有機EL装置とその製造方法、およびこれを備えた電子機器
【課題】従来よりも発光寿命や発光効率が向上する有機EL装置とその製造方法、およびこれを備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】有機EL装置1は、素子基板20と、素子基板20上に設けられ陽極24と有機機能層30と陰極26とが順に積層された有機EL素子8と、を備え、有機機能層30は、陽極24上に順に配置された、正孔輸送層32と、赤色発光層33と、電子および正孔の流れを調整する中間層34と、青色発光層35と、緑色発光層36と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層37bを含む電子輸送層37と、を少なくとも含み、有機EL素子8は、有機機能層30を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする。
【解決手段】有機EL装置1は、素子基板20と、素子基板20上に設けられ陽極24と有機機能層30と陰極26とが順に積層された有機EL素子8と、を備え、有機機能層30は、陽極24上に順に配置された、正孔輸送層32と、赤色発光層33と、電子および正孔の流れを調整する中間層34と、青色発光層35と、緑色発光層36と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層37bを含む電子輸送層37と、を少なくとも含み、有機EL素子8は、有機機能層30を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置とその製造方法、およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子と正孔との再結合により発光が生じる現象を用いた発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ)が知られている。有機EL素子は、正孔を供給する陽極と電子を供給する陰極との間に、発光層を含む有機機能層を備えている。有機EL素子は、陽極から供給された正孔と、陰極から供給された電子とが有機機能層で再結合することにより発光する。
【0003】
ところで、有機EL素子は、駆動時間が長くなるにつれてその発光輝度が低下するとともに、有機機能層を流れる電流に対する発光効率も低下することが知られている。また、有機EL素子の形成後の初期段階において発光輝度や発光効率が著しく低下する場合がある。このような有機EL素子を形成後にそのまま発光素子として用いると、短時間のうちに所望の特性が得られなくなり、表示品質が劣化するおそれがある。
【0004】
そこで、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と呼ぶ)として用いられた状態での有機EL素子の発光特性の変化や電気特性の変化が小さくなるように、形成後の有機EL素子を初期劣化(エイジング)させて、発光特性および電気特性を安定化する方法が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載された方法では、有機EL素子に加熱処理を施すことや電界を印加することによりエイジングを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加熱処理の際の温度と加熱時間によっては、有機EL素子の特性を大きく損なってしまい、有機EL素子の発光寿命や発光効率をかえって低下させてしまう場合があるという課題があった。例えば、特許文献1では、加熱処理の際の温度は有機EL素子の有機材料のガラス転移温度以下が好ましいとしている。したがって、加熱処理において有機EL素子の発光寿命や発光効率が低下しない有機EL装置の構成、あるいは加熱処理の方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置は、基板と、前記基板上に設けられ陽極と有機機能層と陰極とが順に積層された有機EL素子と、を備え、前記有機機能層は、前記陽極上に順に配置された、正孔輸送層と、第1の色に発光する第1の発光層と、電子および正孔の流れを調整する中間層と、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも含み、前記有機EL素子は、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例に係る有機EL素子は、有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されている。発明者らは、有機EL素子の加熱処理を行う温度として、従来有機材料のガラス転移温度以下の温度が好ましいとされてきたのに対して、実験により、ガラス転移温度よりも高い温度で加熱処理を行うことで有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上することを見出した。したがって、この構成によれば、加熱処理を行うことにより、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上した有機EL装置を提供できる。
【0010】
[適用例2]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、基板上に、陽極と有機機能層と陰極とを順に積層して有機EL素子を形成する工程と、前記有機EL素子を加熱処理する工程と、を有し、前記有機EL素子を形成する工程は、前記有機機能層として、正孔輸送層と、第1の色に発光する第1の発光層と、電子および正孔の流れを調整する中間層と、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも形成する工程を含み、前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することを特徴とする。
【0011】
本適用例に係る有機EL素子の製造方法は、有機EL素子を加熱処理する工程で、有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理を行う。したがって、この方法によれば、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上する有機EL装置の製造方法を提供できる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機EL素子にレーザー光を照射することにより前記加熱処理を行ってもよい。
【0013】
この方法によれば、加熱処理する工程で有機EL素子にレーザー光を照射することにより加熱処理を行う。このため、高温に保たれた恒温恒湿槽内に有機EL装置を放置する方法に比べて、レーザー光を照射することで、加熱処理を行うべき部分を集中的に加熱することができる。このため、有機機能層を、より短時間で所定の温度に上昇させるとともに、より短時間で室温に戻すことができる。また、この加熱処理により中間層や電子輸送層の拡散層に拡散領域を形成できるので、拡散領域の形成のための加熱処理を別に行わなくてもよい。これにより、有機機能層を構成する材料が高温に晒される時間がより短くなるので、温度による有機EL素子の特性の劣化を抑えることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の有機EL装置、または、上記に記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造された有機EL装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電子機器は、長寿命で高発光効率の有機EL装置を備えている。このため、表示部の信頼性が高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の構成を示す概略正面図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置の構造を示す要部断面図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL素子の構成を示す模式断面図。
【図5】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態に係る加熱処理方法を説明する図。
【図7】電子機器としての携帯電話機を示す図。
【図8】実施例1の加熱処理温度の違いによる発光輝度の時間変化を比較したグラフ。
【図9】従来の構成の有機EL装置における発光強度を示すグラフ。
【図10】実施例2の結果を示す図。
【図11】実施例2の加熱温度および拡散層の厚さと発光寿命との関係を示すグラフ。
【図12】実施例3の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を一部省略してある。
【0018】
(第1の実施形態)
<有機EL装置の概要>
まず、本実施形態の有機EL装置の概要について、図1、図2、および図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る有機EL装置の構成を示す概略正面図である。図2は、第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。図3は、第1の実施形態に係る有機EL装置の構造を示す要部断面図である。詳しくは、図3は図1のA−A’線に沿った部分断面図である。
【0019】
図1に示すように、有機EL装置1は、基板としての素子基板20上に、略矩形の平面形状を有する発光領域4を備えている。発光領域4は、有機EL装置1において、実質的に発光に寄与する領域である。発光領域4には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの光を射出する画素2が配列されている。画素2は、例えば略矩形の平面形状を有している。なお、画素2は、実際には非常に微細なものであり、図示の都合上拡大して示している。
【0020】
画素2は、有機EL装置1の表示の最小単位であり、赤色光を射出する画素2Rと、緑色光を射出する画素2Gと、青色光を射出する画素2Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単に画素2とも呼ぶ)。有機EL装置1では、画素2R,2G,2Bから一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素2R,2G,2Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0021】
有機EL装置1は、素子基板20上に設けられ画素2毎に配置された有機EL素子8(図2参照)を有している。また、有機EL装置1は、素子基板20に平面的に重なるように配置された封止基板40を備えている。封止基板40は、素子基板20よりも一回り小さい。封止基板40は、素子基板20に接合されており、素子基板20上に設けられた複数の有機EL素子8を封止している。
【0022】
素子基板20の領域のうち封止基板40から額縁状に張り出した部分には、2つの走査線駆動回路15と1つのデータ線駆動回路14が設けられている。素子基板20の端子部20aには、走査線駆動回路15およびデータ線駆動回路14と外部駆動回路とを接続するためのフレキシブルな中継基板5が実装されている。
【0023】
図2に示すように、有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機EL装置である。有機EL装置1は、素子基板20上に設けられた走査線16と、走査線16に対して交差する方向に延びる信号線17と、信号線17に並列に延びる電源線18とを備えている。
【0024】
有機EL装置1において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域に画素2が配置されている。画素2は、走査線16の延在方向と信号線17の延在方向とに沿ってマトリックス状に配列されている。画素2には、スイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13と、陽極24と、陰極26と、有機機能層30と、を備えている。有機機能層30は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含んでいる。陽極24と、有機機能層30と、陰極26とによって、有機EL素子8が構成される。
【0025】
信号線17には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0026】
有機EL装置1では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、信号線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したとき、電源線18から陽極24に駆動電流が流れ、さらに有機機能層30を通じて陰極26に電流が流れる。
【0027】
有機機能層30の発光層は、陽極24と陰極26との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。本実施形態では、有機EL素子8は、有機機能層30の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各発光層が発光することにより、白色光を発する。
【0028】
図3に示すように、有機EL装置1は、素子基板20上に、有機EL素子8(陽極24、有機機能層30、および陰極26)と、隔壁25と、ガスバリア層28と、カラーフィルター42と、封止基板40と、を備えている。素子基板20は、基板10と、基板10上に形成された駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層23と、を備えている。有機EL装置1は、有機EL素子8から発した光が封止基板40側に射出されるトップエミッション型である。有機EL素子8の構成の詳細については後述する。
【0029】
基板10は、有機EL装置1がトップエミッション型であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれを用いてもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えばシリコン酸化物(SiO2)等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0030】
駆動用TFT12は、基板10上に、画素2に対応して設けられている。駆動用TFT12は、半導体膜12aと、ゲート絶縁層21と、ゲート電極12gと、ドレイン電極12dと、ソース電極12sとを備えている。半導体膜12aには、ソース領域と、ドレイン領域と、チャネル領域とが形成されている。半導体膜12aは、ゲート絶縁層21に覆われている。ゲート電極12gは、ゲート絶縁層21を間に挟んで平面視で半導体膜12aのチャネル領域に重なるように位置している。
【0031】
層間絶縁層22は、ゲート電極12gとゲート絶縁層21とを覆っている。ドレイン電極12dは、層間絶縁層22に設けられたコンタクトホールを介して、半導体膜12aのドレイン領域に導電接続されている。ソース電極12sは、同様にコンタクトホールを介して、半導体膜12aのソース領域に導電接続されている。なお、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆って、例えばシリコン窒化物(SiN)等からなる保護層が設けられていてもよい。
【0032】
平坦化層23は、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆うように設けられている。平坦化層23は、ドレイン電極12dおよびソース電極12sやその他の配線部による凹凸を反映しないほぼ平坦な表面を有している。平坦化層23は、例えばアクリル樹脂等からなる。
【0033】
陽極24は、平坦化層23上に画素2毎に設けられている。なお、反射性をより高めるために、例えば反射層上に無機絶縁層等を間に介して陽極24が積層された構成であってもよい。陽極24は、平坦化層23に設けられたコンタクトホールを介して駆動用TFT12に導電接続されている。
【0034】
隔壁25は、平坦化層23上に設けられている。隔壁25は開口部25aを有しており、画素2の領域を区画している。隔壁25は、開口部25aの周囲に沿って陽極24の周縁部に所定幅で乗り上げるように形成されている。隔壁25の厚さは、例えば2μm程度である。なお、平坦化層23と隔壁25との間に、開口部25aよりも一回り小さい開口部を有する無機絶縁層が設けられていてもよい。
【0035】
有機機能層30は、陽極24と隔壁25とを覆うように形成されている。陰極26は、有機機能層30を覆うように設けられている。
【0036】
ガスバリア層28は、陰極26(有機EL素子8)を覆うように設けられている。ガスバリア層28は、有機EL素子8を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。ガスバリア層28は、光透過性、密着性、耐水性、ガスバリア性等を考慮して、例えば、シリコン酸化物やシリコン酸窒化物等のシリコン化合物で構成される。ガスバリア層28の厚さは100nm〜400nm程度であることが好ましい。
【0037】
なお、単層のガスバリア層28の代わりに、電極保護層と有機緩衝層とガスバリア層とを備えた多層薄膜保護層を設ける構成としてもよい。その場合、電極保護層およびガスバリア層は、例えば、シリコン酸化物やシリコン酸窒化物等のシリコン化合物で構成され、有機緩衝層はエポキシ樹脂等の有機材料で構成される。このような構成にすれば、隔壁25等による凹凸部分を緩和するとともに、素子基板20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和することができる。また、有機EL素子8をより気密的に封止できるので、有機EL装置1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0038】
封止基板40は、ガスバリア層28に覆われた有機EL素子8に対向配置されている。封止基板40は、透光性を有する材料からなり、例えばガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等からなる。封止基板40は、封止基板40の外周に沿って設けられたシール材(図示しない)により素子基板20側に接合されている。封止基板40と素子基板20側(ガスバリア層28)との間の空間は、例えば、透光性を有するウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなる接着剤41により充填されている。
【0039】
カラーフィルター42は、封止基板40の有機EL素子8側に設けられている。カラーフィルター42は、赤色のカラーフィルター42Rと、緑色のカラーフィルター42Gと、青色のカラーフィルター42Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター42とも呼ぶ)。カラーフィルター42R,42G,42Bは、画素2R,2G,2Bに対応して配置され、有機EL素子8に平面的に重なるように設けられている。
【0040】
有機EL素子8により発せられる白色光が、カラーフィルター42R,42G,42Bを透過することで、画素2R,2G,2BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。隣り合うカラーフィルター42R,42G,42B同士の間には、カラーフィルター42R,42G,42Bを区画する遮光層43が設けられている。なお、カラーフィルター42R,42G,42Bおよび遮光層43の有機EL素子8側の表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層が設けられていてもよい。
【0041】
有機EL装置1では、有機機能層30から陰極26側に発せられた光は、封止基板40側に射出される。また、有機機能層30から陽極24側に発せられた光は、例えば陽極24により反射されて、封止基板40側に射出される。
【0042】
なお、有機EL装置1は、アクティブマトリックス型の構成に限定されず、パッシブ(単純)マトリックス型の構成であってもよい。また、有機EL装置1は、トップエミッション型に限定されず、ボトムエミッション型であってもよい。
【0043】
<有機EL素子の構成>
次に、有機EL素子の構成について詳細を説明する。図4は、第1の実施形態に係る有機EL素子の構成を示す模式断面図である。図4に示すように、第1の実施形態に係る有機EL素子8は、陽極24と有機機能層30と陰極26とが積層された構成を有している。有機機能層30は、正孔注入層31と、正孔輸送層32と、赤色発光層33と、中間層34と、青色発光層35と、緑色発光層36と、電子輸送層37と、電子注入層38と、がこの順に積層された構成を有している。
【0044】
有機EL素子8では、陽極24および陰極26に電圧が印加されることにより、赤色発光層33、青色発光層35、および緑色発光層36の各発光層に対し、陰極26側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極24側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光や燐光)を放出(発光)する。これにより、有機EL素子8は、白色光を発する。
【0045】
(陽極)
陽極24は、正孔注入層31を介して正孔輸送層32に正孔を注入する電極である。陽極24の材料としては、透光性を有するとともに、仕事関数が大きく導電性に優れる材料が好ましい。陽極24の材料としては、例えば、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。陽極24の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜200nm程度であることが好ましく、50nm〜150nm程度であることがより好ましい。
【0046】
(陰極)
陰極26は、電子注入層38を介して電子輸送層37に電子を注入する電極である。陰極26の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極26の材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
陰極26の材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、より具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金が好ましい。このような合金を用いることにより、陰極26の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。陰極26の平均厚さは、特に限定されないが、100nm〜10000nm程度であることが好ましく、200nm〜500nm程度であることがより好ましい。
【0048】
(正孔注入層)
正孔注入層31は、陽極24からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。正孔注入層31の材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、下記化1に示すN,N'−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N,N’−ジフェニル−ビフェニル−4−4’−ジアミン等があげられる。
【0049】
【化1】
【0050】
正孔注入層31の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜150nm程度であることが好ましく、10nm〜100nm程度であることがより好ましい。なお、正孔注入層31を省略してもよい。
【0051】
(正孔輸送層)
正孔輸送層32は、陽極24から正孔注入層31を介して注入された正孔を赤色発光層33まで輸送する機能を有している。正孔輸送層32の材料としては、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができ、例えば、下記化2に示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等のテトラアリールベンジジン誘導体、テトラアリールジアミノフルオレン化合物またはその誘導体(アミン系化合物)等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
【化2】
【0053】
正孔輸送層32の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜150nm程度であることが好ましく、10nm〜100nm程度であることがより好ましい。なお、正孔輸送層32は、省略することができる。
【0054】
(赤色発光層)
赤色発光層33は、赤色発光材料を含んで構成されている。赤色のように比較的長い波長の光を用いることにより、最低非占有分子軌道(HOMO)と最高占有分子軌道(LUMO)とのエネルギー準位差(バンドギャップ)が比較的小さい発光材料を用いることができる。このようにバンドギャップが比較的小さい発光材料は、正孔や電子を捕獲しやすく、発光し易い。したがって、陽極24側に赤色発光層33を設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層35や緑色発光層36を陰極26側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0055】
また、赤色発光材料のようにバンドギャップの比較的小さな材料であると、赤色発光層33中の電子、正孔の密度が少ない場合であっても、好適に発光することができる。赤色発光材料としては、特に限定されないが、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化3に示すテトラアリールジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等があげられる。
【0057】
【化3】
【0058】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものもあげられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)等があげられる。
【0059】
また、赤色発光層33の材料としては、前述した赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料(第1のホスト材料)を用いてもよい。第1のホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。したがって、例えば、第1のホスト材料にゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてドープして用いることができる。
【0060】
第1のホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、下記化4に示すようなアントラセン誘導体、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)等のアントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、下記化5に示されるルブレン誘導体等のルブレンおよびその誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、第1のホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
【化4】
【0063】
【化5】
【0064】
赤色発光層33に第1のホスト材料が含まる場合、赤色発光層33中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜10wt%であるのが好ましく、0.1wt%〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、青色発光層35や緑色発光層36の発光量とのバランスをとりつつ赤色発光層33を発光させることができる。
【0065】
また、赤色発光層33の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜30nm程度であることが好ましく、10nm〜20nm程度であることがより好ましい。これにより、有機EL素子8の各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0066】
(中間層)
中間層34は、赤色発光層33と青色発光層35との層間にこれらに接するように設けられている。そして、中間層34は、青色発光層35から赤色発光層33へ輸送される電子の量を調節する機能を有する。また、中間層34は、赤色発光層33から青色発光層35へ輸送される正孔の量を調節する機能を有する。さらに、中間層34は、赤色発光層33と青色発光層35との間で励起子のエネルギーが移動するのを阻止する機能を有する。この機能により、赤色発光層33および青色発光層35をそれぞれ効率よく発光させることができる。この結果、各発光層をバランスよく発光させることができ、有機EL素子8は所望の色、例えば白色で発光することができるものとなるとともに、有機EL素子8の発光効率および発光寿命の向上を図ることができる。
【0067】
中間層34の平均厚さは、例えば1nm〜60nm程度である。このように比較的厚い中間層34を設けることにより、陽極24と陰極26との間に微弱な電圧が印加された際に、有機EL素子8に電流が流れるのを防止する。このため、有機EL素子8の駆動が解除された際に、陽極24および陰極26の間に微弱な電圧が発生して有機EL素子8に電流が流れることにより生じる黒浮き現象が防止される。また、平均厚さが、前記上限値以下であることにより、中間層34で輸送される電子および正孔の量が減少し、発光効率が低下することが防止される。
【0068】
上記のような中間層34を設けることにより、有機EL素子8は、優れた発光効率および発光バランスを維持しつつ、黒浮き現象が抑えられたものとなる。また、中間層34は上記のように比較的厚いものであるため、耐久性に優れている。さらに、発光バランスに優れるため、特定の発光層に正孔および電子が集中して当該発光層が劣化するのを防止することができる。以上から、有機EL素子8全体としての発光寿命を長いものとすることができる。
【0069】
これに対し、中間層34の平均厚さが前記下限値未満だと、陽極24と陰極26との間に微弱な電圧が印加された際に、有機EL素子8に電流が流れ易くなり、黒浮き現象を抑制することができない。一方、中間層34の平均厚さが前記上限値を超えると、有機EL素子8全体としての発光効率が急激に低下してしまう。中間層34の平均厚さは、上述したような範囲内であればよいが、より顕著な効果を得るためには、1nm〜60nmであることが好ましく、3nm〜20nmであることがより好ましい。
【0070】
中間層34の材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、正孔を輸送する機能を有する材料(正孔輸送材料)、電子を輸送する機能を有する材料(電子輸送材料)等を用いることができ、正孔輸送材料を用いることが好ましい。一般に、電子と比較して正孔は、移動度が遅いが、中間層34が正孔輸送材料を含むことにより、正孔は円滑に中間層34から青色発光層35に受け渡され、各発光層がバランスよく発光し易いものとなり、有機EL素子8は、目的とする色、例えば白色で発光することができるとともに発光効率に優れたものとなる。
【0071】
中間層34に用いられる正孔輸送材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した正孔輸送材料のうちのアミン骨格を有するアミン系材料を用いることができるが、ベンジジン系アミン誘導体を用いるのが好ましい。特に、ベンジジン系アミン誘導体の中でも、中間層34に用いられるアミン系材料としては、2つ以上の芳香環基を導入したものが好ましく、テトラアリールベンジジン誘導体がより好ましい。このようなベンジジン系アミン誘導体としては、例えば、前記化2に示されるN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)や、N,N,N’,N’−テトラナフチル−ベンジジン(TNB)等があげられる。
【0072】
このようなアミン系材料は、一般に、正孔輸送性に優れている。したがって、赤色発光層33から中間層34を介して青色発光層35へ正孔を円滑に受け渡すことができる。また、各発光層の中で最も発光しにくい青色発光層35に正孔が十分に供給されるため、陽極24と陰極26との間に印加される電圧が変化した場合であっても各発光層の発光バランスが変化しにくいものとなる。
【0073】
また、中間層34の材料として、正孔輸送材料に加え、電子輸送材料を同時に含むことが好ましい。これにより、中間層34は、電子輸送性および正孔輸送性を有する。すなわち、中間層34は、バイポーラ性を有する。中間層34がバイポーラ性を有すると、赤色発光層33から中間層34を介して青色発光層35へ正孔を円滑に受け渡すとともに、青色発光層35から中間層34を介して赤色発光層33へ電子を円滑に受け渡すことができる。その結果、赤色発光層33および青色発光層35にそれぞれ電子および正孔を効率的に注入して発光させることができる。
【0074】
また、バイポーラ性を有することで、中間層34はキャリア(電子、正孔)に対する耐性に優れている。このため、中間層34中で電子と正孔が再結合して励起子が生成しても、中間層34の劣化を防止または抑制することができる。これにより、中間層34の励起子による劣化を防止または抑制し、その結果、有機EL素子8の耐久性(発光寿命)を優れたものとすることができる。
【0075】
中間層34に用いることができる電子輸送材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、アセン系材料を用いることができる。アセン系材料は、電子輸送性に優れるため、青色発光層35から中間層34を介して赤色発光層33へ電子を円滑に受け渡すことができる。また、アセン系材料は励起子に対する耐性に優れているため、中間層34の励起子による劣化を防止または抑制し、その結果、有機EL素子8の耐久性を優れたものとすることができる。
【0076】
このようなアセン系材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等があげられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体を用いるのが好ましく、アントラセン誘導体を用いることがより好ましい。アントラセン誘導体としては、例えば、前記化4に示されるアントラセン誘導体、下記化6に示される2−t−ブチル−9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(TBADN)等があげられる。
【0077】
【化6】
【0078】
中間層34に正孔輸送材料と電子輸送材料とが同時に含まれる場合、中間層34中における正孔輸送材料の含有量は、特に限定されないが、5wt%〜95wt%であることが好ましく、7wt%〜90wt%であるのがより好ましく、10wt%〜85wt%であることがさらに好ましい。また、中間層34中におけるアセン系材料の含有量は、特に限定されないが、10wt%〜70wt%であることが好ましく、15wt%〜60wt%であることがより好ましく、20wt%〜55wt%であることがさらに好ましい。
【0079】
中間層34における正孔輸送材料の含有量をCH[wt%]、電子輸送材料の含有量をCE[wt%]としたとき、0.5≦CH/CE≦20の関係を満足することが好ましく、1.0≦CH/CE≦10の関係を満足することがより好ましい。これにより、より確実に、キャリアや励起子に対する中間層34の耐性を優れたものとしつつ、赤色発光層33および青色発光層35にそれぞれ電子および正孔を注入して発光させることができ、各発光層の発光バランスをより優れたものとすることができる。また、有機EL素子8に印加される電圧が変化した場合であっても各発光層の発光バランスがより変化しにくいものとなる。
【0080】
(青色発光層)
青色発光層35は、青色発光材料を含んで構成されている。青色のように比較的短い波長の光を用いることにより、バンドギャップが比較的大きい発光材料を用いることができる。このようにバンドギャップが比較的大きい発光材料は、バンドギャップが比較的小さい発光材料と比較して正孔や電子を捕獲しにくい。しかしながら、青色発光層35がこのような位置に配置されることにより、正孔および電子が十分に青色発光層35に供給され、青色発光層35を十分に発光させることができる。
【0081】
また、中間層34と青色発光層35との界面付近において電子と正孔とが再結合して生成した励起子のエネルギーが効率よく青色発光層35の発光に用いられる。このため、各発光層は、バランスよく発光することができる。また、有機EL素子8に印加される電圧が微弱な場合や電圧が変化した場合であっても、各発光層の発光バランスが変化しにくいものとなる。青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記化7で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0083】
【化7】
【0084】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)があげられる。
【0085】
また、青色発光層35の材料としては、前述したような青色発光材料に加えて、この青色発光材料をゲスト材料とするホスト材料(第2のホスト材料)を用いてもよい。青色発光層35に用いることのできる第2のホスト材料としては、前述した赤色発光層33の第1のホスト材料と同様のホスト材料を用いることができる。
【0086】
青色発光層35が第2のホスト材料を含む場合、青色発光層35中における青色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜20wt%であることが好ましく、1wt%〜15wt%であることがより好ましい。青色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層33や後述する緑色発光層36の発光量とのバランスをとりつつ青色発光層35を発光させることができる。
【0087】
また、青色発光層35の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜30nm程度であることが好ましく、12nm〜20nm程度であることがより好ましい。
【0088】
(緑色発光層)
緑色発光層36は、緑色発光材料を含んで構成されている。緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0089】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化8に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0090】
【化8】
【0091】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムがあげられる。
【0092】
また、緑色発光層36はホスト材料(第3のホスト材料)を含んでいてもよい。緑色発光層36の第3のホスト材料としては、前述した赤色発光層33の第1のホスト材料と同様のホスト材料を用いることができる。
【0093】
緑色発光層36が第3のホスト材料を含む場合、緑色発光層36中における緑色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜20wt%であることが好ましく、1wt%〜15wt%であることがより好ましい。緑色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層33や青色発光層35の発光量とのバランスをとりつつ緑色発光層36を発光させることができる。また、緑色発光層36の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜20nm程度であることが好ましく、8nm〜15nm程度であることがより好ましい。
【0094】
(電子輸送層)
電子輸送層37は、陰極26から電子注入層38を介して注入された電子を緑色発光層36に輸送する機能を有するものである。電子輸送層37は、ベース層37aと拡散層37bとの2層で構成される。ベース層37aは緑色発光層36に接する側に配置され、拡散層37bは電子注入層38に接する側に配置されている。
【0095】
ベース層37aは、拡散層37bよりも電子移動度が低い電子輸送材料で構成されることが好ましい。ベース層37aの材料(電子輸送材料)としては、例えば、下記化9に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体等のキノリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
【化9】
【0097】
ベース層37aの平均厚さは、特に限定されないが、0.5nm〜100nm程度であることが好ましく、1nm〜50nm程度であることがより好ましい。
【0098】
拡散層37bは、ベース層37aよりも電子移動度が高い電子輸送材料で構成されることが好ましい。拡散層37bの材料(電子輸送材料)としては、例えば、下記化10に示すオキサジアゾール誘導体(tBu−PBD)、下記化11に示すシロール誘導体(ET4)等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。拡散層37bには、例えば、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散されている。
【0099】
【化10】
【0100】
【化11】
【0101】
拡散層37bの平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜70nm程度であることが好ましく、7nm〜60nm程度であることがより好ましい。
【0102】
電子輸送層37が電子注入層38に接する側に拡散層37bを有していることで、電子注入層38に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属が、拡散層37bよりも電子移動度が低い電子輸送材料で構成されるベース層37aには拡散しにくくなる。このため、これらのアルカリ金属やアルカリ土類金属の、緑色発光層36への拡散が抑えられる。これにより、緑色発光層36を効率よく発光させることができるので、有機EL素子8の発光効率および発光寿命の向上を図ることができる。
【0103】
(電子注入層)
電子注入層38は、陰極26からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。この電子注入層38の材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料があげられる。
【0104】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層38を構成することにより、有機EL素子8は、高い輝度が得られるものとなる。
【0105】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2Se、NaO等があげられる。アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等があげられる。アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等があげられる。アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2、BeF2等があげられる。
【0106】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
電子注入層38の平均厚さは、特に限定されないが、0.1nm〜1000nm程度であることが好ましく、0.2nm〜100nm程度であることがより好ましく、0.2nm〜50nm程度であることがさらに好ましい。
【0108】
なお、上述の有機EL素子8は、有機機能層30に3層の発光層を有していたが、発光層が2層または4層以上であってもよい。発光層の発光色としては、上述のR、G、Bに限定されない。また、中間層34は、発光層同士の少なくとも1つの層間に設けられていればよく、2層以上の中間層を有していてもよい。
【0109】
<有機EL装置の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法について説明する。図5は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0110】
図5に示すように、有機EL装置の製造方法は、基板準備工程S10と、有機EL素子形成工程S20と、封止工程S40と、加熱処理工程S50とを有している。
【0111】
基板準備工程S10では、基板10上に駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層23とを公知の方法で形成し、素子基板20を準備する。
【0112】
次に、有機EL素子形成工程S20を行う。有機EL素子形成工程S20は、陽極形成工程S21と、正孔注入層形成工程S22と、正孔輸送層形成工程S23と、赤色発光層形成工程S24と、中間層形成工程S25と、青色発光層形成工程S26と、緑色発光層形成工程S27と、電子輸送層形成工程S28と、電子注入層形成工程S29と、陰極形成工程S30と、を含んでいる。
【0113】
陽極形成工程S21では、素子基板20上に陽極24を形成する。陽極24は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着(CVD)法、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0114】
続いて、正孔注入層形成工程S22では、陽極24上に正孔注入層31を形成する。正孔注入層31は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0115】
また、正孔注入層31は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極24上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層31を比較的容易に形成することができる。正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0116】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。また、本工程に先立って、陽極24の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極24の上面に親液性を付与すること、陽極24の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極24の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
【0117】
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100W〜800W程度、酸素ガス流量50mL/min〜100mL/min程度、被処理部材(陽極24)の搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec程度、素子基板20の温度70℃〜90℃程度とするのが好ましい。
【0118】
続いて、正孔輸送層形成工程S23では、正孔注入層31上に正孔輸送層32を形成する。正孔輸送層32は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層31上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0119】
続いて、赤色発光層形成工程S24では、正孔輸送層32上に赤色発光層33を形成する。赤色発光層33は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0120】
続いて、中間層形成工程S25では、赤色発光層33上に中間層34を形成する。中間層34は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0121】
続いて、青色発光層形成工程S26では、中間層34上に青色発光層35を形成する。青色発光層35は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0122】
続いて、緑色発光層形成工程S27では、青色発光層35上に緑色発光層36を形成する。緑色発光層36は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0123】
続いて、電子輸送層形成工程S28では、緑色発光層36上にベース層37aと拡散層37bとを積層して電子輸送層37を形成する。電子輸送層37は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。また、電子輸送層37は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層36上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0124】
続いて、電子注入層形成工程S29では、電子輸送層37上に電子注入層38を形成する。電子注入層38の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層38は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
【0125】
続いて、陰極形成工程S30では、電子注入層38上に陰極26を形成する。陰極26は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。上記の有機EL素子形成工程S20を経て、素子基板20上に形成された有機EL素子8が得られる。
【0126】
次に、封止工程S40では、まず、有機EL素子8(陰極26)を覆うようにガスバリア層28を形成する。ガスバリア層28は、例えば、イオンプレーティング法、CVD法等を用いて形成することができる。続いて、封止基板40を素子基板20に接合するとともに、封止基板40とガスバリア層28との間の空間を接着剤41により充填する。封止基板40は、カラーフィルター42が設けられた面が有機EL素子8に対向するように配置される。これにより、有機EL装置1が得られる。
【0127】
次に、加熱処理工程S50では、有機EL装置1(有機EL素子8)の加熱処理を行う。加熱処理の温度は、有機EL素子8の有機機能層30を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度(Tg)のうち最も低い温度よりも高い温度とする。本実施形態の有機EL素子8では、有機機能層30を構成する材料のうち最も低いTgは、例えば80℃程度である。これに対して、加熱処理の温度は、例えば、100℃〜120℃程度が好ましく、120℃程度がより好ましい。
【0128】
加熱処理工程S50における加熱方法は、例えば、所定の温度に保たれた恒温恒湿槽内に有機EL装置1を放置する。加熱時間は、有機機能層30の温度が上述の温度に到達するまでの時間とすることが好ましい。加熱処理工程S50においては、加熱処理により有機機能層30の温度が上述の温度に到達すればよく、上述の温度に到達した後にその温度で長時間維持することは有機機能層30の特性を劣化させるおそれがあるため好ましくない。
【0129】
この加熱処理工程S50を行うことで、後述する実施例に示すように、有機EL素子8の発光寿命および発光効率が向上する。これにより、従来よりも有機EL素子8の発光寿命および発光効率が向上した有機EL装置1を提供できる。
【0130】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、有機EL装置の構成は同じであり、有機EL装置の製造方法は同じ工程を備えているが、加熱処理工程S50における加熱方法が異なっている。より具体的には、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法は、加熱処理工程S50において、レーザー光を照射をすることにより有機EL装置1の加熱処理を行う点が異なっている。
【0131】
第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法の加熱処理工程S50における、加熱処理方法の一例を説明する。図6は、第2の実施形態に係る加熱処理方法を説明する図である。
【0132】
加熱処理工程S50は、例えば、図6に示すチャンバー100内で行われる。チャンバー100は、例えば、アルミニウム等の金属や合金等から形成されており、内部空間を密閉可能に構成されている。チャンバー100内は、真空ポンプ(図示しない)によって減圧される。チャンバー100には、例えばガラス等からなる光導入用ウインドウ102が設けられている。チャンバー100内には、加熱処理を行う有機EL装置1を載置するステージ110が配置されている。ステージ110は、有機EL装置1を載置した状態で、図6の矢印の方向に移動可能に構成されている。
【0133】
チャンバー100の光導入用ウインドウ102の外側には、レーザー光源120が配置されている。レーザー光源120は、レーザー光Lを発生する。レーザー光源120により発生されたレーザー光Lは、光導入用ウインドウ102を介してステージ110に載置された有機EL装置1の表面に照射される。このレーザー光Lにより加熱処理が行われる。
【0134】
なお、ステージ110を移動させることで、有機EL装置1に対するレーザー光Lの面走査を行うことができる。光源120としては、特に限定はなく、被照射体である有機EL装置1上に形成された薄膜の種類に応じて、公知のレーザー光源から適宜選択することができる。
【0135】
有機EL装置1にレーザー光を照射して加熱処理を行うことで、第1の実施形態の恒温恒湿槽内に有機EL装置1を放置する方法に比べて、加熱処理を行うべき部分を集中的に加熱することができる。このため、有機機能層30を、より短時間で所定の温度に上昇させるとともに、より短時間で室温に戻すことができる。また、この加熱処理により中間層34や電子輸送層37の拡散層37bに拡散領域を形成できるので、拡散領域の形成のための加熱処理を別に行わなくてもよい。これにより、有機機能層30を構成する材料が高温に晒される時間がより短くなるので、温度による有機EL素子8の特性の劣化を抑えることができる。
【0136】
したがって、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法によれば、有機EL素子8の発光寿命および発光効率がさらに向上した有機EL装置1を提供できる。なお、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法では、加熱処理工程S50を封止工程S40の前に行うようにしてもよい。
【0137】
<電子機器>
上述した有機EL装置1は、例えば、図7に示すように、電子機器としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部502に有機EL装置1を備えている。この構成により、表示部502を有する携帯電話機500は、より長寿命で明るい表示を行うことができる。
【0138】
また、電子機器は、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置の車載モニター等であってもよい。
【0139】
さらに、本発明の有機EL装置1は、表示デバイス以外のデバイス、例えば、プリンターヘッドの露光ヘッドの光源や照明装置として用いることもできる。
【実施例】
【0140】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0141】
(実施例1)
<1.有機EL素子の加熱処理温度と発光寿命との関係>
まず、実施例1として、第1の実施形態に係る有機EL装置1の構成を有する有機EL装置を、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法により製造した。実施例1の有機EL装置における有機機能層の具体的な構成は以下の通りである。
【0142】
正孔注入層31は、m−MTDATAを材料として30nmの厚さで形成した。正孔輸送層32は、α−NPDを材料として20nmの厚さで形成した。赤色発光層33は、ホスト材料をルブレンとしドーパントをペリレン誘導体として5nmの厚さで形成した。中間層34は、α−NPDを材料として5nmの厚さで形成した。青色発光層35は、ホスト材料をADN(出光興産株式会社製)としドーパントをBD142(出光興産株式会社製)として12nmの厚さで形成した。緑色発光層36は、ホスト材料をAlq3としドーパントをキナクリドンとして8nmの厚さで形成した。電子輸送層37は、ベース層37aをAlq3を材料として20nmの厚さで形成し、拡散層37bをキナクリドンを材料として20nmの厚さで形成した。電子注入層38は、LiFを材料として1nmの厚さで形成した。
【0143】
続いて、上記実施例1の有機EL装置を異なる温度で加熱処理する実験を行った。図8は、実施例1の加熱処理温度の違いによる発光輝度の時間変化を比較したグラフである。詳しくは、実施例1の有機EL装置を、第1の実施形態に係る加熱処理工程S50において、95℃、105℃、110℃、115℃、120℃の異なる温度で加熱処理を行った結果である。なお、加熱時間は、95℃では14時間、それ以外の温度では4時間とした。図8において、横軸は有機EL装置を400mA/cm2で駆動したときときの発光時間であり、縦軸は初期時点の発光輝度を1としたときの発光輝度の比である。
【0144】
図8に示すように、実施例1の有機EL装置では、95℃で加熱した場合を基準とすると、加熱処理温度が高いほど同じ発光輝度で発光する時間が長くなっている。この結果より、実施例1の有機EL装置1では、少なくとも120℃までの温度であれば、加熱処理温度が高いほど発光寿命が長くなっていることがわかる。
【0145】
図9は、従来の構成の有機EL装置における発光強度を示すグラフである。詳しくは、従来の構成の有機EL装置として、電子輸送層37における拡散層37bと、中間層34とを有していない以外は実施例1の有機EL装置と同じ構成を有する有機EL装置を用いて、初期時点と、115℃、120℃の異なる温度で加熱処理を行った時点とにおける発光強度を比較した結果である。なお、加熱時間は、115℃、120℃とも4時間とした。図9において、横軸は発光波長であり、縦軸は発光強度である。
【0146】
図9に示すように、初期時点に対して、加熱温度が高い方が有機EL装置の発光強度が低下していること、つまり発光寿命が低下していることがわかる。115℃、120℃の温度は、有機機能層を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度であり、特許文献1における「加熱処理の際の温度は有機EL素子の有機材料のガラス転移温度以下が好ましい」との記載に対応する結果となっている。
【0147】
これに対して、図8に示す本実施例の加熱処理実験では、有機機能層を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱した方が発光寿命が長い、という従来の考え方とは相反する結果が得られた。このような従来の考え方とは相反する結果が得られたのは、拡散層37bを含む電子輸送層37と中間層とを有する有機機能層の構成が関与しているためと考えられる。そこで、有機機能層における電子輸送層の拡散層と中間層との厚さ等の構成を異ならせてさらに実験を行った。
【0148】
(実施例2)
<2.電子輸送層における拡散層の厚さと発光寿命および発光効率との関係>
次に、実施例2として、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを異ならせて有機EL装置を製造した。実施例2の有機EL装置における有機機能層の具体的な構成は以下の通りである。
【0149】
正孔注入層31は、HI406(出光興産株式会社製)を材料として30nmの厚さで形成した。正孔輸送層32は、α−NPDを材料として20nmの厚さで形成した。赤色発光層33は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをRD001(出光興産株式会社製)として5nmの厚さで形成した。中間層34は、α−NPDを材料として5nmの厚さで形成した。青色発光層35は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをBD102(出光興産株式会社製)として12nmの厚さで形成した。緑色発光層36は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをGD206(出光興産株式会社製)として8nmの厚さで形成した。電子輸送層37のベース層37aはAlq3を材料として10nmの厚さで形成し、拡散層37bはtBu−PBDを材料としてその厚さを異ならせて形成した。電子注入層38は、LiFを材料として1nmの厚さで形成した。
【0150】
さらに、実施例2では、有機EL装置の加熱処理を行う方法として、第2の実施形態に係る加熱処理工程S50を適用した。より具体的には、レーザー光の照射により加熱処理を行い、加熱処理温度は120℃とした。また、比較例1として、実施例2と同じ構成の有機EL装置において電子輸送層37の拡散層37bを5nmの厚さで形成したものを用いて、実施例2と同様にレーザー光の照射により120℃の温度で加熱処理を行った。
【0151】
(実施例2−1)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを7nmとした。
【0152】
(実施例2−2)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを10nmとした。
【0153】
(実施例2−3)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを30nmとした。
【0154】
(実施例2−4)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを50nmとした。
【0155】
(実施例2−5)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを60nmとした。
【0156】
(実施例2−6)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを70nmとした。
【0157】
次に、実施例2の有機EL装置において、拡散層37bの厚さの違いによる電流効率およびLT80を比較した。図10は、実施例2の結果を示す図である。図10において、電圧は、比較例1の有機EL装置における電圧を1としたときの実施例2の電圧の比を示す。電流効率は、比較例1における電流効率(cd/A)を1としたときの実施例2の電流効率の比を示す。LT80は、比較例1におけるLT80を1としたときの実施例2のLT80の比を示す。ここで、LT80とは、有機EL装置を400mA/cm2で駆動したときに、初期時点の発光輝度を100%として発光輝度が80%になるまでの時間(hour)のことである。
【0158】
図10に示すように、実施例2−1、実施例2−2、および実施例2−3では、比較例1に対して、電圧は低く、電流効率およびLT80は高くなっている。次に、実施例2−4および実施例2−5では、比較例1に対して、電圧はやや高くなり、電流効率およびLT80は高くなっている。したがって、実施例2−1〜実施例2−5では、発光輝度と発光寿命とが比較例1よりも向上している。
【0159】
一方、実施例2−6では、比較例1に対して、電圧がより高くなっている。そして、LT80は比較例1よりも高くなるものの、実施例2−1〜実施例2−5に比べて低くなっている。また、電流効率は低下しており、したがって、実施例2−6では発光輝度が比較例1よりも低下している。
【0160】
これらの結果より、電子輸送層37における拡散層37bの厚さが7nm〜60nmの範囲にあれば、有機EL装置の発光輝度と発光寿命とが向上すると考えられる。加熱処理を行うと、その熱により陰極部位での拡散が相互に起こり、電子輸送層37が拡散層37bを含む2層構造でない場合、電子注入層38に含まれる例えばLi等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属が、電子輸送層37を超えて発光層界面まで拡散する。このことにより、有機EL装置の発光効率や発光寿命の低下が起こると考えられる。これに対して、電子輸送層37を拡散層37bを含む2層構造とし、拡散層37bの厚さを初期特性が劣化しない範囲に設定することで、Li等が発光層界面まで拡散することが抑えられ、これにより有機EL装置の発光輝度と発光寿命とが向上すると考えられる。
【0161】
次に、実施例2の拡散層の厚さが異なる構成において、加熱処理の温度を異ならせたときの発光寿命を比較した。図11は、実施例2の加熱温度および拡散層の厚さと発光寿命との関係を示すグラフである。ここでは、比較例1(実施例1)および実施例2の構成の有機EL装置を用いて、レーザー光の照射により、95℃、105℃、120℃、135℃の温度で加熱処理を行った。図10において、横軸は電子輸送層37における拡散層37bの厚さ(nm)であり、縦軸は120℃で加熱処理を行った比較例1のLT80(hour)を1としたときのLT80の比である。図11における折れ線は、実施例1および実施例2の有機EL装置において、拡散層の厚さのそれぞれについて加熱温度が同じ温度のときのLT80(比)をプロットしたものである。
【0162】
図11に示すように、LT80は、電子輸送層37における拡散層37bの厚さに関わらず、加熱処理温度が120℃のときが最も長く、105℃、95℃の順に短くなり、135℃のときが最も短くなっている。この結果からも、中間層34と拡散層37bとを有していれば、有機機能層30を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することで、発光寿命が向上することがわかる。したがって、このような加熱処理を行うことにより、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上した有機EL装置を提供できると考えられる。
【0163】
また、この結果より、95℃から少なくとも120℃までであれば加熱処理温度が高いほど発光寿命が向上するが、135℃まで加熱処理温度が高くなると発光寿命が低下する。したがって、加熱処理温度は120℃程度が好ましいと考えられる。加熱処理温度が135℃まで高くなると、有機機能層30の特性の劣化が起きるものと推察される。
【0164】
次に、図11において、加熱処理温度が同じで電子輸送層37における拡散層37bの厚さを異ならせたときの発光寿命を比較すると、加熱処理温度が105℃および120℃では、拡散層37bの厚さが5nmの場合に比べて、7nm〜60nmの場合に発光寿命が向上している。また、加熱処理温度が95℃および135℃では、拡散層37bの厚さが5nmの場合に比べて、10nm〜60nmの場合に発光寿命が向上している。したがって、図10および図11に示す結果より、拡散層37bの厚さは7nmから60nmが好ましいと考えられる。
【0165】
(実施例3)
<3.中間層の厚さと発光寿命および発光効率との関係>
次に、実施例3として、中間層34の厚さを異ならせて有機EL装置を製造した。実施例3の有機EL装置では、実施例2の有機EL装置に対して、中間層34の厚さを異ならせている点と、電子輸送層37における拡散層37bをET4を材料として30nm、60nm、および70nmの厚さで形成した点が異なるが、その他の構成は同じである。また、実施例3では、比較例1および実施例2と同様に、レーザー光の照射により120℃の温度で加熱処理を行った。
【0166】
(実施例3−1)
中間層34の厚さを3nmとし、拡散層37bの厚さを30nmとした。
【0167】
(実施例3−2)
中間層34の厚さを10nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0168】
(実施例3−3)
中間層34の厚さを15nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0169】
(実施例3−4)
中間層34の厚さを20nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0170】
(実施例3−5)
中間層34の厚さを25nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0171】
(実施例3−6)
中間層34の厚さを30nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0172】
(実施例3−7)
中間層34の厚さを15nmとし、拡散層37bの厚さを60nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0173】
(実施例3−8)
中間層34の厚さを15nmとし、拡散層37bの厚さを70nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0174】
また、比較例2として、以下の有機EL装置を製造した。
【0175】
(比較例2−1)
中間層34を有していない構成とし、拡散層37bの厚さを5nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0176】
(比較例2−2)
中間層34を有していない構成とし、拡散層37bの厚さを30nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0177】
(比較例2−3)
中間層34の厚さを1nmとし、拡散層37bの厚さを30nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0178】
次に、実施例3の有機EL装置において、中間層34の厚さの違いによる電流効率およびLT80を比較した。図12は、実施例3の結果を示す図である。図12において、電圧は、比較例2−1の有機EL装置における電圧を1としたときの実施例3の電圧の比を示す。電流効率は、比較例2−1における電流効率(cd/A)を1としたときの実施例3の電流効率の比を示す。LT80は、比較例2−1におけるLT80を1としたときの実施例3のLT80の比を示す。
【0179】
図12に示すように、実施例3−1、実施例3−2、実施例3−3、および実施例3−4では、比較例2−1に対して、電圧は低く、電流効率およびLT80は高くなっている。また、実施例3−7では、比較例2−1に対して、電圧は高くなるが、電流効率およびLT80は高くなっている。したがって、これらの実施例の有機EL装置では、発光輝度と発光寿命とが比較例2−1の有機EL装置よりも向上している。
【0180】
しかしながら、実施例3−5では、比較例2−1に対して、LT80は同じであるが、電圧は高くなり、電流効率は低下している。また、実施例3−6および実施例3−8では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率およびLT80は低下している。
【0181】
これらの結果より、中間層34の厚さが3nm〜20nmの場合に電流効率および発光寿命が向上する。ただし、中間層34の厚さが15nmであっても電子輸送層37における拡散層37bの厚さが70nmであると、電流効率および発光寿命がともに低下する。
【0182】
また、比較例2−2では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率およびLT80は低下している。比較例2−3では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率は低下している。したがって、中間層34を有していない場合、あるいは中間層34の厚さが薄い場合は、拡散層37bを好ましい厚さで形成しても電流効率および発光寿命は向上しないと考えられる。
【0183】
したがって、図12に示す結果より、中間層34の厚さは3nmから20nmが好ましいと考えられる。また、図12に示す結果からも、電子輸送層37における拡散層37bの厚さの上限は60nmが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0184】
1…有機EL装置、8…有機EL素子、20…基板としての素子基板、24…陽極、26…陰極、30…有機機能層、33…第1の発光層としての赤色発光層、34…中間層、35…第2の発光層としての青色発光層、36…第3の発光層としての緑色発光層、37…電子輸送層、37b…拡散層、500…電子機器としての携帯電話機。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置とその製造方法、およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子と正孔との再結合により発光が生じる現象を用いた発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ)が知られている。有機EL素子は、正孔を供給する陽極と電子を供給する陰極との間に、発光層を含む有機機能層を備えている。有機EL素子は、陽極から供給された正孔と、陰極から供給された電子とが有機機能層で再結合することにより発光する。
【0003】
ところで、有機EL素子は、駆動時間が長くなるにつれてその発光輝度が低下するとともに、有機機能層を流れる電流に対する発光効率も低下することが知られている。また、有機EL素子の形成後の初期段階において発光輝度や発光効率が著しく低下する場合がある。このような有機EL素子を形成後にそのまま発光素子として用いると、短時間のうちに所望の特性が得られなくなり、表示品質が劣化するおそれがある。
【0004】
そこで、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と呼ぶ)として用いられた状態での有機EL素子の発光特性の変化や電気特性の変化が小さくなるように、形成後の有機EL素子を初期劣化(エイジング)させて、発光特性および電気特性を安定化する方法が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載された方法では、有機EL素子に加熱処理を施すことや電界を印加することによりエイジングを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加熱処理の際の温度と加熱時間によっては、有機EL素子の特性を大きく損なってしまい、有機EL素子の発光寿命や発光効率をかえって低下させてしまう場合があるという課題があった。例えば、特許文献1では、加熱処理の際の温度は有機EL素子の有機材料のガラス転移温度以下が好ましいとしている。したがって、加熱処理において有機EL素子の発光寿命や発光効率が低下しない有機EL装置の構成、あるいは加熱処理の方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置は、基板と、前記基板上に設けられ陽極と有機機能層と陰極とが順に積層された有機EL素子と、を備え、前記有機機能層は、前記陽極上に順に配置された、正孔輸送層と、第1の色に発光する第1の発光層と、電子および正孔の流れを調整する中間層と、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも含み、前記有機EL素子は、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例に係る有機EL素子は、有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されている。発明者らは、有機EL素子の加熱処理を行う温度として、従来有機材料のガラス転移温度以下の温度が好ましいとされてきたのに対して、実験により、ガラス転移温度よりも高い温度で加熱処理を行うことで有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上することを見出した。したがって、この構成によれば、加熱処理を行うことにより、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上した有機EL装置を提供できる。
【0010】
[適用例2]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、基板上に、陽極と有機機能層と陰極とを順に積層して有機EL素子を形成する工程と、前記有機EL素子を加熱処理する工程と、を有し、前記有機EL素子を形成する工程は、前記有機機能層として、正孔輸送層と、第1の色に発光する第1の発光層と、電子および正孔の流れを調整する中間層と、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも形成する工程を含み、前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することを特徴とする。
【0011】
本適用例に係る有機EL素子の製造方法は、有機EL素子を加熱処理する工程で、有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理を行う。したがって、この方法によれば、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上する有機EL装置の製造方法を提供できる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機EL素子にレーザー光を照射することにより前記加熱処理を行ってもよい。
【0013】
この方法によれば、加熱処理する工程で有機EL素子にレーザー光を照射することにより加熱処理を行う。このため、高温に保たれた恒温恒湿槽内に有機EL装置を放置する方法に比べて、レーザー光を照射することで、加熱処理を行うべき部分を集中的に加熱することができる。このため、有機機能層を、より短時間で所定の温度に上昇させるとともに、より短時間で室温に戻すことができる。また、この加熱処理により中間層や電子輸送層の拡散層に拡散領域を形成できるので、拡散領域の形成のための加熱処理を別に行わなくてもよい。これにより、有機機能層を構成する材料が高温に晒される時間がより短くなるので、温度による有機EL素子の特性の劣化を抑えることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の有機EL装置、または、上記に記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造された有機EL装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電子機器は、長寿命で高発光効率の有機EL装置を備えている。このため、表示部の信頼性が高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の構成を示す概略正面図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置の構造を示す要部断面図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL素子の構成を示す模式断面図。
【図5】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態に係る加熱処理方法を説明する図。
【図7】電子機器としての携帯電話機を示す図。
【図8】実施例1の加熱処理温度の違いによる発光輝度の時間変化を比較したグラフ。
【図9】従来の構成の有機EL装置における発光強度を示すグラフ。
【図10】実施例2の結果を示す図。
【図11】実施例2の加熱温度および拡散層の厚さと発光寿命との関係を示すグラフ。
【図12】実施例3の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を一部省略してある。
【0018】
(第1の実施形態)
<有機EL装置の概要>
まず、本実施形態の有機EL装置の概要について、図1、図2、および図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る有機EL装置の構成を示す概略正面図である。図2は、第1の実施形態に係る有機EL装置の電気的構成を示すブロック図である。図3は、第1の実施形態に係る有機EL装置の構造を示す要部断面図である。詳しくは、図3は図1のA−A’線に沿った部分断面図である。
【0019】
図1に示すように、有機EL装置1は、基板としての素子基板20上に、略矩形の平面形状を有する発光領域4を備えている。発光領域4は、有機EL装置1において、実質的に発光に寄与する領域である。発光領域4には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの光を射出する画素2が配列されている。画素2は、例えば略矩形の平面形状を有している。なお、画素2は、実際には非常に微細なものであり、図示の都合上拡大して示している。
【0020】
画素2は、有機EL装置1の表示の最小単位であり、赤色光を射出する画素2Rと、緑色光を射出する画素2Gと、青色光を射出する画素2Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単に画素2とも呼ぶ)。有機EL装置1では、画素2R,2G,2Bから一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素2R,2G,2Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0021】
有機EL装置1は、素子基板20上に設けられ画素2毎に配置された有機EL素子8(図2参照)を有している。また、有機EL装置1は、素子基板20に平面的に重なるように配置された封止基板40を備えている。封止基板40は、素子基板20よりも一回り小さい。封止基板40は、素子基板20に接合されており、素子基板20上に設けられた複数の有機EL素子8を封止している。
【0022】
素子基板20の領域のうち封止基板40から額縁状に張り出した部分には、2つの走査線駆動回路15と1つのデータ線駆動回路14が設けられている。素子基板20の端子部20aには、走査線駆動回路15およびデータ線駆動回路14と外部駆動回路とを接続するためのフレキシブルな中継基板5が実装されている。
【0023】
図2に示すように、有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機EL装置である。有機EL装置1は、素子基板20上に設けられた走査線16と、走査線16に対して交差する方向に延びる信号線17と、信号線17に並列に延びる電源線18とを備えている。
【0024】
有機EL装置1において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域に画素2が配置されている。画素2は、走査線16の延在方向と信号線17の延在方向とに沿ってマトリックス状に配列されている。画素2には、スイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13と、陽極24と、陰極26と、有機機能層30と、を備えている。有機機能層30は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含んでいる。陽極24と、有機機能層30と、陰極26とによって、有機EL素子8が構成される。
【0025】
信号線17には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0026】
有機EL装置1では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、信号線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したとき、電源線18から陽極24に駆動電流が流れ、さらに有機機能層30を通じて陰極26に電流が流れる。
【0027】
有機機能層30の発光層は、陽極24と陰極26との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。本実施形態では、有機EL素子8は、有機機能層30の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各発光層が発光することにより、白色光を発する。
【0028】
図3に示すように、有機EL装置1は、素子基板20上に、有機EL素子8(陽極24、有機機能層30、および陰極26)と、隔壁25と、ガスバリア層28と、カラーフィルター42と、封止基板40と、を備えている。素子基板20は、基板10と、基板10上に形成された駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層23と、を備えている。有機EL装置1は、有機EL素子8から発した光が封止基板40側に射出されるトップエミッション型である。有機EL素子8の構成の詳細については後述する。
【0029】
基板10は、有機EL装置1がトップエミッション型であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれを用いてもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えばシリコン酸化物(SiO2)等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0030】
駆動用TFT12は、基板10上に、画素2に対応して設けられている。駆動用TFT12は、半導体膜12aと、ゲート絶縁層21と、ゲート電極12gと、ドレイン電極12dと、ソース電極12sとを備えている。半導体膜12aには、ソース領域と、ドレイン領域と、チャネル領域とが形成されている。半導体膜12aは、ゲート絶縁層21に覆われている。ゲート電極12gは、ゲート絶縁層21を間に挟んで平面視で半導体膜12aのチャネル領域に重なるように位置している。
【0031】
層間絶縁層22は、ゲート電極12gとゲート絶縁層21とを覆っている。ドレイン電極12dは、層間絶縁層22に設けられたコンタクトホールを介して、半導体膜12aのドレイン領域に導電接続されている。ソース電極12sは、同様にコンタクトホールを介して、半導体膜12aのソース領域に導電接続されている。なお、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆って、例えばシリコン窒化物(SiN)等からなる保護層が設けられていてもよい。
【0032】
平坦化層23は、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆うように設けられている。平坦化層23は、ドレイン電極12dおよびソース電極12sやその他の配線部による凹凸を反映しないほぼ平坦な表面を有している。平坦化層23は、例えばアクリル樹脂等からなる。
【0033】
陽極24は、平坦化層23上に画素2毎に設けられている。なお、反射性をより高めるために、例えば反射層上に無機絶縁層等を間に介して陽極24が積層された構成であってもよい。陽極24は、平坦化層23に設けられたコンタクトホールを介して駆動用TFT12に導電接続されている。
【0034】
隔壁25は、平坦化層23上に設けられている。隔壁25は開口部25aを有しており、画素2の領域を区画している。隔壁25は、開口部25aの周囲に沿って陽極24の周縁部に所定幅で乗り上げるように形成されている。隔壁25の厚さは、例えば2μm程度である。なお、平坦化層23と隔壁25との間に、開口部25aよりも一回り小さい開口部を有する無機絶縁層が設けられていてもよい。
【0035】
有機機能層30は、陽極24と隔壁25とを覆うように形成されている。陰極26は、有機機能層30を覆うように設けられている。
【0036】
ガスバリア層28は、陰極26(有機EL素子8)を覆うように設けられている。ガスバリア層28は、有機EL素子8を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。ガスバリア層28は、光透過性、密着性、耐水性、ガスバリア性等を考慮して、例えば、シリコン酸化物やシリコン酸窒化物等のシリコン化合物で構成される。ガスバリア層28の厚さは100nm〜400nm程度であることが好ましい。
【0037】
なお、単層のガスバリア層28の代わりに、電極保護層と有機緩衝層とガスバリア層とを備えた多層薄膜保護層を設ける構成としてもよい。その場合、電極保護層およびガスバリア層は、例えば、シリコン酸化物やシリコン酸窒化物等のシリコン化合物で構成され、有機緩衝層はエポキシ樹脂等の有機材料で構成される。このような構成にすれば、隔壁25等による凹凸部分を緩和するとともに、素子基板20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和することができる。また、有機EL素子8をより気密的に封止できるので、有機EL装置1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0038】
封止基板40は、ガスバリア層28に覆われた有機EL素子8に対向配置されている。封止基板40は、透光性を有する材料からなり、例えばガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等からなる。封止基板40は、封止基板40の外周に沿って設けられたシール材(図示しない)により素子基板20側に接合されている。封止基板40と素子基板20側(ガスバリア層28)との間の空間は、例えば、透光性を有するウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなる接着剤41により充填されている。
【0039】
カラーフィルター42は、封止基板40の有機EL素子8側に設けられている。カラーフィルター42は、赤色のカラーフィルター42Rと、緑色のカラーフィルター42Gと、青色のカラーフィルター42Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター42とも呼ぶ)。カラーフィルター42R,42G,42Bは、画素2R,2G,2Bに対応して配置され、有機EL素子8に平面的に重なるように設けられている。
【0040】
有機EL素子8により発せられる白色光が、カラーフィルター42R,42G,42Bを透過することで、画素2R,2G,2BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。隣り合うカラーフィルター42R,42G,42B同士の間には、カラーフィルター42R,42G,42Bを区画する遮光層43が設けられている。なお、カラーフィルター42R,42G,42Bおよび遮光層43の有機EL素子8側の表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層が設けられていてもよい。
【0041】
有機EL装置1では、有機機能層30から陰極26側に発せられた光は、封止基板40側に射出される。また、有機機能層30から陽極24側に発せられた光は、例えば陽極24により反射されて、封止基板40側に射出される。
【0042】
なお、有機EL装置1は、アクティブマトリックス型の構成に限定されず、パッシブ(単純)マトリックス型の構成であってもよい。また、有機EL装置1は、トップエミッション型に限定されず、ボトムエミッション型であってもよい。
【0043】
<有機EL素子の構成>
次に、有機EL素子の構成について詳細を説明する。図4は、第1の実施形態に係る有機EL素子の構成を示す模式断面図である。図4に示すように、第1の実施形態に係る有機EL素子8は、陽極24と有機機能層30と陰極26とが積層された構成を有している。有機機能層30は、正孔注入層31と、正孔輸送層32と、赤色発光層33と、中間層34と、青色発光層35と、緑色発光層36と、電子輸送層37と、電子注入層38と、がこの順に積層された構成を有している。
【0044】
有機EL素子8では、陽極24および陰極26に電圧が印加されることにより、赤色発光層33、青色発光層35、および緑色発光層36の各発光層に対し、陰極26側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極24側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光や燐光)を放出(発光)する。これにより、有機EL素子8は、白色光を発する。
【0045】
(陽極)
陽極24は、正孔注入層31を介して正孔輸送層32に正孔を注入する電極である。陽極24の材料としては、透光性を有するとともに、仕事関数が大きく導電性に優れる材料が好ましい。陽極24の材料としては、例えば、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。陽極24の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜200nm程度であることが好ましく、50nm〜150nm程度であることがより好ましい。
【0046】
(陰極)
陰極26は、電子注入層38を介して電子輸送層37に電子を注入する電極である。陰極26の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極26の材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
陰極26の材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、より具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金が好ましい。このような合金を用いることにより、陰極26の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。陰極26の平均厚さは、特に限定されないが、100nm〜10000nm程度であることが好ましく、200nm〜500nm程度であることがより好ましい。
【0048】
(正孔注入層)
正孔注入層31は、陽極24からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。正孔注入層31の材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、下記化1に示すN,N'−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N,N’−ジフェニル−ビフェニル−4−4’−ジアミン等があげられる。
【0049】
【化1】
【0050】
正孔注入層31の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜150nm程度であることが好ましく、10nm〜100nm程度であることがより好ましい。なお、正孔注入層31を省略してもよい。
【0051】
(正孔輸送層)
正孔輸送層32は、陽極24から正孔注入層31を介して注入された正孔を赤色発光層33まで輸送する機能を有している。正孔輸送層32の材料としては、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができ、例えば、下記化2に示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等のテトラアリールベンジジン誘導体、テトラアリールジアミノフルオレン化合物またはその誘導体(アミン系化合物)等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
【化2】
【0053】
正孔輸送層32の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜150nm程度であることが好ましく、10nm〜100nm程度であることがより好ましい。なお、正孔輸送層32は、省略することができる。
【0054】
(赤色発光層)
赤色発光層33は、赤色発光材料を含んで構成されている。赤色のように比較的長い波長の光を用いることにより、最低非占有分子軌道(HOMO)と最高占有分子軌道(LUMO)とのエネルギー準位差(バンドギャップ)が比較的小さい発光材料を用いることができる。このようにバンドギャップが比較的小さい発光材料は、正孔や電子を捕獲しやすく、発光し易い。したがって、陽極24側に赤色発光層33を設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層35や緑色発光層36を陰極26側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0055】
また、赤色発光材料のようにバンドギャップの比較的小さな材料であると、赤色発光層33中の電子、正孔の密度が少ない場合であっても、好適に発光することができる。赤色発光材料としては、特に限定されないが、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化3に示すテトラアリールジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等があげられる。
【0057】
【化3】
【0058】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものもあげられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)等があげられる。
【0059】
また、赤色発光層33の材料としては、前述した赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料(第1のホスト材料)を用いてもよい。第1のホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。したがって、例えば、第1のホスト材料にゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてドープして用いることができる。
【0060】
第1のホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、下記化4に示すようなアントラセン誘導体、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)等のアントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、下記化5に示されるルブレン誘導体等のルブレンおよびその誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、第1のホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
【化4】
【0063】
【化5】
【0064】
赤色発光層33に第1のホスト材料が含まる場合、赤色発光層33中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜10wt%であるのが好ましく、0.1wt%〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、青色発光層35や緑色発光層36の発光量とのバランスをとりつつ赤色発光層33を発光させることができる。
【0065】
また、赤色発光層33の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜30nm程度であることが好ましく、10nm〜20nm程度であることがより好ましい。これにより、有機EL素子8の各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0066】
(中間層)
中間層34は、赤色発光層33と青色発光層35との層間にこれらに接するように設けられている。そして、中間層34は、青色発光層35から赤色発光層33へ輸送される電子の量を調節する機能を有する。また、中間層34は、赤色発光層33から青色発光層35へ輸送される正孔の量を調節する機能を有する。さらに、中間層34は、赤色発光層33と青色発光層35との間で励起子のエネルギーが移動するのを阻止する機能を有する。この機能により、赤色発光層33および青色発光層35をそれぞれ効率よく発光させることができる。この結果、各発光層をバランスよく発光させることができ、有機EL素子8は所望の色、例えば白色で発光することができるものとなるとともに、有機EL素子8の発光効率および発光寿命の向上を図ることができる。
【0067】
中間層34の平均厚さは、例えば1nm〜60nm程度である。このように比較的厚い中間層34を設けることにより、陽極24と陰極26との間に微弱な電圧が印加された際に、有機EL素子8に電流が流れるのを防止する。このため、有機EL素子8の駆動が解除された際に、陽極24および陰極26の間に微弱な電圧が発生して有機EL素子8に電流が流れることにより生じる黒浮き現象が防止される。また、平均厚さが、前記上限値以下であることにより、中間層34で輸送される電子および正孔の量が減少し、発光効率が低下することが防止される。
【0068】
上記のような中間層34を設けることにより、有機EL素子8は、優れた発光効率および発光バランスを維持しつつ、黒浮き現象が抑えられたものとなる。また、中間層34は上記のように比較的厚いものであるため、耐久性に優れている。さらに、発光バランスに優れるため、特定の発光層に正孔および電子が集中して当該発光層が劣化するのを防止することができる。以上から、有機EL素子8全体としての発光寿命を長いものとすることができる。
【0069】
これに対し、中間層34の平均厚さが前記下限値未満だと、陽極24と陰極26との間に微弱な電圧が印加された際に、有機EL素子8に電流が流れ易くなり、黒浮き現象を抑制することができない。一方、中間層34の平均厚さが前記上限値を超えると、有機EL素子8全体としての発光効率が急激に低下してしまう。中間層34の平均厚さは、上述したような範囲内であればよいが、より顕著な効果を得るためには、1nm〜60nmであることが好ましく、3nm〜20nmであることがより好ましい。
【0070】
中間層34の材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、正孔を輸送する機能を有する材料(正孔輸送材料)、電子を輸送する機能を有する材料(電子輸送材料)等を用いることができ、正孔輸送材料を用いることが好ましい。一般に、電子と比較して正孔は、移動度が遅いが、中間層34が正孔輸送材料を含むことにより、正孔は円滑に中間層34から青色発光層35に受け渡され、各発光層がバランスよく発光し易いものとなり、有機EL素子8は、目的とする色、例えば白色で発光することができるとともに発光効率に優れたものとなる。
【0071】
中間層34に用いられる正孔輸送材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した正孔輸送材料のうちのアミン骨格を有するアミン系材料を用いることができるが、ベンジジン系アミン誘導体を用いるのが好ましい。特に、ベンジジン系アミン誘導体の中でも、中間層34に用いられるアミン系材料としては、2つ以上の芳香環基を導入したものが好ましく、テトラアリールベンジジン誘導体がより好ましい。このようなベンジジン系アミン誘導体としては、例えば、前記化2に示されるN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)や、N,N,N’,N’−テトラナフチル−ベンジジン(TNB)等があげられる。
【0072】
このようなアミン系材料は、一般に、正孔輸送性に優れている。したがって、赤色発光層33から中間層34を介して青色発光層35へ正孔を円滑に受け渡すことができる。また、各発光層の中で最も発光しにくい青色発光層35に正孔が十分に供給されるため、陽極24と陰極26との間に印加される電圧が変化した場合であっても各発光層の発光バランスが変化しにくいものとなる。
【0073】
また、中間層34の材料として、正孔輸送材料に加え、電子輸送材料を同時に含むことが好ましい。これにより、中間層34は、電子輸送性および正孔輸送性を有する。すなわち、中間層34は、バイポーラ性を有する。中間層34がバイポーラ性を有すると、赤色発光層33から中間層34を介して青色発光層35へ正孔を円滑に受け渡すとともに、青色発光層35から中間層34を介して赤色発光層33へ電子を円滑に受け渡すことができる。その結果、赤色発光層33および青色発光層35にそれぞれ電子および正孔を効率的に注入して発光させることができる。
【0074】
また、バイポーラ性を有することで、中間層34はキャリア(電子、正孔)に対する耐性に優れている。このため、中間層34中で電子と正孔が再結合して励起子が生成しても、中間層34の劣化を防止または抑制することができる。これにより、中間層34の励起子による劣化を防止または抑制し、その結果、有機EL素子8の耐久性(発光寿命)を優れたものとすることができる。
【0075】
中間層34に用いることができる電子輸送材料としては、中間層34が前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、アセン系材料を用いることができる。アセン系材料は、電子輸送性に優れるため、青色発光層35から中間層34を介して赤色発光層33へ電子を円滑に受け渡すことができる。また、アセン系材料は励起子に対する耐性に優れているため、中間層34の励起子による劣化を防止または抑制し、その結果、有機EL素子8の耐久性を優れたものとすることができる。
【0076】
このようなアセン系材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等があげられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体を用いるのが好ましく、アントラセン誘導体を用いることがより好ましい。アントラセン誘導体としては、例えば、前記化4に示されるアントラセン誘導体、下記化6に示される2−t−ブチル−9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(TBADN)等があげられる。
【0077】
【化6】
【0078】
中間層34に正孔輸送材料と電子輸送材料とが同時に含まれる場合、中間層34中における正孔輸送材料の含有量は、特に限定されないが、5wt%〜95wt%であることが好ましく、7wt%〜90wt%であるのがより好ましく、10wt%〜85wt%であることがさらに好ましい。また、中間層34中におけるアセン系材料の含有量は、特に限定されないが、10wt%〜70wt%であることが好ましく、15wt%〜60wt%であることがより好ましく、20wt%〜55wt%であることがさらに好ましい。
【0079】
中間層34における正孔輸送材料の含有量をCH[wt%]、電子輸送材料の含有量をCE[wt%]としたとき、0.5≦CH/CE≦20の関係を満足することが好ましく、1.0≦CH/CE≦10の関係を満足することがより好ましい。これにより、より確実に、キャリアや励起子に対する中間層34の耐性を優れたものとしつつ、赤色発光層33および青色発光層35にそれぞれ電子および正孔を注入して発光させることができ、各発光層の発光バランスをより優れたものとすることができる。また、有機EL素子8に印加される電圧が変化した場合であっても各発光層の発光バランスがより変化しにくいものとなる。
【0080】
(青色発光層)
青色発光層35は、青色発光材料を含んで構成されている。青色のように比較的短い波長の光を用いることにより、バンドギャップが比較的大きい発光材料を用いることができる。このようにバンドギャップが比較的大きい発光材料は、バンドギャップが比較的小さい発光材料と比較して正孔や電子を捕獲しにくい。しかしながら、青色発光層35がこのような位置に配置されることにより、正孔および電子が十分に青色発光層35に供給され、青色発光層35を十分に発光させることができる。
【0081】
また、中間層34と青色発光層35との界面付近において電子と正孔とが再結合して生成した励起子のエネルギーが効率よく青色発光層35の発光に用いられる。このため、各発光層は、バランスよく発光することができる。また、有機EL素子8に印加される電圧が微弱な場合や電圧が変化した場合であっても、各発光層の発光バランスが変化しにくいものとなる。青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記化7で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0083】
【化7】
【0084】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)があげられる。
【0085】
また、青色発光層35の材料としては、前述したような青色発光材料に加えて、この青色発光材料をゲスト材料とするホスト材料(第2のホスト材料)を用いてもよい。青色発光層35に用いることのできる第2のホスト材料としては、前述した赤色発光層33の第1のホスト材料と同様のホスト材料を用いることができる。
【0086】
青色発光層35が第2のホスト材料を含む場合、青色発光層35中における青色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜20wt%であることが好ましく、1wt%〜15wt%であることがより好ましい。青色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層33や後述する緑色発光層36の発光量とのバランスをとりつつ青色発光層35を発光させることができる。
【0087】
また、青色発光層35の平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜30nm程度であることが好ましく、12nm〜20nm程度であることがより好ましい。
【0088】
(緑色発光層)
緑色発光層36は、緑色発光材料を含んで構成されている。緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0089】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化8に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等があげられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0090】
【化8】
【0091】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体があげられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムがあげられる。
【0092】
また、緑色発光層36はホスト材料(第3のホスト材料)を含んでいてもよい。緑色発光層36の第3のホスト材料としては、前述した赤色発光層33の第1のホスト材料と同様のホスト材料を用いることができる。
【0093】
緑色発光層36が第3のホスト材料を含む場合、緑色発光層36中における緑色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜20wt%であることが好ましく、1wt%〜15wt%であることがより好ましい。緑色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層33や青色発光層35の発光量とのバランスをとりつつ緑色発光層36を発光させることができる。また、緑色発光層36の平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜20nm程度であることが好ましく、8nm〜15nm程度であることがより好ましい。
【0094】
(電子輸送層)
電子輸送層37は、陰極26から電子注入層38を介して注入された電子を緑色発光層36に輸送する機能を有するものである。電子輸送層37は、ベース層37aと拡散層37bとの2層で構成される。ベース層37aは緑色発光層36に接する側に配置され、拡散層37bは電子注入層38に接する側に配置されている。
【0095】
ベース層37aは、拡散層37bよりも電子移動度が低い電子輸送材料で構成されることが好ましい。ベース層37aの材料(電子輸送材料)としては、例えば、下記化9に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体等のキノリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
【化9】
【0097】
ベース層37aの平均厚さは、特に限定されないが、0.5nm〜100nm程度であることが好ましく、1nm〜50nm程度であることがより好ましい。
【0098】
拡散層37bは、ベース層37aよりも電子移動度が高い電子輸送材料で構成されることが好ましい。拡散層37bの材料(電子輸送材料)としては、例えば、下記化10に示すオキサジアゾール誘導体(tBu−PBD)、下記化11に示すシロール誘導体(ET4)等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。拡散層37bには、例えば、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散されている。
【0099】
【化10】
【0100】
【化11】
【0101】
拡散層37bの平均厚さは、特に限定されないが、5nm〜70nm程度であることが好ましく、7nm〜60nm程度であることがより好ましい。
【0102】
電子輸送層37が電子注入層38に接する側に拡散層37bを有していることで、電子注入層38に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属が、拡散層37bよりも電子移動度が低い電子輸送材料で構成されるベース層37aには拡散しにくくなる。このため、これらのアルカリ金属やアルカリ土類金属の、緑色発光層36への拡散が抑えられる。これにより、緑色発光層36を効率よく発光させることができるので、有機EL素子8の発光効率および発光寿命の向上を図ることができる。
【0103】
(電子注入層)
電子注入層38は、陰極26からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。この電子注入層38の材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料があげられる。
【0104】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層38を構成することにより、有機EL素子8は、高い輝度が得られるものとなる。
【0105】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2Se、NaO等があげられる。アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等があげられる。アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等があげられる。アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2、BeF2等があげられる。
【0106】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等があげられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
電子注入層38の平均厚さは、特に限定されないが、0.1nm〜1000nm程度であることが好ましく、0.2nm〜100nm程度であることがより好ましく、0.2nm〜50nm程度であることがさらに好ましい。
【0108】
なお、上述の有機EL素子8は、有機機能層30に3層の発光層を有していたが、発光層が2層または4層以上であってもよい。発光層の発光色としては、上述のR、G、Bに限定されない。また、中間層34は、発光層同士の少なくとも1つの層間に設けられていればよく、2層以上の中間層を有していてもよい。
【0109】
<有機EL装置の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法について説明する。図5は、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0110】
図5に示すように、有機EL装置の製造方法は、基板準備工程S10と、有機EL素子形成工程S20と、封止工程S40と、加熱処理工程S50とを有している。
【0111】
基板準備工程S10では、基板10上に駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層23とを公知の方法で形成し、素子基板20を準備する。
【0112】
次に、有機EL素子形成工程S20を行う。有機EL素子形成工程S20は、陽極形成工程S21と、正孔注入層形成工程S22と、正孔輸送層形成工程S23と、赤色発光層形成工程S24と、中間層形成工程S25と、青色発光層形成工程S26と、緑色発光層形成工程S27と、電子輸送層形成工程S28と、電子注入層形成工程S29と、陰極形成工程S30と、を含んでいる。
【0113】
陽極形成工程S21では、素子基板20上に陽極24を形成する。陽極24は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着(CVD)法、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0114】
続いて、正孔注入層形成工程S22では、陽極24上に正孔注入層31を形成する。正孔注入層31は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0115】
また、正孔注入層31は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極24上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層31を比較的容易に形成することができる。正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0116】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。また、本工程に先立って、陽極24の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極24の上面に親液性を付与すること、陽極24の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極24の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
【0117】
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100W〜800W程度、酸素ガス流量50mL/min〜100mL/min程度、被処理部材(陽極24)の搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec程度、素子基板20の温度70℃〜90℃程度とするのが好ましい。
【0118】
続いて、正孔輸送層形成工程S23では、正孔注入層31上に正孔輸送層32を形成する。正孔輸送層32は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層31上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0119】
続いて、赤色発光層形成工程S24では、正孔輸送層32上に赤色発光層33を形成する。赤色発光層33は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0120】
続いて、中間層形成工程S25では、赤色発光層33上に中間層34を形成する。中間層34は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0121】
続いて、青色発光層形成工程S26では、中間層34上に青色発光層35を形成する。青色発光層35は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0122】
続いて、緑色発光層形成工程S27では、青色発光層35上に緑色発光層36を形成する。緑色発光層36は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0123】
続いて、電子輸送層形成工程S28では、緑色発光層36上にベース層37aと拡散層37bとを積層して電子輸送層37を形成する。電子輸送層37は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。また、電子輸送層37は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層36上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0124】
続いて、電子注入層形成工程S29では、電子輸送層37上に電子注入層38を形成する。電子注入層38の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層38は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
【0125】
続いて、陰極形成工程S30では、電子注入層38上に陰極26を形成する。陰極26は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。上記の有機EL素子形成工程S20を経て、素子基板20上に形成された有機EL素子8が得られる。
【0126】
次に、封止工程S40では、まず、有機EL素子8(陰極26)を覆うようにガスバリア層28を形成する。ガスバリア層28は、例えば、イオンプレーティング法、CVD法等を用いて形成することができる。続いて、封止基板40を素子基板20に接合するとともに、封止基板40とガスバリア層28との間の空間を接着剤41により充填する。封止基板40は、カラーフィルター42が設けられた面が有機EL素子8に対向するように配置される。これにより、有機EL装置1が得られる。
【0127】
次に、加熱処理工程S50では、有機EL装置1(有機EL素子8)の加熱処理を行う。加熱処理の温度は、有機EL素子8の有機機能層30を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度(Tg)のうち最も低い温度よりも高い温度とする。本実施形態の有機EL素子8では、有機機能層30を構成する材料のうち最も低いTgは、例えば80℃程度である。これに対して、加熱処理の温度は、例えば、100℃〜120℃程度が好ましく、120℃程度がより好ましい。
【0128】
加熱処理工程S50における加熱方法は、例えば、所定の温度に保たれた恒温恒湿槽内に有機EL装置1を放置する。加熱時間は、有機機能層30の温度が上述の温度に到達するまでの時間とすることが好ましい。加熱処理工程S50においては、加熱処理により有機機能層30の温度が上述の温度に到達すればよく、上述の温度に到達した後にその温度で長時間維持することは有機機能層30の特性を劣化させるおそれがあるため好ましくない。
【0129】
この加熱処理工程S50を行うことで、後述する実施例に示すように、有機EL素子8の発光寿命および発光効率が向上する。これにより、従来よりも有機EL素子8の発光寿命および発光効率が向上した有機EL装置1を提供できる。
【0130】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、有機EL装置の構成は同じであり、有機EL装置の製造方法は同じ工程を備えているが、加熱処理工程S50における加熱方法が異なっている。より具体的には、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法は、加熱処理工程S50において、レーザー光を照射をすることにより有機EL装置1の加熱処理を行う点が異なっている。
【0131】
第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法の加熱処理工程S50における、加熱処理方法の一例を説明する。図6は、第2の実施形態に係る加熱処理方法を説明する図である。
【0132】
加熱処理工程S50は、例えば、図6に示すチャンバー100内で行われる。チャンバー100は、例えば、アルミニウム等の金属や合金等から形成されており、内部空間を密閉可能に構成されている。チャンバー100内は、真空ポンプ(図示しない)によって減圧される。チャンバー100には、例えばガラス等からなる光導入用ウインドウ102が設けられている。チャンバー100内には、加熱処理を行う有機EL装置1を載置するステージ110が配置されている。ステージ110は、有機EL装置1を載置した状態で、図6の矢印の方向に移動可能に構成されている。
【0133】
チャンバー100の光導入用ウインドウ102の外側には、レーザー光源120が配置されている。レーザー光源120は、レーザー光Lを発生する。レーザー光源120により発生されたレーザー光Lは、光導入用ウインドウ102を介してステージ110に載置された有機EL装置1の表面に照射される。このレーザー光Lにより加熱処理が行われる。
【0134】
なお、ステージ110を移動させることで、有機EL装置1に対するレーザー光Lの面走査を行うことができる。光源120としては、特に限定はなく、被照射体である有機EL装置1上に形成された薄膜の種類に応じて、公知のレーザー光源から適宜選択することができる。
【0135】
有機EL装置1にレーザー光を照射して加熱処理を行うことで、第1の実施形態の恒温恒湿槽内に有機EL装置1を放置する方法に比べて、加熱処理を行うべき部分を集中的に加熱することができる。このため、有機機能層30を、より短時間で所定の温度に上昇させるとともに、より短時間で室温に戻すことができる。また、この加熱処理により中間層34や電子輸送層37の拡散層37bに拡散領域を形成できるので、拡散領域の形成のための加熱処理を別に行わなくてもよい。これにより、有機機能層30を構成する材料が高温に晒される時間がより短くなるので、温度による有機EL素子8の特性の劣化を抑えることができる。
【0136】
したがって、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法によれば、有機EL素子8の発光寿命および発光効率がさらに向上した有機EL装置1を提供できる。なお、第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法では、加熱処理工程S50を封止工程S40の前に行うようにしてもよい。
【0137】
<電子機器>
上述した有機EL装置1は、例えば、図7に示すように、電子機器としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部502に有機EL装置1を備えている。この構成により、表示部502を有する携帯電話機500は、より長寿命で明るい表示を行うことができる。
【0138】
また、電子機器は、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置の車載モニター等であってもよい。
【0139】
さらに、本発明の有機EL装置1は、表示デバイス以外のデバイス、例えば、プリンターヘッドの露光ヘッドの光源や照明装置として用いることもできる。
【実施例】
【0140】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0141】
(実施例1)
<1.有機EL素子の加熱処理温度と発光寿命との関係>
まず、実施例1として、第1の実施形態に係る有機EL装置1の構成を有する有機EL装置を、第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法により製造した。実施例1の有機EL装置における有機機能層の具体的な構成は以下の通りである。
【0142】
正孔注入層31は、m−MTDATAを材料として30nmの厚さで形成した。正孔輸送層32は、α−NPDを材料として20nmの厚さで形成した。赤色発光層33は、ホスト材料をルブレンとしドーパントをペリレン誘導体として5nmの厚さで形成した。中間層34は、α−NPDを材料として5nmの厚さで形成した。青色発光層35は、ホスト材料をADN(出光興産株式会社製)としドーパントをBD142(出光興産株式会社製)として12nmの厚さで形成した。緑色発光層36は、ホスト材料をAlq3としドーパントをキナクリドンとして8nmの厚さで形成した。電子輸送層37は、ベース層37aをAlq3を材料として20nmの厚さで形成し、拡散層37bをキナクリドンを材料として20nmの厚さで形成した。電子注入層38は、LiFを材料として1nmの厚さで形成した。
【0143】
続いて、上記実施例1の有機EL装置を異なる温度で加熱処理する実験を行った。図8は、実施例1の加熱処理温度の違いによる発光輝度の時間変化を比較したグラフである。詳しくは、実施例1の有機EL装置を、第1の実施形態に係る加熱処理工程S50において、95℃、105℃、110℃、115℃、120℃の異なる温度で加熱処理を行った結果である。なお、加熱時間は、95℃では14時間、それ以外の温度では4時間とした。図8において、横軸は有機EL装置を400mA/cm2で駆動したときときの発光時間であり、縦軸は初期時点の発光輝度を1としたときの発光輝度の比である。
【0144】
図8に示すように、実施例1の有機EL装置では、95℃で加熱した場合を基準とすると、加熱処理温度が高いほど同じ発光輝度で発光する時間が長くなっている。この結果より、実施例1の有機EL装置1では、少なくとも120℃までの温度であれば、加熱処理温度が高いほど発光寿命が長くなっていることがわかる。
【0145】
図9は、従来の構成の有機EL装置における発光強度を示すグラフである。詳しくは、従来の構成の有機EL装置として、電子輸送層37における拡散層37bと、中間層34とを有していない以外は実施例1の有機EL装置と同じ構成を有する有機EL装置を用いて、初期時点と、115℃、120℃の異なる温度で加熱処理を行った時点とにおける発光強度を比較した結果である。なお、加熱時間は、115℃、120℃とも4時間とした。図9において、横軸は発光波長であり、縦軸は発光強度である。
【0146】
図9に示すように、初期時点に対して、加熱温度が高い方が有機EL装置の発光強度が低下していること、つまり発光寿命が低下していることがわかる。115℃、120℃の温度は、有機機能層を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度であり、特許文献1における「加熱処理の際の温度は有機EL素子の有機材料のガラス転移温度以下が好ましい」との記載に対応する結果となっている。
【0147】
これに対して、図8に示す本実施例の加熱処理実験では、有機機能層を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱した方が発光寿命が長い、という従来の考え方とは相反する結果が得られた。このような従来の考え方とは相反する結果が得られたのは、拡散層37bを含む電子輸送層37と中間層とを有する有機機能層の構成が関与しているためと考えられる。そこで、有機機能層における電子輸送層の拡散層と中間層との厚さ等の構成を異ならせてさらに実験を行った。
【0148】
(実施例2)
<2.電子輸送層における拡散層の厚さと発光寿命および発光効率との関係>
次に、実施例2として、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを異ならせて有機EL装置を製造した。実施例2の有機EL装置における有機機能層の具体的な構成は以下の通りである。
【0149】
正孔注入層31は、HI406(出光興産株式会社製)を材料として30nmの厚さで形成した。正孔輸送層32は、α−NPDを材料として20nmの厚さで形成した。赤色発光層33は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをRD001(出光興産株式会社製)として5nmの厚さで形成した。中間層34は、α−NPDを材料として5nmの厚さで形成した。青色発光層35は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをBD102(出光興産株式会社製)として12nmの厚さで形成した。緑色発光層36は、ホスト材料をBH215(出光興産株式会社製)としドーパントをGD206(出光興産株式会社製)として8nmの厚さで形成した。電子輸送層37のベース層37aはAlq3を材料として10nmの厚さで形成し、拡散層37bはtBu−PBDを材料としてその厚さを異ならせて形成した。電子注入層38は、LiFを材料として1nmの厚さで形成した。
【0150】
さらに、実施例2では、有機EL装置の加熱処理を行う方法として、第2の実施形態に係る加熱処理工程S50を適用した。より具体的には、レーザー光の照射により加熱処理を行い、加熱処理温度は120℃とした。また、比較例1として、実施例2と同じ構成の有機EL装置において電子輸送層37の拡散層37bを5nmの厚さで形成したものを用いて、実施例2と同様にレーザー光の照射により120℃の温度で加熱処理を行った。
【0151】
(実施例2−1)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを7nmとした。
【0152】
(実施例2−2)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを10nmとした。
【0153】
(実施例2−3)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを30nmとした。
【0154】
(実施例2−4)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを50nmとした。
【0155】
(実施例2−5)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを60nmとした。
【0156】
(実施例2−6)
上記実施例2の構成において、電子輸送層37における拡散層37bの厚さを70nmとした。
【0157】
次に、実施例2の有機EL装置において、拡散層37bの厚さの違いによる電流効率およびLT80を比較した。図10は、実施例2の結果を示す図である。図10において、電圧は、比較例1の有機EL装置における電圧を1としたときの実施例2の電圧の比を示す。電流効率は、比較例1における電流効率(cd/A)を1としたときの実施例2の電流効率の比を示す。LT80は、比較例1におけるLT80を1としたときの実施例2のLT80の比を示す。ここで、LT80とは、有機EL装置を400mA/cm2で駆動したときに、初期時点の発光輝度を100%として発光輝度が80%になるまでの時間(hour)のことである。
【0158】
図10に示すように、実施例2−1、実施例2−2、および実施例2−3では、比較例1に対して、電圧は低く、電流効率およびLT80は高くなっている。次に、実施例2−4および実施例2−5では、比較例1に対して、電圧はやや高くなり、電流効率およびLT80は高くなっている。したがって、実施例2−1〜実施例2−5では、発光輝度と発光寿命とが比較例1よりも向上している。
【0159】
一方、実施例2−6では、比較例1に対して、電圧がより高くなっている。そして、LT80は比較例1よりも高くなるものの、実施例2−1〜実施例2−5に比べて低くなっている。また、電流効率は低下しており、したがって、実施例2−6では発光輝度が比較例1よりも低下している。
【0160】
これらの結果より、電子輸送層37における拡散層37bの厚さが7nm〜60nmの範囲にあれば、有機EL装置の発光輝度と発光寿命とが向上すると考えられる。加熱処理を行うと、その熱により陰極部位での拡散が相互に起こり、電子輸送層37が拡散層37bを含む2層構造でない場合、電子注入層38に含まれる例えばLi等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属が、電子輸送層37を超えて発光層界面まで拡散する。このことにより、有機EL装置の発光効率や発光寿命の低下が起こると考えられる。これに対して、電子輸送層37を拡散層37bを含む2層構造とし、拡散層37bの厚さを初期特性が劣化しない範囲に設定することで、Li等が発光層界面まで拡散することが抑えられ、これにより有機EL装置の発光輝度と発光寿命とが向上すると考えられる。
【0161】
次に、実施例2の拡散層の厚さが異なる構成において、加熱処理の温度を異ならせたときの発光寿命を比較した。図11は、実施例2の加熱温度および拡散層の厚さと発光寿命との関係を示すグラフである。ここでは、比較例1(実施例1)および実施例2の構成の有機EL装置を用いて、レーザー光の照射により、95℃、105℃、120℃、135℃の温度で加熱処理を行った。図10において、横軸は電子輸送層37における拡散層37bの厚さ(nm)であり、縦軸は120℃で加熱処理を行った比較例1のLT80(hour)を1としたときのLT80の比である。図11における折れ線は、実施例1および実施例2の有機EL装置において、拡散層の厚さのそれぞれについて加熱温度が同じ温度のときのLT80(比)をプロットしたものである。
【0162】
図11に示すように、LT80は、電子輸送層37における拡散層37bの厚さに関わらず、加熱処理温度が120℃のときが最も長く、105℃、95℃の順に短くなり、135℃のときが最も短くなっている。この結果からも、中間層34と拡散層37bとを有していれば、有機機能層30を構成する材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することで、発光寿命が向上することがわかる。したがって、このような加熱処理を行うことにより、従来よりも有機EL素子の発光寿命や発光効率が向上した有機EL装置を提供できると考えられる。
【0163】
また、この結果より、95℃から少なくとも120℃までであれば加熱処理温度が高いほど発光寿命が向上するが、135℃まで加熱処理温度が高くなると発光寿命が低下する。したがって、加熱処理温度は120℃程度が好ましいと考えられる。加熱処理温度が135℃まで高くなると、有機機能層30の特性の劣化が起きるものと推察される。
【0164】
次に、図11において、加熱処理温度が同じで電子輸送層37における拡散層37bの厚さを異ならせたときの発光寿命を比較すると、加熱処理温度が105℃および120℃では、拡散層37bの厚さが5nmの場合に比べて、7nm〜60nmの場合に発光寿命が向上している。また、加熱処理温度が95℃および135℃では、拡散層37bの厚さが5nmの場合に比べて、10nm〜60nmの場合に発光寿命が向上している。したがって、図10および図11に示す結果より、拡散層37bの厚さは7nmから60nmが好ましいと考えられる。
【0165】
(実施例3)
<3.中間層の厚さと発光寿命および発光効率との関係>
次に、実施例3として、中間層34の厚さを異ならせて有機EL装置を製造した。実施例3の有機EL装置では、実施例2の有機EL装置に対して、中間層34の厚さを異ならせている点と、電子輸送層37における拡散層37bをET4を材料として30nm、60nm、および70nmの厚さで形成した点が異なるが、その他の構成は同じである。また、実施例3では、比較例1および実施例2と同様に、レーザー光の照射により120℃の温度で加熱処理を行った。
【0166】
(実施例3−1)
中間層34の厚さを3nmとし、拡散層37bの厚さを30nmとした。
【0167】
(実施例3−2)
中間層34の厚さを10nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0168】
(実施例3−3)
中間層34の厚さを15nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0169】
(実施例3−4)
中間層34の厚さを20nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0170】
(実施例3−5)
中間層34の厚さを25nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0171】
(実施例3−6)
中間層34の厚さを30nmとし、それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0172】
(実施例3−7)
中間層34の厚さを15nmとし、拡散層37bの厚さを60nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0173】
(実施例3−8)
中間層34の厚さを15nmとし、拡散層37bの厚さを70nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0174】
また、比較例2として、以下の有機EL装置を製造した。
【0175】
(比較例2−1)
中間層34を有していない構成とし、拡散層37bの厚さを5nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0176】
(比較例2−2)
中間層34を有していない構成とし、拡散層37bの厚さを30nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0177】
(比較例2−3)
中間層34の厚さを1nmとし、拡散層37bの厚さを30nmとした。それ以外の構成は実施例3−1と同じとした。
【0178】
次に、実施例3の有機EL装置において、中間層34の厚さの違いによる電流効率およびLT80を比較した。図12は、実施例3の結果を示す図である。図12において、電圧は、比較例2−1の有機EL装置における電圧を1としたときの実施例3の電圧の比を示す。電流効率は、比較例2−1における電流効率(cd/A)を1としたときの実施例3の電流効率の比を示す。LT80は、比較例2−1におけるLT80を1としたときの実施例3のLT80の比を示す。
【0179】
図12に示すように、実施例3−1、実施例3−2、実施例3−3、および実施例3−4では、比較例2−1に対して、電圧は低く、電流効率およびLT80は高くなっている。また、実施例3−7では、比較例2−1に対して、電圧は高くなるが、電流効率およびLT80は高くなっている。したがって、これらの実施例の有機EL装置では、発光輝度と発光寿命とが比較例2−1の有機EL装置よりも向上している。
【0180】
しかしながら、実施例3−5では、比較例2−1に対して、LT80は同じであるが、電圧は高くなり、電流効率は低下している。また、実施例3−6および実施例3−8では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率およびLT80は低下している。
【0181】
これらの結果より、中間層34の厚さが3nm〜20nmの場合に電流効率および発光寿命が向上する。ただし、中間層34の厚さが15nmであっても電子輸送層37における拡散層37bの厚さが70nmであると、電流効率および発光寿命がともに低下する。
【0182】
また、比較例2−2では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率およびLT80は低下している。比較例2−3では、比較例2−1に対して、電圧は高くなり、電流効率は低下している。したがって、中間層34を有していない場合、あるいは中間層34の厚さが薄い場合は、拡散層37bを好ましい厚さで形成しても電流効率および発光寿命は向上しないと考えられる。
【0183】
したがって、図12に示す結果より、中間層34の厚さは3nmから20nmが好ましいと考えられる。また、図12に示す結果からも、電子輸送層37における拡散層37bの厚さの上限は60nmが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0184】
1…有機EL装置、8…有機EL素子、20…基板としての素子基板、24…陽極、26…陰極、30…有機機能層、33…第1の発光層としての赤色発光層、34…中間層、35…第2の発光層としての青色発光層、36…第3の発光層としての緑色発光層、37…電子輸送層、37b…拡散層、500…電子機器としての携帯電話機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられ陽極と有機機能層と陰極とが順に積層された有機EL素子と、を備え、
前記有機機能層は、前記陽極上に順に配置された、
正孔輸送層と、
第1の色に発光する第1の発光層と、
電子および正孔の流れを調整する中間層と、
前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも含み、
前記有機EL素子は、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
基板上に、陽極と有機機能層と陰極とを順に積層して有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子を加熱処理する工程と、を有し、
前記有機EL素子を形成する工程は、前記有機機能層として、
正孔輸送層と、
第1の色に発光する第1の発光層と、
電子および正孔の流れを調整する中間層と、
前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも形成する工程を含み、
前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機EL素子にレーザー光を照射することにより前記加熱処理を行うことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL装置、または、請求項2または3に記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造された有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられ陽極と有機機能層と陰極とが順に積層された有機EL素子と、を備え、
前記有機機能層は、前記陽極上に順に配置された、
正孔輸送層と、
第1の色に発光する第1の発光層と、
電子および正孔の流れを調整する中間層と、
前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも含み、
前記有機EL素子は、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
基板上に、陽極と有機機能層と陰極とを順に積層して有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子を加熱処理する工程と、を有し、
前記有機EL素子を形成する工程は、前記有機機能層として、
正孔輸送層と、
第1の色に発光する第1の発光層と、
電子および正孔の流れを調整する中間層と、
前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層と、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属が拡散された拡散層を含む電子輸送層と、を少なくとも形成する工程を含み、
前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機機能層を構成するそれぞれの材料のガラス転移温度のうち最も低い温度よりも高い温度で加熱処理することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記有機EL素子を加熱処理する工程では、前記有機EL素子にレーザー光を照射することにより前記加熱処理を行うことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL装置、または、請求項2または3に記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造された有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−65800(P2011−65800A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214150(P2009−214150)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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