説明

木質系バイオマス、または、炭化物を燃料とするバッチ式燃焼用ボイラと温風発生装置

【課題】薪、木質系燃料、あるいは、炭化物等の固形バイオマス燃料をバッチ式で長時間燃焼することができ、燃焼量の制御、休眠、および、再燃焼の制御が容易にでき、且つ、クリーンな排ガスが得られるボイラと、該ボイラを利用した熱効率の高い温風発生装置を提供する。
【解決手段】断熱性の高い炉内に乾燥した固形バイオマス燃料をバッチ式で投入し、一次燃焼で発生する高い濃度の排煙を縦型排煙反応塔ダクトに導入し、予備加熱した空気で軽量ガスを燃焼する二次燃焼、難燃性のガス類と煤塵をバーナで燃焼する三次燃焼、および、残留不完全燃焼分をハニカム型触媒で完全燃焼する四次燃焼による手段によってクリーンな排ガスを得る。排ガス中の一酸化炭素と煤塵と一次燃焼〜四次燃焼の燃焼条件を連動させて、炉の燃焼量と温風温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材、および、木質系バイオマス、あるいは、炭化物をバッチ式燃焼炉にて燃焼することが出来、必要に応じて燃焼量を制御でき、クリーンな温風と排気ガスを得ることが出来る暖房用ボイラ、および、当該ボイラを利用した温風発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材、ペレット、チップなど木質系バイオマス燃料や炭化物は、人類の歴史とともにふるくから有用な燃料源として利用されてきており、地球温暖化に関して、炭酸ガス対策上ゼロエミッション型燃料として注目される。木質系材料として、製材端材、木工端材、間伐材、集成端材、建築廃材、農業廃材、土木廃材等の存在が知られているが、これらを燃料として有効に利用することができれば、省エネルギー対策及び地球温暖化対策として大変有用である。
【0003】
現在、木質系燃料の使用方法として、薪ストーブ、ペレットボイラ、ペレット発電機等おおくの利用方法が知られている。バルクの薪を使う方法では、燃焼状態にあわせて薪燃料を絶え間なく供給することと、薪の積み上げ方や燃え方に応じて燃焼を管理するために常に人手が必要であるという不都合がある。規模の大きい薪蒸気機関や薪ストーブでは、燃料は大きくても5〜10cm程度に切断し機械的手段で連続的な供給がはかられる。また、排煙には不完全燃焼による煤や一酸化炭素等が排出されるので、環境汚染対策が難しいという欠点がある。
【0004】
チップやペレット燃料の利用では、燃料の定量供給が可能になるというメリットがあるが、これらの燃料のかさ密度が低く高密度の熱量が得られないという欠点がある。また、ペレット燃料では、チップ化したのち、加熱してペレットの成型に費やす生産エネルギーとコストが化石エネルギーと比較して無視することが出来ないという問題がある。また、燃焼に伴い、発煙と環境汚染の発生を伴うので、木質系燃料の使用を安易に広げることに問題がある。
【0005】
この改善策として、特許文献1では、暖炉型暖房機の燃焼筺体内の薪の支持板の下に第1バーナを設置し、更に後方に一対のバーナを設置するなど複雑な燃焼系が提案されているが、多数のバーナを用いるのは効果的な方法ではないという問題があるうえに、クリーンな排ガスが得られないという問題がある。特許文献2と特許文献3では、薪燃料を埋薪法という非常に緩慢な方法で燃焼し発煙を抑制する方法が提案されているが、燃焼初期には長時間の発煙が発生するのでこれを処理する必要がある上に、必要な発熱量を得るには大量の酸化触媒と巨大な炉が必要となり、工業的に有用な熱量を取り出すのは困難である。
【特許文献1】特開2006−183920号公報
【特許文献2】特開2004−245563号公報
【特許文献3】特開2003−343840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しょうとする問題点は、バルク状木材や木質系燃料を、連続供給方式で燃焼すると、燃焼条件を一定に制御して安定に燃焼することができ、規模の大きさに応じて必要な発熱量を得ることができるが、使用できる燃料は炉に連続供給できるように加工が必要であり、燃焼条件を安定にするために燃料の形状や質を一定になるよう加工しなければならないという問題がある。また、木質系ボイラでは、熱を有効に利用するための設備とクリーンな排ガスを得るための設備を兼ね備えるために、設備が膨大になる上に製造コストや運転コストが化石エネルギーのガスやオイルの利用に比べて高価になり、利用しにくいという問題がある。
【0007】
大容量のバルク状木材や木質系の燃料を一度に燃やすのではなく、バッチ式で長期にわたり燃焼させるには、投入燃料の一部のみを燃焼させながら最終的には全量を燃やすことが求められる。また、燃焼条件として実用上不可欠な、燃焼状態を自由に変えて必要な燃焼熱を取出したり、発熱を抑えて休眠状態にしたり、再稼動のためには再燃焼状態にする必要があるので、燃焼技術として最も難しい問題の一つになっている。
このような、炉の燃焼を自由に制御できて、効率よく温風を取り出し、排ガスをクリーンに保てるというバッチ式の炉やボイラ、または、有用な小型暖房装置は今までにしられていないという問題があった。このように、木質系固体燃料に必要以上の加工やコストを加えないで、バルクのままで理想的に燃焼できるボイラ技術や応用装置の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、大量の木材及び木質系バルク燃料、または、炭化物をバッチ式炉に投入し長期間燃焼させて、予熱した燃焼用空気量の制御により、燃焼量や休眠状態を制御し、必要により容易に再燃焼できる構造の燃焼炉を用いて、排煙は、高温の反応性ダクト内で二次ガス燃焼、三次補助バーナ燃焼、および、四次ハニカム触媒燃焼により、クリーンな排ガスとし、高い燃焼効率の暖房システムを利用できることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明になるボイラでは、木材及び木質系バルク燃料や炭化物をバッチ式で長期間燃焼することができ、安価な主燃料とわずかな補助用のオイル燃料を用いてクリーンな排ガスのボイラとして利用でき、温風や温水を発生するのに適した暖房装置が得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明になる木材及び木質系バルク燃料または炭化物等を長期間安定に燃焼できるボイラと、該ボイラを温風発生暖房装置として利用する方法について以下に説明する。
用いることのできる炉の形状やサイズに制限はなく、円柱形、角型いずれでも良いが、目的の期間にわたり燃焼させるに十分な燃料を投入できる大きさが必要である。必要な炉のサイズを求めるには、一度に投入できる燃料の全発熱量がよい目安になる。燃料の発熱量は樹木の種類により異なるが、クヌギ、ヒノキ、杉、カシ、ナラ、ラワン、ベイマツ、カラマツなどで、乾燥木材1kgが約0.45リットルの灯油燃料に相当する。したがって、1トンの乾燥木材は約450リットルの灯油燃料の代替エネルギーとして利用できることになる。
【0011】
炉室の周辺には、予熱回路を持った燃焼空気用の配管、空気吹き出し口11、炉室出口にある排煙用ダクト2、及び、焚き付け時に発生する炉室の煙を煙突に短絡する煙道を設置する。炉室の内部は、構造強度や燃料の取り扱の容易さから肉厚の金属で作られることが多いが、肉厚の金属の炉は、燃焼熱を拡散し局所的な昇温を妨げ、局部的な場所での自由な燃焼の妨げになる。該炉室内部は、断熱材で構成することにより、燃焼部位の昇温が容易になるとともに保温性が高いので、着火と燃焼温度の維持が容易になり、種火の維持も容易になるという特徴がある。このことは、大容量の燃料の燃焼を部分的に進め発熱量を制御する上で重要な因子の一つとなっている。
【0012】
大量の木材を炉内に設置するには、燃料を投入するために運び込みやすい大口径の扉が必要であり、炉内の燃料の設置にも工夫が必要である。炉室には、各木材を垂直に立てかけるのが良く、短い木材は上に継ぎ足す要領でよい。燃料は、炉容積の75〜85%を占めるまで投入する。しかし、燃料の準備状況によっては、より少ない燃料を用いることもできる。
丸材の場合、隙間が大きくなるので、できるだけ稠密構造をとるように並べる。しかし、角材の場合、燃焼時に空気や燃焼ガスが対流し易いよう、少し隙間をもたせてやるのが肝要である。例えば、15cm角の材木では、密着を避けて約1cmの隙間があれば十分である。また、燃料を積み上げた上部・中心部手前には火が付き易い焚き付け用に細い薪を、更にチップや枯れ枝などを積む。
必ずしも上に説明するように燃料を設置しなくても燃焼させることができるが、燃料の投入量が少ないと長期間、または、高い発熱量で炉を燃やし続けることができなくなるので、使用条件にあわせて燃料を準備するのがよい。
【0013】
燃料には、良く乾燥した木質燃料を用いることが望ましい。最も望ましいのは絶乾状態の木質燃料、または、炭などの炭化物であり、木質燃料では木の種類により15〜20wt%以下の水分まで乾燥したものがよい。水分の多い燃料は、乾燥し着火するまでに多くの熱を無駄に消費することになるうえに、不完全燃焼により多くの水分と煙を発生する。煙に含まれる水分は、水蒸気または水分の多い木酢液として排出することになるが、燃焼効率が大幅に落ちるうえに、着火と消火に関して燃焼の制御を難くするので、湿った燃料の使用を避けることが望ましい。
炉温をあげ燃料の乾燥を促進するため、煙突の排煙16の一部を循環用ダンパ17を開いて燃焼用フアンの吸気口から供給される外気と混合し、炉室に供給して、炉室の昇温と省エネルギーを促進するのがよい。排煙の循環量は、酸素量が少ないので50%以下がよく、より望ましくは30%以下が好んで用いられる。
【0014】
炉室に燃料および焚き付けの準備ができたならば点火作業に移る。薪燃料に点火するには、大量の空気が必要なので、前扉に設けた点火用小扉を明け、また、炉室から煙が煙突に直行できるように設けられている煙道扉を開き、燃焼空気フアン10を最大に回転して最大量の空気を炉室に導入し、炉内の空気の流れを活発にする。
次に、排煙ダクト中段にある補助バーナ4を点火し、ダクトの余熱を開始する。補助バーナの安定な動作を確認したならば、薪燃料の点火作業に移る。
更に、点火用小窓から、用意した焚き付けに応じて、マッチ、ライター、トーチバーナ等適切なものを使って焚き付けに点火する。点火後、十分に焚き付けが燃え出し、煙が煙突に抜けることや薪燃料に着火したのを確認した後、点火用小窓を閉め、煙道を閉じる。これにより、炉室の煙は排煙ダクトを経て煙突へ抜けることになる。炉室用の覗き窓から火が薪燃料に着火したのを確認しておくのがよい。この段階で煙突の排煙がクリーンでないならば排煙センサによりフアン10の速度は適切なレベルに制御される。
【0015】
本発明による燃焼方法で大量の木材をバッチ式で長期間燃焼させるにあたり、燃料の燃焼状態は時間とともに大きく変化する。焚き付け開始後の燃焼状態を、「初期燃焼状態」、「おき火燃焼状態」、「休眠状態」、および、「再燃焼状態」に分けることができる。
【0016】
初期燃焼状態では、燃料に着火して火炎が燃え上がるのは燃料の一部にすぎなく、その周辺では温度不足と酸素不足のため火炎は見られず煙を出して燻ぶり続けており、所謂不完全燃焼の状態が大部分を占めている。初期燃焼状態ではこのように不完全燃焼による煙の発生が多く、煙は高濃度になっている。この状態で、燃焼フアン10の回転数を上げ燃焼空気を増やすと、燃焼は一層加速されて煙の発生は一層増加する。他方、燃焼空気を減らすと、酸素不足のため発煙が減り、火は消える方向に進み火力は落ちる。
【0017】
煙には燃焼し易い軽量ガス類の、水素、メタン、エタン類、および、一酸化炭素等の他に、空気より重いフエノール類、ピッチ類、煤、煤塵等が多量に含まれている。フエノール類、ピッチ類、煤、煤塵等は、着火しにくい上に、熱分解するのが容易でない難燃成分である。本発明では、この様な排煙を完全に燃焼させ、熱分解を促進させてクリーンな排煙を得るための燃焼システムと、経済性に優れたボイラを提供するものである。
【0018】
排煙を浄化し、クリーンにするため、長い縦型の排煙ダクトを設け、排煙処理用の高温反応塔を考案した。その方法の第一は、炉室内の一次燃焼による排煙は、初めに、排煙ダクト2の最下部の煙道入り口に設置された二次燃焼部にはいり、燃焼効率を上げるために、高温空気によって二次燃焼をおこなう。フアン1から炉内に導入される空気は、炉室の燃焼炎や煙によって加熱された予熱用配管内を通過し、高温になって二次燃焼用空気となって排煙ダクトの最下部でノズル13から吹き出し、着火しやすい軽量ガス類を中心に二次燃焼を起こさせ、「ガス燃焼部」を形成する。軽量ガスが燃えることにより、ガス燃焼部のダクト温度が高温になるとともに、難燃成分のフエノール類、ピッチ類、煤、煤塵等が加熱されて次の三次燃焼部へ移行する。
【0019】
二次燃焼部で燃え残った難燃成分のフエノール類、ピッチ類、煤、煤塵等は、補助オイルバーナの高温燃焼ボックス部14に入り、酸素過剰気味のオイルバーナ炎〜900℃の火炎のもとで、より強い燃焼条件下で強力に酸化される。この過程は三次燃焼と呼び、難燃性のフエノール類、ピッチ類、未分解の煤類、煤塵などを酸化分解する。この燃焼過程は二次燃焼過程と密接に関連して、効果的な熱分解を進めるものである。
三次燃焼用のバーナには、ガスバーナ、灯油バーナ、リサイクルオイルバーナ、重油バーナ等いずれのバーナも使用することができるが、小型で使いよく、安定動作に優れた燃料費の低いものが好んで用いられる。
【0020】
三次燃焼を経ると大部分の排煙の酸化分解が進むが、火炎による反応場では化学反応が必ずしも均一に起こるわけではなく、一部の未反応部分や未分解部分が残り易い。従って、三次燃焼による未燃焼分は、四次燃焼過程で更に緻密で厳密な熱処理を行う必要がある。この目的のために、排煙を、高温になったセラミックス製ハニカム酸化触媒の微細な反応セルを通過させることにより、均一に燃焼し、熱分解して、微量の難燃成分も完全に燃焼できるように、反応温度、反応場、および、触媒の性能を工夫した。
二次燃焼から四次燃焼を経た高温の排ガスは、フインチュウブ熱交換器に入り外気を加熱して急激に温度が下がり200℃以下になって煙突から排出される。この排ガスを急冷する機構により、燃料にフェノール類とハロゲン類が混入しているとき発生しやすいダイオキシン類を安全に熱分解することができる。
【0021】
油煙、有機溶剤、一酸化炭素、臭気等を浄化するには触媒の利用が知られているが、木質系の排煙は、炭化水素類、フエノール類、ピッチ類、油煙、カーボン、塵埃等を大量に含んでおり、これらを浄化処理するのは、ジーゼルエンジンの排ガス処理以上に困難な課題が多い。しかし、以下に説明するように、耐熱性のハニカム触媒を用いることにより、均一な高温の反応場を確保できたことと、700℃〜800℃の高温と酸化雰囲気下で高濃度の油煙、煤、塵埃類を浄化することができた。このこうな耐熱性ハニカム触媒にはジーゼルエンジン用として圧損の低いSiC製のハニカムフイルターが知られているが、当該目的に有用な触媒の一つとして酸化金属製の触媒ハニカムが経済的にも有用である。例として、長峰製作所製NAハニカムをあげることができる。
【0022】
一次燃焼〜四次燃焼過程を経た排煙濃度の高い初期燃焼過程の排煙で、一酸化炭素は10ppm以下に、煤塵濃度は0.1g/Nm3以下に抑制することができた。大気汚染防止法による環境基準の一酸化炭素は10ppm以下とされ、重油ボイラ等(当該ボイラに比べ排ガスがはるかに多い40,000Nm/hクラス)の煤塵排出基準は0.30g/Nm(一般地域)である。このように、本発明になるバイオマスボイラでは、環境基準として求められる指定数値以下のクリーンな排ガスが得られるようになった。
【0023】
炉への燃焼空気の供給量が限界を超えると、煙は高濃度になり、排煙ダクトを通過後も完全な燃焼状態が得られず、一酸化炭素、ピッチ類、煤煙等を煙突から排出する原因となる。この場合、炉は燃焼能力を超えており、当該ダクトの排煙浄化限界を超えているので、燃焼空気の供給量を抑制する必要がある。
【0024】
煙突の排煙を光センサでモニタし煤煙量や一酸化炭素の量が基準値を超える過燃焼状態になると、燃焼は炉能力の上限に達したとして、最大燃焼量として律則される。この場合、吸入フアンの速度は許容最大値に達しているので、速度を下げて燃焼空気を減らすとともに燃焼量を下げることによりクリーンな排煙条件を満たすことができる。また、温風の温度と設定温度との差を基準にして、燃焼量、つまり、燃焼フアンの速度を制御する。燃焼フアンの許容最大速度が昇温速度の限界とすることにより、安定な燃焼条件とクリーンな排ガスを得るために必要な制御系を完成することができる。
【0025】
煙の多い初期燃焼状態が24〜36時間継続すると、炉はおき火燃焼状態に移行する。この状態では、大部分の薪燃料の表面が炭化しており、空気が当たると容易に赤化して燃焼する状態になっていて、炭火燃焼と薪燃焼の混合状態になり、後になるほど炭火燃焼の割合が増え、油煙や煤煙等の発生は少なくなる。このため、おき火燃焼では一酸化炭素成分が増えるが煤塵量は少なく排煙のクリーン化は容易になる。二次燃焼ガスは減少しガス燃焼部の温度は低くなり、排煙もクリーンになるため三次燃焼用の補助バーナの使用は間歇的になり使用時間は半減するが、四次燃焼のハニカム触媒の温度が約700℃以上になることが望ましい。このように、おき火燃焼状態では、上に示した排煙処理に関する二次燃焼、三次燃焼、及び、四次燃焼を経ることにより、クリーンな排気ガスを容易に維持することができる。
【0026】
炉の燃焼量を低くして、外気に比べて温風の温度差を数℃上げる程度になると、燃焼用空気の吹き込み量は僅かになる。この場合、補助バーナは休止し、ガス燃焼部における二次燃焼と触媒による四次燃焼により排ガスはクリーンに保たれていることが多い。
【0027】
次に、炉の熱出力を最小にする休眠状態について説明する。本発明になるボイラの利用にあたり、熱出力の制御の可否が重要な要素の一つになっている。電気、ガス燃料、石油燃料等は、必要なときに点火と消火を繰り返すことができるが、バッチ式固体燃料を使用するボイラでは、燃焼と消火を短時間に繰り返すことはできない。したがって、炉の燃焼状態を休眠させたり再燃焼させたりする機能が大変重要な機能になる。
【0028】
初期燃焼状態とおき火燃焼状態のいずれにおいても炉室内は正圧になっていて、燃焼空気フアンを停止すると排煙がファンを逆流する。この逆流に打ち勝つようにフアンの回転速度を調整し、十分時間が経過すると、例えば30〜60分後、フアンは最低の速度または停止状態に近づく。また、フアン10の動作を最低速度に保つことにより、炉は休眠状態に入り、後に燃焼空気を炉内に供給するまで休眠状態を維持できる。この様に、炉の休眠状態の間わずかな吸気を続けることにより火種は保存されており、必要になって燃焼空気を供給すると、容易に再燃焼をはかることができる。しかし、休眠時間が何日にもわたり長くなると火種は維持されるが小さくなるので、再燃焼時に燃え上がるまで時間がかかる傾向がある。短期に再燃焼の効果をあげたい時、燃焼し易い焚き付けを追加投入することにより急速に再燃させることが出来る。
【0029】
温風の発生と取り出し方法は、重要である。温風フアン8で炉の天井開口部20から外気を吸入し、炉室の周囲201とダクトの周囲202で加温できる2つの流路を設ける。一般に炉室部の表面温度とダクト部の表面温度や熱交換量は異なるので、熱量のバランスを図るため外気の分流量は炉室の後方上部に設置したダンパ18により調節する。
【0030】
炉室天井部で加温された外気は、更に炉側面のフインチュウブ熱交換器を経て加温され炉室側面の下部に達し100℃以下の熱風201となる。熱風201は、炉体正面のルーバ22から取り入れたミキシング用外気22と混合して、適切な温度の温風220となる。他方、炉室天井部で加温された外気20は、排気ダクト部を経て熱風202となり、ダクト側面のダンパ211から吸入される外気21と混合され、適切な温度の温風210となり、温風フアン8により炉外へ供給される。
【0031】
温風フアン8を停止すると、炉には蓄熱作用が働き、炉室の表面温度やダクトの表面温度が異常に上昇する。このような蓄熱による異常温度上昇の発生を防ぐには温風フアン8を常に動かしておくことにより、異常昇温を防ぐことができる。つまり、温風フアン8には、温風を発生するときの燃焼時の通常運転モードと、風量の少ない非燃焼時のアイドリング運転モードをもたせ、アイドリングモードでは発生する温風を炉外へ排出して炉内の蓄熱を防止することにより、容易に安定な炉温と温風を維持できることがわかった。
【0032】
二次燃焼に灯油バーナを利用した場合のエネルギー配分について説明する。炉の燃料投入量を1バッチ当たり1,000kgにたいして、1バッチ当たり10日燃焼させる場合、日量40万kcalの発熱量になる。この熱量は灯油換算で日量45Lに相当する。補助バーナのオイル消費量は、1日に平均12時間炉を運転するとし、小型の灯油バーナ(1.5リットル/時)を用いて、点火時間は平均50%で間歇的に灯油を焚くので、灯油を日量約1.5L/h x 12h x 0.5 = 9L使用することになる。したがって、小型炉(1,000kg/バッチ)が発生する全熱量にたいし、薪燃料は45/(45+9)=83%の熱量を代替できることになる。また、中型炉(2,000kg/バッチ)の場合、蒔により発生する全熱量は灯油換算で日量90L相当であり、同じ小型バーナを利用できるので、91%が薪燃料で代替される。このように、本発明の固体バイオマスボイラはエネルギー分野における代替効果が大きい。
【0033】
炉の燃焼期間は、燃料の消費量に依存する。暖房温度や加熱するハウスのサイズによるので、灯油相当量の発熱エネルギーで判断するのがよい。薪燃料500〜800kgを1日10時間燃焼して、発熱量によりバッチあたり7日、10日、20日と自由に運転することができた。
当該ボイラや温風発生器を利用すると、木酢液と木灰が炉低に集まる。木酢液の量は樹種や乾燥状態によるが、よく乾燥した建築材料1トン当たり約10リットル程度が得られた。また、炉を1バッチ分燃焼すると、木灰が炉底の灰取皿に燃料の1〜2wt%たまる。木酢液はビニールハウス内や耕作地の消毒に利用され、木灰は、肥料として利用される。
【0034】
本発明になるバイオマスボイラと温風発生機は、グリーンハウス、ビニールハウス、畜舎等の農業用、乾燥設備などの工業用、病院、老人ハウス、学校、保育所等の公共施設、寒冷地では家屋、作業所、融雪用等の暖房用として、柔軟に使用されることがみこまれる。
【0035】
測定方法
燃焼排ガス成分の測定には光明理化学工業(株)の燃焼管理テスタSEM−103を用いて、ガス温度〔0〜1200℃〕、酸素(0.0〜22.0%)、一酸化炭素(0〜2000ppm)、一酸化窒素(0〜2000ppm)を測定した。また、煤塵濃度はスモークテスタ(KANE MSP)を用いJIS Z 8808法による煤塵量をバッカラッカ指数から求めた。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、以下に説明する内容は、あくまで一つの例であり、本発明が、以下に述べる内容によって、何ら限定されるものではない。
【0037】
図1は本発明になる木材または木質系バイオマスあるいは炭化物燃料の燃焼用のボイラと温風発生機能を備えた温風暖房装置の概念図である。
【0038】
炉室1は1.1m3の容積をもっており、建材用木材である5寸角、5寸x10寸角の乾燥した建築端材を燃料として約700kgを投入した。同じ材料を焚き付け用に太さ3〜5cm程度に割った薪を約2kg中央上部に置き、更に、小枝と古新聞数枚をこれらの薪の間に置き、正面の炉室扉を閉じた。
【0039】
先ず、吸入フアン10を最大速度に設定して最大量の燃焼空気を炉室に導入し、炉室と煙突をつなぐ短絡路となる煙道を開き、炉内の空気の流れを活発にした。次に、補助バーナを点火し、ダクトの余熱を開始する。バーナの安定な動作を確認したのち、炉室扉の点火用小窓を開き、カセットガストーチバーナにて焚き付けに点火した。炉内に火が広がり、薪に着火するのを待ちながら、排煙ダクト中段にある補助バーナ4を点火し、バーナボックスの上段に設けた触媒7やダクトの予熱をすすめ、薪への着火を確認した後、着火用小窓を閉じて煙道を閉じた。
【0040】
燃焼空気フアンからの燃焼空気11は炉内の薪燃料の燃焼を促進するが、着火初期の初期燃焼状態では炉本体の温度、ひいては、薪の温度や薪の乾燥状態が十分に進行していないので、燃焼が安定するまで10〜15分程度そのままで燃焼状態を維持してやる必要がある。排煙の強さが維持されているならば着火は順調に進んでいる目安になる。この時期、煙突から出る煙は目視出来るほど濃いのが普通なので、直ちに燃焼空気フアンの速度を定常値(〜50%能力)に下げ、ガス燃焼部13の二次燃焼温度が600〜850℃、触媒燃焼部15の四次燃焼温度が700〜850℃になるように燃焼空気フアンの速度を下げた。この操作により、煙突の排煙16は目視できない程度に透明になった。この間、着火から20〜30分経過していた。
【0041】
排気ダクトで高温燃焼した排煙は、水平接続ダクト15を経てフインチューブ熱交換器5に達し、この中で急速に冷却されて煙突6へ排出する。煙突への排出温度は100℃〜150℃であった。排煙温度がこのように低いのは、燃焼熱が効率よく外気の加熱に使われており、燃焼熱が高効率で温風に変換されていることを示している。
【0042】
燃焼ガスモニターにて煙突からの排ガスの温度と排ガス成分を、クリーンな排ガスを得るうえで最も厳しい着火後から4時間後の初期燃焼状態における測定値を以下に示す。
二次燃焼温度:834℃、 四次燃焼温度:792℃、 外気:25℃、 温風:40℃、
煙突排気:104℃、
酸素:20.4%、 CO:0ppm、 NO:0ppm、 煤塵:<0.06g/Nm3
【0043】
温風用フアン8(最大定格3000m/h)を駆動すると、約20℃の外気は炉室天井部中央の吸入孔20より流入して炉室天井表面201で加温され、一部はフインチュウブ5にて更に加温され約70℃の熱風となり、また一部はダクト部表面で加温されて熱風となった。それぞれの熱風は途中で外気21&22と混合して約40℃の温風25として炉外に供給された。熱風の温度は吸入孔のダンパ20と炉の燃焼量で決まり、温風の温度は熱風と外気との混合量で決まる。混合ダンパ22&211の開閉量は自動および手動で調節できる構造を用いた。
【0044】
比較例1
二次燃焼効果を調べるため、二次燃焼用ガス燃焼バーナへの予備加熱燃焼空気を停止して運転を続けた。その結果、排ガスの一酸化炭素は5ppmに、煤塵量は0.1g/Nm3に増加した。
【0045】
比較例2
三次燃焼部の補助バーナの効果を調べるため、補助バーナの点火を中止し、燃焼運転を続けた。その結果、30分後には三次燃焼部のバーナボックス部と触媒部の温度が低下し、触媒の目詰まりが進行し、ダクト機能が損なわれた。
【0046】
比較例3
四次燃焼部の効果を調べるため、四次燃焼用の触媒7を取り除き、燃焼運転を行った。その結果、排ガスの一酸化炭素は10ppm、煤塵は0.1g/Nm3と増加した。
【0047】
四次燃焼部の触媒から出た排ガスの温度は700℃以上であるが、フインチュウブ熱交換器を出ると、排ガスの温度は200℃以下になり、フインチュウブ内で急速に冷却されることがわかった。
【0048】
このように、炉内における一次燃焼12、反応性ダクト最下部における二次燃焼13、補助バーナによる三次燃焼14、および、ハニカム触媒による四次燃焼15を経ることにより、固形バイオマスの燃焼排気をクリーンな排ガスにできるシステムが得られた。おき火燃焼状態になると、排ガスの煙濃度は大幅に減少し、補助バーナの点火時間は、大幅に短縮され、バッチ平均で、約50%であった。
フエノール類等ハロゲンイオンが共存するとダイオキシン生成の危険があるとされるが、この場合にも十分な高温分解を経た排ガスが、フインチュウブの熱交換器を経て安全でクリーンな排ガスが得られるシステムが構築された。
【0049】
本発明になるボイラと温風発生器は、安価な木質系固形燃料、特に、製材所端材、木工所端材、集成材端材、廃建材、間伐材等を、バッチ式で安全に燃焼することができるうえに、廃材の環境問題の解決に貢献し、温暖化ガスの自然循環可能な環境に優しい暖房装置としての利用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、石油系化石燃料に代わって、安価な木質系固形燃料をバッチ式で燃焼することができるボイラとして、農業用ビニールハウス、花卉栽培用グリーンハウス、公衆浴場、病院、老人ホーム、学校、集会所、家畜飼育場、畜舎、乾燥場、融雪用等に広く利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の薪、木質系燃料、あるいは、炭化物等の木質系固形バイオマス燃料を燃やしてクリーンな排ガスが得られる、バッチ式燃焼ボイラを組み合わせた温風発生装置の構造概念図
【符号の説明】
【0052】
1 炉室
2 ダクト
3 バーナボックス
4 バーナ
5 フインチューブ熱交換器
6 煙突
7 ハニカム触媒
8 温風フアン
10 燃焼空気用フアン
11 炉内燃焼空気
12 炉内燃焼排ガス
13 二次燃焼用ノズルと二次燃焼部
14 三次燃焼部
15 四次燃焼後排煙
16 排煙
17 排煙循環部
20 外気導入部1
21 外気導入部2
22 外気導入部3
201 炉室表面部エアーカーティンの流れ
220 炉室表面部熱風
202 ダクト表面部エアーカーティンの流れ
210 ダクト表面部熱風
25 温風供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系燃料、あるいは、炭化物をバッチ式で燃焼する炉であり、該燃焼炉では、高度の不完全燃焼を示す初期燃焼状態と燃料の炭化が進み軽度の不完全燃焼を示すおき火燃焼状態にかかわらず、予熱した燃焼空気の供給量を制御することにより燃焼と発熱量の制御をおこない、最小の燃焼時には休眠状態におくことができ且つ再燃用の火種を維持することが出来る事を特徴とする、バイオマス暖房用ボイラとその構造。
【請求項2】
該暖房用ボイラでは、一次燃焼室は断熱性の高い炉壁で構成され、排煙口には一次燃焼で発生する高い濃度の排煙を処理する縦型の反応ダクトが接続され、該ダクトの入り口部には二次燃焼用に余熱空気で燃やす軽量ガス燃焼用バーナを設置し、ダクト中段には三次燃焼用として難燃性のガス類と煤塵を燃やす補助バーナと燃焼ボックス部を設置し、更に、ダクト最上段に四次燃焼用としてハニカム型酸化触媒による燃焼部が設置されることを特徴とする、排煙浄化構造。
【請求項3】
該反応ダクトの熱容量は低く、容易に800℃以上に昇温できる保温構造を持ち、該反応ダクトを通過した高温の排ガスは、外気を加熱する熱交換器を経て200℃以下に急激に冷却され、一酸化炭素や煤塵の少ないクリーンな排ガスとなって煙突から放出されることを特徴とする、バイオマス暖房用ボイラ。
【請求項4】
温度の低い外気は、炉体天井部の吸引口から供給され、炉室表面、ダクト表面、および、熱交換で加熱されたのち、外気と混合されて、適切な温度の温風を供給できることを特徴とする、温風発生機構。
【請求項5】
温風供給フアンは、温風を発生するときの通常運転モードと少なくとも風量の少ないアイドリング運転モードを持ち、アイドリングモードでは発生する温風を炉外へ排出して炉内の蓄熱を防止し、炉温を安定に維持できることを特徴とする、温風供給方法。
【請求項6】
該ボイラの煙突中の排ガスは、光センサにて一酸化炭素ガスと煤塵成分がモニタされ、該センサ出力により、吸入ファンによる燃焼空気量の制御と補助バーナによる三次燃焼を制御できることを特徴とする、燃焼と排煙制御機構。
【請求項7】
該煙突の排ガスの一部は、燃焼用フアンの吸気口から供給される外気と混合されて、炉室に供給され、炉室の昇温と省エネルギーに寄与できることを特徴とする、燃焼機構。

【図1】
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【公開番号】特開2009−68817(P2009−68817A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240877(P2007−240877)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(300090411)
【出願人】(504111657)大悟工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】