説明

木質タールの燃料処理装置および方法

【課題】 最近のバイオマス処理によって大量の木質タールが生じ、その大量の木質タールを有効に利用することにある。
【解決手段】 バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナー11に配管6を介して送給自在としている。燃焼用のバーナー11へ送給する配管6の途中に木質タールを35〜70℃に加熱するプレヒータ7を配設し、また配管の途中に木質タールの粘度を検出する粘度センサー14を設けて、送給する木質タールを所要の粘度範囲にプレヒータ7で加熱制御することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス処理によって生成される木質タールの燃料処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用、地球温暖化防止として、廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスをエネルギーとして利用することが盛んに行われている。このバイオエネルギーの利用として、バイオマスを直接燃焼させて熱、電気エネルギーを得たり、熱分解によって燃料ガスを得る方法等が知られている。
【0003】
しかし、廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを熱分解すると、木質タールが生成され、従来このタールの利用手段がなくて廃棄処分に困っていた。特に、最近、バイオマス処理によって大量の木質タールが生じ、大量の木質タールを有効に処理することが必要となっている。
【0004】
特許調査の結果、特開2005−161134号公報、特開2004−315642号公報が検索された。
上記特開2005−161134号公報は、FeO、Fe23 、Fe34 等の酸化鉄を含む組成物を触媒として用い、木質系バイオマスを600℃以下で熱分解し、タールをほぼ100%分解して燃料ガスとして回収することを提案している。
また、特開2004−315642号公報は、木タール、木酢液の木質分解液に水や鉱物油、アルコール類、ガソリンを添加混合してエマルジョン燃料として利用することを提案している。
【0005】
しかし、前者にあっては、触媒を介して高温で熱分解するもので、触媒を必要とするとともに、高温処理設備が必要となり、設備が高価になる。
また、後者にあっては、資源として有効に利用できる水や鉱物油、アルコール類、ガソリンを使用するもので、さらに界面活性剤も必要となり、木質タールの処理に原単価が高くなる。
【特許文献1】特開2005−161134号公報
【特許文献2】特開2004−315642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、最近のバイオマス処理によって大量の木質タールが生じ、その大量の木質タールを有効に処理することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに配管を介して送給自在としたこと特徴とする木質タールの燃料処理装置を提供するにある。
【0008】
また、木質タールを貯蔵タンクに装填して燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールを35〜70℃に加熱するプレヒータを配設し、上記プレヒータで加熱した木質タールを送給ポンプで所定の圧力に加圧してバーナーに送給自在に形成したことを特徴とする木質タールの燃料処理装置を提供するにある。
【0009】
さらに、木質タールの燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールの粘度を検出する粘度センサーを設け、この粘度センサーを介して送給する木質タールを所要の粘度範囲にプレヒータにフィードバックして加熱制御自在に形成したことを特徴とする木質タールの燃料処理装置を提供するにある。
【0010】
さらに、廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンを35℃以上に加熱して上記木質タールに5〜20重量%添加することを特徴とする木質タールの燃料処理装置を提供するにある。
【0011】
またさらに、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給して燃焼すること特徴とする木質タールの燃料処理方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに配管を介して送給自在としたことによって、廃棄処分に困る大量の木質タールを円滑にボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給でき、かつ噴霧可能にでき、有効に燃焼処理できて、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【0013】
また、本発明は、木質タールを貯蔵タンクに装填して燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールを35〜70℃に加熱するプレヒータを配設し、上記プレヒータで加熱した木質タールを送給ポンプで所定の圧力に加圧してバーナーに送給自在に形成することによって、大量の木質タールを貯蔵タンクに装填して配管の途中でプレヒータで木質タールを35〜70℃に加熱して円滑に燃焼用のバーナーへ送給でき、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【0014】
さらに、本発明は、木質タールの燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールの粘度を検出する粘度センサーを設け、この粘度センサーを介して送給する木質タールを所要の粘度範囲にプレヒータにフィードバックして加熱制御自在に形成することによって、生成される木質タールの品質にばらつきがあっても、粘度センサーで送給する木質タールの粘度を検出してプレヒータで適正な粘度に加熱制御して、円滑に燃焼用のバーナーへ送給でき、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【0015】
またさらに、本発明は、廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンを35℃以上に加熱して上記木質タールに5〜20重量%添加することによって、廃棄処分に困っていた廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンを木質タールに添加して燃焼効率よく、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【0016】
またさらに、本発明は、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給して燃焼して利用することによって、上記のように廃棄処分に困る大量の木質タールを円滑にボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給でき、かつ噴霧可能にできて、有効に燃焼処理できて、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の木質タールの燃料処理装置および方法は、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに配管を介して送給して燃焼することを特徴としている。
【0018】
木質タールの燃料処理装置は、図1のように所定容量の貯蔵タンク2にバイオマス処理によって生成される木質タールをヒータ3で所定温度に加温可能に装填し、開閉弁4等を介して送り出し用の送給ポンプ5を配設し、途中の配管6にプレヒータ7、フィルター8、開閉弁9、圧送用の送給ポンプ10等を適宜に接続して、末端のボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナー11に70℃以下として円滑に流動してそのノズル12から噴霧する燃焼用燃料として供給するようにしている。
【0019】
木質タールは、資源の有効利用、地球温暖化防止として、廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスをエネルギーとして利用することが盛んに行われているバイオマスを火力発電等で熱分解処理したときに生成される廃液を利用するもので、近年の状況によって大量に発生してその処分に困っているものである。
【0020】
貯蔵タンク2は、10000〜20000リットル容量として十分な量の木質タールを装填できるようにし、その底部に防爆用のヒータ3を内装し、木質タールを劣化しない、後続のプレヒータ7で所要の温度に加熱できる20〜30℃位の適宜な流動状態に保温するようにしている。
【0021】
また、送り出し用の送給ポンプ5、圧送用の送給ポンプ10は、1〜5リットル/分の送給量のギヤーポンプ等として、特に圧送用の送給ポンプ10は10〜30kg/cm2 の圧送力として、バーナー11のノズル12から容易に噴射して燃焼するようにし、ブロアー13を介して前方へ送り込むようにしている。
【0022】
そして、配管6の途中に接続したプレヒータ7は防爆型のものとして、図2の木質タールの温度と粘性の関係図から木質タールの粘度を数cP〜300cPの、70℃以下、好ましくは35〜70℃の温度範囲に加熱制御して円滑にボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナー11に送給して、噴霧できるようにしている。なお、木質タールを70℃にて40時間加熱する実験によれば、図3のように木質タールが重合して高分子化し、粘性が高まってかたまりだすことが判明し、70℃以上に加熱すると配管6に詰まりが生じたり、送給ポンプ10内に粘着して円滑に送給できなくなるとともに、燃焼用バーナー11での燃焼に支障を生じて好ましくない。そのため、図2から35〜50℃の温度範囲に維持するのが連続的に円滑に送給できてより好ましい。
【0023】
そしてまた、送給ポンプ10とバーナー11の間の配管6にインライン用のソリッドステート等の粘度センサー14を配設し、流通する木質タールの粘度を検出し、粘度が数cP〜300cPの範囲、好ましくは数cP〜200cPの範囲に維持できるようにプレヒータ7にフィードバックしてプレヒータ7で加熱制御するようにしている。このようにすることによって、各種のバイオマス処理によって生成される木質タールの品質にばらつきがあっても、所要の流動性、燃焼に支障のない粘度に確実に維持することができるようにできて好ましいものである。
【0024】
なお、燃焼用のバーナー11には、図1のようにノズル12を2本並列に配設し、この1本に上記のように木質タールを送給自在に配管接続しているとともに、他の1本に燃油タンク15に重油を装填して送給自在に配管接続し、万一の場合に代替して使用できるようにしている。また、これらの配管には、ブロアー13の風量と連動して連動弁16を配設して木質タール量、重油量を流量調節可能としている。また、配管は、すべて電気ヒーター等を介して保温処理している。
【0025】
そしてまた、図4のように廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンの貯蔵タンク17を配設し、廃グリセリンを上記した木質タールに混合ポンプ18等を介して添加混合して送給するようにしている。廃グリセリンは、上記した木質タールに5〜20重量%添加、好ましくは7〜10重量%添加して35〜50℃に加熱して送給することが好ましい。廃グリセリンが5重量%以下では効果が乏しく、20重量%以上としても効果をより高められない。
【0026】
廃グリセリンを木質タールに添加混合することで、廃棄処分される廃グリセリンの高燃焼力を利用して木質タールを安定して燃焼するようにできる。廃グリセリンは、高粘度なので、30〜50℃に保温し、35〜50℃にプレヒータ7で加熱して送給するのが好ましい。
【実施例】
【0027】
図1は、本発明の一実施例を示すもので、木質タールの燃料処理装置1を図1のように20000リットル容量の貯蔵タンク2にバイオマス処理によって生成された木質タールをその底部の防爆用のヒータ3で20〜30℃に加温可能に装填し、送給ポンプ5で送給自在として途中の配管6にプレヒータ7、フィルター8、開閉弁9、圧送用の送給ポンプ10等を接続し、末端のボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナー11に70℃以下としてそのノズル12から噴霧して燃焼するようにしている。
【0028】
圧送用の送給ポンプ10は、5リットル/分の送給量、30kg/cm2 の圧送のギヤーポンプとして、バーナー11のノズル12から均一に噴射して燃焼するようにし、ブロアー13で前方へ送り込むようにしている。
【0029】
配管6の途中に接続したプレヒータ7で、木質タールを20〜70℃の温度範囲に加熱して円滑にボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給し、かつ加圧噴霧可能にしている。そして、送給ポンプ10とバーナー11の間の配管6にインライン用のソリッドステートの粘度センサー14を配設し、流通する木質タールの粘度を検出して粘度が数cP〜200cPの範囲に維持できるようにプレヒータ7にフィードバックしてプレヒータ7で加熱制御し、各種のバイオマス処理によって生成される木質タールの品質にばらつきがあっても、所要の流動性、燃焼に支障のない粘度に確実に維持することができるようにしている。
【0030】
なお、燃焼用のバーナー11には、図1のようにノズル12を2本並列に配設し、この1本に上記のように配管接続しているとともに、他の1本に燃油タンク15に重油を装填して供給自在に配管接続し、万一の場合に代替して使用できるようにしている。これらの配管には、ブロアー13の風量と連動して連動弁16を配設して木質タール量、重油量を流量調節可能としている。
【0031】
このようにして、バイオマス処理によって生成される木質タールをボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給すると、廃棄処分に困る大量の木質タールを円滑にボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給できて、かつ噴霧可能にでき、有効に燃焼処理できて、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に利用することができる。
【0032】
特に、大量の木質タールを貯蔵タンク2に装填して配管6の途中でプレヒータ7で木質タールを35〜70℃に加熱して円滑に燃焼用のバーナー11へ送給でき、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に燃焼することができる。
【0033】
また、木質タールの燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールの粘度を検出する粘度センサーを設けて、木質タールを所要の粘度範囲にプレヒータにフィードバックして加熱制御することによって、生成される木質タールの品質にばらつきがあっても、粘度センサーで送給する木質タールの粘度を検出してプレヒータで適正な粘度に加熱制御でき、円滑に燃焼用のバーナーへ送給できて、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に燃焼することができる。
【0034】
図4は、本発明の他の実施例を示すもので、廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンの貯蔵タンク17を配設し、混合ポンプ18を介して廃グリセリンを上記した木質タールに5〜20重量%添加混合して燃焼するようにしている。廃グリセリンを木質タールに添加混合することで、廃棄処分される廃グリセリンの高燃焼力を利用して木質タールを安定して燃焼するようにできる。廃グリセリンは、高粘度なので、廃グリセリンを35〜50℃に加熱して適正な粘度として、上記木質タールに5〜20重量%添加して送給して燃焼効率よく、ボイラーやドライヤー等の加熱や乾燥に燃焼することができる。
【0035】
上記では、木質タールを貯蔵タンクに装填してバーナーに送給したが、バイオマス発電装置等から生成される木質タールを貯蔵タンクを介し、また介さずに供給するなど、環境に対応して本発明の趣旨にもとづいて適宜な変形態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例の概要説明図、
【図2】同上の木質タールの粘度−温度の関係図、
【図3】同上の木質タールの性状説明用図、
【図4】同上の他の実施例の概要説明図。
【符号の説明】
【0037】
1…燃料処理装置 2…貯蔵タンク 3…ヒータ 4、10…送給ポンプ
6…配管 7…プレヒータ 11…バーナー 12…ノズル
14…粘度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス処理によって生成されル木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに配管を介して送給自在としたこと特徴とする木質タールの燃料処理装置。
【請求項2】
木質タールを貯蔵タンクに装填して燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールを35〜70℃に加熱するプレヒータを配設し、上記プレヒータで加熱した木質タールを送給ポンプで所定の圧力に加圧してバーナーに送給自在に形成したことを特徴とする請求項1に記載の木質タールの燃料処理装置。
【請求項3】
木質タールの燃焼用のバーナーへ送給する配管の途中に木質タールの粘度を検出する粘度センサーを設け、この粘度センサーを介して送給する木質タールを所要の粘度範囲にプレヒータにフィードバックして加熱制御自在に形成したことを特徴とする請求項2に記載の木質タールの燃料処理装置。
【請求項4】
廃食油の燃料処理時に生成される廃グリセリンを35℃以上に加熱して上記木質タールに5〜20重量%添加することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の木質タールの燃料処理装置。
【請求項5】
バイオマス処理によって生成された木質タールをボイラーやドライヤー等の燃料用として利用するために、木質タールを70℃以下、好ましくは35〜70℃に加熱して流動性を維持して粘度を霧化しやすい数cP〜300cPとしてボイラーやドライヤー等の燃焼用のバーナーに送給して燃焼すること特徴とする木質タールの燃料処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−91198(P2010−91198A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262303(P2008−262303)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】