説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器

【課題】 簡易な構成で、切れの良いカラー表示を実現することが可能な有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器を提供すること。
【解決手段】 基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、発光層60からの光を基板側に射出させる有機EL装置であって、基板が、複数の光ファイバを有し、発光層60から発光した光を基板の厚み方向に導光させるファイバアレイ基板2からなり、該ファイバアレイ基板2の光射出側に、画素領域に対応してカラーフィルタ210が配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話やPDA等の携帯機器やパーソナルコンピュータ等の電子機器の表示手段として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す。)表示装置が開発されている。
有機EL表示装置は、有機EL層(発光層)を一対の電極間に挟持してなる発光素子を基板面内に複数備えて構成され、各発光素子を独立に駆動制御することで所望の表示を行っている。有機EL表示装置としては、ガラス基板上にブラックマトリックスを蒸着により形成した後、赤色,緑色,青色のカラーフィルタを形成し、ガラス基板側から光を取り出すボトムエミッション型のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の有機EL表示装置は、ブラックマトリックス及びカラーフィルタが形成されたガラス基板上に、透明電極及びカラーフィルタの各色に対応する発光層を順に積層したものである。
また、白色発光する発光素子を使用し、三原色のカラーフィルタを介して表示する有機EL表示装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の有機EL表示装置は、白色発光する発光層を用い、この発光層から発光する白色光を封止基板に形成されているカラーフィルタで分光し、封止基板側から赤色,緑色,青色の三原色の光を取り出すトップエミッション型の装置である。
【特許文献1】特開平8−321380号公報
【特許文献2】特開平10−92580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献2に記載のトップエミッション型有機EL装置のように、封止基板にカラーフィルタを作り込んでおく有機EL表示装置では、封止性能を出すのが難しく、また、透明陰極として信頼性の高いものを使用しないと、コントラストを向上させるのは困難である。
一方、特許文献1に記載のボトムエミッション型有機EL装置のように、ガラス基板にブラックマトリックス及びカラーフィルタを形成した後、ブラックマトリックス及びカラーフィルタ上に透明電極を形成するのは製造が困難である。また、ガラス基板の下面側にカラーフィルタを形成すると、発光層から発光した光は、ガラス基板内を平面方向に伝播し、各発光層の色に対応したカラーフィルタを通過しない光が生じてしまい、色再現性が悪く、切れの悪いカラー表示になってしまう。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で、切れの良いカラー表示を実現することが可能な有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の有機EL装置は、基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置であって、前記基板が、複数の光ファイバを有し、前記発光層から発光した光を前記基板の厚み方向に導光させるファイバアレイ基板からなり、該ファイバアレイ基板の光射出側に、前記画素領域に対応してカラーフィルタが配設されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る有機EL装置では、基板がファイバアレイ基板からなるため、発光層から発光された光は、厚み方向にのみ伝搬される。そして、ファイバアレイ基板を伝搬した光は、画素領域に対応したカラーフィルタを通過する。すなわち、ボトムエミッション型のような基板側に射出させる有機EL装置において、ある程度厚みがある基板であっても、発光層から発光した光は、ファイバアレイ基板により、有機EL装置の平面方向に伝搬せず、ほとんどすべてが画素領域に対応したカラーフィルタを通過する。したがって、発光層から発光した光は混色することがないため、光利用効率が向上し、切れの良いカラー表示を実現することが可能となる。
【0007】
また、本発明の有機EL装置は、前記ファイバアレイ基板の射出側に、前記画素領域を区画する遮光部が形成されていることが好ましい。
本発明に係る有機EL装置では、遮光部を形成することにより、隣接する画素領域間における光の漏れを防止することができるので、ファイバアレイ基板から射出される光のコントラスト及び色再現性をより向上させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の有機EL装置は、前記遮光部が、光吸収材料により形成されていることが好ましい。
本発明に係る有機EL装置では、有機EL装置に入射した外光を光吸収材料からなる遮光部により吸収することができるため、画素領域間における外光の反射を抑えることができるので、ファイバアレイ基板から射出される光のコントラストを向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の有機EL装置は、前記発光層が白色光を発光することが好ましい。
本発明に係る有機EL装置では、発光層が白色発光層であるため、発光層より発光された白色の光は、三原色のカラーフィルタで色分離される。このように、画素領域ごとに発光層を形成するための材料をRGBの3色に打ち分ける必要がないため、簡易に有機EL装置を製造することが可能となる。
【0010】
また、本発明の有機EL装置は、前記発光層が、前記発光層の位置に対応した前記カラーフィルタの色素層と同色の光を発光することが好ましい。
本発明に係る有機EL装置では、カラーフィルタは発光層に対応した色素層で形成されているので、それぞれの発光層から発光した色光は、同じ色のカラーフィルタを通過するため、カラーフィルタでの吸収が少なく、発光層から発光された光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の有機EL装置の製造方法は、基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置の製造方法であって、複数の光ファイバを有するファイバアレイ基板の一面に前記発光層を形成する工程と、カラーフィルタを保持基板上に形成する工程と、前記画素領域に対応させて前記保持基板に形成された前記カラーフィルタを前記ファイバアレイ基板の他面に配設する工程とを備えることを特徴とする。
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、前記保持基板に、前記画素領域を区画する遮光部を形成する工程を備えることが好ましい。
【0012】
これら本発明に係る有機EL装置の製造方法では、カラーフィルタあるいはカラーフィルタ及び遮光部を保持基板に形成した後、この保持基板をファイバアレイ基板の他面側に配設することにより、簡易な方法で、精度良く画素領域とカラーフィルタとの位置合わせを行うことができる。
【0013】
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置の製造方法であって、複数の光ファイバを有するファイバアレイ基板の一面側に前記発光層を形成する工程と、前記ファイバアレイ基板の他面に、カラーフィルタを印刷法により形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、液相法である印刷法は、高分子材料を成膜するには好適な方法であるとともに、材料の無駄も発生しないため、安価に有機EL装置を製造することができる。
【0015】
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、前記印刷法として液滴吐出法により前記カラーフィルタを形成することが好ましい。
【0016】
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、カラーフィルタを液滴吐出法により形成する。この液滴吐出法とは、いわゆるインクジェットプリンタでよく知られている印刷技術であり、各種材料を液状化させた材料インクの液滴を、インクジェットヘッドから基板上に吐出し、定着させるものである。液滴吐出法によれば、微細な領域に材料インクの液滴を正確に吐出できるので、フォトリソグラフィを行うことなく、所望の領域の際まで直接材料インクを定着させることができる。したがって、材料の無駄も発生しないため、製造コストの低減を図ることが可能であるとともに、均一かつ正確にカラーフィルタを形成することができる。
【0017】
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、前記画素領域を区画する遮光部をレーザー熱転写法により形成することが好ましい。
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、レーザー熱転写法を用いることにより、簡易な工程であるとともに、画素領域に合わせて高精度に遮光部を形成することが可能となる。
【0018】
本発明の電子機器は、上記の有機EL装置を表示部として用いたことを特徴とする。
本発明の電子機器は、上記のようにコントラストが向上しており、カラーフィルタによる混色が無いため、発色及び切れの良い表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。以下の図では、各部材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態の有機EL装置の一例である有機EL表示装置1の全体構成を概略的に示す分解斜視図である。
有機EL表示装置1は、ファイバアレイ基板2に配線や絶縁層等が形成された基体10と、この基体10上に形成された有機EL素子3と、基体10の端部に取り付けられた駆動部4とを有しており、駆動部4から供給される電気信号に応じて有機EL素子3が発光することで、画像や動画等を表示できるようになっている。また、有機EL素子3及び基体10を覆うように封止部5が形成されている。本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin film Transistor:TFT)が形成されたアクティブマトリクス型であり、有機EL素子3により発生した光が基体10を透過して取り出されるボトムエミッション型である有機EL表示装置1を例に挙げて説明する。
【0020】
図2は、図1の有機EL表示装置1を平面視したときの図である。この図では、有機EL素子3及び封止部5を省略している。図3は、図2の有機EL表示装置1のA−B断面を概略的に示す図である。
【0021】
図2に示すように、基体10は、画素部7(一点鎖線内の領域)と周縁部8(当該一点鎖線の外の領域)とに区画され、画素部7内では、実表示領域P(二点鎖線内の領域)とダミー領域Q(一点鎖線と二点鎖線との間の領域)とに更に区画される。また、画素部7の実表示領域Pは、有機EL素子3からの光が通過する画素領域Kと、電極や配線等が配置される画素間Lとに区画される。
【0022】
ボトムエミッション型の有機EL表示装置1では、発光層60における発光光をファイバアレイ基板2側から取り出すので、ファイバアレイ基板2としては透明のものが採用される。本実施形態では、図3に示すように、ファイバアレイ基板2は複数の導光路201を集束してなるものであって、この導光路201の光軸に対して垂直方向に平板状に広がるものである。具体的には、多数本の光ファイバを集束して平板状にして基板としたものや、ウレキサイト(通称テレビ石:NaCaB(OH)・5HO)を平板状にしたものなどであり、導光路201の入射側の表面に有機EL素子3が形成される。
本実施形態では、複数のグラスファイバ(光ファイバ)を束ねて接着したものを使用する。このようなファイバアレイ基板2では、有機EL素子3からの発光光は、ファイバアレイ基板2の各導光路201内を導光されるので、拡散することがなく、高い直進性を持った平行光として、ファイバアレイ基板2の光射出側端面(他面)2bから射出される。また、各導光路201は光ファイバからなるため、導光路201内での光の減衰が少ないので、有機EL素子3から射出された光をファイバアレイ基板2の厚み方向、すなわち、発光層60からファイバアレイ基板2に向かう方向に導光させ、高い利用効率で平行光として取り出すことができる。
ファイバアレイ基板2の射出側端面2bには、カラーフィルタ210が画素領域Kに対応して配設されている。また、カラーフィルタ210の大きさは、有機バンク層221の開口部221aの大きさと略同一である。
【0023】
ファイバアレイ基板2上には、有機EL素子3の駆動用TFT123などを含む駆動部4が形成されている。なお、駆動部4を備えた半導体素子をファイバアレイ基板2に実装して有機EL表示装置を構成することも可能である。
【0024】
駆動部4の具体的な構成として、ファイバアレイ基板2の表面に絶縁材料からなる下地保護層281が形成され、その上に半導体材料であるシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、ゲート絶縁層282が形成されている。そのゲート絶縁層282の表面には、ゲート電極242が形成されている。このゲート電極242は、図示しない走査線の一部によって構成されている。シリコン層241には、不純物が導入されることにより、ソース領域,ドレイン領域が形成され、この2つの領域間がチャネル領域241aとなっている。チャネル領域241aの一方側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられ、チャネル領域241aの他方側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dがそれぞれ形成されている。なお、TFT素子構造は同様の動作をするものであればここに示したものに限らない。
また、ゲート電極242およびゲート絶縁層282の表面には、SiOを主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。この第1層間絶縁層283上にドレインおよびソース電極が形成され、さらにこれら電極上に第2層間絶縁層284が形成され、コンタクトホールを通じてドレイン電極は画素電極23に接続している。もちろん配線はこのとおりである必要は無く、TFTの構造や回路構成により、どのようにでも変化する。例えば、画素電極23とドレイン領域との接続構造は、中継層を介して接続するなどしても良い。
また、シリコン層241は、多結晶シリコンを用いても良いし、アモルファスシリコンを用いても良い。さらに、本実施形態では、トップゲート型TFTを用いた例であるが、ボトムゲート型TFTを採用しても良い。
【0025】
また、画素電極23を囲うように、SiO等の無機絶縁材料からなる無機隔壁25が形成されている。さらに無機隔壁25の表面には、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機隔壁221が形成されている。そして、有機EL素子3の形成領域に配置された画素電極23の上方には、無機隔壁25の開口部25aおよび有機隔壁221の開口部221aが配置されている。
【0026】
そして、無機隔壁25の開口部25aおよび有機隔壁221の開口部221aの内側に、複数の機能膜が積層形成されて、有機EL素子3が構成されている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔注入層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とを積層して構成されている。
【0027】
ボトムエミッション型の有機EL表示装置の場合、陽極として機能する画素電極23は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料によって形成されている。
正孔注入層70の形成材料としては、高分子系材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液がインクジェット法成膜には好適に用いられる。
なお、正孔注入層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。また、蒸着法にて正孔注入層を形成する場合には、通常用いられる、TPD、銅フタロシアニン、αNPD、m―MTDATAなどを用いることができる。
【0028】
発光層60は、赤色(R)に発光する赤色発光層60R、緑色(G)に発光する緑色発光層60G、及び青色(B)に発光する青色発光層60B、の3種類を有し、各発光層60R,60G,60Bがストライプ配置されている。また、発光層60は、各発光層60R,60G,60Bの位置に対応したカラーフィルタ210の色素層と同色の光を発光するようになっている。すなわち、このカラーフィルタ210は、赤色、緑色、青色発光層60R,60G,60Bの各画素領域Kに対応してファイバアレイ基板2の射出側端面2bに設けられた赤色フィルタ210R、緑色フィルタ210G、青色フィルタ210Bを有している。また、各カラーフィルタ210R,210G,210Bの間には、画素領域Kを区画するブラックマトリクス(遮光部)215が設けられている。ブラックマトリクス215は、ファイバアレイ基板2の画素間L(非画素領域)に対応してストライプ状に設けられている。なお、ブラックマトリクス215は、画素間Lに対応して格子状に設けてもよい。また、ブラックマトリクス215としては、例えば、酸化クロムや酸化チタン等の光吸収性の材料から形成されている。
【0029】
この発光層60の材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン係色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン、ルブレン等をドープして用いることができる。また低分子系の材料として、Alq3、DPVBi等に、上記のような低分子系材料をドーピングしてマスク蒸着することで、所望の発光を所定の配列で得ることができる。
【0030】
陰極50は、発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。また、この陰極50上には封止層51が形成されている。
【0031】
次に、以上の構成からなる本実施形態の有機EL表示装置1の製造方法について説明する。
本実施形態の有機EL表示装置1の製造方法は、例えば、(1)バンク部形成工程、(2)プラズマ処理工程(3)正孔輸送層形成工程、(4)発光層形成工程、(5)陰極層形成工程及び(6)封止工程とを具備して構成されている。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0032】
(1)バンク部形成工程
次に、このような構成の有機EL表示装置1の製造方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、ファイバアレイ基板2上に駆動用TFT123等の回路部11を有し、第1,第2層間絶縁膜283,284の上に複数の画素電極23が形成されたファイバアレイ基板2を準備する。
【0033】
次いで、画素電極23上および第2層間絶縁層284上に、SiO2等の絶縁材料をCVD法等で成膜して、続いて、公知のフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングする。これにより、形成する各有機EL素子の画素領域K毎に開口部25aを形成すると同時に、無機隔壁25を形成する。
【0034】
次いで、図4(b)に示すように、無機隔壁25の所定位置、詳しくは画素領域Kを囲む位置に樹脂等によって有機隔壁221を形成する。
次いで、ファイバアレイ基板2の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成するものとする。具体的には、該プラズマ処理は、有機隔壁221の表面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、無機隔壁25の表面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、有機隔壁221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥液化工程とで構成する。
【0035】
(2)プラズマ処理工程
すなわち、基材(バンクなどを含むファイバアレイ基板2)を親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行うことで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0036】
なお、このCF4プラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび無機隔壁25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび無機隔壁25の構成材料であるSiO2、TiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0037】
(3)正孔輸送層形成工程
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70を形成する。この正孔輸送層形成工程では、高分子材料を用いる場合には、液滴吐出法として、特にインクジェット法が好適に採用される。すなわち、このインクジェット法により、正孔輸送層形成材料を電極面23c上に選択的に配し、これを塗布する。その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層70の形成材料としては、例えば前記のPEDOT:PSSをイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものが用いられる。
【0038】
ここで、このインクジェット法による正孔輸送層70の形成にあたっては、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層形成材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを無機隔壁25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(ファイバアレイ基板2)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0039】
このとき、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、無機隔壁25の開口部25a内に満たされて該開口部25a内に臨むようになる。その一方で、撥液処理された有機隔壁221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が有機隔壁221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が無機隔壁25の開口部25a内に引き込まれる。
なお、この正孔輸送層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
なお、本実施例はインクジェット法を用いたが、低分子材料を用いて、フィジカルマスク越しに正孔注入輸送材料を蒸着成膜しても良い。この場合、前処理としては、酸素プラズマ処理またはオゾンUV処理だけでよく、CF4プラズマ処理は必ずしも必要無い。
【0040】
(4)発光層形成工程
次いで、図5(a)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。
発光層形成工程では、前記の正孔輸送層70の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機隔壁221に形成された開口部221a内、すなわち画素領域K上に発光層60を形成する。
以上の正孔輸送層70の形成工程と発光層60の形成工程とにより、本発明における機能層をファイバアレイ基板2の一面2a側に形成することができる。本実施例はインクジェット法を用いたが、低分子材料を用いて、フィジカルマスク越しに発光材料を蒸着成膜しても良い。
【0041】
(5)陰極層形成工程
次いで、図5(b)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50を形成する。この陰極50については、EL素子を効率よく発光させるため、電子注入層と導電層のような積層構造を採用するのが一般的であり、例えばアルミニウムなどの金属材料が使用可能である。なお、この陰極50の形成では、前記正孔輸送層70や発光層60の形成とは異なり、蒸着法やスパッタ法等で行うため、画素領域Kにのみ選択的に形成材料を配するのでなく、ファイバアレイ基板2のほぼ全面に形成材料が設けられることになる。そこで、本実施形態では、ファイバアレイ基板2と図示しないメタルマスクを位置合わせして蒸着法やスパッタ法で陰極50を成膜することにより、基板周辺部に陰極50が形成されないようにする。
【0042】
(6)封止工程
その後、封止工程によって封止基板30を接着する。この封止工程では、不活性ガス中での作業を前提として、透明な封止基板30とファイバアレイ基板2との間に、透明な接着剤40を塗布し、気泡が入らないようにして封止基板30とファイバアレイ基板2とを貼り合わせ、接着剤を硬化する。
【0043】
次に、本発明のカラーフィルタ210及びブラックマトリックス215の形成方法について説明する。
ファイバアレイ基板2の射出側端面2bに、直接ブラックマトリックス215、赤色の色素層、緑色の色素層、青色の色素層の順に印刷法により形成する。このようにして、図3に示す有機EL表示装置1が製造される。なお、各色素層の印刷の順は、これに限るものではない。
【0044】
本実施形態に係る有機EL表示装置1によれば、ファイバアレイ基板2を用いているため、発光層60から発光された光は、厚み方向にのみ伝搬される。そして、ファイバアレイ基板2を伝搬した光は、画素領域Kに対応したカラーフィルタ210を通過する。すなわち、発光層60から発光した光は、ファイバアレイ基板2により、有機EL表示装置1の平面方向に伝搬せず、ほとんどすべてが画素領域Kに対応したカラーフィルタ210を通過する。したがって、発光層60から発光した光の利用効率を向上させることができるため、切れの良いカラー表示を実現することが可能となる。
【0045】
[電子機器]
以下、上述の有機EL装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
図6は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記有機EL装置を用いた表示部を示している。このように電子機器の表示部に上記実施の形態の有機EL装置を用いることで、発色及び切れの良い表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、発光層60を形成するための材料をRGBの3色に打ち分けたが、発光層60を白色発光層とし、三原色のカラーフィルタ210R,210G,210Bで分解する構成であっても良い。この構成では、画素領域Kごとに発光層60を形成するための材料をRGBの3色に打ち分ける必要がないため、簡易に有機EL表示装置1を製造することが可能となる。なお、白色発光層の形成材料(発光材料)としては、高分子発光体や低分子の有機発光色素、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中では、アリーレンビニレンまたはポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。白色発光層をインクジェット法(液滴吐出法)で形成する場合、発光材料として高分子材料を用いることが望ましく、例えばポリジオクチルフルオレン(PFO)とMEH−PPVとを9:1の割合で混合したものを好適に用いることができる。
【0047】
また、ブラックマトリックス215は、必ずしも設ける必要はないが、ブラックマトリックス215を設けることにより、隣接する画素領域K間における光の漏れを防止することができる。したがって、ファイバアレイ基板2から射出される光のコントラスト及び色再現性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、上記実施形態では、ファイバアレイ基板2の射出側端面2bにカラーフィルタ210を配設する方法として、印刷法により直接ファイバアレイ基板2の射出側端面2bにカラーフィルタ210を形成する方法を用いたが、この方法に限るものではなく、カラーフィルタ210を透明基板220に形成した後、ファイバアレイ基板2に貼り付ける方法を用いても良い。
この方法は、まず、図7(a)に示すように透明基板(保持基板)220の一方の面に対し、ストライプ状にブラックマトリックス215を形成する。このブラックマトリックス215は、カラーフィルタ210形成領域を区画するものであり、本発明に係るレーザ熱転写(LITI)法によって形成される。
【0049】
次に、図7(b)に示すように、インクジェット法(液滴吐出法)を用いてカラーフィルタ用の機能液212の液滴を吐出し、これをフィルタエレメント211に着弾させる。吐出する機能液212の組成について、カラー色素およびバインダーの比率は、カラーフィルター膜厚、色素濃度(バインダーベース)を考慮して決定される。次にこれらをインクジェット溶媒に溶かし、適度な濃度の機能液212とする。次にこの溶液を、乾燥した時点で所望の膜厚になるように吐出量を調整してバンク内に吐出する。
【0050】
このようにして透明基板220上のすべてのフィルタエレメント211に機能液212の液滴を充填した後に、ヒータを用いて透明基板220が所定の温度(例えば70℃程度)となるように加熱処理する。このようにして、図7(c)に示すようにカラーフィルタ210が形成される。尚、加熱処理に加えて真空工程を適用することでも、乾燥時のプロファイルをコントロールすることが出来る。
【0051】
そして、このカラーフィルタ210が形成されている側をファイバアレイ基板2の射出側端面2bに接着することにより、図8に示すように、有機EL表示装置が得られる。
なお、ブラックマトリックス215の形成方法として、レーザ熱転写(LITI)法を用いたが、この方法に限るものではなく、例えば、印刷法であっても良い。
また、ブラックマトリックス215を黒色樹脂等の光吸収材料により形成することにより、有機EL表示装置1に入射した外光を光吸収材料からなるブラックマトリックス215により吸収することができるため、画素領域K間における外光の反射を抑えることができるので、ファイバアレイ基板2から射出される光のコントラストを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の有機EL装置の平面図である。
【図3】図2のA−B方向における有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図4】有機EL装置の製造工程の説明図である。
【図5】有機EL装置の製造工程の説明図である。
【図6】電子機器を示す概略構成図である。
【図7】カラーフィルタの別の製造工程の説明図である。
【図8】図7のカラーフィルタを用いた有機EL装置の平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…有機EL表示装置(有機EL装置)、2…ファイバアレイ基板、2a…ファイバアレイ基板2の一面2a、2b…ファイバアレイ基板2の射出側端面(他面)、210…カラーフィルタ、215…ブラックマトリックス(遮光部)220…透明基板(保持基板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置であって、
前記基板が、複数の光ファイバを有し、前記発光層から発光した光を前記基板の厚み方向に導光させるファイバアレイ基板からなり、
該ファイバアレイ基板の光射出側に、前記画素領域に対応してカラーフィルタが配設されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記ファイバアレイ基板の光射出側に、前記画素領域を区画する遮光部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記遮光部が、光吸収材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記発光層が白色光を発光することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記発光層が、前記発光層の位置に対応した前記カラーフィルタの色素層と同色の光を発光することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置の製造方法であって、
複数の光ファイバを有するファイバアレイ基板の一面に前記発光層を形成する工程と、
カラーフィルタを保持基板上に形成する工程と、
前記画素領域に対応させて前記保持基板に形成された前記カラーフィルタを前記ファイバアレイ基板の他面に配設する工程とを備えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記保持基板に、前記画素領域を区画する遮光部を形成する工程を備えることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
基板上に配列形成された発光層を有する複数の画素領域を備え、前記発光層からの光を前記基板側に射出させる有機EL装置の製造方法であって、
複数の光ファイバを有するファイバアレイ基板の一面側に前記発光層を形成する工程と、
前記ファイバアレイ基板の他面に、カラーフィルタを印刷法により形成する工程とを備えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
前記印刷法として液滴吐出法により前記カラーフィルタを形成することを特徴とする請求項8に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
前記画素領域を区画する遮光部をレーザー熱転写法により形成することを特徴とする請求項9に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の有機EL装置を表示部として用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−310234(P2006−310234A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134467(P2005−134467)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】