説明

木材防腐剤としてのトロポロン錯体

トロポロンと銅および/または亜鉛との錯体がアンモニア溶液に可溶化されて、木材に完全に浸透する防腐剤溶液が提供される。木材からアンモニアを除去することで、錯体は木材に安定的に定着して持続性の防腐効果をもたらした。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される米国仮特許出願第60/755,242号明細書の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、木材および他のセルロース系材料に対する防腐剤に関する。具体的には、セルロース系材料の保護は、トロポロンとの銅および/または亜鉛錯体の溶液を適用することによって提供される。これらの錯体は、セルロース系材料に直ちに浸透する。
【背景技術】
【0003】
菌・カビ類による木材および他のセルロース系材料の腐朽、およびシロアリによる木材の消尽は顕著な経済的損失をもたらす。最近まで、最も広範に用いられていた木材防腐剤はクロム化ヒ酸銅(CCA)である。しかしながら、住宅用構造物における使用のためのCCAの製造は、CCA処理材木に用いられる砒素およびクロムの環境に対する影響および安全性に関する懸案による問題のために2004年1月現在規制されている。CCA代替品として、砒素を含有しないおよびクロムを含有しない木材防腐剤が求められている。処理済の木材中で効果的な殺菌・カビ剤である銅および他の金属イオンの処理済の木材における定着が課題である。金属塩は、一般に水溶性であり、処理済み木材から容易に浸出して、防腐機能の損失をもたらす。
【0004】
米杉および他のヒノキ科の木の腐朽耐性は、ヒノキチオールとしても知られる天然化合物β−ツジャプリシンに関連している。これは、殺菌・カビ活性および殺虫活性を有する天然のトロポロンである。トロポロンは、褐色腐朽菌および白色腐朽菌の両方に対して効果的であることが証明されている[非特許文献1]。
【0005】
特許文献1は、シトロネロール、トリメチルナフタレン、および青森県産米檜から抽出した油の主成分での表面木材保存着色処理を開示している。米檜油は、天然トロポロンヒノキチオールおよびβ−ドラブリンを含有する。硫酸銅もまた含まれ得る。
【0006】
特許文献2は、ナトリウムケイ酸の溶液、ミョウバン、硼酸ならびに、ひのきおよび米檜から抽出したトロポロン溶液を混合することにより形成されるポリマーフィルムである木材用昆虫忌避剤および腐朽防止コーティングを開示する。
【0007】
特許文献3は、メタノール中に溶解され、乳化剤と組み合わされ、および木材浸漬剤として用いられる場合の、トロポロンまたはトロポロンのZn、Mg、Mn、CaまたはBa塩の殺虫性化合物としての使用を開示する。
【0008】
特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7は、すべてトロポロンを含有する木材防腐剤を開示する。開示の木材防腐剤は他の化合物を含み得、および、異なる有機溶剤の使用、エマルジョンを形成する異なる界面活性剤の使用、および異なる油の使用などの、トロポロン溶液を形成する種々の手段を用い得る。
【0009】
メタノールおよび他の有機溶剤の引火性および/または毒性のため、これらの物質を含有する木材防腐剤溶液の使用および製造は危険である。いずれかの木材処理プロセス後の、例えばメタノールの回収の必要性のため、メタノールベースの防腐剤は不経済的である。
【0010】
【特許文献1】特開平01/038,203号公報
【特許文献2】特開平10/291,205号公報
【特許文献3】特開昭49/055,829号公報
【特許文献4】特開第1997/175,916号公報
【特許文献5】特開第2001/310,302号公報
【特許文献6】特開第2003/3480号公報
【特許文献7】特開第2004/043,327号公報
【非特許文献1】バヤ(Baya)ら、(2001年)「ペストマネージメントサイエンス(Pest Management Sci.)」第57巻、833〜838ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、安全に使用でき、木材に浸透することが可能であり、それでいてなお、木材に定着されて、長期の保護を提供する高度に水溶性の、トロポロンを含有する木材防腐剤溶液を提供する問題がいまだ残っている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態は、混合剤中に、(a)(i)トロポロン、および(ii)銅イオン、亜鉛イオンまたはこれらの混合物を含んでなる錯体;および(b)アンモニアおよび/またはエタノールアミンを含んでなる水性組成物であって;成分(b)が錯体を可溶化させるに十分な量で存在する水性組成物を提供する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、上述の成分(a)および(b)を組み合わせること、およびこれから形成された錯体を可溶化させることにより組成物を調製する方法を提供する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、セルロース系材料、またはセルロース系材料を含んでなる物品を保存する方法であって、セルロース系材料または物品を、上述の組成物と接触させることを含んでなる方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態は、セルロース系材料、またはセルロース系材料を含んでなる物品を提供し、ここで、上述の組成物が、セルロース系材料に吸着または吸収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
トロポロンと、銅および/または亜鉛イオンとから形成される錯体は、例えば、アンモニアまたはエタノールアミンによって可溶化され、そして、木材および他のセルロース系材料用の深浸透性および持続性防腐剤などの形態で用いられる。金属イオン錯体が水性媒体中に可溶化されるため、木材または他のセルロース系材料に、容易に吸着され、および/または吸収または膨潤されることが可能である。溶液中の溶剤または共溶剤の損失または蒸発で、この錯体は不溶性となり、これにより、トロポロンおよび金属イオンを目標材料中に定着させ、セルロース系材料に対する有効な防腐剤組成物を提供する。
【0017】
セルロース系材料は、本発明の組成物との接触が材料を、有害生物および生物の一方または両方によって生じる有害な効果からの腐朽または劣化から保護するという意味で保存される。菌・カビ性保護は、トロポロンの殺菌・カビ類活性、ならびに銅および/または亜鉛イオンの殺菌・カビ類活性によりセルロース系材料に付与される。トロポロンの殺シロアリ活性もまた、セルロース系材料の保存を補助する。天然条件またはハザードへの露出によるセルロース系材料の劣化または分解に対する可能性は、それ故、本発明の組成物の材料中のおよび/またはその上の存在により、低減され、好ましくは防止される。本発明の方法は、材料の本発明の組成物との接触を提供することによりセルロース系材料に対する保存を提供し、これにより、悪条件、上述のシロアリおよび菌・カビ類などの有害生物および生体に対する保護の有益性を達成する。
【0018】
本発明の組成物で処理されることが可能であるセルロース系材料は、ほとんどの植物における細胞壁の主構成成分を形成する多糖類であり、それ故、ほとんどの植物組織および繊維の主要構成成分であるセルロースを含有する、またはこれに由来するものである。これらのセルロース系材料としては、リグニン、綿、ヘミセルロースおよびセルロース自体に追加して、材木、合板、配向性ストランドボードおよび紙などの木材および木材製品が挙げられる。本発明の組成物の使用による、または本発明の方法の実施による本願明細書における木材の保存への言及、または木材防腐剤としての本願明細書の組成物の有用性への言及は、従って、木材のみだけではなくすべてのタイプのセルロース系材料の保存に対する言及であると理解されるべきである。
【0019】
水溶液中のトロポロンおよび金属錯体
「トロポロン」という用語は、通例、トロポロン自体(2−ヒドロキシシクロヘプタ−2,4,6−トリエノン)ならびにトロポロンの誘導体である化合物を指すために用いられ、天然化合物β−ツジャプリシン(ヒノキチオールとしても公知である)、γ−ツジャプリシン、およびβ−ドラブリンなどと同様の特性を有する。抗菌・カビ類および/または殺シロアリ活性を有するこれらのトロポロンのいずれかが、本発明の防腐剤組成物において用いられ得る。これらの化合物は、メタノールおよびエタノールに可溶性であるが、比較的不水溶性である。
【0020】
例えば銅イオンといったイオン状態の菌・カビ類有毒性金属銅および亜鉛が、本発明による防腐剤組成物を提供するために可溶化されるトロポロンと錯体を形成するために用いられ得る。いずれの可溶性銅塩も銅イオンのソースであり得、例えばCu(II)塩としては、硫酸銅、硫酸銅五水和物、塩化第二銅、酢酸第二銅、および炭酸銅が挙げられ得る。硫酸銅五水和物が銅塩として特に有用である。いずれの可溶性亜鉛塩も亜鉛イオンのソースであり得、例えばZn(II)塩としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、および炭酸亜鉛が挙げられ得る。酢酸亜鉛が亜鉛塩として特に有用である。銅イオンソースおよび亜鉛イオンソースの混合物もまた、本発明の組成物において用いられ得る。上述のとおり、トロポロン、および銅イオンならびに亜鉛イオンのソースは市販されている。
【0021】
本発明の組成物を形成するために、その成分は混合剤中に組み合わされる。例えば、トロポロン、ならびに銅および/または亜鉛塩または銅イオンの他のソースを含有する水溶液が調製され得る。この成分の溶液中の混合物が、上述のとおり錯体を形成する。本願明細書において用いられるところ、錯体は、基本的には塩であるが、共有結合または静電結合によって、または配位化合物におけるものなどの、共有結合または静電結合の中間の結合によって、一緒に結合されている、いずれかの組み合わせでの有機および/または無機成分を含有する結合体としても記載され得る。上述の成分の組み合わせの一例は、水溶液中のトロポロンと銅イオンとの錯体、および図Iに示す、水溶液中の錯体沈殿物の形成をもたらす:
【0022】
【化1】

【0023】
これらの成分を水性アンモニア溶液中に組み合わせることにより、トロポロネートおよび金属イオン錯体は、図IIに示されるとおり、完全に可溶性なままであることが見出された:
【0024】
【化2】

【0025】
この溶液の調製において、成分の混合中の沈殿物の形成を防止するために、十分な濃度で水酸化アンモニウムを包含させることが特に有用である。アンモニアなどの溶剤または共溶剤は、水性混合物中における錯体の溶解度を維持するために十分な量で存在する。典型的には、溶液の調製に用いられるアンモニアは、最終の溶液で約0.5%〜3重量%を示すような量で用いられる。1.4重量%アンモニア水溶液が好ましい。エタノールアミンが、アンモニアの代替として溶液の約0.5%〜3重量%の量で用いられ得る。追加で、エタノールアミンおよびアンモニアの組み合わせが用いられ得る。アンモニアの使用は好ましいが、水と溶液を形成する、アンモニアのように容易に錯体を可溶化させる、さらに、処理の後にアンモニアのように容易にセルロース系材料から蒸発する他の溶剤または共溶剤がまた、アンモニアまたはエタノールアミンに追加してまたはその代わりに、錯体が可溶化される溶剤系において用いられ得る。
【0026】
一般に、錯体の溶解度は視覚的観察により測定され、錯体は、その処理がなされたときに、十分な量の錯体が溶液に溶解されてセルロース系材料への所望の量の錯体の吸着および/または吸収が許容されたときに、可溶化されたとみなされる。
【0027】
トロポロンと銅および/または亜鉛イオンとの混合物は、本発明の防腐剤組成物において、処理されるべきセルロース系材料が経験するであろう使用条件(目標材料の性質、予期される最終用途および地理学的場所を含む)を考慮して、所望のレベルの保護を提供するのに有効な量で用いられる。処理溶液におけるトロポロンの濃度は、それ故、通常は約100〜約1,000ppmの範囲、または約200〜約700ppmの間の範囲、または約250〜約500ppmの範囲である。銅および/または亜鉛イオンは、典型的には、処理溶液において、約500ppm〜約11,000ppmの範囲の濃度で用いられる。海洋用途は、一般に、約11,000ppm以下のより高濃度を必要とするが、陸上用途は、約500〜6,000ppmの間の濃度を包含し得る。これらの成分が錯体中に匹敵する量で存在するよう、対応する量のトロポロンおよび銅および/または亜鉛を包含することが特に有用である。処理済のセルロース系材料における錯体の含有量を測定する1つの方法は、この材料を燃焼させ、錯体の調製に用いられた成分のその含有量についてこの灰を分析することである。本願明細書に記載の組成物は、ブレンダーまたは回転ミキサなどのいずれかの好適なデバイス中で成分を混合することにより形成され得る。
【0028】
セルロース系材料の処理に用いられる本発明の防腐剤組成物は、完全ではなくてもほとんどがアンモニア溶液などの溶液中に溶解されているが、商業的目的のために容易に輸送されるより濃縮されたマスターバッチが形成され得、次いで、使用の前に希釈される。このような濃縮マスターバッチは、部分的に沈殿したトロポロン−銅および/または亜鉛錯体を含有するスラリーであり得る。このスラリーは、1種もしくはそれ以上の溶剤または共溶剤の追加によって、例えば溶剤系においてアンモニアが用いられている場合に、およそ1.4重量%のアンモニア水溶液が得られる最終濃度に溶液の体積を増加させることにより、処理における使用のために調製される。
【0029】
木材防腐剤組成物としてのアンモニア溶液中のトロポロンと銅および/または亜鉛との錯体の特徴
トロポロンおよび銅および/または亜鉛錯体の溶解度特性は、セルロース系材料用の防腐剤組成物に役立つ特定の属性を提供する。これらの錯体は不水溶性であるが、典型的には、アンモニア溶液などの溶剤系中に、完全に可溶性ではなくても良好に溶解する。錯体が溶液に良好に溶解したとき、表面木材を十分に超えた、木材などのセルロース系材料への防腐剤溶液の深い浸透が得られる。浸透に続いて、アンモニアなどの溶剤または共溶剤が木材から容易に蒸発して、水性木材環境中に、殺菌・カビ性トロポロンならびに殺菌・カビ性銅および/または亜鉛イオンが錯体として残留され、そこで沈殿し、およびセルロースに頑強に結合する。それ故、トロポロンまたは銅および/または亜鉛イオンの処理済み木材からの浸出はほとんどない。
【0030】
木材防腐剤溶液における追加の成分
本発明の組成物は、トロポロンおよび銅および/または亜鉛イオンに追加して、抗菌・カビ性および/または殺シロアリ性追加の成分を単独でまたは組み合わせで含み得る。例としては、特に限定されないが、米国仮特許出願第60/755,213号明細書に記載のタングステン酸塩および/またはモリブデン酸塩イオン;米国仮特許出願第60/755,214号明細書に記載のイブプロフェン;および米国仮特許出願第60/755,211号明細書に記載の加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーが挙げられ、上記の仮特許出願の各々は、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される。
【0031】
本発明の防腐剤溶液を調製するための使用に好適であるモリブデン酸塩およびタングステン酸塩イオンは、カリウムモリブデン酸塩、アンモニウムモリブデン酸塩、ナトリウムモリブデン酸塩二水和物、モリブデンオキシド、モリブデン酸、カリウムタングステン酸塩、アンモニウムタングステン酸塩、ナトリウムタングステン酸塩二水和物、タングステンオキシド、タングステン酸などのモリブデン酸塩またはタングステン酸塩のいずれかの可溶性ソースから入手され得る。タングステン酸塩またはモリブデン酸塩イオンのソースとして用いられ得る追加の化合物としては、シリコタングステン酸塩、リンタングステン酸塩、ホウタングステン酸塩、シリコモリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩およびホウモリブデン酸塩などの化合物が挙げられる。
【0032】
モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩イオンは、不水溶性であるが、アンモニア溶液などの溶剤系中に完全ではなくとも相当な溶解度を有する錯体を銅および/または亜鉛イオンと共に形成する。これらの成分は、溶液に溶解されたときに木材などのセルロース系材料に浸透し、アンモニアの損失の後、木材中に定着される。銅および/または亜鉛の錯体を有する組成物中に、モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩イオンが追加の防腐剤成分として用いられる場合、銅および/または亜鉛は、トロポロン成分およびモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩成分の両方と錯体を形成するために十分な量で添加される。モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩イオンの好適な量は、上述のとおり用いられるべきセルロース系材料に関連する要因に応じて約10〜約6,000ppmの範囲である。約200〜約1,700ppmの濃度が特に好適である。
【0033】
さらなる実施形態において、イブプロフェンは、その殺褐色腐朽菌活性および殺シロアリ活性を考慮して本発明の組成物の追加の成分として組み込まれ得る。イブプロフェンは、イブプロフェンまたはイブプロフェンナトリウムとして供給され得る。これらの化合物は、メタノールおよびエタノールに可溶性であるが、比較的不水溶性である。イブプロフェンは、不水溶性であるが、上述のトロポロン−−銅および/または亜鉛錯体の溶解度と同様の溶解度をアンモニア溶液中に有する錯体を銅および/または亜鉛と形成する。イブプロフェンによって形成された錯体はまた、溶液中に溶解されたときセルロース系材料に深く浸透し、アンモニアなどの溶剤または共溶剤の損失の後に木材中に定着される。イブプロフェンが追加の成分として本発明の組成物中に存在する場合、銅および/または亜鉛イオンは、トロポロンおよびイブプロフェンの両方と錯体を形成するよう十分な量で添加される。
【0034】
イブプロフェンまたはイブプロフェネートは、処理されるべきセルロース系材料が経験するであろう使用条件(目標材料の性質、予期される最終用途および地理学的場所を含む)に応じて、約100〜約1,000ppmの範囲の量で本願明細書に記載の組成物に含まれ得る。約200〜約700ppmの間の組成物中のイブプロフェンまたはイブプロフェネートの濃度が特に好適である。
【0035】
加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーは、不水溶性であるが、アンモニア溶液などの溶剤系中に完全ではなくとも相当な溶解度を有する錯体を銅および/または亜鉛イオンと形成する。この成分は、溶液に溶解されたときに木材などのセルロース系材料に浸透し、アンモニアなどの溶剤の損失の後に木材に定着する。加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーが、銅および/または亜鉛イオンを含有する組成物において追加の防腐剤成分である場合、銅および/または亜鉛イオンは、トロポロン成分および加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマー成分の両方と錯体を形成するために十分な量で添加される。
【0036】
加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーは、例えば水性NaOHを用いて、オレフィン/無水マレイン酸コポリマーを加水分解して、銅および亜鉛イオンと錯化することが可能である負に荷電されたカーボキシレートアニオンを形成することによって調製される。オレフィン/無水マレイン酸コポリマーにおいて、加水分解のために特に用いられるオレフィンはオクテンおよびスチレンである。オクテン/無水マレイン酸コポリマーおよびスチレン/無水マレイン酸コポリマーの混合物などのオレフィン/無水マレイン酸コポリマーの異なるタイプの混合物もまた用いられ得る。オレフィン/無水マレイン酸コポリマーの合成は、米国特許第3,706,704号明細書および米国特許第3,404,135号明細書などのソースから公知であり、本願明細書における使用に好適であるコポリマーは、一般に、分子量が約10,000〜約50,000の間である。
【0037】
20,000〜100,000の間の範囲の分子量のコポリマーをもたらす、スチレン/無水マレイン酸コポリマーの好ましい合成方法は、使用される特別の状況に依存して、トルエンおよびイソプロピルアルコールの組み合わせを、溶剤および連鎖移動剤の両方として使用する。イソプロピルアルコール単独ではなくこの組み合わせを用いることで、重合の最中に形成されるモノイソプロピルマレエートエステルの割合が約20%から約1%に低減される。加えて、コポリマー製品の分子量が、イソプロピルアルコールを単独で用いた場合の約18,000から、1:1のトルエン:イソプロパノール比を用いた場合の20,000超に増加される。90,000超の分子量が、76:4の比を用いることで達成され得る。
【0038】
約1,000,000以下の分子量のコポリマーが、本発明の防腐剤組成物において用いられ得るが、濃縮溶液においては、約80,000超の分子量のコポリマーは粘性であり、従って使用が困難である。従って、約80,000未満の分子量を有するオレフィン/無水マレイン酸コポリマーが本発明において好ましい。2,000〜約40,000の間の範囲の分子量を有するコポリマーがより好ましい。
【0039】
加えて、米国特許第6,978,724号明細書(すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される)に記載のものなどの銅キレート化化合物は、本願明細書に記載の組成物に含まれて、処理済の物品における銅定着を増強し得る。好適な銅キレート化化合物は、以下の1つもしくはそれ以上などの官能基を有し得る:アミドキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、N−ヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシカルバメート、およびN−ニトロソ−アルキル−ヒドロキシルアミン。好適な銅キレート化化合物は、不水溶性であるが、アンモニア溶液中に、上述のトロポロン−−銅および/または亜鉛錯体の溶解度に類似する溶解度を有する銅および/または亜鉛と錯体を形成する。キレート化化合物によって形成された錯体はまた、溶液中に溶解されたときセルロース系材料に深く浸透し、アンモニアなどの溶剤または共溶剤の損失の後に木材中に定着される。銅キレート化化合物が追加の成分として本発明の組成物中に存在する場合、銅および/または亜鉛イオンは、トロポロンおよびキレート化化合物の両方と錯体を形成するよう十分な量で添加される。
【0040】
銅キレート化化合物における官能基は、以下のものなどの方法により提供されることが可能である:アミドキシム中に、ニトリル含有化合物とヒドロキシルアミンとを反応させる方法;ヒドロキサム酸中に、スチレン/無水マレイン酸またはオクテン/無水マレイン酸などのコポリマーの無水物基基にヒドロキシルアミンを添加し、スチレン/N−ヒドロキシマレアミド酸コポリマーまたはオクテン/N−ヒドロキシマレアミド酸コポリマーを形成する方法;チオヒドロキサム酸中に、ヒドロキシルアルミンをジチオカルボン酸に添加する方法;N−ヒドロキシ尿素中に、ヒドロキシルアミンとイソシアネートとを反応させる方法;N−ヒドロキシカルバメート中に、ヒドロキシルアミンと、直鎖または環状カーボネートの一方とを反応させることによる方法;およびN−ニトロソ−アルキル−ヒドロキシルアミン中に、アルキルヒドロキシルアミンのニトロソ化による方法。
【0041】
好ましいキレート化化合物は2つ以上のアミドキシムおよび/またはヒドロキサム酸基を含有する。酸触媒により、アミドキシム官能基は、水溶液中に、対応するヒドロキサム酸官能基に容易に転化されることが可能である。この好ましい化合物の種類への簡便な経路は、ヒドロキシルアミンの対応するニトリル化合物への添加によるものである。種々の方法が、ニトリル化合物の調製のために公知である。特に有用な方法は、アクリロニトリル、または他の不飽和ニトリルが、アルコールおよびアミンなどのプロトン性求核試薬との共役付加反応に供されるシアノエチル化である。シアノエチル化に好ましいアミンは第一級アミン、1〜30個の炭素原子を有する第二級アミン、およびポリエチレンアミンである。好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムなどのシアノエチル化触媒が、不飽和ニトリルに基づいて約0.05mol%および15mol%で用いられる。
【0042】
広く多様な材料がシアノエチル化されることが可能である。シアノエチル化物は、再生セルロース、デキストラン、デキストリン、ゴム(グアー、ローカストビーン、サイカチ、鳳凰木、タール、アラビア、トラガント、およびカラヤ)などの炭水化物;デンプン(コーン、ジャガイモ、タピオカおよびコムギ);またはセルロースキサントゲン酸塩、セルロースのジメチルチオウレタン、エチルセルロース、セルロースのエチルチオウレタン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、およびセルロースのフェニルチオウレタンなどの変性天然ポリマーとのアクリロニトリルの反応から誘導されることが可能である。シアノエチル化された他の天然ポリマーとしては、亜麻、ジュート、マニラ、サイザル;および血液アルブミン、カゼイン、膠、グルテン、大豆タンパク質、ウール、コーンゼインなどのタンパク質、またはこのような天然ポリマー由来の材料が挙げられる。高分子量または不水溶性炭水化物およびデンプンの酵素での前処理が、必要な場合には、アミドキシムまたはヒドロキサム酸銅錯体の水性アンモニア、エタノールアミンまたはピリジン溶液への溶解度を高めるために用いられ得る。
【0043】
アセトン−ホルムアルデヒド縮合物、アセトン−イソブチルアルデヒド縮合物、メチルエチルケトン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(アリルアルコール)、ポリ(クロチルアルコール)、ポリ(3−クロロアリルアルコール)、エチレン−一酸化炭素コポリマー、プロピレンからのポリケトン、エチレンおよび一酸化炭素、ポリ(メタリルアルコール、ポリ(メチルビニルケトン、およびポリ(ビニルアルコール)などの合成ポリマーもまたシアノエチル化され、金属結合ポリマーへのさらなる変性のためのプラットホームとして役立つことも可能である。
【0044】
シアノエチル化物は、スクロースおよびソルビトールから誘導されることが好ましい。CE−Sorb6と称されるシアノエチル化ソルビトール(DS=6.0)が最も好ましい。
【0045】
これらのシアノエチル化物またはシアノアルキル化物のニトリル基は、ヒドロキシルアミンと反応されて、アミドキシムまたはヒドロキサム酸を形成することが可能である。塩酸ヒドロキシルアミンがヒドロキシルアミンの代わりに用いられる場合には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化アンモニウムが、塩酸を中和するために用いられ得る。水酸化アンモニウムが好ましい。ソルビトールのアミドキシムは、CE−Sorb6のヒドロキシルアミン反応により調製されることが可能である。このソルビトールのアミドキシムは、本発明の防腐剤組成物における追加の成分として特に有用である。
【0046】
防腐処理
場合により追加の防腐剤成分を含有する、トロポロンおよび銅および/または亜鉛錯体の溶液は、浸漬、はけ塗、吹付け、液浸、ドローコーティング、ロール塗、圧力処理または他の公知の方法により適用され得る。防腐剤組成物は、例えば木材、材木、合板、配向性ストランドボード、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、綿、および紙を含むいずれかのセルロース系材料に適用され得る。水性防腐剤系のための標準的な圧力処理プロセス下での木材への膨潤が特に有効である。木材防腐剤の適用前および/または後に減圧を適用し得る。減圧下で木材から脱気し、次いで、防腐剤溶液の存在下に減圧を停止することで、木材への溶液の浸透性が高まる。
【0047】
木材についての特に有用な処理プロセスは以下のとおりである。乾燥または、切り立てで生の木材がチャンバ内におかれ、これが、次いで、シールされ、木材の種によって判定される規定のサイクルで排気される。一般に、サザンイエローパイン(SYP)木材については、排気時間は約30分間であり、この最中に、密閉チャンバ内の圧力は、約2インチ水銀以下のレベルとされる。チャンバ内の排気圧力は、0.01〜0.5atmで異なる。この工程の目的は、空気、水および揮発物を木材から除去することである。本発明の水性組成物が、次いで、大気に真空を破壊することなく、閉塞されたチャンバ内に木材を完全に浸漬するために十分な量で導入される。容器の加圧が次いで開始され、この圧力は、隔壁または他のポンプにより、所望のレベルで所与の時間の間維持される。初期においては、容器内の圧力は、コンテナ内の水性組成物が木材中に浸透することにより低下することとなる。圧力は、処理の浸透期間を通して所望のレベルが維持されるよう高められることが可能である。容器内の圧力の安定化は、木材への液体のさらなる浸透がないことを示す。この時点で、圧力が開放されて、木材が大気圧で溶液と平衡化され、容器を排水し、および木材を取り出すことが可能である。プロセスのこの部分において、用いられる圧力は、300psigもの高さであることが可能であり、一般的には約50〜250psigである。
【0048】
防腐剤組成物が組み込まれた物品
本発明の物品は、本願明細書に記載の防腐剤組成物で処理されたものである。木材、材木、合板、配向性ストランドボード、紙、セルロース、綿、リグニン、およびヘミセルロース製のまたはこれらが組み込まれたものなどの物品の処理に続いて、防腐剤組成物のアンモニア溶液中のアンモニアが散逸されることとなる。防腐剤として用いられているトロポロン−−銅および/または亜鉛錯体が、物品中および/または上に定着される。追加の成分が、処理に用いられる防腐剤組成物中に含まれる場合には、同様に、処理済の物品上および/または中に定着される。
【0049】
トロポロン−−銅および/または亜鉛錯体に追加して、本発明の組成物において用いられ得る成分としては、加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマー;アミドキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、N−ヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシカルバメート、およびN−ニトロソ−アルキル−ヒドロキシルアミンであり得る少なくとも2つの官能基を有する銅キレート化化合物;タングステン酸塩および/またはモリブデン酸塩イオン;イブプロフェン;およびこれらの成分の混合物が挙げられ得る。トロポロンおよび銅および/または亜鉛イオン錯体、およびモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩イオンおよび銅および/または亜鉛イオン錯体を含有する物品が特に有用である。トロポロンおよび銅および/または亜鉛イオン錯体、および加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーを含有する物品もまた特に有用である。トロポロンおよび銅および/または亜鉛イオン錯体、およびソルビトール(CE−Sorb6に基づく)のアミドキシムおよび銅錯体を含有する物品がさらに特に有用である。トロポロンおよび銅および/または亜鉛イオン錯体、およびスチレン/無水マレイン酸またはオクテン/無水マレイン酸から誘導される、少なくとも2つのヒドロキサム基とのキレート化化合物を含有する物品もまた特に有用である。
【0050】
セルロース系材料を処理するための本発明の方法はまた、セルロース系材料、または木材などのセルロース系材料を含有する処理済の物品を、家、キャビン、倉庫、棺保護容器またはコンテナ、または海洋施設などの構造物へ、または屋外用調度品の部品などの消耗装置へ、または建築物用のトラス、壁パネル、小支台、土台または敷板の部品へ組み込む工程を含む。
【実施例】
【0051】
本発明を、以下の実施例においてさらに例示する。これらの実施例は、例示のためだけに提供されていることが理解されるべきである。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の基本的な特徴を確認することが可能であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の使用法および条件に適合させるために、本発明の種々の変更および改良をなすことが可能である。
【0052】
略語の意味は以下のとおりである:「濃縮(conc.)」とは濃縮を意味し、「秒(sec)」とは秒を意味し、「ml」とはミリリットルを意味し、「L」とはリットルを意味し、「g」とはグラムを意味し、「mmol」とはミリモルを意味し、「mtorr」とはミリトールを意味し、「時間(hr)」とは時間を意味し、「分(min)」とは分を意味し、「mm」とはミリメートルを意味し、「cm」とはセンチメートルを意味し、「nm」とはナノメートルを意味し、「Mw」とは重量平均分子量を意味し、「Mn」とは数平均分子量を意味し、「mw」とは分子量を意味し、「XRF」とはX線蛍光分光分析を表し、「RH」は相対湿度であり、「MHz」とはメガヘルツを意味し、「NMR」とは核磁気共嗚を意味し、「IR」とは赤外線を意味し、「ICP」とはイオン結合プラズマを意味し、「LC/MS」とは液体クロマトグラフィ/質量分析を意味し、および「S/S」とはステンレス鋼を意味する。「SD」は標準偏差であり、「SMA」はスチレン/無水マレイン酸コポリマーであり、「SMA−NOH」はスチレン/N−ヒドロキシマレアミド酸であり、「OMA」はオクテン/無水マレイン酸コポリマーである。
【0053】
「SYP」は「サザンイエローパイン」であり、カリビアマツ(Pinus caribaea Morelet)、スラッシュマツ(Pinus elliottii Englelm.)、ダイオウショウ(Pinus palustris P.Mill.)、リギダマツ(Pinus rigida P.Mill.)、およびテーダマツ(Pinus taeda L.)を含む密接に関連する松種に対する略語である。「AWPA」は米国木材保存協会(American Wood−Preserver’s Association)である。AWPAl規格は、「AWPA規格ブック(AWPA Book of Standards)」、AWPA、私書箱5690、テキサス州グランバリー(Granbury,TX)76049に発行されている。SYP杭の保存のための手順は、AWPA規格、方式E7−01、セクション4、5、6、および7ならびにE11−97に基づく。AWPA規格E7−01に準拠して、杭を、以下のとおりの菌・カビ性腐朽および昆虫の攻撃に対する以下の判定基準に従って視覚的に格付けした:
腐朽等級
等級番号 条件の記載
10 傷んでいない
9.5 許容される腐朽の疑い
9 断面の3%までの僅かな腐朽
8 断面の3〜10%の腐朽
7 断面の10〜30%の腐朽
6 断面の30〜50%の腐朽
4 断面の50〜75%の腐朽
0 破壊

シロアリ等級
等級番号 条件の記載
10 傷んでいない
9.5 1〜2つの許容される微笑なかじり跡
9 断面の3%の摂食の僅かな証拠
8 断面の3〜10%の攻撃
7 断面の10〜30%の攻撃
6 断面の30〜50%の攻撃
4 断面の50〜75%の攻撃
0 破壊
【0054】
シロアリ等級および腐朽等級は、以下の表において、虫害および木材腐食のそれぞれを報告するために用いられている。「総定着量」とは、膨潤の直後に木材中に残留する処理液体の量を指す。「定着量」とは、膨潤された液体が乾燥により木材から除去された後に木材中に残留する防腐剤の量を指す。この量は、ppmとしてまたは重量として表記されることが可能である。「証拠用杭」または「証拠用サンプル」は、将来的な分析のためにサンプルとして残されることとなる、杭全体、または処理された杭の一部分である。
【0055】
一般的方法
すべての反応および操作を大気に開放された標準的な実験用ドラフト中で実施した。以下の手法において水求められる場合には脱イオン水を用いた。ソルビトール、AIBN、アクリロニトリル、水酸化リチウム一水和物、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸銅五水和物、およびクロマズロール(Chromazurol)S[1667−99−8]はシグマアルドリッチケミカル(Sigma−Aldrich Chemical)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から入手し、入手したままで使用した。濃水酸化アンモニウムおよび氷酢酸はEMサイエンス(EM Science)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown,NJ))から入手し、入手したままで使用した。シアノエチル化スクロース[18307−13−7]および銅アセテート一水和物はアクロスオーガニックス(Acros Organics)(ベルギー国ギール(Geel,Belgium))から入手し、入手したままで使用した。スクロースはパスマークスーパーマーケット(Pathmark Supermarket)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))から入手し、入手したままで使用した。
【0056】
pHは、マイクロエッセンシャルラボラトリー(Micro Essential Laboratory)(ニューヨーク州ブルックリン(Brooklyn,NY))製のフィドリオン(pHydrion)紙で測定した。シアノエチル化物の置換度(DS)は、シアノエチル化工程において用いたアクリロニトリルの均等物に関して表記されている。IRスペクトルを、ニコレットマグマ(Nicolet Magna)460分光計を用いて記録した。LC/MS分析は、マイクロマス(Micromass)LCT機器を用いて実施した。NMRスペクトルは、ブルッカーDRXアバンス(Bruker DRX Avance)(500MHzH、125MHz13C)で、ケンブリッジアイソトープラボラトリーズ(Cambridge Isotope Laboratories)製の重水素化溶剤を用いて得た。元素分析は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のマイクロアナリティカル社(Micro−Analytical Inc)によって実施した。サザンイエローパイン木材の圧力処理は、高圧実験室にて、ステンレス鋼圧力容器を用いてAWPA規格プロセス(AWPAP5−01)に準拠して実施した。XRF分析を、オランダ国アイントホーフェン(Eindhoven,Netherlands)のパナリティカル社(Panalytical Inc.)製のアクシオス波長分散型X線蛍光分光計(Axios Wavelength Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)で実施した。
【0057】
銅の存在に対するクロマズロール(Chromazurol)Sテスト
処理済み木材を、AWPAA3−00セクション2に記載の方法を用いて、銅の存在についてクロマズロール(Chromazurol)Sでテストした。1.67%w/w水性ナトリウムアセテート溶液中の0.167%w/wクロマズロール(Chromazurol)Sを、新鮮な処理済み木材切断面に噴霧した。噴霧領域での黄色溶液色から濃青色への変化は、最低でも25ppmの銅が存在することを示す。965mm(38インチ)長の杭を各端部から457mm(18インチ)で切断し、中間の残りの50.8mm(2インチ)片(証拠用片)を、新鮮な切断面上で、クロマズロール(Chromazurol)−Sの溶液で処理した。この溶液への露出で新鮮な切断面が濃青に変化する場合、これは、木材防腐処理溶液による木材への完全な浸透性の指標である。
【0058】
AWPAE17−01セクション4.2.4に準拠した木材の寸法:
すべての木材を、インチ計測値を用いて切断した。木材は、木材は水分含有量で寸法が変化するであろうことを考慮して実行可能な限り正確に切断した;切断誤差は、いずれの寸法においても1mm以内であると推測される。メートル法への変換を提供している。
【0059】
ファールシュトレーム(Fahlstrom)杭:0.156インチ×1.5インチ×10インチ(4mm×38mm×254mm)
予腐朽杭:3/4インチ×3/4インチ×38インチ(19mm×19mm×1154mm)
腐朽杭:3/4インチ×3/4インチ×18インチ(19mm×19mm×450mm)
劣化杭:1.5インチ×1.5インチ×18インチ(38mm×38mm×450mm)
ブロック:3/4インチ×3/4インチ×3/4インチ(19mm×19mm×19mm)
【0060】
スチレン/無水マレイン酸コポリマーの調製
スチレン/無水マレイン酸コポリマー(SMA)を、以下のとおり参照により本願明細書において援用される、同時係属中の、米国仮特許出願第60/755211号明細書の特許出願に記載のとおり調製した:18L多口フラスコに、2つの滴下漏斗、還流凝縮器、加熱マントル、機械的攪拌機、および窒素バブラーを取り付けた。フラスコに、9500g(11L)のトルエンおよび500g(640ml)のイソプロパノールを充填した。この溶液に、1276gの無水マレイン酸粉末を添加した。500g(578ml)のトルエンに溶解した15gのAIBNの溶液を調製し、一方の滴下漏斗に入れた。第2の漏斗を、1302.6gのスチレンで充填した。装置をシールし、窒素でパージした。無水マレイン酸溶液を60℃に温め、約三分の一のAIBN溶液を添加した。次いで約150mLのスチレンをフラスコに漏斗から添加した。酸素が消費される、約5分間の誘導時間を設けた。重合が開始したことを示す、白色の沈殿物の形成が開始した後に、残りのスチレンを、150mL分量で60分間かけて添加した。AIBN溶液を、三回で60分間かけて添加した。スチレンおよびAIBNを添加することで、マントルで追加の熱をほとんど付与せずに、反応温度は約70℃〜80℃に維持された。添加が完了した後、反応温度を、加熱マントルを用いて約80℃で追加の2時間維持した。コポリマーの白色スラリーを、次いで、約室温に冷却し、ろ過し、温かいトルエンで洗浄し、90℃の真空オーブン中に乾燥させて、2460g(95.5%収率)のSMAおよび40gのモノイソプロピルマレエートを得た。Mw=40,400およびMn=18,600。洗浄液を蒸発させて、追加の0.4gのモノイソプロピルマレエート(H NMR(CDCl):δ1.32(d、J=1.2、CH3、6H)、5.15(m、CH、1H)、6.36(m、CH、2H)ppm)を得た。
【0061】
加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマーの調製
オクテンおよび無水マレイン酸モノナトリウム塩の1:1コポリマーを、米国特許第3706704号明細書および米国特許第3404135号明細書に記載のとおり調製した。加水分解1:1オクテン/無水マレイン酸コポリマーモノナトリウム塩の前駆体であるオクタン/無水マレイン酸コポリマー(OMA)のMwを、サイズ排除クロマトグラフィにより、8595+/−50と測定した。得られたコポリマーを、水性水酸化ナトリウム溶液で加水分解し、27.1%w/wの水溶液とした。
【0062】
CE−Sorb6:ソルビトールのシアノエチル化物の調製
機械的攪拌機、還流凝縮器、窒素パージ、滴下漏斗、および温度計を備えた1000mL三つ首丸底フラスコに、水(18.5ml)および水酸化リチウム一水和物(1.75g)ならびに第1の分量のソルビトール(44.8g)を充填した。溶液を水浴で攪拌しながら42℃に加熱し、ソルビトールの第2の分量(39.2g)を反応フラスコに直接的に添加した。アクリロニトリルの第1の分量(100ml)を、次いで、500mL滴下漏斗で2時間の時間をかけて反応に滴下した。反応は僅かに発熱し、温度は51℃に昇温した。ソルビトールの最後の分量(32g)を、合計で0.638モル添加し、続いて、アクリロニトリルの最後の分量(190ml)を、反応温度を60℃未満に維持しながら2.5時間かけて添加した(合計で4.41モルのアクリロニトリルを用いた)。この反応溶液を、次いで、50〜55℃に4時間加熱した。溶液を、次いで、室温に冷却し、および反応を酢酸(2.5ml)の添加で中和した。減圧下での溶剤の除去は、清透、粘性の油(324g)として生成物をもたらした。IRスペクトルは、ニトリル基を表す2251cm−1にピークを示した。DS=5.6とLC/MSにより測定し、これは、CE−Sorb6で6に四捨五入される。
【0063】
CE−Sorb6の塩酸ヒドロキシルアミンとの反応
1000mL三首丸底フラスコに、機械的攪拌機、コンデンサ、および滴下漏斗を窒素下で取り付けた。CE−Sorb6(14.77g、29.5mmol)および水(200ml)をフラスコに添加し、攪拌した。別の500mLエルレンマイヤーフラスコ中に、塩酸ヒドロキシルアミン(11.47g、165mmol、5.6当量)を水(178ml)に溶解させ、次いで、200mlの総体積について水酸化アンモニウム(22.1mLの28%アンモニア溶液、177mmol、6.0当量)で処理した。ヒドロキシルアミン溶液を、次いで、一回で直接的に丸底フラスコ中の混合物に室温で追加した。攪拌した混合物を80℃で2時間、pH=8〜9で加熱し、次いで、室温に冷却した。IRスペクトルは、2250cm−1のニトリルピークのほとんどが喪失されたことを示し、アミドキシムまたはヒドロキサム酸を表す1660cm−1の新たなピークの出現を示した。
【0064】
実施例1
防腐剤としてのトロポロン/銅錯体およびスチレン/N−ヒドロキシマレアミド酸コポリマーのアンモニア溶液
A)アンモニア溶液中のトロポロン/銅錯体およびスチレン/N−ヒドロキシマレアミド酸コポリマーの調製
滴下漏斗、加熱マントル、熱電対さや、および機械的攪拌機を備えた5L丸底フラスコを86.4g(0.427mol)のSMA樹脂(一般的方法において記載のとおり調製した)および500mLの水で充填した。27.5gのヒドロキシルアミン50%w/wの水溶液(0.416mol)および95mLの水中の27.0gの炭酸ナトリウム(0.255mol)を、滴下漏斗を介して15分間かけて添加した。混合物を45分間攪拌した。混合物を、55℃で4時間加熱して、スチレン/N−ヒドロキシマレアミド酸コポリマーを含有する清透な溶液を得た。150mLの水中の116.7gの硫酸銅五水和物、10gのトロポロンおよび250gの濃縮水酸化アンモニウムの溶液を調製した。トロポロン溶液をポリマー溶液に添加した。生成物を20Kgの最終重量に水で希釈して、1485ppmの銅および500ppmのトロポロンを含有する膨潤溶液を得た。
【0065】
B)木材保存処理手法および腐朽杭に対する環境試験
以下の方法は、AWPA規格、方式E7−01、セクション4、5、6、および7ならびにE11−97に基づいている。
【0066】
SYPボード、3.175cm×35.56cm×243.84cm(5/4インチ×14インチ×8ft)および3.175cm×30.48cm×243.84cm(5/4インチ×12インチ×8ft)を、デラウェアカントリーサプライ(Delaware County Supply)(ペンシルベニア州ブーツウィン(Boothwin,PA))から入手した。ボードを、サイズが19mm×19mm×96.5cm(3/4インチ×3/4インチ×38インチ)(AWPA規格、方式E7−01、セクション4.2、例外として、これらのボードは均衡化せずに製材した)の前腐朽杭に切断した。杭を目視検査によって区別し(AWPA規格、方式E7−01、セクション4.1)、節、割れ、樹脂および樹液溜り、カビ、変色および木材腐朽菌による感染の兆候を有する杭を排除した。残りの杭を、重量によりグループ分けした(AWPA規格、方式E7−01、セクション5)。200g〜220gの間の重量の杭のグループを膨潤実験のために選択し、23℃および50%のRHで制御した環境チャンバ(モデル1〜60LLVLヒューミディティキャビネット(Humidity Cabinet)、アイオワ州ブーン(Boone,IO)のパーシバルサイエンティフィック社(Percival Scientific Inc.))内に21日間置いた(AWPA規格、方式E7−01、セクション4およびE11−97、セクション3)。環境チャンバ内での均衡化の後、各杭に2つのS/S識別タグを取り付け、24.6mmのS/S釘で固定した。次いで、各杭を計量する(表1に記載の重量:乾重量)と共に寸法を測り、および結果を記録した。
【0067】
木材保存処理手法
処理を、デュポンエクスペリメンタルステーション(DuPont Experimental Station)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))で設計され、製造されたステンレス鋼圧力容器で実施した。圧力を、ダイヤフラム・ポンプ(モデルS216J10;オハイオ州ブレックスビル(Brecksville,IO)のカーチスライトフローコントロール社(Curtiss−Wright Flow Control Corp.)のスピローグプロダクツディビジョン(Sprague Products Div.))により供給した。圧力容器は、直径12.7cm(5インチ)の既定の80S/Sパイプから構成され、S/Sフランジおよびキャップで各端部で閉じた。パイプの長さは、処理されるべき木材の長さに応じて変化させた。典型的には、101.6cm(40インチ)の長さを38インチの木材試料を処理するために選択した。他の長さのパイプをフランジを介して追加して、圧力容器の長さを、243.84cm(8ft)試料を収容するために延長し、または短い長さのパイプを用いて25.4cm(10インチ)試料を処理した。
【0068】
10本のラベルを付けた前腐朽杭、ならびに2本の証拠用杭(合計で12本の杭)をステンレス鋼分離ラック(木材の小片をボードの間に置くことによりこれらを分離する材木の物理的分離である固着をシミュレートするために)に装填し、圧力容器内に入れた。圧力容器をシールし、69.85cm Hgゲージ(13.5psig)の真空を30分の時間適用した。膨潤流体、実施例1Aで調製した溶液の導入により真空を停止して圧力容器を満たし、木材を覆った。容器全体に膨潤流体を循環させることによりエアポケットを除去し、および7.18キロパスカルゲージ(150psig)の圧力を、ダイヤフラム・ポンプで30分間適用した。圧力を開放し、杭を膨潤溶液中で15分間均衡化させた。圧力容器を排水し、杭を保持している処理ラックを取り外した。杭を紙タオルで軽く拭き取り、計量し(表1に記載の重量:湿重量)、および換気した筐体中の開放したラックにおいて乾燥させた。各ブロックについての最初の乾重量を湿重量から差し引いたものは、表1に記載の処理溶液の吸収量を示していた。
【0069】
【表1】

【0070】
木材の環境テスト
上述のとおり調製した2つの追加の組の杭を、実施例1Aで調製した溶液の1:2および1:4希釈物で個別に膨潤させた。希釈物は1.4%のアンモニア水溶液で形成した。加えて、1組の杭を調製し、対照として1.4%のアンモニア水で膨潤させた。
【0071】
4組の10本のラベルを付けた前腐朽杭を、各端部から切断して、5.1cm(2インチ)の証拠用セクションを杭の中心から残して、45.7cm(18インチ)長さの腐朽杭に切断した。一般的方法に記載のクロマズロール(Chromazurol)Sテストを用いて、銅浸透性についてすべての証拠用セクションをテストした。テストしたすべての証拠用セクションは、木材の木材防腐処理溶液による完全な浸透を示す濃い青に変色した。
【0072】
杭を、フロリダ州スターク(Starke,FL)およびデラウェア州ニューアーク(Newark,DE)において、AWPA E7−01により無作為化した位置で地中に設置した。12ヶ月で、杭を地中から取り出し、AWPA手順E7−01に準拠して、腐朽およびシロアリの攻撃(虫害)について視覚的に格付けした。フロリダ州スターク(Starke,FL)における杭の完全な結果が、同一の処理溶液での1組の杭についての等級区分の平均、および標準偏差と共に表2に記載されている。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
デラウェア州ニューアーク(Newark,DE)でテストした杭についての腐朽杭結果のまとめが、スターク(Starke)サイト平均との比較で、各サイトでの等級区分の平均として表3に記載されている。
【0076】
【表4】

【0077】
各サイトでは、12ヶ月のテストの間に腐朽および虫害がほとんどなかったため、処理済杭と対照杭との間の差は、小〜非顕著である。より長期の期間にわたって、処理済の杭は、これらのサイトでは、対照に対して小さい損傷を示すであろうことが予期される。
【0078】
実施例2
防腐剤としてのトロポロン/銅錯体、タングステン酸塩/銅錯体および加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマーのアンモニア溶液
A)アンモニア溶液中のトロポロン/銅錯体、タングステン酸塩/銅錯体および加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマーの調製
2Lの樹脂釜を、5gのトロポロン、5.32gのナトリウムタングステン酸塩二水和物、300gの水および250gの濃縮水酸化アンモニウムで充填した。この溶液に、116.7gの硫酸銅五水和物を添加した。これに、397.9gの、オクテン/無水マレイン酸モノナトリウム塩の加水分解コポリマーの27.1%水溶液(一般的方法において記載のとおり調製した)を添加した。混合物を、1.4%水酸化アンモニウムで希釈して、20Kgの最終重量を得た。最終の溶液は、1485ppmの銅、200ppmのタングステン酸塩イオン、および250ppmのトロポロンを含有していた。
【0079】
B)腐朽杭に対する木材保存処理手法および環境試験
10本の杭を調製し、実施例1Bに記載のとおり、実施例2Aで調製した溶液で処理した。表4に示す結果から処理溶液の消費は明らかであった。
【0080】
【表5】

【0081】
10本のラベルを付けた前腐朽杭を、各端部から切断して、5.1cm(2インチ)の証拠用セクションを杭の中心から残して、45.7cm(18インチ)長さの腐朽杭に切断した。一般的方法に記載のクロマズロール(Chromazurol)Sテストを用いて、銅浸透性についてすべての証拠用セクションをテストした。テストしたすべての証拠用セクションは、木材の木材防腐処理溶液による完全な浸透を示す濃い青に変色した。
【0082】
追加の組の杭を調製し、上述のとおり処理したが、実施例2Aで調製した溶液の1:2および1:4希釈物を用いた。杭を、フロリダ州スターク(Starke,FL)およびデラウェア州ニューアーク(Newark,DE)において、実施例1Eに記載のAWPA E7−01のとおり地中に設置した。12ヶ月後、杭を地中から取り出し、AWPA手順E7−01に準拠して、腐朽およびシロアリの攻撃について視覚的に格付けした。
【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
共にフロリダ州スターク(Starke,FL)でテストした未処理の腐朽杭である、表5中の対照と表2中の対照との間の差は、各テスト期間の間の環境条件の差によるものであり得る。腐朽および虫害は、温度および雨量などの条件によって変化し得るが、約5年のより長期のテスト期間の間では、匹敵すると予期される。
【0086】
デラウェア州ニューアーク(Newark,DE)およびフロリダ州スターク(Starke,FL)でテストした杭についての腐朽杭結果のまとめが表6に記載されている。
【0087】
【表8】

【0088】
対照に対する損傷と共に、フロリダ州スターク(Starke,FL)サイトでのすべての処理溶液による広範で、強力な保護を観察した。ニューアーク(Newark)サイトでの、12ヶ月での腐朽および虫害はほとんどなかったため、処理済杭と対照杭との間の差は、小〜皆無である。より長期の期間にわたって、処理済の杭は、このサイトで、対照に対して小さい損傷を示すであろうことが予期される。
【0089】
C)トロポロン/銅錯体、タングステン酸塩/銅錯体および加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマー(OMA)のアンモニア溶液で処理したファールシュトレーム(Fahlstrom)杭の調製および環境テスト
ファールシュトレーム(Fahlstrom)杭の選択および調製
以下の方法は、AWPA規格、方式E7−01、セクション4、5、6、および7およびE11−97に基づいている。
【0090】
SYPボード、3.175cm×35.56cm×243.84cm(5/4インチ×14インチ×8ft)および3.175cm×30.48cm×243.84cm(5/4インチ×12インチ×8ft)を、デラウェアカントリーサプライ(Delaware County Supply)(ペンシルベニア州ブーツウィン(Boothwin,PA))から入手した。これらのボードを、4mm×38mm×254cm(0.156インチ×1.5インチ×10インチ)のサイズのファールシュトレーム(Fahlstrom)杭に切断した(AWPA規格、方式E7−01、セクション4.2、例外として、これらのボードは均衡化せずに製材した)。杭を目視検査によって区別し(AWPA規格、方式E7−01、セクション4.1)、節、割れ、樹脂および樹液溜り、カビ、変色および木材腐朽菌による感染の兆候を有する杭を排除した。残りの杭を、重量によりグループ分けした(AWPA規格、方式E7−01、セクション5)。20g〜25gの間の重量の杭を膨潤実験のために選択し、23℃および50%のRHで制御した環境チャンバ(モデル1〜60LLVLヒューミディティキャビネット(Humidity Cabinet)、アイオワ州ブーン(Boone,IO)のパーシバルサイエンティフィック社(Percival Scientific Inc.))内に21日間置いた(AWPA規格、方式E7−01、セクション4およびE11−97、セクション3)。環境チャンバ内での均衡化の後、各杭を数を描くことにより識別した。次いで、各杭を計量すると共に寸法を測り、および結果を記録した。
【0091】
ファールシュトレーム(Fahlstrom)杭の処理を、デュポンエクスペリメンタルステーション(DuPont Experimental Station)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))で設計され、製造されたステンレス鋼圧力容器で実施した。圧力を、ダイヤフラム・ポンプ(モデルS216J10;オハイオ州ブレックスビル(Brecksville,IO)のカーチスライトフローコントロール社(Curtiss−Wright Flow Control Corp.)のスピローグプロダクツディビジョン(Sprague Products Div.))により供給した。圧力容器は、直径12.7cm(5インチ)の既定の80SSパイプから構成され、SSフランジおよびキャップで各端部で閉じた。パイプの長さは、処理されるべき木材の長さに応じて変化させた。典型的には、101.6cm(40インチ)長を38インチの木材試料を処理するために選択した。他の長さのパイプをフランジを介して追加して、圧力容器の長さを、243.84cm(8ft)試料を収容するために延長し、または短い長さのパイプを用いて25.4cm(10インチ)試料を処理した。
【0092】
10本のラベルを付けた杭の束、ならびに2本の証拠用杭(合計で12本の杭)をステンレス鋼分離ラック(木材の小片をボードの間に置くことによりこれらを分離する材木の物理的分離である固着をシミュレートするため)に装填し、圧力容器内に入れた。圧力容器をシールし、69.85cm Hgゲージ(13.5psig)の真空を30分の時間適用した。膨潤流体、実施例2Aで調製したトロポロン/銅錯体、タングステン酸塩/銅錯体および加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマーのアンモニア溶液の導入により真空を停止して圧力容器を満たし、木材を覆った。容器全体に膨潤流体を循環させることによりエアポケットを除去し、および7.18キロパスカルゲージ(150psig)の圧力を、ダイヤフラム・ポンプで30分間適用した。圧力を開放し、杭を膨潤溶液中で15分間均衡化させた。圧力容器を排水し、杭を保持している処理ラックを取り外した。杭を紙タオルで軽く拭き取り、計量した。ファールシュトレーム(Fahlstrom)杭は、表1および3における杭と同様の方策で重量が増加し、これは、トロポロン/銅錯体、タングステン酸塩/銅錯体および加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマーのアンモニア溶液は木材に良好に膨潤されたことを示していた。
【0093】
既述のファールシュトレーム(Fahlstrom)杭を、フロリダ州ハイアレア(Hialeah,FL)において、未処理の対照杭と共に、AWPA E7−01のとおり地中に設置した。杭の位置調整は、AWPA E7−01によりテストサイトにおいて無作為化した。杭を、6および12ヶ月で腐朽について評価し、AWPAl規格E7−01に準拠して未処理の対照杭と比較した。結果が表7に示されている。処理済の杭は、対照杭よりもかなり小さい腐朽を示した。
【0094】
【表9】

【0095】
ファールシュトレーム(Fahlstrom)杭を同様に調製し、実施例2Aで調製した非希釈処理溶液、ならびにこの溶液の1:2および1:4希釈物で処理した。杭を、3箇所の追加のサイトでテストした:フロリダ州スターク(Starke,FL)、デラウェア州ニューアーク(Newark,DE)、およびルイジアナ州ラプレイス(LaPlace,LA)。希釈物で処理した杭もまた、ハイアレア(Hialeah)においてテストした。サイトでテストした杭の腐朽および昆虫の攻撃等級区分のまとめが、表7からのハイアレア(Hialeah)サイト平均と比較して表8に記載されている。
【0096】
【表10】

【0097】
スターク(Starke)サイトでの対照に対する激しい腐朽および虫害およびハイアレア(Hialeah)サイトでの対照に対する激しい腐朽と共に、すべての処理溶液による強い保護がこれらのサイトで観察された。ルイジアナ州ラプレイス(LaPlace,LA)およびデラウェア州ニューアーク(Newark,DE)サイトでは、それぞれ、6および12ヶ月テスト期間の間に腐朽および虫害がほとんどなかった。より長期の期間にわたって、処理済の杭は、これらのサイトで、対照に対して少ない腐朽および虫害を示すであろうことが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合剤中に、(a)(i)トロポロン、および(ii)銅イオン、亜鉛イオンまたはこれらの混合物を含んでなる錯体;および(b)アンモニアおよび/またはエタノールアミンを含んでなる水性組成物であって;成分(b)が錯体を可溶化させるに十分な量で存在する水性組成物。
【請求項2】
追加の抗菌・カビ性成分および追加の殺シロアリ性成分の一方または両方から選択される成分(c)をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(c)が、モリブデン酸塩イオン、タングステン酸塩イオン、イブプロフェンまたはこれらの混合物を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーをさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
コポリマーが、加水分解オクテン/無水マレイン酸コポリマー、加水分解スチレン/無水マレイン酸コポリマーまたはこれらの混合物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
アミドキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、N−ヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシカルバメート、およびN−ニトロソ−アルキル−ヒドロキシルアミンよりなる群から選択される少なくとも2つの官能基を含んでなる銅キレート化化合物をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
キレート化化合物が、少なくとも2つのヒドロキサム基を含んでなり、このキレート化化合物は、スチレン/無水マレイン酸またはオクテン/無水マレイン酸から誘導される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
キレート化化合物が、アミドキシムおよびヒドロキサム酸から選択される少なくとも2つの官能基を含んでなり、アミドキシムまたはヒドロキサム酸は、シアノエチル化化合物から誘導される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
シアノエチル化化合物が、第一級アミン、第二級アミン、血液アルブミン、カゼイン、大豆タンパク質、ウールまたはコーンゼインのシアノエチル化;または血液アルブミン、カゼイン、膠、グルテン、大豆タンパク質、ウール、またはコーンゼインに由来する材料から誘導される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
シアノエチル化化合物が、アセトン−ホルムアルデヒド縮合物、アセトン−イソブチルアルデヒド縮合物、メチルエチルケトン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(アリルアルコール)、ポリ(クロチルアルコール)、ポリ(3−クロロアリルアルコール)、エチレン一酸化炭素コポリマー、プロピレンからのポリケトン、エチレンおよび一酸化炭素、ポリ(メタリルアルコール)、ポリ(メチルビニルケトン)、およびポリ(ビニルアルコール)よりなる群から選択される合成ポリマーのシアノエチル化から誘導される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
シアノエチル化化合物が、アルコール、炭水化物、デキストラン、デキストリン、ガム、デンプン、変性天然ポリマー;および天然ポリマー由来の化合物の群から選択される材料のシアノエチル化で得られる、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
シアノエチル化化合物が、スクロースまたはソルビトールのシアノエチル化から得られる、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
セルロース系材料、またはセルロース系材料を含んでなる物品を保存する方法であって、セルロース系材料または物品を、請求項1に記載の組成物と接触させることを含んでなる方法。
【請求項14】
セルロース系材料が、木材、材木、合板、配向性ストランドボード、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、綿、および紙よりなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
セルロース系材料または物品を、組成物で浸漬、はけ塗、吹付け、ドローコーティング、ロール塗または圧力処理することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
セルロース系材料が木材または材木である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
木材または材木を組成物と接触させる前および/または後に、木材または材木を減圧に供することをさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
セルロース系材料または物品を、構造物中または消耗装置中に組み込む工程をさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物が、セルロース系材料に吸着および/または吸収されている、セルロース系材料、またはセルロース系材料を含んでなる物品。
【請求項20】
セルロース系材料が、木材、紙、セルロース、綿、リグニン、およびヘミセルロースよりなる群から選択される、請求項19に記載の材料または物品。
【請求項21】
セルロース系材料が、木材、材木、合板、配向性ストランドボード、紙、セルロース、綿、リグニンおよびヘミセルロースよりなる群から選択され;および組成物が、トロポロン−−銅および/または亜鉛イオン錯体をさらに含んでなる、請求項19に記載の材料または物品。
【請求項22】
組成物が、タングステン酸塩および/またはモリブデン酸塩イオン−−銅および/または亜鉛イオン錯体をさらに含んでなる、請求項19に記載の材料または物品。
【請求項23】
組成物が、加水分解オレフィン/無水マレイン酸コポリマーをさらに含んでなる、請求項19に記載の材料または物品。
【請求項24】
組成物が、アミドキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、N−ヒドロキシ尿素、N−ヒドロキシカルバメート、およびN−ニトロソ−アルキル−ヒドロキシルアミンよりなる群から選択される少なくとも2つの官能基を含んでなる銅キレート化化合物をさらに含んでなる、請求項19に記載の材料または物品。
【請求項25】
キレート化化合物が、少なくとも2つのヒドロキサム基を含んでなり、かつ、スチレン/無水マレイン酸またはオクテン/無水マレイン酸から誘導される、請求項24に記載の材料または物品。
【請求項26】
キレート化化合物が、アミドキシムおよびヒドロキサム酸から選択される少なくとも2つの官能基を含んでなり、アミドキシムまたはヒドロキサム酸は、シアノエチル化化合物から誘導される、請求項24に記載の材料または物品。
【請求項27】
シアノエチル化化合物が、スクロースまたはソルビトールのシアノエチル化から得られる、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
請求項19に記載のセルロース系材料または物品を含んでなる構造物または消耗装置。

【公表番号】特表2009−522299(P2009−522299A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548762(P2008−548762)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/049543
【国際公開番号】WO2007/079212
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】