説明

木製ガードレール

【課題】強度性能及び品質に優れ、車輌衝突時におけるエネルギー吸収性を飛躍的に向上した木製ガードレールを提供する。
【解決手段】所定間隔を置いて立設される複数の支柱と、隣接する支柱間を架け渡して取り付け部材及び一体用プレートによりボルト接合される木製のビーム1とで構成され、このビーム1は、ビームの長さ方向Lに繊維方向が配された繊維方向単板10及び竹材複合単板12と、ビームの長さ方向Lに対して直角方向に繊維方向が配された繊維直交単板11とを積層状に重ね合わせてなり、正面層1A及び背面層1Bには繊維方向単板10及び竹材複合単板12が配され、内部層1Bには繊維直交単板11が繊維方向単板10で挟まれるように複数枚配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路肩等に設置される木製ガードレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の路肩等に設置されるガードレールは、道路から車輌が逸脱しないように設けられるものであり、歩行者や車輌搭乗者等の安全を確保する。このガードレールは、道路の路肩等に沿って所定間隔を置いて複数の支柱が立設され、各支柱を架け渡すようにビームが取り付けられている。このビームは、一般的には、生産性や強度の信頼性等から、鋼管や鋼板、或いはワイヤ等で構成されている。
しかし、近年では景観を考慮し、山間や高原、観光地等においては、原木の丸太でビームを構成した、木製のガードレールが普及されている(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開2000−73324号公報
【特許文献2】実用新案登録第3073642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この木製ガードレールは、丸太を素材のままビームとして適用しているので、強度のばらつきが大きく、又丸太内部までの十分な乾燥・防腐処理が困難であるため、微生物や菌類等による劣化や腐朽を受けやすく、強度信頼性や耐久性に劣る。又丸太製ビームは断面寸法が大きいので、乾燥、防腐処理のためのコストも大きい。
そして、この丸太製ビームは、鋼板等と異なり殆ど変形することなく脆性的に破壊する材料であるため、特に屋外使用による強度低下や車輌の特異的な衝突等を考えた場合、安全性にも問題がある。
そこで、本発明は、これらの諸事情に鑑み、強度信頼性が高く、耐久性、生産性にも優れ、なおかつこれまでの木製ガードレールとは異なり、衝撃エネルギー吸収性が付与された木製ガードレールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記した課題を解決するため、本発明に係る木製ガードレールは、所定間隔を置いて立設される複数の支柱と、隣接する各支柱間を架け渡して金属プレートによりボルト接合される木製のビームとからなり、ビームは、ビームの長さ方向に繊維方向が配された繊維方向単板と、ビームの長さ方向に対して略直角方向に繊維方向が配された繊維直交単板とを、積層面が略垂直方向になるよう積層状に重ね合わせてなり、繊維直交単板が、繊維方向単板で挟まれるように配されている。
【0005】
好ましくは、ビームが、厚さ方向において正面層、内部層、及び背面層の順で構成され、正面層及び背面層の各厚さが、ビームの厚さに対して8分の1〜4分の1であって、正面層及び背面層が、繊維方向単板のみで構成され、内部層が、繊維方向単板と繊維直交単板とで構成され、かつ前記内部層における繊維方向単板の数が繊維直交単板の数に対して1.5〜4.0倍であること。
【0006】
さらに好ましくは、繊維方向単板の少なくとも1枚は、全部又は一部に竹材製の単板が配されてなる竹材複合単板である。
ここで、木材製の単板とは、竹材以外の杉等の木材で成形された単板をいう。又、竹材複合単板は、竹材製の単板が配されて構成されたものであって、一体化されるものに限らない。
【0007】
又、竹材複合単板は、竹材製の単板の少なくとも両側に、木材製の単板が配されており、木材製の単板に、ボルト接合のためのボルト挿通孔が設けられても良い。
【0008】
そして、各ビームが、隣接する各ビームを連結して一体化するための一体用プレートを介して、支柱に取り付けられても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木製ガードレールにおいては、ビームが、複数枚の単板を積層状に重ね合わせて構成されているので、木材の欠点である節を分散することができ、さらに単板の厚さが数ミリと薄いために乾燥処理、防腐剤等の加工処理を容易且つ確実に行うことができる。したがって、ビーム全体にわたって、強度性能に優れ、品質が均等である。
そして、ビームを構成する各単板は、繊維方向単板と繊維直交単板との組み合わせであって、繊維直交単板が繊維方向単板で挟まれて配されている。繊維方向単板は、ビームに曲げ強度を付与することができ、繊維直交方向単板は、繊維方向単板で挟んで配することにより、ビームのボルト接合部における耐力を低下させずに、ボルトのめりこみ変形が大きく許容できる構造となり、それと同時にビームの形状安定性(反りやねじれの防止)も確保することができる。
したがって本発明は、従来の丸太製ガードレールに比べて、強度信頼性、耐久性、及び生産性(木材加工処理の効率性)が飛躍的に向上し、それと同時に衝撃エネルギー吸収性も兼ね備えた木製ビームとなる。
【0010】
ビームが、厚さ方向において正面層、内部層、及び背面層の順に構成されており、ビーム厚さの8分の1〜4分の1の厚さからなる正面層及び背面層に、ビームの長さ方向の大きな引張り、圧縮応力が生じる。したがって、正面層及び背面層を、繊維方向単板のみを重ね合わせて構成することで、ビームの曲げ強度が向上し、車輌の衝突荷重に耐える強度をビームに与えることができる。さらに、内部層を、繊維方向単板と繊維直交単板とで構成し、繊維方向単板の数を繊維直交単板の数に対して1.5〜4.0倍とすることにより、ボルト接合部における衝撃エネルギー吸収性を確保することができ、また、ボルト接合部の初期剛性も低下するため、車輌衝突時に発生する曲げ負荷を低減させることができる。
【0011】
さらに、繊維方向単板の少なくとも1枚は、全部又は一部に竹材製の単板が配されてなる竹材複合単板である。この竹材複合単板は、通常の木材に比して高い強度と変形性能を有する竹材が配されているので、強度及びエネルギー吸収性に優れている。
したがって、ビームに竹材複合単板が配されることにより、破壊強さとエネルギー吸収性が増し、従来の丸太製ガードレールのように脆性的に破壊されず、材料変形と共に緩やかに強度が低下し、安全性も飛躍的に向上する。
【0012】
また、竹材は紫外線劣化や腐朽、虫害を受けて劣化しやすい。そこで、竹材複合単板は、竹材製の単板の少なくとも両側に、木材製の単板が配され、この木材製の単板に、ボルト接合のためのボルト挿通孔が設けられることにより、竹材製の単板が、ボルト挿通孔から露出せず、竹材の虫害、腐朽等を防止することができる。
【0013】
そして、各ビームが、隣接する各ビームを連結して一体化するための一体用プレートを介して、支柱に取り付けられることにより、ビームに車輌が衝突した際に、隣接するビーム間の両端に段差が生じないため、段差によるビーム端部の突出によって衝突車輌が急停止する危険性を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る木製ガードレールの好ましい実施例について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る木製ガードレールを示すものであって、図1(a)は平面図、図1(b)は第1実施例の正面図、図1(c)は第2実施例の正面図である。
図1の如く、木製ガードレールは、道路の路肩等に所定間隔を置いて立設された複数の支柱2と、隣接する各支柱2,2の間を架け渡すようにボルト接合されたビーム1とで構成されている。各支柱2は鋼管製であって、ビーム1をボルト接合して取り付けるための、取付け部材4が設けられている。そして、この取付け部材4は、左右対称な形状をなしており、取付け部材4の左右両側に、隣接するビーム1,1がボルト3,3で接合される。したがって、ビーム1は、両端側が取付け部材4,4にボルト接合され、隣接する支柱2,2で支持されている。
第1実施例の木製ガードレールは、図1(b)のように、1つのビーム1が、隣接する支柱2,2に架け渡されて設けられた例である。そして、第2実施例の木製ガードレールは、図1(c)のように、同一形状、構成からなるビーム1,1が2つ平行に配され、隣接する支柱2,2に架け渡されて設けられた例である。
【0016】
図2は、第1実施例の木製ガードレールにおけるビームの断面図を示すものであって、図2(a)は図1(b)のA−A線断面図、図2(b)は、図1(b)のB−B線断面図である。
図2の如く、ビーム1は、竹材製、木材製の複数の単板10,11,12によって構成されている。そして、各単板10,11,12は、積層面が垂直方向Hになるよう、ビーム1の厚さ方向Wに積層状に重ね合わされている。10は、ビーム1の長さ方向Lに繊維方向が配された、繊維方向単板であり、11は、長さ方向Lに対して直角方向に繊維方向が配された、繊維直交単板である。この繊維方向単板10及び繊維直交単板11は、杉材等の木材製であればよい。
又、12は、長さ方向Lに繊維方向が配され、竹材製の単板12aと、杉材製の単板12bとを組み合わせて構成された、竹材複合単板である。12bは、竹材以外の木材製の単板であればよい。
【0017】
これら各単板10,11,12は、原木の丸太を、ロータリーレースやスライサー等で約3mm厚に切削し、乾燥工程や防腐処理の加工工程を経て成形される。本例では、ビーム1は、20枚の単板10,11,12を、積層状に重ね合わせて接着剤で一体化されて形成される。
図2(a)の如く、ビーム1は、厚さ方向Wにおける中心線Cに対して対称に構成されており、さらに厚さ方向Wにおいて正面層1A、内部層1B、及び背面層1Cの順に構成されている。ビーム1は、20枚の単板10,11,12で構成され、正面層1Aが5枚の単板、内部層1Bが10枚の単板、背面層1Cが5枚の単板で構成されている。
ビーム1は、厚さ方向Wの一端から、1層目及び2層目に繊維方向単板10、3層目に竹材複合単板12、4〜6層目に繊維方向単板10、7層目に繊維直交単板11、8層目に繊維方向単板10、9層目に繊維直交単板11、そして10層目に繊維方向単板10が配されており、11〜20層目は、中心線Cに対称に各単板10,11,12が配されている。
【0018】
従って、正面層1A及び背面層1Cは、4枚の繊維方向単板10と1枚の竹材複合単板12とで構成されている。内部層1Bは、6枚の繊維方向単板10と4枚の繊維直交単板11とで構成されている。
各単板10,11,12の厚さは3mmであって、ビーム1は、20枚の単板が積層されなるので、厚さ方向Wの寸法は60mmである。
【0019】
そして、図2(a)の如く、ビーム1は、長さ方向Lの寸法が1950mmであり、長さ方向Lの両端からボルト径φ16mmの7倍以上の位置に、ボルト3を挿通するためのボルト挿通孔30,30が設けられている。ビーム1のボルト3による接合は、図1(b)に示すように、左右両側に上下2箇所でなされるので、ボルト挿通孔30,30は、各ビーム1に対して4箇所設けられる。このボルト挿通孔30,30の径φは、ボルト3の直径より2mmほど大きくする。さらに、図2(b)の如く、ビーム1は、高さ方向Hの寸法が400mmである。
繊維方向単板10及び繊維直交単板11は、長さ方向1950mm、高さ方向400mmで構成されている。
竹材複合単板12は、長さ方向1650mm及び高さ方向300mmの竹材製単板12aの左右両側に、長さ方向150mm及び高さ方向400mmの木材製単板12b,そして竹材製単板12aの垂直方向の上下両側に長さ方向1950mm及び高さ方向50mmの木材単板12b,12bが接着されて、全体が長さ方向1950mm、高さ方向400mmで構成されている。
【0020】
したがって、竹材複合単板12は、木材製単板12b,12bにボルト挿通孔30,30が設けられる。
これは、竹材が、杉材等の木材に比して劣化や腐朽を受けやすく、また虫害の問題もあるため、竹材製の単板12aを、木材製の単板12b,10で囲み、さらに木材製の単板12bにボルト挿通孔30,30を設けることによって、竹材製の単板12bが屋外に露出して早期に劣化しないよう構成されている。
【0021】
次に、ボルト接合部を示す平面図である図3に基づいて説明する。図3(a)は各部を分解した状態、図3(b)は組み立てた状態である。
図3(a)の如く、支柱2の正面側の両側に、隣接するビーム1,1が配置され、ビーム1と支柱2との間に、取付け部材4及び一体用プレート5が配置される。そして、ビーム1、取付け部材4、及び一体用プレート5には、ボルト3が貫通するボルト挿通孔30が設けられている。取付け部材4は、支柱2に各ビーム1,1を取り付けるためのものであって金属製プレートで成形されており、支柱2を覆うように取り付けるためのU字部分4aと、各ビーム1,1を支持するための支持部分4b,4bとで構成されている。
先ず、取付け部材4のU字部分4aが支柱2の正面に配置され、ボルト40及びナット41で、支柱2に取付け部材4が取り付けられる。そして、一体用プレート5が各ビーム1,1の背面側に架け渡すように配置され、取付け部材4、一体用プレート5、及び各ビーム1,1のボルト挿通孔30が貫通するよう配置される。その後、ボルト3及びナット31で、取付け部材4に、一体用プレート5及び各ビーム1,1が取り付けられ、それによって、各ビーム1,1が支柱2にボルト接合される(図3(b)参照)。
【0022】
この一体用プレート5は、隣接するビーム1,1を一体化するものである。この一体用プレート5を介して各ビーム1,1を一体化することにより、ビーム1に車輌が衝突した際に、隣接するビーム1,1間の両端に段差が生じないため、段差によるビーム1の端部の突出によって衝突車輌が急停止する危険性を防止することができる。
【0023】
第2実施例の木製ガードレール(図1(c)参照)については、ビーム1が、高さ200mm、ボルト挿通孔30が左右両側に1箇所ずつ設けられており、その外の構成は、前記した第1実施例の木製ガードレールと略同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
図4乃至図6は、ビームの材料性能を評価するための試験例を示すものである。
図4及び図5は、ビームのボルト接合部における材料性能を評価する試験例を示すものである。図4は、試験体を示しており、図4(a)は正面図、図4(b)乃至(d)は図4(a)のC−C線断面図である。図5(a)は試験方法を説明する側面図、図5(b)は試験結果を示すグラフである。
図4(a)の如く、試験体1aは長さ方向L1における、双方側にピン用挿通孔10a,11aが設けられている。この試験体1aは、図4(b)乃至(d)に示すように、10枚の単板10,11が厚さ方向W1に積層状に重ね合わせて構成されている。この単板10,11は、厚さが約3mmで構成されている。10は、長さ方向L1に繊維方向が配された繊維方向単板であって、11は、長さ方向L1に対して直角方向に繊維方向が配された繊維直交単板である。
【0025】
そして、図4(b)乃至(d)に示すように、3つの試験体1a,1a’,1a’’で試験を行い、対比した。
第1の試験体1aは、図4(b)のように、10枚の繊維方向単板10を重ね合わせて構成されている。
第2の試験体1a’は、図4(c)のように、8枚の繊維方向単板10と、2枚の繊維直交単板11とにより構成され、厚さ方向W1の両側に各2枚の繊維方向単板10が、その内側に各1枚の繊維直交単板11、残りに繊維方向単板10が配されている。従って、繊維方向単板10の数(8枚)が、繊維直交方向単板11の数(2枚)に対して4倍である。
第3の試験体1a’’は、図4(d)のように、6枚の繊維方向単板10と、4枚の繊維直交単板11とにより構成され、厚さ方向W1の両側に各1枚の繊維方向単板10が、その内側に各1枚の繊維直交単板11が、その内側に繊維方向単板10、繊維直交単板11、繊維方向単板10が順に配されている。従って、繊維方向単板10の数(6枚)が、繊維直交単板11の数(4枚)に対して1.5倍である。
【0026】
図5(a)のように、引張り試験装置6に各試験体1a,1a’,1a’’を取り付けて試験を行った。試験装置6は、双方側にドリフトピン60,61が設けられている。
第1の試験体1aについて試験を行う際、試験装置6のドリフトピン60,61に、試験体1aの各ピン用挿通孔10a,11aを挿通、接合して、試験体1aを固定する。そして、試験装置6が、試験体1aに5mm/minの速度で引張り負荷Pを与え、その応力と一方のドリフトピン60のめり込み変位を測定する。この変位測定は、試験体1aの左右両側に配置した変位計62,62で行い、両変位の平均値をめり込み変位とする。この試験を、第2及び第3の試験体1a’,1a’’についても同様に行った。
そして、この試験結果により、ビーム1のボルト接合部における材料性能を評価する。
【0027】
図5(b)に示すように、第1の試験体1aの接合部は、最大応力を示した後に脆性的に破壊した。一方、第2及び第3の試験体1a’,1a’’の接合部は、最大応力後も大きく塑性変形している。
次に、この結果について、完全弾塑性近似を行い、接合部の面圧特性の評価を行う。その結果を下記表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の如く、接合部の初期剛性は、繊維直交単板11が増加するに従って減少し、第3の試験体1a’’の初期剛性は、第1の試験体1aのそれに比して約2分の1である。しかし、降伏応力、終局応力、及び最大応力は、第1〜第3の試験体1a,1a’,1a’’について略同等であると共に、エネルギー吸収量は、繊維直交単板11を配置することにより飛躍的に増加する。
したがって、ビーム1は、繊維方向単板10のみで構成するのではなく、繊維方向単板10と繊維直交単板11とを組み合わせて構成することにより、車輌衝突時における、ボルト接合部のめり込み変位により、各種応力を低下させることなく、エネルギー吸収量を十分に確保できることが確認される。
なお、ガードレールに車輌が衝突する際、ビーム1の厚さ方向Wの両側に、長さ方向Lの大きな引張り・圧縮応力が生じるので、図2(a)の如く、本実施例のビーム1は、正面層1A及び背面層1Bに、各5枚の繊維方向の単板10,12が配され、この引張り・圧縮応力に耐え得るよう構成されている。そして、ビーム1の内部層1Bは、繊維方向単板10が6枚と、繊維直交単板11が4枚とで構成されている。
【0030】
図6は、竹材複合単板を配したビームを評価する試験例を示すものであり、図6(a)は試験方法を説明する側面図、図6(b)及び(c)は図6(a)のD−D線断面図、図6(d)は試験結果を示すグラフである。
図6(a)に示すように、試験体1bを単純支持し、試験体1bの長さ方向L2の中央に、上方から荷重Pを与えて試験を行った。そして、図6(b)及び(c)の如く、2つの試験体1b,1b’で同様の試験を行い対比した。各試験体1b,1b’は、複数の単板10,12aが、厚さ方向W2に重ね合わされて構成されている。
第4の試験体1bは、長さ方向L2に繊維方向が配された繊維方向単板10を、10枚積層して構成されている。この繊維方向単板10は、杉材製の単板である。
第5の試験体1b’は、杉材製の繊維方向単板10と、竹材製の繊維方向単板12aとの組み合わせにより構成されている。竹材製の単板12aは、大きな引張り応力が生じる下方側の2層目に配されている。
【0031】
試験結果は、図6(d)に示すように、第4の試験体1bの曲げ強さは約400kgf/cmであるが、第5の試験体1b’のそれは約700kgf/cmであるので、第4の試験体1bに比して第5の試験体1b’の曲げ強さは2倍弱である。さらに、応力−ひずみ曲線で囲まれる面積から、第4の試験体1bに比して、第5の試験体1b’のエネルギー吸収量が非常に大きいことが確認される。
従って、ビーム1の最も大きな引張り及び圧縮応力が生じる、正面層1A及び背面層1Bに竹複合単板12を配することにより、ビーム1の破壊強さが増すと共に、エネルギー吸収性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る木製ガードレールを示すものであって、(a)は平面図、(b)は第1実施例の正面図、(c)は第2実施例の正面図である。
【図2】第1実施例の木製ガードレールにおける、ビームの断面図を示すものであって、(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は図1(b)のB−B線断面図である。
【図3】ボルト接合部を示す平面図であって、(a)は各部を分解した状態、(b)は組み立てた状態である。
【図4】ビームのボルト接合部の試験体を示しており、(a)は正面図、(b)乃至(d)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】ビームのボルト接合部の試験例を示すものであって、(a)は試験方法を説明する側面図、(b)は試験結果を示すグラフである。
【図6】竹材製の単板を配したビームの試験例を示すものであり、(a)は試験方法を説明する側面図、(b)及び(c)は(a)のD−D線断面図、(d)は試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
1 ビーム
1A ビームの正面層
1B ビームの内部層
1C ビームの背面層
2 支柱
3 ボルト
4 取付け部材
5 一体用プレート
10 繊維方向単板
11 繊維直交単板
12 竹材複合単板
12a 竹材製の単板
12b 木材製の単板
L ビームの長さ方向
W ビームの厚さ方向
30 ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を置いて立設される複数の支柱と、隣接する該各支柱間を架け渡してボルト接合される木製のビームとからなり、該ビームは、前記ビームの長さ方向に繊維方向が配された繊維方向単板と、前記ビームの長さ方向に対して略直角方向に繊維方向が配された繊維直交単板とを、積層面が略垂直方向になるよう積層状に重ね合わせてなり、前記繊維直交単板が、前記繊維方向単板で挟まれるように配されていることを特徴とする木製ガードレール。
【請求項2】
前記ビームが、厚さ方向において正面層、内部層、及び背面層の順で構成され、前記正面層及び前記背面層の各厚さが、前記ビームの厚さに対して8分の1〜4分の1であって、前記正面層及び前記背面層が、前記繊維方向単板のみで構成され、前記内部層が、前記繊維方向単板と前記繊維直交単板とで構成され、かつ前記内部層における前記繊維方向単板の数が前記繊維直交単板の数に対して1.5〜4.0倍であることを特徴とする請求項1に記載の木製ガードレール。
【請求項3】
前記繊維方向単板の少なくとも1枚は、全部又は一部に竹材製の単板が配されてなる竹材複合単板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の木製ガードレール。
【請求項4】
前記竹材複合単板は、竹材製の単板の少なくとも両側に、木材製の単板が配されており、該木材製の単板に、ボルト接合のためのボルト挿通孔が設けられることを特徴とする請求項3に記載の木製ガードレール。
【請求項5】
前記各ビームが、隣接する各ビームを連結して一体化するための、一体用プレートを介して、前記支柱に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の木製ガードレール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37572(P2006−37572A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220627(P2004−220627)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年7月20日 日本木材学会発行の「第54回 日本木材学会大会研究発表要旨集」に発表
【出願人】(591097702)京都府 (19)
【Fターム(参考)】