説明

木質化粧板及びその製造方法

【課題】 表面化粧材を水性接着剤で加熱加圧処理する際に、反りが発生し難い木質化粧板を提供する。
【解決手段】 基板1の上に木質繊維板2が接着され、その木質繊維板2の表面に水性接着剤6を介して表面化粧材5が一体化された木質化粧板7であって、木質繊維板2が、減圧状態で加湿加熱処理されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居の床材や収納建具材等の内装建材等に使用される木質化粧板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内装建材等に使用される木質基板は、表面平滑性向上の観点から木質繊維板を基板表面に接着、複合したものが使用される。
【0003】
一般的には、基板として、合板、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)等が用いられ、その表面に接着、複合される木質繊維板としてはMDF(Medium Density Fiberboard)等が用いられる。
【0004】
そして、その木質繊維板の表面に、表面化粧材として突板や印刷シートを水性接着剤を用いて接着して木質化粧板が製造される。
【0005】
この木質化粧板の製造において、表面化粧材を水性接着剤で接着する際に加熱加圧処理して接着するが、この加熱加圧処理時の湿熱により木質繊維板が面方向に収縮して、木質化粧板に反りが発生するといった問題がある。
【0006】
そこで、反りを解消するために、反り矯正機を用いて強制的に平坦にする処理を施すことが行われている。しかしながら、反り矯正機を用いた強制的な処理は、バッチ式であること、また、プロセス工程が増加する等といった問題があった。
【0007】
また、湿式単板、乾式単板、中密度繊維板(MDF)を複数枚積層して、あらかじめ凸反りを付与しておき、加熱加圧処理によって結果的に略平坦にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−85715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような提案にあっても、目的とする製品の大きさや厚み、製造環境によって予め付与する凸反りの条件が異なるため、製品の安定的な製造が困難である等の問題があった。
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、表面化粧材を水性接着剤で接着するために、加熱加圧処理する際に、反りが発生し難い木質化粧板及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために以下のことを特徴としている。
即ち、本発明の木質化粧板は、基板の上に木質繊維板が接着され、その木質繊維板の表面に水性接着剤を介して表面化粧材が一体化された木質化粧板であって、木質繊維板が、減圧状態で加湿加熱処理されたものであることを特徴とする。
【0012】
この木質化粧板において、木質繊維板を加湿加熱処理する際の木質繊維板の表面温度が、木質繊維板に配合される撥水剤の溶融温度未満であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の木質化粧板の製造方法は、基板の上に木質繊維板を接着して、その木質繊維板の表面に水性接着剤を介して表面化粧材を加熱加圧処理して一体化する木質化粧板の製造方法であって、木質繊維板が、減圧状態で加湿加熱処理したものであることを特徴とする。
【0014】
この木質化粧板の製造方法において、木質繊維板を加湿加熱処理する際の木質繊維板の表面温度が、木質繊維板に配合する撥水剤の溶融温度未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の木質化粧板及びその製造方法によれば、基板と、予め減圧状態で加湿加熱処理された木質繊維板を接着した上に、表面化粧材を水性接着剤を介して加熱加圧処理した木質化粧板であるので、木質繊維板の収縮を低く抑えることができ、反りを抑制した木質化粧板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の木質化粧板の製造工程を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の木質化粧板は、基板の上に木質繊維板を接着して複合板とし、その複合板の木質繊維板の表面に水性接着剤を介して表面化粧材を加熱加圧処理して一体化した木質化粧板であって、加熱加圧処理の際に反りの発生を防止するために木質繊維板を単独で予め減圧状態で加湿加熱処理したものである。
【0018】
まず、本発明の反りの発生を防止するための構成について詳述する。
通常、基板表面に接着して複合された木質繊維板は、木質繊維板と表面化粧材とを接着するための水性接着剤を塗布した後に、加熱加圧処理する際の湿熱負荷により面方向に収縮する。
【0019】
一方、木質繊維板には、耐水性を得るために適度な撥水剤が添加されている場合がある。この撥水剤は複数種類が併用されている場合が多く、耐熱性及び耐水性を考慮している場合には、例えば、撥水剤の融点が70℃程度のパラフィン系ワックス、また、融点が100℃以上の合成樹脂系ワックス、例えば、ポリエチレン複合ワックスが使用される。
【0020】
加熱加圧処理による木質繊維板の収縮の程度は、木質繊維板に添加される撥水剤の種類、撥水剤の添加量、水性接着剤の種類、水性接着剤の塗布量等により変動するため、木質繊維板の収縮を完全に抑制することは非常に困難である。
【0021】
そこで本発明では、木質繊維板単体に対して、予め加湿加熱処理を施こして、適度に膨潤させることで、木質繊維板の製造時の圧締歪みを緩和する。この緩和は、加湿加熱処理した後に、供給された水分が抜けても維持されるため、水性接着剤を介して、木質繊維板と表面化粧材とを加熱加圧処理する際の木質繊維板の収縮を抑制し、反りの発生し難い木質化粧板とするものである。
【0022】
予め木質繊維板に施しておく加湿加熱処理の条件は、木質繊維板の種類、厚さ等により適宜設定することができるが、加熱条件に関しては、木質繊維板に撥水剤が含まれている場合には、木質繊維板の表面温度を木質繊維板に添加されている撥水剤の溶融温度未満にすることがより好ましい。
【0023】
木質繊維板の表面温度を木質繊維板に添加されている撥水剤の溶融温度未満にすることで、木質繊維板からの撥水剤の溶融流出を抑制することが可能となり、加湿加熱処理後の木質繊維板の寸法安定性をより優れたものとすることができる。
【0024】
ここで、本発明における木質繊維板の表面温度とは、加湿加熱処理の条件における加熱温度(加熱時の雰囲気温度)を意味する。
【0025】
なお、木質繊維板に複数種類の撥水剤が含まれている場合には、その撥水剤のうちの最も高い溶融温度未満の加熱条件にすることができる。
【0026】
即ち、木質繊維板に撥水剤が複数種類含まれている場合には、加湿加熱処理の完了時に、木質繊維板に少なくとも1種類の撥水剤が含まれていればよい。
【0027】
また、本発明で木質繊維板に施す加湿加熱処理は、減圧状態で加湿加熱処理をするものである。
【0028】
加湿加熱処理を減圧状態で行うことにより、加湿加熱処理の終了時、即ち常圧に戻したときに木質繊維板の内部に均一に水分を浸透させることができるため、木質化粧板とするときの圧締歪みをより均一に緩和させることが可能となる。
【0029】
減圧状態で加湿加熱処理する方法は特に制限されないが、例えば、減圧釜を用いて減圧環境下に蒸気を供給する方法や、密閉された減圧釜に高温蒸気を投入後、温度を下げることで飽和蒸気環境のまま減圧する方法、また、減圧釜内で蒸気を発生させて飽和蒸気環境とする方法等の各種方法を採用することができる。
【0030】
また、減圧釜内に木質繊維板を載置する方法は、木質繊維板に蒸気が接触するかたちであれば積層しても縦に設置してもよく、また、加湿加熱処理による木質繊維板の変形を防止する目的で、木質繊維板が成形された圧力より小さい圧力で荷重をかけることができる。
【0031】
木質繊維板を積層する場合には、必要に応じて積層段数を調整したり、蒸気と接触させ易くするために木質繊維板間にスペーサーを介在させる等の調整が可能である。
【0032】
このようなことを総合的に考慮した場合、木質繊維板に予め施しておく加湿加熱処理の条件としては、温度40〜120℃の飽和水蒸気圧(例えば50℃で約0.01MPa、120℃で約0.2MPa)を好ましい範囲とすることができる。
【0033】
このような条件で、予め木質繊維板に対して加湿加熱処理を施しておくことにより、複合板と表面化粧材を水性接着剤を介して加熱加圧処理により一体化した場合でも、複合板を構成する木質繊維板の収縮を低く抑えることができ、木質化粧板の反りを抑制することができる。
【0034】
次に、本発明の木質化粧板を構成する各材料について詳述する。
<基板>
本発明で用いられる基板としては、通常木質化粧板に用いられる基板であれば特に制限なく用いることができ、これらのものとしては、例えば、合板、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)、LVL(Laminated Veneer Lumber)等の木質系基板、無機系基板等を挙げることができる。
【0035】
これらのなかでも合板が好ましく、ラワン、ユーカリ、ファルカタ、カメレレ、キリ、ラバーウッド、ポプラ、スギ、カラマツ、ヒノキ等の合板を好適に用いることができる。
【0036】
<木質繊維板>
本発明で用いられる木質繊維板としては、通常公知の木質繊維板であれば特に制限なく用いることができ、これらのものとしては、例えば、MDF、HDF(Hight Density Fiber Board)、インシュレーションボード、ケナフ繊維やジュート繊維、合成繊維を解繊混合し圧締したもの等を挙げることができる。そして、本発明では、これらの木質繊維板に予め減圧状態で加湿加熱処理を施したものを用いる。
【0037】
<複合板>
基板と木質繊維板は、接着剤を介して接着し複合板とする。ここで用いられる接着剤としては、通常一般に基板と木質繊維板を複合するための接着に用いられる接着剤であれば特に制限なく用いることができ、従来公知のものを含め各種のものが使用可能である。酢酸ビニル樹脂系接着剤等の一般的な木工用として汎用されているものや、PUR(Poly Urethane Reactive)系接着剤等を好適に用いることができる。
【0038】
PURは、反応型ホットメルト樹脂であり、ポリウレタン系の未硬化樹脂(プレポリマー)を主成分とし加熱溶解の後、水、例えば木質繊維板中の水分と反応し硬化するものであり、特に好適に用いることができる。
【0039】
<表面化粧材>
本発明で用いられる表面化粧材としては、本発明の木質化粧板の使用用途等により適宜選択することができる。
【0040】
これらのものとしては、例えば、各種模様が施された合成樹脂シート(フィルム)、天然銘木を薄くスライスして形成された薄シート状の突板等を挙げることができ、これらの中でも、美観性、素材感等の観点から突板を好適に用いることができる。
【0041】
具体的には、ブナ、ナラ、オーク、クルミ、ウォールナット、ビーチ、バーチ等の木材の突板を好適に用いることができる。
【0042】
<水性接着剤>
木質繊維板と表面化粧材を接着する水性接着剤としては、木質繊維板と表面化粧材が強固に接着できるものであれば特に制限なく用いることができ、これらのものとしては、例えば、水性ビニルウレタン樹脂系接着剤、水性酢酸ビニル樹脂系接着剤、水性イソシアネート樹脂系接着剤等の水性接着剤を挙げることができる。
【0043】
以下、本発明の木質化粧板の製造方法について図を用いて詳述する。図1は本発明の製造方法の工程を説明するための概略断面図である。
【0044】
本発明の木質化粧板は、まず、図1(A)に示すように、基板1と、予め減圧状態で加湿加熱処理を施した木質繊維板2をPUR系接着剤等の接着剤3を用いて接着して図1(B)に示す複合板4とする。接着剤3は、基板1、木質繊維板2のいずれか一方又は両方の表面に塗布し、接着剤3塗布面を合わせて加熱加圧処理により接着して複合板4とすることができる。
【0045】
次に、図1(C)に示すように、複合板4の木質繊維板2表面に水性接着剤6を塗布し、この上に表面化粧材5を載置して、上下から加熱加圧処理して積層一体化し、図1(D)に示す木質化粧板7とする。
【0046】
本発明の木質化粧板7の製造時における接着剤3及び水性接着剤6の塗布方法は特に制限されるものではなく、ロールコーター、スプレー塗布、手塗り等の各種塗布方法を採用することができる。
【0047】
また、複合板4と表面化粧材5との加熱加圧処理条件としては、基板1、木質繊維板2、表面化粧材5の厚さ、水性接着剤6の種類等に応じて適宜設定することができるが、例えば、80〜190℃、1〜5MPaの条件が考慮される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
9.5mm厚のユーカリ合板の基板と、2.7mm厚、比重0.8の木質繊維板としての針葉樹MDF(エヌ・アンド・イー株式会社製)を、反応性ホットメルト接着剤:PURで接着した複合板を作成した。
【0050】
木質繊維板は、撥水剤として、融点70℃のパラフィン系ワックスと、融点100℃のポリエチレン複合ワックスを添加したものであり、予め、木質繊維板単体で、木質繊維板の表面温度110℃、気圧0.14MPaの飽和水蒸気圧、2分間保持の減圧加湿加熱処理条件で処理したものを用いた。
【0051】
この複合板の木質繊維板の上に、水性酢酸ビニル樹脂系接着剤をロールコーターにて均一に塗布し、その上に表面化粧材として、0.2mm厚、含水率約90%のブナ材の湿式突板を重ねて加熱加圧処理を行い、木質化粧板を作成した。
【0052】
加熱加圧処理条件は、110℃、1MPa、1分とした。
(実施例2)
【0053】
木質繊維板として、減圧加湿加熱処理条件を、木質繊維板の表面温度85℃、気圧0.06MPaの飽和水蒸気圧、3分間保持の条件で処理した木質繊維板を用いた以外は、実施例1と同様の材料及び条件で木質化粧板を作成した。
【0054】
(比較例)
木質繊維板として、減圧加湿加熱処理を施さない木質繊維板を用いた以外は実施例1と同様の材料及び条件で木質化粧板を作成した。
【0055】
作成した木質化粧板について、反り(反り量)の判定及び、厚み方向寸法安定性(表面粗さRa)の判定を以下の判定基準により行い評価した。
【0056】
(反りの判定基準及び評価)
反り量の測定は、木質化粧板のサイズを幅30cm×長さ180cmとし、突板貼り前後での幅方向の反り量について凸反りを+、凹反りを−として測定した。
【0057】
反り量の測定結果から反り量の評価を行った。幅反りが目立たない−0.5mm〜+0.5mmを○とし、この範囲から外れたものを×とした。その結果を表1に示す。
【0058】
(厚み方向寸法安定性(表面粗さRa)の判定基準及び評価)
木質繊維板の表面粗さを測定し、厚み方向寸法安定性の評価を行った。評価は、減圧蒸気処理していない木質繊維板と同等で平滑性の高い5μm以下を◎、手で触ると処理していない木質繊維板との違いがやや判るが、表面化粧材を貼ると判り難い10μm以下を○、手で触って凹凸の違いが判る10μmを超える場合を×とした(評価の結果、10μmを超える×はなかった)。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
<評価結果>
減圧加湿加熱処理を施した木質繊維板を用いた実施例1、2は、減圧加湿加熱処理を施さない比較例に比べて反りを抑制することが確認された。
【0061】
これらの結果から、本発明の木質繊維板に対する減圧加湿加熱処理が、木質化粧板に対して反りを抑制する効果を有することが確認された。
【0062】
さらに、実施例1、2で作成した木質化粧板の表面をサンダー仕上げし、床用塗装仕上げを実施した結果、外観、平面剥離強度での不具合も確認することはできなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 木質繊維板
3 接着剤
4 複合板
5 表面化粧材
6 水性接着剤
7 木質化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に木質繊維板が接着され、その木質繊維板の表面に水性接着剤を介して表面化粧材が一体化された木質化粧板であって、木質繊維板が、減圧状態で加湿加熱処理されたものであることを特徴とする木質化粧板。
【請求項2】
木質繊維板を加湿加熱処理する際の木質繊維板の表面温度が、木質繊維板に配合される撥水剤の溶融温度未満であることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。
【請求項3】
基板の上に木質繊維板を接着して、その木質繊維板の表面に水性接着剤を介して表面化粧材を加熱加圧処理して一体化する木質化粧板の製造方法であって、木質繊維板が、減圧状態で加湿加熱処理したものであることを特徴とする木質化粧板の製造方法。
【請求項4】
木質繊維板を加湿加熱処理する際の木質繊維板の表面温度が、木質繊維板に配合する撥水剤の溶融温度未満であることを特徴とする請求項3に記載の木質化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6274(P2013−6274A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138342(P2011−138342)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】