説明

有機EL装置の製造方法

【課題】表示不良が抑制され、かつ高精細の有機EL装置の作製を可能にするための有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板の上に有機物化合物層を形成する工程と、前記有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程と、フォトリソグラフィ法を用いて前記レジスト層の一部を除去する工程と、前記レジスト層が除去された領域の前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程と、を有しており、前記中間層が、少なくとも遮光層を含み、前記遮光層が、波長190nm以上360nm以下の光を遮光することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置の構成部材である有機EL素子は、基板上に、下部電極となる第一電極と、少なくとも発光層を有する有機化合物からなる積層構造体(有機化合物層)と、上部電極となる第二電極と、がこの順に積層されている。ここで有機EL素子を構成する発光層は、シャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗り分け方法、フォトリソグラフィ法等を利用することにより所望のパターンで形成される。これらの方法のうちフォトリソグラフィ法を利用する場合は、発光層をフォトレジストを含む溶液から保護するため、レジスト層と発光層との間に中間層が形成される。尚、中間層は、レジスト層のパターニング工程の後に行われるドライエッチングにより、有機発光層と共に加工(部分除去)される。
【0003】
ところでフォトリソグラフィ法を用いる場合、フォトレジストを用いたパターニングを行う際には発光層は紫外線に晒されることになり、ドライエッチングを用いた中間層や発光層の加工を行う際には発光層はプラズマ光に晒される。その際、紫外線やプラズマ光に含まれる短波長の光が、発光層を構成する材料の分解や再結合等の反応を引き起こし、発光層の構造を変化させてしまう等のダメージを与える可能性がある。発光層が紫外光やプラズマ光によってダメージを受けると、有機EL素子の発光効率の低下や耐久性の悪化を招くことになる。
【0004】
このため、紫外光やプラズマ光に対する発光層の保護に関して従来から様々な提案がなされている。例えば、特許文献1では、フォトリソグラフィ法を用いて発光層のパターニングを行う際に、中間層に光吸収材料を含有させてこの光吸収材料に紫外光やプラズマ光を吸収させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4507759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1においては、中間層の構成材料として、具体的には、水溶性高分子が採用されている。しかしながら、この水溶性高分子からなる中間層に添加される光吸収材料である金属酸化物や金属塩類等からなる無機顔料は、O2ガスではエッチングされにくいという性質を有する。従って、光吸収材料として添加される無機顔料は、O2ガスによってエッチングされる水溶性高分子よりもエッチングレートが遅いため、水溶性高分子との一括エッチングが難しくなる。その結果、O2ガスによるドライエッチングを行う際に当該無機顔料が残渣となって残り、第一電極と第二電極との間でショートが発生してしまい、これにより表示不良を起こす場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表示不良が抑制され、かつ高精細の有機EL装置の作製を可能にするための有機EL装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL装置の製造方法は、少なくとも発光層を含む有機化合物層を備えた有機EL素子を複数有する有機EL表示装置の製造方法であって、
基板の上に有機物化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程と、
フォトリソグラフィ法を用いて前記レジスト層の一部を除去する工程と、
前記レジスト層が除去された領域の前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程と、を有しており、
前記中間層が、少なくとも遮光層を含み、
前記遮光層が、波長190nm以上360nm以下の光を遮光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法では、露光やドライエッチング時の紫外光による発光層を含めた有機化合物層へのダメージを抑制し、かつ、光吸収材料の残渣が発生しないパターニングを実現することができる。これにより、表示不良が抑制された高精細の有機EL装置の作製が可能となる。
【0010】
このため本発明によれば、表示不良が抑制され、かつ高精細の有機EL装置の作製を可能にするための有機EL装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の有機EL装置の製造方法によって製造される有機EL装置の例を示す断面模式図である。
【図2】図1の有機EL装置の製造工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも発光層を含む有機化合物層を備えた有機EL素子を複数有する有機EL表示装置の製造方法である。そして本発明の製造方法は、少なくても下記(a)乃至(d)の工程を有している。
(a)基板の上に有機物化合物層を形成する工程(有機化合物層の形成工程)
(b)有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程(中間層の形成工程、レジスト層の形成工程)
(c)フォトリソグラフィ法を用いてレジスト層の一部を除去する工程(レジスト層の加工工程)
(d)レジスト層が除去された領域の中間層及び有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程(中間層の加工工程、有機化合物層の加工工程)
【0013】
また本発明の有機EL装置の製造方法において、形成される中間層は、少なくとも遮光層、好ましくは、遮光層と剥離層とを有する一層又は複数の層からなる積層体である。ここで中間層に含まれる遮光層は、少なくとも190nm以上360nm以下波長の光を遮光する。
【0014】
フォトリソグラフィ法にて高精細なパターニングを行う場合、短い波長の光を放出する露光光源が用いられる。ここで、有機物の主骨格であるC(炭素)−C結合の結合エネルギーは3.50eV程度であり、光子のエネルギーが3.50eVとなる波長は約360nmである。従って、発光層が波長360nm以下の光に晒されると、発光層を構成する材料の分解や再結合等の反応が引き起こされ、発光層の構造が変化する可能性がある。そこで本発明では、プロセス中に使用され発光層に照射される光のうち波長が360nm以下の光を、予め遮光層を設けて遮ることにより、プロセス中に発光層がダメージを受けるのを抑制することができる。
【0015】
また本発明の製造方法により、複数種類の有機EL素子、例えば、第一の有機EL素子と、有機化合物層の層構成又は発光色のいずれかが第一の有機EL素子とは異なる第二の有機EL素子と、をそれぞれ複数有する有機EL装置を製造することができる。本発明において、有機化合物層の層構成や発光色がそれぞれ異なる有機EL素子それぞれ複数有する有機EL装置を製造する際には、少なくとも下記(a’)乃至(d’)からなる工程をそれぞれ複数回行う。
(a’)有機物化合物層を形成する工程
(b’)有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程
(c’)レジスト層の一部を除去する工程
(d’)レジスト層が除去された領域に設けられている前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機EL装置の製造方法の実施形態について説明する。尚、本明細書や図面で特に図示又は記載されない部分については、当該技術分野の周知もしくは公知技術を適用することができる。また以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の具体例の1つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の有機EL装置の製造方法によって製造される有機EL装置の例を示す断面模式図である。
【0018】
図1の有機EL装置1は、3種類の副画素、具体的には、青色副画素2Bと、緑色副画素2Gと、赤色副画素2Rと、を有している。ただし本発明において、副画素の種類は、図1に示される3種類に限定されるものではない。尚、図1の有機EL装置1には、副画素(2B、2G、2R)がそれぞれ1個ずつ示されているが、実際には、図1の有機EL装置1には、副画素(2B、2G、2R)をそれぞれ複数有している。また図1の有機EL装置1では、各副画素(2B、2G、2R)がそれぞれ1個ずつ集まって画素が形成されており、この画素が所定の配列規則に基づいて複数配列されることによって図1の有機EL装置1が形成される。
【0019】
図1の有機EL装置1に含まれる各副画素(2B、2G、2R)には、それぞれ有機EL素子が設けられている。尚、この有機EL素子は、基板10上に設けられる第一電極11と、有機化合物層12と、電子注入輸送層13と、第二電極14と、がこの順に積層されてなる電子素子である。
【0020】
尚、図1の有機EL装置1において、第一電極11は、副画素ごとに独立して設けられる電極である。即ち、青色副画素2Bには、第一電極11aが、緑色副画素2Gには、第一電極11bが、赤色副画素2Rには、第一電極11cが、それぞれ設けられている。
【0021】
また図1の有機EL装置1において、有機化合物層12は、副画素(2B、2G、2R)の種類によって、青色有機化合物層2Bと、緑色有機化合物層2Gと、赤色有機化合物層2Rと、に分類される。ここでは、青色有機化合物層2B、緑色有機化合物層2G、赤色有機化合物層2Rとは、それぞれ発光波長が435nm乃至480nm、500nm乃至560nm、610nm乃至750nmの範囲にある発光材料を用いた有機化合物層を指している。尚、ここでいう発光波長とは、各発光材料で発せされる発光スペクトルの極大波長を指す。
【0022】
図2は、図1の有機EL装置の製造工程を示す断面模式図である。以下、図2を参照しながら本発明の製造方法の実施形態について説明する。
【0023】
(基板)
本発明の製造方法に基づいて有機EL装置を作製する際に、基板10は特に限定されないが、有機EL装置を安定に製造することができ、かつ有機EL装置の駆動に支障をきたさないものであることを要する。例えば、ガラス、Siウェハ等の絶縁性の基板が好適に使用される。
【0024】
尚、本発明においては、基板10の一主面である表面上あるいは基板10の内部に、スイッチング素子として機能するトランジスタ等の有機EL素子を発光させるために必要な回路素子(不図示)を設けてもよい。ここでトランジスタ等の有機EL素子を発光させるために必要な回路素子は、公知の方法を用いて形成することができる。また上述した有機EL素子を発光させるために必要な回路素子を一通り組み合わせて構成される画素回路は、各副画素に対応して二次元的に配設されている。そしてこの画素回路は、第一電極12及び第二電極14に電気的に接続されている。尚、基板10の一主面である表面上あるいは基板10の内部に、上記画素回路を設ける際には、必要に応じて、画素回路による凹凸を平坦化するための平坦化層(不図示)を設けてもよい。
【0025】
(第一電極の形成工程)
本発明の製造方法に基づいて有機EL装置を作製する際には、まず基板10上に下部電極に相当する第一電極11を形成する(図2(a))。
【0026】
第一電極11の構成材料は特に限定されないが、光を放射する方向に応じて、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。また第一電極11を、反射電極と透明電極とを積層させてなる積層電極としてもよい。
【0027】
基板10側から光を放射する場合、第一電極11を透明電極又は半透明膜とすれば良く、その構成材料は高い光透過性を有する材料であることが特に好ましい。ここでいう透明電極とは、可視光に対して80%以上の透過率を有する電極であり、半透明電極とは可視光に対して20%以上80%未満の透過率を有する電極である。例えば、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物や、これらを含む透明電極材料、1nm乃至10nm程度の薄い金属層等が挙げられる。また第一電極11が透明電極である場合、第一電極11の膜厚は、好ましくは、10nm乃至100nmである。
【0028】
基板10とは反対側から光を放出する場合、第一電極11を可視光に対して80%以上の反射率を有する反射電極とするのが好ましく、その構成材料は高い光反射性を有する材料(高反射率材料)であることが特に好ましい。第一電極12が反射電極である場合、電極の構成材料である電極材料の反射率が高ければ高いほど、有機EL装置の光取り出し効率を向上させることができるからである。第一電極11の構成材料となる高い光反射性を有する材料として、例えば、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の金属単体、これら金属単体を複数種組み合わせた合金等が挙げられる。ここで反射率の観点から考えると、好ましくは、Ag合金である。また易加工性の観点から考えると、好ましくは、Al合金である。ここで第一電極11が反射電極である場合、第一電極11の膜厚は、好ましくは、50nm乃至300nmである。
【0029】
第一電極11が積層電極である場合であって、反射電極として機能させたい場合は、基板10上に、反射電極材料と、透明電極材料と、をこの順に積層することが好ましい。
【0030】
第一電極11は、例えば、スパッタリング法等の公知の方法で電極材料からなる薄膜を成膜し、フォトリソグラフィ法等の薄膜加工手段を用いて、図2(a)中の11a乃至11cのように所望の形状に加工することができる。
【0031】
(有機化合物層の形成工程)
上述したように第一電極11を形成した後、少なくとも第一電極11上に有機化合物層12となる薄膜を形成する工程を行う(図2(b))。
【0032】
有機化合物層12は、少なくとも発光層が含まれていれば一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよく、有機EL素子の発光機能を考慮して適宜選ぶことができる。有機化合物層12を構成する層として、具体的には、発光層、正孔注入層、正孔輸送層等が挙げられる。尚、有機化合物層12は、副画素の種類によって層構成、発光色等のいずれかが異なるように設定することができる。具体的には、青色副画素2Bには青色有機化合物層12Bが、緑色副画素2Gには緑色有機化合物層12Gが、赤色副画素2Rには赤色有機化合物層12Rが、それぞれ含まれる。
【0033】
有機化合物層12の構成材料としては、公知の材料を使用することができる。また有機化合物層12は真空蒸着法等により形成される。
【0034】
(有機化合物層の加工工程)
有機化合物層12を形成した後、下記(i)乃至(v)に示されるプロセスにより有機化合物層12を所望のパターンに加工する。
(i)剥離層21の形成工程(図2(c))
(ii)遮光層22の形成工程(図2(d))
(iii)レジスト層23の形成工程(図2(e))
(iv)露光・現像工程(図2(f))
(v)エッチング工程(図2(g))
【0035】
尚、剥離層21及び遮光層22、特に遮光層22は、レジスト層23の形成工程において使用されるフォトレジストを含む溶液から有機化合物層12を保護する中間層として機能する。即ち、剥離層21の形成工程及び遮光層22の形成工程はいずれも中間層の形成工程と言い換えることができる。また中間層は、剥離層21と遮光層22との二層構成に限定されることはなく、必要に応じて介在層を設けてもよい。以下、(i)乃至(v)に示されるプロセスについて説明する。
【0036】
<剥離層の形成工程>
有機化合物層12を形成した後、有機化合物層12上に剥離層21を形成する(図2(c))。剥離層21は、有機化合物層12の構成材料をほとんど溶解しない溶媒に対して溶解性を有する材料が選択される。
【0037】
例えば、有機化合物層12の構成材料が、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、縮合多環炭化水素化合物等の水にほとんど溶解しない材料である場合、剥離層21の構成材料として水に対して溶解性を示す材料を使用するのが好ましい。
【0038】
剥離層21の構成材料として使用される水に対して溶解性を示す材料として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム(PVCAP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ビニルピロリドンコポリマー等の水溶性ポリマーが挙げられる。
【0039】
<遮光層の形成工程>
剥離層21を形成した後、剥離層21上に遮光層22を形成する(図2(d))。遮光層22は、有機化合物層12にダメージを与え得る光を遮断する機能を有している。具体的には、遮光層22は、有機物の主骨格であるC(炭素)−C結合の結合エネルギーよりも高いエネルギーを有する波長360nm以下(少なくとも190nm以上360nm以下)の光を遮断する機能を有している。
【0040】
また遮光層22は、波長が360nm以下の光の透過率が概ね5%以下であるのが好ましいが、少なくとも、装置にて計測可能な波長190nm以上360nm以下の光の透過率が概ね5%以下という機能を有していればよい。波長範囲が190nm以上360nm以下の光の透過率が1%以下という機能を有していれば、より好ましい。
【0041】
上述した機能を有する遮光層22を剥離層21上に設けることで、後述する露光・現像工程において使用される紫外線や、後述するエッチング工程において使用される光から有機化合物層12を保護することができる。また遮光層22は、二色目以降の有機化合物層12のパターニングを行う際に、遮光層22を形成するときに使用されるプラズマ光等に対しても有機化合物層12を保護することができる。
【0042】
遮光層22の構成材料としては、190nm以上360nm以下の波長の光を吸収又は反射する材料や、190nm以上360nm以下の波長の光を吸収及び反射をする材料を用いることができる。190nm以上360nm以下の波長の光を吸収及び反射する材料として、具体的には、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)等が挙げられる。主に190nm以上360nm以下の波長の光を吸収する材料として、炭素(C)、アモルファスシリコン、窒化シリコン(窒化ケイ素)等の無機材料、ポルフィリン、フタロシアニン、ペンタセン、ペリレン等の芳香族有機化合物、ポリパラフェニレンビニレン等の有機高分子化合物等が挙げられる。
【0043】
また遮光層22を形成する際には、剥離層21が変質、溶解等の影響を及ぼさないように材料及び製法を選択することが必要である。ここで剥離層21の構成材料として水溶性ポリマーを用いる場合、仮に、遮光層22を水を使用したウェットプロセスで形成すると剥離層21が溶解する可能性がある。そのため、トルエン等の疎水性有機溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等の親水性有機溶媒を用いたウェットプロセスや、スパッタリング法、CVD、PVD法等のドライプロセスで遮光層22を形成することが好ましい。
【0044】
遮光層22は、一層のみの構成としてもよく、積層構成としてもよい。工程数の観点からすれば一層のみの構成とする方が形成工程の数を少なくできるため好ましい。加工のしやすさという観点からすれば積層構成とする方が好ましい。選択する材料によって遮光層22をエッチングした後の遮光層22のエッジテーパーの制御が容易となる結果、有機化合物層12や剥離層21をエッチングする際の後退量を制御することができるためである。尚、遮光層22を積層構成とする場合、積層順は特に限定されない。
【0045】
また遮光層22の膜厚は、所望の遮光性能が得られる範囲であれば特に限定されない。ここで一色目の遮光層の膜厚をT1、二色目の遮光層の膜厚をT2、三色目の遮光層の膜厚をT3とした場合に、例えば、T1>T2(もしくはT3)>T3(もしくはT2)でもよい。またT2>T3(もしくはT1)>T1(もしくはT3)でもよい。またT3>T1(もしくはT2)>T2(もしくはT1)でもよい。プロセス条件に応じて適宜選択することができる。
【0046】
遮光層22は、副画素の種類ごとにその層構成を変化させてもよい。例えば、一色目の副画素において遮光層22をm層(mは任意の自然数)設けた場合には、二色目の副画素において遮光層22をm+1層で形成し、三色目の副画素において遮光層22をm+2層で形成してもよい。また、二色目の副画素において遮光層22をm層設けた場合には、一色目(もしくは三色目)の副画素において遮光層22をm+1層設け、三色目(もしくは一色目)の副画素において遮光層22をm+2層設けてもよい。また、三色目の副画素において遮光層22をm層設けた場合には、一色目(もしくは二色目)の副画素において遮光層22をm+1層設け、二色目(もしくは一色目)の副画素において遮光層22をm+2層設けてもよい。このように遮光層22の形成条件はプロセス条件に応じて適宜選択することができる。また、この場合においても積層順は特に限定されない。
【0047】
また遮光層22は一色のみ異なる層構成としてもよい。例えば、一色目の副画素において遮光層22をm層(mは任意の自然数)設け、二色目の副画素及び三色目の副画素において遮光層22をn層(nは任意の自然数)設けてもよい。また二色目の副画素において遮光層22をm層設け、一色目の副画素及び三色目の副画素において遮光層22をn層設けてもよい。さらに三色目の副画素において遮光層22をm層設け、一色目との副画素及び二色目の副画素において遮光層22をn層設けてもよい。この場合においてもプロセス条件に応じて遮光層22の形成条件を適宜選択することができる。また、積層順は特に限定されない。
【0048】
さらに、前述の剥離層21の層構成と遮光層22の膜厚構成とを適宜組み合わせることは可能である。この場合においても、遮光層が所望の遮光機能を有していれば、遮光層22を形成する各層の膜厚は特に限定されない。
【0049】
<レジスト層の形成工程>
次に、遮光層22上にフォトレジスト材料を塗布してレジスト層23を形成する(図2(e))。フォトレジスト材料の塗布方法としては、スピンコート法、ディップ法、スリットコート法等が挙げられるが特に限定されるものではない。またフォトレジスト材料として公知のポジ型フォトレジスト材料及びネガ型フォトレジスト材料のいずれも使用することができる。
【0050】
<露光・現像工程>
次に、前の工程で形成したレジスト層23に、フォトマスク30を用いて露光後、現像を行ってレジスト層23のうち、露光された部分23aを選択的に除去することで、レジスト層23のパターニングを行う(図2(f))。この工程において使用される光31は、主として紫外光であるが、レジスト層23を構成するフォトレジストが光反応を起こす光であれば特に限定されるものではない。
【0051】
<エッチング工程>
次に、先の工程でパターニングを行ったフォトレジストをマスクとして、遮光層22、剥離層21、有機化合物層12を順次エッチング除去する(図2(g))。図2(g)に示されるように有機化合物層12が所望の形状に加工することができればエッチング手法は特に限定されない。例えば、ドライエッチング、もしくはウェットエッチングを用いて一括で遮光層22、剥離層21及び有機化合物層12をエッチング除去してもよいし、ドライエッチングとウェットエッチングとを併用してエッチング除去してもよい。
【0052】
またこのエッチング工程においてマスクとして使用したパターニングされているフォトレジストは、適当なタイミングで除去してよい。
【0053】
また有機化合物層12、剥離層21及び遮光層22において、最適なエッチング条件を各層ごとに適宜選択することよって、残渣無くエッチング除去をすることが可能となる。 以上に説明したプロセスで、有機化合物層12の加工が行われる。尚、有機化合物層12の加工工程は、有機化合物層12の形成工程と共に、有機化合物層12(又は副画素)の種類に応じてその種類の数だけ繰り返す必要がある。
【0054】
例えば、副画素の種類が3種類ある有機EL装置を作成する場合は、まず図2(b)乃至図2(g)に示されるプロセスで一色目の有機化合物層12aの形成・加工を行う。その後、図2(h)乃至図2(i)に示されるプロセスで二色目の有機化合物層12bの形成・加工を行う。続いて図2(j)乃至図2(k)に示されるプロセスで三色目の有機化合物層12bの形成・加工を行う。
【0055】
(剥離層・遮光層の除去工程)
全ての副画素において有機化合物層12の形成・加工工程を行った後、有機化合物層12上に設けられている剥離層21及び遮光層22を除去する(図2(l))。剥離層21及び遮光層22を除去する方法としては、遮光層22の構成材料を溶解させて遮光層22を除去した後で剥離層21を除去する方法、剥離層21を溶解させると同時に遮光層22をリフトオフさせて除去する等の方法が挙げられる。剥離層21を溶解させて遮光層22をリフトオフして除去する方法は、工程が簡略であるため、特に好ましい。
【0056】
(電子注入輸送層の形成工程)
次に、有機化合物層12上に、電子注入輸送層13を形成する(図2(m))。電子注入輸送層13は、全ての副画素に共通する層であって一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよく、有機EL素子の発光機能を考慮して適宜選ぶことができる。具体的には、電子注入輸送層13を構成する層として電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。本発明において、電子注入輸送層13の構成材料として、公知の材料を使用することができる。また電子注入輸送層13は真空蒸着法等により形成される。尚、全ての副画素において有機化合物層12の形成・加工工程を行った後に形成する層は、第二電極の前に全ての副画素に共通する層であれば電子注入輸送層に限定されず、また必ずしも形成する必要もない。
【0057】
(第二電極の形成工程)
次に、電子注入輸送層13上に第二電極14を形成する(図2(n))。第二電極15は全ての副画素に共通する電極層であって透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。また第二電極14の構成材料は、前述の第一電極11と同様の材料を使用することができる。また第二電極15はスパッタリング等の公知技術を用いて形成することができる。尚、第二電極14は、マスキング等により所望の領域に形成するのが好ましい。
【0058】
(封止部材の形成工程)
尚、有機EL装置に含まれる有機EL素子は水分によって劣化するため、第二電極14を形成した後、第二電極14上に水分の浸入を防ぐ封止部材を設けることが好ましい。封止部材として、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン等の防湿性の高い材料からなる膜を単層あるいは積層で設けてなる膜状封止部材がある。また膜状封止部材に変えてガラス等の防湿性の高い封止基板の周囲を接着剤やガラスフリットで基板10に固定するキャップ封止構成等の公知の封止構成を採用することもできる。
【0059】
以上のようにして、各副画素ごとに発光色等の性質が異なる有機化合物層(12a、12b、12c)がそれぞれ設けられる有機EL装置を作製することができる。尚、図2にて示される三種類の有機化合物層(12a、12b、12c)は、図1にて示される三種類の有機化合物層(12B、12G、12R)のいずれかに該当する。また本発明の製造方法によって、図1に示される青色有機化合物層12B、緑色有機化合物層12G及び赤色有機化合物層12Rを有する有機EL装置1を作製すると、作製された有機EL装置1はフルカラー表示が可能になる。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
以下に説明する製造プロセスにより、図1に示される有機EL装置1を作製した。
【0061】
まず図2(a)に示されるように、薄膜トランジスタ回路(不図示)を具備するガラス基板10上に、AlとITOとをこの順で成膜してAl膜とITO膜とからなる積層電極薄膜を形成した。このときAl膜の膜厚を100nmとし、ITO膜の膜厚を40nmとした。次に、フォトリソグラフィ法によるパターニングを行うことにより、第一電極11a、11b、11cをそれぞれ形成した(図2(a))。尚、第一電極(11a、11b、11c)は、それぞれ幅0.6μm×長さ1.8μmの大きさとし、互いに0.6μmの間隔を有するように形成した。また、第一電極(11a、11b、11c)は、下部電極として機能する。次に、基板10及び第一電極(11a、11b、11c)を覆うように、窒化シリコンからなる膜を成膜した後、フォトリソプロセスによる窒化シリコンからなる膜の加工を行った。これにより、第一電極11間に窒化シリコンからなる画素間分離膜(不図示)を形成した。このとき画素分離膜の膜厚を1.5μmとした。
【0062】
次に、第一電極(11a、11b、11c)上に、青色有機化合物層12B(図2(b)中の符号12aに相当)を真空蒸着法により成膜した(図2(b))。尚、本実施例においては、青色有機化合物層12Bを、第一電極(11a、11b、11c)と接する正孔注入層と、正孔輸送層と、青色発光層と、の三層構成とした。また青色発光層の構成材料として、青色(発光波長430nm)発光する公知の低分子有機発光材料を用いた。
【0063】
次に、ポリビニルピロリドン水溶液をスピンコート法により塗布した後で加熱乾燥処理することで、剥離層21を形成した(図2(c))。ここで剥離層21の膜厚は1.5μmであった。
【0064】
次に、CVD法により、剥離層21上に、アモルファスシリコンを成膜して遮光層22を形成した(図2(d))。このとき遮光層22の膜厚を1μmとした。尚、本工程において成膜・形成される遮光層22は、190nm以上360nm以下の波長範囲における透過率は約3%であった。
【0065】
次に、遮光層22上に、フォトレジスト材料を含む溶液をスピンコート法により塗布成膜した後、加熱乾燥させることにより、レジスト層23を形成した(図2(e))。
【0066】
次に、青色画素2Bの領域以外の領域に開口を有するCr製のフォトマスク30を用いて、光源(不図示)から発せられる光31をフォトマスク30にて適宜遮りながら露光を行った(図2(f))。次に、アルカリ性現像液で現像することで、レジスト層23のうち光31に晒された部分23aを選択的に除去した。
【0067】
次に、パターニングされたレジスト層23をマスクにして、レジスト層23で覆われていない領域に設けられている青色有機化合物層12B、剥離層21及び遮光層22をドライエッチングにて除去した。これにより、図2(g)に示されるように、青色有機化合物層12B、剥離層21及び遮光層22を所望のパターンに加工した。尚、ドライエッチングを行う際は、RIE装置を用いた。また遮光層22をエッチングする際にはCF4ガスをエッチングガスとして使用し、剥離層21及び青色有機化合物層12Bをエッチングする際にはO2ガスをエッチングガスとして使用した。ここで本実施例において、エッチング後にエッチングが施された領域について顕微鏡による観察を行ったところ、エッチング残渣は確認されなかった。
【0068】
次に、下記工程(i)乃至(v)を2回繰り返した(図2(h)〜図2(k))。尚、図2(h)に示される符号12bで示される層は緑色有機化合物層12G(発光波長530nm)に相当し、図2(j)に示される符号12cで示される層は赤色有機化合物層12R(発光波長620nm)に相当する。
(i)真空蒸着法による有機化合物層(12G又は12R)の形成工程
(ii)スピンコート法による剥離層21の形成工程
(iii)CVD法による遮光層22の形成工程
(iv)フォトリソグラフィ法によるフォトレジストパターンの形成工程
(v)ドライエッチングによるパターニング工程
【0069】
これによって、緑色有機化合物層12Gと、剥離層21と、遮光層22とからなる積層体、及び赤色有機化合物層12Rと、剥離層21と、遮光層22とからなる積層体を順次所望のパターン形状にて形成した(図2(k))。
【0070】
次に、流水に3分浸すことで、有機化合物層(12B、12G、12R)上に形成されている剥離層21及び遮光層22を一括除去した(図2(l))。
【0071】
次に、CVD法により、有機化合物層(12B、12G、12R)上に電子注入輸送層13を形成した(図2(m))。尚、本実施例において、電子注入輸送層13は、有機化合物層(12B、12G、12R)と接する電子輸送層と、電子注入層と、がこの順に積層されている積層体である。
【0072】
次に、スパッタリング法により、Agを成膜して第二電極14を形成した(図2(n))。最後に、第二電極15上に窒化シリコンを膜厚2μmで成膜して水分侵入防止用の封止膜(図示せず)を形成した。以上により有機EL装置を得た。
【0073】
以上のようにして作製された有機EL装置の発光状態を顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良が無く、かつ、青、緑、赤それぞれの色に発光する副画素の組を一画素とし、画素が1.2μmピッチの高い精細度で配列されていることが確認された。
【0074】
[実施例2]
実施例1において、遮光層22の構成材料を窒化シリコンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22となる窒化シリコンは、SiH4ガスとN2ガスとを原料ガスとして使用し、CVD法を用いて膜厚2μmで成膜したものである。また成膜された窒化シリコン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約5%であった。
【0075】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。尚、本発明において、遮光層22の構成材料が窒化シリコンである場合、遮光層22の膜厚は2μm以上とするのが好ましい。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、遮光層22の構成材料をアモルファスシリコンと窒化シリコンとの積層体にしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22を構成するアモルファスシリコン及び窒化シリコンは、それぞれ膜厚0.5μm、1.0μmで成膜したものである。また上記積層体の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約5%であった。
【0077】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0078】
[実施例4]
実施例1において、遮光層22の構成材料をアモルファスカーボンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22となるアモルファスカーボンは、膜厚2μmで成膜し、CF4とO2とからなる混合ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また成膜されたアモルファスカーボン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約5%であった。
【0079】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0080】
[実施例5]
実施例1において、遮光層22の構成材料をAlとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22となるAlは、膜厚100nmで成膜し、Cl2とBCl3とからなる混合ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また成膜されたAl膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は0%であった。
【0081】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0082】
[実施例6]
実施例1において、遮光層22の構成材料をMoとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22となるMoは、膜厚150nmで成膜し、Cl2とBCl3とからなる混合ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また成膜されたMo膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は0%であった。
【0083】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0084】
[実施例7]
実施例1において、遮光層22の構成材料をTiとAlとの積層体にしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22を構成するTi及びAlは、それぞれ膜厚20nm、60nmで成膜し、Cl2とBCl3とからなる混合ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また上記積層体の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約1%であった。
【0085】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0086】
[実施例8]
実施例1において、遮光層22の構成材料を、TiとAlとTiとがこの順に積層されている積層体にしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22を構成する各層の膜厚は、それぞれ10nm(Ti層)、50nm(Al層)、10nm(Ti層)で成膜し、Cl2とBCl3とからなる混合ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また上記積層体の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約2%であった。
【0087】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0088】
[実施例9]
実施例1において、遮光層22の構成材料及び遮光層22の加工の際に使用されるエッチングガスを、下記表1に示されるように変更した。これらを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。
【0089】
【表1】

【0090】
ここで各有機化合物層上にそれぞれ形成された遮光層の透過率を測定したところ、190nm乃至400nmの波長域における光の透過率はいずれも5%以下であった。
【0091】
このようにして作製した有機EL素子の発光状態を顕微鏡観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。このようにして作製した有機EL素子の発光状態を顕微鏡観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また素子効率は、真空蒸着法のみで、蒸着マスクを用いて作製した素子と同等であった。
【0092】
[実施例10]
実施例1において、遮光層22の構成材料をフタロシアニンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22を構成するフタロシアニンは膜厚3μmで成膜し、O2ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また成膜されたフタロシアニン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約5%であった。
【0093】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0094】
[実施例11]
実施例1において、遮光層22の構成材料及び遮光層22の加工の際に使用されるエッチングガスを、下記表2に示されるように変更した。これらを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。
【0095】
【表2】

【0096】
ここで各有機化合物層上にそれぞれ形成された遮光層の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率はいずれも5%以下であった。
【0097】
このようにして作製した有機EL素子の発光状態を顕微鏡観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。このようにして作製した有機EL素子の発光状態を顕微鏡観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また素子効率は、真空蒸着法のみで、蒸着マスクを用いて作製した素子と同等であった。
【0098】
[実施例12]
実施例1において、遮光層22の構成材料を、ポルフィリンとペンタセンとフタロシアニンとを1:1:1の割合で混合した材料(混合材料)としたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本実施例において、遮光層22を構成する混合材料はCVD法により膜厚3μmで成膜し、O2ガスを用いてドライエッチングを行って所望の形状に加工されたものである。また成膜されたフタロシアニン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約5%であった。
【0099】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光等の表示不良は確認できなかった。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子の発光効率は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と同等であった。
【0100】
[比較例1]
実施例1において、遮光層22の構成材料を窒化シリコンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本比較例において、遮光層22となる窒化シリコンは、CVD法を用いて膜厚1.6μmで成膜したものである。また成膜された窒化シリコン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約10%であった。
【0101】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光画素が確認された。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と比較して発光効率が劣っていた。
【0102】
[比較例2]
実施例1において、遮光層22の構成材料を窒化シリコンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本比較例において、遮光層22となる窒化シリコンは、CVD法を用いて膜厚0.7μmで成膜したものである。また成膜された窒化シリコン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は約50%であった。
【0103】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光画素が確認された。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と比較して発光効率が劣っていた。
【0104】
[比較例3]
実施例1において、遮光層22の構成材料を酸化シリコンとしたことを除いては、実施例1と同様の方法により有機EL装置を作製した。尚、本比較例において、遮光層22となる酸化シリコンは、CVD法を用いて膜厚0.3μmで成膜したものである。また成膜された窒化シリコン膜の透過率を測定したところ、190nm以上360nm以下の波長域における光の透過率は80%を超えていた。
【0105】
このようにして作製した有機EL装置について、実施例1と同様に顕微鏡にて観察したところ、非発光画素が確認された。また本実施例の有機EL装置を構成する有機EL素子は、真空蒸着法を採用し蒸着マスクを用いて作製した有機EL素子と比較して発光効率が劣っていた。
【符号の説明】
【0106】
1:有機EL装置、2(2B、2G、2R):副画素、10:基板、11(11a、11b、11c):第一電極、12(12a、12b、12c):有機化合物層、12B:青色有機化合物層、12G:緑色有機化合物層、12R:赤色有機化合物層、13:電子注入輸送層、14:第二電極、21:剥離層、22:遮光層、23:フォトレジスト(未露光部)、23a:フォトレジスト(露光部)、30:フォトマスク、31:光(紫外線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を含む有機化合物層を備えた有機EL素子を複数有する有機EL表示装置の製造方法であって、
基板の上に有機物化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程と、
フォトリソグラフィ法を用いて前記レジスト層の一部を除去する工程と、
前記レジスト層が除去された領域の前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程と、を有しており、
前記中間層が、少なくとも遮光層を含み、
前記遮光層が、波長190nm以上360nm以下の光を遮光することを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
波長190nm以上360nm以下の光に対する前記遮光層の透過率が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記遮光層が、複数の層からなる積層構成であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記遮光層が、膜厚が2μm以上の窒化シリコンからなる膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記中間層が、さらに剥離層を含んでおり、
前記剥離層が、前記有機化合物層と前記遮光層との間に設けられており、
前記剥離層が、前記有機化合物層の構成材料をほとんど溶解しない溶媒に対して溶解性を有する材料からなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
有機化合物層の構成材料が、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン又は縮合多環炭化水素化合物であり、
前記剥離層が、水に対して溶解性を示す材料からなることを特徴とする、請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記水に対して溶解性を示す材料が、水溶性ポリマーであることを特徴とする、請求項6に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
前記レジスト層が除去された領域に設けられる前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程の後に、前記剥離層を溶解させて前記遮光層をリフトオフして除去する工程を有することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
第一の有機EL素子と、有機化合物層の層構成又は発光色のいずれかが前記第一の有機EL素子とは異なる第二の有機EL素子と、をそれぞれ複数有する有機EL装置の製造方法であって、
前記有機物化合物層を形成する工程と、
前記有機化合物層の上に中間層とレジスト層とを順次形成する工程と、
前記レジスト層の一部を除去する工程と、
前記レジスト層が除去された領域に設けられている前記中間層及び前記有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する工程と、からなる工程をそれぞれ複数回行うことを特徴とする、有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84579(P2013−84579A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191772(P2012−191772)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】