説明

有機EL表示装置、有機EL表示装置の製造方法、及び、電子機器

【課題】片チャネルのトランジスタで構成された容量素子を含む回路構成のインバータ回路を有する駆動回路部を表示パネル上に実装するに当たって、表示パネルの狭額縁化を可能にする。
【解決手段】容量素子を含む回路構成の駆動回路部、例えば書込み走査回路を表示パネル70上に実装する。その際に、画素アレイ部30の周辺部、即ち、表示パネル70の額縁領域に、有機EL素子21の有機層212と同一プロセスにて有機層92を形成する。そして、表示パネル70の額縁領域に形成した有機層92を、誘電体として用いて容量素子90を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置、有機EL表示装置の製造方法、及び、電子機器に関し、特に、容量素子を含む回路構成の駆動回路部を画素アレイ部と同じ基板上に実装してなる有機EL表示装置、その製造方法、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素(画素回路)が行列状に配置されてなる平面型(フラットパネル型)の表示装置が急速に普及している。平面型の表示装置の一つとして、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する、所謂電流駆動型の電気光学素子を画素の発光素子として用いた表示装置がある。電流駆動型の電気光学素子としては、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;EL)を利用し、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を用いた有機EL素子が知られている。
【0003】
画素の発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置は次のような特長を持っている。すなわち、有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために低消費電力である。有機EL素子は、自発光素子であるために液晶表示装置に比べて、画像の視認性が高く、しかもバックライト等の照明部材を必要としないために軽量化及び薄型化が容易である。更に、有機EL素子は、応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様に、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とを採ることができる。ここで、単純マトリクス方式の表示装置は、構造が簡単であるものの、有機EL素子の発光期間が走査線(即ち、画素数)の増加によって減少するために、大型でかつ高精細な表示装置の実現が難しいなどの問題がある。
【0005】
そのため、近年、電気光学素子に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御するアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が盛んに行われている。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、一般には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)が用いられる。アクティブマトリクス方式の表示装置は、電気光学素子が1表示フレームの期間に亘って発光を持続するために、大型でかつ高精細な有機EL表示装置の実現が容易である。
【0006】
一般的に、有機EL素子のI(電流)−V(電圧)特性は、時間が経過すると劣化(所謂、経時劣化)することが知られている。有機EL素子を駆動するトランジスタ(以下、「駆動トランジスタ」と記述する)として特にNチャネル型のTFTを用いた場合には、有機EL素子のI−V特性が経時劣化すると、駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsが変化するため、有機EL素子の発光輝度が変化する。
【0007】
また、駆動トランジスタは、閾値電圧Vthや移動度μが経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによって閾値電圧Vthや移動度μが画素毎に異なったりする場合がある。閾値電圧Vthや移動度μが画素毎に異なる場合には、駆動トランジスタに流れる電流値が画素毎にばらつく。その結果、駆動トランジスタのゲートに画素間で同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度が画素間でばらつくために、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれる。
【0008】
そこで、有機EL素子のI−V特性の経時劣化や、駆動トランジスタのトランジスタ特性の経時変化等の影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に維持するために、各種の補正(補償)機能を画素回路に持たせている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−083272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置において、画素アレイ部の周辺の駆動回路部、例えば、各画素を順次選択する走査回路は、基本的に、シフトレジスタ回路を主要部とする構成となっている。また、当該走査回路は、画素アレイ部の各行に対応して、シフトレジスタ回路の各転送段毎にバッファ回路を備えている。そして、シフトレジスタ回路やバッファ回路は、典型的には、インバータ回路を用いて構成される。
【0011】
ところで、低コスト化を目的として、駆動回路部を片チャネルのトランジスタを用いて構成する場合がある。ここで、片チャネルのトランジスタとは、Nチャネルのトランジスタのみ、または、Pチャネルのトランジスタのみを言う。そして、シフトレジスタ回路やバッファ回路を構成するインバータ回路を、片チャネルのトランジスタで構成する場合、インバータ回路の動作を確実なものにするために、トランジスタと容量素子との組み合わせによる回路構成が採られる(その詳細については後述する)。
【0012】
このように、容量素子を組み込んだ回路構成の、片チャネルのトランジスタからなるインバータ回路を用いて駆動回路部を構成すると、駆動回路部全体で用いる容量素子の数が非常に多くなる。そして、かかる構成の駆動回路部を画素アレイ部と同じ基板上に実装して表示パネルを構成する場合、駆動回路部内の容量素子が占めるレイアウト面積が大きくなるために、画素アレイ部の周辺部(所謂、額縁)が大きくなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、容量素子を含む回路構成のインバータ回路を有する駆動回路部を表示パネル上に実装するに当たって、表示パネルの狭額縁化を可能にした有機EL表示装置、その製造方法、及び、当該有機EL素子を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、
有機EL素子を含む画素が配置されてなる画素アレイ部と、
前記画素アレイ部と同じ基板上の、当該画素アレイ部の周辺部に設けられた、容量素子を含む回路構成の駆動回路部と
を備えた有機EL表示装置において、
前記画素アレイ部の周辺部に前記有機EL素子の有機層と同一プロセスにて形成された有機層を前記容量素子の誘電体として用いる
構成を採っている。
【0015】
上記構成の有機EL表示装置において、画素アレイ部の周辺部に容量素子の誘電体として用いる有機層を形成したとしても、当該有機層を有機EL素子の有機層と同一プロセスにて形成することにより、製造工程が増えることはない。そして、画素アレイ部の周辺部に形成された有機層を容量素子の誘電体として用いることで、有機層の下層の領域を自由に使うことができるため、他の回路部分の形成領域として利用できる。これにより、他の回路部分を形成する領域を別途確保する必要がなくなるため、その分だけ、駆動回路部が占めるレイアウト面積、ひいては、画素アレイ部の周辺部(即ち、表示パネルの額縁)の面積を小さくできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容量素子を含む回路構成の駆動回路部を表示パネル上に実装するに当たって、表示パネルの狭額縁化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【図2】画素(画素回路)の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の説明に供するタイミング波形図である。
【図4】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の動作説明図(その1)である。
【図5】本発明が適用される有機EL表示装置の基本的な回路動作の動作説明図(その2)である。
【図6】駆動トランジスタの閾値電圧Vthのばらつきに起因する課題の説明(A)、及び、駆動トランジスタの移動度μのばらつきに起因する課題の説明(B)に供する特性図である。
【図7】書込み走査回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】書込み走査回路の主要部であるシフトレジスタ回路の回路動作の説明に供する動作説明図である。
【図9】シフトレジスタ回路の回路動作の説明に供するタイミング波形図である。
【図10】片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路についての説明図であり、(A)は回路構成の一例を示し、(B)は入力パルス信号INVin及び出力INVoutの各波形を示している。
【図11】参考例に係る表示パネルの実装構造を示す断面図である。
【図12】容量素子の実装状態の概略を示す拡大平面図である。
【図13】実施形態に係る表示パネルの実装構造を示す断面図である。
【図14】本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。
【図15】本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図16】本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図17】本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図18】本発明が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明が適用される有機EL表示装置
1−1.システム構成
1−2.基本的な回路動作
1−3.駆動回路部の構成例
2.実施形態の説明
2−1.実施形態に係る表示パネルの実装構造
2−2.実施形態に係る表示パネルの製造方法
3.変形例
4.適用例(電子機器)
【0019】
<1.本発明が適用される有機EL表示装置>
[1−1.システム構成]
図1は、本発明が適用されるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【0020】
アクティブマトリクス型有機EL表示装置は、電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子に流れる電流を、当該有機EL素子と同じ画素内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタにより制御する表示装置である。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、典型的には、TFT(薄膜トランジスタ)が用いられる。
【0021】
図1に示すように、本適用例に係る有機EL表示装置10は、有機EL素子を含む複数の画素20と、当該画素20が行列状に2次元配置されてなる画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置される駆動回路部とを有する構成となっている。駆動回路部は、書込み走査回路40、電源供給走査回路50及び信号出力回路60等からなり、画素アレイ部30の各画素20を駆動する。
【0022】
ここで、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、1つの画素(単位画素)は複数の副画素(サブピクセル)から構成され、この副画素の各々が図1の画素20に相当することになる。より具体的には、カラー表示対応の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色光(R)を発光する副画素、緑色光(G)を発光する副画素、青色光(B)を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0023】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色光(W)を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0024】
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って走査線311〜31mと電源供給線321〜32mとが画素行毎に配線されている。更に、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って信号線331〜33nが画素列毎に配線されている。
【0025】
走査線311〜31mは、書込み走査回路40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線321〜32mは、電源供給走査回路50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線331〜33nは、信号出力回路60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0026】
画素アレイ部30は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成されている。これにより、有機EL表示装置10は、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素アレイ部30の各画素20の駆動回路は、アモルファスシリコンTFTまたは低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、図1に示すように、書込み走査回路40、電源供給走査回路50、及び、信号出力回路60についても、画素アレイ部30を形成する表示パネル(基板)70上に実装することができる。
【0027】
書込み走査回路40は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成されている(書込み走査回路40の具体的な構成の詳細については後述する)。この書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の書込みに際し、走査線31(311〜31m)に対して書込み走査信号WS(WS1〜WS m)を順次供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0028】
電源供給走査回路50は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。この電源供給走査回路50は、書込み走査回路40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vccpと当該第1電源電位Vccpよりも低い第2電源電位Viniとで切り替わることが可能な電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32(321〜32m)に供給する。後述するように、電源電位DSのVccp/Viniの切替えにより、画素20の発光/非発光の制御が行なわれる。
【0029】
信号出力回路60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電位Vofsとを選択的に出力する。ここで、基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電位(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電位)であり、後述する閾値補正処理の際に用いられる。
【0030】
信号出力回路60から出力される信号電圧Vsig/基準電位Vofsは、信号線33(331〜33n)を介して画素アレイ部30の各画素20に対して、書込み走査回路40による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、信号出力回路60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
【0031】
(画素回路)
図2は、画素(画素回路)20の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。画素20の発光部は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子21から成る。
【0032】
図2に示すように、画素20は、有機EL素子21と、有機EL素子21に電流を流すことによって当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線(所謂、ベタ配線)された共通電源供給線34にカソード電極が接続されている。
【0033】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、保持容量24、及び、補助容量25を有する構成となっている。駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23としてNチャネル型のTFTを用いることができる。但し、ここで示した、駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0034】
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が電源供給線32(321〜32m)に接続されている。
【0035】
書込みトランジスタ23は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(331〜33n)に接続され、他方の電極(ドレイン/ソース電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、書込みトランジスタ23のゲート電極は、走査線31(311〜31m)に接続されている。
【0036】
駆動トランジスタ22及び書込みトランジスタ23において、一方の電極とは、ソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、ドレイン/ソース領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
【0037】
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極、及び、有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
【0038】
補助容量25は、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に、他方の電極が共通電源供給線34にそれぞれ接続されている。この補助容量25は、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるために、必要に応じて設けられるものである。すなわち、補助容量25は必須の構成要素ではなく、有機EL素子21の等価容量が十分に大きい場合は省略可能である。
【0039】
ここでは、補助容量25の他方の電極を共通電源供給線34に接続するとしたが、他方の電極の接続先としては、共通電源供給線34に限られるものではなく、固定電位のノードであればよい。補助容量25の他方の電極を固定電位のノードに接続することで、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるという所期の目的を達成することができる。
【0040】
上記構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、書込み走査回路40から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、書込みトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力回路60から供給される、輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。この書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電位Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
【0041】
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(321〜32m)の電源電位DSが第1電源電位Vccpにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
【0042】
駆動トランジスタ22は更に、電源電位DSが第1電源電位Vccpから第2電源電位Viniに切り替わったときには、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
【0043】
この駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間の割合(デューティ)を制御することができる。このデューティ制御により、1表示フレーム期間に亘って画素が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に動画の画品位をより優れたものとすることができる。
【0044】
電源供給走査回路50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vccp,Viniのうち、第1電源電位Vccpは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Viniは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Viniは、基準電位Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするときVofs−Vthよりも低い電位、好ましくは、Vofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
【0045】
[1−2.基本的な回路動作]
続いて、上記構成の有機EL表示装置10の基本的な回路動作について、図3のタイミング波形図を基に図4及び図5の動作説明図を用いて説明する。尚、図4及び図5の動作説明図では、図面の簡略化のために、書込みトランジスタ23をスイッチのシンボルで図示している。
【0046】
図3のタイミング波形図には、走査線31の電位(書込み走査信号)WS、電源供給線32の電位(電源電位)DS、信号線33の電位(Vsig/Vofs)、駆動トランジスタ22のゲート電位Vg及びソース電位Vsのそれぞれの変化を示している。また、ゲート電位Vgの波形を一点鎖線で示し、ソース電位Vsの波形を点線で示すことで、両者を識別できるようにしている。
【0047】
(前表示フレームの発光期間)
図3のタイミング波形図において、時刻t11以前は、前の表示フレームにおける有機EL素子21の発光期間となる。この前表示フレームの発光期間では、電源供給線32の電位DSが第1電源電位(以下、「高電位」と記述する)Vccpにあり、また、書込みトランジスタ23が非導通状態にある。
【0048】
このとき、駆動トランジスタ22は飽和領域で動作するように設計されている。これにより、図4(A)に示すように、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが、電源供給線32から駆動トランジスタ22を通して有機EL素子21に供給される。これにより、有機EL素子21が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
【0049】
(閾値補正準備期間)
時刻t11になると、線順次走査の新しい表示フレーム(現表示フレーム)に入る。そして、図4(B)に示すように、電源供給線32の電位DSが高電位Vccpから、信号線33の基準電位Vofsに対してVofs−Vthよりも十分に低い第2電源電位(以下、「低電位」と記述する)Viniに切り替わる。
【0050】
ここで、有機EL素子21の閾値電圧をVthel、共通電源供給線34の電位(カソード電位)をVcathとする。このとき、低電位ViniをVini<Vthel+Vcathとすると、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが低電位Viniにほぼ等しくなるために、有機EL素子21は逆バイアス状態となって消光する。
【0051】
次に、時刻t12で走査線31の電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図4(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態となる。このとき、信号出力回路60から信号線33に対して基準電位Vofsが供給された状態にあるために、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタ22のソース電位Vsは、基準電位Vofsよりも十分に低い電位Viniにある。
【0052】
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVofs−Viniとなる。ここで、Vofs−Viniが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正処理を行うことができないために、Vofs−Vini>Vthなる電位関係に設定する必要がある。
【0053】
このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgを基準電位Vofsに固定し、かつ、ソース電位Vsを低電位Viniに固定して(確定させて)初期化する処理が、後述する閾値補正処理(閾値補正動作)を行う前の準備(閾値補正準備)の処理である。従って、基準電位Vofs及び低電位Viniが、駆動トランジスタ22のゲート電位Vg及びソース電位Vsの各初期化電位となる。
【0054】
(閾値補正期間)
次に、時刻t13で、図4(D)に示すように、電源供給線32の電位DSが低電位Viniから高電位Vccpに切り替わると、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが基準電位Vofsに保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、ゲート電位Vgから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けて駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇を開始する。
【0055】
ここでは、便宜上、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgの初期化電位Vofsを基準とし、当該初期化電位Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電位Vsを変化させる処理を閾値補正処理と呼んでいる。この閾値補正処理が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は保持容量24に保持される。
【0056】
尚、閾値補正処理を行う期間(閾値補正期間)において、電流が専ら保持容量24側に流れ、有機EL素子21側には流れないようにするために、有機EL素子21がカットオフ状態となるように共通電源供給線34の電位Vcathを設定しておくこととする。
【0057】
次に、時刻t14で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図5(A)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタ22のゲート電極が信号線33から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに等しいために、当該駆動トランジスタ22はカットオフ状態にある。従って、駆動トランジスタ22にドレイン−ソース間電流Idsは流れない。
【0058】
(信号書込み&移動度補正期間)
次に、時刻t15で、図5(B)に示すように、信号線33の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わる。続いて、時刻t16で、走査線31の電位WSが高電位側に遷移することで、図5(C)に示すように、書込みトランジスタ23が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigをサンプリングして画素20内に書き込む。
【0059】
この書込みトランジスタ23による信号電圧Vsigの書込みにより、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgが信号電圧Vsigになる。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが保持容量24に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧と相殺される。この閾値キャンセルの原理の詳細については後述する。
【0060】
このとき、有機EL素子21はカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にある。従って、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源供給線32から駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は、有機EL素子21の等価容量及び補助容量25に流れ込み、これらの容量の充電が開始される。
【0061】
有機EL素子21の等価容量及び補助容量25が充電されることにより、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが時間の経過と共に上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素毎のばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。尚、駆動トランジスタ22の移動度μは、当該駆動トランジスタ22のチャネルを構成する半導体薄膜の移動度である。
【0062】
ここで、映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量24の保持電圧Vgsの比率、即ち、書込みゲインGが1(理想値)であると仮定する。すると、駆動トランジスタ22のソース電位VsがVofs−Vth+ΔVの電位まで上昇することで、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVとなる。
【0063】
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇分ΔVは、保持容量24に保持された電圧(Vsig−Vofs+Vth)から差し引かれるように、換言すれば、保持容量24の充電電荷を放電するように作用し、当該保持容量24に対して負帰還がかけられたことになる。従って、ソース電位Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
【0064】
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この打ち消す処理が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素毎のばらつきを補正する移動度補正処理である。
【0065】
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)が高い程ドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるため、負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなる。従って、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。
【0066】
また、映像信号の信号振幅Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるため、画素毎の移動度μのばらつきを取り除くことができる。従って、負帰還の帰還量ΔVは、移動度補正処理の補正量とも言える。移動度補正の原理の詳細については後述する。
【0067】
(発光期間)
次に、時刻t17で走査線31の電位WSが低電位側に遷移することで、図5(D)に示すように、書込みトランジスタ23が非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ22のゲート電極は、信号線33から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。
【0068】
ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量24が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの変動に連動してゲート電位Vgも変動する。このように、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgがソース電位Vsの変動に連動して変動する動作が、保持容量24によるブートストラップ動作である。
【0069】
駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該電流Idsに応じて有機EL素子21のアノード電位が上昇する。
【0070】
そして、有機EL素子21のアノード電位がVthel+Vcathを越えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため有機EL素子21が発光を開始する。また、有機EL素子21のアノード電位の上昇は、即ち、駆動トランジスタ22のソース電位Vsの上昇に他ならない。そして、駆動トランジスタ22のソース電位Vsが上昇すると、保持容量24のブートストラップ動作により、駆動トランジスタ22のゲート電位Vgも連動して上昇する。
【0071】
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電位Vgの上昇量はソース電位Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中、駆動トランジスタ22のゲート‐ソース間電圧Vgsは、Vsig−Vofs+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t18で信号線33の電位が映像信号の信号電圧Vsigから基準電位Vofsに切り替わる。
【0072】
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)、及び、移動度補正の各処理動作は、1水平走査期間(1H)において実行される。また、信号書込み及び移動度補正の各処理動作は、時刻t16−t17の期間において並行して実行される。
【0073】
〔分割閾値補正〕
尚、ここでは、閾値補正処理を1回だけ実行する駆動法を採る場合を例に挙げて説明したが、この駆動法は一例に過ぎず、この駆動法に限られるものではない。例えば、閾値補正処理を移動度補正及び信号書込み処理と共に行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平走査期間に亘って分割して複数回閾値補正処理を実行する、所謂分割閾値補正を行う駆動法を採ることも可能である。
【0074】
この分割閾値補正の駆動法によれば、高精細化に伴う多画素化によって1水平走査期間として割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平走査期間に亘って十分な時間を確保することができる。従って、1水平走査期間として割り当てられる時間が短くなっても、閾値補正処理を確実に実行できることになる。
【0075】
〔閾値キャンセルの原理〕
ここで、駆動トランジスタ22の閾値キャンセル(即ち、閾値補正)の原理について説明する。駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作するように設計されているために定電流源として動作する。これにより、有機EL素子21には駆動トランジスタ22から、次式(1)で与えられる一定のドレイン−ソース間電流(駆動電流)Idsが供給される。
ds=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vgs−Vth2 ……(1)
ここで、Wは駆動トランジスタ22のチャネル幅、Lはチャネル長、Coxは単位面積当たりのゲート容量である。
【0076】
図6(A)に、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Ids対ゲート−ソース間電圧Vgsの特性を示す。図6(A)の特性図に示すように、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの画素毎のばらつきに対するキャンセル処理(補正処理)を行わないと、閾値電圧VthがVth1のときに、ゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds1になる。
【0077】
これに対して、閾値電圧VthがVth2(Vth2>Vth1)のとき、同じゲート−ソース間電圧Vgsに対応するドレイン−ソース間電流IdsがIds2(Ids2<Ids1)になる。すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが変動すると、ゲート−ソース間電圧Vgsが一定であってもドレイン−ソース間電流Idsが変動する。
【0078】
一方、上記構成の画素(画素回路)20では、先述したように、発光時の駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧VgsはVsig−Vofs+Vth−ΔVである。従って、これを式(1)に代入すると、ドレイン−ソース間電流Idsは、次式(2)で表される。
ds=(1/2)・μ(W/L)Cox(Vsig−Vofs−ΔV)2 ……(2)
【0079】
すなわち、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthの項がキャンセルされており、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に供給されるドレイン−ソース間電流Idsは、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに依存しない。その結果、駆動トランジスタ22の製造プロセスのばらつきや経時変化等により、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが画素毎に変動したとしても、ドレイン−ソース間電流Idsが変動しないために、有機EL素子21の発光輝度を一定に保つことができる。
【0080】
〔移動度補正の原理〕
次に、駆動トランジスタ22の移動度補正の原理について説明する。図6(B)に、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に大きい画素Aと、駆動トランジスタ22の移動度μが相対的に小さい画素Bとを比較した状態で特性カーブを示す。駆動トランジスタ22をポリシリコン薄膜トランジスタなどで構成した場合、画素Aや画素Bのように、画素間で移動度μがばらつくことは避けられない。
【0081】
画素Aと画素Bで移動度μにばらつきがある状態で、駆動トランジスタ22のゲート電極に例えば両画素A,Bに同レベルの信号振幅Vin(=Vsig−Vofs)を書き込んだ場合を考える。この場合、何ら移動度μの補正を行わないと、移動度μの大きい画素Aに流れるドレイン−ソース間電流Ids1′と移動度μの小さい画素Bに流れるドレイン−ソース間電流Ids2′との間には大きな差が生じてしまう。このように、移動度μの画素毎のばらつきに起因してドレイン−ソース間電流Idsに画素間で大きな差が生じると、画面のユニフォーミティ(一様性)が損なわれる。
【0082】
ここで、先述した式(1)のトランジスタ特性式から明らかなように、移動度μが大きいとドレイン−ソース間電流Idsが大きくなる。従って、負帰還における帰還量ΔVは移動度μが大きくなるほど大きくなる。図6(B)に示すように、移動度μの大きな画素Aの帰還量ΔV1は、移動度の小さな画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きい。
【0083】
そこで、移動度補正処理によって駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVでゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることにより、移動度μが大きいほど負帰還が大きくかかることになる。その結果、移動度μの画素毎のばらつきを抑制することができる。
【0084】
具体的には、移動度μの大きな画素Aで帰還量ΔV1の補正をかけると、ドレイン−ソース間電流IdsはIds1′からIds1まで大きく下降する。一方、移動度μの小さな画素Bの帰還量ΔV2は小さいために、ドレイン−ソース間電流IdsはIds2′からIds2までの下降となり、それ程大きく下降しない。結果的に、画素Aのドレイン−ソース間電流Ids1と画素Bのドレイン−ソース間電流Ids2とはほぼ等しくなるために、移動度μの画素毎のばらつきが補正される。
【0085】
以上をまとめると、移動度μの異なる画素Aと画素Bがあった場合、移動度μの大きい画素Aの帰還量ΔV1は移動度μの小さい画素Bの帰還量ΔV2に比べて大きくなる。つまり、移動度μが大きい画素ほど帰還量ΔVが大きく、ドレイン−ソース間電流Idsの減少量が大きくなる。
【0086】
従って、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVで、ゲート−ソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、移動度μの異なる画素のドレイン−ソース間電流Idsの電流値が均一化される。その結果、移動度μの画素毎のばらつきを補正することができる。すなわち、駆動トランジスタ22に流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)に応じた帰還量(補正量)ΔVで、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧Vgsに対して、即ち、保持容量24に対して負帰還をかける処理が移動度補正処理となる。
【0087】
[1−3.駆動回路部の構成例]
ここで、画素アレイ部30の周辺に配置される駆動回路部の構成例について説明する。ここでは、駆動回路部として、例えば、画素アレイ部30の各画素20への信号電圧Vsigの書込みに際し、各画素20を行単位で順次選択走査する書込み走査回路40を例に挙げて説明する。
【0088】
図7は、書込み走査回路40の構成の一例を示すブロック図である。書込み走査回路40は、基本的に、図示せぬクロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路41を主要部として構成されている。また、書込み走査回路40は、画素アレイ部30の各行に対応して、シフトレジスタ回路41の各転送段(単位回路)41i,41i+1毎にバッファ回路42i,42i+1を備えている。
【0089】
ここでは、シフトレジスタ回路41として、2段分の転送段41i,41i+1が縦続接続された構成を図示しているが、実際には、画素アレイ部30の行数分の転送段411〜41mが縦続接続されることになる。シフトレジスタ回路41の各転送段、例えば転送段41iは、シフトレジスタ(SR)411、インバータ(INV)412、シフトレジスタ413、及び、インバータ414が縦続接続されて単位回路を構成している。
【0090】
また、バッファ回路42iは、インバータ421、論理回路422、及び、インバータ423が縦続接続された構成となっている。このように、シフトレジスタ回路41の各転送段41i,41i+1や、バッファ回路42(42i,42i+1)は、インバータ回路を用いて構成されている。
【0091】
(シフトレジスタ回路の回路動作)
ここで、書込み走査回路40の主要部であるシフトレジスタ回路41の回路動作について、図8の動作説明図、及び、図9のタイミング波形図を用いて説明する。ここでは、シフトレジスタ回路41の回路動作として、転送段41iのインバータ412、シフトレジスタ413、及び、インバータ414の回路部分の回路動作を例に挙げて説明する。
【0092】
シフトレジスタ413は、クロックパルスckで動作するトランジスタQ1、クロックパルスxckで動作するトランジスタQ2、及び、容量C1により構成されている。尚、シフトレジスタ413の出力端とインバータ414の入力端との間には寄生容量C2が存在するものとする。
【0093】
図9のタイミング波形図は、クロックパルスck、クロックパルスxck、インバータ412の出力電圧(b)、容量C1の充電電圧(c)、及び、インバータ414の入力電圧(d)の各波形を示している。クロックパルスck,xckは、1Hを周期とするパルス信号である。クロックパルスck,xckは共に、アクティブ(高電位)期間よりも非アクティブ(低電位)期間の方が若干長く、一方がアクティブ状態にあるとき他方が非アクティブ状態になる。
【0094】
図8の動作説明図では、シフトレジスタ413のトランジスタQ1,Q2のうち、非導通状態にあるものを×印を付して示している。インバータ412の入力電圧(A)の振幅(波高値)は、例えば15Vであるとする。
【0095】
先ず、クロックパルスckがアクティブ状態のときに、インバータ412の15V振幅の出力電圧(b)が、導通状態にあるトランジスタQ1を介して容量C1に充電される。このとき、クロックパルスxckが非アクティブ状態にあるため、トランジスタQ2は×印で示すように非導通状態にある(図8(A)を参照)。そして、クロックパルスckが非アクティブ状態になると、僅かの期間、トランジスタQ1,Q2が共に非導通状態になる。これにより、15Vの電圧(c)が容量C1に保持される(図8(B)を参照)。
【0096】
次に、クロックパルスxckがアクティブ状態になると、容量C1に保持された15Vの電圧(c)が、トランジスタQ2を介してインバータ414にその入力電圧(d)として印加される。このとき、シフトレジスタ413の出力端とインバータ414の入力端との間に寄生容量C2が存在するために、容量C1と寄生容量C2との容量分配によってインバータ414の入力電圧(d)の振幅が下がる(図8(C)を参照)。
【0097】
一例として、容量C1の値を4pF、寄生容量C2の値を2pFとすると、
15V×4pF/(4pF+2pF)
なる容量分配によって15V振幅から10V振幅に低下する。その結果、15V振幅の入力電圧(a)に対して、1Hシフトした10V振幅の出力電圧(e)が得られる。
【0098】
(片チャネルトランジスタのインバータ回路)
ところで、書込み走査回路40等の駆動回路部の作製に当っては、当該駆動回路部を片チャネル(Nチャネルのみ、または、Pチャネルのみ)のトランジスタを用いて構成すれば、両チャネルのトランジスタを用いて構成する場合に比べて製造コストを低減できる。従って、有機EL表示装置10の低コスト化を図るには、例えば書込み走査回路40において、シフトレジスタ回路41やバッファ回路42を構成するインバータ回路を、片チャネルのトランジスタを用いて構成するのが好ましい。
【0099】
そして、インバータ回路を片チャネルのトランジスタを用いて構成する場合、インバータ回路の回路動作を確実なものにするために、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせによる回路構成が採られる。以下に、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路について説明する。
【0100】
《回路構成》
図10は、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路についての説明図であり、(A)は回路構成の一例を示し、(B)は入力パルス信号INVin及び出力INVoutの各波形を示している。
【0101】
本回路例に係るインバータ回路80は、入力端子81を介して入力されるパルス信号INVinをほぼ反転させ、パルス信号INVinと逆相のパルス信号INVoutとして出力端子82から出力する。このインバータ回路80においては、電源電圧として、正側については、例えば4つの電源電圧Vcc1,Vcc2,Vcc3,Vcc4を用い、負側については、例えば4つの電源電圧Vss1,Vss2,Vss3,Vss4を用いている。但し、ここで示した電源電圧は一例であって、これに限られるものではなく、もっと少ない数の電源電圧であっても良いし、正側、負側それぞれ1種類の電源電圧とすることも可能である。
【0102】
インバータ回路80は、例えば、7つのトランジスタTr1〜Tr7、5つの容量素子C1〜C5、及び、遅延回路83を有する回路構成となっている。7つのトランジスタTr1〜Tr7は、互いに同一チャネル(片チャネル)、例えばNチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor:金属酸化膜半導体)型の薄膜トランジスタ(TFT)である。ここでは、トランジスタTr1〜Tr7として、Nチャネルのみのトランジスタを用いるとしたが、Pチャネルのみのトランジスタを用いることも可能である。
【0103】
トランジスタTr1は、第1のトランジスタに相当し、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc2の電源線L12に接続され、ソース電極がノードN1に接続され、入力端子81を介して入力される入力電圧(パルス信号INVin)に応じた電圧をゲート入力とする。トランジスタTr2は、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc3の電源線L13に接続され、ソース電極がノードN2に接続され、ゲート電極がノードN1に接続されている。トランジスタTr3は、ドレイン電極が正側電源電圧Vcc4の電源線L14に接続され、ソース電極が出力端子82に接続され、ゲート電極がノードN2に接続されている。
【0104】
遅延回路83は、例えば、互いに並列に接続された2つのトランジスタTr91,Tr92によって構成されている。2つのトランジスタTr91,Tr92は、当然のことながら、トランジスタTr1〜Tr7と同じ、NチャネルのMOSトランジスタである。トランジスタTr91,Tr92の共通接続された一方の電極(ソース電極/ドレイン電極)は遅延回路83の回路入力端となり、他方の電極(ドレイン電極/ソース電極)は遅延回路83の回路出力端となる。
【0105】
この遅延回路83において、回路入力端は入力端子81に接続されている。トランジスタTr91のゲート電極も入力端子81に接続されている。トランジスタTr92のゲート電極は、正側電源電圧Vcc1の電源線L11に接続されている。
【0106】
トランジスタTr4は、ドレイン電極がトランジスタTr1のゲート電極に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss1の電源線L21に接続され、ゲート電極が遅延回路83の回路出力端に接続されている。トランジスタTr5は、第2のトランジスタに相当し、ドレイン電極がノードN1に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss2の電源線L22に接続されている。すなわち、トランジスタTr5に対して直列に接続され、ゲート電極が入力端子81に接続されている。
【0107】
トランジスタTr6は、ドレイン電極がノードN2に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss3の電源線L23に接続されている。すなわち、トランジスタTr6は、トランジスタTr2に対して直列に接続され、ゲート電極が入力端子81に接続されている。トランジスタTr7は、ドレイン電極が出力端子82に接続され、ソース電極が負側電源電圧Vss4の電源線L24に接続され、ゲート電極が入力端子81に接続されている。
【0108】
容量素子C1は、第1の容量素子に相当し、一方の電極がトランジスタTr1のゲート電極に接続され、他方の電極がノードN1に接続されている、即ち、トランジスタTr1のゲート−ソース間に接続されている。容量素子C2は、第2の容量素子に相当し、一方の電極がノードN1に接続され、他方の電極が入力端子81に接続されている。ノードN1は、トランジスタTr1及びトランジスタTr5の共通接続ノードでもある。
【0109】
容量素子C3は、一方の電極がトランジスタTr2のゲート電極に接続され、他方の電極がノードN2に接続されている。容量素子C4は、一方の電極がトランジスタTr3のゲート電極に接続され、他方の電極が出力端子82に接続されている。容量素子C5は、一方の電極がトランジスタTr4のゲート電極に接続され、他方の電極が負側電源電圧Vss1の電源線L21に接続されている。
【0110】
ここで、トランジスタTr91,Tr92によって構成された遅延回路83は、入力端子81とトランジスタTr4のゲート電極とをつなぐ高抵抗素子の役割を持っている。これにより、入力端子81を介して入力されるパルス信号INVinが遅延回路83を通過することで、パルス信号INVinの電位の変化が時間的に遅れてトランジスタTr4のゲート電極に伝わる。遅延回路83の遅延量については、正側電源電圧Vcc1の電圧値及び容量素子C5の容量値を変えることによってコントロールすることができる。
【0111】
トランジスタTr1は、容量素子C1の端子間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc2の電源線L12とノードN1との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr2は、ノードN1の電位とノードN2の電位と電位差、即ち、容量素子C3の両端間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc3の電源線L13とノードN2との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr3は、ノードN2の電位と出力端子82の電位と電位差、即ち、容量素子C4の両端間電圧に応じて、正側電源電圧Vcc4の電源線L14と出力端子82との間を電気的に接続したり、切断したりする。
【0112】
トランジスタTr4は、遅延回路83の出力端の電位と負側電源電圧Vss1との電位差、即ち、容量素子C5の端子間電圧に応じて、トランジスタTr1のゲート電極と負側電源電圧Vss1の電源線L21との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr5は、入力端子81の電位と負側電源電圧Vss2との電位差に応じて、ノードN1と負側電源電圧Vss2の電源線L22との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr6は、入力端子81の電位と負側電源電圧Vss3との電位差に応じて、ノードN2と負側電源電圧Vss3の電源線L23との間を電気的に接続したり、切断したりする。トランジスタTr7は、入力端子81の電位と負側電源電圧Vss4との電位差に応じて、出力端子82と負側電源電圧Vss4の電源線L24との間を電気的に接続したり、切断したりする。
【0113】
《回路動作》
次に、上記構成のインバータ回路80において、入力端子81を介して入力されるパルス信号INVinがアクティブ状態(高電位状態)になったとき、及び、非アクティブ状態(低電位状態)になったときの回路動作について説明する。
【0114】
・パルス信号INVinがアクティブ状態になったとき
パルス信号INVinがアクティブ状態になると、トランジスタTr8のゲート電位が高電位状態になり、トランジスタTr8が導通状態になるために、出力端子82からは負側電源電圧Vss4がパルス信号INVoutとして導出される。このとき同時に、トランジスタTr6,Tr7も導通状態になるために、ノードN1,N2の電位はそれぞれ負側電源電位Vss2,Vss3に固定される。
【0115】
これにより、トランジスタTr2,Tr3が共に非導通状態になる。また、トランジスタTr4が遅延回路83の遅延出力に応答して導通状態になるため、トランジスタTr1のゲート電位が負側電源電圧Vss1に固定される。これにより、トランジスタTr1も非導通状態になる。すなわち、パルス信号INVinがアクティブ状態になったときは、正側のトランジスタTr1,Tr2,Tr3が全て非導通状態になる。
【0116】
・パルス信号INVinが非アクティブ状態になったとき
パルス信号INVinが非アクティブ状態になると、これと同時に、負電位側のトランジスタTr5,Tr6,Tr7が全て非導通状態になる。加えて、パルス信号INVinが高電位から低電位に遷移するときの変動量に応じた、容量素子C2の容量カップリングによってノードN1の電位、即ち、トランジスタTr2のゲート電位が降下する。
【0117】
この容量カップリングによる電位降下の瞬間には、遅延回路83による遅延によってトランジスタTr4のゲート電位は高電位の状態を保っているために、トランジスタTr1のゲート電位が負側電源電圧Vss1の状態にある。従って、トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧VgsがノードN1の電位降下に伴って大きくなり、閾値電圧を超えることによってトランジスタTr1が導通状態になる。これにより、ノードN1の電位が正側電源電圧Vcc1へと上昇する。
【0118】
すると、トランジスタTr2のゲート−ソース間電圧Vgsも大きくなるためトランジスタTr2も導通状態になる。これにより、ノードN2の電位が正側電源電圧Vcc2へと上昇し、トランジスタTr3のゲート−ソース間電圧Vgsも大きくなるため、トランジスタTr2に続いてトランジスタTr3も導通状態になる。そして、トランジスタTr3が導通状態になることで、出力端子82からは正側電源電圧Vcc4がパルス信号INVoutとして導出される。
【0119】
ここで、容量素子C2の容量カップリングによるトランジスタTr2のゲート電位の降下によってトランジスタTr1をより迅速に導通状態に移行させるには、容量素子C2の容量値をある程度大きく設定すると良い。そして、トランジスタTr1が迅速に導通状態に移行することで、パルス信号INVoutの遷移タイミング(立ち上がり/立ち下がりのタイミング)をより正確に確定できる。
【0120】
パルス信号INVoutの遷移タイミングは、当該パルス信号INVoutのパルス幅を決める。そして、駆動回路部が書込み走査回路40の場合には、パルス信号INVoutは書込み走査信号WSを生成する基準の信号として用いられる。従って、パルス信号INVoutのパルス幅は、書込み走査信号WSのパルス幅を決める基準となり、先述した移動度補正処理の動作時間、即ち、移動度補正時間を決める基準となる。
【0121】
ここで、最適な移動度補正時間が長いときと短いときで書込み走査信号WSのパルス幅に同じ量(時間)のばらつきがあっても、最適な移動度補正時間が短いときの書込み走査信号WSのパルス幅のばらつきは相対的に大きくなってしまう。そして、書込み走査信号WSのパルス幅のばらつきが輝度ばらつきとなって画質を悪化させる一因となる。このような観点からも、容量素子C2の容量値を大きく設定し、トランジスタTr1をより迅速に導通状態に移行させることによって、移動度補正時間を決める基準となるパルス信号INVoutの遷移タイミングをより正確に確定することが重要になる。
【0122】
上述した回路動作の説明から明らかなように、片チャネルのトランジスタによって構成されるインバータ回路80においては、回路動作を確実なものにするためには、特に、容量カップリングによってノードN1の電位を降下させる容量素子C2が不可欠となる。また、容量素子C2以外にも、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のゲート−ソース間電圧Vgsを保持するための容量素子C1,C3,C4も必要である。これらの容量素子C1〜C4は、両チャネルのトランジスタによって構成されるインバータ回路では不要なものである。
【0123】
以上説明した、片チャネルのトランジスタと容量素子との組合せからなるインバータ回路80は、図7に示す書込み走査回路40のシフトレジスタ回路41を構成するインバータ412,414や、バッファ回路42を構成するインバータ421,423として用いることができる。電源供給走査回路50も基本的に書込み走査回路40と同様の構成となることから、インバータ回路80は、電源供給走査回路50を構成するインバータとしても用いることができる。
【0124】
(片チャネルトランジスタのインバータ回路を表示パネルに実装する際の問題点)
このように、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路80を用いて書込み走査回路40等の駆動回路部を構成すると、駆動回路部全体で用いる容量素子の数が非常に多くなる。ここで、かかる構成の駆動回路部を画素アレイ部30と同じ基板上に実装して表示パネル70を構成する場合について考察する。
【0125】
《参考例に係る表示パネルの実装構造》
図11は、参考例に係る表示パネルの実装構造を示す断面図である。図11には、画素アレイ部30の断面構造と、表示パネル70の周縁部である額縁領域の断面構造とを示している。
【0126】
図11において、ガラス基板71上に駆動トランジスタ22等を含む回路部分が形成され、当該回路部分の上層に有機EL素子21が形成されている。具体的には、ガラス基板71上に、絶縁膜72、絶縁平坦化膜73、及び、ウインド絶縁膜74がその順に形成されている。そして、有機EL素子21は、ウインド絶縁膜74の凹部74Aに形成されている。ここでは、有機EL素子21の下層、即ち、有機EL素子21の発光面と反対側の層に形成される画素20の回路部分(駆動回路)については、駆動トランジスタ22のみを代表して図示し、他の構成素子については図示を省略している。
【0127】
有機EL素子21は、アノード電極211、有機層212、及び、カソード電極213によって構成されている。アノード電極211は、ウインド絶縁膜74の凹部74Aの底部に金属等によって形成されている。有機層212は、アノード電極211上に形成されている。カソード電極213は、有機層212上に透明導電膜等によって全画素共通に、即ち、表示パネル70の全面に亘って形成されている。
【0128】
この有機EL素子21において、有機層212は、アノード電極211上にホール輸送層/ホール注入層、発光層、電子輸送層、及び、電子注入層(いずれも図示せず)が順次堆積されることによって形成される。そして、図2の駆動トランジスタ22による電流駆動の下に、駆動トランジスタ22からアノード電極211を通して有機層212に電流が流れることで、当該有機層212内の発光層において電子と正孔が再結合する際に発光するようになっている。
【0129】
駆動トランジスタ22は、モリブデン(Mo)等からなるゲート電極221と、半導体層222の両側に設けられたソース/ドレイン領域223,224と、半導体層222のゲート電極221と対向する部分のチャネル形成領域225とから構成されている。ソース/ドレイン領域223は、コンタクトホールを介して有機EL素子21のアノード電極211と電気的に接続されている。
【0130】
絶縁膜72上には、アルミニウム(Al)等からなる金属配線75が形成されている。このようにして、ガラス基板711上に、絶縁膜72、絶縁平坦化膜73、及び、ウインド絶縁膜74を介して有機EL素子21が画素単位で形成される。そして、パッシベーション膜76を介して封止基板(ガラス基板)77により有機EL素子21が封止される。以上により、表示パネル70が形成される。
【0131】
一方、表示パネル70の周縁部、即ち、表示パネル70の額縁領域には、書込み走査回路40や電源供給走査回路50等を含む駆動回路部が形成される。ここでは、駆動回路部として、書込み走査回路40を例に挙げて説明する。書込み走査回路40は、先述したように、低コスト化を図るために、片チャネルのトランジスタからなるインバータ回路を用いて構成される。そして、片チャネルのトランジスタからなるインバータ回路は、容量素子を有する構成となっている。
【0132】
周知の通り、容量素子は、トランジスタ等の回路素子に比べて大きなレイアウト面積を必要とする。特に大容量の容量素子を形成する場合には、大きなレイアウト面積を必要とする。そのため、書込み走査回路40を含む駆動回路部を画素アレイ部30と同じ基板上に実装するに当たっては、当該駆動回路部のトランジスタ等からなる回路部分とは別に、容量素子専用に領域を確保し、当該領域に容量素子を形成することになる。
【0133】
具体的には、図11に示すように、既存のアルミニウム(Al)等からなる金属配線75に対向して、ガラス基板71上にモリブデン(Mo)等からなる金属配線78を島状に形成し、両配線75,78間の絶縁膜72を誘電体として容量素子Cを形成する。ここで、容量素子Cの容量値は、金属配線75,78の対向面積、金属配線75,78間の距離、及び、誘電体としての絶縁膜72の誘電率によって決まる。
【0134】
このように、金属配線75,78間に絶縁膜72を誘電体として形成される容量素子Cは、表示パネル70の額縁領域において、容量素子専用に確保された領域部分に、図12に示すように、例えば画素行に対応して多数形成されることになる。従って、表示パネル70の額縁領域に書込み走査回路40を含む駆動回路部を実装する場合、駆動回路部内の容量素子が占めるレイアウト面積が大きくなるために、表示パネル70の額縁が大きくなってしまう。尚、図11には、表示パネル70の額縁領域における容量素子Cの形成領域のみを図示しているが、この容量素子Cの形成領域(レイアウト面積)が、他の回路部分の形成領域以外に余分に必要となる。
【0135】
<2.実施形態の説明>
本発明の実施形態では、画素アレイ部30が形成された表示パネル70上に、容量素子を含む回路構成の駆動回路部を実装するに当たり、表示パネル70上の画素アレイ部30の周辺部にも、有機EL素子21の有機層212と同一プロセスにて有機層を形成する。そして、当該有機層を誘電体として用いて駆動回路部の容量素子を形成する。
【0136】
ここで、画素アレイ部30の周辺部に容量素子の誘電体として用いる有機層を形成したとしても、当該有機層を有機EL素子21の有機層212と同一プロセスにて形成することにより、製造工程が増えることはない。そして、画素アレイ部30の周辺部に形成された有機層を容量素子の誘電体として用いることで、先述した参考例では、容量素子が形成されていた領域を自由に使うことができるようになるため、他の回路部分の形成領域として利用できる。
【0137】
これにより、参考例では他の回路部分の形成に用いられていた領域が不要になるため、その不要になる領域の面積の分だけ、駆動回路部が占めるレイアウト面積、ひいては画素アレイ部30の周辺部、即ち表示パネル70の額縁の面積を小さくできる。すなわち、容量素子を含む回路構成の駆動回路部を表示パネル70上に実装するに当たって、表示パネル70の狭額縁化を図ることができる。以下に、実施形態の詳細について、図面を用いてより具体的に説明する。
【0138】
[2−1.実施形態に係る表示パネルの実装構造]
図13は、実施形態に係る表示パネルの実装構造を示す断面図であり、図中、図11と同等部位には同一符号を付して示している。
【0139】
図13において、画素アレイ部30側の構成については、先述した参考例に係る表示パネルの実装構造(図11を参照)と同じ構成となっている。すなわち、ガラス基板71上に駆動トランジスタ22等を含む回路部分(駆動回路部分)が形成され、当該回路部分の上層に有機EL素子21が形成されている。具体的には、ガラス基板71上に、絶縁膜72、絶縁平坦化膜73、及び、ウインド絶縁膜74がその順に形成され、ウインド絶縁膜74の凹部74Aに有機EL素子21が形成されている。
【0140】
有機EL素子21は、アノード電極211、有機層212、及び、カソード電極213によって構成されている。アノード電極211は、ウインド絶縁膜74の凹部74Aの底部に金属等によって形成されている。有機層212は、アノード電極211上に形成されている。カソード電極213は、有機層212上に透明導電膜等によって全画素共通に、即ち、表示パネル70の全面に亘って形成されている。
【0141】
駆動トランジスタ22は、モリブデン(Mo)等からなるゲート電極221と、半導体層222の両側に設けられたソース/ドレイン領域223,224と、半導体層222のゲート電極221と対向する部分のチャネル形成領域225とから構成されている。ソース/ドレイン領域223は、コンタクトホールを介して有機EL素子21のアノード電極205と電気的に接続されている。
【0142】
絶縁膜72上には、アルミニウム(Al)等からなる金属配線75が形成されている。このようにして、ガラス基板711上に、絶縁膜72、絶縁平坦化膜73、及び、ウインド絶縁膜74を介して有機EL素子21が画素単位で形成され。そして、パッシベーション膜76を介して封止基板(ガラス基板)77により有機EL素子21が封止され、以上によって表示パネル70が形成される。
【0143】
一方、画素アレイ部30の周辺部の領域、即ち、表示パネル70の額縁領域には、有機EL素子21と同じ層に容量素子90が形成されている。容量素子90は、有機EL素子21の有機層212と同じ層として同じプロセスにて形成された有機層92を誘電体として用い、当該有機層92を2つの電極91,93で挟んだ素子構造となっている。容量素子90の有機層92については、有機EL素子21の有機層212と同様に、ウインド絶縁膜74に凹部(凹部74Aに相当)を形成し、当該凹部内に形成することによって実現できる。
【0144】
この容量素子90において、2つの電極91,93は、有機EL素子21のアノード電極211及びカソード電極213と例えば同じ配線材料によって同じプロセスにて形成される。また、有機層92が有機EL素子21の有機層212と同じプロセスにて形成されるということは、有機層92も有機層212と同様に、一方の電極91上にホール輸送層/ホール注入層、発光層、電子輸送層、及び、電子注入層(いずれも図示せず)が順次堆積されることによって形成される。
【0145】
容量素子90の一方の電極91(アノード電極211に相当)は、コンタクト部94を介して金属配線75に電気的に接続される。容量素子90の他方の電極93(カソード電極213に相当)は、コンタクト部95及び金属配線75を介して金属配線78に電気的に接続される。金属配線75,78は、書込み走査回路40等の駆動回路部の他の回路部分に電気的に接続される。
【0146】
容量素子90の容量値は、2つの電極91,93の対向面積、当該電極91,93間の距離、及び、誘電体として用いる有機層92の誘電率によって決まる。ここで、有機層92は、有機EL素子21の有機層212と同じプロセスにて形成される訳であるから、2つの電極91,93間の距離は、有機EL素子21に対応して固定的に決定される。また有機層92の誘電率は、発光色によって発光層の材料が異なることによって発光色に応じて固定的に決定される。従って、容量素子90の容量値については、2つの電極91,93の対向面積によって任意に設定可能となる。
【0147】
尚、容量素子90については発光色を問わないため、単位容量を考慮し、ある単一の発光色の有機層のみで構成することができる。すなわち、上述したように、有機層92の誘電率が、発光層の材料に応じて発光色によって異なることから、容量素子90の有機層92については単一の発光色の有機層で構成することで、形成する容量素子90の全てについて単位容量を一律に設定できる。
【0148】
容量素子90は、他の回路部分の形成領域とは独立した専用の領域に形成される。従って、容量素子90の形成領域として大きな領域を確保することができる。これにより、容量素子90の2つの電極91,93の対向面積を大きく設定できるため、容量素子90の容量値として、他の回路部分と同じ領域に形成する場合に比べて大きな値を設定可能となる。比較的大きな容量値を必要とする容量素子90としては、例えば、先述したインバータ回路80における容量素子C1〜C5等を挙げることができる。
【0149】
容量素子90は、表示パネル70の額縁領域において、図12に示すように、例えば画素行に対応して多数形成されることになる。一方、容量素子90の下層、即ち、画素20の回路部分の形成層と同じ層については、コンタクト部94,95を除いて自由に使うことができる。従って、図13では図示を省略しているが、容量素子90の下層を、駆動回路部を構成する、容量素子90以外の他の回路部分、具体的には、片チャネルのトランジスタからなる回路部分の一部または全部を形成する層として利用することができる。容量素子90以外の他の回路部分は、有機EL素子21の発光面と反対側に形成される回路部分と同じプロセスにて形成することができる。
【0150】
上述したように、容量素子90を含む回路構成の駆動回路部を表示パネル70上に実装するに当たり、表示パネル70の額縁領域にも有機層92を形成し、当該有機層90を誘電体として用いて容量素子90を形成することで、次のような作用、効果を得ることができる。
【0151】
すなわち、容量素子90の誘電体として用いる有機層92を形成したとしても、当該有機層92を有機EL素子21の有機層212と同一プロセスにて形成することにより、製造工程が増えることはない。そして、表示パネル70の額縁領域に形成された有機層92を容量素子90の誘電体として用いることで、有機層92の下層の領域を他の回路部分の形成領域として利用できる。
【0152】
これにより、他の回路部分を形成する領域を別途確保する必要がなくなるため、その分だけ駆動回路部が占めるレイアウト面積、ひいては画素アレイ部30の周辺部(即ち、表示パネル70の額縁)の面積を小さくできる。すなわち、容量素子90を含む回路構成の駆動回路部を表示パネル70上に実装するに当たって、表示パネル70の額縁領域の縮小化、即ち、狭額縁化を図ることができる。
【0153】
[2−2.実施形態に係る表示パネルの製造方法]
上記構成の表示パネル70の製造に当っては、図13において、ガラス基板71上に、画素20の駆動トランジスタ22を含む回路部分を形成するプロセスにて、表示パネル70の額縁領域にも書込み走査回路40等の駆動回路部の他の回路部分を形成する。他の回路部分については、図面の簡略化のために図13では図示を省略している。そして、有機EL素子21を形成する際に、表示パネル70の額縁領域にも、同じプロセスにて一方の電極91、有機層92、及び、他方の電極93を形成し、当該有機層92を誘電体として容量素子90を形成する。
【0154】
この表示パネル70の製造方法、即ち、有機EL表示装置の製造方法によれば、製造工程を増やすことなく、即ち、有機EL素子21を形成する工程にて容量素子90を形成することができる。従って、製造コストを抑えつつ、有機層92を誘電体とする容量素子90を含む駆動回路部が実装された表示パネル70を作製することができる。
【0155】
<5.変形例>
上記実施形態では、有機EL素子21の駆動回路が、基本的に、駆動トランジスタ22および書込みトランジスタ23の2つのトランジスタからなる画素構成の場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの画素構成のものに限られるものではない。例えば、電源供給線32の電位を固定とした上で、駆動トランジスタ22に対して直列接続された発光制御トランジスタを有し、当該発光制御トランジスタによって有機EL素子21の発光/非発光の制御を行なう画素構成など、種々の画素構成に対して適用可能である。
【0156】
例えば、発光制御トランジスタを含む画素構成を採る有機EL表示装置の場合には、駆動回路部として発光制御トランジスタを制御する走査回路が別途必要になる。この場合の有機EL表示装置にあっては、発光制御トランジスタを制御する走査回路に対しても、本発明を適用することが可能となる。
【0157】
<6.適用例>
以上説明した本発明による有機EL表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部(表示装置)に適用できる。一例として、図14〜図18に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなどの表示部に適用することが可能である。
【0158】
このように、あらゆる分野の電子機器の表示部として本発明による有機EL表示装置を用いることにより、各種の電子機器の機器本体の小型化を図ることができる。すなわち、先述した実施形態の説明から明らかなように、本発明による有機EL表示装置は、容量素子を含む回路構成の駆動回路部を表示パネル上に実装するに当たって、当該表示パネルの狭額縁化を図ることができる。従って、各種の電子機器において、表示部の額縁を小さくできるために、機器本体の小型化を図ることができる。
【0159】
本発明による有機EL表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部30に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、更には、上記した遮光膜が設けられてもよい。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0160】
[電子機器]
以下に、本発明が適用される電子機器の具体例について説明する。
【0161】
図14は、本発明が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101として本発明による有機EL表示装置を用いることにより作製される。
【0162】
図15は、本発明が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本発明による有機EL表示装置を用いることにより作製される。
【0163】
図16は、本発明が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本発明による有機EL表示装置を用いることにより作製される。
【0164】
図17は、本発明が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本発明による有機EL表示装置を用いることにより作製される。
【0165】
図18は、本発明が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本発明による有機EL表示装置を用いることにより、本適用例に係る携帯電話機が作製される。
【符号の説明】
【0166】
10…有機EL表示装置、20…画素(画素回路)、21…有機EL素子、22…駆動トランジスタ、23…書込みトランジスタ、24…保持容量、25…補助容量、30…画素アレイ部、31(311〜31m)…走査線、32(321〜32m)…電源供給線、33(331〜33n)…信号線、34…共通電源供給線、40…書込み走査回路、50…電源供給走査回路、60…信号出力回路、70…表示パネル、80…インバータ回路、90…容量素子、92…有機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を含む画素が配置されてなる画素アレイ部と、
前記画素アレイ部と同じ基板上の、当該画素アレイ部の周辺部に設けられた、容量素子を含む回路構成の駆動回路部と
を備え、
前記容量素子は、前記画素アレイ部の周辺部に前記有機EL素子の有機層と同一プロセスにて形成された有機層を誘電体として用いる
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記駆動回路部は、前記画素アレイ部の各画素を順次選択する走査回路であり、
前記走査回路は、片チャネルのトランジスタと容量素子との組み合わせからなるインバータ回路を有し、
前記インバータ回路の容量素子は、前記画素アレイ部の周辺部に形成された有機層を誘電体として用いる
請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記走査回路は、前記インバータ回路の容量素子の誘電体として用いられる有機層の下層の領域に、片チャネルのトランジスタからなる回路部分が形成される
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記インバータ回路は、
入力端子を介して入力される入力電圧に応じた電圧をゲート入力とする第1のトランジスタ、
前記第1のトランジスタに対して直列に接続され、ゲート電極が前記入力端子に接続された第2のトランジスタ、
前記第1のトランジスタのゲート−ソース間に接続された第1の容量素子、及び、
前記第1,第2のトランジスタの共通接続ノードと前記入力端子との間に接続された第2の容量素子
を有し、
前記第2の容量素子は、前記画素アレイ部の周辺部に形成された有機層を誘電体として用いる
請求項2または請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第2の容量素子の容量値は、前記第1の容量素子の容量値よりも大きい
請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記画素は、前記有機EL素子を駆動する駆動トランジスタに流れる電流に応じた補正量で当該駆動トランジスタのゲート−ソース間電圧に負帰還をかけることによって前記駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正の処理機能を有し、
前記走査回路は、前記インバータ回路の出力パルスを基準として、前記移動度補正の補正時間を決める書込み走査信号を生成するとともに、当該出力パルスの遷移タイミングを前記第2の容量素子による容量カップリングによって決める
請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記容量素子の有機層は、単一の発光色の有機層からなる
請求項1または請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
有機EL素子を含む画素が配置されてなる画素アレイ部と、
前記画素アレイ部と同じ基板上の、当該画素アレイ部の周辺部に設けられた、容量素子を含む回路構成の駆動回路部と
を備えた有機EL表示装置の製造に当って、
前記有機EL素子の有機層と同一プロセスにて前記画素アレイ部の周辺部に有機層を形成し、
前記画素アレイ部の周辺部の有機層を誘電体として前記容量素子を形成する
有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
有機EL素子を含む画素が配置されてなる画素アレイ部と、
前記画素アレイ部と同じ基板上の、当該画素アレイ部の周辺部に設けられた、容量素子を含む回路構成の駆動回路部と
を備え、
前記容量素子は、前記画素アレイ部の周辺部に前記有機EL素子の有機層と同一プロセスにて形成された有機層を誘電体として用いる
有機EL表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−22168(P2012−22168A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160407(P2010−160407)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】