説明

木質系床材とその製造方法

【課題】床暖房用のフロアとして用いても、隣接する木質系床材同士のジョイント部に大きな隙間が生じない木質系床材を得る。
【解決手段】木質系基材1の表面側に木質繊維板3が貼着され、該木質繊維板3の上に表面化粧材5が貼着されている木質系床材10において、木質繊維板3に木質繊維板3を貫通して木質系基材1の表面に達する多数のスリット4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系床材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系基材の表面に、突き板、化粧合成樹脂シート、化粧紙等のような表面化粧材を貼着した木質系床材は知られている。木質系基材には、ラワン系合板基材や、芯層部の単板を針葉樹単板、表裏層の単板を広葉樹単板とする練り合わせ基材等が用いられている。このような木質系床材において、合板系の基材の比重が0.4〜0.6のように小さいことから、フロア施工時あるいはフロア使用時にフロア表面に物を落下させると、木質系床材の表面に凹みが生じることがあった。また、キャスター付きの椅子やキャビネット等を移動させると、やはり凹みが生じることがあった。
【0003】
それを改善するために、木質系基材と表面化粧材との間に、比較的高比重(0.6〜1.2程度)である木質繊維板を貼着するようにした木質系床材が知られている。それにより、耐キャスター性や耐凹み性は改善される。しかし、基材である合板に比べてMDF等の木質繊維板は水分変化に対する寸法安定性が悪く、乾燥すると合板系基材と比較して大きな収縮が起こる。それにより、木質系床材に反りが生じることがある。
【0004】
そのために、この形態の木質系床材を暖房用のフロア材として用いるような場合に、隣接する木質系床材同士のジョイント部に、美感上無視できない隙間が生じることがある。その不都合を解消する木質系床材として、特許文献1には、木質系基材と表面化粧材との間に積層する厚さ2〜3mm程度の中質繊維板の裏面側に、中質繊維板の厚さの40〜50%程度の多数の溝を形成するようにした木質系床材が記載されている。また、特許文献2には、木質系基材と表面化粧材との間に積層する木質繊維板として、厚さが1.2mm程度のMDFの表面に、表面の繊維層を切断する深さ0.3mm程度の多数の切り込みが板材の長手方向と直交する様に形成されたMDFを用いることが記載されている。
【0005】
木質繊維板にこのような溝あるいは切り溝を形成することにより、木質繊維板の寸法変化に起因する伸縮や反りが木質系床材に生じるのを抑制することができ、木質系床材を暖房用のフロア材として用いる場合でも、隣接する木質系床材同士のジョイント部に、大きな隙間が生じるのを回避できることが期待される。
【0006】
【特許文献1】特開平10−337713号公報
【特許文献2】特開平11−227105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、木質系基材と表面化粧材との間に木質繊維板を積層する形態の木質系床材の製造にたずさわってきているが、その過程において、積層する木質繊維板の厚さが厚くなると、厚さの途中まで切り溝を形成した木質繊維板を用いた場合でも、隣接する木質系床材同士のジョイント部に無視できない程度の大きさの隙間が生じることを経験した。このことは、木質系床材を床暖房用のフロア材として用いる場合に、特に顕著であった。さらに、製造過程において、積層したあるいは積層される木質繊維板の厚さ方向の途中までに切り溝を形成するのに、慎重な作業が求められた。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、木質系基材と表面化粧材との間に木質繊維板を積層する形態の木質系床材において、製造も比較的容易であり、かつ、木質繊維板の厚さの大小にかかわらず、木質繊維板の寸法変化に起因して木質系床材に反りが生じるのを確実に抑制することができ、結果として、床暖房用のフロア材として用いる場合であっても、隣接する木質系床材同士のジョイント部に大きな隙間が生じるのを阻止できる木質系床材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による木質系床材は、木質系基材の表面側に木質繊維板が貼着され、該木質繊維板の上に表面化粧材が貼着されている木質系床材であって、木質繊維板には木質系基材の表面に達する多数のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記の木質系床材では、木質系基材と表面化粧材との間に位置する木質繊維板は、木質系基材の表面に達する(すなわち全厚さ方向に貫通する)多数のスリットにより、多数の独立した木質繊維片として分断されている。そのために、乾燥等によって生じる各木質繊維片の寸法変化量は小さく、またそれぞれが独立した挙動をとるので、形成したスリット間の隙間がわずかに広くなることがあっても、木質繊維板全体の挙動が木質系基材側に与える影響は小さい。結果として、木質繊維板の厚さが厚いものであっても、木質系床材に反りを生じさせることはなく、床暖房用のフロア材として用いる場合でも、隣接する木質系床材同士のジョイント部に大きな隙間を生じさせることはない。
【0011】
木質系床材を製造するに当たっては、従来法により、木質系基材の表面側に木質繊維板が貼着されたものを用意する。そして、木質繊維板側から、レーザー加工、ウォータージェット加工、超音波カッター、エンドミル(ルーター)、のこ(丸のこ等)、ナイフ刃、トムソン刃、等の従来知られている加工手段により、木質系基材の表面に達する多数のスリットを形成する。この場合、スリットの加工溝が木質系基材の表面から多少内側にまで達していても差し支えない。そのために、スリットの形成作業はきわめて容易となる。他の加工方法として、作業工程数は多くなるが、木質繊維板を小さく裁断した木質繊維片を別途用意して、それを木質系基材の上に貼着するようにしてもよい。
【0012】
そのようにして製造した積層体における木質繊維板の上に、従来知られた任意の表面化粧材を貼着することにより、本発明による木質系床材となる。必要に応じて、裏面には、樹脂シートや薄葉紙等の裏打ち材が貼着される。
【0013】
本発明による木質系床材において、木質系基材には、従来の木質系床材における木質系基材をそのまま用いることができ、例えば、広葉樹や針葉樹からなる通常の合板、芯層部の単板を針葉樹単板とし、表裏層の単板を広葉樹単板とする練り合わせ合板基材等を用いることができる。さらに、OSB、PB等の木質ボード練り合わせ材を木質系基材として用いることもできる。表面化粧材も従来知られた表面化粧材であってよく、例えば、ナラ材、カバ材、ブナ材、チーク材等からなる、好ましくは厚さ0.2〜1.0mm程度の突き板、化粧合成樹脂シート、金属シート、化粧木目印刷された薄葉紙のような化粧紙、等が挙げられる。
【0014】
本発明による木質系床材において、木質繊維板としては、MDF、硬質繊維板等が挙げられる。好ましくは、厚さ0.3〜6.0mm程度、密度0.6〜1.2g/cm程度のMDFまたは硬質繊維板である。木質繊維板に形成するスリットの幅は、0mmより大きく0.3mm以下であることが好ましい。スリットの幅が0.3mmを超えると、表面化粧材を通してスリットの隙間がはっきりと目に見えるようになり好ましくない。スリットの断面形状も任意であり、スリットを加工する加工機側にそのまま依存して差し支えない。具体的には、U型、V型、I型等が挙げられる。
【0015】
木質繊維板に形成するスリットの間隔や方向等に特に制限はなく、加工のしやすさ等を考慮して適宜設定される。例えば、木質系基材の長手方向に平行に所定の間隔で複数本のスリットを形成するようにしてもよく、木質系基材の短手方向に平行に所定の間隔で複数本のスリットを形成するようにしてもよい。長手方向および短手方向の双方に平行なスリットを形成してもよい。長手方向には木質系基材の全長にわたってスリットを形成し、短手方向には、長手方向のスリット間に互い違いとなるように形成するような形態であってもよい。
【0016】
本発明による木質系床材において、木質系基材の裏面側にも木質繊維板を貼着し、かつ必要な場合には、その木質繊維板にも木質系基材の裏面に達する多数のスリットを形成するようにしてもよい。裏面側の木質繊維板に形成するスリットは、表面側の木質繊維板に形成したスリットとその寸法および形成位置において同じものであってもよく、異なっていてもよい。スリット幅は3.0mm程度の大きさであっても差し支えない。必要な場合には、裏面側の木質繊維板には適宜の裏打ち材がさらに貼着される。
【0017】
本発明による木質系床材において、表面化粧材にもスリットが形成されていてもよい。この場合、少なくとも前記表面化粧材に形成されたスリットに対向する位置において木質繊維板にスリットが形成されている形状であることは、製造の容易性の観点から特に好ましい。
【0018】
上記したいずれの形態の木質系床材においても、木質系基材の少なくとも表面側には、そこに貼着した木質繊維板に形成されたスリットの全部または一部に対向する位置に所定深さの切り込みが形成されるようにしてもよい。木質繊維板にスリットを形成するときに、その切り込み深さを調整することにより、容易に木質系基材の表面側に前記切り込みを形成することができる。木質系基材の裏面側にも木質繊維板を貼着する場合には、木質系基材の裏面側における、前記貼着した木質繊維板に形成したスリットの全部または一部に対向する位置にも、所定深さの切り込みを形成するようにしてもよい。
【0019】
本発明者らの実験では、木質系基材にも上記の切り込みを形成することにより、木質繊維板の寸法変化に起因する木質系床材の反りをさらに抑制することができ、当該床材を床暖房用のフロア材として用いた場合に、隣接する木質系床材同士のジョイント部に生じる隙間をさらに小さくすることができた。
【0020】
本発明は、さらに、少なくとも前記表面化粧材に形成されたスリットに対向する位置において木質繊維板にスリットが形成されている形状である木質系床材の製造方法として、木質系基材の表面側に木質繊維板を貼着する工程、貼着した木質繊維板の上に表面化粧材を貼着する工程、および、貼着した表面化粧材および木質繊維板の双方を貫通するようにして少なくとも木質系基材表面に達するスリットを形成する工程、とを少なくとも有する木質系床材の製造方法をも開示する。
【0021】
上記の製造方法によれば、木質系基材と木質繊維板と表面化粧材とを貼着積層したものを作り、それに対して、表面化粧材側から、前記したように、レーザー加工、ウォータージェット加工、超音波カッター、エンドミル(ルーター)、のこ(丸のこ等)、ナイフ刃、トムソン刃、等の従来知られている加工手段によりスリット加工することによって、本発明による木質系床材を製造することができるので、製造工程はきわめて簡素化される。この製造方法においても、木質繊維板にスリットを形成するときの切り込み深さを調整することにより、前記した木質系基材表面側の切り込みを容易に形成することができる。
【0022】
表面化粧材側からスリット加工するときにも、そのスリットの幅は、0mmより大きく0.3mm以下であることが好ましい。スリットの幅が0.3mmを超えると、表面化粧材内でスリットの隙間が目立つようになり好ましくない。表面化粧材が、疑似溝を有している場合には、該疑似溝に沿ってスリットを形成することは、スリットを目立たなくなることから、好ましい。また、複数のラミナを雁行状または一律に配置して形成した板基材の複数枚を積層接着して得られたフリッチを0.2〜1.0mm程度にスライスして得られる、いわゆるスライス単板を表面化粧材として用いる場合には、ラミナ相互間に生じる境界線に沿ってスリットを形成することは、同様な理由から、好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、木質繊維板を木質系基材と表面化粧材との間に介装することにより耐キャスター性および耐凹み性を改善した木質系床材において、木質繊維板の収縮により木質系床材に反りが生じるのを抑制することができる。それにより、本発明による木質系床材を床暖房用のフロア材として用いた場合でも、隣接する木質系床材同士のジョイント部に、美感上無視できない大きさの隙間が生じるのを確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1および図2は本発明による木質系床材の一形態を示し、図3は本発明による木質系床材の他の形態を示し、図4および図5は本発明による木質系床材のさらに他の形態を示す図である。図6および図7は本発明による木質系床材のさらに他の形態を示す図であり、この形態では木質系基材にも切り込みが形成されている。
【0025】
図1において、1は例えばラワン合板である木質系基材であり、裏面側には紙や不織布のような裏打ち材2が貼着されている。木質系基材1の表面側には、木質繊維板として厚さ0.3〜6.0mm程度のMDF3が、例えば酢酸ビニル系接着剤で貼着されている。MDF3には、スリット幅が好ましくは0.3mm程度以下であるスリット4が、MDF3の表面から木質系基材1の表面に達するようにして多数形成されている。
【0026】
この例では、木質系基材1の表面側にMDF3を貼着した後、レーザー加工機等により、木質系基材1の長辺に平行に50mm程度の間隔で縦方向に複数本のスリット4aが、また木質系基材1の短辺に平行に100mm程度の間隔で横方向に複数本のスリット4bが形成されており、MDF3は多数のMDF小片3aに分割されている。
【0027】
スリット4a,4bが形成されたMDF3の表面に、やはり酢酸ビニル系接着剤のような接着剤を用いて表面化粧材5を貼着する。それにより、図2に示すように、本発明による木質系床材10が形成される。図示の例では、表面化粧材5は、突き板の表面に疑似溝6を加工したものを用いているが、これに限らない。
【0028】
図3に示す木質系床材10Aは、木質基材1の裏面側にもMDF3を貼着している点で、図1および図2に示した木質系床材10と相違する。裏面側のMDF3にも、表面側のMDF3に対すると同様にして、その裏面から木質系基材1の裏面に達する多数のスリット4a、4bが形成されている。また、裏面側のMDF3の裏面側には、裏打ち材2が貼着されている。図示の例において、裏面側のMDF3に対するスリット4a,4bの形成位置は、表面側のMDF3に形成したスリット4a,4bに対応した位置となっているが、対応していなくてもよい。裏面側のMDF3に形成するスリット4a,4bは、フロア材として敷設したときに目にふれるものでないので、スリット4a,4b溝幅は3.0mm程度と幅広のものであってもよい。
【0029】
図4および図5に示す木質系床材10Bは、MDF3にスリット4を形成する手順が図1に示した木質系床材10と相違している。木質系床材10Bにおいては、図4に示すように、木質系基材1の裏面側に裏打ち材2を表面側にMDF3を接着剤で貼着し(ここまでの手順は図1に示す木質系床材10と同じである)、さらにその上に、表面化粧材5を貼着する。その状態のものが図4bに示される。
【0030】
次ぎに、貼着した表面化粧材5の表面側から、例えばレーサー加工等により、表面化粧材5よび木質繊維板3の双方を貫通するようにして木質系基材1の表面に達するスリット4を形成する。それにより、図5に示す木質系床材10Bが製造される。なお、スリット加工機は、図1に示した木質系床材10で使用したものをそのまま用いることができる。なお、図4,図5に示す例では、表面化粧材5として突き板の表面に疑似溝6を加工したものを用いており、スリット4の加工は、疑似溝6に沿うようにして行っている。
【0031】
図6および図7に示す木質系床材10Cは、木質系基材1にも切り込み7が形成されている点で、図1に示した木質系床材10と相違している。他の構成は図1に示した木質系床材10に同じであり、同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。製造に際し、木質系基材1の表面側にMDF3を貼着したものを用意し、MDF3にスリット4を多数形成する作業は、図1に示した木質系床材10の場合と同じであるが、スリット4を形成するときに、作業機の切り込み深さを制御して、木質系基材1の内部側にもスリット4に続く切り込み7が形成されるようにする。切り込み7の深さは任意であるが、例えば木質系基材1が5プライ合板の場合には3プライ目の中央まで等とする。また、すべてのスリット4(4a,4b)に対応して木質系基材1に切り込み7を形成してもよく、一部のスリット4(4a,4b)に対応する箇所にのみ切り込み7を形成してもよい。
【0032】
そのようにしてスリット4a,4bおよび切り込み7を形成した後、MDF3の表面に表面化粧材5を貼着する。それにより、図7に示すように、本発明による木質系床材10Cが形成される。
【0033】
なお、図示しないが、上記した木質系基材1に切り込み7を形成する態様は、図3に示した木質系基材1の裏面側にもMDF3を貼着した形態の木質系床材10Aにも適用することができ、その場合には、木質系基材1の裏面側にも同様にして切り込み7が形成される。図4および図5に示した形態の木質系床材10Bにも適用することができる。この場合には、貼着した表面化粧材5の表面側から表面化粧材5よび木質繊維板3の双方を貫通するようにしてスリット4を形成するときに、作業機の切り込み深さを制御して、木質系基材1の内部側にもスリット4に続く切り込み7を形成すればよい。この場合も、表面化粧材5として突き板の表面に疑似溝6を加工したものを用いる場合には、スリット4および切り込み7の加工は、疑似溝6に沿うようにして行うようにする。
【0034】
図示しないが、図1および図2あるいは図6および図7に示した木質系床材10、10Cを製造し、該木質系床材10、10Cに対して、さらに、表面化粧材5の表面側から表面化粧材5よび木質繊維板3の双方を貫通するスリット4(木質系床材10Cの場合には、木質系基材1に対するスリット4に続く切り込み7)を形成するようにしてもよい。また、フリッチから得られるスライス単板を表面化粧材5として用いる場合には、フリッチを構成するラミナ相互間に生じる境界線に沿ってスリット(および切り込み7)を形成するようにしてもよい。木目のような化粧模様が印刷された化粧紙のような表面化粧材を用いる場合には、その模様を利用してスリット加工を行うことにより、スリットを目立たないものとすることができる。
【0035】
いずれの形態の木質系床材10,10A,10B,10Cでも、スリット4によって、MDF3は多数の独立したMDF小片3aとして分断されているので、乾燥等によって各MDF小片3aに生じる寸法変化量は小さく、またそれぞれが独立した挙動をとる。そのために、MDF3が乾燥等により寸法変化を起こしても、それによりスリット4・・間の隙間がわずかに広くなることがあっても、MDF3全体の挙動が木質系基材1側に与える影響は小さい。結果として、MDF3の厚さが厚いものであっても、木質系床材10(10A,10B,10C)に反りを生じさせることはなく、本発明による木質系床材10,10A,10B,10Cを床暖房用のフロア材として用いる場合でも、隣接する木質系床材同士のジョイント部に大きな隙間を生じさせることはない。特に、木質系床材10Cにおいては、木質系基材1にも切り込み7が形成されていることから、隣接する木質系床材同士のジョイント部に生じる隙間をさらに小さくすることができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
(1)945mm×1840mm×9.0mm(厚さ)のラワン合板を木質系基材として用意した。
(2)945mm×1840mm×2.7mm(厚さ)、比重0.85のMDFを用意した。
(3)上記ラワン合板とMDFとを酢酸ビニル系接着剤で貼り合わせた。接着剤は合板側に16g/尺角の量で塗布し、MDFを載せて、8kg/cmの圧力をかけ、コールドプレスで30分プレスした。
(4)(3)で得た積層基材を1日養生後、レーザー加工機を用いて、MDFに、縦100mmピッチ、横100mmピッチで、スリット加工を行った。レーザー加工条件は、加工速度2000mm/min、出力60W、周波数300Hz、アシストガスとしてエアーを用いた。形成されたスリットは、MDFの厚さ方向に貫通してラワン合板の表面にまで達していた。
(5)(4)で得たスリット加工後の積層基材に、1尺×6尺、0.3mm厚のナラ材突き板を3列貼り付けた。用いた接着剤は尿素樹脂+酢酸ビニル混合接着剤であり、MDF表面に8g/角尺の量で塗布し、突き板を載せて、圧力8kg/cm、120℃のホットプレスで1分間プレスした。
(6)(5)で得た床材の周囲に実加工を施し、着色ワイピング塗装、下塗り塗装、透明上塗り塗装を行って木質系床材とした。
(7)(6)で得た木質系床材に対して、耐傷性の試験、すなわちJISK5400に準じるデュポン衝撃試験を行い凹みを測定した。また、床暖房適応性試験、すなわち80℃温水に8時間浸漬した後に、自然冷却を4時間行う1サイクルを100回繰り返した後、連続通湯300時間の熱耐久試験を行い、隣接する木質系床材同士の隙間を測定した。その結果を表1に示した。
【0037】
[比較例1]
MDFにスリット加工を行わなかったことを除き、実施例1と同様にして木質系床材を製造し、実施例1と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
[比較例2]
MDFの貼り合わせを行わなかったことを除き、実施例1と同様にして木質系床材を製造し、実施例1と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例2]
(1)945mm×1840mm×6.0mm(厚さ)のラワン合板を木質系基材として用意した。
(2)945mm×1840mm×3.0mm(厚さ)、比重0.85のMDFを2枚用意した。
(3)上記ラワン合板の表裏両面にMDFを酢酸ビニル系接着剤で貼り合わせた。接着剤は合板側両面に16g/尺角の量で塗布し、それぞれの面にMDFを載せて、8kg/cmの圧力をかけ、コールドプレスで30分プレスした。
(4)(3)で得た積層基材を1日養生後、レーザー加工機を用いて、表裏両面のMDFに、縦100mmピッチ、横100mmピッチで、スリット加工を行った。レーザー加工条件は、加工速度2000mm/min、出力60W、周波数300Hz、アシストガスとしてエアーを用いた。形成されたスリットは、MDFの厚さ方向に貫通してラワン合板の表面にまで達していた。
(5)(4)で得たスリット加工後の積層基材における表面側のMDFに、1尺×6尺、0.3mm厚のナラ材突き板を3列貼り付けた。用いた接着剤は尿素樹脂+酢酸ビニル混合接着剤であり、MDF表面に8g/角尺の量で塗布し、突き板を載せて、圧力8kg/cm、120℃のホットプレスで1分間プレスした。
(6)(5)で得た床材の周囲に実加工を施し、着色ワイピング塗装、下塗り塗装、透明上塗り塗装を行って木質系床材とした。
(7)(6)で得た木質系床材に対して、実施例1と同じ耐傷性の試験および床暖房適応性試験を行い、隣接する木質系床材同士の隙間を測定した。その結果を表2に示した。
【0041】
[比較例3]
MDFにスリット加工を行わなかったことを除き、実施例2と同様にして木質系床材を製造し、実施例2と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
[比較例4]
MDFの貼り合わせを行わなかったことを除き、実施例2と同様にして木質系床材を製造し、実施例2と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例3]
(1)945mm×1840mm×9.0mm(厚さ)のラワン合板を木質系基材として用意した。
(2)945mm×1840mm×2.7mm(厚さ)、比重0.85のMDFを用意した。
(3)上記ラワン合板とMDFとを酢酸ビニル系接着剤で貼り合わせた。接着剤は合板側に16g/尺角の量で塗布し、MDFを載せて、8kg/cmの圧力をかけ、コールドプレスで30分プレスした。
(4)(3)で得た積層基材を1日養生後、1尺×6尺、0.3mm厚のナラ材突き板を3列貼り付けた。用いた接着剤は尿素樹脂+酢酸ビニル混合接着剤、MDF表面に8g/角尺の量で塗布し、突き板を載せて、圧力8kg/cm、120℃のホットプレスで1分間プレスした。
(5)突き板貼り後の(4)の積層体に、加工機を用いて、突き板表面からMDFに向けてレーザーを照射し、スリット加工を施した。レーザー加工は、加工速度2000mm/min、出力60W、周波数300Hz、アシストガスとしてエアーを用いて行った。スリットは、突き板とMDFの双方を厚さ方向に貫通してラワン合板の表面にまで達していた。なお、スリット加工の場所は、床材としたときに突き板表面に形成される疑似溝部分とした。
(6)(5)で得た床材の周囲に実加工を施し、着色ワイピング塗装、下塗り塗装、透明上塗り塗装を行って木質系床材とした。
(7)(6)で得た木質系床材に対して、実施例1と同じ耐傷性の試験および床暖房適応性試験を行い、隣接する木質系床材同士の隙間を測定した。その結果を表3に示した。
【0045】
[比較例5]
MDFにスリット加工を行わなかったことを除き、実施例3と同様にして木質系床材を製造し、実施例2と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
[比較例6]
MDFの貼り合わせを行わなかったことを除き、実施例3と同様にして木質系床材を製造し、実施例2と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
[実施例4]
(1)945mm×1840mm×9.0mm(厚さ)の5プライラワン合板を木質系基材として用意した。
(2)945mm×1840mm×2.7mm(厚さ)、比重0.85のMDFを用意した。
(3)上記ラワン合板とMDFとを酢酸ビニル系接着剤で貼り合わせた。接着剤は合板側に16g/尺角の量で塗布し、MDFを載せて、8kg/cmの圧力をかけ、コールドプレスで30分プレスした。
(4)(3)で得た積層基材を1日養生後、1尺×6尺、0.3mm厚のナラ材突き板を3列貼り付けた。用いた接着剤は尿素樹脂+酢酸ビニル混合接着剤、MDF表面に8g/角尺の量で塗布し、突き板を載せて、圧力8kg/cm、120℃のホットプレスで1分間プレスした。
(5)突き板貼り後の(4)の積層体に、レーザー加工機を用いて、突き板表面からMDFに向けてレーザーを照射し、スリット加工を施した。レーザー加工は、加工速度2000mm/min、出力400W、周波数300Hz、アシストガスとしてエアーを用いて行った。スリットは、突き板とMDFの双方を厚さ方向に貫通し、さらに5プライラワン合板の中間層(3プライ目の真ん中)にまで達しており、5プライラワン合板に切り込みが形成された。なお、スリット加工の場所は、床材としたときに突き板表面に形成される疑似溝部分とした。
(6)(5)で得た床材の周囲に実加工を施し、着色ワイピング塗装、下塗り塗装、透明上塗り塗装を行って木質系床材とした。
(7)(6)で得た木質系床材に対して、実施例1と同じ耐傷性の試験および床暖房適応性試験を行い、隣接する木質系床材同士の隙間を測定した。その結果を表4に示した。
【0049】
[比較例7]
MDFにスリット加工を行わなかったことを除き、実施例4と同様にして木質系床材を製造し、実施例1と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表4に示す。
【0050】
[比較例8]
MDFの貼り合わせを行わなかったことを除き、実施例4と同様にして木質系床材を製造し、実施例1と同様に耐傷性の試験と床暖房適応性試験を行った。その結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
[考察]
表1〜4に示すように、本発明による木質系床材(実施例1,2,3,4)は、比較例2,4,6,8のもの(基材と表面化粧材との間にMDFを介装しないもの)と比較して、同じ衝撃に対する凹み量が小さくなっており、耐傷性は改善されている。しかし、実施例1、2,3においては、寸法安定性の高い比較例2,4,6のものと比較して、形成される隙間が大きくなっており床暖房適応性では幾分劣っているが、MDFにスリットを形成しないもの(比較例1,3,5)よりは、改善されている。これにより、本発明による木質系床材の優位性が示される。さらに、実施例4においては、基材と表面化粧材との間にMDFを介装しないもの(比較例8)よりも隙間が小さくなっており、高い床暖房適応性を備えることがわかる。これは、木質系基材にも切り込みを形成した結果であると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による木質系床材の一形態を分解して示す斜視図。
【図2】本発明による木質系床材の一形態を示す斜視図。
【図3】本発明による木質系床材の他の形態を分解して示す斜視図。
【図4】図4aは本発明による木質系床材のさらに他の形態のスリット加工前の状態を分解して示す斜視図であり、図4bは積層後のスリット加工前の状態を示している。
【図5】図4に示す木質系床材状態のスリット加工後の状態を示す斜視図。
【図6】本発明による木質系床材のさらに他の形態を分解して示す斜視図。
【図7】図6に示す木質系床材の斜視図。
【符号の説明】
【0054】
10,10A,10B、10C…木質系床材、1…木質系基材(ラワン合板)、2…裏打ち材、3…木質繊維板(MDF)、3a…木質繊維板(MDF)小片、4(4a、4b)…スリット、5…表面化粧材、6…疑似溝、7…切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の表面側に木質繊維板が貼着され、該木質繊維板の上に表面化粧材が貼着されている木質系床材であって、木質繊維板には木質系基材の表面に達する多数のスリットが形成されていることを特徴とする木質系床材。
【請求項2】
木質系基材の裏面側にも木質繊維板が貼着され、該木質繊維板にも木質系基材の裏面に達する多数のスリットが形成されていることを特徴とする木質系床材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の木質系床材であって、表面化粧材にもスリットが形成されていることを特徴とする木質系床材。
【請求項4】
少なくとも表面化粧材に形成されたスリットに対向する位置において木質繊維板にスリットが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の木質系床材。
【請求項5】
木質系基材の少なくとも表面側には、そこに貼着した木質繊維板に形成されたスリットの全部または一部に対向する位置に所定深さの切り込みが形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の木質系床材。
【請求項6】
木質系基材の表面側に木質繊維板を貼着する工程
貼着した木質繊維板の上に表面化粧材を貼着する工程、および、
貼着した表面化粧材および木質繊維板の双方を貫通するようにして少なくとも木質系基材表面に達するスリットを形成する工程、
とを少なくとも有することを特徴とする木質系床材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−313874(P2007−313874A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174306(P2006−174306)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】