説明

木造建築用の軸組接合具

【課題】単一のピン部材によって取り付けることも可能であって、且つ、強固な取付強度を発揮することができる木造建築用の軸組接合具を提供する。
【解決手段】別々に製造された本体金具2と補助金具1とが組み合わされて使用される。ピン29,30を柱17に挿入して、挿入軸29,30が補助金具1を貫通すると、柱17への取付作業が完了する軸組接合具JNCである。本体金具2は、柱17に当接される当接面5,6と、当接面5,6に直交して構成され、梁18に形成された取付溝25の中に収容される本体部4と、が一体成形されて成る。補助金具1は、丸穴16が貫通形成されると共に、当接面5,6に形成された取付穴12,13を通過して柱17に挿入される柱部15と、取付穴12より大きい頭部14と、が一体成形されて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々に製造された複数の構成部材が建築現場で一体化されて使用される木造建築用の軸組接合具に関し、特に、ボルト及びナットを不要にした軸組接合具に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、それまでの取付工事(特許文献1参照)を大幅に改善して、ボルト及びナットを使用することなく、柱と梁などを固定できる木造建築用の接合具を提案している(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−21182号公報
【特許文献2】特開2003−336321号公報
【0003】
図10(a)は、特許文献2に記載された接合金具を略記したものであり、丸棒状の取付部と平板状の接合部とが、熱間鍛造又は鋳造にて一体成形されて構成されている。この接合具は、取付部と接合部とが同一平面上に形成されるので搬送に便利であり、また、ピン穴にピン部材を挿入するだけで取付工事が完了する点でも優れている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の接合具は、木材に当接されて荷重を受け止める当接平面が存在しないので、2個以上のピン部材が必要となる上に、取付強度がやや劣っていた。すなわち、特許文献2の接合具には、特許文献1の接合具(図10(b)参照)のような当接平面が存在しないので、接合具にかかる荷重は、もっぱら、ピン穴に挿通されたピン部材で支える必要があり強度的にやや劣っていた。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、単一のピン部材によって取り付けることも可能であって、且つ、強固な取付強度を発揮することができる木造建築用の軸組接合具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、別々に製造された本体金具と補助金具とが組み合わされて使用され、これらとは別体の挿入軸を第1木材に挿入して、前記挿入軸が前記補助金具を貫通すると、第1木材への取付作業が完了する軸組接合具であって、前記本体金具は、前記第1木材に当接される当接面と、前記当接面に直交して構成され、第2木材に形成された取付溝の中に収容される平坦面と、が一体成形されて成り、前記補助金具は、丸穴が貫通形成されると共に、前記当接面に形成された取付穴を通過して第1木材に挿入される柱部と、前記取付穴より大きい頭部と、が一体成形されて成ることを特徴とする。
【0007】
第1木材と第2木材とは、本発明の軸組接合具を介在して、互いに強固に固定される。典型的には、第1木材と第2木材とが直交して固定されるが、必ずしも、直交することに限定されるものではない。
【0008】
第1木材と第2木材とが直交して固定される一対の木材としては、土台と柱、柱と梁を例示することができる。この場合、取付溝が形成される第2木材としては、土台(第1木材)に対する柱、柱(第1木材)に対する梁が、これに該当する。
【0009】
前記本体金具は、単一の平坦面と、前記平坦面に直交する複数の当接面とで、全体として断面略T字状に形成されるのも好適である。この場合、複数の当接面は、平坦面に対して二方向に直交されて離散配置される。このような構成の接合金具は、荷重を分散して受け止めることができる点で優れている。
【0010】
また、前記本体金具は、単一の当接面と、当接面に直交する一対の平坦面とで、全体として断面略U字状に形成されているのも効果的である。この場合、一対の平坦面は好ましくは平行に形成され、これに対応して、第2木材には2つの取付溝が平行に形成される。このような構成は、当接面を広く取ることができる点で優れている。
【0011】
また、前記本体金具は、単一の平坦面と、前記平坦面に直交する単一の当接面とで、全体として断面略L字状に形成されるのが、一典型例である。このような構成の接合金具は、簡易性において優れている。
【0012】
前記挿入軸は、典型的には、丸棒状のピン部材であって、前記第1木材には、前記挿入軸を打ち込むための下穴が予め形成されている。或いは、前記挿入軸は、その先端側にネジを有して構成され、下穴を有しない第1木材に捻じ込まれるのも典型例である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第1木材に挿入される挿入軸が補助金具を貫通すると、第1木材への取付作業が完了するので、ボルトやナットが不要となる。そのため、ナットの締め付け作業が不要であるだけでなく、第1木材に、ボルトやナットを収容する凹穴を形成する必要もなくなり、取付作業を大幅に簡素化でき、建築工事の工期を短縮することもできる。
【0014】
また、本発明では、平坦面に直交する当接面が第1木材に当接されるので、第2木材から第1木材に加わる荷重が、当接面において適度に分散されて、十分な取付強度を発揮する。
【0015】
また、本発明の接合金具は、別々に製造された本体金具と補助金具とが組み合わされて使用されるので、十分量の補助金具を製造しておけば、N種類の本体金具について、各々必要な量だけを製造すれば足りるので、在庫管理上だけでなく、製造コストを抑制する上でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施形態に基づき以下に説明する。図1は、第一実施例の接合金具JNCを用いた、柱17と梁18との接合例を示す図面である。この接合金具JNCは、別々に製造された本体金具2と補助金具1とで構成されている。そして、本体金具2を柱17に当接させた状態で補助金具1を柱17に挿入し、その後、柱17に、ピン29,30を打ち込むだけで、接合金具JNCが柱17に固定される。
【0017】
図2は、補助金具1を示す六面図であり、それぞれ、正面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、平面図(e)、底面図(f)である。この補助金具1は、矩形平板状の頭部14と、頭部14から略円柱状に突出する柱部15とが一体に形成されている。柱部15は、右側面図(d)に示すように、頭部14の中央からやや偏移(図示例では右側)して突出しており、本体金具2との接合時に、頭部14が本体金具2の舌片部5,6の角部と衝突しないように形成されている。また、柱部15は、中央やや先端側にピン穴16が前後方向に貫通形成されている。
【0018】
図3は、本体金具2を示す六面図であり、図4は、補助金具1と本体金具2を組み合わせた六面図であって、それぞれ、正面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、平面図(e)、底面図(f)である。この本体金具2は、略矩形平板状の本体部4と、本体部4の一端(図示例では右側端)から突出し互いに逆向きに屈曲形成された一対の略矩形状の舌片部5,6とで構成され、平面視で略T字状に一体的に形成されている。
【0019】
本体部4の他端(図示例では左側端)上下には、略U字状に切り欠かれた切欠き部7,8が形成され、また、左側端中央には、3つのピン穴9,10,11が形成されている。3つのピン穴9、10,11は上下方向に連なっており、上下ピン穴9,11に対し中央のピン穴10は、やや左側に形成されている。
【0020】
舌片部5は、本体部4の右側端中央から若干突出した後、後方に向かってL字状に屈曲形成されており、舌片部6は、本体部4の右側端下側から若干突出した後、前方に向かってL字状に屈曲形成されている。また、舌片部5は、上部が円弧状に形成されているのに対し、舌片部6は、下部が円弧状に形成されている。そして、舌片部5,6は中央に略小判状の補助金具1を受け入れる取付穴12,13が形成されている。
【0021】
図1に示す接合金具JNCの柱17と梁18との接合は以下のように行われる。予め、柱17の正面には、本体金具2の舌片部5,6を収容して係止する一対の円穴19,20と、円穴19,20中央から更に突出し、補助金具1の柱部15が挿入される一対の嵌合穴21,22とが形成されている。また柱17の一側面(図示例では左側面)には、柱部15のピン穴16に対応して、2つのピン孔23,24が形成されている。一方、梁18の柱17との接合面には、本体金具2の本体部4が挿入される矩形溝25が形成されている。そして、梁18の一側面図示例では左側面)には、本体金具2のピン穴10,11に対応した2つのピン孔26,27が形成されており、本体金具2の上部切欠き部7と係合する位置には、ピン28が梁18内部に打ち込まれている。
【0022】
まず、本体金具2の舌片部5,6を対応する柱17の円穴19,20に配置する。そして補助金具1の柱部15を、舌片部5の取付穴12に挿入し、補助金具1の頭部14が舌片部5と当接するまで、柱部15を柱17の嵌合穴21内に打ち込む。舌片部6に対しても同様に補助金具1を取り付ける。次に、柱17の側面のピン孔23,24に2つのピン29,30を、補助金具1,1のピン穴16,16を貫通するように打ち込み、補助金具1を通して本体金具2を柱17に固定する。
【0023】
次に、梁18を上方から落とし込み、矩形溝25に本体金具2の本体部4を挿入させる。このとき、本体金具2の舌片部5,6は本体部4からやや突出した後屈曲しているので、2つの補助金具1の頭部14,14は、柱17の円穴19,20内に留まり、落とし込まれる梁18と衝突することはない。
【0024】
そして、梁18に打ち込まれたピン28が本体金具2の上側切欠き部7に引掛けられ、梁18は柱17との接合箇所に位置決めされる。次に、梁18の側面のピン孔26,27に2つのピン31,32を、本体金具2のピン穴10,11を貫通するように打ち込み、本体金具2を梁18に固定することにより、柱17と梁18は接合される。
【0025】
図5は、第2実施例の接合金具JNC’の補助金具35を示す六面図であり、それぞれ、正面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、平面図(e)、底面図(f)である。この補助金具35は、第一実施例の補助金具1と同様に、頭部36と柱部37とで構成され、柱部37には、ピン穴38が形成されているが、柱部37は、図7右側面図(d)に示すように、頭部36の中央から突出形成されており、矩形状の板体を略U字状に屈曲形成した本体金具41の基端部を挿通して本体金具41を柱に固定する金具である。
【0026】
図6は、本体金具41を示す六面図であり、図7は、補助金具35と本体金具41を組み合わせた接合金具JNC’を示す六面図であって、それぞれ、正面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、平面図(e)、底面図(f)である。この本体金具41は、小判状に形成され上下方向の中心から上方へ偏移した位置に設けられた基端部43と、基端部43から平行に延びる略矩形板体の一対の折り返し部44,44とで構成され、全体として略U字状に形成されている。
【0027】
基端部43の中央には、補助金具35を受け入れる取付穴45が形成されている。一対の折り返し部44,44は、平板状であって、先端側上部に略U字状に切り欠かれた切欠き部46と、先端側中央に形成された2つのピン穴47,48とが形成されている。
【0028】
第二実施例の接合金具JNC’の柱と梁の接合は、第一実施例の接合金具JNCの接合方法と同様に行われる。まず、本体金具41の基端部43を柱17の円穴19に配置し、補助金具35の柱部37を、本体金具41の取付穴45に挿入して、頭部36が本体金具41の基端部43と当接するまで、柱内に打ち込む。次に、柱の側面のピン孔にピンを、補助金具35のピン穴38を貫通するように打ち込み、補助金具35を通して本体金具41を柱に固定する。
【0029】
次に、予め2条の溝が形成され、且つ上部にピンが打ち込まれた梁を上方から落とし込み、本体金具41の折り返し部44に挿入させて、梁に打ち込んだピンにより柱と梁の接合箇所を位置決めし、梁の側面から2つのピンを折り返し部44のピン穴47,48を貫通するように打ち込み、本体金具41を梁に固定することにより、柱と梁は接合される。
【0030】
図8は、第三実施例の接合金具JNC’’で用いられる補助金具60を示す六面図であり、それぞれ、正面図(a)、背面図(b)、左側面図(c)、右側面図(d)、平面図(e)、底面図(f)である。この補助金具60は、第一又は第二実施例の本体金具2,41とともに用いられる補助金具1,35の変形例であって、矩形状板体の頭部61と、頭部61から突出形成された略円柱状の柱部62とで構成されている。柱部62の軸方向中央付近から先端にかけて柱部62が略半円柱状となるように切り欠き部63が形成されており、その切り欠き部63には、中央やや先端側にピン穴64が前後方向に貫通形成されている。
【0031】
図9は、第三実施例の接合金具JNC’’の接合方法を示す断面図であり、柱に2本の梁を固定する方法を例示する図である。この実施例では、上下反転させた一対の補助金具60,60を柱70の左右から互いに対向させた状態で、柱部62,62を略U字状に形成された本体金具65,65の基端部に挿入させる。そして、頭部61,61が本体金具65,65の基端部に当接するまで柱70に打ち込み、本体金具65,65を、柱70に取り付ける。このとき、補助金具60,60の2つの切り欠き部63,63は当接され、ピン穴64,64が揃うので、柱の前方よりピン66を、補助金具60,60のピン穴64,64を貫通するように打ち込み、一対の補助金具60,60を柱70に固定することにより、本体金具65,65を柱70に固定する。次に、他の実施例と同様に2本の梁71,71を本体金具65,65に落とし込み、ピン67,67で梁71,71と本体金具65,65を固定することにより、2本の梁は柱に接合される。
【0032】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定するものではない。特に、上記した実施例の本体金具2,41,65は、それぞれ略T字状、略U字状の金具であったが、略矩形状板体の本体部と、本体部から屈曲形成され補助金具と当接する舌片部とで構成され、全体として略L字状に形成された本体金具を、軸組接合に用いることもできる。本体金具は、第1木材に当接する面と、第2木材に収容される平坦面を有し、当接面に、補助金具が挿入される取付穴を有していれば、特に形状は限定されない。また、補助金具1,35,60の頭部は矩形状に形成されているが、円形に形成されてもよく、また、他の形状であってもよい。柱部の形状も略円柱に形成されているが、角柱等、他の形状であってもよい。さらに、上記の実施例では、補助金具の取り付けにピンを使用したが、ネジを使用してもよい。例えば、補助金具のピン穴を貫通するように第1木材にネジを捻じ込むことで、本体金具と補助金具を第1木材に固定してもよい。ネジを使用する場合、予め第1木材にピン穴を設けておく必要が無く、より簡易に取付工事をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第一実施例の本体金具と補助金具とで構成された接合金具の接合例を示す図である。
【図2】第一実施例の補助金具を示す六面図である。
【図3】第一実施例の本体金具を示す六面図である。
【図4】第一実施例の接合金具を示す六面図である。
【図5】第二実施例の補助金具を示す六面図である。
【図6】第二実施例の本体金具を示す六面図である。
【図7】第二実施例の本体金具と補助金具とで構成された接合金具を示す六面図である。
【図8】第三実施例の補助金具を示す六面図である。
【図9】第三実施例の接合金具の接合例を示す断面図である。
【図10】従来の接合金具を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 補助金具
2 本体金具
4 平坦面
5,6 当接面
12,13 取付穴
14 頭部
15 柱部
16 丸穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々に製造された本体金具と補助金具とが組み合わされて使用され、これらとは別体の挿入軸を第1木材に挿入して、前記挿入軸が前記補助金具を貫通すると、第1木材への取付作業が完了する軸組接合具であって、
前記本体金具は、前記第1木材に当接される当接面と、前記当接面に直交して構成され、第2木材に形成された取付溝の中に収容される平坦面と、が一体成形されて成り、
前記補助金具は、丸穴が貫通形成されると共に、前記当接面に形成された取付穴を通過して第1木材に挿入される柱部と、前記取付穴より大きい頭部と、が一体成形されて成ることを特徴とする木造建築用の軸組接合具。
【請求項2】
前記本体金具は、単一の平坦面と、前記平坦面に直交する複数の当接面とで、全体として断面略T字状に形成されている請求項1に記載の軸組接合具。
【請求項3】
前記本体金具は、単一の当接面と、前記当接面に直交する一対の平坦面とで、全体として断面略U字状に形成されている請求項1に記載の軸組接合具。
【請求項4】
前記本体金具は、単一の平坦面と、前記平坦面に直交する単一の当接面とで、全体として断面略L字状に形成されている請求項1に記載の軸組接合具。
【請求項5】
前記挿入軸は、丸棒状のピン部材であって、前記第1木材には、前記挿入軸を打ち込むための下穴が予め形成されている請求項1〜4の何れかに記載の軸組接合具。
【請求項6】
前記挿入軸は、その先端側にネジを有して構成され、前記挿入軸は、下穴を有しない第1木材に捻じ込まれる請求項1〜4の何れかに記載の軸組接合具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−47996(P2010−47996A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213759(P2008−213759)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(500543834)木建技研株式会社 (10)
【Fターム(参考)】