有糸分裂進行遺伝子および有糸分裂モジュレート方法
本発明は、増殖性障害を治療するための候補治療化合物を同定する方法を特徴とする。本発明はまた、増殖性障害を治療する方法を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
タキソテール(Taxotere)およびいくつかの他の重要な抗有糸分裂制癌剤は、チューブリンタンパク質を標的にするが、そのような薬剤は、チューブリンが分裂細胞にも非分裂細胞にも関与するので多くの望ましくない副作用を有する。特異性の増大は、有糸分裂時に必要とされかつ非分裂細胞過程に寄与しないタンパク質だけを標的にすることにより得られるであろう。Harvard Medical Schoolで実施された細胞に基づく表現型スクリーニングでは、チューブリンを標的にせずにその代わりに有糸分裂キネシンタンパク質Eg5を阻害することにより作用する抗有糸分裂小分子(モナストロール)が初めて同定された。Eg5に対する他の小分子阻害剤は、現在、癌治療のための臨床試験の段階にある。
【0002】
ハイスループットsiRNAスクリーニングは、不活性化されると対象の細胞過程に影響を及ぼす新規な治療標的を迅速に同定するための他の方法を提供する。タキサン類および他の微小管阻害剤は紡錘体チェックポイントを活性化させるので、この経路の新規な構成要素が同定されれば、タキサン類が癌細胞内でアポトーシスを誘導する機序についての理解が深まるとともに、これらの薬剤に対する耐性がどのように生じるかを理解するのに役立つであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紡錘体チェックポイントの活性化に重要なタンパク質を同定することが必要とされている。そのようなタンパク質は、副作用の低減された有効な癌治療薬の探索に使用するための標的になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一態様では、本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32を評価対象化合物と接触させることにより候補治療化合物を同定する方法を特徴とする。この態様では、化合物と接触するHIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を、化合物が不在のHIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性と比較する。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を低下させる化合物を同定する。この実施形態では、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を低下させる化合物は、増殖性疾患(たとえば、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌)を治療するための候補化合物である。
【0005】
以上の態様では、接触は、無細胞混合物中または細胞に基づく混合物中(たとえば組換え細胞中)で行われうる。
【0006】
以上の態様のいずれにおいても、HIPK1またはHIPK2の生物学的活性は、たとえば、キナーゼ活性または結合活性でありうる。
【0007】
また、以上の態様のいずれにおいても、USP32の生物学的活性は、たとえば、プロテアーゼ活性または結合活性でありうる。
【0008】
他の態様では、本発明は、増殖性疾患を改善する候補化合物を同定する方法を特徴とする。この態様では、本方法は、細胞(たとえば、動物モデルに含まれる細胞または疾患モデルに由来する細胞)を候補化合物と接触させるステップと、HIPK1、HIPK2、およびUSP32のうちの少なくとも1つの発現を、候補化合物と接触させていない細胞における1もしくは複数の遺伝子の発現と比較するステップと、少なくとも1つの遺伝子の発現をモジュレートする化合物を同定するステップと、を含む。
【0009】
以上の態様では、発現は、疾患特異的性質の低下により評価可能である。
【0010】
また、以上の態様では、発現は、マイクロアレイ(たとえば、核酸またはタンパク質のマイクロアレイ)を用いて測定可能である。
【0011】
さらに他の態様では、本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の阻害剤を被験者に投与することを含む、被験者の増殖性疾患を治療する方法を特徴とする。この態様では、阻害剤は、siRNA構築物(たとえば、配列番号1〜9に示される核酸配列を含むsiRNA構築物)でありうる。
【0012】
「化合物」、「候補化合物」、または「因子」とは、天然に存在するかまたは人工的に誘導されるかを問わず化学物質を意味する。化合物としては、たとえば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然に存在する有機分子、核酸分子、およびそれらの成分または組合せが挙げられる。
【0013】
「モジュレートする」とは、in vivoまたはex vivoでタンパク質の生物学的活性を増大させる(「アップモジュレートする」)かまたは減少させる(「ダウンモジュレートする」)かのいずれかを意味する。モジュレーションは直接的または間接的のいずれであってもよい点に留意することが重要である。所与のアッセイでモジュレート性化合物により提供される生物学的活性の程度はさまざまであろうが、当業者であれば生物学的活性を増大または減少させる化合物を同定する統計学的に有意な生物学的活性レベルの変化を決定しうることはわかるであろう。「発現のモジュレーション」とは、細胞、細胞抽出物、または細胞上清におけるタンパク質または核酸のレベルまたは活性の変化を意味する。たとえば、そのような変化は、RNA安定性、転写、タンパク質分解、または翻訳の増大または減少に基づくものでありうる。好ましくは、この変化は、対照条件下における発現または活性のレベルの少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、100%、200%、さらには500%以上である。
【0014】
「無細胞混合物」とは、in vitroで行われる実験条件を意味する。こうした条件としては、細胞抽出物、実質的に精製された細胞産物、および/または人工化合物を用いて行われる実験が挙げられる。
【0015】
「細胞に基づく混合物」とは、生存細胞、死滅細胞、または固定細胞の存在下で行われる実験を意味する。
【0016】
「組換え細胞」とは、外因性核酸を含有するように操作された細胞を意味する。その例は、目的タンパク質を発現するように操作された細胞または特定の生物学的活性を検出するレポーター構築物を含有する細胞である。
【0017】
「キナーゼ活性」とは、酵素がタンパク質基質上のアミノ酸残基をリン酸化する活性を意味する。
【0018】
「増殖性疾患」とは、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、またはその両方により引き起こされるかまたはそれらをもたらす疾患を意味する。リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、および肺癌のような癌はすべて、増殖性疾患の例である。
【0019】
「HIPK1」または「ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ1」とは、ヒトHIPK1の活性(たとえばキナーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。HIPK1の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_152696であり、HIPK1のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_689909である。HIPK1とは、HIPK1ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、HIPK1は、HIPK1の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0020】
「HIPK2」または「ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ2」とは、ヒトHIPK2の活性(たとえばキナーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。HIPK2の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_022740およびAF208291であり、HIPK2のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_073577およびQ9H2X6である。HIPK2とは、HIPK2ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、HIPK2は、HIPK2の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0021】
「USP32」または「ユビキチン特異的プロテアーゼ32」とは、ヒトUSP32の活性(たとえばプロテアーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。USP32の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_032582であり、USP32のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_115971である。USP32とは、USP32ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、USP32は、USP32の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0022】
「発現」とは、細胞により産生される核酸またはタンパク質の量を意味する。発現の変化は、mRNAの転写、タンパク質の翻訳、または核酸もしくはタンパク質のいずれかの分解の変化により生じうる。
【0023】
「核酸」とは、リボ核酸もしくはデオキシリボ核酸のオリゴマーもしくはポリマーまたはそれらの類似体を意味する。この用語は、天然に存在する塩基と糖と糖間(主鎖)結合とよりなるオリゴマー、さらには同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴマーを包含する。そのような修飾型もしくは置換型のオリゴヌクレオチドは、たとえば増大された細胞内取込みおよびヌクレアーゼの存在下での増大された安定性のような性質を有するので、天然型のものよりも好ましいことが多い。
【0024】
「有糸分裂進行」とは、細胞周期を介する細胞の継代を意味する。
【0025】
「有糸分裂指数」とは、任意の選択された時点における有糸分裂中の細胞の割合(%)を意味する。
【0026】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、翻訳後修飾(たとえばグリコシル化またはリン酸化)の有無、天然に存在するポリペプチドまたはペプチドの全部または一部を構成するか否か、あるいは天然に存在しないポリペプチドまたはペプチドを構成するか否かを問わず、2個超のアミノ酸の任意の鎖を意味する。
【0027】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.(編), Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.(編), Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G.(編), Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, Academic Press, 1987; および Sequence Analysis Primer, Gribskov, and Devereux(編), M. Stockton Press, New York, 1991; ならびに Carillo and Lipman, SIAM J. Applied Math. 48:1073, 1988に記載の方法(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする公知の方法で容易に計算可能である。
【0028】
同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムの形態で利用可能である。2つの配列間の同一性を決定するコンピュータープログラム法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al., Nucleic Acids Research 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。周知のスミス・ウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムを用いて同一性を決定することも可能である。BLASTプログラムは、NCBIおよび他の供給元(BLAST Manual, Altschul, et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894)から公的に入手可能である。検索は、次のようなURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/unfinishedgenome.htmlまたはhttp://www.tigr.org/cgi-bin/BlastSearch/blast.cgiで実施可能である。これらのソフトウェアプログラムは、相同性の度合いを種々の置換、欠失、および他の修飾に割り当てることにより、類似の配列をマッチさせる。保存的置換としては、典型的には、次のグループ:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン;の中での置換が挙げられる。
【0029】
「ハイブリダイズする」とは、種々のストリンジェンシー条件下で相補的対合核酸塩基配列またはその部分を含有する二本鎖複合体を形成するように対合することを意味する。(たとえば、Wahl. and Berger, Methods Enzymol 152:399 (1987); Kimmel, Methods Enzymol 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0030】
「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな塩濃度の条件下、ストリンジェントな温度の条件下、またはホルムアミドの存在下を意味する。たとえば、ストリンジェントな塩濃度は、通常は約750mM NaClおよび75mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、好ましくは約500mM NaClおよび50mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、最も好ましくは約250mM NaClおよび25mMクエン酸三ナトリウムよりも低いであろう。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒(たとえばホルムアミド)の不在下で達成可能であり、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、最も好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で達成可能である。ストリンジェントな温度条件としては、通常は少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が挙げられよう。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))の濃度、および担体DNAの組込みまたは排除のようなさまざまな追加のパラメーターは、当業者には周知である。必要に応じてこれらの種々の条件を組み合わせることにより、種々のストリンジェンシーレベルが達成される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDS中、30℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で行われるであろう。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNA中、42℃で行われるであろう。これらの条件の有用な変更は、当業者には自明であろう。
【0031】
ほとんどの用途では、ハイブリダイゼーションに続く洗浄ステップもまた、ストリンジェンシーを変更する。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度および温度により規定可能である。以上のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を低下させることによりまたは温度を上昇させることにより増大可能である。たとえば、洗浄ステップのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM NaClおよび3mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、最も好ましくは約15mM NaClおよび1.5mMクエン酸三ナトリウムよりも低いであろう。洗浄ステップのストリンジェントな温度条件としては、通常は少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、最も好ましくは少なくとも約68℃の温度が挙げられよう。好ましい実施形態では、洗浄ステップは、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、25℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、洗浄ステップは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、42℃で行われるであろう。最も好ましい実施形態では、洗浄ステップは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、68℃で行われるであろう。これらの条件のさらなる変更は、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者には周知であり、たとえば、Benton and Davis (Science 196:180 (1977)); Grunstein and Hogness (Proc Natl Acad Sci USA 72:3961 (1975)); Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York (2001)); Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, New York, (1987)); および Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている。好ましくは、ハイブリダイゼーションは生理学的条件下で行われる。典型的には、相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基間の水素結合(ワトソン・クリック(Watson−Crick)型、フーグスティーン(Hoogsteen)型、または逆フーグスティーン(reversed Hoogsteen)型の水素結合でありうる)を介してハイブリダイズする。たとえば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対合する相補的核酸塩基である。
【0032】
「短鎖干渉RNA」(siRNA)とは、分解対象の標的遺伝子またはmRNAを特定するために使用される単離されたdsRNA分子(好ましくは10ヌクレオチド超の長さ、より好ましくは15ヌクレオチド超の長さ、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドの長さ)を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲は、siRNAの最も好ましいサイズである。siRNAは、siRNA二本鎖の両方の鎖が単一のRNA分子内に含まれる短鎖ヘアピンRNAをも包含しうる。siRNAは、任意の形態のdsRNA(より大きいdsRNAのタンパク質分解的切断産物、部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生RNA)、さらには1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または改変により天然に存在するRNAと異なる改変RNAを包含する。そのような改変は、21〜23ヌクレオチドのRNAの一末端(両末端も可)または内部などへの非ヌクレオチド材料の付加(RNAの1つ以上のヌクレオチドに)を包含しうる。最近、より大きいsiRNA分子(たとえば、25nt、30nt、50nt、さらには100nt以上)もまたRNAiを開始させるために使用可能であることが注目されている。(たとえば、Elbashir et al. (Genes & Dev. , 15:188-200, 2001), Girard et al. (Nature 442:199-202 (2006), Aravin et al. (Nature 442:203-207 (2006)), Grivna et al. (Genes Dev. 20:1709-1714 (2006)), および Lau et al. (Science 313:363-367 (2006)を参照されたい)。好ましい実施形態では、RNA分子は3’ヒドロキシル基を含有する。本発明に係るRNA分子中のヌクレオチドは、天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドをはじめとする非標準的ヌクレオチドをも包含しうる。総称して、そのような改変RNAはすべて、RNAの類似体と呼ばれる。本発明に係るsiRNAは、RNAiを媒介する能力を有する程度に十分に天然のRNAに類似していることだけが必要とされる。本明細書中で使用される場合、「RNAiを媒介する」とは、どのRNAを分解するかを識別または特定する能力を意味する。
【0033】
「マイクロアレイ」または「アレイ」とは、固体表面上または膜上に一定のパターンで固定された物体を意味する。本明細書中で使用される場合、アレイは、固体表面上または膜上に固定されたポリペプチド、cDNA、またはESTで構成される。「マイクロアレイ」および「アレイ」は、同義的に用いられる。好ましくは、マイクロアレイは、10〜1,000個の物体/cm2の密度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ1(HIPK1)、ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ2(HIPK2)、およびユビキチン特異的プロテアーゼ32(USP32)の活性を阻害する化合物を同定する方法を特徴とする。HIPK1およびHIPK2は、区別可能なセリン/トレオニンキナーゼファミリーのメンバーである(図1A)。各タンパク質のドメイン構造は公知であり、図1Bに示される。
【0035】
HIPK1、HIPK2、およびUSP32の活性は、新生物組織に由来する細胞ではその生存および分裂に不可欠であるが正常細胞では不可欠でないことが見いだされている。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のこの本質的な活性は、それらと他のタンパク質との相互作用から生じうる(たとえば図2〜4)。
【0036】
I. 候補治療化合物を同定するスクリーニング方法
本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に結合するかまたはそれらの発現もしくは活性をモジュレートする化合物を同定するスクリーニング方法を提供する。
【0037】
スクリーニングアッセイ
HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現または活性をモジュレートする化合物を同定するスクリーニングアッセイは、標準的方法により実施される。スクリーニング方法は、ハイスループット技術を含みうる。そのほかに、これらのスクリーニング技術は、培養細胞で、または蠕虫、ハエ、酵母、もしくは哺乳動物のような生物で実施可能である。これらの生物でのスクリーニングは、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に相同的なポリヌクレオチドの使用を含みうる。
【0038】
そのようなスクリーニングアッセイを実施するために、多くの方法が利用可能である。一つの方法においては、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32をコードするポリヌクレオチドを発現する細胞の培地にさまざまな濃度で添加される。次に、たとえば、ポリヌクレオチド分子から調製された任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いて標準的ノーザンブロット分析(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 1997)により、遺伝子発現を測定する。遺伝子発現はまた、逆転写に続く定量的PCRによりまたはオリゴヌクレオチド(たとえばマイクロアレイ上)へのハイブリダイゼーションにより測定することも可能である。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルは、候補分子を欠損する対照培地で測定されたレベルと比較される。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現の変化を促進する化合物は、本発明に有用であると考えられ、そのような分子は、たとえば、増殖性障害の治療薬として使用可能である。
【0039】
候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のいずれか1つのモジュレーションを介して同定可能であるが、とくに有望な化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の2つまたはすべてをモジュレートするであろう。ヌクレオチドマイクロアレイを用いて多数の遺伝子の遺伝子発現を測定しうることは、当技術分野で周知である。対照サンプルと対比して候補化合物で処理された細胞のHIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現プロファイルを比較することにより、HIPK1、HIPK2、またはUSP32をモジュレートする化合物を同定することが可能である。
【0040】
本発明の一態様は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32と実質的に同一の核酸またはその断片にハイブリダイズする核酸分子を含有するマイクロアレイである。好ましくは、マイクロアレイは、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のすべてについてそれらと実質的に同一の核酸またはその断片にハイブリダイズする核酸分子を含有するであろう。本発明のさらに他の特徴は、候補化合物を同定すべくマイクロアレイに基づく候補薬剤スクリーニングがHIPK1、HIPK2、またはUSP32を含む、すでに行われたマイクロアレイ実験のデータを分析する方法である。本発明のこの態様の特徴は、実験の大部分がすでに終了しており、当技術分野で利用可能であることである。
【0041】
所望により、他の選択肢として、候補化合物の効果は、同一の一般的手段および標準的免疫学的方法により、たとえば、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的な抗体を用いるウエスタンブロッティングまたは免疫沈降により、ポリペプチド産生レベルで測定可能である。たとえば、イムノアッセイを用いて、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現を検出またはモニターすることが可能である。そのようなポリペプチドに結合しうるポリクロナール抗体またはモノクローナル抗体を任意の標準的イムノアッセイ方式(たとえば、ELISA、ウェスタンブロット、RIAアッセイ、またはタンパク質マイクロアレイ)で使用して、HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質の発現レベルを測定することが可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質の発現の変化を促進する化合物は、とくに有用であると考えられる。この場合も、そのような分子は、たとえば、増殖性障害の治療薬として使用可能である。
【0042】
他の選択肢としてまたは追加として、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的に結合してそれらの活性をモジュレートする化合物に関してスクリーニング可能である。そのような候補化合物の効力は、ポリペプチドと相互作用するその能力に依存する。そのような相互作用は、多くの標準的な結合技術および機能アッセイ(たとえば、Ausubel et al.前掲に記載のもの)を用いて容易にアッセイ可能である。たとえば、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32との相互作用および結合に関してin vitroで試験可能であり、その活性をモジュレートするその能力は、任意の標準的アッセイ(たとえば、本明細書に記載のもの)によりアッセイ可能である。
【0043】
特定の一実施形態では、HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質に結合する候補化合物は、クロマトグラフィーに基づく技術を用いて同定可能である。たとえば、HIPK1、HIPK2、またはUSP32を発現するように操作された細胞から組換えHIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質を標準的技術により精製することが可能であり、かつカラムに固定することが可能である。次に、候補化合物の溶液をカラムに通し、そしてHIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的な化合物をポリペプチドに結合するその能力に基づいて同定し、かつカラムに固定する。化合物を単離するために、カラムを洗浄して非特異的に結合した分子を除去し、次に、対象化合物をカラムから遊離させて回収する。所望により、この方法(または任意の他の適切な方法)により単離された化合物をさらに精製することが可能である(たとえば高速液体クロマトグラフィーにより)。この手法により単離された化合物もまた、たとえば、増殖性障害を治療するための治療薬として使用可能である。10mM以下の親和定数でHIPK1、HIPK2、またはUSP32に結合するものとして同定された化合物は、本発明に特に有用であると考えられる。
【0044】
他の実施形態では、HIPK1およびHIPK2の活性を阻害する化合物をキナーゼアッセイで同定する。キナーゼアッセイは、当技術分野で周知であり、特定のタンパク質のキナーゼ活性(たとえばセリン/トレオニンキナーゼ活性)のレベルを測定する。一実施形態では、キナーゼ活性は、基質のリン酸化(たとえばp53のリン酸化)により測定される。このリン酸化は、in vitroでまたは細胞に基づく系で測定可能である。このリン酸化は、たとえば、リン酸化タンパク質に特異的な抗体を用いてまたは放射性リン酸を用いて測定可能である。
【0045】
可能性のあるアゴニストおよびアンタゴニストとしては、HIPK1、HIPK2、もしくはUSP32、またはHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32をコードするポリヌクレオチドに結合することによりその活性を増大または低下させる、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、および抗体が挙げられる。可能性のあるアンタゴニストとしては、酵素であることが知られているHIPK1、HIPK2、またはUSP32のタンパク質の結合部位に結合してそれを占有する小分子が挙げられる。可能性のある他のアンタゴニストとしては、アンチセンス分子が挙げられる。
【0046】
HIPK1、HIPK2、またはUSP32をコードするポリヌクレオチド配列もまた、増殖性障害を治療するための化合物の探索および開発に使用可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32は、発現後、薬剤スクリーニング用の標的として使用可能である。このほかに、コードされたポリペプチドのアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列またはシャイン・ダルガノ(Shine-Delgarno)配列またはそれぞれのmRNAの他の翻訳促進配列を用いてアンチセンス配列を構築し、対象コード配列の発現を制御することが可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の断片をコードするポリヌクレオチド(たとえば配列番号1〜9)は、たとえば、RNA干渉を起こしてHIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現または活性を低下させるように発現させることが可能である。追加の確認実験は、損なわれたタンパク質間相互作用(たとえば、図2〜4に示されるタンパク質との相互作用)、有糸分裂停止の誘導、およびチェックポイント制御の誘導の測定を含みうる。
【0047】
小分子は、有用な候補治療薬を提供する。好ましくは、そのような分子は、2,000ダルトン未満、より好ましくは300〜1,000ダルトン、最も好ましくは400〜700ダルトンの分子量を有する。これらの小分子は、有機分子であることが好ましい。
【0048】
被験化合物および被験抽出物
一般的には、増殖性障害を治療しうる化合物は、天然物または合成(もしくは半合成)抽出物の両方の大きいライブラリーあるいは化学ライブラリーから当技術分野で公知の方法により同定される。薬物の探索および開発の分野の当業者であれば、被験抽出物または被験化合物の正確な供給源が本発明に係るスクリーニング手順(複数可)に重要でないことはわかるであろう。したがって、本明細書に記載の方法を用いて実質的に任意の数の化学抽出物または化学化合物をスクリーニングすることが可能である。そのような抽出物または化合物の例としては、植物、真菌、原核生物、もしくは動物に由来する抽出物、発酵液、および合成化合物、さらには既存化合物の修飾体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、糖、脂質、ペプチド、およびポリヌクレオチドをベースとする化合物(ただし、これらに限定されるものではない)などの多くの化学化合物のランダム合成または特異的合成(たとえば半合成または全合成)を行うべく、多数の方法が利用可能である。合成化合物ライブラリーは市販されている。他の選択肢として、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが市販されている。そのほかに、天然のライブラリーまたは合成により作製されるライブラリーは、所望により、当技術分野で公知の方法に従って、たとえば、標準的な抽出方法および分画方法により作製される。さらに、所望により、いずれのライブラリーまたは化合物も、標準的な化学的、物理的、または生化学的方法を用いて容易に改変される。
【0049】
そのほかに、薬物の探索および開発の技術分野の当業者であれば容易にわかることであるが、増殖性障害の治療活性を有することがすでに知られている物質のデレプリケーション(dereplication)(たとえば、分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーション、および化学的デレプリケーション、もしくはそれらの任意の組合せ)またはそうした物質の重複もしくは反復の除去を行う方法を可能なかぎり利用することが望ましい。
【0050】
粗抽出物がHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32タンパク質の発現もしくは活性をモジュレートする活性、または結合活性を有することが見いだされた場合、観測された効果に関与する化学成分を単離するために陽性リード抽出物のさらなる分画が必要である。このように、抽出、分画、および精製プロセスの目的は、増殖性障害の治療に有用でありうる活性を有する粗抽出物中の化学物質の特徴付けおよび同定である。そのような不均一抽出物の分画および精製の方法は、当技術分野で公知である。所望により、増殖性障害の治療に有用な作用剤であることが明らかにされた化合物は、当技術分野で公知の方法に従って化学修飾される。
【0051】
II. 治療方法
本発明はまた、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の活性を阻害する化合物を投与することにより患者の増殖性疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のsiRNA構築物を投与することをも包含する。
【0052】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)の導入により開始される転写後遺伝子サイレンシングの一形態である。短い21〜25ヌクレオチドの二本鎖RNAは、センチュウにおいて(Zamore et al., Cell 101: 25-33)および哺乳動物組織培養細胞系において(Elbashir et al., Nature 411:494-498, 2001(参照により本明細書に組み入れられるものとする))、遺伝子発現をダウンレギュレートするのに有効である。哺乳動物におけるこの手法のさらなる治療有効性は、マキャフリー(McCaffrey)らによりin vivoで実証された(Nature 418:38-39. 2002)。HIPK1、HIPK2、またはUSP32のような哺乳動物遺伝子の核酸配列を用いて、特異的な21〜25ヌクレオチドのRNA配列を有する、HIPK1、HIPK2、またはUSP32標的遺伝子を不活性化する短鎖干渉RNA(siRNA)を、設計することが可能である。siRNAは、たとえば、増殖性疾患を治療するための治療薬として使用可能である。
【0053】
哺乳動物遺伝子の配列が提供されれば、対象標的遺伝子を不活性化するようにdsRNAを設計して、本明細書に記載されるように有効な遺伝子サイレンシングに関してスクリーニングすることが可能である。本明細書に開示されるdsRNAのほかに、別のdsRNAを標準的方法により設計することが可能である。
【0054】
dsRNAの特定の要件および修飾については、PCT出願WO01/75164号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。dsRNA分子はさまざまな長さでありうるが、特徴的な2〜3ヌクレオチドの3’突出末端(好ましくは、これは(2’−デオキシ)チミジンまたはウラシルである)を有する21〜23ヌクレオチドのdsRNAであるsiRNA分子を使用することが最も好ましい。siRNAは、典型的には、3’ヒドロキシル基を含む。他の選択肢として、一本鎖siRNAまたは平滑末端dsRNAが使用される。RNAの安定性をさらに向上させるために、3’ 突出部は分解に対して安定化される。一実施形態では、RNAは、アデノシンやグアノシンなどのプリンヌクレオチドを組み込むことにより安定化される。他の選択肢として、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、たとえば、(2’−デオキシ)チミド((2'-deoxy)thymide)による2ヌクレオチドのウリジン突出部の置換は、許容され、RNAiの効率に影響を及ぼさない。2’ヒドロキシル基が不在であると、組織培養培地中で突出部のヌクレアーゼ耐性が有意に向上する。
【0055】
siRNA分子は、化学合成またはショウジョウバエin vitro系を用いる組換え産生をはじめとするさまざまなプロトコルにより取得可能である。それは、Dharmacon Research Inc.やXeragon Inc.のような会社から市販品として入手可能であるか、またはそれは、Ambion社製のSilencerTM siRNA Construction Kit(カタログ番号1620)やNew England BioLabs社製のHiScribeTM RNAi Transcription Kit(カタログ番号E2000S)のような市販のキットを用いて合成可能である。
【0056】
他の選択肢として、siRNAは、PCT WO01/75164号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の方法のいずれかを用いてまたはElbashir S.M. et al. (Genes & Dev., 15:188-200, 2001)に記載のRNAのin vitro転写の標準的手順およびdsRNAアニーリング手順を用いて調製可能である。siRNAは、Elbashir S.M. et al.に記載されるように、合胞体胚盤葉ショウジョウバエ胚由来の無細胞ショウジョウバエ溶解物中、約21〜約23ヌクレオチドのsiRNAを生成するようにdsRNAがプロセシングされる条件下で、標的遺伝子の配列に対応するdsRNAをインキュベートし、次に、当業者に公知の技術を用いて単離することによっても得ることができる。たとえば、ゲル電気泳動を用いて21〜23ntのRNAを分離することが可能であり、次に、RNAをゲルスライスから溶出させることが可能である。そのほかに、クロマトグラフィー(たとえばサイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、および抗体によるアフィニティー精製を用いて、21〜23ヌクレオチドのRNAを単離することが可能である。
【0057】
Yu et al. または Paddison et al.(Proc. Natl. Acad. Sci USA, 99:6047-6052, 2002; Genes & Dev, 16:948-958, 2002;参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるように、ショートヘアピンRNA(shRNA)をRNAiに使用することも可能である。shRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方が単一のRNA分子中に含まれかつヌクレオチド(3以上)のループにより連結されるように設計される。shRNAは、以上およびYu et al. (前掲)に記載されるように、標準的in vitro T7転写合成を用いて合成および精製が可能である。また、マウスU6プロモーター配列を有する発現ベクター中にshRNAをサブクローニングすることが可能であり、次に、これを細胞中にトランスフェクトしてshRNAのin vivo発現に使用することが可能である。
【0058】
そのようなsiRNA構築物の例を以下の表1と配列番号4〜9に示される核酸配列とに示す。
【表1】
【0059】
腫瘍細胞で細胞の増殖または生存を阻止するsiRNAは、単分化能前駆細胞の分化を阻止する可能性もある。たとえば、腫瘍細胞系でアポトーシスを誘導するいくつかの抗癌化合物は、脂肪細胞または他の単分化能前駆細胞の分化を阻止する。したがって、本発明に係るHIPK1、HIPK2、およびUSP32 siRNA構築物は、以下に記載の治療方法を用いて代謝性疾患(たとえば肥満症およびII型糖尿病)ならびに神経変性疾患を治療するために使用可能である。
【0060】
治療薬としてのHIPK1、HIPK2、またはUSP32 RNAi
本発明に係る方法を用いて任意の温血哺乳動物の増殖性疾患を治療することが可能である。そのような治療が行われる増殖性疾患としては、肺癌、結腸癌、腎臓癌、骨癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、肝癌、膵臓癌、脳癌、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、腺癌、胸腺腫、形質細胞腫、または任意の他の新生物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、そのような増殖性疾患は、増大したHIPK1、HIPK2、またはUSP32発現を有することを特徴とする。温血動物としては、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、トリ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ヒヒ、または他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32治療薬
RNAi治療用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子(たとえば、dsRNA、アンチセンスRNA、またはsiRNA)の投与は、増殖性疾患を予防または治療するために行いうる。そのような核酸分子は、組織もしくは新生物に直接投与可能であるか、またはRNAiを媒介する核酸分子が安定的に発現されるように発現ベクター中に提供可能である。
【0062】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32核酸分子(たとえば、dsRNA、アンチセンスRNA、もしくはsiRNA)またはそれらの混合物を直接投与に供する場合、核酸分子は、単位用量剤形で提供され、各用量は、医薬組成物を形成すべく、標的遺伝子をサイレンシングするのに十分な所定量のそのような分子をリン酸緩衝食塩水のような製薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含有する。そのほかに、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子は、固体剤形で製剤化され、使用前に再溶解または懸濁される。医薬組成物は、場合により、他の化学療法剤、抗体、抗ウイルス剤、および外因性免疫モジュレーターを含有しうる。
【0063】
投与経路は、たとえば、静脈内、筋肉内、皮下、局所、皮内、腹腔内、脊髄内、またはex vivoでありうる。投与はまた、経粘膜手段もしくは経皮手段によるものであってもよいし、または化合物は、経口投与してもよい。経粘膜投与または経皮投与に供する場合、浸透対象のバリヤーに適合した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で広く知られており、例としては、経粘膜投与に供する場合、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。そのほかに、界面活性剤を用いて浸透を促進することが可能である。経粘膜投与は、たとえば、鼻噴霧を介するかまたは坐剤を用いるものでありうる。経口投与に供する場合、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子は、カプセル剤、錠剤、およびトニック剤のような慣用の経口投与剤形に製剤化される。局所投与に供する場合、本発明に係る核酸分子は、当技術分野で広く知られているように、軟膏剤、塗剤、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。
【0064】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を哺乳動物に与える場合、投与される核酸分子の用量は、哺乳動物の年齢、体重、身長、性別、一般的病状、既往病歴、疾患進行、腫瘍量などのような因子に依存して異なるであろう。用量は必要に応じて投与される。核酸分子と併用して他の治療薬剤を投与することが可能である。
【0065】
本明細書に記載の核酸分子を用いる治療の効力は、HIPK1、HIPK2、もしくはUSP32のDNA、RNA、もしくは遺伝子産物の濃度もしくは活性の変化、腫瘍退縮、または新生物に関連する病態もしくは症状の軽減を測定することにより評価可能である。
【0066】
核酸治療
核酸治療は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子の増大された発現に関連する新生物を予防または改善するための他の治療手段である。アンチセンス核酸分子、dsRNA、siRNA、またはshRNAをコードする発現ベクターは、内因性のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を過剰発現する細胞に送達可能である。そのような送達により、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子の発現が持続される。核酸分子は、細胞による取込みが可能な形態で、かつ十分なレベルのRNAi核酸分子を産生させて増殖性疾患を有する患者のHIPK1、HIPK2、またはUSP32レベルを低下させうるように、RNAiを必要とする細胞(たとえば新生物細胞)に送達しなければならない。
【0067】
形質導入ウイルス(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)ベクターは、とくに感染効率が高くかつ組込みおよび発現が安定しているので、体細胞遺伝子治療に使用可能である(たとえば、Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997; Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996; Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997; Naldini et al., Science 272:263-267, 1996; および Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997を参照されたい)。使用しうる他のウイルスベクターとしては、たとえば、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはヘルペスウイルス、たとえばエプスタイン・バーウイルスなどが挙げられる(たとえば、Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990; Friedman, Science 244:1275-1281, 1989; Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614, 1988; Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990; Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991; Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987; Anderson, Science 226:401-409, 1984; Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991; Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989; Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993; および Johnson, Chest 107:77S-83S, 1995に記載のベクターをも参照されたい)。レトロウイルスベクターは、とくに開発が進んでおり、臨床状況下で使用されてきた(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med 323:370, 1990; Anderson et al., 米国特許第5,399,346号)。最も好ましくは、ウイルスベクターを用いて、RNAiを媒介しうるHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を発現させる。
【0068】
新生物を有する患者の細胞にRNAi治療剤を導入するために、非ウイルス手段を利用することも可能である。たとえば、リポフェクション(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989; Staubinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド−ポリリシンコンジュゲーション(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)の存在下で核酸を投与することにより、または外科的条件下のマイクロインジェクションにより(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)、核酸分子を細胞中に導入することが可能である。好ましくは、核酸分子は、プラスミドベクター中に組み込まれ、リポソームおよびプロタミンと組み合わせて投与される。
【0069】
RNAi遺伝子治療に使用するための核酸分子発現は、任意の好適なプロモーター(たとえば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、またはメタロチオネインのプロモーター)から指令可能であり、かつ任意の適切な哺乳動物調節エレメントにより調節可能である。たとえば、所望により、腫瘍細胞などの特定の細胞型で優先的に遺伝子発現を指令することが知られるエンハンサーを用いて、核酸の発現を指令することが可能である。使用されるエンハンサーとしては、組織または細胞に特異的なエンハンサーとして特徴付けられものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
組合せ療法
1以上のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸を単独でまたは任意の他の標準的な増殖性疾患治療と組み合わせて投与することが可能である。そのような方法は、当業者には公知であり(たとえば、Wadler et al., Cancer Res. 50:3473-86, 1990)、例としては、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、放射線療法、および増殖性疾患の治療に用いられる任意の他の治療方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
III. 実験結果
HIPK1、HIPK2、およびUSP32は新生物細胞では増殖および生存に不可欠であるが正常細胞では不可欠でないことを実証する実験結果を以下に示す。
【0072】
有糸分裂のモジュレーターのスクリーニング
2つの関連するスクリーニングを利用して、有糸分裂を介して進行をポジティブレギュレートまたはネガティブレギュレートする遺伝子産物を同定した(図5および6)。第1のスクリーニングでは、有糸分裂停止を引き起こすsiRNAを同定した。後期促進複合体やPolo様キナーゼのような有糸分裂進行をレギュレートする遺伝子産物の不活性化により、増大した有糸分裂指数を得ることが可能である。他の選択肢として、有糸分裂モータータンパク質Eg5のような有糸分裂紡錘体の機械的要素の撹乱の結果として、有糸分裂停止を間接的に引き起こすことが可能である。この場合、有糸分裂停止は、染色体が有糸分裂紡錘体に適切に結合された状態になるまでの、有糸分裂を介して進行を遅らせる紡錘体チェックポイント経路の活性化の二次的結果である。タキサン類またはEg5阻害剤モナストロールで細胞を処理するとチェックポイント依存性有糸分裂停止が誘導される。このスクリーニングにより、有糸分裂のレギュレーターおよび正常な有糸分裂進行に必要とされる有糸分裂紡錘体の構造要素を同定した。
【0073】
第2のスクリーニングでは、紡錘体チェックポイント機能に必要とされるsiRNAを同定した。紡錘体チェックポイント経路は、ヒト細胞の正確な染色体分離に重要である。この経路は、動原体−微小管の相互作用状態の結合および張力をモニターし、すべての動原体が中期板に適切に整列された状態になるまで後期の開始を阻害する。多くの腫瘍は、高い染色体誤分離率および多極紡錘体形成をはじめとする有糸分裂の欠陥を呈する。ほとんどの場合、これらの異常に関与する特定の分子欠陥は、依然として特徴付けされていない。しかしながら、最近、ヒト腫瘍において、Rb/E2F経路の異常レギュレーションにより紡錘体チェックポイント要素の発現のアップレギュレーションが起こり、その結果、チェックポイントの異常レギュレーションが起こる可能性があることが明らかにされた。他の場合には、有糸分裂異常により、癌細胞の染色体分離を可能にするチェックポイントシグナル伝達の要件の増大が起こる可能性がある。その場合、次に、紡錘体チェックポイントシグナル伝達の部分阻害により、癌細胞の選択的致死が起こる可能性がある。
【0074】
このアッセイでは、細胞をsiRNAでトランスフェクトし、次に、タキソールで処理して紡錘体チェックポイント依存性有糸分裂停止を誘導した。有糸分裂指数を低下させるsiRNAを同定した。siRNAがチェックポイントを不活性化した場合、細胞は、有糸分裂から脱出し、間期に戻る。しかしながら、核は、一般的には、有糸分裂からの異常な脱出に起因して構造が異常である。異常な核構造は、経路の撹乱の形態学的「シグネチャー」として機能する。このスクリーニングでは、有糸分裂前の間期で細胞を停止させるsiRNAをも同定した。この場合、細胞は、間期で停止するが、タキソールが作用する時点よりも前に停止するので、核は、正常な形態を有する。したがって、このスクリーニング方法では、特定の対象経路を標的にするsiRNAおよび他の機序を介して細胞増殖を阻害するsiRNAを同定した。
【0075】
一群の10,000種のsiRNAのすべてを両方のアッセイでスクリーニングした(合計60枚の384ウェルプレートに相当する)。スクリーニングでは、スクリーニングで確実にヒットするものとして既知の有糸分裂レギュレーターのPolo様キナーゼを同定することにより、この方法の妥当性を実証した。有糸分裂に関与することが知られた、このスクリーニングで同定された追加の遺伝子を、図7に示す。有糸分裂停止を引き起こす375種のsiRNA構築物を同定した(図8)。
【0076】
以上のスクリーニングで同定された遺伝子が有糸分裂に関与することを確認するために、追加のsiRNA構築物を用いて実験を行った(図6)。さらに、Quantigene Assay(Genospectra Inc.)を用いて、低減された標的遺伝子発現の度合いと有糸分裂表現型との関係を調べた。可能であれば、ノックダウンの度合いを、抗トポイソメラーゼ化合物のカンプトテシンに応答してHeLa細胞で生成された発現プロファイルと相関付けて、標的遺伝子をさらに評価した(Carson et al. Cancer Res. 64: 2096-2104, 2004)。
【0077】
方法
Qiagen druggable ムsiRNAライブラリー(5,000種の遺伝子を標的にする10,000種のsiRNA)を30枚の384ウェルプレートの形態に再フォーマットした。両方のスクリーニングに対して、細胞にsiRNAをトランスフェクトし、次に固定し、そしてDAPI(DNAの染色用)および蛍光ファロイジン(アクチン細胞骨格の染色用)で染色した。ハイスループット自動顕微鏡法を用いて、有糸分裂指数を増大させるsiRNA(タキソールの不在下)または有糸分裂指数を減少させるsiRNA(タキソールの存在下)を同定した。
【0078】
タキソールの不在下で行われたスクリーニングの陽性対照は、細胞の強い有糸分裂停止を誘導する動原体タンパク質Hec1を標的にするsiRNAを含有していた。トランスフェクション効率を測定するために、この陽性対照を各スクリーニングプレートで利用した。タキソールの存在下で行われるスクリーニングでは、siRNAの不在下の細胞は、紡錘体チェックポイントのタキソール依存性活性化に起因して有糸分裂状態で停止する。既知の紡錘体チェックポイントタンパク質Mad2を標的にするsiRNAのトランスフェクションを行うと、有糸分裂停止の逆転が起こり、その結果、細胞は間期の状態で蓄積する(図9)。この場合も、この陽性対照を各スクリーニングプレートに組み込んでトランスフェクションの妥当性をモニターした。
【0079】
トランスフェクションの約16時間前に、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタメートの存在下のOptiMem培地+1%ウシ胎仔血清(FCS)中の細胞を384ウェルプレート(黒色側面、透明底;Corning−Costar 3712)上にプレーティングした。トランスフェクションの前夜、HeLa−H2B細胞を1ウェルあたり10,000細胞(1ウェルあたり20〜30μlの全量)でプレーティングした。通常、これにより翌朝までに約20〜30%の集密状態が得られた(トランスフェクションのための集密度を意識的に低くしてあるのは、そのほうが後続の画像処理ステップに適しているからである)。
【0080】
トランスフェクションの約1〜4時間前に、FCSを含まない30μlのOptiMem培地を各ウェル中の既存の培地に添加した。ウェルを吸引し、そして35μlの上記のOptiMem培地(抗生物質は含まれるがFCSは含まれない)を添加し、そして細胞をインキュベーターに戻した。
【0081】
固定および染色のために、2×固定/染色カクテルをウェル中の培地に等量で添加した。2×固定/染色液は、2mlの37%ホルムアルデヒド、2μlのtritc−ファロイジン(DMSO中0.2mg/ml)(Sigma P−1951)、0.5μlのヘキスト33342染色液(Molecular Probes H−3570)、200μlの10%Triton X−100、および7.8mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する。次に、細胞を室温で20分間インキュベートし、そしてPBSで2〜3回洗浄した。
【0082】
一部の実験を自動化した。この場合も、最終トランスフェクション量は40μlであった。各ウェルは、8μlのOptiMem、0.5μlのGTS希釈液、および0.25μlのGeneSilencerを含有していた。384ウェルソースプレート(AbGene AB−1055)は1プレートあたり8.8μlのトランスフェクションカクテルを有していたが、ピペッティングロスを考慮して約10μlの追加量を添加した。トランスフェクションの約4〜6時間後、30%FCSと抗生物質とを有する20μlのDMEMを添加した。トランスフェクション後、表現型発生のために細胞を48時間インキュベートし、その後、処理した。タキソール添加スクリーニングでは、トランスフェクションの約32〜36時間後、タキソールを100〜150nMの最終濃度になるように添加し、次に、タキソール添加の24時間後に固定した。
【0083】
本発明の特徴の1つは、経時的ビデオ顕微鏡法の使用である。当業者であれば、この注文製造顕微鏡を用いることにより、一週間程度の長期間にわたりカバースリップ上またはマルチウェルチャンバー上の複数の位置で細胞を同時に画像化することが可能である。顕微鏡は、注文設計インキュベーター内に収容されたNikon TE2000倒立顕微鏡よりなる。この顕微鏡を用いることにより、細胞集団がsiRNAや薬剤処理のような撹乱にどのように応答するかを細胞ごとに測定することが可能である。GFPに融合されたヒストン2B(これは間期における核の形態および有糸分裂時における染色体の動態のモニタリングを可能にする)を発現する細胞を画像化した。これにより、細胞で進行する有糸分裂の過程が正常であるか異常であるかおよび細胞がアポトーシスを起こすか否を調べることが可能である。各実験において、典型的には1視野あたり100細胞を画像化し、40視野までを同時に取得することにより、1実験あたり4000細胞までの挙動に関する情報を得た。
【0084】
自動顕微鏡を用いて画像を取得した後、有糸分裂指数を決定するための処理および測定を行った。例示された標的の1つを対照として用いることにより、追加の標的のスコアを算出することが可能である。このほかに、各画像を手動検査することにより、自動測定の結果を確認し、コンピューターにより検出されない可能性のある画像の他の特徴を特定した。たとえば、有糸分裂指数を増大させることなく有糸分裂時に紡錘体異常を誘導するsiRNAを同定した。
【0085】
HIPK1、HIPK2、およびUSP32
このスクリーニングを用いて、我々は、HIPK1、HIPK2、およびUSP32を新生物組織由来の細胞の有糸分裂に不可欠なものとして同定した。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のタンパク質およびmRNAの発現は、これらの各遺伝子のsiRNA構築物で処理された細胞において低減した(たとえば図10および11)。細胞生存率は、HIPK1、HIPK2、およびUSP32のsiRNAで処理された細胞において低減した(図12〜14)。細胞生存率のこの減少は、アポトーシスの増大の指標であるカスパーゼ3活性の増大と関連していた(図15〜17)。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のsiRNA構築物で処理することにより、細胞周期分布が変化した(図18〜22)。
【0086】
抗癌療法の標的としてのHIPK1およびHIPK2の妥当性をさらに実証することとしては、HIPK1およびHIPK2の発現が新生物組織由来の種々の細胞系で増大されることが挙げられる(図23〜25)。
【0087】
方法
細胞系
ヒト細胞系HCT116(結腸直腸癌)、M059K(膠芽腫)、A549(肺癌)、DU145(前立腺癌)、およびMDA−MB−231(乳房上皮性腺癌)をAmerican Type Culture Collectionから入手し、頒布者の推奨どおり保持した。
【0088】
siRNA配列
以下のsiRNA配列を用いてHIPK1の発現を阻害した:
H1−1:aaGGCTTGCCAGCTGAATATC(配列番号4)
H1−2:agGGAAGCTGTACACCACTAA(配列番号5)
以下のsiRNA配列を用いてHIPK2の発現を阻害した:
H2−1:tcCCGAAGTCTCCATACTAAA(配列番号6)
H2−3:aaGGGTTTGCCTGCTGAATAT(配列番号7)
以下のsiRNA配列を用いてUSP32の発現を阻害した:
U1:aaGCCTCAGTTACGTGAATAC(配列番号8)
U2:CCAGTAAAGGCTACATCAT(配列番号9)
以下のsiRNA配列を陰性対照として使用した:
LV4:GUACGUUACGCGUAACGUAtt(配列番号10)
【0089】
siRNAのトランスフェクション
トランスフェクションの前日、100μlの培地に細胞をプレーティングした。Lipofectamine 2000を用いて50nMの最終濃度でsiRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24〜48時間後、トランスフェクションミックスを新しい培地で置き換えた。
【0090】
HIPK2を検出するウエスタンブロッティング:
溶解緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5;100mM NaCl;1% NP−40;2mM EDTA;1mMオルトバナジン酸ナトリウム;1mM PMSF)中で細胞を溶解させた。使用直前に溶解緩衝液2mLあたり1錠のComplete Mini EATA−free Protease Inhibitorカクテル錠剤(Roche)を添加した。
【0091】
上記の溶解緩衝液中、氷上で細胞を30分間かけて溶解させ、次に、14,000RPM、4℃で15分間遠心して細胞片を排除した。75℃で4×NuPAGE LDS Sample Buffer(Invitrogen)を用いて上清を10分間かけて変性させ、そしてNuPAGE Bis−Tris勾配ゲル(4〜12%、Invitrogen)上で電気泳動(1ウェルあたり20〜50μgの全タンパク質)により分画した。タンパク質をニトロセルロース膜(0.45μm、Invitrogen)上に移した。非特異的結合を阻止するために、ブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳および0.1%Tween−20を含有するTBS)中、室温で膜を30分間インキュベートし、そしてHIPK2に対するモノクローナル抗体(Abnova H00028996−M03)と共に4℃で一晩インキュベートした。ブロッキング緩衝液中、室温で、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体と共に2時間インキュベートした。洗浄後、Enhanced Chemiluminiscence System(Amersham, Buckinghamshire, UK)を用いて免疫複合体を視覚化した。
【0092】
WST−1アッセイ
細胞にsiRNAをトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後、培地を交換した。新しい培地を用いてインキュベーションをさらに24時間行った後、10μlのWST1試薬を各ウェルに添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、そしてマイクロプレートリーダーを用いて440nmの波長で読み取った。基準サンプルは690nmで読み取った。
【0093】
カスパーゼ3アッセイ
細胞を0.3〜0.5×10E5細胞/ウェルで24ウェルプレート上に接種し、そして20nMの濃度のsiRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後および48時間後、製造業者の指定の溶解緩衝液(Meso Scale Discovery, LLC)を用いて細胞を溶解させた。Meso Scale Discovery社製のカスパーゼ−3アッセイを用いて溶解物を分析し、そしてMSD Sector Imager 2400を用いてアッセイ結果を読み取った。
【0094】
細胞周期の細胞分布のFACSアッセイ
siRNAによる細胞トランスフェクションの24時間後および48時間後、浮遊細胞集団を取り出して保持した。残存する付着細胞をトリプシン処理し、そして培地を添加することによりトリプシン活性を停止させた。トリプシン処理された細胞を保持された浮遊細胞サブ集団と共にポリカーボネートFACS適合試験管中にプールし、そしてペレット化し、そして上清をデカントした。0.5mlの冷PBSおよび(ボルテックスしながら)2mlの氷冷95%エタノールを逐次添加することにより、細胞を固定した。固定細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、そしてBD FACSCalibur Flow Cytometerを用いて分析した。標準的方法を用いてデータを分析した。
【0095】
他の実施形態
本発明の特定の実施形態の説明は、例示を目的として提供されている。網羅することが意図されるものでもなければ、本発明の範囲を本明細書に記載の特定の形態に限定するが意図されるものでもない。いくつかの実施形態を参照しながら本発明につい説明してきたが、特許請求の範囲に示される本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えうることは、当業者であればわかるであろう。本明細書中で参照される特許、特許出願、および出版物はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1Aは、HIPK1およびHIPK2と他のキナーゼとの関係を示す図である。図1Bは、HIPK1、HIPK2、およびHIPK3のタンパク質構造を示す図である。
【図2】図2は、HIPK1およびHIPK2が相互作用するタンパク質を示す図である。
【図3】図3は、HIPK2と指定のタンパク質IRS1および11番染色体orf66との相互作用のレベルを示すグラフである。
【図4】図4は、HIPK2による指定の基質のリン酸化の可能性を示すHIPK2と指定のタンパク質との相互作用のレベルを示す表およびグラフである。
【図5】図5は、有糸分裂停止スクリーニングの構成を示すフロー図である。
【図6】図6は、有糸分裂停止スクリーニングの概要を示す図である。
【図7】図7は、有糸分裂停止および紡錘体形成に寄与することがすでに知られている有糸分裂停止スクリーニングで同定された遺伝子を特定する表である。
【図8】図8は、特定の停止表現型を有するものとして同定された遺伝子の数を示す表である。
【図9】図9は、タキソールで処理された細胞をタキソールで処理されMAD2siRNAでも処理された細胞と比較する1対の顕微鏡写真である。
【図10】図10Aは、siRNAによるHIPK2タンパク質のノックダウン率(%)を示す表である。図10Bは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞内のHIPK2発現レベルを示すウエスタンブロットである。
【図11】図11は、HIPK1 siRNAまたはHIPK2 siRNAのいずれかでトランスフェクトされた細胞中にトランスフェクション後の指定の時間で見いだされる指定のmRNAの量を示すグラフである。
【図12】図12は、HIPK1および/またはHIPK2でトランスフェクトされた細胞の細胞死率(%)を示すグラフである。
【図13】図13Aは、HIPK1 siRNAでトランスフェクトされた細胞の細胞生存率(%)を示すグラフである。図13Bは、HIPK2 siRNAでトランスフェクトされた細胞の細胞生存率(%)を示すグラフである。
【図14】図14Aは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞の細胞生存率率(%)を示すグラフである。図14Bは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞内に存在するHIPK2タンパク質の量を示すウエスタンブロットである。
【図15】図15は、指定のsiRNA構築物に応答するアポトーシスの増加倍率を示すグラフである。
【図16】図16は、指定のsiRNA構築物で処理された細胞のカスパーゼ3誘導および細胞生存率(%)を示すグラフである。
【図17】図17は、USP32 siRNAでトランスフェクトされた細胞のカスパーゼ活性化を示すグラフである。
【図18】図18は、細胞周期の指定の段階にある、USP32 siRNAでトランスフェクトされた細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図19】図19は、トランスフェクションの24時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたHCT116細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図20】図20は、トランスフェクションの48時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたHCT116細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図21】図21は、トランスフェクションの48時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたMDA−MB231細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図22】図22は、細胞周期の指定の段階にある、指定のsiRNA構築物で処理された細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図23】図23は、正常組織におけるHIPK1の発現を示すグラフである。
【図24】図24は、種々のNCI−60細胞系におけるHIPK1の発現を示すグラフである。
【図25】図25は、種々のNCI−60細胞系におけるHIPK2の発現を示すグラフである。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
タキソテール(Taxotere)およびいくつかの他の重要な抗有糸分裂制癌剤は、チューブリンタンパク質を標的にするが、そのような薬剤は、チューブリンが分裂細胞にも非分裂細胞にも関与するので多くの望ましくない副作用を有する。特異性の増大は、有糸分裂時に必要とされかつ非分裂細胞過程に寄与しないタンパク質だけを標的にすることにより得られるであろう。Harvard Medical Schoolで実施された細胞に基づく表現型スクリーニングでは、チューブリンを標的にせずにその代わりに有糸分裂キネシンタンパク質Eg5を阻害することにより作用する抗有糸分裂小分子(モナストロール)が初めて同定された。Eg5に対する他の小分子阻害剤は、現在、癌治療のための臨床試験の段階にある。
【0002】
ハイスループットsiRNAスクリーニングは、不活性化されると対象の細胞過程に影響を及ぼす新規な治療標的を迅速に同定するための他の方法を提供する。タキサン類および他の微小管阻害剤は紡錘体チェックポイントを活性化させるので、この経路の新規な構成要素が同定されれば、タキサン類が癌細胞内でアポトーシスを誘導する機序についての理解が深まるとともに、これらの薬剤に対する耐性がどのように生じるかを理解するのに役立つであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紡錘体チェックポイントの活性化に重要なタンパク質を同定することが必要とされている。そのようなタンパク質は、副作用の低減された有効な癌治療薬の探索に使用するための標的になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一態様では、本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32を評価対象化合物と接触させることにより候補治療化合物を同定する方法を特徴とする。この態様では、化合物と接触するHIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を、化合物が不在のHIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性と比較する。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を低下させる化合物を同定する。この実施形態では、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の生物学的活性を低下させる化合物は、増殖性疾患(たとえば、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌)を治療するための候補化合物である。
【0005】
以上の態様では、接触は、無細胞混合物中または細胞に基づく混合物中(たとえば組換え細胞中)で行われうる。
【0006】
以上の態様のいずれにおいても、HIPK1またはHIPK2の生物学的活性は、たとえば、キナーゼ活性または結合活性でありうる。
【0007】
また、以上の態様のいずれにおいても、USP32の生物学的活性は、たとえば、プロテアーゼ活性または結合活性でありうる。
【0008】
他の態様では、本発明は、増殖性疾患を改善する候補化合物を同定する方法を特徴とする。この態様では、本方法は、細胞(たとえば、動物モデルに含まれる細胞または疾患モデルに由来する細胞)を候補化合物と接触させるステップと、HIPK1、HIPK2、およびUSP32のうちの少なくとも1つの発現を、候補化合物と接触させていない細胞における1もしくは複数の遺伝子の発現と比較するステップと、少なくとも1つの遺伝子の発現をモジュレートする化合物を同定するステップと、を含む。
【0009】
以上の態様では、発現は、疾患特異的性質の低下により評価可能である。
【0010】
また、以上の態様では、発現は、マイクロアレイ(たとえば、核酸またはタンパク質のマイクロアレイ)を用いて測定可能である。
【0011】
さらに他の態様では、本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の阻害剤を被験者に投与することを含む、被験者の増殖性疾患を治療する方法を特徴とする。この態様では、阻害剤は、siRNA構築物(たとえば、配列番号1〜9に示される核酸配列を含むsiRNA構築物)でありうる。
【0012】
「化合物」、「候補化合物」、または「因子」とは、天然に存在するかまたは人工的に誘導されるかを問わず化学物質を意味する。化合物としては、たとえば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然に存在する有機分子、核酸分子、およびそれらの成分または組合せが挙げられる。
【0013】
「モジュレートする」とは、in vivoまたはex vivoでタンパク質の生物学的活性を増大させる(「アップモジュレートする」)かまたは減少させる(「ダウンモジュレートする」)かのいずれかを意味する。モジュレーションは直接的または間接的のいずれであってもよい点に留意することが重要である。所与のアッセイでモジュレート性化合物により提供される生物学的活性の程度はさまざまであろうが、当業者であれば生物学的活性を増大または減少させる化合物を同定する統計学的に有意な生物学的活性レベルの変化を決定しうることはわかるであろう。「発現のモジュレーション」とは、細胞、細胞抽出物、または細胞上清におけるタンパク質または核酸のレベルまたは活性の変化を意味する。たとえば、そのような変化は、RNA安定性、転写、タンパク質分解、または翻訳の増大または減少に基づくものでありうる。好ましくは、この変化は、対照条件下における発現または活性のレベルの少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、100%、200%、さらには500%以上である。
【0014】
「無細胞混合物」とは、in vitroで行われる実験条件を意味する。こうした条件としては、細胞抽出物、実質的に精製された細胞産物、および/または人工化合物を用いて行われる実験が挙げられる。
【0015】
「細胞に基づく混合物」とは、生存細胞、死滅細胞、または固定細胞の存在下で行われる実験を意味する。
【0016】
「組換え細胞」とは、外因性核酸を含有するように操作された細胞を意味する。その例は、目的タンパク質を発現するように操作された細胞または特定の生物学的活性を検出するレポーター構築物を含有する細胞である。
【0017】
「キナーゼ活性」とは、酵素がタンパク質基質上のアミノ酸残基をリン酸化する活性を意味する。
【0018】
「増殖性疾患」とは、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、またはその両方により引き起こされるかまたはそれらをもたらす疾患を意味する。リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、および肺癌のような癌はすべて、増殖性疾患の例である。
【0019】
「HIPK1」または「ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ1」とは、ヒトHIPK1の活性(たとえばキナーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。HIPK1の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_152696であり、HIPK1のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_689909である。HIPK1とは、HIPK1ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、HIPK1は、HIPK1の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0020】
「HIPK2」または「ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ2」とは、ヒトHIPK2の活性(たとえばキナーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。HIPK2の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_022740およびAF208291であり、HIPK2のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_073577およびQ9H2X6である。HIPK2とは、HIPK2ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、HIPK2は、HIPK2の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0021】
「USP32」または「ユビキチン特異的プロテアーゼ32」とは、ヒトUSP32の活性(たとえばプロテアーゼ活性)を有するポリペプチドを意味する。USP32の核酸配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_032582であり、USP32のポリペプチド配列に対応する代表的なGenbankアクセッション番号は、NP_115971である。USP32とは、USP32ポリペプチドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性パーセントを有するポリペプチドをも意味する。追加的および代替的に、USP32は、USP32の核酸に対して高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチドとして定義される。
【0022】
「発現」とは、細胞により産生される核酸またはタンパク質の量を意味する。発現の変化は、mRNAの転写、タンパク質の翻訳、または核酸もしくはタンパク質のいずれかの分解の変化により生じうる。
【0023】
「核酸」とは、リボ核酸もしくはデオキシリボ核酸のオリゴマーもしくはポリマーまたはそれらの類似体を意味する。この用語は、天然に存在する塩基と糖と糖間(主鎖)結合とよりなるオリゴマー、さらには同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴマーを包含する。そのような修飾型もしくは置換型のオリゴヌクレオチドは、たとえば増大された細胞内取込みおよびヌクレアーゼの存在下での増大された安定性のような性質を有するので、天然型のものよりも好ましいことが多い。
【0024】
「有糸分裂進行」とは、細胞周期を介する細胞の継代を意味する。
【0025】
「有糸分裂指数」とは、任意の選択された時点における有糸分裂中の細胞の割合(%)を意味する。
【0026】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、翻訳後修飾(たとえばグリコシル化またはリン酸化)の有無、天然に存在するポリペプチドまたはペプチドの全部または一部を構成するか否か、あるいは天然に存在しないポリペプチドまたはペプチドを構成するか否かを問わず、2個超のアミノ酸の任意の鎖を意味する。
【0027】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.(編), Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.(編), Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G.(編), Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, Academic Press, 1987; および Sequence Analysis Primer, Gribskov, and Devereux(編), M. Stockton Press, New York, 1991; ならびに Carillo and Lipman, SIAM J. Applied Math. 48:1073, 1988に記載の方法(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする公知の方法で容易に計算可能である。
【0028】
同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムの形態で利用可能である。2つの配列間の同一性を決定するコンピュータープログラム法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al., Nucleic Acids Research 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。周知のスミス・ウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムを用いて同一性を決定することも可能である。BLASTプログラムは、NCBIおよび他の供給元(BLAST Manual, Altschul, et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894)から公的に入手可能である。検索は、次のようなURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/unfinishedgenome.htmlまたはhttp://www.tigr.org/cgi-bin/BlastSearch/blast.cgiで実施可能である。これらのソフトウェアプログラムは、相同性の度合いを種々の置換、欠失、および他の修飾に割り当てることにより、類似の配列をマッチさせる。保存的置換としては、典型的には、次のグループ:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン;の中での置換が挙げられる。
【0029】
「ハイブリダイズする」とは、種々のストリンジェンシー条件下で相補的対合核酸塩基配列またはその部分を含有する二本鎖複合体を形成するように対合することを意味する。(たとえば、Wahl. and Berger, Methods Enzymol 152:399 (1987); Kimmel, Methods Enzymol 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0030】
「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」とは、ストリンジェントな塩濃度の条件下、ストリンジェントな温度の条件下、またはホルムアミドの存在下を意味する。たとえば、ストリンジェントな塩濃度は、通常は約750mM NaClおよび75mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、好ましくは約500mM NaClおよび50mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、最も好ましくは約250mM NaClおよび25mMクエン酸三ナトリウムよりも低いであろう。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒(たとえばホルムアミド)の不在下で達成可能であり、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、最も好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で達成可能である。ストリンジェントな温度条件としては、通常は少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が挙げられよう。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))の濃度、および担体DNAの組込みまたは排除のようなさまざまな追加のパラメーターは、当業者には周知である。必要に応じてこれらの種々の条件を組み合わせることにより、種々のストリンジェンシーレベルが達成される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDS中、30℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で行われるであろう。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNA中、42℃で行われるであろう。これらの条件の有用な変更は、当業者には自明であろう。
【0031】
ほとんどの用途では、ハイブリダイゼーションに続く洗浄ステップもまた、ストリンジェンシーを変更する。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度および温度により規定可能である。以上のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を低下させることによりまたは温度を上昇させることにより増大可能である。たとえば、洗浄ステップのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM NaClおよび3mMクエン酸三ナトリウムよりも低く、最も好ましくは約15mM NaClおよび1.5mMクエン酸三ナトリウムよりも低いであろう。洗浄ステップのストリンジェントな温度条件としては、通常は少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、最も好ましくは少なくとも約68℃の温度が挙げられよう。好ましい実施形態では、洗浄ステップは、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、25℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、洗浄ステップは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、42℃で行われるであろう。最も好ましい実施形態では、洗浄ステップは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中、68℃で行われるであろう。これらの条件のさらなる変更は、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者には周知であり、たとえば、Benton and Davis (Science 196:180 (1977)); Grunstein and Hogness (Proc Natl Acad Sci USA 72:3961 (1975)); Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York (2001)); Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, Academic Press, New York, (1987)); および Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている。好ましくは、ハイブリダイゼーションは生理学的条件下で行われる。典型的には、相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基間の水素結合(ワトソン・クリック(Watson−Crick)型、フーグスティーン(Hoogsteen)型、または逆フーグスティーン(reversed Hoogsteen)型の水素結合でありうる)を介してハイブリダイズする。たとえば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対合する相補的核酸塩基である。
【0032】
「短鎖干渉RNA」(siRNA)とは、分解対象の標的遺伝子またはmRNAを特定するために使用される単離されたdsRNA分子(好ましくは10ヌクレオチド超の長さ、より好ましくは15ヌクレオチド超の長さ、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドの長さ)を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲は、siRNAの最も好ましいサイズである。siRNAは、siRNA二本鎖の両方の鎖が単一のRNA分子内に含まれる短鎖ヘアピンRNAをも包含しうる。siRNAは、任意の形態のdsRNA(より大きいdsRNAのタンパク質分解的切断産物、部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え産生RNA)、さらには1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または改変により天然に存在するRNAと異なる改変RNAを包含する。そのような改変は、21〜23ヌクレオチドのRNAの一末端(両末端も可)または内部などへの非ヌクレオチド材料の付加(RNAの1つ以上のヌクレオチドに)を包含しうる。最近、より大きいsiRNA分子(たとえば、25nt、30nt、50nt、さらには100nt以上)もまたRNAiを開始させるために使用可能であることが注目されている。(たとえば、Elbashir et al. (Genes & Dev. , 15:188-200, 2001), Girard et al. (Nature 442:199-202 (2006), Aravin et al. (Nature 442:203-207 (2006)), Grivna et al. (Genes Dev. 20:1709-1714 (2006)), および Lau et al. (Science 313:363-367 (2006)を参照されたい)。好ましい実施形態では、RNA分子は3’ヒドロキシル基を含有する。本発明に係るRNA分子中のヌクレオチドは、天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドをはじめとする非標準的ヌクレオチドをも包含しうる。総称して、そのような改変RNAはすべて、RNAの類似体と呼ばれる。本発明に係るsiRNAは、RNAiを媒介する能力を有する程度に十分に天然のRNAに類似していることだけが必要とされる。本明細書中で使用される場合、「RNAiを媒介する」とは、どのRNAを分解するかを識別または特定する能力を意味する。
【0033】
「マイクロアレイ」または「アレイ」とは、固体表面上または膜上に一定のパターンで固定された物体を意味する。本明細書中で使用される場合、アレイは、固体表面上または膜上に固定されたポリペプチド、cDNA、またはESTで構成される。「マイクロアレイ」および「アレイ」は、同義的に用いられる。好ましくは、マイクロアレイは、10〜1,000個の物体/cm2の密度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ1(HIPK1)、ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ2(HIPK2)、およびユビキチン特異的プロテアーゼ32(USP32)の活性を阻害する化合物を同定する方法を特徴とする。HIPK1およびHIPK2は、区別可能なセリン/トレオニンキナーゼファミリーのメンバーである(図1A)。各タンパク質のドメイン構造は公知であり、図1Bに示される。
【0035】
HIPK1、HIPK2、およびUSP32の活性は、新生物組織に由来する細胞ではその生存および分裂に不可欠であるが正常細胞では不可欠でないことが見いだされている。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のこの本質的な活性は、それらと他のタンパク質との相互作用から生じうる(たとえば図2〜4)。
【0036】
I. 候補治療化合物を同定するスクリーニング方法
本発明は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に結合するかまたはそれらの発現もしくは活性をモジュレートする化合物を同定するスクリーニング方法を提供する。
【0037】
スクリーニングアッセイ
HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現または活性をモジュレートする化合物を同定するスクリーニングアッセイは、標準的方法により実施される。スクリーニング方法は、ハイスループット技術を含みうる。そのほかに、これらのスクリーニング技術は、培養細胞で、または蠕虫、ハエ、酵母、もしくは哺乳動物のような生物で実施可能である。これらの生物でのスクリーニングは、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に相同的なポリヌクレオチドの使用を含みうる。
【0038】
そのようなスクリーニングアッセイを実施するために、多くの方法が利用可能である。一つの方法においては、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32をコードするポリヌクレオチドを発現する細胞の培地にさまざまな濃度で添加される。次に、たとえば、ポリヌクレオチド分子から調製された任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いて標準的ノーザンブロット分析(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 1997)により、遺伝子発現を測定する。遺伝子発現はまた、逆転写に続く定量的PCRによりまたはオリゴヌクレオチド(たとえばマイクロアレイ上)へのハイブリダイゼーションにより測定することも可能である。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルは、候補分子を欠損する対照培地で測定されたレベルと比較される。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現の変化を促進する化合物は、本発明に有用であると考えられ、そのような分子は、たとえば、増殖性障害の治療薬として使用可能である。
【0039】
候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のいずれか1つのモジュレーションを介して同定可能であるが、とくに有望な化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の2つまたはすべてをモジュレートするであろう。ヌクレオチドマイクロアレイを用いて多数の遺伝子の遺伝子発現を測定しうることは、当技術分野で周知である。対照サンプルと対比して候補化合物で処理された細胞のHIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現プロファイルを比較することにより、HIPK1、HIPK2、またはUSP32をモジュレートする化合物を同定することが可能である。
【0040】
本発明の一態様は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32と実質的に同一の核酸またはその断片にハイブリダイズする核酸分子を含有するマイクロアレイである。好ましくは、マイクロアレイは、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のすべてについてそれらと実質的に同一の核酸またはその断片にハイブリダイズする核酸分子を含有するであろう。本発明のさらに他の特徴は、候補化合物を同定すべくマイクロアレイに基づく候補薬剤スクリーニングがHIPK1、HIPK2、またはUSP32を含む、すでに行われたマイクロアレイ実験のデータを分析する方法である。本発明のこの態様の特徴は、実験の大部分がすでに終了しており、当技術分野で利用可能であることである。
【0041】
所望により、他の選択肢として、候補化合物の効果は、同一の一般的手段および標準的免疫学的方法により、たとえば、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的な抗体を用いるウエスタンブロッティングまたは免疫沈降により、ポリペプチド産生レベルで測定可能である。たとえば、イムノアッセイを用いて、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現を検出またはモニターすることが可能である。そのようなポリペプチドに結合しうるポリクロナール抗体またはモノクローナル抗体を任意の標準的イムノアッセイ方式(たとえば、ELISA、ウェスタンブロット、RIAアッセイ、またはタンパク質マイクロアレイ)で使用して、HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質の発現レベルを測定することが可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質の発現の変化を促進する化合物は、とくに有用であると考えられる。この場合も、そのような分子は、たとえば、増殖性障害の治療薬として使用可能である。
【0042】
他の選択肢としてまたは追加として、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的に結合してそれらの活性をモジュレートする化合物に関してスクリーニング可能である。そのような候補化合物の効力は、ポリペプチドと相互作用するその能力に依存する。そのような相互作用は、多くの標準的な結合技術および機能アッセイ(たとえば、Ausubel et al.前掲に記載のもの)を用いて容易にアッセイ可能である。たとえば、候補化合物は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32との相互作用および結合に関してin vitroで試験可能であり、その活性をモジュレートするその能力は、任意の標準的アッセイ(たとえば、本明細書に記載のもの)によりアッセイ可能である。
【0043】
特定の一実施形態では、HIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質に結合する候補化合物は、クロマトグラフィーに基づく技術を用いて同定可能である。たとえば、HIPK1、HIPK2、またはUSP32を発現するように操作された細胞から組換えHIPK1、HIPK2、またはUSP32タンパク質を標準的技術により精製することが可能であり、かつカラムに固定することが可能である。次に、候補化合物の溶液をカラムに通し、そしてHIPK1、HIPK2、またはUSP32に特異的な化合物をポリペプチドに結合するその能力に基づいて同定し、かつカラムに固定する。化合物を単離するために、カラムを洗浄して非特異的に結合した分子を除去し、次に、対象化合物をカラムから遊離させて回収する。所望により、この方法(または任意の他の適切な方法)により単離された化合物をさらに精製することが可能である(たとえば高速液体クロマトグラフィーにより)。この手法により単離された化合物もまた、たとえば、増殖性障害を治療するための治療薬として使用可能である。10mM以下の親和定数でHIPK1、HIPK2、またはUSP32に結合するものとして同定された化合物は、本発明に特に有用であると考えられる。
【0044】
他の実施形態では、HIPK1およびHIPK2の活性を阻害する化合物をキナーゼアッセイで同定する。キナーゼアッセイは、当技術分野で周知であり、特定のタンパク質のキナーゼ活性(たとえばセリン/トレオニンキナーゼ活性)のレベルを測定する。一実施形態では、キナーゼ活性は、基質のリン酸化(たとえばp53のリン酸化)により測定される。このリン酸化は、in vitroでまたは細胞に基づく系で測定可能である。このリン酸化は、たとえば、リン酸化タンパク質に特異的な抗体を用いてまたは放射性リン酸を用いて測定可能である。
【0045】
可能性のあるアゴニストおよびアンタゴニストとしては、HIPK1、HIPK2、もしくはUSP32、またはHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32をコードするポリヌクレオチドに結合することによりその活性を増大または低下させる、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、および抗体が挙げられる。可能性のあるアンタゴニストとしては、酵素であることが知られているHIPK1、HIPK2、またはUSP32のタンパク質の結合部位に結合してそれを占有する小分子が挙げられる。可能性のある他のアンタゴニストとしては、アンチセンス分子が挙げられる。
【0046】
HIPK1、HIPK2、またはUSP32をコードするポリヌクレオチド配列もまた、増殖性障害を治療するための化合物の探索および開発に使用可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32は、発現後、薬剤スクリーニング用の標的として使用可能である。このほかに、コードされたポリペプチドのアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列またはシャイン・ダルガノ(Shine-Delgarno)配列またはそれぞれのmRNAの他の翻訳促進配列を用いてアンチセンス配列を構築し、対象コード配列の発現を制御することが可能である。HIPK1、HIPK2、またはUSP32の断片をコードするポリヌクレオチド(たとえば配列番号1〜9)は、たとえば、RNA干渉を起こしてHIPK1、HIPK2、またはUSP32の発現または活性を低下させるように発現させることが可能である。追加の確認実験は、損なわれたタンパク質間相互作用(たとえば、図2〜4に示されるタンパク質との相互作用)、有糸分裂停止の誘導、およびチェックポイント制御の誘導の測定を含みうる。
【0047】
小分子は、有用な候補治療薬を提供する。好ましくは、そのような分子は、2,000ダルトン未満、より好ましくは300〜1,000ダルトン、最も好ましくは400〜700ダルトンの分子量を有する。これらの小分子は、有機分子であることが好ましい。
【0048】
被験化合物および被験抽出物
一般的には、増殖性障害を治療しうる化合物は、天然物または合成(もしくは半合成)抽出物の両方の大きいライブラリーあるいは化学ライブラリーから当技術分野で公知の方法により同定される。薬物の探索および開発の分野の当業者であれば、被験抽出物または被験化合物の正確な供給源が本発明に係るスクリーニング手順(複数可)に重要でないことはわかるであろう。したがって、本明細書に記載の方法を用いて実質的に任意の数の化学抽出物または化学化合物をスクリーニングすることが可能である。そのような抽出物または化合物の例としては、植物、真菌、原核生物、もしくは動物に由来する抽出物、発酵液、および合成化合物、さらには既存化合物の修飾体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、糖、脂質、ペプチド、およびポリヌクレオチドをベースとする化合物(ただし、これらに限定されるものではない)などの多くの化学化合物のランダム合成または特異的合成(たとえば半合成または全合成)を行うべく、多数の方法が利用可能である。合成化合物ライブラリーは市販されている。他の選択肢として、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが市販されている。そのほかに、天然のライブラリーまたは合成により作製されるライブラリーは、所望により、当技術分野で公知の方法に従って、たとえば、標準的な抽出方法および分画方法により作製される。さらに、所望により、いずれのライブラリーまたは化合物も、標準的な化学的、物理的、または生化学的方法を用いて容易に改変される。
【0049】
そのほかに、薬物の探索および開発の技術分野の当業者であれば容易にわかることであるが、増殖性障害の治療活性を有することがすでに知られている物質のデレプリケーション(dereplication)(たとえば、分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーション、および化学的デレプリケーション、もしくはそれらの任意の組合せ)またはそうした物質の重複もしくは反復の除去を行う方法を可能なかぎり利用することが望ましい。
【0050】
粗抽出物がHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32タンパク質の発現もしくは活性をモジュレートする活性、または結合活性を有することが見いだされた場合、観測された効果に関与する化学成分を単離するために陽性リード抽出物のさらなる分画が必要である。このように、抽出、分画、および精製プロセスの目的は、増殖性障害の治療に有用でありうる活性を有する粗抽出物中の化学物質の特徴付けおよび同定である。そのような不均一抽出物の分画および精製の方法は、当技術分野で公知である。所望により、増殖性障害の治療に有用な作用剤であることが明らかにされた化合物は、当技術分野で公知の方法に従って化学修飾される。
【0051】
II. 治療方法
本発明はまた、HIPK1、HIPK2、またはUSP32の活性を阻害する化合物を投与することにより患者の増殖性疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32のsiRNA構築物を投与することをも包含する。
【0052】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)の導入により開始される転写後遺伝子サイレンシングの一形態である。短い21〜25ヌクレオチドの二本鎖RNAは、センチュウにおいて(Zamore et al., Cell 101: 25-33)および哺乳動物組織培養細胞系において(Elbashir et al., Nature 411:494-498, 2001(参照により本明細書に組み入れられるものとする))、遺伝子発現をダウンレギュレートするのに有効である。哺乳動物におけるこの手法のさらなる治療有効性は、マキャフリー(McCaffrey)らによりin vivoで実証された(Nature 418:38-39. 2002)。HIPK1、HIPK2、またはUSP32のような哺乳動物遺伝子の核酸配列を用いて、特異的な21〜25ヌクレオチドのRNA配列を有する、HIPK1、HIPK2、またはUSP32標的遺伝子を不活性化する短鎖干渉RNA(siRNA)を、設計することが可能である。siRNAは、たとえば、増殖性疾患を治療するための治療薬として使用可能である。
【0053】
哺乳動物遺伝子の配列が提供されれば、対象標的遺伝子を不活性化するようにdsRNAを設計して、本明細書に記載されるように有効な遺伝子サイレンシングに関してスクリーニングすることが可能である。本明細書に開示されるdsRNAのほかに、別のdsRNAを標準的方法により設計することが可能である。
【0054】
dsRNAの特定の要件および修飾については、PCT出願WO01/75164号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。dsRNA分子はさまざまな長さでありうるが、特徴的な2〜3ヌクレオチドの3’突出末端(好ましくは、これは(2’−デオキシ)チミジンまたはウラシルである)を有する21〜23ヌクレオチドのdsRNAであるsiRNA分子を使用することが最も好ましい。siRNAは、典型的には、3’ヒドロキシル基を含む。他の選択肢として、一本鎖siRNAまたは平滑末端dsRNAが使用される。RNAの安定性をさらに向上させるために、3’ 突出部は分解に対して安定化される。一実施形態では、RNAは、アデノシンやグアノシンなどのプリンヌクレオチドを組み込むことにより安定化される。他の選択肢として、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、たとえば、(2’−デオキシ)チミド((2'-deoxy)thymide)による2ヌクレオチドのウリジン突出部の置換は、許容され、RNAiの効率に影響を及ぼさない。2’ヒドロキシル基が不在であると、組織培養培地中で突出部のヌクレアーゼ耐性が有意に向上する。
【0055】
siRNA分子は、化学合成またはショウジョウバエin vitro系を用いる組換え産生をはじめとするさまざまなプロトコルにより取得可能である。それは、Dharmacon Research Inc.やXeragon Inc.のような会社から市販品として入手可能であるか、またはそれは、Ambion社製のSilencerTM siRNA Construction Kit(カタログ番号1620)やNew England BioLabs社製のHiScribeTM RNAi Transcription Kit(カタログ番号E2000S)のような市販のキットを用いて合成可能である。
【0056】
他の選択肢として、siRNAは、PCT WO01/75164号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の方法のいずれかを用いてまたはElbashir S.M. et al. (Genes & Dev., 15:188-200, 2001)に記載のRNAのin vitro転写の標準的手順およびdsRNAアニーリング手順を用いて調製可能である。siRNAは、Elbashir S.M. et al.に記載されるように、合胞体胚盤葉ショウジョウバエ胚由来の無細胞ショウジョウバエ溶解物中、約21〜約23ヌクレオチドのsiRNAを生成するようにdsRNAがプロセシングされる条件下で、標的遺伝子の配列に対応するdsRNAをインキュベートし、次に、当業者に公知の技術を用いて単離することによっても得ることができる。たとえば、ゲル電気泳動を用いて21〜23ntのRNAを分離することが可能であり、次に、RNAをゲルスライスから溶出させることが可能である。そのほかに、クロマトグラフィー(たとえばサイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、および抗体によるアフィニティー精製を用いて、21〜23ヌクレオチドのRNAを単離することが可能である。
【0057】
Yu et al. または Paddison et al.(Proc. Natl. Acad. Sci USA, 99:6047-6052, 2002; Genes & Dev, 16:948-958, 2002;参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるように、ショートヘアピンRNA(shRNA)をRNAiに使用することも可能である。shRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方が単一のRNA分子中に含まれかつヌクレオチド(3以上)のループにより連結されるように設計される。shRNAは、以上およびYu et al. (前掲)に記載されるように、標準的in vitro T7転写合成を用いて合成および精製が可能である。また、マウスU6プロモーター配列を有する発現ベクター中にshRNAをサブクローニングすることが可能であり、次に、これを細胞中にトランスフェクトしてshRNAのin vivo発現に使用することが可能である。
【0058】
そのようなsiRNA構築物の例を以下の表1と配列番号4〜9に示される核酸配列とに示す。
【表1】
【0059】
腫瘍細胞で細胞の増殖または生存を阻止するsiRNAは、単分化能前駆細胞の分化を阻止する可能性もある。たとえば、腫瘍細胞系でアポトーシスを誘導するいくつかの抗癌化合物は、脂肪細胞または他の単分化能前駆細胞の分化を阻止する。したがって、本発明に係るHIPK1、HIPK2、およびUSP32 siRNA構築物は、以下に記載の治療方法を用いて代謝性疾患(たとえば肥満症およびII型糖尿病)ならびに神経変性疾患を治療するために使用可能である。
【0060】
治療薬としてのHIPK1、HIPK2、またはUSP32 RNAi
本発明に係る方法を用いて任意の温血哺乳動物の増殖性疾患を治療することが可能である。そのような治療が行われる増殖性疾患としては、肺癌、結腸癌、腎臓癌、骨癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、肝癌、膵臓癌、脳癌、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、腺癌、胸腺腫、形質細胞腫、または任意の他の新生物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、そのような増殖性疾患は、増大したHIPK1、HIPK2、またはUSP32発現を有することを特徴とする。温血動物としては、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、トリ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ヒヒ、または他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32治療薬
RNAi治療用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子(たとえば、dsRNA、アンチセンスRNA、またはsiRNA)の投与は、増殖性疾患を予防または治療するために行いうる。そのような核酸分子は、組織もしくは新生物に直接投与可能であるか、またはRNAiを媒介する核酸分子が安定的に発現されるように発現ベクター中に提供可能である。
【0062】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、もしくはUSP32核酸分子(たとえば、dsRNA、アンチセンスRNA、もしくはsiRNA)またはそれらの混合物を直接投与に供する場合、核酸分子は、単位用量剤形で提供され、各用量は、医薬組成物を形成すべく、標的遺伝子をサイレンシングするのに十分な所定量のそのような分子をリン酸緩衝食塩水のような製薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含有する。そのほかに、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子は、固体剤形で製剤化され、使用前に再溶解または懸濁される。医薬組成物は、場合により、他の化学療法剤、抗体、抗ウイルス剤、および外因性免疫モジュレーターを含有しうる。
【0063】
投与経路は、たとえば、静脈内、筋肉内、皮下、局所、皮内、腹腔内、脊髄内、またはex vivoでありうる。投与はまた、経粘膜手段もしくは経皮手段によるものであってもよいし、または化合物は、経口投与してもよい。経粘膜投与または経皮投与に供する場合、浸透対象のバリヤーに適合した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で広く知られており、例としては、経粘膜投与に供する場合、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。そのほかに、界面活性剤を用いて浸透を促進することが可能である。経粘膜投与は、たとえば、鼻噴霧を介するかまたは坐剤を用いるものでありうる。経口投与に供する場合、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子は、カプセル剤、錠剤、およびトニック剤のような慣用の経口投与剤形に製剤化される。局所投与に供する場合、本発明に係る核酸分子は、当技術分野で広く知られているように、軟膏剤、塗剤、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。
【0064】
RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を哺乳動物に与える場合、投与される核酸分子の用量は、哺乳動物の年齢、体重、身長、性別、一般的病状、既往病歴、疾患進行、腫瘍量などのような因子に依存して異なるであろう。用量は必要に応じて投与される。核酸分子と併用して他の治療薬剤を投与することが可能である。
【0065】
本明細書に記載の核酸分子を用いる治療の効力は、HIPK1、HIPK2、もしくはUSP32のDNA、RNA、もしくは遺伝子産物の濃度もしくは活性の変化、腫瘍退縮、または新生物に関連する病態もしくは症状の軽減を測定することにより評価可能である。
【0066】
核酸治療
核酸治療は、HIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子の増大された発現に関連する新生物を予防または改善するための他の治療手段である。アンチセンス核酸分子、dsRNA、siRNA、またはshRNAをコードする発現ベクターは、内因性のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を過剰発現する細胞に送達可能である。そのような送達により、RNAi用のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子の発現が持続される。核酸分子は、細胞による取込みが可能な形態で、かつ十分なレベルのRNAi核酸分子を産生させて増殖性疾患を有する患者のHIPK1、HIPK2、またはUSP32レベルを低下させうるように、RNAiを必要とする細胞(たとえば新生物細胞)に送達しなければならない。
【0067】
形質導入ウイルス(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)ベクターは、とくに感染効率が高くかつ組込みおよび発現が安定しているので、体細胞遺伝子治療に使用可能である(たとえば、Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997; Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996; Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997; Naldini et al., Science 272:263-267, 1996; および Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997を参照されたい)。使用しうる他のウイルスベクターとしては、たとえば、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはヘルペスウイルス、たとえばエプスタイン・バーウイルスなどが挙げられる(たとえば、Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990; Friedman, Science 244:1275-1281, 1989; Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614, 1988; Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990; Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991; Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987; Anderson, Science 226:401-409, 1984; Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991; Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989; Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993; および Johnson, Chest 107:77S-83S, 1995に記載のベクターをも参照されたい)。レトロウイルスベクターは、とくに開発が進んでおり、臨床状況下で使用されてきた(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med 323:370, 1990; Anderson et al., 米国特許第5,399,346号)。最も好ましくは、ウイルスベクターを用いて、RNAiを媒介しうるHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸分子を発現させる。
【0068】
新生物を有する患者の細胞にRNAi治療剤を導入するために、非ウイルス手段を利用することも可能である。たとえば、リポフェクション(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989; Staubinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド−ポリリシンコンジュゲーション(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)の存在下で核酸を投与することにより、または外科的条件下のマイクロインジェクションにより(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)、核酸分子を細胞中に導入することが可能である。好ましくは、核酸分子は、プラスミドベクター中に組み込まれ、リポソームおよびプロタミンと組み合わせて投与される。
【0069】
RNAi遺伝子治療に使用するための核酸分子発現は、任意の好適なプロモーター(たとえば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、またはメタロチオネインのプロモーター)から指令可能であり、かつ任意の適切な哺乳動物調節エレメントにより調節可能である。たとえば、所望により、腫瘍細胞などの特定の細胞型で優先的に遺伝子発現を指令することが知られるエンハンサーを用いて、核酸の発現を指令することが可能である。使用されるエンハンサーとしては、組織または細胞に特異的なエンハンサーとして特徴付けられものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
組合せ療法
1以上のHIPK1、HIPK2、またはUSP32核酸を単独でまたは任意の他の標準的な増殖性疾患治療と組み合わせて投与することが可能である。そのような方法は、当業者には公知であり(たとえば、Wadler et al., Cancer Res. 50:3473-86, 1990)、例としては、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、放射線療法、および増殖性疾患の治療に用いられる任意の他の治療方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
III. 実験結果
HIPK1、HIPK2、およびUSP32は新生物細胞では増殖および生存に不可欠であるが正常細胞では不可欠でないことを実証する実験結果を以下に示す。
【0072】
有糸分裂のモジュレーターのスクリーニング
2つの関連するスクリーニングを利用して、有糸分裂を介して進行をポジティブレギュレートまたはネガティブレギュレートする遺伝子産物を同定した(図5および6)。第1のスクリーニングでは、有糸分裂停止を引き起こすsiRNAを同定した。後期促進複合体やPolo様キナーゼのような有糸分裂進行をレギュレートする遺伝子産物の不活性化により、増大した有糸分裂指数を得ることが可能である。他の選択肢として、有糸分裂モータータンパク質Eg5のような有糸分裂紡錘体の機械的要素の撹乱の結果として、有糸分裂停止を間接的に引き起こすことが可能である。この場合、有糸分裂停止は、染色体が有糸分裂紡錘体に適切に結合された状態になるまでの、有糸分裂を介して進行を遅らせる紡錘体チェックポイント経路の活性化の二次的結果である。タキサン類またはEg5阻害剤モナストロールで細胞を処理するとチェックポイント依存性有糸分裂停止が誘導される。このスクリーニングにより、有糸分裂のレギュレーターおよび正常な有糸分裂進行に必要とされる有糸分裂紡錘体の構造要素を同定した。
【0073】
第2のスクリーニングでは、紡錘体チェックポイント機能に必要とされるsiRNAを同定した。紡錘体チェックポイント経路は、ヒト細胞の正確な染色体分離に重要である。この経路は、動原体−微小管の相互作用状態の結合および張力をモニターし、すべての動原体が中期板に適切に整列された状態になるまで後期の開始を阻害する。多くの腫瘍は、高い染色体誤分離率および多極紡錘体形成をはじめとする有糸分裂の欠陥を呈する。ほとんどの場合、これらの異常に関与する特定の分子欠陥は、依然として特徴付けされていない。しかしながら、最近、ヒト腫瘍において、Rb/E2F経路の異常レギュレーションにより紡錘体チェックポイント要素の発現のアップレギュレーションが起こり、その結果、チェックポイントの異常レギュレーションが起こる可能性があることが明らかにされた。他の場合には、有糸分裂異常により、癌細胞の染色体分離を可能にするチェックポイントシグナル伝達の要件の増大が起こる可能性がある。その場合、次に、紡錘体チェックポイントシグナル伝達の部分阻害により、癌細胞の選択的致死が起こる可能性がある。
【0074】
このアッセイでは、細胞をsiRNAでトランスフェクトし、次に、タキソールで処理して紡錘体チェックポイント依存性有糸分裂停止を誘導した。有糸分裂指数を低下させるsiRNAを同定した。siRNAがチェックポイントを不活性化した場合、細胞は、有糸分裂から脱出し、間期に戻る。しかしながら、核は、一般的には、有糸分裂からの異常な脱出に起因して構造が異常である。異常な核構造は、経路の撹乱の形態学的「シグネチャー」として機能する。このスクリーニングでは、有糸分裂前の間期で細胞を停止させるsiRNAをも同定した。この場合、細胞は、間期で停止するが、タキソールが作用する時点よりも前に停止するので、核は、正常な形態を有する。したがって、このスクリーニング方法では、特定の対象経路を標的にするsiRNAおよび他の機序を介して細胞増殖を阻害するsiRNAを同定した。
【0075】
一群の10,000種のsiRNAのすべてを両方のアッセイでスクリーニングした(合計60枚の384ウェルプレートに相当する)。スクリーニングでは、スクリーニングで確実にヒットするものとして既知の有糸分裂レギュレーターのPolo様キナーゼを同定することにより、この方法の妥当性を実証した。有糸分裂に関与することが知られた、このスクリーニングで同定された追加の遺伝子を、図7に示す。有糸分裂停止を引き起こす375種のsiRNA構築物を同定した(図8)。
【0076】
以上のスクリーニングで同定された遺伝子が有糸分裂に関与することを確認するために、追加のsiRNA構築物を用いて実験を行った(図6)。さらに、Quantigene Assay(Genospectra Inc.)を用いて、低減された標的遺伝子発現の度合いと有糸分裂表現型との関係を調べた。可能であれば、ノックダウンの度合いを、抗トポイソメラーゼ化合物のカンプトテシンに応答してHeLa細胞で生成された発現プロファイルと相関付けて、標的遺伝子をさらに評価した(Carson et al. Cancer Res. 64: 2096-2104, 2004)。
【0077】
方法
Qiagen druggable ムsiRNAライブラリー(5,000種の遺伝子を標的にする10,000種のsiRNA)を30枚の384ウェルプレートの形態に再フォーマットした。両方のスクリーニングに対して、細胞にsiRNAをトランスフェクトし、次に固定し、そしてDAPI(DNAの染色用)および蛍光ファロイジン(アクチン細胞骨格の染色用)で染色した。ハイスループット自動顕微鏡法を用いて、有糸分裂指数を増大させるsiRNA(タキソールの不在下)または有糸分裂指数を減少させるsiRNA(タキソールの存在下)を同定した。
【0078】
タキソールの不在下で行われたスクリーニングの陽性対照は、細胞の強い有糸分裂停止を誘導する動原体タンパク質Hec1を標的にするsiRNAを含有していた。トランスフェクション効率を測定するために、この陽性対照を各スクリーニングプレートで利用した。タキソールの存在下で行われるスクリーニングでは、siRNAの不在下の細胞は、紡錘体チェックポイントのタキソール依存性活性化に起因して有糸分裂状態で停止する。既知の紡錘体チェックポイントタンパク質Mad2を標的にするsiRNAのトランスフェクションを行うと、有糸分裂停止の逆転が起こり、その結果、細胞は間期の状態で蓄積する(図9)。この場合も、この陽性対照を各スクリーニングプレートに組み込んでトランスフェクションの妥当性をモニターした。
【0079】
トランスフェクションの約16時間前に、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタメートの存在下のOptiMem培地+1%ウシ胎仔血清(FCS)中の細胞を384ウェルプレート(黒色側面、透明底;Corning−Costar 3712)上にプレーティングした。トランスフェクションの前夜、HeLa−H2B細胞を1ウェルあたり10,000細胞(1ウェルあたり20〜30μlの全量)でプレーティングした。通常、これにより翌朝までに約20〜30%の集密状態が得られた(トランスフェクションのための集密度を意識的に低くしてあるのは、そのほうが後続の画像処理ステップに適しているからである)。
【0080】
トランスフェクションの約1〜4時間前に、FCSを含まない30μlのOptiMem培地を各ウェル中の既存の培地に添加した。ウェルを吸引し、そして35μlの上記のOptiMem培地(抗生物質は含まれるがFCSは含まれない)を添加し、そして細胞をインキュベーターに戻した。
【0081】
固定および染色のために、2×固定/染色カクテルをウェル中の培地に等量で添加した。2×固定/染色液は、2mlの37%ホルムアルデヒド、2μlのtritc−ファロイジン(DMSO中0.2mg/ml)(Sigma P−1951)、0.5μlのヘキスト33342染色液(Molecular Probes H−3570)、200μlの10%Triton X−100、および7.8mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する。次に、細胞を室温で20分間インキュベートし、そしてPBSで2〜3回洗浄した。
【0082】
一部の実験を自動化した。この場合も、最終トランスフェクション量は40μlであった。各ウェルは、8μlのOptiMem、0.5μlのGTS希釈液、および0.25μlのGeneSilencerを含有していた。384ウェルソースプレート(AbGene AB−1055)は1プレートあたり8.8μlのトランスフェクションカクテルを有していたが、ピペッティングロスを考慮して約10μlの追加量を添加した。トランスフェクションの約4〜6時間後、30%FCSと抗生物質とを有する20μlのDMEMを添加した。トランスフェクション後、表現型発生のために細胞を48時間インキュベートし、その後、処理した。タキソール添加スクリーニングでは、トランスフェクションの約32〜36時間後、タキソールを100〜150nMの最終濃度になるように添加し、次に、タキソール添加の24時間後に固定した。
【0083】
本発明の特徴の1つは、経時的ビデオ顕微鏡法の使用である。当業者であれば、この注文製造顕微鏡を用いることにより、一週間程度の長期間にわたりカバースリップ上またはマルチウェルチャンバー上の複数の位置で細胞を同時に画像化することが可能である。顕微鏡は、注文設計インキュベーター内に収容されたNikon TE2000倒立顕微鏡よりなる。この顕微鏡を用いることにより、細胞集団がsiRNAや薬剤処理のような撹乱にどのように応答するかを細胞ごとに測定することが可能である。GFPに融合されたヒストン2B(これは間期における核の形態および有糸分裂時における染色体の動態のモニタリングを可能にする)を発現する細胞を画像化した。これにより、細胞で進行する有糸分裂の過程が正常であるか異常であるかおよび細胞がアポトーシスを起こすか否を調べることが可能である。各実験において、典型的には1視野あたり100細胞を画像化し、40視野までを同時に取得することにより、1実験あたり4000細胞までの挙動に関する情報を得た。
【0084】
自動顕微鏡を用いて画像を取得した後、有糸分裂指数を決定するための処理および測定を行った。例示された標的の1つを対照として用いることにより、追加の標的のスコアを算出することが可能である。このほかに、各画像を手動検査することにより、自動測定の結果を確認し、コンピューターにより検出されない可能性のある画像の他の特徴を特定した。たとえば、有糸分裂指数を増大させることなく有糸分裂時に紡錘体異常を誘導するsiRNAを同定した。
【0085】
HIPK1、HIPK2、およびUSP32
このスクリーニングを用いて、我々は、HIPK1、HIPK2、およびUSP32を新生物組織由来の細胞の有糸分裂に不可欠なものとして同定した。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のタンパク質およびmRNAの発現は、これらの各遺伝子のsiRNA構築物で処理された細胞において低減した(たとえば図10および11)。細胞生存率は、HIPK1、HIPK2、およびUSP32のsiRNAで処理された細胞において低減した(図12〜14)。細胞生存率のこの減少は、アポトーシスの増大の指標であるカスパーゼ3活性の増大と関連していた(図15〜17)。HIPK1、HIPK2、およびUSP32のsiRNA構築物で処理することにより、細胞周期分布が変化した(図18〜22)。
【0086】
抗癌療法の標的としてのHIPK1およびHIPK2の妥当性をさらに実証することとしては、HIPK1およびHIPK2の発現が新生物組織由来の種々の細胞系で増大されることが挙げられる(図23〜25)。
【0087】
方法
細胞系
ヒト細胞系HCT116(結腸直腸癌)、M059K(膠芽腫)、A549(肺癌)、DU145(前立腺癌)、およびMDA−MB−231(乳房上皮性腺癌)をAmerican Type Culture Collectionから入手し、頒布者の推奨どおり保持した。
【0088】
siRNA配列
以下のsiRNA配列を用いてHIPK1の発現を阻害した:
H1−1:aaGGCTTGCCAGCTGAATATC(配列番号4)
H1−2:agGGAAGCTGTACACCACTAA(配列番号5)
以下のsiRNA配列を用いてHIPK2の発現を阻害した:
H2−1:tcCCGAAGTCTCCATACTAAA(配列番号6)
H2−3:aaGGGTTTGCCTGCTGAATAT(配列番号7)
以下のsiRNA配列を用いてUSP32の発現を阻害した:
U1:aaGCCTCAGTTACGTGAATAC(配列番号8)
U2:CCAGTAAAGGCTACATCAT(配列番号9)
以下のsiRNA配列を陰性対照として使用した:
LV4:GUACGUUACGCGUAACGUAtt(配列番号10)
【0089】
siRNAのトランスフェクション
トランスフェクションの前日、100μlの培地に細胞をプレーティングした。Lipofectamine 2000を用いて50nMの最終濃度でsiRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24〜48時間後、トランスフェクションミックスを新しい培地で置き換えた。
【0090】
HIPK2を検出するウエスタンブロッティング:
溶解緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5;100mM NaCl;1% NP−40;2mM EDTA;1mMオルトバナジン酸ナトリウム;1mM PMSF)中で細胞を溶解させた。使用直前に溶解緩衝液2mLあたり1錠のComplete Mini EATA−free Protease Inhibitorカクテル錠剤(Roche)を添加した。
【0091】
上記の溶解緩衝液中、氷上で細胞を30分間かけて溶解させ、次に、14,000RPM、4℃で15分間遠心して細胞片を排除した。75℃で4×NuPAGE LDS Sample Buffer(Invitrogen)を用いて上清を10分間かけて変性させ、そしてNuPAGE Bis−Tris勾配ゲル(4〜12%、Invitrogen)上で電気泳動(1ウェルあたり20〜50μgの全タンパク質)により分画した。タンパク質をニトロセルロース膜(0.45μm、Invitrogen)上に移した。非特異的結合を阻止するために、ブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳および0.1%Tween−20を含有するTBS)中、室温で膜を30分間インキュベートし、そしてHIPK2に対するモノクローナル抗体(Abnova H00028996−M03)と共に4℃で一晩インキュベートした。ブロッキング緩衝液中、室温で、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体と共に2時間インキュベートした。洗浄後、Enhanced Chemiluminiscence System(Amersham, Buckinghamshire, UK)を用いて免疫複合体を視覚化した。
【0092】
WST−1アッセイ
細胞にsiRNAをトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後、培地を交換した。新しい培地を用いてインキュベーションをさらに24時間行った後、10μlのWST1試薬を各ウェルに添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、そしてマイクロプレートリーダーを用いて440nmの波長で読み取った。基準サンプルは690nmで読み取った。
【0093】
カスパーゼ3アッセイ
細胞を0.3〜0.5×10E5細胞/ウェルで24ウェルプレート上に接種し、そして20nMの濃度のsiRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後および48時間後、製造業者の指定の溶解緩衝液(Meso Scale Discovery, LLC)を用いて細胞を溶解させた。Meso Scale Discovery社製のカスパーゼ−3アッセイを用いて溶解物を分析し、そしてMSD Sector Imager 2400を用いてアッセイ結果を読み取った。
【0094】
細胞周期の細胞分布のFACSアッセイ
siRNAによる細胞トランスフェクションの24時間後および48時間後、浮遊細胞集団を取り出して保持した。残存する付着細胞をトリプシン処理し、そして培地を添加することによりトリプシン活性を停止させた。トリプシン処理された細胞を保持された浮遊細胞サブ集団と共にポリカーボネートFACS適合試験管中にプールし、そしてペレット化し、そして上清をデカントした。0.5mlの冷PBSおよび(ボルテックスしながら)2mlの氷冷95%エタノールを逐次添加することにより、細胞を固定した。固定細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、そしてBD FACSCalibur Flow Cytometerを用いて分析した。標準的方法を用いてデータを分析した。
【0095】
他の実施形態
本発明の特定の実施形態の説明は、例示を目的として提供されている。網羅することが意図されるものでもなければ、本発明の範囲を本明細書に記載の特定の形態に限定するが意図されるものでもない。いくつかの実施形態を参照しながら本発明につい説明してきたが、特許請求の範囲に示される本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えうることは、当業者であればわかるであろう。本明細書中で参照される特許、特許出願、および出版物はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1Aは、HIPK1およびHIPK2と他のキナーゼとの関係を示す図である。図1Bは、HIPK1、HIPK2、およびHIPK3のタンパク質構造を示す図である。
【図2】図2は、HIPK1およびHIPK2が相互作用するタンパク質を示す図である。
【図3】図3は、HIPK2と指定のタンパク質IRS1および11番染色体orf66との相互作用のレベルを示すグラフである。
【図4】図4は、HIPK2による指定の基質のリン酸化の可能性を示すHIPK2と指定のタンパク質との相互作用のレベルを示す表およびグラフである。
【図5】図5は、有糸分裂停止スクリーニングの構成を示すフロー図である。
【図6】図6は、有糸分裂停止スクリーニングの概要を示す図である。
【図7】図7は、有糸分裂停止および紡錘体形成に寄与することがすでに知られている有糸分裂停止スクリーニングで同定された遺伝子を特定する表である。
【図8】図8は、特定の停止表現型を有するものとして同定された遺伝子の数を示す表である。
【図9】図9は、タキソールで処理された細胞をタキソールで処理されMAD2siRNAでも処理された細胞と比較する1対の顕微鏡写真である。
【図10】図10Aは、siRNAによるHIPK2タンパク質のノックダウン率(%)を示す表である。図10Bは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞内のHIPK2発現レベルを示すウエスタンブロットである。
【図11】図11は、HIPK1 siRNAまたはHIPK2 siRNAのいずれかでトランスフェクトされた細胞中にトランスフェクション後の指定の時間で見いだされる指定のmRNAの量を示すグラフである。
【図12】図12は、HIPK1および/またはHIPK2でトランスフェクトされた細胞の細胞死率(%)を示すグラフである。
【図13】図13Aは、HIPK1 siRNAでトランスフェクトされた細胞の細胞生存率(%)を示すグラフである。図13Bは、HIPK2 siRNAでトランスフェクトされた細胞の細胞生存率(%)を示すグラフである。
【図14】図14Aは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞の細胞生存率率(%)を示すグラフである。図14Bは、指定のsiRNA構築物で処理された細胞内に存在するHIPK2タンパク質の量を示すウエスタンブロットである。
【図15】図15は、指定のsiRNA構築物に応答するアポトーシスの増加倍率を示すグラフである。
【図16】図16は、指定のsiRNA構築物で処理された細胞のカスパーゼ3誘導および細胞生存率(%)を示すグラフである。
【図17】図17は、USP32 siRNAでトランスフェクトされた細胞のカスパーゼ活性化を示すグラフである。
【図18】図18は、細胞周期の指定の段階にある、USP32 siRNAでトランスフェクトされた細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図19】図19は、トランスフェクションの24時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたHCT116細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図20】図20は、トランスフェクションの48時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたHCT116細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図21】図21は、トランスフェクションの48時間後に細胞周期の指定の段階にある、HIPK2でトランスフェクトされたMDA−MB231細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図22】図22は、細胞周期の指定の段階にある、指定のsiRNA構築物で処理された細胞の割合(%)を示すグラフである。
【図23】図23は、正常組織におけるHIPK1の発現を示すグラフである。
【図24】図24は、種々のNCI−60細胞系におけるHIPK1の発現を示すグラフである。
【図25】図25は、種々のNCI−60細胞系におけるHIPK2の発現を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)HIPK1を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該HIPK1の生物学的活性を該化合物の不在下の該HIPK1の生物学的活性と比較するステップと、(c)該HIPK1の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該HIPK1の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項2】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HIPK1の生物学的活性がキナーゼ活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記HIPK1の生物学的活性が結合活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)HIPK2を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該HIPK2の生物学的活性を該化合物の不在下の該HIPK2の生物学的活性と比較するステップと、(c)該HIPK2の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該HIPK2の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項9】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記HIPK2の生物学的活性がキナーゼ活性である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記HIPK2の生物学的活性が結合活性である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)USP32を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該USP32の生物学的活性を該化合物の不在下の該USP32の生物学的活性と比較するステップと、(c)該USP32の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該USP32の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項16】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記USP32の生物学的活性がプロテアーゼ活性である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記USP32の生物学的活性が結合活性である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
増殖性疾患を改善する候補化合物を同定する方法であって、(a)細胞を候補化合物と接触させるステップと、(b)HIPK1、HIPK2、およびUSP32のうちの少なくとも1つの発現を、該候補化合物と接触させていない細胞中の1もしくは複数の該遺伝子の発現と比較するステップと、(c)該遺伝子のうちの少なくとも1つの発現をモジュレートする化合物を同定するステップと、を含む、上記方法。
【請求項23】
前記発現が疾患特異的性質の低下により評価される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が動物モデル中に含まれる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が疾患モデルに由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記発現が、マイクロアレイを用いて測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロアレイが核酸マイクロアレイである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロアレイがタンパク質マイクロアレイである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、HIPK1の阻害剤を該被験者に投与することを含み、HIPK1の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【請求項30】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、HIPK2の阻害剤を該被験者に投与することを含み、HIPK2の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【請求項31】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、USP32の阻害剤を該被験者に投与することを含み、USP32の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【請求項1】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)HIPK1を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該HIPK1の生物学的活性を該化合物の不在下の該HIPK1の生物学的活性と比較するステップと、(c)該HIPK1の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該HIPK1の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項2】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HIPK1の生物学的活性がキナーゼ活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記HIPK1の生物学的活性が結合活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)HIPK2を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該HIPK2の生物学的活性を該化合物の不在下の該HIPK2の生物学的活性と比較するステップと、(c)該HIPK2の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該HIPK2の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項9】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記HIPK2の生物学的活性がキナーゼ活性である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記HIPK2の生物学的活性が結合活性である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
候補治療化合物を同定する方法であって、(a)USP32を評価対象化合物と接触させるステップと、(b)該USP32の生物学的活性を該化合物の不在下の該USP32の生物学的活性と比較するステップと、(c)該USP32の生物学的活性を低下させる化合物を同定するステップと、を含み、該USP32の生物学的活性を低下させる化合物が、増殖性疾患を治療するための候補化合物である、上記方法。
【請求項16】
前記接触が無細胞混合物中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接触が細胞に基づく混合物中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記接触が組換え細胞中で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記USP32の生物学的活性がプロテアーゼ活性である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記USP32の生物学的活性が結合活性である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記増殖性疾患が、結腸癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、および肺癌よりなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
増殖性疾患を改善する候補化合物を同定する方法であって、(a)細胞を候補化合物と接触させるステップと、(b)HIPK1、HIPK2、およびUSP32のうちの少なくとも1つの発現を、該候補化合物と接触させていない細胞中の1もしくは複数の該遺伝子の発現と比較するステップと、(c)該遺伝子のうちの少なくとも1つの発現をモジュレートする化合物を同定するステップと、を含む、上記方法。
【請求項23】
前記発現が疾患特異的性質の低下により評価される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が動物モデル中に含まれる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が疾患モデルに由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記発現が、マイクロアレイを用いて測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロアレイが核酸マイクロアレイである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロアレイがタンパク質マイクロアレイである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、HIPK1の阻害剤を該被験者に投与することを含み、HIPK1の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【請求項30】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、HIPK2の阻害剤を該被験者に投与することを含み、HIPK2の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【請求項31】
被験者の増殖性疾患を治療する方法であって、USP32の阻害剤を該被験者に投与することを含み、USP32の阻害剤がsiRNA構築物である、上記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2009−526551(P2009−526551A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555333(P2008−555333)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/003974
【国際公開番号】WO2007/095321
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/003974
【国際公開番号】WO2007/095321
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】
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