説明

有機EL装置およびその製造方法

【課題】周辺領域を拡大することなく封止性を高める構造を有する有機EL装置を提供する。
【解決手段】第1の基板110と、前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子120と、前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材300と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域において、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子120eを少なくとも取り囲むように設けられた隔壁部材220とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という。)を備える有機EL装置およびその製造方法に関し、特に、有機EL装置の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、研究・開発が進んでいる有機EL素子は、有機材料の電界発光現象を利用した発光素子である。同素子は、陽極及び陰極の電極対の間に、有機発光材料からなる発光層を含む有機発光層を挟んだ構造を有している。
このような有機EL素子を複数備える有機EL装置の一般的な構成について説明すると、同装置は、複数の有機EL素子を一方の面に備える第1の基板と、この第1の基板の前記一方の面に対向配置された第2の基板とを含んで構成される。
【0003】
有機EL素子内の有機発光層は、水分や、酸素、オゾン等を含むガスに触れると変質し、非発光部(ダークスポット)の発生や輝度低下を招くことがある。そのため、水分やガスが有機発光層に触れるのを防止する目的で、第1の基板に形成された複数の有機EL素子上には、封止膜が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、周辺環境の外部雰囲気に含まれる水分やガスが有機EL装置内部に侵入するのを防止する目的で、有機EL装置では、複数の有機EL素子が形成されていない周辺領域に、第1の基板と第2の基板とを接合するシール材を配することで、両基板間を内部封止している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−223264号公報
【特許文献2】特開2007−103317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の有機EL素子上に形成された封止膜は、これらを完全に覆っているわけではなく、封止膜には、製造技術上、封止欠陥が生じる場合がある。この封止欠陥部分が水分やガスの侵入経路となり得る。
また、有機EL装置では、シール材を用いて両基板間を内部封止しているものの、このシール材は一般的には樹脂材料なので、外部からの水分やガスの浸入を許してしまう。
【0006】
したがって、周辺環境の外部雰囲気に含まれる水分やガスが有機EL装置内部に侵入し、さらに封止膜の封止欠陥部分を侵入経路として、有機発光層に入り込んでしまう恐れがある。
有機EL装置の封止性をさらに高める方法として、シール材を二重にすることが考えられるが、一般的にシール材の幅はミリ単位で形成されており、有機EL素子がミクロン単位で形成されるのに比べ、著しく大きい。そのため、できる限りシール材を用いずに封止性を高めることが求められている。
【0007】
本発明は、周辺領域を拡大することなく封止性を高める構造を有する有機EL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る有機EL装置は、第1の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域において、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むように設けられた隔壁部材とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る有機EL装置では、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むように隔壁部材が形成されている。このため、有機EL装置外部からシール材を通り抜けて、有機EL装置内部に水分やガスが侵入したとしても、これらは隔壁部材により遮られることになる。よって、隔壁部材により取り囲まれている有効有機EL素子に関しては、外部から侵入した水分やガスによる劣化を遅らせることができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
【0010】
また、この隔壁部材は、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域に設けられるため、周辺領域を拡大する必要はない。
このように、本発明の一態様では、周辺領域を拡大することなく、封止性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態1の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。
【図3】実施の形態1の素子形成基板100の製造工程の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1の封止基板200の製造工程の一例を示す図である。
【図5】変形例1−1の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。
【図6】変形例1−1の封止基板200の製造工程の一例を示す図である。
【図7】変形例1−2の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図8】変形例1−3の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図9】実施の形態2の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図10】変形例2−1の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図11】変形例2−2の有機EL装置1の構成を示す断面図である。
【図12】実施の形態3の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。
【図13】変形例3−1の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。
【図14】表示装置1000の外観を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の態様]
本発明の一態様である有機EL装置は、第1の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域において、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むように設けられた隔壁部材とを備える構成とした。
【0013】
ここで、「前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲む」とは、前記複数の有機EL素子の全てを取り囲む場合や複数の有効有機EL素子の一部または全部を取り囲む場合を含む。
本発明の一態様に係る有機EL装置では、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むように隔壁部材が形成されている。このため、有機EL装置外部からシール材を通り抜けて、有機EL装置内部に水分やガスが侵入したとしても、これらは隔壁部材により遮られることになる。よって、隔壁部材により取り囲まれている有効有機EL素子に関しては、外部から侵入した水分やガスによる劣化を遅らせることができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
【0014】
また、この隔壁部材は、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域に設けられるため、周辺領域を拡大する必要はない。
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材の外側に位置する各有機EL素子が、ダミー有機EL素子であり、前記ダミー有機EL素子は、発光機能を有しない有機EL素子であるとしてもよい。
【0015】
本態様の有機EL装置では、前記隔壁部材の外側に位置する各有機EL素子が、ダミー有機EL素子であるので、たとえ周辺環境から水分やガスが有機EL装置内部に侵入してきたとしても、劣化が生じうる有機EL素子は、ダミー有機EL素子である。したがって、周辺環境から水分やガスが有機EL装置内部に侵入してきた場合に、有効有機EL素子が真っ先に劣化する可能性を低減することができる。
【0016】
ここで、本発明の別の態様として、前記ダミー有機EL素子は、前記有効有機EL素子と同一構成であるとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記有効有機EL素子及び前記ダミー有機EL素子を含む全ての有機EL素子を一括で形成することができるので、製造上のメリットがある。
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材はさらに、前記ダミー有機EL素子が形成されているダミー領域において、前記ダミー有機EL素子毎に区画するように形成されているとしてもよい。
【0017】
本態様の有機EL装置では、前記ダミー有機EL素子が形成されているダミー領域において、前記ダミー有機EL素子毎に区画するように隔壁部材がさらに形成されているので、発光には関係のないダミー領域で、段階的に、周辺環境から浸入した水分やガスを減衰させることができる。
ところで、有機EL素子は、有機材料を含んで構成される。したがって、有機EL素子の劣化の原因となる水分等は、有機EL装置の外部からだけでなく、有機EL素子内部からも発生しうる。有機EL素子上には封止膜が存在するので、発生した水分等が他の有機EL素子に与える影響は極めて小さい。ただし、上述したように、封止膜に封止欠陥部分が存在すれば、それを通路として、水分等が他の有機EL素子に拡散しうる。その結果、一つの有機EL素子から発生した水分等が原因で、この有機EL素子に隣接する他の有機EL素子まで劣化する恐れがある。
【0018】
そこで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材はさらに、前記複数の有機EL素子を所定数毎に区画するように形成されているとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記複数の有機EL素子を所定数毎に区画するように隔壁部材がさらに形成されているので、一の区画内の有機EL素子から発生する水分等が他の区画内の有機EL素子に拡散するのを防止することができる。したがって、周辺環境の外部雰囲気に含まれる水分やガスの侵入を防止するのに加え、有機EL素子内部から発生する水分等が拡散するのを防止することができる。
【0019】
ここで、本発明の別の態様として、前記所定数は、1であるとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、有機EL素子毎に隔壁部材が設けられているので、当該有機EL素子内部から発生する水分等による素子の劣化を最小限に留めることができる。
したがって、ダークスポットや輝度低下部分が少ない高品質の有機EL装置を提供することができる。
【0020】
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材は、土台部材と当該土台部材を被覆する被覆部材とを含み、当該被覆部材が封止性を有する材料からなるとしてもよい。封止性を有する材料からなる被覆部材は、例えば後述する封止層222により実現することができる。
本態様の有機EL装置では、土台部材と当該土台部材を被覆する被覆部材とを含み、当該被覆部材が封止性を有する材料からなるので、封止性能を一層高めることができる。
【0021】
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材における、前記封止膜と接する部分の弾性率が、前記封止膜の弾性率より小さいとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記隔壁部材における、前記封止膜と接する部分の弾性率が、前記封止膜の弾性率より小さいので、この部分が封止膜に接する際に変形し、より密着した形態で前記封止膜と前記隔壁部材とが接することになる。その結果、隔壁部材による封止性が一層向上し、高い封止性を実現することができる。
【0022】
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材は、積層構造を有しており、前記封止膜と接する層が有機材料からなり、その膜厚が20nm以上で、かつ、100nm以下であり、前記隔壁部材における他の層が有機材料より封止性の高い材料からなり、その膜厚が前記封止膜と接する層の膜厚よりも厚いとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記隔壁部材において封止性の低い層である、前記封止膜と接する層が、隔壁部材における他の層よりも厚みが薄いので、封止性が低い層の面積を小さくでき、封止性能を高めることができる。
【0023】
ここで、本発明の別の態様として、前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記シール材により形成される閉空間、並びに前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記隔壁部材により形成される閉空間が大気圧よりも低圧であるとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記閉空間が大気圧よりも低圧であるので、閉空間内の気圧と大気圧との差圧による圧縮力が、隔壁部材と封止膜との接合部分に加えられることになる。そのため、より密着した形態で前記封止膜と前記隔壁部材とが接することになり、より一層封止性を向上させることができる。
【0024】
ここで、本発明の別の態様として、前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記シール材により形成される閉空間、並びに前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記隔壁部材により形成される閉空間には、不活性ガスが充填されているとしてもよい。
本態様の有機EL装置では、前記閉空間が不活性ガスで充填されているので、有機EL装置外部からの水分やガスの侵入に対しての遮断だけでなく、閉空間に残留している、水分や酸化性ガスの分圧を低減させることができる。そのため、より一層有機EL素子の劣化を抑制できる。
【0025】
ここで、本発明の別の態様として、前記封止膜が、少なくとも、SiO,SiON,SiN,SiC,SiOC,AlN,Al2O3の何れかからなるとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材が、封止部材と、当該封止部材を被覆し前記封止膜と接する被覆部材とを含み、前記封止部材が、少なくともSiO,SiON,SiN,SiC,SiOC,AlN,Al2O3の何れかからなり、前記被覆部材が、有機材料からなるとしてもよい。封止部材は、例えば後述する封止層222により実現することができ、当該封止部材を被覆し前記封止膜と接する被覆部材は、例えば後述する低弾性層223により実現することができる。
【0026】
ここで、本発明の別の態様として、前記隔壁部材における、前記封止膜と接する部分の材料がポリパラキシリレン樹脂であるとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、第1の基板上に複数の有機EL素子を形成する第1工程と、前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜を形成する第2工程と、第2の基板を前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置させた場合に、当該第2の基板上であって、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域に相当する領域に隔壁部材を形成する第3工程と、前記隔壁部材が形成された第2の基板を前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置させる第4工程と前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙をシール材により接合する第5工程とを備え、前記隔壁部材が、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に配置され、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むとしてもよい。
【0027】
ところで、上記本発明の各態様では、封止性を高めるために隔壁部材を設けたが、次のような構成としても同様の効果を得ることができる。
本発明の別の態様として、第1の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材と、前記第2の基板において前記第1の基板と対向する対向面を被覆する被覆膜とを備え、前記被覆膜は、その弾性率が前記封止膜の弾性率より低く、前記被覆膜を介して、前記封止膜と前記第2の基板とが接しているとしてもよい。
【0028】
本態様の有機EL装置では、前記封止膜と前記第2の基板とが、前記低弾性層を介して接している。このため、前記封止膜と前記第2の基板とが直接接する場合と比べ、前記封止膜の弾性率より弾性率が低い低弾性層が変形することにより、前記封止膜と前記第2の基板とは、前記低弾性層を介してより密着した形態で接することができる。その結果、有機EL装置外部からシール材を通り抜けて、有機EL装置内部に水分やガスが侵入したとしても、これらは密着して接している封止膜と第2の基板とにより遮られることになる。よって、外部から侵入した水分やガスによる有機EL素子の劣化を遅らせることができ、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
【0029】
また、本態様では、前記第2の基板における、前記第1の基板と対向する対向面に低弾性層を被覆するので、周辺領域を拡大する必要はない。
[実施の形態1]
<概略構成>
図1は、実施の形態1に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図(図2の一点鎖線で示した断面)とその一部拡大図である。
【0030】
実施の形態1の有機EL装置1は、トップエミッション型の表示装置である。図1に示すように、第1の基板110上の中心領域には、複数の有機EL素子120がマトリクス状に隣接配置されている。この有機EL装置1では、RGB各色に対応する有機EL素子120(R),(G),(B)をサブピクセルとし、隣り合うRGBのサブピクセルの組み合わせを1画素(ピクセル)とする。
【0031】
複数の有機EL素子がマトリクス状に隣接配置されている領域を素子形成領域(表示領域ともいう)10と称し、素子形成領域10を取り囲む周囲の領域を周辺領域20と称する。
素子形成領域10の中心領域には、発光機能を有する複数の有効有機EL素子120eがマトリクス状に隣接配置されており、素子形成領域10の端部領域には、その構造が有効有機EL素子120eと同一であるものの、発光機能を有しない複数のダミー有機EL素子120dが隣接配置されている。なお、複数のダミー有機EL素子120dは、上述のように、その構造が有効有機EL素子120eと同一であることは必ずしも必要ではなく、例えば後述する反射陽極121をパターニングしない構造であってもよい。なお、有効有機EL素子120eと同一構造とする場合には、有機EL素子を一括で形成することができるので、製造上のメリットがある。
【0032】
素子形成領域10の外周には、有効有機EL素子120eとダミー有機EL素子120dとを含む全ての有機EL素子120を取り囲むように隔壁部材220が設けられている。
また、第1の基板110の周縁部には、素子形成領域10を取り囲むように、第1の基板110と第2の基板210とを封止するシール材300が設けられている。
【0033】
図2は、実施の形態1に係る有機EL装置1の一部断面を模式的に示す断面図(図1のA−A’に相当する領域の断面)である。図中、第2の基板210の上面側が表示面となる。図2に示すように、TFT基板111上に平坦化層112が形成されており、この平坦化層112上に、反射陽極121がマトリックス状にパターニングして形成されている。反射陽極121上には、ホール注入層122が形成されている。ホール注入層122上には、バンク123で区画された領域内に発光層124が積層されている。さらに、発光層124の上には、電子注入層125、透明陰極126、及び封止膜130が、それぞれバンク123で区画された領域を超えて隣接する有機EL素子のものと連続するように形成されている。
【0034】
本実施の形態において有機EL素子120は、反射陽極121、ホール注入層122、発光層124、電子注入層125、透明陰極126の各機能層、及び当該有機EL素子を規定するバンク123から構成されている。有機EL素子120は、前記各機能層のうちホール注入層122、電子注入層125のいずれか、あるいは両方を欠いている、もしくは、例えばホール輸送層、電子輸送層などの他の機能層をさらに含む構成としてもよい。
【0035】
また、第2の基板210における、第1の基板110に対向する対向面に、隔壁部材220と複数のフォトスペーサ230とが形成されている。隔壁部材220は、土台部材221aと、土台部材221aを被覆する封止層222と、封止層222を被覆する低弾性層223とからなる。フォトスペーサ230の内部構造も、隔壁部材220と同様とすることができる。
封止層222及び低弾性層223は、素子形成領域10に相当する領域の全域にわたって形成されている。
【0036】
<各部構成>
TFT基板111は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料の基板本体上に、TFT、配線部材、および前記TFTを被覆するパッシベーション膜など(図示せず)を形成した構成である。また、前記基板本体は有機樹脂フィルムであってもかまわない。
【0037】
平坦化層112は、TFT基板111の表面段差を平坦に調整するために設けられ、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料で構成されている。
本実施の形態において、第1の基板110は、TFT基板111と平坦化層112とから構成され、平坦化層112が形成されていない領域においては、TFT基板111を指すが、他の層をさらに含むとしてもよい。
【0038】
反射陽極121は、Ag(銀)で形成されている。なお、反射陽極121は、例えば、Al(アルミニウム)、銀とパラジウムと銅との合金、銀とルビジウムと金との合金、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成されていても良い。本実施の形態1に係る有機EL装置1はトップエミッション型であるので、反射陽極121は、光反射性の材料で形成されていることが好ましい。なお、反射陽極121の表面には公知の透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜の材料としては、例えばITO(酸化インジウムスズ)を用いることができる。
【0039】
ホール注入層122は、MoOx(酸化モリブデン)、WOx(酸化タングステン)又はMoxWyOz(モリブデン−タングステン酸化物)で形成されている。なお、ホール注入層122は、ホール注入機能を果たす材料で形成されていれば良く、そのような材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物又は金属酸窒化物が挙げられる。
バンク123は、樹脂等の有機材料で形成されており絶縁性を有する。有機材料の例として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。バンク123は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク123はエッチング処理、ベーク処理等がされることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。
【0040】
発光層124は、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0041】
電子注入層125は、透明陰極126から注入された電子を発光層124へ輸送する機能を有し、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、あるいはこれらの組み合わせで形成されることが好ましい。
透明陰極126は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)等で形成される。有機EL装置1はトップエミッション型であるので、透明陰極126は、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
【0042】
封止膜130は、発光層124、電子注入層125等が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiO(酸化シリコン),SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)、SiC(炭化ケイ素),SiOC(炭素含有酸化シリコン),AlN(窒化アルミニウム),Al2O3(酸化アルミニウム)等の材料で形成される。有機EL装置1はトップエミッション型であるので、封止膜130は、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
【0043】
ここで、封止膜130において、所々にピンホールと呼ばれる封止欠陥部分や、封止膜130が形成される以前の工程で付着した異物(所謂パーティクル)に起因する封止欠陥部分が存在すると、これらの封止欠陥部分が水分やガスの侵入経路となり得る。
以上、説明した各構成要素(111〜130)をまとめて素子形成基板100という。
第2の基板210は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英等のガラス系の封止材料で形成されており、第1の基板110の有機EL素子形成面に対向配置される。
【0044】
隔壁部材220は、土台部材221a、封止層222、低弾性層223をこの順に積層した3層構造を有する。
土台部材221aは、例えば、メタクリル酸エステル類で形成されている。土台部材221aの厚みは、例えば5μm以上であることが好ましい。なぜなら、TFT形成工程や有機EL素子形成工程で付着する異物の大きさは、0.1〜5μm程度のものが多く、土台部材221aの厚みが5μmよりも薄い場合には、第2の基板を貼り合せる時に該異物を押しつぶし、反射陽極121と透明陰極126とが短絡して有機EL素子が滅点化してしまうことが発生しやすくなるからである。
【0045】
封止層222は、封止膜130と同様に、例えば、SiN、SiON,SiON,SiC,SiOC,AlN,Al2O3等の材料で形成されている。
この封止層222が土台部材221aを覆うように形成されることで、土台部材221aが封止材として機能することになる。封止層222の厚みは、例えば100〜500nmであることが好ましい。封止層222の厚みが100nmよりも薄い場合は、封止性確保を十分に確保することが困難となりやすい。一方、封止層222の厚みが500nmよりも厚い場合は、発光層からの光の透過率が低下しやすくなる。
【0046】
低弾性層223は、例えば、ポリパラキシリレン樹脂等の有機材料で形成されている。低弾性層223は有機材料で形成されているため、その弾性率は、ガラス系、或いはセラミックス系等の材料で形成される封止膜130、封止層222の弾性率と比べて小さい。この低弾性層223が封止層222を覆うように形成されることで、低弾性層223が封止膜130に接する際にはその形状が変形し、より一層密着した形態で封止膜130と接することが可能となる。これにより、封止性をより一層高めることができる。特にポリパラキシリレン樹脂は、低弾性の有機材料で最も封止性の優れている材料であるため、好適である。
【0047】
ただし、この低弾性層223は有機材料で形成されているので、封止層222に比べ封止性が低い。そのため、低弾性層223の面積が小さくなるよう、低弾性層223の厚みを薄く形成するのが好ましい。具体的には、低弾性層223の厚みは、土台部材221aの厚みよりも薄いことが好ましく、例えば20〜100nmであることが好ましい。
このように素子形成領域10の外周を取り囲むように形成された、土台部材221a、封止層222、低弾性層223からなる隔壁部材220において、その上下方向の両端は、第2の基板210と封止膜130とにそれぞれ接する。これにより、隔壁部材220と封止膜130と第2の基板210とに囲まれた空間401が封止されることになる。したがって、封止膜130に封止欠陥部分が存在するとしても、シール材300から侵入した水分やガスを、この隔壁部材200にて遮断することが可能となり、有機EL素子の劣化を遅らせることができる。
【0048】
また、図1に示すように、隔壁部材220は、素子形成領域10の外周に形成されるため、周辺領域を拡大することなく、封止性を高めることができる。
シール材300は、第1の基板110と第2の基板210との周囲に、両基板の内部を封止するために形成されている。シール材300は、緻密な樹脂材料で構成されており、例えばシリコーン樹脂を挙げることができる。
【0049】
フォトスペーサ230は、隔壁部材220と同様に3層構造を有し、主として第1の基板110と第2の基板210との対向間隔を調整する目的で使用される。図1に示す構成では、フォトスペーサ230は、Z方向を軸方向とする円柱形に形成され、Z方向両端部がそれぞれの基板110、210に接するように配置されている。なお、形状は円柱形に限定されず、直方体や球体等であってもよい。フォトスペーサ230における土台部材の材料としては公知のものが使用でき、透明性の高い樹脂材料、例えばメタクリル酸エステル類を例示することができる。すなわち、隔壁部材220の土台部材221aと同じ材料とすることができる。
【0050】
なお、フォトスペーサ230は、図1の一部拡大図に示すように、第1の基板110において格子状に形成されているバンクの各交点位置に合わせて配置されているが、これに限定されない。
以上、説明した各構成要素(210〜230)をまとめて封止基板200という。
また、空間401、402は、大気圧よりも低圧であり、例えば窒素等の不活性ガスが充填されている。そのため、空間401、402内の気圧と大気圧との差圧による圧縮力が、隔壁部材230と封止膜130との当接部分に加えられることになる。その結果、より密着した形態で隔壁部材230と封止膜130とが接することになるので、より一層封止性を向上させることができる。
【0051】
また、空間401、402には、不活性ガスが充填されているので、有機EL装置1外部からの水分やガスの侵入に対しての遮断だけでなく、空間401、402に残留している、水分や酸化性ガスの分圧を低減させることができる。
<製造方法>
続いて、有機EL装置1の製造工程を例示する。図3は、素子形成基板100の製造工程の一例を示す図である。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、TFT基板111上に形成された平坦化層112上に、例えばスパッタリングによりAg薄膜を形成し、当該Ag薄膜を例えばフォトリソグラフィでパターニングすることによりマトリックス状に反射陽極121を形成する。なお、Ag薄膜は真空蒸着等で形成しても良い。
次に、図3(b)に示すように、WOx又はMoxWyOzを含むターゲット組成物を用いて真空蒸着、スパッタリングなどの技術によりWOx又はMoxWyOzのホール注入層122を形成する。
【0053】
次に、ホール注入層122上に絶縁性有機材料からなる膜を形成し、その上にフォトレジストを一様に塗布する。塗布したフォトレジストの上に、絶縁性有機材料層の一部を除去してホール注入層122の一部を露出させるための所定形状の開口部(形成すべきバンクのパターン)を持つマスクを重ねる。そして、マスクの上から感光させ、レジストパターンを形成する。その後は、余分な絶縁性有機材料及び未硬化のフォトレジストを水系もしくは非水系エッチング液(剥離剤)で洗い出す。これにより絶縁性有機材料のパターニングが完了する。その後、パターニングされた絶縁性有機材料の上のフォトレジスト(レジスト残渣)を純水で洗浄して除去する。以上でバンク123が完成する(図3(c)参照)。
【0054】
次に、図3(d)に示すように、バンク123で区画された各領域内に例えばインクジェット法により有機EL材料を含む組成物インク(以下、単に「インク」という。)を滴下し、そのインクを乾燥させて発光層124を形成する。なお、発光層124は、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等により形成しても良い。
【0055】
次に、図3(e)に示すように、例えば真空蒸着により電子注入層125となるバリウム薄膜を形成し、例えばスパッタリングにより透明陰極126となるITO薄膜を形成し、さらに封止膜130を形成する。以上の工程を経ることで、素子形成基板100が完成する。
続いて、封止基板200の製造工程を例示する。図4は、封止基板200の製造工程の一例を示す図である。
【0056】
まず、第2の基板210上に、例えばメタクリル酸エステル類等の透明性の高い樹脂材料からなる膜を形成し、その上にフォトレジストを一様に塗布する。その後、所定形状の開口部を持つマスクを重ねる。そして、マスクの上から感光させ、レジストパターンを形成する。その後は、余分な樹脂材料及び未硬化のフォトレジストを水系もしくは非水系エッチング液(剥離剤)で洗い出す。これにより樹脂材料のパターニングが完了する。その後、パターニングされた樹脂材料の上のフォトレジスト(レジスト残渣)を純水で洗浄して除去する。これにより、図4(a)に示すように、バンクの交点に相当する位置及び素子形成領域の外周に相当する位置に土台部材221a、221bが形成される。
【0057】
次に、図4(b)に示すように、第2の基板210表面の素子形成領域に相当する領域に封止層222を形成し、図4(c)に示すように、封止層222上に例えばプラズマCVD法により、低弾性層223を形成する。これにより、隔壁部材220と、離散的に配置された複数のフォトスペーサ230とが完成する。以上の工程を経ることで、封止基板200が完成する。
【0058】
続いて、第1の基板110もしくは第2の基板210の周囲にシール材300のペーストを塗布する。そして、第1の基板110もしくは第2の基板210の表面に紫外線硬化型樹脂を主成分とするシール材300の材料を塗布する。その後、前記塗布した材料に紫外線照射を行い、両基板を貼り合わせる。このとき、両基板を貼り合わせる工程を窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で実施すれば、両基板間に形成された空間に、不活性ガスを充填できる。
【0059】
その後、両基板を焼成して封止工程を完了すると、有機EL装置1が完成する。
この製造工程によれば、フォトスペーサ230の形成と同一工程で隔壁部材220を併せて形成することができる。したがって、隔壁部材220を形成するために別途工程を増やす必要はない。
[変形例1−1]
有機EL装置1の封止基板200として、カラーフィルタ及びブラックマトリクス付きの封止基板が利用されることがある。ここでは、隔壁部材220をカラーフィルタ、ブラックマトリクス、封止層222、低弾性層223からなるものに替えた一変形例について説明する。
【0060】
<概略構造>
図5は、変形例1−1に係る有機EL装置1の一部断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図2に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
変形例1−1の第2の基板210の一方の面には、隔壁部材220と、複数のフォトスペーサ230と、ブラックマトリクス(以下、「BM」という。)241と、カラーフィルタ(以下、「CF」という。)242(R)、(G)、(B)とが形成されている。
【0061】
変形例1−1では、第2の基板210に形成される隔壁部材220は、BM241、CF242(R)、(G)、(B)、封止層222、低弾性層223がこの順に積層されてなる。すなわち、変形例1−1では、土台部材221aに相当する部分が、BM241とCF242(R)、(G)、(B)との積層からなる点で異なる。
各々のCF242(R)、(G)、(B)は、第1の基板110側に形成される各発光層124の位置に合わせて配設され、BM241は、第1の基板110側に形成される各有機EL素子のバンク123の位置に合わせて配設されている。
【0062】
<各部構成>
BM241は、有機EL装置の表示面への外光の照り返しや外光の入射を防止し、表示コントラストを向上させる目的で設けられる黒色層である。例えば光吸収性及び遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂材料で構成される。
各々のCF242(R)、(G)、(B)は、赤色、青色、緑色に対応した各々の波長域の可視光を透過する、公知の樹脂材料で構成されている。
【0063】
<製造方法>
続いて、変形例1−1に係る封止基板200の製造工程を例示する。図6は、封止基板200の製造工程の一例を示す図である。
まず、紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに黒色顔料を添加してなるBM材料を溶媒に分散させ、BMペーストを調整する。これを基板本体の一方の面に塗布する。
【0064】
塗布したBMペーストを乾燥し、溶媒をある程度揮発させて形態を保持できる程度になったら、各有機EL素子のバンク123位置に対応するように所定形状の開口部を持つパターンマスクを重ねる。そして、重ねたパターンマスクの上から紫外線照射を行う。
その後、塗布・溶媒除去したBMペーストを焼成し、パターンマスク及び未硬化のBMペーストを除去して現像し、キュアすると、図6(a)に示すように、格子状に形成されたBM241が完成する。
【0065】
次に、BM241を形成した基板表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするCF242(ここではR)の材料を溶媒に分散させ、ペースト(R)を塗布する。溶媒を一定除去した後、所定のパターンマスクを載置し、紫外線照射を行う。
その後、キュアを行い、パターンマスク及び未硬化のペースト(R)を除去して現像すると、図6(b)に示すように、CF242(R)が形成される。CF242(R)は、発光層124の位置に合わせて形成されるだけでなく、素子形成領域の外周に相当する領域にも併せて形成される。
【0066】
上記CF形成工程を各色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、CF242(G)、242(B)を形成する。これにより、各発光層124の位置に合わせてCF242(G)、242(B)が形成されるだけでなく、素子形成領域の外周に相当する領域にもCF242(G)、242(B)が併せて形成される(図6(c)、(d))。その結果、素子形成領域の外周に相当する領域には、BM241、CF242(R)、CF242(G)、242(B)がこの順で形成された積層が完成する。
【0067】
次に、図4で説明したのと同様の方法で、図6(e)に示すように、土台部材221bを格子状に形成されたBM241の各交点位置に形成する。
次に、図6(f)に示すように、素子形成領域に相当する領域に封止層222を形成し、図6(g)に示すように、封止層222上に例えばプラズマCVD法により、低弾性層223を形成する。これにより、隔壁部材220と、離散的に配置された複数のフォトスペーサ230とが完成する。以上の工程を経ることで、変形例1−1に係る封止基板200が完成する。
【0068】
この製造方法によれば、BM241及びCF242(R)、(G)、(B)の積層を隔壁部材の土台部材として利用することができるので、土台部材を形成するための工程を別途増やすことなく、土台部材を形成することができる。
なお、ここでは、フォトスペーサ230の土台部材221bの形成工程を、BM241及びCF242(R)、(G)、(B)の各形成工程とは別に設けたが、BM241及びCF242(R)、(G)、(B)の各形成工程において、BM241の各交点位置にもこれらを形成することにより、BM241及びCF242(R)、(G)、(B)の積層をフォトスペーサ230の土台部材として利用してもよい。
【0069】
[変形例1−2]
続いて、隔壁部材220がマトリクス状に形成された複数の有機EL素子120の一部を取り囲む一変形例について説明する。
図7は、変形例1−2に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
【0070】
図7に示すように、隔壁部材220は、複数の有機EL素子120の一部を取り囲むように矩形状に形成されている。
隔壁部材220の内部に位置する各有機EL素子120が有効有機EL素子120eであるのに対し、隔壁部材220の外部に位置する各有機EL素子120は、ダミー有機EL素子120dである。すなわち、隔壁部材220は、有効有機EL素子120eのみを取り囲むように形成されている。
【0071】
これにより、周辺環境から水分やガスが有機EL装置内部に侵入してきた場合に、ダミー有機EL素子120dを犠牲にすることで、有効有機EL素子120eが真っ先に劣化する可能性を低減することができる。
なお、ここでは、複数の有効有機EL素子120eがマトリクス状に形成された領域の外周を取り囲むように隔壁部材220を形成したが、一部ダミー有機EL素子が含まれるように隔壁部材220を形成しても勿論よい。
【0072】
[変形例1−3]
続いて、隔壁部材220を二重に設けた一変形例について説明する。
図8は、変形例1−3に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
図8に示すように、隔壁部材220は、素子形成領域の外周に加え、さらに複数の有機EL素子120の一部を取り囲むように形成されている。これにより、より一層封止性を高めることができる。
【0073】
また、隔壁部材220は二重に限らず、三重に形成されていてもよいし、それ以上でもよい。ダミー有機EL素子120dが形成されている領域に応じて、隔壁部材220を形成するとしてもよい。例えば、素子形成領域の端部から素子形成領域の中心方向に12個の有機EL素子がダミー有機EL素子である場合には、12重に隔壁部材220を形成してもよい。さらに、有効有機EL素子が形成されている領域にも隔壁部材220が形成されていてもよい。
【0074】
[実施の形態2]
実施の形態1の有機EL装置1では、周辺環境の外部雰囲気に含まれる水分やガスの侵入を防止する目的で隔壁部材220を設けた構成としたが、有機EL素子120内部からも水分等が発生し、他の有機EL素子120に拡散する場合がある。そこで、実施の形態2の有機EL装置1では、有機EL素子120内部から発生する水分等が拡散するのを抑制するための構成を有する。
【0075】
図9は、実施の形態2に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
図9に示すように、隔壁部材220は、素子形成領域の外周に加え、有機EL素子120毎に区画するように、各有機EL素子のバンクに相当する領域にも形成されている。
これにより、有機EL素子120内部から発生する水分等が、他の有機EL素子120に拡散するのを防止することができるので、有機EL素子120内部から発生する水分等による素子の劣化を最小限に留めることができる。
【0076】
[変形例2−1]
続いて、複数の有機EL素子毎に区画するように隔壁部材220を設けた一変形例について説明する。
図10は、変形例2−1に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
【0077】
図10に示すように、隔壁部材220は、素子形成領域の外周に加え、12個の有機EL素子を一単位として区画するように、各有機EL素子のバンクに相当する領域にも形成されている。
なお、12個の有機EL素子を一単位として区画するように隔壁部材220を設けたが、例えば、1画素(3個の有機EL素子)毎に区画するように隔壁部材220を設けるとしてもよいし、不良有機EL素子をどれだけ許容できるかに応じて、区画する単位を決定してもよい。
【0078】
ところで、一般的には、有機EL装置を利用するユーザは、特に有機EL装置の表示領域の中心部分を注視し、表示領域の端部にはあまり注意を払わない。したがって、表示領域の中心に近い領域ほど有機EL素子の劣化が深刻な問題となり、逆に、表示領域の端部に位置する有機EL素子が劣化したとしても、ユーザの利用にあまり影響を与えるものではない。
【0079】
よって、隔壁部材220により有機EL素子を区画する区画単位は、必ずしも表示領域全体で一律である必要はなく、表示領域の端部より表示領域の中心部分の方が小さくなるように区画単位を定めてもよいし、表示領域の中心に近いほど小さくなるように定めてもよい。
[変形例2−2]
続いて、ダミー有機EL素子が形成されているダミー領域において有機EL素子毎に区画するように隔壁部材220を設けた一変形例について説明する。
【0080】
図11は、変形例2−2に係る有機EL装置1の断面を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示した有機EL装置1との差分のみ説明する。
図11に示すように、隔壁部材220は、有効有機EL素子120eを取り囲み、かつ、ダミー有機EL素子が形成されているダミー領域において、ダミー有機EL素子毎に区画するように形成されている。図11に示すように、隔壁部材220で区画されたダミー有機EL素子が、有効有機EL素子の周囲を多段に取り囲む構成が好適である。
【0081】
これにより、発光には関係のないダミー領域で段階的に、周辺環境から浸入した水分やガスを減衰させることができる。
[実施の形態3]
上記各実施の形態では、有機EL装置1が隔壁部材220を有する構成としたが、他の構成でも良い。図12は、実施の形態3の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。ここでは、図2に示した、実施の形態1に係る有機EL装置1との差分のみ説明する。図12に示す有機EL装置では、第2の基板210における、第1の基板と対向する対向面に低弾性層223が形成されている。
【0082】
したがって、素子形成領域の外周において封止膜130と第2の基板210とが、低弾性層223を介して接することになる。このため、封止膜130と第2の基板210とが接する際に低弾性層223が変形することにより、より密着した形態で接することができる。
その結果、有機EL装置1外部からシール材300を通り抜けて、有機EL装置1内部に水分やガスが侵入したとしても、これらは封止膜130と第2の基板210とにより遮られることになる。よって、外部から侵入した水分やガスによる有機EL素子120の劣化を遅らせることができ、有機EL素子120の長寿命化が期待できる。
【0083】
また、第2の基板210における、素子形成領域の外周に相当する領域に低弾性層223を形成するだけでよいので、周辺領域を拡大する必要はない。
[変形性3−1]
また、図13に示すように、第2の基板210において、素子形成領域に相当する領域の全般にわたって低弾性層223を形成してもよい。図13は、変形例3−1の有機EL装置1の構成を示す部分断面図である。この構成により、第2の基板210と封止膜130とにより有機EL素子120毎に封止することができるので、有機EL素子120内部から発生する水分等が、他の有機EL素子120に拡散するのを防止することができる。
(補足)
以上、本発明に係る有機EL装置1について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限られないことは勿論である。
(1)上記各実施の形態では、隔壁部材220における土台部材221aは、フォトスペーサ230における土台部材221bと同一材料、あるいはBM及びCFの積層であるとしたが、他の材料から形成されていてもよく、土台部材221aの形成のために、別途工程を設けてもよい。
(2)上記各実施の形態では、封止膜130と第2の基板210との間は、不活性ガスで充填された空間であるとしたが、封止膜130と第2の基板210との間には、樹脂封止層が密に充填されていてもよい。この樹脂封止層は、外部からの水分やガスの侵入を防止する目的で配設され、各種透明樹脂材料(エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等)で構成される。
(3)上記各実施の形態の有機EL装置1では、フォトスペーサ230を有する構成としたが、必ずしも必要ではなく、第1の基板110と第2の基板210との対向間隔が十分に調整可能であれば、形成しなくてもよい。
(4)上記各実施の形態では、ホール注入層122を構成する材料としてMoOx、WOx又はMoxWyOzを用いて説明しているが、Mo(モリブデン)、W(タングステン)以外の金属を用いた場合でも本実施の形態を適用することにより同様の効果を奏することができる。
(5)上記各実施の形態では、発光層124と透明陰極126との間に電子注入層125のみが介挿されているが、これに加えて電子輸送層が介挿されていることとしてもよい。
(6)上記各実施の形態では、バンクの平面形状として、所謂、ピクセルバンクを採用したが、素子形成領域の外周部分にバンクが形成されてさえいれば、その内側が格子状に形成されている必要はなく、例えばストライプ状に形成されているとしてもよい。
(7)上記各実施の形態では、表示装置1000の外観を示さなかったが、例えば、図14に示すような外観を有するものとすることができる。
(8)上記各実施の形態及び上記各変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
100 素子形成基板
110 第1の基板
111 TFT基板
112 平坦化層
120 有機EL素子
121 反射陽極
122 ホール注入層
123 バンク
124 発光層
125 電子注入層
126 透明陰極
130 封止膜
200 封止基板
210 第2の基板
220 隔壁部材
221a、221b 土台部材
222 封止層
223 低弾性層
230 フォトスペーサ
300 シール材
241 ブラックマトリクス
242 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子と、
前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、
前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、
前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材と、
前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域において、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲むように設けられた隔壁部材と
を備える有機EL装置。
【請求項2】
前記隔壁部材の外側に位置する各有機EL素子が、ダミー有機EL素子であり、
前記ダミー有機EL素子は、発光機能を有しない有機EL素子である
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記ダミー有機EL素子は、前記有効有機EL素子と同一構成である
請求項2記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記隔壁部材はさらに、前記ダミー有機EL素子が形成されているダミー領域において、前記ダミー有機EL素子毎に区画するように形成されている
請求項2または3記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記隔壁部材はさらに、前記複数の有機EL素子を所定数毎に区画するように形成されている
請求項1〜3の何れかに記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記所定数は、1である
請求項5記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記隔壁部材は、土台部材と当該土台部材を被覆する被覆部材とを含み、当該被覆部材が封止性を有する材料からなる
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記隔壁部材における、前記封止膜と接する部分の弾性率が、前記封止膜の弾性率より小さい
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記隔壁部材は、積層構造を有しており、
前記封止膜と接する層が有機材料からなり、その膜厚が20nm以上で、かつ、100nm以下であり、
前記隔壁部材における他の層が有機材料より封止性の高い材料からなり、その膜厚が前記封止膜と接する層の膜厚よりも厚い
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記シール材により形成される閉空間、並びに前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記隔壁部材により形成される閉空間が大気圧よりも低圧である
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項11】
前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記シール材により形成される閉空間、並びに前記第1の基板、前記第2の基板、及び前記隔壁部材により形成される閉空間には、不活性ガスが充填されている
請求項10記載の有機EL装置。
【請求項12】
前記封止膜が、少なくとも、SiO,SiON,SiN,SiC,SiOC,AlN,Al2O3の何れかからなる
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項13】
前記隔壁部材が、封止部材と、当該封止部材を被覆し前記封止膜と接する被覆部材とを含み、
前記封止部材が、少なくともSiO,SiON,SiN,SiC,SiOC,AlN,Al2O3の何れかからなり、
前記被覆部材が、有機材料からなる
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項14】
前記隔壁部材における、前記封止膜と接する部分の材料がポリパラキシリレン樹脂である
請求項1記載の有機EL装置。
【請求項15】
第1の基板上に複数の有機EL素子を形成する第1工程と、
前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜を形成する第2工程と、
第2の基板を前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置させた場合に、当該第2の基板上であって、前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられた領域に相当する領域に隔壁部材を形成する第3工程と、
前記隔壁部材が形成された第2の基板を前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置させる第4工程と
前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙をシール材により接合する第5工程と
を備え、
前記隔壁部材が、前記封止膜と前記第2の基板との間隙に配置され、前記複数の有機EL素子のうち発光機能を有する有効有機EL素子を少なくとも取り囲む
有機EL装置の製造方法。
【請求項16】
第1の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の有機EL素子と、
前記複数の有機EL素子を被覆する封止膜と、
前記第1の基板と前記複数の有機EL素子を介して対向配置された第2の基板と、
前記第1の基板上における前記複数の有機EL素子が設けられていない領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間隙に前記複数の有機EL素子を取り囲むように設けられたシール材と、
前記第2の基板において前記第1の基板と対向する対向面を被覆する被覆膜とを備え、
前記被覆膜は、その弾性率が前記封止膜の弾性率より低く、
前記被覆膜を介して、前記封止膜と前記第2の基板とが接している
有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−150828(P2011−150828A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9790(P2010−9790)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】