10G,10Bは、保護層20により被覆され、更にこの保護層20上に接着層30を間にしてガラスなどよりなる封止用基板40が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0026】
基板11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などにより構成されている。駆動トランジスタTr1は、例えば、ゲート電極151,ゲート絶縁膜152,半導体層153,層間絶縁膜154およびソース/ドレイン電極155を有し、平坦化絶縁膜13に設けられた接続孔13Aを介して第1電極14に電気的に接続されている。
【0027】
平坦化絶縁膜13は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、微細な接続孔13Aが設けられるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化絶縁膜13の構成材料としては、例えば、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール,ポジ型感光性ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料が挙げられる。
【0028】
第1電極14は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。特に、第1電極14が陽極として使われる場合には、第1電極14は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。このような第1電極14としては、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が100nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。第1電極14の上面または下面には、インジウムとスズの酸化物(ITO)などの透明導電膜が設けられていてもよい。なお、アルミニウム(Al)合金のように、反射率が高くても、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が大きくないことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層を設けることによって第1電極14として使用することが可能である。
【0029】
電極間絶縁膜15は、第1電極14と第2電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域を所望の形状にするためのものであり、例えばポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール,ポジ型感光性ポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。電極間絶縁膜15には、発光領域に対応して開口が設けられている。なお、有機層16ないし第3電極19は、開口だけでなく電極間絶縁膜15の上にも設けられていてもよいが、発光が生じるのは電極間絶縁膜15の開口だけである。
【0030】
図4は、有機層16の構成を表したものである。有機層16は、例えば、第1電極14の側から順に、正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C,電子輸送層16Dおよび電子注入層16Eを積層した構成を有する。これらのうち発光層16C以外の層は必要に応じて設ければよい。有機層16は、有機EL素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層16Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層16Bは、発光層16Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層16Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層16Dは、発光層16Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子注入層16Eは、電子注入効率を高めるためのものである。
【0031】
有機EL素子10Rの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。有機EL素子10Rの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL素子10Rの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機EL素子10Rの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。有機EL素子10Rの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0032】
【化1】

(化1において、R1〜R6それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アルールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【0033】
具体的には、有機EL素子10Rの正孔注入層16Aは、化2に示した材料により構成されていることが好ましい。
【0034】
【化2】

【0035】
有機EL素子10Gの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。有機EL素子10Gの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機EL素子10Gの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。有機EL素子10Gの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。有機EL素子10Gの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0036】
有機EL素子10Bの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。有機EL素子10Bの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機EL素子10Bの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機EL素子10Bの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。有機EL素子10Gの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0037】
第2電極17は、例えば、厚みが3nm以上8nm以下であり、金属導電膜により構成されている。具体的には、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)またはナトリウム(Na)の合金が挙げられる。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、第2電極17の材料は、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(Al−Li合金)でもよい。
【0038】
第2電極17は、また、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、有機EL素子10R,10G,10Bは、発光層16Cで発生した光を第1電極14と第2電極17との間で共振させる共振器構造MC1を有している。この共振器構造MC1は、第1電極14と有機層16との界面を反射面P1、有機層16と第2電極17との界面を半透過反射面P2とし、有機層16を共振部として、発光層16Cで発生した光を共振させて半透過反射面P2の側から取り出すものである。このように共振器構造MC1を有するようにすれば、発光層16Cで発生した光が多重干渉を起こし、半透過反射面P2の側から取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、ピーク強度を高めることができる。すなわち、正面方向における光放射強度を高め、発光の色純度を向上させることができる。また、封止用基板40側から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタとの組合せにより有機EL素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0039】
そのためには、反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離L1は数1を満たすようにすることが好ましい。
【0040】
(数1)
(2L1)/λ+Φ/(2π)=m
(式中、L1は反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離、mは次数(0または自然数)、Φは反射面P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と半透過反射面P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは半透過反射面P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。なお、数1においてL1およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0041】
反射面P1と半透過反射面P2との間には、取り出し発光強度が極大となる位置(共振面)が存在する。この共振面はm+1箇所あり、m=1以上の条件においては、最も反射面P1寄りの共振面に発光面がある場合が最も発光スペクトルの半値幅が広くなるものである。
【0042】
このような共振器構造MC1を有する有機EL素子10R,10G,10Bでは、次数mが大きくなるほど、輝度や色度の視野角依存性、すなわち正面方向から見た場合と斜め方向から見た場合とでの輝度や色度の変化が大きくなる傾向がある。一般のテレビジョン装置等の用途に有機EL表示装置を用いることを想定した場合、視野角による輝度低下および色度変化は小さい方が望ましい。
【0043】
視野角特性のみを考慮すると、反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離L1は数1を満たす正の最小値であることが好ましい。すなわち、m=0であることが好ましい。
【0044】
しかしながら、この条件では有機層16の厚みが薄くなるので、発光特性への影響や下部電極14と上部電極17との短絡発生のおそれが生じる。そのため、反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離L1が数1を満たす正の最小値となるときのmをm0としたときに、m=m0+1、すなわちm=1とすることが好ましい。これにより、輝度や色度の視野角依存性が大きくなることを回避すると共に、発光特性の低下や短絡発生を抑えることが可能となる。
【0045】
図3に示した抵抗層18は、第1電極と第3電極との短絡を抑えるためのものであり、例えば、厚みが200nm以上2μm以下、好ましくは300nm以上1μm以下、より好ましくは400nm以上1μm以下であり、酸化物半導体により構成されている。酸化物半導体としては、例えば、酸化ニオブ(Nb25),酸化チタン(TiO2),Nb25とTiO2との混合物,TiO2とZnOとの混合物,または酸化ケイ素(SiO2)と酸化スズ(SnO2)との混合物が挙げられる。抵抗層18の抵抗率は、有機EL素子10R,10G,10Bの駆動時に抵抗層18で生じる電圧降下を考慮して設定されており、例えば、1×104Ωcm以上1×108Ωcmであればより好ましく、1×106Ωcm以上1×107Ωcmであれば更に好ましい。また、抵抗層18は上述したように酸化物半導体により構成されているので、その抵抗率は成膜時の酸素分圧により変化する。ただし、抵抗層18の抵抗率は、成膜時の酸素分圧を変化させた場合にも1×10-3Ωcm以上となっていることが好ましい。
【0046】
図3に示した第3電極19は、例えば、厚みが0.1μm程度であり、ITOまたはIZO(登録商標)などの透明導電材料により構成された透明電極である。
【0047】
図5は、図3に示した有機EL素子10R,10G,10Bの一部を拡大して表したものである。抵抗層18,第2電極17および有機層16には、途切れ部分51が生じている可能性がある。この途切れ部分51には、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられている。埋込み部52および抵抗層18の上に第3電極19が設けられている。これにより、この表示装置では、異物等に起因した短絡を低減することが可能となっている。
【0048】
途切れ部分51は、第1電極14の上面の異物または突起53(以下、「異物等53」という。)の逆テーパ状側面53Aの下に生じたものである。このような逆テーパ状側面53Aの下の領域は、製造工程において有機層16および第2電極17が成膜されにくく、抵抗層18によっても被覆されない場合には、第1電極14が露出した途切れ部分51となってしまい、第1電極14と第3電極19との間で短絡が生じる可能性がある。この途切れ部分51は、抵抗層18の厚みを厚くすることによって完全に被覆することも可能である。しかし、抵抗層18の厚みを厚くすると、表示装置の厚みが増加し、発光層16Cから光取出し位置までの距離が大きくなるので、視野角依存性が悪化するおそれがある。
【0049】
そこで、本実施の形態では、途切れ部分51に埋込み部52を設けることにより、第1電極14と第3電極19との間の短絡を抑えると共に、抵抗層18の厚みを小さくして視野角依存性を小さくするようにしたものである。埋込み部52は窒化ケイ素(SiNx、具体的にはSi34)により構成されていることが好ましい。窒化ケイ素は、後述するように、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により途切れ部分51を良好に被覆することができ、また、異方性エッチングにより途切れ部分51以外を容易に除去することが可能である。埋込み部52は、酸化ケイ素(SiO2)など、プラズマCVD法で成膜可能な他の絶縁材料により構成されていてもよい。
【0050】
図3に示した保護層20は、窒化ケイ素(SiNx ),酸化ケイ素または金属酸化物などにより構成されている。保護膜20は、窒化ケイ素の単層により構成され、波長450nmでの屈折率が1.65以上1.75以下であることが好ましい。これにより保護膜20の屈折率が接着層30の屈折率に近くなり、保護膜20の厚みを厚くしても接着層30との間での光の干渉を弱くして、面内での色度や輝度のずれを抑えることが可能となる。具体的には、保護膜20の厚みは例えば100nm以上1μm以下であり、応力はほぼゼロとなっていることが好ましい。
【0051】
図3に示した接着層30は、例えば熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。波長450nmでの保護膜20と接着層30との屈折率差は0.3以下であることが好ましい。面内での色度や輝度のずれを更に小さくすることができるからである。
【0052】
図3に示した封止用基板40は、有機EL素子10R,10G,10Bの第2電極17の側に位置しており、接着層30と共に有機EL素子10R,10G,10Bを封止するものであり、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板40には、例えば、カラーフィルタおよびブラックマトリクスとしての遮光膜(いずれも図示せず)が設けられており、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機EL素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0053】
カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機EL素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0054】
更に、カラーフィルタにおける透過率の高い波長範囲と、共振器構造MC1から取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止用基板40から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタを透過し、その他の波長の外光が有機EL素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
【0055】
遮光膜は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr2 O3 )とを交互に積層したものが挙げられる。
【0056】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0057】
まず、図6(A)に示したように、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成する。次いで、図6(B)に示したように、基板11の全面に上述した感光性樹脂を塗布することにより平坦化絶縁膜13を形成し、露光および現像により平坦化絶縁膜13を所定の形状にパターニングすると共に接続孔13Aを形成し、焼成する。
【0058】
続いて、図6(C)に示したように、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第1電極14を形成し、ウェットエッチングにより第1電極14を選択的に除去して有機発光素子10R,10G,10Bごとに分離する。
【0059】
そののち、図7(A)に示したように、第1基板11の全面にわたり上述した感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により発光領域に対応して開口を設け、焼成することにより、電極間絶縁膜15を形成する。
【0060】
電極間絶縁膜15を形成したのち、図7(B)に示したように、例えば蒸着法または転写法により、上述した厚みおよび材料よりなる有機層16の正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C,電子輸送層16Dおよび電子注入層16Eを形成する。
【0061】
有機層16を形成したのち、図8(A)に示したように、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる上部電極17を成膜する。
【0062】
上部電極17を形成したのち、図8(B)に示したように、例えばスパッタ法により、上述した厚みおよび材料よりなる抵抗層18を形成する。このとき、図9に示したように、第1電極14の上面の異物等53の逆テーパ状側面53Aの下には、抵抗層18,第2電極17および有機層16の途切れ部分51が生じている。このような逆テーパ状側面53Aの下の領域は、有機層16および第2電極17が成膜されにくく、抵抗層18によっても完全に被覆されない場合があるからである。
【0063】
抵抗層18の成膜時圧力は、上部電極17の成膜時圧力よりも高いことが好ましい。これにより、途切れ部分51の一部を抵抗層18で被覆してしまうことが可能だからである。具体的には、抵抗層18の成膜時圧力は例えば0.1Pa以上10Pa以下、上部電極17の成膜時圧力は例えば1×10-3Pa以下であることが好ましい。
【0064】
抵抗層18を形成したのち、図10に示したように、抵抗層18の上に、例えばプラズマCVD法により、絶縁材料、例えば窒化ケイ素よりなる埋込み層54を形成する。プラズマCVD法は被覆性の高い成膜方法であるので、途切れ部分51は、埋込み層54により確実に被覆される。
【0065】
埋込み層54を形成したのち、図11に示したように、途切れ部分51以外の埋込み層54を異方性エッチングにより除去し、途切れ部分51に絶縁材料、例えば窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設ける。
【0066】
埋込み部52を形成したのち、図12に示したように、抵抗層18および埋込み部52の上に、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第3電極19を形成する。このとき、図13に示したように、途切れ部分51には、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられているので、第1電極14と第3電極19との接触による短絡発生が抑えられる。以上により、図3ないし図5に示したような有機発光素子10R,10G,10Bが形成される。
【0067】
続いて、例えばCVD法またはスパッタ法により、有機発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護層20を形成する。
【0068】
また、例えば、上述した材料よりなる封止用基板40に、上述した材料よりなる遮光膜を形成する。続いて、封止用基板40に赤色フィルタ(図示せず)の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタ(図示せず)と同様にして、青色フィルタ(図示せず)および緑色フィルタ(図示せず)を順次形成する。
【0069】
そののち、保護層20の上に、接着層30を形成し、この接着層30を間にして封止用基板40を貼り合わせる。以上により、図1ないし図5に示した表示装置が完成する。
【0070】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極14(反射面P1)と第2電極17(半透過反射面P2)との間で多重反射し、第2電極17,抵抗層18,第3電極19,カラーフィルタ(図示せず)および封止用基板40を透過して取り出される。
【0071】
ここでは、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられ、抵抗層18および埋込み部52の上に、第3電極19が設けられているので、途切れ部分51で第1電極14と第3電極19とが接触して短絡を生じることが抑えられ、表示品質が向上する。
【0072】
このように本実施の形態の有機EL素子10R,10G,10Bの製造方法では、基板11に、第1電極14、発光層を含む有機層16、第2電極17および抵抗層18を順に形成したのち、この抵抗層18の上に、絶縁材料よりなる埋込み層54を形成し、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51以外の埋込み層54を異方性エッチングにより除去して、途切れ部分51に絶縁材料よりなる埋込み部52を設けるようにしたので、簡素な工程で、異物等53に起因した短絡を低減することが可能となる。
【0073】
本実施の形態の有機EL素子10R,10G,10Bまたは表示装置では、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52を設けるようにしたので、異物等53に起因した短絡を低減し、表示品質を向上させることが可能となる。
【0074】
(第2の実施の形態)
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置における有機EL素子10R,10G,10Bの一部を拡大して表したものである。この有機EL素子10R,10G,10Bないし表示装置は、第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられ、第2電極17および埋込み部52の上に、抵抗層18および第3電極19が設けられていることにおいて、上記第1の実施の形態と異なるものである。このことを除いては、この有機EL素子10R,10G,10Bないし表示装置は、上記第1の実施の形態と同様の構成、作用および効果を有している。
【0075】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。なお、第1の実施の形態と重複する部分については、図6ないし図12を参照して説明する。
【0076】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図6(A)ないし図6(C)に示した工程により、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140、平坦化絶縁膜13および接続孔13A、第1電極14を形成する。
【0077】
次いで、第1の実施の形態と同様にして、図7(A),図7(B)および図8(A)に示した工程により、電極間絶縁膜15、有機層16および上部電極17を形成する。このとき、図15に示したように、第1電極14の上面の異物等53の逆テーパ状側面53Aの下には、第2電極17および有機層16の途切れ部分51が生じている。このような逆テーパ状側面53Aの下の領域は、有機層16および第2電極17が成膜されにくいからである。
【0078】
続いて、図16に示したように、第2電極17の上に、例えばプラズマCVD法により、絶縁材料、例えば窒化ケイ素よりなる埋込み層54を形成する。プラズマCVD法は被覆性の高い成膜方法であるので、途切れ部分51は、埋込み層54により確実に被覆される。
【0079】
埋込み層54を形成したのち、図17に示したように、途切れ部分51以外の埋込み層54を異方性エッチングにより除去し、途切れ部分51に絶縁材料、例えば窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設ける。
【0080】
埋込み部52を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図8(B)に示した工程により、第2電極17および埋込み部52の上に、例えばスパッタ法により、上述した厚みおよび材料よりなる抵抗層18を形成する。抵抗層18の成膜時圧力は、第1の実施の形態と同様に、上部電極17の成膜時圧力よりも高いことが好ましい。これにより、第2電極17および埋込み部52を抵抗層18で確実に被覆することが可能となるからである。具体的には、抵抗層18の成膜時圧力は例えば0.1Pa以上10Pa以下、上部電極17の成膜時圧力は例えば1×10-3Pa以下であることが好ましい。
【0081】
抵抗層18を形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、図12に示した工程により、抵抗層18の上に、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第3電極19を形成する。このとき、図18に示したように、途切れ部分51には、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられているので、第1電極14と第3電極19との接触による短絡発生が抑えられる。以上により、図14に示したような有機発光素子10R,10G,10Bが形成される。
【0082】
続いて、第1の実施の形態と同様にして、有機発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護層20を形成し、この保護層20の上に、接着層30を形成し、この接着層30を間にして封止用基板40を貼り合わせる。以上により、図14に示した表示装置が完成する。
【0083】
この表示装置では、各画素に対して第1の実施の形態で説明したと同じように駆動制御がなされ、表示が行われる。ここでは、第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52が設けられ、その上に抵抗層18および第3電極19が設けられているので、途切れ部分51で第1電極14と第3電極19とが接触して短絡を生じることが抑えられ、表示品質が向上する。
【0084】
このように本実施の形態の有機EL素子10R,10G,10Bの製造方法では、基板11に、第1電極14、発光層16Cを含む有機層16および第2電極17を順に形成したのち、第2電極17の上に、絶縁材料よりなる埋込み層54を形成し、第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51以外の埋込み層54を異方性エッチングにより除去して、途切れ部分51に絶縁材料よりなる埋込み部52を設けるようにしたので、簡素な工程で、異物等53に起因した短絡を低減することが可能となる。
【0085】
本実施の形態の有機EL素子10R,10G,10Bまたは表示装置では、第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52を設けるようにしたので、異物等53に起因した短絡を低減し、表示品質を向上させることが可能となる。
【0086】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0087】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図19に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板40および接着層30から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0088】
(適用例1)
図20は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0089】
(適用例2)
図21は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0090】
(適用例3)
図22は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0091】
(適用例4)
図23は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0092】
(適用例5)
図24は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【実施例】
【0093】
更に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0094】
(実施例1)
第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極17は、厚みを5nmとし、Mg−Ag合金により構成した。抵抗層18は、厚みを500nmとし、Nb25により構成した。途切れ部分51には、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けた。抵抗層18の抵抗率は1×106Ωcmとした。第3電極19は、厚みを100nmとし、IZO(登録商標)により構成した。
【0095】
(比較例1−1)
途切れ部分に埋込み部を設けなかったことを除いては上記実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0096】
(比較例1−2)
抵抗層および第3電極を設けないこと、および途切れ部分に埋込み部を設けなかったことを除いては上記実施例1と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極は、厚みを10nmとし、Mg−Ag合金により構成した。
【0097】
得られた実施例1,比較例1−1,1−2の表示装置について、46万画素中の非発光欠陥の平均個数を調べたところ、実施例1では1個、比較例1−1では10個、比較例1−2では36個であった。すなわち、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けるようにすれば、非発光欠陥を低減することができることが分かった。
【0098】
(実施例2)
第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極17は、厚みを5nmとし、Mg−Ag合金により構成した。抵抗層18は、厚みを500nmとし、IZO(登録商標)により構成した。途切れ部分51には、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けた。抵抗層18の成膜時の酸素分圧は5%とした。第3電極19は、厚みを100nmとし、IZO(登録商標)により構成した。
【0099】
(比較例2−1)
途切れ部分に埋込み部を設けなかったことを除いては上記実施例2と同様にして表示装置を作製した。
【0100】
得られた実施例2および比較例2−1の表示装置について、46万画素中の非発光欠陥の平均個数を調べたところ、実施例2では2個、比較例2−1では218個であった。すなわち、埋込み部52を窒化ケイ素に代えてIZO(登録商標)により構成した場合にも、非発光欠陥を低減することができることが分かった。
【0101】
(実施例3)
第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極17は、厚みを5nmとし、Mg−Ag合金により構成した。抵抗層18は、厚みを350nmとし、Nb25により構成した。途切れ部分51には、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けた。抵抗層18の抵抗率は1×106Ωcmとした。第3電極19は、厚みを100nmとし、IZO(登録商標)により構成した。
【0102】
(比較例3−1)
途切れ部分に埋込み部を設けなかったことを除いては上記実施例3と同様にして表示装置を作製した。
【0103】
得られた実施例3および比較例3−1の表示装置について、46万画素中の非発光欠陥の平均個数を調べたところ、実施例3では1個、比較例3−1では41個であった。すなわち、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けるようにすれば、抵抗層18の厚みを薄くしても非発光欠陥を低減できることが分かった。
【0104】
(実施例4)
第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極17は、厚みを5nmとし、Mg−Ag合金により構成した。抵抗層18は、厚みを500nmとし、 出光興産社製の正孔輸送性材料「HT320」により構成し、真空蒸着により成膜した。途切れ部分51には、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けた。抵抗層18の抵抗率は1×107Ωcmとした。第3電極19は、厚みを100nmとし、IZO(登録商標)により構成した。
【0105】
(比較例4−1)
途切れ部分に埋込み部を設けなかったことを除いては上記実施例4と同様にして表示装置を作製した。
【0106】
得られた実施例4および比較例4−1の表示装置について、46万画素中の非発光欠陥の平均個数を調べたところ、実施例4では2個、比較例4−1では42個であった。すなわち、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けるようにすれば、抵抗層18の抵抗率を高くしても非発光欠陥を低減できることが分かった。
【0107】
(実施例5−1〜5−3)
第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、第2電極17は、厚みを5nmとし、Mg−Ag合金により構成した。抵抗層18は、NbOにより構成し、厚みを実施例5−1では650nm、実施例5−2では500nm、実施例5−3では350nmとした。途切れ部分51には、窒化ケイ素よりなる埋込み部52を設けた。抵抗層18の抵抗率は1×106Ωcmとした。第3電極19は、厚みを100nmとし、IZO(登録商標)により構成した。
【0108】
得られた実施例5−1〜5−3の表示装置について、46万画素中の非発光欠陥の平均個数を調べたところ、実施例5−1では1個、実施例5−2では1個、実施例5−3では1個であった。
【0109】
また、実施例5−1〜5−3の表示装置について、視野角による色度変化を調べた。その結果を図25に示す。
【0110】
図25から分かるように、抵抗層18の厚みを薄くするほど視野角による色度変化が小さくなっていた。すなわち、抵抗層18,第2電極17および有機層16に生じた途切れ部分51に、絶縁材料よりなる埋込み部52を設けるようにすれば、抵抗層18の厚みを薄くしても欠陥を低減することができると共に視野角依存性を小さくすることができることが分かった。
【0111】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態および実施例では、有機EL素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0113】
更に、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。加えてまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態および実施例で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0114】
10R,10G,10B…有機発光素子、11…基板、13…平坦化絶縁膜、14…第1電極、15…電極間絶縁膜、16…有機層、16A…正孔注入層、16B…正孔輸送層、16C…発光層、16D…電子輸送層、16E…電子注入層、17…第2電極、18…抵抗層、19…第3電極、20…保護層、30…接着層、40…封止用基板、51…途切れ部分、52…埋込み部、53…異物等、54…埋込み層、P1…反射面、P2…半透過反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、第1電極、発光層を含む有機層、第2電極および抵抗層を順に形成する工程と、
前記抵抗層の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成する工程と、
前記抵抗層,前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分以外の前記埋込み層を異方性エッチングにより除去し、前記途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設ける工程と、
前記抵抗層および前記埋込み部の上に第3電極を形成する工程と
を含む有機EL素子の製造方法。
【請求項2】
前記埋込み層および前記埋込み部を窒化ケイ素により構成する
請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項3】
前記途切れ部分は、前記第1電極の上面の異物または突起の逆テーパ状側面の下に生じたものである
請求項1または2記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項4】
基板に、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を順に形成する工程と、
前記第2電極の上に、絶縁材料よりなる埋込み層を形成する工程と、
前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分以外の前記埋込み層を異方性エッチングにより除去し、前記途切れ部分に絶縁材料よりなる埋込み部を設ける工程と、
前記第2電極および前記埋込み部の上に、抵抗層および第3電極を形成する工程と
を含む有機EL素子の製造方法。
【請求項5】
前記埋込み層および前記埋込み部を窒化ケイ素により構成する
請求項4記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項6】
前記途切れ部分は、前記第1電極の上面の異物または突起の逆テーパ状側面の下に生じたものである
請求項4または5記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項7】
基板に設けられた第1電極と、
発光層を含み、前記第1電極の上に設けられた有機層と、
前記有機層の上に設けられた第2電極と、
前記第2電極の上に設けられた抵抗層と、
絶縁材料により構成され、前記抵抗層,前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部と、
前記抵抗層および前記埋込み部の上に設けられた第3電極と
を備えた有機EL素子。
【請求項8】
前記埋込み部は窒化ケイ素により構成されている
請求項7記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記途切れ部分は、前記第1電極の上面の異物または突起の逆テーパ状側面の下に生じたものである
請求項7または8記載の有機EL素子。
【請求項10】
基板に設けられた第1電極と、
発光層を含み、前記第1電極の上に設けられた有機層と、
前記有機層の上に設けられた第2電極と、
絶縁材料により構成され、前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部と、
前記第2電極および前記埋込み部の上に設けられた抵抗層と、
前記抵抗層の上に設けられた第3電極と
を備えた有機EL素子。
【請求項11】
前記埋込み部は窒化ケイ素により構成されている
請求項10記載の有機EL素子。
【請求項12】
前記途切れ部分は、前記第1電極の上面の異物または突起の逆テーパ状側面の下に生じたものである
請求項10または11記載の有機EL素子。
【請求項13】
有機EL素子を備え
前記有機EL素子は、
基板に設けられた第1電極と、
発光層を含み、前記第1電極の上に設けられた有機層と、
前記有機層の上に設けられた第2電極と、
前記第2電極の上に設けられた抵抗層と、
絶縁材料により構成され、前記抵抗層,前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部と、
前記抵抗層および前記埋込み部の上に設けられた第3電極と
を備えた表示装置。
【請求項14】
有機EL素子を備え、
前記有機EL素子は、
基板に設けられた第1電極と、
発光層を含み、前記第1電極の上に設けられた有機層と、
前記有機層の上に設けられた第2電極と、
絶縁材料により構成され、前記第2電極および前記有機層に生じた途切れ部分に設けられた埋込み部と、
前記第2電極および前記埋込み部の上に設けられた抵抗層と、
前記抵抗層の上に設けられた第3電極と
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−81998(P2011−81998A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232723(P2009−232723)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】