説明

木材防腐剤および木材の防腐方法

本発明は、ナトリウムチャネル遮断殺虫剤と、コナゾール類およびエルゴステロール生合成阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種の殺菌・殺カビ剤とを含んでなる、実質的に無金属の木材防腐剤を用いた木材を防腐するための方法を提供する。本発明はまた、このような木材防腐剤配合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムチャネル遮断殺虫剤と、コナゾール類およびエルゴステロール生合成阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種の殺菌・殺カビ剤とを含んでなる、実質的に無金属の木材防腐剤を用いた木材を防腐するための方法を提供する。本発明はまた、このような木材防腐剤配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロム化ヒ酸銅(CCA)は、木材腐朽菌・カビ(wood−rotting fungi)および木材腐朽昆虫(wood−destroying insects)による侵蝕に対して木材を保護する、普通に用いられる木材防腐剤である。CCAは効果的で、持続的な保護を提供するが、CCA−処理した木材からの浸出物の潜在的な健康および環境に対する影響についての関心が、その使用を削減している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CCAまたはその他の重金属含有化合物による潜在的な健康および環境に対する懸念がなく、低施用量で効果的である、代替の木材防腐剤に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は:
a)構造(I)を備えるナトリウムチャネル遮断殺虫剤と、
b)コナゾール類およびエルゴステロール生合成阻害剤よりなる群から選択される殺菌・殺カビ剤とを含んでなる木材防腐組成物を提供する。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、
=Hであり、
はHまたはC〜Cアルキルであるか;または
およびRは一緒になって−O−、−CH−、−CHCH−、または−OCH−を形成することができ;
−N−QはC=N−NまたはN−N=Cであり;
AおよびA’は独立してO、CH、NH、またはNR’であり、ただしAおよびA’は両方ともOまたは両方ともNR’であることはないか;または
AおよびA’は一緒になってCHであり;
R’=Hまたはアルキルであり;
=H、アリル、プロパルギル、アルキル、COR”、COR”、またはCHCOR”であり;
=アリール、COR”、またはアルキルであり;
R”=アルキルであり;
X=H、ハロゲン、OCH、R、またはOR(ここで、R=フルオロアルキルである)であり;そして
Y=アルキル、ハロゲン、OR、R、アルコキシ、またはニトロである。
【0007】
本発明はまた、木材と、
a)構造(I)を備えるナトリウムチャネル遮断殺虫剤と、
b)コナゾール類およびエルゴステロール生合成阻害剤よりなる群から選択される殺菌・殺カビ剤とを含んでなる木材防腐組成物とを
接触させることを含んでなる木材を防腐するための方法を提供する。
【0008】
【化2】

【0009】
式中、
=Hであり、
はHまたはC〜Cアルキルであるか;または
およびRは一緒になって−O−、−CH−、−CHCH−、または−OCH−を形成することができ;
−N−QはC=N−NまたはN−N=Cであり;
AおよびA’は独立してO、CH、NH、またはNR’であり、ただしAおよびA’は両方ともOまたは両方ともNR’であることはないか;または
AおよびA’は一緒になってCHであり;
R’=Hまたはアルキルであり;
=H、アリル、プロパルギル、アルキル、COR”、COR”、またはCHCOR”であり;
=アリール、COR”、またはアルキルであり;
R”=アルキルであり;
X=H、ハロゲン、OCH、R、またはOR(ここで、R=フルオロアルキル)であり;そして
Y=アルキル、ハロゲン、OR、R、アルコキシ、またはニトロである。
【0010】
本発明はまた、本発明の木材防腐方法で処理した物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、木材腐朽菌・カビおよび木材腐朽昆虫による侵蝕に対して、木材を防腐するための方法および木材を保護する方法を提供する。本発明の方法は、昆虫および/または菌・カビによる深刻な侵蝕の抑止および昆虫および/または菌・カビに対する予防的な保護の両方に対して好適である。本発明の方法は、ひき材、製材されたばかりの角材または老化した角材、および幅広い種類の硬材および軟材を含む沢山の種類および形態の木材について用いるのに好適である。木材が木材製品に組み込まれる前に木材を処理するか、または木材製品自体を処理することにより、この方法を、積層製品、合板および配向性ボードなどの木材製品を保護するために用いることもできる。
【0012】
本発明は、木材と、好適な殺菌・殺カビ剤および構造(I)のナトリウムチャネル遮断殺虫剤を含んでなる組成物とを接触させることにより実施される。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、
=Hであり、
がHまたはC〜Cアルキルであるか;または
およびRは一緒になって−O−、−CH−、−CHCH−、または−OCH−を形成することができ;
−N−QはC=N−NまたはN−N=Cであり;
AおよびA’は独立してO、CH、NH、またはNR’であり、ただしAおよびA’は両方ともOまたは両方ともNR’であることはないか;または
AおよびA’は一緒になってCHであり;
R’=Hまたはアルキルであり;
=H、アリル、プロパルギル、アルキル、COR”、COR”、またはCHCOR”であり;
=アリール、COR”、またはアルキルであり;
R”=アルキルであり;
X=H、ハロゲン、OCH、R、またはOR(ここで、R=フルオロアルキルである)であり;そして
Y=アルキル、ハロゲン、OR、R、アルコキシ、またはニトロである。
【0015】
本発明の木材防腐剤組成物において用いられる好適な殺虫剤は、そのすべてが構造(I)により記載されている通りである、ピラゾリン、インダゾール、オキシインダゾール、ピラゾリンカルボキサニリド、ピリダジン、オキサジアジン、トリサイクリックピリダジン、トリサイクリックオキサジアジン、およびトリサイクリックトリアジンよりなる群から選択される。
【0016】
一実施形態において、Xは、ハロゲン(F、Cl、またはBr)またはCFであり、最も好ましくは4−位にある。
【0017】
他の実施形態において、RおよびRは一緒になってCHである。
【0018】
他の実施形態において、Q−N−QはC=N−Nである。
【0019】
他の実施形態において、AはOあるいはCHおよびA’はCH、またはA’はOおよびAはCHである。
【0020】
他の実施形態において、RおよびRはCOMeであり、ここでMeはメチルである。
【0021】
他の実施形態において、YはCFまたはOCFである。
【0022】
さらなる実施形態において、インドキサカルブおよびその代謝生成物は殺虫剤である。インドキサカルブは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)(ISO)によってメチル(4aS)−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[(メトキシカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)−カルボキシレートに付与された慣用名である。重要なのは、インドキサカルブとその不活性(R)−異性体との30:70〜100:0の比での混合物である。インドキサカルブとその不活性(R)−異性体との1:1混合物もまた重要である。インドキサカルブとその不活性(R)−異性体との3:1混合物もまた重要である。特に重要なのは、その不活性(R)−異性体が5%未満であるインドキサカルブである。
【0023】
上記の列挙において、単独でまたは複合語「フルオロアルキル」のいずれかにおいて用いられた用語「アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、または異なるブチル異性体などの直鎖または分岐アルキルを含む。「アルコキシ」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、および4種の異なるブトキシ異性体が挙げられる。用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む。さらに、複合語「フルオロアルキル」において用いた場合には、「アルキル」は部分的にまたは完全にフッ素原子で置換され得る。「フルオロアルキル」の例としては、FC、HFC、およびCFCHが挙げられる。一般的には、C〜Cアルキルおよびフルオロアルキル基が好ましい。
【0024】
「アリール」とは、自由原子価が芳香族環の炭素原子についてである一価の芳香族基を意味する。アリールは、一重結合またはその他の基によって縮合、結合していてもよい芳香族環を一個もしくはそれ以上有していてもよい。
【0025】
本発明の木材防腐剤組成物は、少なくとも1種のナトリウムチャネル遮断殺虫剤を包含する。ナトリウムチャネル遮断殺虫剤(類)に追加して、木材防腐剤組成物はまた、ナトリウムチャネル遮断以外の作用の形態により機能する、1種もしくはそれ以上の殺虫剤を含有することができる。例えば、カルバメートおよび有機リン酸塩殺虫剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤として機能し、ナトリウムチャネル遮断殺虫剤と組み合わせて用いることが可能である。好適な有機リン酸塩殺虫剤としては、クロルピリホスおよびジクロルボスが挙げられる。ナトリウムチャネル遮断殺虫剤と組み合わせて用いることができるその他の殺虫剤としては、フェンバレレートおよびフィプロニルが挙げられる。
【0026】
本発明の木材防腐剤組成物は、木材腐朽担子菌に対して活性な殺菌・殺カビ剤の群から選択される殺菌・殺カビ剤を含有する。殺菌・殺カビ剤(類)は、未処理木材における木材腐朽の主な原因である、白色腐朽、褐色腐朽、およびソフト腐朽菌・カビの増殖を防止するためのコナゾール類およびエルゴステロール生合成阻害剤の群から選択される一つもしくはそれ以上の殺菌・殺カビ剤を含んでなる。本発明において有用であるコナゾール類としては、クリンバゾール、クロトリマゾール、イマザリル、オキスポコナゾール、プロクロラズ、トリフルミゾール、アザコナゾール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジクロブトラゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール−M、エポキシコナゾール、エタコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、フルコナゾール、フルコナゾール−シス、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、キンコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール、およびウニコナゾール−Pが挙げられる。本発明において有用なエルゴステロール生合成阻害剤としては、アルジモルフ、ベンザモルフ、カルバモルフ、ジメトモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、フルモルフ、およびトリデモルフなどのモルホリン殺菌・殺カビ剤が挙げられる。
【0027】
一つもしくはそれ以上の木材腐朽菌・カビに対して効果的であると見出されてきたその他の殺菌・殺カビ剤としては、カルボキシン、イプロジオン、フェンピクロニル、トリフェニルホウ素、フェルバム、フェンピクロニル、カパホール、8−ヒドロキシキノリン、ナーバム、オキシカルボキシン、シプロジニル、クロロタニル、アクサオキシストロビン、トリフロキシストロビン、チラム、フルアジナム、テラゾール、カルベンダジム、およびベノミルが挙げられる。これらの殺菌・殺カビ剤は、本発明において、一つもしくはそれ以上のコナゾール類またはエルゴステロール生合成阻害剤と組み合わせて用いることができる。
【0028】
特に効果的である殺菌・殺カビ剤の組み合わせは、個別の殺菌・殺カビ剤が、異なるおよび相補的な作用の形態を有するものである。一つの群としての殺菌・殺カビ剤は、幅広い種類の作用の形態を示すことが知られている。これらの作用の形態は脱共役剤、キナーゼ阻害剤、または金属キレート剤として機能し、または、コハク酸脱水素、呼吸、チュービュリン形成、核酸生合成、細胞分裂、アセトアルデヒド脱水素、またはメチオニン生合成などの代謝活動に影響を与えることが知られている。例えば、トリアゾール殺菌・殺カビ剤(例えば、フルシラゾール、テブコナゾール、およびプロピコナゾール)は、ステロール生合成阻害剤として機能する。出願人は、コナゾール(フルシラゾールなど)と、カルベンダジム(チュービュリン形成に作用するカルバメート)またはフェンプロピモルフ(エルゴステロール生合成阻害剤としても機能するモルホリン)との組み合わせは、木材腐朽菌・カビに対して相乗的な保護を提供することを見出した。
【0029】
本発明の木材防腐方法においては、防腐されるべき木材が、好適な殺菌・殺カビ剤(上記した通り)およびナトリウムチャネル遮断殺虫剤(上記した通り)と接触させられる。木材を、殺虫剤および殺菌・殺カビ剤に順次に接触させることも可能であるが、または、木材防腐剤調合物において、殺虫剤および殺菌・殺カビ剤を担体溶剤およびその他の添加剤と組み合わせることも可能である。
【0030】
好適な担体溶剤としては、用いられた木材防腐剤調合物および、活性な作用物質または作用物質の組み合わせの適用に用いられた方法に応じて、極性および非極性有機溶剤の両方、水、およびこれらの混合物が挙げられる。水溶液または有機水溶液、エマルジョン、および/または懸濁液が用いられ得る。活性な作用物質の液体の担体における溶解性を増加または改善するために、乳化剤または溶解剤が用いられ得る。
【0031】
本発明において有用な極性有機溶剤は、ヒドロキシ、エーテル、ケト、またはエステル基を含有するものである。本発明の実施形態は、アルコール、グリコール、グリコエーテルジアセトンアルコール、非水溶性ポリオール、およびこれらのエステルである極性溶剤を含む。
【0032】
好適な非極性溶剤としては、鉱物油、ナフサ油、スピンドル油、石油、テレピン油、テルペン炭化水素、およびアルキルベンゼンを含む脂肪族および芳香族炭化水素が挙げられる。
【0033】
好適な添加剤としては、固定剤、軟化剤、乳化剤、架橋剤、溶液メディエータ、顔料、染料、耐蝕剤、臭気中和剤(odor correctors)、pH−調節剤、紫外線安定剤、ワックス、乾性油が挙げられる。
【0034】
ナトリウムチャネル遮断殺虫剤は、木材防腐剤配合物中に、調合物の総重量の約1ppm〜10重量%の濃度で存在する。殺菌・殺カビ剤は、木材防腐剤配合物中に、約1ppm〜10重量%の濃度で存在する。本発明の実施形態においては、エルゴステロール生合成阻害剤は、木材防腐剤調合物中の殺菌・殺カビ剤の少なくとも50モル%を構成する。
【0035】
本発明の木材の防腐方法において、木材の接触は、木材を有効量の木材防腐剤調合物でコーティング、塗布(painting)、吹付け、噴霧(atomizing)、浸漬(dipping)、または含浸(impregnating)することにより、実施することができる。好適な含浸方法としては、液浸(soaking)、浸漬、加圧処理、真空処理および二重真空処理が挙げられる。加圧処理は、大きい部品の木材、または、水あるいは湿った土壌と接触して用いられることとなる木材、またはシロアリあるいはその他の木材腐朽昆虫が発生している領域で用いられることとなる木材に対して特に有用である。
【実施例】
【0036】
実施例1
活性木材防腐剤を同定するための6−ウェルプレート試験法に対する手順
8種の菌・カビに対する殺菌・殺カビ剤の最低阻害濃度を、6−ウェルマイクロタイタープレートで測定した。最低阻害濃度は、7日後に菌・カビの増殖がないことが明らかである最低濃度として定義される。結果を表1に示す。8種の菌・カビの群をスクリーンで用いて、木材の防腐に有効な活性成分を同定した。8種の菌・カビ、これらの分類、およびこれらを培養するのに用いた増殖培地を以下に列挙する:
【0037】
【表1】

【0038】
増殖培地は、ディフコ(Difco)(メリーランド州、スパークスのベックトンディクソンアンドコーポレーション(Beckton Dickinson and Co.,Sparks,MD)から)から購入した。増殖培地を水に加えて2%w/vとし、121℃で30分加圧滅菌した。加圧滅菌した培地を約50℃まで冷却した。テスト薬品を、個々に10mg/mLでDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解して、原液を生成した。適切な量の原液を、次いで適切な増殖培地に50℃で添加して、個々のテスト薬品を種々の濃度で含有するテスト培地を構成した。10mLの培地を6−ウェルプレートのウェルの各々に添加し、室温で固化させた。それぞれのプレートについて、第一のウェルは薬品を含まず、および残りの5つのウェルは、特定のテスト薬品を、5つの異なる濃度で含有していた。8種のテスト生体について上に列挙した8つの培地を用いて、8つのこのようなプレートをそれぞれの薬品について調製した。
【0039】
培地を固化させ冷却させた後、適切な菌・カビ培養物からの新鮮な成長した菌糸体を有する寒天増殖培地のプラグ(約2mm×2mm)を各ウェルに接種するのに用いた。プレートをインキュベータ内に配置すると共に菌・カビの増殖を監視した。4〜7日後、増殖を人が評価した。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
実施例2
フルシラゾール配合物のソイルブロックテスト
ソイルブロックテストについては、米国木材保存協会AWPA(American Wood Preservers’ Association)標準E10−01にリストされている手法を、付記したいくつかの変形と共に用いた。
【0043】
加圧処理については、木材ブロック(3/4立方インチ)を、約40℃で恒量まで乾燥させたサザンイエローパイン(SYP)またはカバノキから形成し、加圧処理前に計量した。典型的な実験においては、ブロックを、オートクレーブ中にて適切な処理溶液に浸した。10〜15インチHg(380〜510トール)の真空を30分適用し、次いで、150psi(1.034MPa)で1時間加圧した。次いで、処理溶液を除去し、10〜15インチHg(380〜510トール)の真空を再度ブロックに対して15分適用した。ブロックを計量する前または後に計量するため密封プラスチックバッグ内で保管する前に、表面上の過剰な処理溶液を蒸発(実験室換気フード内で30分)させた。
【0044】
ソイルブロックテストについて、木材ブロックをベントインキュベータ内にて40℃で、これらが恒量に達するまで調整した(16〜18時間)。ブロックを、次いで、100℃で30分、ドライサイクル下で加圧滅菌した。40%の保水能力を備えたソイル試料を、これらのテストについて用いた。60mLの水および92〜100gのソイルを228mLのフレンチスクウェアーボトル(French square bottle)中に追加し、および121℃で30分加圧滅菌した。フィーダストリップ、1/8インチ×1−1/8インチ×1−3/8インチ(約0.31cm×2.86cm×3.49cm)、カバノキブロックのためのカバノキおよびSYPブロックのためのSYPを、ソイルの頂部に配置した。テストブロックを、フィーダストリップの頂部、および、新鮮な成長した菌・カビ(結果に列挙した)を含有する寒天培地ストリップ(約3mm×30mm)を接種したボトルの内容物の頂部に配置した。褐色腐朽菌・カビ(ポスティアプラセンタ(Postia placenta))については、SYPブロックおよびフィーダストリップを用いた。白色腐朽(イルペックスラクテウス(Irpex lacteus))については、カバノキブロックおよびフィーダストリップを用いた。ボトルに緩く栓をして、湿度約75%および25℃で3ヶ月培養させた。次いでブロックをボトルから除去し40℃で、恒量までベントインキュベータ内で乾燥させた(16〜18時間)。各ブロックの重量を測定すると共に、重量損失割合を算出した。
【0045】
5%酢酸および50、100、200ppmフルシラゾール溶液を、適切な量の100mg/mLのフルシラゾールの原液をDMSO、水、および氷酢酸と混合することにより調製した。木材ブロックをこれらの溶液で、上述のように処理した。対照として、2%DMSO/5%酢酸溶液も調製し、一組のブロックの処理に用いた。
【0046】
処理後に、ブロックを、換気フード内にて一週間老化させた。ソイルブロックテストを行う前に、ブロックの半数を、水での浸出テストにさらに一週間処した。浸出については、ブロックをビーカー内に配置し、ブロック当たり30mLの水を追加した。ブロックを、一定の攪拌下に室温で、毎日換水しながら一週間保温した。
【0047】
【表4】

【0048】
これらの結果は、200ppmフルシラゾール溶液で処理したSYPブロックは、褐色腐朽菌・カビP.プラセンタ(placenta)に起因する腐朽に対して保護されていることを示す。同一の溶液で処理されたカバノキブロックもまた、白色腐朽菌・カビI.ラクテウス(lacteus)による腐朽から顕著に保護されていた。
【0049】
実施例3
フルシラゾール/フェンプロピモルフ配合物のソイルブロックテスト
160g/Lフルシラゾールおよび375g/Lフェンプロピモルフを含有するエマルジョンベースの配合物中において、プルトン(Pluton)(登録商標)トリアゾールベースの農業用殺菌・殺カビ剤(デラウェア州ウィルミントンのデュポンAgプロダクト(DuPont Ag Products,Wilmington,DE))を、その褐色および白色腐朽菌・カビに対して木材を保護する能力についてテストした。
【0050】
プルトン(Pluton)(登録商標)殺菌・殺カビ剤を、水中で0.2、0.5および1%に稀釈し、この溶液を用いてSYPおよびカバノキブロックを上記の通り処理した。これらの溶液中の活性成分の濃度は、0.2%溶液については320ppmフルシラゾール、750ppmフェンプロピモルフであり;0.5%溶液については800ppmフルシラゾール、1775ppmフェンプロピモルフであり、および1%溶液については1600ppmフルシラゾール、3750ppmフェンプロピモルフである。浸出およびソイルブロックテストを、上記の実施例2に記載した通り行った。
【0051】
【表5】

【0052】
これらの結果に示されている通り、320ppmフルシラゾール+750ppmフェンプロピモルフの溶液でさえも、SYPおよびカバノキブロックの処理に用いられた場合には、P.プラセンタ(placenta)およびI.ラクテウス(lacteus)の両方に対する優れた保護を示す。
【0053】
実施例4
フルシラゾール/カルベンダジム配合物のソイルブロックテスト
フルシラゾール(0.75g)およびカルベンダジム(0.75g)を150mLのDMSO中に溶解した。この溶液を攪拌下に1.8Lの7%酢酸に添加し、および最終的な体積を2Lに水で調整した。得られた溶液は7.5%DMSO、6%酢酸、および375ppmの各フルシラゾールおよびカルベンダジムを含有していた。溶液は、わずかに曇っていたが、溶液を室温で一週間静置した場合においても沈殿物の沈殿はなかった。
【0054】
SYPブロックを、この溶液で上記の通り(実施例2)加圧処理した。処理の後、ブロックを複数の群に分け、フード内で2日間または14日間老化させた。ブロックを、次いで、ビーカー内に配置し、水中(ブロック当たり水50mL)に、一定の攪拌下に2週間浸した。週末を除き毎日換水した。2週間後、実施例2に記載の通り、ブロックを40℃のインキュベータ内で恒量となるまで乾燥させ、ソイルブロックテストについて用いた。
【0055】
2種の褐色腐朽菌・カビ、G.トラベウム(trabeum)およびP.プラセンタ(placenta)を、このソイルブロックテストで用いた。手順は、1)SYPブロックおよびフィーダストリップだけを用い、および2)菌・カビI.ラクテウス(lacteus)をG.トラベウム(trabeum)に替えたこと以外は実施例2と同様である。
【0056】
【表6】

【0057】
これらの結果により示されるように、375ppmの各フルシラゾールおよびカルベンダジムは、P.プラセンタ(placenta)およびG.トラベウム(trabeum)に対して良好な保護を示した。固定時間は、重大な違いを結果にもたらさなかった。
【0058】
実施例5
フルシラゾールおよびカルベンダジムのソイルブロックテスト
23.2%フルシラゾールおよび11.2%(w/w)カルベンダジムを含有する配合物も、その木材を保護する能力についてテストした。1%(w/v)溶液を用いて、SYPブロックを実施例2に記載の通り処理した。この溶液は、2,500ppm(0.25重量%)フルシラゾールおよび1,250ppmカルベンダジムを含有していた。実施例4と同一の手法を用いて、SYPブロックを処理し、老化させ、浸出させ、およびテストした。
【0059】
【表7】

【0060】
これらの結果により示されるように、SYPブロックのフルシラゾール/カルベンダジム溶液による処理は、G.トラベウム(trabeum)およびP.プラセンタ(placenta)の両方に対して良好な保護を示した。
【0061】
実施例6
フルシラゾール/カルボキシン配合物のソイルブロックテスト
5%酢酸および、25ppm/25ppm、50ppm/50ppm、および100ppm/100ppmフルシラゾール/カルボキシンの溶液を用いて、上記実施例5の通りソイルブロックテストを実施した。
【0062】
【表8】

【0063】
算出した処理量は、SYPについては合計で約40、約80、および約160ppm、および、カバノキについては合計で約45、約100、および約200ppmであった。
【0064】
フルシラゾール/カルボキシン混合物による保護は、フルシラゾール単独によるものより低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)構造(I)
【化1】


[式中、
=Hであり、
がHまたはC〜Cアルキルであるか;または
およびRは一緒になって−O−、−CH−、−CHCH−、または−OCH−を形成することができ;
−N−QはC=N−NまたはN−N=Cであり;
AおよびA’は独立してO、CH、NH、またはNR’であり、ただしAおよびA’は両方ともOまたは両方ともNR’であることはないか;または
AおよびA’は一緒になってCHであり;
R’=Hまたはアルキルであり;
=H、アリル、プロパルギル、アルキル、COR”、COR”、またはCHCOR”であり;
=アリール、COR”、またはアルキルであり;
R”=アルキルであり;
X=H、ハロゲン、OCH、R、またはORであり;
そして
Y=アルキル、ハロゲン、OR、R、アルコキシ、またはニトロである]
のナトリウムチャネル遮断殺虫剤と、
b)コナゾール類、エルゴステロール生合成阻害剤およびこれらの混合物よりなる群から選択される殺菌・殺カビ剤と
を含んでなる木材防腐組成物。
【請求項2】
XがF、Cl、Br、およびCFよりなる群から選択される請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項3】
およびRが一緒になってCHである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項4】
−N−QがC=N−Nである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項5】
AがOまたはCHであり且つA’がCHであるか、あるいはA’がOであり且つAがCHである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項6】
およびRがCOMeである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項7】
YがCFまたはOCFである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項8】
Xが4−Clであり、RおよびRがCOMeであり、RおよびRが一緒になってCHであり、AがOであり且つA’がCHであり、YがOCFであり、そしてQ−N−QがC=N−Nである請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項9】
カルバメートアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、有機リン酸塩アセチルコリン阻害剤およびこれらの混合物から選択される殺虫剤をさらに含んでなる請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項10】
有機リン酸塩アセチルコリン阻害剤がクロルピリホスまたはジクロルボスである請求項9に記載の木材防腐組成物。
【請求項11】
フェンバレレートまたはフィプロニルをさらに含んでなる請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項12】
殺菌・殺カビ剤がクリンバゾール、クロトリマゾール、イマザリル、オキスポコナゾール、プロクロラズ、トリフルミゾール、アザコナゾール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジクロブトラゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール−M、エポキシコナゾール、エタコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、フルコナゾール、フルコナゾール−シス、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、キンコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール、ウニコナゾール−P、およびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1種のコナゾールを含んでなる請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項13】
アルジモルフ、ベンザモルフ、カルバモルフ、ジメトモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、フルモルフ、トリデモルフ、およびこれらの混合物よりなる群から選択されるエルゴステロール生合成阻害剤をさらに含んでなる請求項12に記載の木材防腐組成物。
【請求項14】
カルボキシン、イプロジオン、フェンピクロニル、トリフェニルホウ素、フェルバム、フェンピクロニル、カパホール、8−ヒドロキシキノリン、ナーバム、オキシカルボキシン、シプロジニル、クロロタニル、アクサオキシストロビン、トリフロキシストロビン、チラム、フルアジナム、テラゾール、カルベンダジム、ベノミル、およびこれらの混合物よりなる群から選択される殺菌・殺カビ剤をさらに含んでなる請求項12に記載の木材防腐組成物。
【請求項15】
殺菌・殺カビ剤がアルジモルフ、ベンザモルフ、カルバモルフ、ジメトモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、フルモルフ、トリデモルフ、およびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1種のエルゴステロール生合成阻害剤を含んでなる請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項16】
カルボキシン、イプロジオン、フェンピクロニル、トリフェニルホウ素、フェルバム、フェンピクロニル、カパホール、8−ヒドロキシキノリン、ナーバム、オキシカルボキシン、シプロジニル、クロロタニル、アクサオキシストロビン、トリフロキシストロビン、チラム、フルアジナム、テラゾール、カルベンダジム、ベノミル、およびこれらの混合物よりなる群から選択される殺菌・殺カビ剤をさらに含んでなる請求項15に記載の木材防腐組成物。
【請求項17】
固定剤、軟化剤、乳化剤、架橋剤、溶液メディエータ、顔料、染料、耐蝕剤、臭気中和剤、pH−調節剤、紫外線安定剤、ワックス、乾性油およびこれらの混合物よりなる群から選択される添加剤をさらに含んでなる請求項1に記載の木材防腐組成物。
【請求項18】
木材物品を請求項1に記載の木材防腐組成物と接触させて処理した木材物品を製造することを含んでなる、木材物品を木材腐朽昆虫または木材腐朽菌・カビから保護するための方法。
【請求項19】
木材防腐組成物が極性および非極性有機溶剤、水、およびこれらの混合物よりなる群から選択される溶剤をさらに含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
接触が木材物品を有効量の木材防腐組成物でコーティング、塗布、吹付け、噴霧、浸漬、液浸、加圧処理、真空処理または二重真空処理することを含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法により製造される処理された木材物品。

【公表番号】特表2007−532547(P2007−532547A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507410(P2007−507410)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/011402
【国際公開番号】WO2005/099982
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】