説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器

【課題】 隔壁部内に形成する有機材料の膜厚バラツキが生じた場合にも、輝度のバラツキが生じ難い構成を備えた有機EL装置を提供する。
【解決手段】 本発明の有機EL装置は、基板2上に、複数の画素領域R,G,Bを区画形成する隔壁部112を有し、画素領域R,G,Bには、少なくとも陽極111と、有機EL層110bと、陰極12とが積層して形成され、有機EL層110bが、隔壁部112によって囲まれた領域に形成されてなる一方、陰極12は、相対的に仕事関数の小さい第1陰極12aと相対的に仕事関数の大きい第2陰極12bとが、有機EL層110b側からこの順で積層されてなる積層構造を有するとともに、当該陰極12のうち、少なくとも第1陰極12aが、当該第1陰極12aの外縁が有機EL層110bの外縁よりも内側に位置するように形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光型の表示デバイスである有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)としては、陽極と陰極との間に有機材料からなる正孔輸送層や発光層を挟持した構成のものがある。このような有機EL装置を製造する場合において、有機材料を用いる正孔輸送層及び発光層の成膜は、スピンコート法或いはインクジェット法等が好適に用いられる。特に、特許文献1のようにインクジェット法を用いる場合、目的の画素に成膜するために陽極上にバンクを形成しており、このようなバンクの形成により、有機材料(正孔輸送層形成材料又は発光層形成材料)及び溶媒を含む液滴が画素内に安定に着弾する。
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のようなインクジェット法を用いた場合、液滴を画素内へ着弾させた後、脱溶媒工程を経て、目的の正孔輸送層又は発光層が成膜される。ここで、液滴の状態から乾燥工程を経て膜になる際に、バンクで囲まれた画素の中央部と外周部(周縁端部)とでは、バンクとの親和性や陽極上の表面状態の違いに起因して、膜厚のバラツキが生じてしまう場合がある。特に、画素の外周部においては膜厚が大きく、画素の中央部において膜厚が小さく形成される傾向にある。
【0004】
発光層の膜厚と電流の関係は、一般的に言われている導電性ポリマーとほぼ同じ傾向が見られ、膜厚の2乗〜3乗の関係で電流のバラツキが生じ得る。電流と輝度の関係は線形に近いと考えると、ある範囲での輝度のバラツキを抑えるためには、膜厚のバラツキを厳密に抑えなければならない。一方、バンクを形成する以上、上述したような画素の中央部と外周部とにおいて発生する膜厚のバラツキを回避することは困難な状況にある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、バンク(隔壁部)内に形成する有機材料の膜厚バラツキが生じた場合にも、輝度のバラツキが生じ難い構成を備えた有機EL装置と、その製造方法を提供することを目的としている。また、本発明は、そのような有機EL装置を備えた信頼性の高い電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の有機EL装置は、基板上に、複数の画素領域を区画形成する隔壁部が形成されてなり、前記画素領域には、少なくとも陽極と、有機EL層と、陰極とが積層して形成され、前記有機EL層が、前記隔壁部によって囲まれた領域に形成されてなる一方、前記陰極は、相対的に仕事関数の小さい第1陰極と相対的に仕事関数の大きい第2陰極とが、前記有機EL層側からこの順で積層されてなる積層構造を有するとともに、当該陰極のうち、少なくとも前記第1陰極が、当該第1陰極の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するように形成されてなることを特徴とする。
【0007】
このような有機EL装置によると、陰極を構成する第1陰極の外縁が、有機EL層の外縁の内側に位置してなるため、当該第1陰極の形成領域が有機EL層の形成領域の平面視内側となり、つまり有機EL層の外周部に平面視重畳する位置には少なくとも一方の第1陰極が形成されないこととなる。したがって、有機EL層の外周部には電子が注入されず、又は実質的に電子が注入されない(つまり発光に有効な電子が注入されない)ものとなる。その結果、画素領域に形成される有機EL層において、例えば製造上の理由で画素領域の中央部と外周部とで膜厚にバラツキ(差異)が生じるような場合にも、有機EL層の外周部には電子が注入されない(又は実質的に注入されない)ことで、当該外周部は発光に寄与しないこととなる。その結果、膜厚のバラツキに起因する輝度のバラツキが生じることもなく、均一な発光が得られることとなる。また、輝度のバラツキに起因する寿命のバラツキも生じることがなくなり、ひいては当該有機EL装置の寿命向上にも寄与することが可能となる。
【0008】
本発明の有機EL装置において、前記第2陰極は、前記各画素領域に跨って形成されてなるものとすることができる。つまり、第1陰極をパターン形成しておけば、発光に有効な電子を有機EL層に注入することができなくなり、相対的に仕事関数の大きな第2陰極は、第1陰極に倣ったパターン形状とする他、各画素領域に跨って全面ベタ状に形成することができ、この場合、その形成が非常に簡便なものとなる。なお、陰極を構成する第1陰極及び第2陰極としては、例えば第1陰極がカルシウムからなり、第2陰極がアルミニウムからなるものを用いることができる。
【0009】
一方、前記陽極は、前記基板上において、前記画素領域毎にパターン形成された画素電極として構成されてなるものとすることができる。なお、本発明では、陽極の外縁は有機EL層の外縁よりも内側、外側又は外縁同士が重なった状態のいずれであっても良い。
【0010】
また、前記有機EL層と前記第1陰極との間に、フッ化リチウムからなる電子注入層が形成されてなるものとすることができる。このようなフッ化リチウムからなる電子注入層を第1陰極と有機EL層との間に介在させると、第1陰極から有機EL層に対しての電子注入を促進することが可能となる。なお、このような電子注入層は、各画素領域に跨って全面ベタ状に形成することもできるが、第1陰極と同様に、当該電子注入層の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するように形成されていることが好ましい。有機EL層の外周部における発光を一層確実に抑制することができるためである。
【0011】
さらに、前記有機EL層と前記陰極との間に、電子注入を遮蔽する電子注入遮蔽層が形成されてなり、該電子注入遮蔽層は、前記有機EL層の外周部と平面視重畳する位置に選択的に形成されてなるものとすることができる。この場合、有機EL層のうち、電子注入遮蔽層が形成された外周部においては電子注入が遮蔽されるため、有機EL層の外周部における発光を一層確実に抑制することができるようになる。
【0012】
上記のような電子注入遮蔽層を有する有機EL装置においては、前記陰極が透光性を有してなり、前記有機EL層で発光した光が前記陰極側から射出されるとともに、前記電子注入遮蔽層が遮光性を有してなるものとすることができる。この場合、仮に有機EL層の外周部で発光が生じた場合にも、電子注入遮蔽層において遮光されるため、光が陰極側に抜けることを防止でき、画素領域内における輝度のバラツキ発生を防止することが可能となる。
【0013】
なお、前記有機EL層は、当該有機EL層を構成する有機材料を溶媒に溶解ないし分散させた液状物を、前記隔壁部によって囲まれた領域に塗布して形成されたものとすることができる。隔壁部によって囲まれた領域に液状物を塗布して有機EL層を形成する液相法を採用した場合、有機EL層は隔壁部に対する濡れ性の度合いによって、その膜厚が中央部と外周部とで異なり不均一となる場合があるが、このような液相法により形成されてなる有機EL層を含む有機EL装置について本発明の構成を採用すると、当該膜厚の不均一化の問題を上述の通り解消することができる。なお、液相法としては、具体的には液滴吐出装置(インクジェット装置)を用いた液滴吐出法を例示することができる。
【0014】
次に、上記課題を解決するために、本発明の有機EL装置の製造方法は、基板上に、複数の画素領域を区画形成する隔壁部を形成する隔壁部形成工程と、前記基板上に陽極を形成する陽極形成工程と、前記陽極上に有機EL層を形成する有機EL層形成工程と、前記有機EL層上に陰極を形成する陰極形成工程とを含み、前記有機EL層形成工程は、当該有機EL層を構成する有機材料を溶媒に溶解ないし分散させた液状物を、前記隔壁部によって囲まれた領域に塗布する工程と、塗布した液状物を乾燥する工程とを含む一方、前記陰極形成工程は、前記有機EL層上に、相対的に仕事関数の小さい第1陰極を、当該第1陰極の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するようにパターン形成する工程と、前記第1陰極上に、相対的に仕事関数の大きい第2陰極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
このような方法により、上述した本発明の有機EL装置を好適に製造することが可能となる。なお、有機EL層形成工程では、特に液滴吐出装置(インクジェット装置)を用いた液滴吐出法を採用すれば、隔壁部で囲まれた領域内への液状物の選択吐出を一層確実に行えるようになる。
【0016】
また、第2陰極を形成する工程において、蒸着法等により各画素領域に跨って形成することができる。つまり、第2陰極を構成するアルミニウム等の導電性金属材料を、蒸着により各画素領域に跨って基板全面に形成すれば、当該第2陰極の形成が非常に簡便となる。
【0017】
一方、陽極形成工程は隔壁部形成工程よりも先に行うことができ、この場合、前記基板に対して当該陽極を画素領域毎にパターン形成するものとすることができる。このような陽極は画素電極として構成され、各画素電極に対して、例えばスイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)を介して通電制御を行うことが可能となる。なお、陽極を形成した後、隔壁部は陽極を取り囲む形にて、つまり該陽極が形成されていない領域に対して選択的に形成される。ここで、隔壁部は陽極の外周部と部分的に重なって形成するものとしても良い。これにより、陽極と隔壁部との間に隙間が生じる不具合を解消でき、画素領域を隔壁部により確実に区画形成することができるようになる。
【0018】
次に、上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上記有機EL装置を備えたことを特徴とする。この場合、発光ムラが少なく、信頼性の高い電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために、縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の有機EL装置の一実施形態を示すものであって、特にアクティブマトリクス型の有機EL装置について模式的に示す図である。なお、この図1に示す有機EL装置1は、薄膜トランジスタを用いたアクティブ型の駆動方式を採用している。
【0021】
有機EL装置1は、基板2の上に、回路素子としての薄膜トランジスタを含む回路素子部14、陽極(画素電極)111、有機EL層(有機EL素子)を含む機能層110、陰極(対向電極)12、及び封止部3等を順次積層した構成からなる。
【0022】
基板2としては、本例ではガラス基板が用いられている。ガラス基板の他にも、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、公知の様々な基板が適用される。基板2内には、発光領域としての複数の画素領域Aがマトリクス状に配列されており、カラー表示を行う場合、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応する画素領域Aが所定の配列で構成される。各画素領域Aには、陽極111が配置され、その近傍には信号線132、電源線133、走査線131及び図示しない他の陽極用の走査線等が配置されている。画素領域Aの平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0023】
また、封止部3は、水や酸素の侵入を防いで陰極12あるいは機能層110の酸化を防止するものであり、基板2に塗布される封止樹脂、及び基板2に貼り合わされる封止基板3b(封止缶)等を含む。封止樹脂の材料としては、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等が用いられ、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂が好ましく用いられる。封止樹脂は、基板2の周縁に環状に塗布されており、例えば、マイクロディスペンサ等により塗布される。封止基板3bは、ガラスや金属等からなり、基板2と封止基板3bとは封止樹脂を介して貼り合わされている。
【0024】
図2は、上記有機EL装置1の回路構造を示している。
図1に示した基板2上には、図2に示すような複数の走査線131と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、信号線132に並列に延びる複数の電源線133とが配線されている。また、走査線131及び信号線132の交点毎に上記画素領域Aが形成されている。
信号線132には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを含むデータ側駆動回路103が接続されている。また、走査線131には、シフトレジスタ及びレベルシフタを含む走査側駆動回路104が接続されている。
【0025】
画素領域Aには、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の第1の薄膜トランジスタ123と、この薄膜トランジスタ123を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量135と、保持容量135によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用の第2の薄膜トランジスタ124と、この薄膜トランジスタ124を介して電源線133に電気的に接続したときに電源線133から駆動電流が流れ込む陽極(画素電極)111と、陽極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれる機能層110とが設けられている。なお、機能層110は、有機EL素子としての有機EL層を含むものである。
【0026】
画素領域Aでは、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ123がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量135に保持され、この保持容量135の状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ124の導通状態が決まる。また、第2の薄膜トランジスタ124のチャネルを介して電源線133から陽極111に電流が流れ、さらに機能層110を通じて陰極(対向電極)12に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて、機能層110が発光する。
【0027】
図3は、上記有機EL装置1における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。この図3には赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応する3つの画素領域の断面構造が示されている。前述したように、有機EL装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、陽極(画素電極)111、機能層110が形成された発光素子部11、及び陰極(対向電極)12が順次積層されて構成されている。
この有機EL装置1では、機能層110から基板2側に発した光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
【0028】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。なお、半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
さらに回路素子部14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0029】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な陽極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの陽極111に接続されている。
また、もう一方のコンタクトホール146が電源線133に接続されている。
このようにして、回路素子部14には、各陽極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。なお、回路素子部14には、前述した保持容量135及びスイッチング用の薄膜トランジスタ124も形成されているが、図3ではこれらの図示を省略している。
【0030】
発光素子部11は、複数の陽極111上の各々に積層された機能層110と、機能層110同士の間に配されて各機能層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。機能層110上には陰極12が配置されている。なお、発光素子である有機EL素子10は、陽極111、陰極12、及び機能層110等を含んで構成される。
【0031】
陽極111は、ITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この陽極111の厚さは、50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。
【0032】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する無機物バンク層112a(第1バンク層)と基板2から離れて位置する有機物バンク層112b(第2バンク層)とが積層されて構成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO、TiO等の無機材料からなる。また、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のあるレジストから形成されている。
【0033】
機能層110は、陽極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された有機EL層(発光層)110bとから構成されている。
【0034】
正孔注入/輸送層110aは、正孔を有機EL層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを陽極111と有機EL層110bの間に設けることにより、有機EL層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、有機EL層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が有機EL層で再結合し、発光が得られる。
【0035】
有機EL層110bは、赤色(R)に発光する赤色有機EL層110b、緑色(G)に発光する緑色有機EL層110b、及び青色(B)に発光する青色有機EL層110bの発光波長帯域が互いに異なる3種類からなり、各有機EL層110b〜110bが所定の配列(例えばストライプ状)で配置されている。なお、本実施形態では、有機EL層110bは高分子発光材料(高分子有機EL材料)より構成されているが、例えば低分子発光材料(低分子有機EL材料)により当該有機EL層110bを構成するものとしても良い。
【0036】
一方、陰極(対向電極)12は、仕事関数の異なる2つの層が積層されて構成されており、カルシウムを主体として構成されたカルシウム層(第1陰極)12aと、アルミニウムを主体として構成されたアルミニウム層(第2陰極)12bとを有している。このような陰極12は、陽極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たしている。なお、第1陰極を構成する材料としては、カルシウム以外にも例えばセシウム等を用いることができ、一方、第2陰極を構成する材料としては、アルミニウム以外にも例えばMgAg(マグネシウムと銀の合金)、ITO(インジウム錫酸化物)等を用いることができる。
【0037】
相対的に仕事関数の小さいカルシウム層12aは、機能層110上に積層され、画素領域A(R,G,B)毎に所定パターンで形成されている。一方、相対的に仕事関数の大きいアルミニウム層12bは、各画素領域A(R,G,B)に跨って、基板2の全面に形成されている。なお、アルミニウム層12bは、機能層110で発せられた光を基板2側に反射する機能を有している。
【0038】
ここで、本実施の形態の有機EL装置1では、陰極12のうちカルシウム層12aの外縁12gが、有機EL層110bの外縁110gの内側に位置している。つまり、カルシウム層12aの形成領域が有機EL層110bの形成領域の平面視内側となるように、これらカルシウム層12aと有機EL層110bが相対配置され、有機EL層110bの周縁領域にはカルシウム層12aが平面視重畳配置されていない構成となっている。
【0039】
したがって、画素領域A(図3ではR,G,B)に形成される有機EL層110bにおいて、例えば製造時においてバンク部112との親和性や陽極111上の表面状態の違いに起因して、画素領域Aの中央部と外周部とで膜厚にバラツキ(差異)が生じるような場合にも、有機EL層110bの周縁領域(画素領域Aの外周部)にはカルシウム層12aが形成されていないことで、当該周縁領域には電流が流れず、発光が生じないものとなる。その結果、有機EL層110bにおける膜厚のバラツキに起因して、画素領域A(R,G,B)において輝度のバラツキが生じることもなく、均一な発光が得られるものとされている。
【0040】
なお、本実施の形態の有機EL装置1において、正孔注入/輸送層110a及び有機EL層110bは、これらを構成する有機材料を溶媒に溶解ないし分散させた液状組成物を、インクジェット法(液滴吐出法)により選択吐出し、その後、該液状組成物を乾燥させることで成膜するものとしている。そして、吐出に先立って、バンク部112表面には撥液処理を、陽極111上には親液処理を施すものとしており、当該撥液処理及び親液処理に起因して、成膜された正孔注入/輸送層110a及び有機EL層110bには上述のような膜厚のバラツキが生じ得るものとなっている。
【0041】
次に、上記有機EL装置1を製造する方法について図8を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図3に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び陽極111がすでに形成されているものとする。
【0042】
本例の製造方法は、(1)正孔注入/輸送層形成工程、(2)有機EL層形成工程、(3)陰極形成工程、及び(4)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする場合もある。なお、(1)正孔注入/輸送層形成工程、(2)有機EL層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)を用いて行った。
【0043】
(1)正孔注入/輸送層形成工程
図8(a)に示すように、陽極111が形成された基板2上に、正孔注入/輸送層110aを形成する。正孔注入/輸送層形成工程では、例えば、液体吐出法を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む組成物を陽極111上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、陽極111上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、この正孔注入/輸送層形成工程を含め、以降の工程は、例えば窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0044】
液体吐出法による正孔注入/輸送層の形成手順としては、液体を吐出するための吐出ヘッド(図示略)に、正孔注入/輸送層の材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する陽極111に対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。その後、吐出後のインク滴を乾燥処理して組成物インクに含まれる極性溶媒(液体材料)を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層が形成される。
【0045】
ここで用いる組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。より具体的な組成物の組成としては、PEDOT:PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、PSS:1.44重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、組成物の粘度は2〜20Ps程度が好ましく、特に4〜15cPs程度が良い。
【0046】
(2)有機EL層形成工程
次に、図8(b)に示すように、正孔注入/輸送層110a上に有機EL層110bを形成する。本実施形態では、青色有機EL層110bを形成し、続いて赤色有機EL層110b、緑色有機EL層110bを順次形成する。ここでは液体吐出法により、有機EL層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出し、その後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に各色有機EL層110bを形成する。
【0047】
有機EL層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、有機EL層形成の際に用いる組成物インクの溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な無極性溶媒を用いる。この場合、無極性溶媒に対する正孔注入/輸送層110aの表面の濡れ性を高めるために、有機EL層形成の前に表面改質工程を行うのが好ましい。表面改質工程は、例えば上記無極性溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒を液体吐出法、スピンコート法又はディップ法等により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行う。なお、ここで用いる表面改質用溶媒は、組成物インクの無極性溶媒と同一なものとして例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を例示でき、組成物インクの無極性溶媒に類するものとしては、例えばトルエン、キシレン等を例示することができる。
【0048】
液体吐出法による有機EL層の形成手順としては、まず青色有機EL層を形成する。該青色有機EL層の形成に際しては、吐出ヘッド(図示略)に、青色有機EL層を形成する材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する青色(B)用の正孔注入/輸送層110aに対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。吐出されたインク滴は、正孔注入/輸送層110a上に広がってバンク部112の開口部内に満たされる。続いて、吐出後のインク滴を乾燥処理することにより組成物インクに含まれる無極性溶媒が蒸発し、青色有機EL層110bが形成される。
【0049】
青色有機EL層110bを形成する発光材料としては、例えばジスチリルビフェニルおよびその誘導体、クマリンおよびその誘導体、テトラフェニルブタジエンおよびその誘導体などの有機EL材料からなるものを用いることができる。一方、無極性溶媒としては、正孔注入/輸送層に対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。
【0050】
続いて、赤色(R)及び緑色(G)用の正孔注入/輸送層110aの上に、赤色有機EL層110b及び緑色有機EL層110bをそれぞれ形成する。この赤色及び緑色有機EL層形成工程は、前述した青色有機EL層形成工程と同様の手順で行われる。即ち、液体吐出法により、有機EL層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出した後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に有機EL層を形成する。なお、赤色有機EL層110bを形成する発光材料としては、例えばローダミンおよびその誘導体などの有機EL材料からなるものを用いることができ、緑色有機EL層110bを形成する発光材料としては、例えばキナクリドンおよびその誘導体などの有機EL材料からなるものを用いることができる。
【0051】
(3)陰極形成工程
次に、陽極111と対をなす陰極12を形成する。ここでは、図8(c)に示したようにカルシウム層12aを形成した後に、図8(d)に示すアルミニウム層12aを形成するものとしている。
【0052】
カルシウム層12aの形成工程においては、図8(c)に示すように、各色有機EL層110b上に、それぞれ所定パターンの開口部を有するマスクを介した蒸着法、スパッタ法、CVD法等により、当該カルシウム層12aをパターン形成するものとしている。具体的には、カルシウム層12aの外縁12gが、有機EL層110bの外縁110gよりも内側に位置するように、つまり有機EL層110bの形成領域の内側にカルシウム層12aが平面視重畳配置されるように、当該カルシウム層12aを形成するものとしている。なお、カルシウム層を各画素領域に跨って全面形成した後、フォトリソグラフィ技術により当該カルシウム層12aをパターン形成するものとしても良い。
【0053】
また、アルミニウム層12bの形成工程においては、図8(d)に示すように、各色有機EL層110b及びバンク部112を含む基板2上の領域全面に、アルミニウムを蒸着法、スパッタ法、CVD法等により成膜するものとしている。
【0054】
(4)封止工程
最後に、有機EL素子(発光素子)が形成された基板2と封止基板3b(図1参照)とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板3bを配置する。
封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0055】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14(図1参照)の配線を接続することにより、本例の有機EL装置1が完成する。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の有機EL装置の第2実施形態について図4を用いて説明する。なお、本第2実施形態で説明する構成要素以外については、第1実施形態と同様の構成を有するものとして説明を省略する。
【0057】
本第2実施形態の有機EL装置1aでは、青色有機EL層110bを含む画素領域Bに対して、電子注入層12cが選択的に設けられている。この電子注入層12cはフッ化リチウムからなり、陰極12から機能層110への電子注入を促進する機能を有するものである。そして、本実施形態では、該電子注入層12cについても、カルシウム層12aと同様に、当該電子注入層12cの外縁12hが、有機EL層110bの外縁110gよりも内側に位置するように配置され、つまり有機EL層110bの形成領域の内側に電子注入層12cが平面視重畳して配置されている。
【0058】
このような第2実施形態の有機EL装置1aにおいても、カルシウム層12aの外縁12gが、有機EL層110bの外縁110gの内側に位置しており、さらに電子注入層についても、その外縁12hが有機EL層110bの外縁110gの内側に位置している。したがって、画素領域A(R,G,B)に形成される有機EL層110bにおいて、例えば製造時においてバンク部112との親和性や陽極111上の表面状態の違いに起因して、画素領域Aの中央部と外周部とで膜厚にバラツキ(差異)が生じるような場合にも、有機EL層110bの周縁領域(画素領域Aの外周部)にはカルシウム層12a及び電子注入層12cが形成されていないことで、当該周縁領域は発光に寄与されないこととなる。その結果、有機EL層110bにおける膜厚のバラツキに起因して、輝度のバラツキが生じることもなく、均一な発光が得られるものとされている。なお、このような均一発光の効果は、図5に示したように、電子注入層12cを画素領域内(バンク部112で囲まれた領域内)に全面形成した有機EL装置1bにおいても得ることができる。また、電子注入層12cは、青色の画素領域Bのみならず、緑色や赤色の画素領域G,Rに形成するものとしても良い。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の有機EL装置の第3実施形態について図6を用いて説明する。なお、本第3実施形態で説明する構成要素以外については、第1実施形態と同様の構成を有するものとして説明を省略する。
【0060】
本第3実施形態の有機EL装置1cでは、機能層110と陰極12との間に、電子注入を遮蔽する電子注入遮蔽層13が形成されている。具体的には、カルシウム層12aの外周を取り囲む形で形成されており、つまり、有機EL層110bの外周部と平面視重畳する位置に選択的に形成されている。したがって、電子注入遮蔽層13は、バンク部112で囲まれた領域に、自身の中心部に開口を有するリング状に構成されて、当該開口部分のみで電子注入が行われるようにするものである。なお、電子注入遮蔽層13は、陰極12から機能層110への電子注入を阻害する機能を有する材料、例えば酸化シリコン膜等で構成されている。
【0061】
このような第3実施形態の有機EL装置1cにおいても、カルシウム層12aの外縁12gが、有機EL層110bの外縁110gの内側に位置しており、さらに電子注入遮蔽層13が有機EL層110bの外周部と平面視重畳する位置に選択的に形成されている。したがって、画素領域A(R,G,B)に形成される有機EL層110bにおいて、例えば製造時においてバンク部112との親和性や陽極111上の表面状態の違いに起因して、画素領域Aの中央部と外周部とで膜厚にバラツキ(差異)が生じるような場合にも、有機EL層110bの周縁領域(画素領域Aの外周部)にはカルシウム層12aが形成されておらず、且つ電子注入遮蔽層13が形成されたことで、当該周縁領域は発光に寄与されないこととなる。その結果、有機EL層110bにおける膜厚のバラツキに起因して、輝度のバラツキが生じることもなく、均一な発光が得られるものとされている。
【0062】
なお、図7に示した有機EL装置1dのように、機能層110で発光した光を基板2とは異なる側から取り出すタイプ(トップエミッションタイプ)では、遮光性の電子注入遮蔽層13aを用いることができる。この場合、仮に有機EL層110bの外周部で発光が生じた場合にも、電子注入遮蔽層13aにおいて遮光されるため、光が陰極12e側に抜けることを防止でき、その結果、画素領域A(R,G,B)内における輝度のバラツキ発生を一層防止することが可能となる。なお、当該有機EL装置1dでは、基板2上に形成する画素電極としてアルミニウム等からなる光反射性の陽極111bを用い、対向電極としてITO(インジウム錫酸化物)からなる光透過性の陰極12eを用いることができる。
【0063】
さらに、このような電子注入遮蔽層13,13aを形成した場合には、カルシウム層12aを各画素領域A(R,G,B)に跨って形成することも可能である。つまり、有機EL層110bとカルシウム層12aとの間に、電子注入遮蔽層13,13aが介在するように構成すれば、有機EL層110bの外周部に平面視重畳する位置おいてカルシウム層12aが形成されていたとしても、当該有機EL層110bの外周部への電子注入を遮蔽することができ、該外周部での発光を防止ないし抑制することができる。
【0064】
(第4実施形態)
図9及び図10は、本発明の電子機器の一実施の形態を示している。本例の電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えている。
図9は、携帯電話の一例を示した斜視図で、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記の有機EL装置を用いた表示部を示している。このように本発明の電気光学装置に係る有機EL装置を表示手段として備える電子機器は、良好な発光特性を得ることができ、非常に信頼性が高いものとなる。
【0065】
図10は、映像モニタの一例を示した斜視図で、映像モニタ1200は、有機EL装置を具備した表示部1201と、筐体1202と、スピーカ1203等を備えて構成されている。そして、この映像モニタ1200によれば、良好な発光特性を得ることができ、非常に信頼性が高いものとなる。
【0066】
上記各実施の形態の有機EL装置は、上記のような携帯電話や映像モニタに限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、色鮮やかな高画質の表示が得られるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態の有機EL装置について一部を切り欠いて示す斜視図。
【図2】図1の有機EL装置の等価回路図。
【図3】図1の有機EL装置の部分断面模式図。
【図4】第2実施形態の有機EL装置の部分断面模式図。
【図5】第2実施形態の有機EL装置の一変形例を示す部分断面模式図。
【図6】第3実施形態の有機EL装置の部分断面模式図。
【図7】第3実施形態の有機EL装置の一変形例を示す部分断面模式図。
【図8】第1実施形態の有機EL装置の製造工程の一例を示す部分断面模式図。
【図9】電子機器の一実施形態を示す斜視図。
【図10】電子機器の一実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0068】
2…ガラス基板(基板)、12…陰極、12a…カルシウム層(第1陰極)、12b…アルミニウム層(第2陰極)、110b…有機EL層、111…陽極、112…バンク部(隔壁部)、A(R,G,B)…画素領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の画素領域を区画形成する隔壁部が形成されてなり、
前記画素領域には、少なくとも陽極と、有機EL層と、陰極とが積層して形成され、
前記有機EL層が、前記隔壁部によって囲まれた領域に形成されてなる一方、
前記陰極は、相対的に仕事関数の小さい第1陰極と相対的に仕事関数の大きい第2陰極とが、前記有機EL層側からこの順で積層されてなる積層構造を有するとともに、当該陰極のうち、少なくとも前記第1陰極が、当該第1陰極の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するように形成されてなることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記第2陰極は、前記各画素領域に跨って形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記陽極は、前記基板上において、前記画素領域毎にパターン形成された画素電極として構成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記第1陰極がカルシウムからなり、前記第2陰極がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記有機EL層と前記第1陰極との間に、フッ化リチウムからなる電子注入層が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記電子注入層は、当該電子注入層の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するように形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記有機EL層と前記陰極との間に、電子注入を遮蔽する電子注入遮蔽層が形成されてなり、該電子注入遮蔽層は、前記有機EL層の外周部と平面視重畳する位置に選択的に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記陰極が透光性を有してなり、前記有機EL層で発光した光が前記陰極側から射出されるとともに、前記電子注入遮蔽層が遮光性を有してなることを特徴とする請求項7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記有機EL層が、当該有機EL層を構成する有機材料を溶媒に溶解ないし分散させた液状物を、前記隔壁部によって囲まれた領域に塗布して形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記有機EL層が、液滴吐出法により形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載の有機EL装置。
【請求項11】
基板上に、複数の画素領域を区画形成する隔壁部を形成する隔壁部形成工程と、
前記基板上に陽極を形成する陽極形成工程と、
前記陽極上に有機EL層を形成する有機EL層形成工程と、
前記有機EL層上に陰極を形成する陰極形成工程とを含み、
前記有機EL層形成工程は、当該有機EL層を構成する有機材料を溶媒に溶解ないし分散させた液状物を、前記隔壁部によって囲まれた領域に塗布する工程と、塗布した液状物を乾燥する工程とを含む一方、
前記陰極形成工程は、前記有機EL層上に、相対的に仕事関数の小さい第1陰極を、当該第1陰極の外縁が前記有機EL層の外縁よりも内側に位置するようにパターン形成する工程と、前記第1陰極上に、相対的に仕事関数の大きい第2陰極を形成する工程と、を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−260950(P2006−260950A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76955(P2005−76955)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】