説明

有機EL表示装置及びその製造方法

【課題】 長寿命かつ高精細なフルカラーの有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】 有機EL素子が積層された副画素2つからなる画素を有するフルカラーの有機EL表示装置であって、画素の第1の有機化合物層は、隣り合う画素の隣り合う副画素と共通する層として形成され、第2の有機化合物層は、反対側の隣り合う画素の隣り合う副画素と共通する層として形成される。さらに、第3の有機化合物層は、全画素共通の層とし形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネセンス(以下ELと記す)を利用した有機EL素子は、陽極と陰極との間に、有機キャリア輸送層や有機発光層等の有機化合物層を有し、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機EL素子を表示素子として用いた表示装置(以下、有機EL表示装置と記す)のうち、画素ごとに有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスタ(以下TFTと記す)を設けたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置は、高画質、長寿命の観点から特に開発が進められている。
【0004】
このような有機EL表示装置としては、赤、緑、青の色ごとに、独立して発光する副画素からなる画素を配列した構成(3色独立発光方式)を採ることが一般的である。そして、3色独立発光方式を用いたフルカラーの有機EL表示装置の製造方法として、シャドウマスクを基板上に配設し、各発光層を蒸着によってパターニング形成する方法が広く用いられている。
【0005】
ところが、このようなフルカラーの有機EL表示装置を携帯電話やカメラ等の小型のモニターとして高精細化しようとすると、1副画素の発光面積が小さくなり、各副画素を高輝度で駆動しなければならない。そのため、有機EL素子の劣化が早まり、表示装置の長寿命化が困難であった。
【0006】
そこで、特許文献1では、有機EL素子を積層することによって、1副画素の発光面積を増大する有機EL表示装置が提案されている。具体的には、緑を発光する有機EL素子上に青を発光する有機EL素子が積層された副画素と、赤を発光する有機EL素子上に青を発光する有機EL素子が積層された副画素との2つの副画素から1つの画素が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−174639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、対角3インチ程度のVGA解像度を有する有機EL表示装置の場合、250ppi以上となり、1画素のピッチは約100μmとなる。そして、1画素が特許文献1のように2つの有機EL素子が積層されてなる2つの副画素から構成される場合、1副画素のピッチは約50μmとなる。
【0009】
このような有機EL表示装置の画素を構成する素子を、ストライプパターンのシャドウマスクで副画素単位で形成する場合、マスクの開口幅は約50μm、開口と開口との間のリブ幅も約50μmとなる。このようなリブ幅の細いシャドウマスクは剛性が低下してしまうため、蒸着時の熱による変形や成膜精度の低下などの問題が発生してしまう。
【0010】
本発明の目的は、長寿命かつ高精細なフルカラー有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、2つの副画素からなる画素内に、同一平面内で並べて配置される第1の有機化合物層および第2の有機化合物層からなる第1層と、前記第1層と積層される、第3の有機化合物層を含む第2層と、を備える有機EL表示装置であって、前記第1の有機化合物層および前記第2の有機化合物層の夫々は、隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通の層として形成され、前記第3の有機化合物層は、全画素間で共通の層として形成されていることを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
【0012】
また、2つの副画素からなる画素内に、同一平面内で並べて配置される第1の有機化合物層および2の有機化合物層からなる第1層と、前記第1層と積層される第3の有機化合物層を含む第2層と、を備える有機EL表示装置の製造方法であって、前記第1層を形成する工程は、隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第1の有機化合物層を形成する工程と、隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第2の有機化合物層を形成する工程と、を有し、前記第2層を形成する工程は、全画素間で共通する前記第3の有機化合物層を形成する工程を有することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長寿命で高精細なフルカラー有機EL表示装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の平面模式図、(b)(a)のA−A’線に対応した断面模式図、(c)B−B’線に対応して模式図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置のプロセスフロー図
【図3】本発明に係る有機EL表示装置に適用可能なシャドウマスクと従来技術のマスク概要図
【図4】(a)本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の駆動回路の図、(b)(a)に示される駆動回路により各有機EL素子の電極間に印加される電圧波形の一例を示す図
【図5】(a)本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置の平面模式図、(b)(a)のA−A’線に対応した断面模式図、(c)B−B’線に対応して模式図
【図6】(a)本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置の平面模式図、(b)(a)のA−A’線に対応した断面模式図、(c)B−B’線に対応して模式図
【図7】(a)本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置の駆動回路の図、(b)(a)に示される駆動回路により各有機EL素子の電極間に印加される電圧波形の一例を示す図
【図8】(a)本発明の第4の実施形態に係る有機EL表示装置の平面模式図、(b)(a)のA−A’線に対応した断面模式図、(c)B−B’線に対応して模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して本発明に係る有機EL表示装置の実施形態について説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分は、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、発明の一形態であって、これらに限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
高精細な(例えば、対角3インチの270ppiの)有機EL表示装置の一形態について説明する。
【0017】
図1(a)は、本実施形態の有機EL表示装置の平面図、図1(b)及び図1(c)は、それぞれ図1(a)中の矢印から見たA−A’断面図、B−B’断面図である。100は絶縁性基板、101は下部電極、102は隔壁、103aは第1の有機化合物層、103bは第2の有機化合物層、104は中間電極、103cは第3の有機化合物層、105は上部電極を示している。また図2に本実施形態のプロセスフローを示し、図3に本実施形態で用いるシャドウマスクの部分図を示す。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施形態にかかる有機EL表示装置は、2つの副画素(第1の副画素、第2の副画素)からなる画素がマトリクス状に複数配置されている。1行は、(P(1、1)、P(1、2))、(P(2、1)、P(2、2))・・・(P(n、1)、P(n、2))の2n個の副画素から構成されている。nは画素の列数を表す自然数で、ここでは640ある。図1(c)に示すようにTFT駆動回路107が形成された絶縁性の基板100上には、平坦化膜108が形成され、コンタクトホール106aが形成される。平坦化膜108の材料には、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの樹脂材料が好適に用いられる。さらに、平坦化膜108上に下部電極層が形成され、コンタクトホール106aを介してTFT駆動回路107に接続されている。
【0019】
下部電極101は、光反射性の部材であることが好ましく、例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料からなることが好ましい。反射率が高い部材であるほど、上面からの光取り出し効率を向上できるからである。また、有機化合物層へのキャリア注入性を考慮し、ITO、IZO等の酸化物透明導電層を積層して2層構成としても良い。
【0020】
平坦化膜108上に形成された下部電極層は、フォトリソグラフィにより画素内の第1の副画素、第2の副画素の領域に応じてパターニングされ、下部電極101となる。さらにコンタクトホール106cが平坦化膜108に形成される。次に隔壁102の材料がスピンコートによって塗布され、フォトリソグラフィによりパターニングされて、副画素の開口及びコンタクトホール106cが形成される。隔壁102は、下部電極101による段差をカバーし、その後に形成される膜の、下部電極101による段切れを防止する。隔壁102の材料にはポリイミド樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料が好適に用いられる。
【0021】
以上のようにして形成された基板上に、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bからなる第1層が形成される。有機化合物層の膜厚は0.05μm〜0.3μm程度が良く、好ましくは0.05〜0.15μm程度である。
【0022】
各有機化合物層は、発光材料を有し、さらに、正孔注入材料、電子注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料から少なくとも1種を選択して用いることができる。また、各有機化合物層は、前記材料のうち複数の材料を積層してもよい。
【0023】
発光材料には、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体が使用できる。正孔注入材料及び輸送材料には、フタロシアニン化合物、トリアリールアミン化合物、導電性高分子、ペリレン系化合物、Eu錯体等が使用できる。電子注入材料及び輸送材料には、アルミに8−ヒドロキシキノリンの3量体が配位したAlq3、アゾメチン亜鉛錯体、ジスチリルビフェニル誘導体系等を使用できる。
【0024】
第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bは、図3(b)のストライプ状の開口を有するシャドウマスクを用い、同一平面内に真空蒸着法にて形成される。従来技術によれば、シャドウマスクのリブ幅は、図3(a)のように副画素1つ分の幅しかなく、例えば、対角3インチの270ppiのフルカラーの有機EL表示装置の場合では、47μmである。しかし、本発明にかかるシャドウマスクのリブ幅は、図3(b)に示すように副画素2つ分の幅をとることができる。具体的には、対角3インチの270ppiのフルカラーの有機EL表示装置の場合では、このリブ幅は94μmとなり、マスクの剛性と開口精度を従来よりも向上することができる。
【0025】
上記のシャドウマスクを用い、同一画素内で、第1の有機化合物層103aは隣り合う画素間の隣り合う副画素間で共通の層として形成される。さらに、第2の有機化合物層103bは前記隣り合う画素とは反対側で隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する層として形成される。つまり、図1(a)の様に、第1の有機化合物層103aはP(1、2)、P(2、1)、P(3、2)、・・・P(2k−1、2)、P(2k、1)、・・・の副画素列に形成される。また、第2の有機化合物層103bは、P(1、1)、P(2、2)、P(3、1)、・・・P(2k−1、1)、P(2k、2)、・・・の副画素列に形成される。ここで、kは自然数で、2k≦n=640である。第1の有機化合物層103aは、第1の副画素と隣り合う画素を構成する2つの副画素の一方に共通の層として延在し、第2の有機化合物層103bは、第2の副画素と隣り合う画素を構成する2つの副画素の一方に共通の層として延在している。その際、隣り合う画素間の隣り合う副画素間で共通の層は、シャドウマスクの同一開口部を用いて形成される。また、第1の有機化合物層103aおよび第2の有機化合物層103bからなる第1層の発光領域は、第1の有機化合物層103aおよび第2の有機化合物層103bの下部電極101と接する面積によって規定される。
【0026】
本実施形態の第1の有機化合物層103aと第2の有機化合物層103bは、正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層を順次積層して形成されている。材料の組み合わせ例として、正孔輸送層にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を、電子輸送層にフェナントロリン化合物を、電子輸送層に炭酸セシウム(0.9vol%)とフェナントロリン化合物を用いることができる。また第1の有機化合物層103aの発光層には緑色発光するクマリン色素(1.0vol%)とトリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)を形成することができる。第2の有機化合物層103aには青色の発光層としてペリレン色素(1.0vol%)とトリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)を形成することができる。
【0027】
次に第1の有機化合物層103aおよび第2の有機化合物層103bにコンタクトホール106cを形成する。形成手段としては、レーザー加工法が好ましく、YAGレーザー(SHG,THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する方法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、基板上に所定のパターンで照射する。コンタクトホールの径としては、2μm〜15μmが好ましい。
【0028】
次に、画素形成領域の周辺のみをマスクして、中間電極104が画素形成領域の全面に成膜されている。成膜には、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等を用いることが可能である。中間電極104の材料には透光性の高い透明導電膜が好ましく、ITO、IZO、ZnOが適用可能である。またCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料を2nmから50nm程度の膜厚に薄く形成し半透過膜を適用しても良い。
【0029】
次に、上部電極105とコンタクトホール106cとのコンタクトを得るため、中間電極104にコンタクトホール106cが形成される領域のパターニングを行う。このパターニングにはレーザー加工法によるパターニングが好ましい。
【0030】
続いて、第3の有機化合物層103cを含む第2層が画素形成領域の周辺のみをマスクして蒸着法し、全画素間に共通する層として形成される。つまり、第3の有機化合物層103cは、全画素に共通の層として延在するように形成されている。このため、マスクを用いて各副画素ごとに対応してパターニングする必要がないので製造が容易になる。第3の有機化合物層103cは、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bの積層構造とは逆の積層構造となるよう、電子注入層、電子輸送層、有機発光層、正孔注入層の順に積層される。また、第1の副画素は、第1の有機化合物層103aと第3の有機化合物層103cとが積層され、第2の副画素は、第2の有機化合物層103bと第3の有機化合物層103cとが積層されている。第3の有機化合物層103cとして、例えば、赤色発光層である、Ir錯体(18vol%)と4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)を形成することができる。このように、第1の有機化合物層と第2の有機化合物層と第3の有機化合物層は互いに異なる色を発光する。その後、コンタクトホール106cには上述と同様にレーザー加工法を用いることができる。次に、上部電極105が画素領域に応じてパターニング形成され、コンタクトホール106cを介してTFT駆動回路に電気的に接続される。前述したように、第2層は全画素間に共通する層として形成されるが、上部電極105が画素ごとにパターニング形成されるため、第3の有機化合物層103cが発光する領域は、第3の有機化合物層103cと上部電極105とが接する面積により規定することができる。上部電極105には、透明導電材料や、アルミニウム、銀、マグネシウム、カルシウム等の金属単体やそれらの合金からなる2nm以上50nm以下の膜厚の半透明層を用いることができる。特に、上部電極105と電子注入層が接する場合には、銀とマグネシウムの合金(銀マグネシウム)は、発光の反射率と電子の注入性の観点で好ましい。上部電極105を金属材料で形成した場合は、エキシマレーザーによってパターニングを行うことができる。レーザーアブレーションによるパターニングであれば電極同士の間隔を狭くすることが可能であり、画素間の距離を近づけることができる。このため、1つの副画素の発光領域を大きくすることができる。
【0031】
最後に、有機EL素子を封止する。例えば、ドライ窒素で置換し露点−70℃以下に維持されたグローブボックスにて、予め紫外線硬化樹脂を塗布した不図示のガラス封止キャップと、成膜が完了した基板とを画素形成領域の外周部で貼り合せる。そして、紫外線硬化樹脂の塗布部分に紫外線を照射し、樹脂を硬化させると、パネルが完成する。他に、SiN等からなる無機保護膜や、無機層と有機化合物層を積層した保護膜により素子全体を覆う封止方法を用いることもできる。
【0032】
上記構造の有機EL表示装置の駆動方法の一様態について図4を参照して説明する。図4(a)は図1に示した有機EL表示装置の駆動回路の概要図である。また図4(b)は図4(a)に示される駆動回路により有機EL表示装置の電極間に印加される電圧波形の一例を示す図である。
【0033】
本実施形態において、第3の有機化合物層103cは、第1の有機化合物層103aおよび第2の有機化合物層103bに対し、電子及び正孔の流れ方向が逆方向になるように積層されている。中間電極104は共通電極であり、図4(a)中のVcに接続されている。また下部電極101及び上部電極105はコンタクトホール106a、106cを介して図4(a)中の駆動回路に接続される。つまり、第1の有機化合物層103aを含む第1の有機EL素子301a、第2の有機化合物層103bを含む第2の有機EL素子301b、第3の有機化合物層103cを含む第3の有機EL素子301cは図4(a)のように接続されている。
【0034】
各有機EL素子はデータ線data_11、data_12、data_13・・・data_n1、datan_n2、data_n3、制御線Pulse1、Pulseaが接続されている。各データ線は各有機EL素子への発光期間の映像信号を与え、制御線によってコンデンサC1へのチャージ及び有機EL素子への通電のスイッチングを行う。ここで、data_n1のnは画素列番号を表し、1は第1の有機EL素子を表している。
【0035】
図4(b)に示したT1からT2までの期間に、制御線Pulse1の信号を受けデータ線data_n1、data_n2、data_n3の映像信号に応じた電荷がコンデンサC1にチャージされ、各々の有機EL素子の発光期間がプログラミングされる。
【0036】
T3からT4までの期間には、制御線Pulseaの信号を受けてコンデンサC1から信号電流が各々の有機EL素子に流れ、発光する。
【0037】
本実施形態において、第1層の発光領域は、第1層と、上部電極105および下部電極101のうち一方、つまり下部電極101との接する面積によって規定されている。また、第2層の発光領域は、第2層と、他方の電極、つまり上部電極105との接する面積によって規定されている。これにより、第2層を全画素間に共通する層であっても、副画素もしくは画素の発光領域を規定することが可能となる。
【0038】
さらに、上部電極105は画素ごと、つまり2つの副画素を連続して覆うように形成したが、副画素ごとに形成し、副画素ごとに駆動するよう作製しても良い。
【0039】
本実施形態によれば、図3(b)に示すような剛性のあるシャドウマスクを用いることができ、高精細なフルカラー有機EL表示装置を蒸着法により形成することが可能となる。さらに、第2層を全画素共通の層として形成するため、プロセスが簡略化することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5(a)は本実施形態の有機EL表示装置の平面図、図5(b)及び図5(c)は、それぞれ図5(a)中の矢印から見たA−A’断面図、B−B’断面図である。
【0041】
本実施形態では、第1の実施形態に対して、第3の有機化合物層103cを含む第2層と、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bからなる第2層との積層順が逆になっている点が異なる。それに伴い、第3の有機化合物層103cが正孔注入層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層に積層され、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bは電子注入層、電子輸送層、有機発光層、正孔注入層の順に積層されている。さらに、第2層の発光領域は、第2層の下部電極101と接する面積によって規定され、第1層の発光領域は、第1層の上部電極105と接する面積によって規定されている。
【0042】
また、第1の有機化合物層103aと第2の有機化合物層103bとの境界には、膜の段切れを防止する隔壁102は不要となるため、隔壁102は1画素毎の境界にのみ設けている。
【0043】
その他は、材料、製法、駆動方法ともに第1の実施形態と同様の方法によって有機EL表示装置を形成することができる。
【0044】
本実施形態によれば、図3(b)に示すような剛性のあるシャドウマスクを用いることができ、高精細なフルカラー有機EL表示装置を蒸着法により形成することが可能となる。
【0045】
(第3の実施形態)
図6(a)は本実施形態の有機EL表示装置の平面図、図6(b)及び図6(c)は、それぞれ図6(a)中の矢印から見たA−A’断面図、B−B’断面図である。
【0046】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、第3の有機化合物層103cが正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層されている点が異なる。つまり、第3の有機化合物層103cは、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bと同じ積層構造である。さらに、下部電極101及び上部電極105を全画素間に共通の層として形成され、中間電極104が副画素に対応してパターニング形成されている点も異なる。つまり、第1層、および第2層の発光領域が中間電極104により規定されている。これにより、第1、第2の実施形態比べて、1つの画素に形成するコンタクトホールを半分に減らす事ができる。
【0047】
本実施形態は、駆動回路、及び駆動方法が第1の実施形態と異なるため、後に説明する。また、製造方法は、第1の実施形態と同様の方法を用いることができるため、詳細な説明を省略するが、中間電極104を上述した金属材料で形成した場合は、レーザーアブレーションによりパターニングすることができる。さらに中間電極104を金属材料で形成した場合は、第1の有機化合物層103aおよび第2の有機化合物層103bからの発光、もしくは第3の有機化合物層103cからの発光を透過するように、中間電極104は金属薄膜で構成される。この金属薄膜の膜厚が30nm以下である場合には、中間電極104のパターン段差で第3の有機化合物層103cの層が段切れすることはなく、隔壁102を形成する必要はない。
【0048】
本実施形態の有機EL表示装置の駆動方法の一例を図7を参照して説明する。図7(a)は、図6に示される有機EL表示装置の駆動回路の概要図である。また図7(b)は、図7(a)に示される駆動回路により有機EL装置の電極間に印加される電圧波形の一例を示す図である。
【0049】
本実施形態において第3の有機化合物層103cは第1の有機化合物層103aと第2の有機化合物層103bに対して電子及び正孔の流れる方向が同じ方向になるように積層している。ここでは下部電極101及び上部電極105は全画素に渡って共通の電極であり、図7(a)中のVcに接続される。また中間電極104はコンタクトホール106a,106bを介して図7(a)中の駆動回路に接続される。
【0050】
第1の有機EL素子301aは下部電極101、第1の有機化合物層103a及び中間電極104から構成され、第2の有機EL素子301bは下部電極101、第2の有機化合物層103b及び中間電極104から構成される。また第3の有機EL素子301cは中間電極104、第3の有機化合物層103c及び上部電極105とから構成される。
【0051】
各有機EL素子にはデータ線data_11、data_12、data_13・・・data_n1、data_n2、data_n3、制御線Pulse1、Pulse1、Pulsea、Pulsebが接続されている。各データ線は各有機EL素子への発光期間の映像信号を与え、制御線によってコンデンサへのチャージ及び有機EL素子への通電のスイッチングを行う。
【0052】
図7(b)に示したT1からT2までの期間では制御線Pulse1の信号を受け、それぞれのデータ線data_n1、data_n2、からの映像信号に応じた電荷がコンデンサC1にチャージされる。これにより、第1の有機EL素子301a、第2の有機EL素子301bの発光期間がプログラミングされる。この時、Va=Vcc、Vc=Gndとなる。
【0053】
T2からT3までの期間では、制御線Pulse2の信号を受け、データ線data_n3からの映像信号に応じた電荷がコンデンサC2にチャージされ、第3の有機EL素子301cの発光期間がプログラミングされる。この時、Va=Gnd、Vc=Vccとなる。
【0054】
T3からT4までの期間では、Va=Vcc、Vc=Gndとし、制御線Pulseaの信号を受けてコンデンサC1から信号電流が第1の有機EL素子301a、第2の有機EL素子301bに流れ発光する。
【0055】
T4からT5までの期間で、Va=Gnd、Vc=Vccとし、制御線Pulsebの信号を受けてコンデンサC2から信号電流が第3の有機EL素子301cに流れ、発光する。
【0056】
本実施形態によれば、図3(b)に示すような剛性のあるシャドウマスクを用い、高精細なフルカラー有機EL表示装置を形成することが可能となる。
【0057】
(第4の実施形態)
図8(a)は本実施形態の有機EL表示装置の平面図、図8(b)及び図8(c)は、それぞれ図8(a)中の矢印から見たA−A’断面図、B−B’断面図である。本実施形態では、第3の実施形態に対して、第3の有機化合物層103cを含む第2層と、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bからなる第2層との積層順が逆になっている点が異なる。よって、第3の有機化合物層103cを含む第2層が下部電極101と中間電極104とに狭持され、第1の有機化合物層103a及び第2の有機化合物層103bからなる第1層が中間電極104と上部電極105とに狭持されている。また、第1の有機化合物層103aと第2の有機化合物層103bとの境界には隔壁102を設けていない。
【0058】
その他は、材料、製法、駆動方法ともに第3の実施形態と同様の方法によって有機EL表示装置を形成することができる。
【0059】
本実施形態によれば、図3(b)に示すような剛性のあるシャドウマスクを用いて、高精細なフルカラー有機EL表示装置の製造が可能となる。
【0060】
以上、すべての実施形態において、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層及び第3の有機化合物層が、それぞれ緑色、青色、赤色を発光するとして説明したが、本発明はこの組み合わせを限定するものではない。例えば、第3の有機化合物層の発光層に青色を発光する発光層を選択し、発光効率の最も低い青色の発光領域を広く確保することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
301a 第1の有機化合物層
301b 第2の有機化合物層
301c 第3の有機化合物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの副画素からなる画素内に、
同一平面内で並べて配置される第1の有機化合物層および第2の有機化合物層からなる第1層と、
前記第1層と積層される、第3の有機化合物層を含む第2層と、
を備える有機EL表示装置であって、
前記第1の有機化合物層および前記第2の有機化合物層の夫々は、隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通の層として形成され、
前記第3の有機化合物層は、全画素間で共通の層として形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1層および前記第2層は、上部電極と下部電極とに狭持されており、前記第1層の発光領域は、前記上部電極もしくは前記下部電極のどちらか一方と接する面積によって規定され、前記第2層の発光領域は、他方の電極と接する面積によって規定されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1層と前記第2層との間には中間電極が配置されており、前記第1層、および第2層の夫々の発光領域は、前記中間電極と接する面積によって規定されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
2つの副画素からなる画素内に、同一平面内で並べて配置される第1の有機化合物層および2の有機化合物層からなる第1層と、
前記第1層と積層される第3の有機化合物層を含む第2層と、
を備える有機EL表示装置の製造方法であって、
前記第1層を形成する工程は、
隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第1の有機化合物層を形成する工程と、
隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第2の有機化合物層を形成する工程と、を有し、
前記第2層を形成する工程は、
全画素間で共通する前記第3の有機化合物層を形成する工程
を有することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の有機化合物層および前記第2の有機化合物層を形成する工程は、シャドウマスクを用いた真空蒸着法であって、前記隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第1の有機化合物層および前記隣り合う画素の隣り合う副画素間で共通する前記第2の有機化合物層は、マスクの同一開口部を用いて形成されることを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−40507(P2010−40507A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107879(P2009−107879)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】