説明

未加硫ゴム部材の接合方法

【課題】未加硫ゴム部材の接合に要する時間を短縮し、且つ接合力を高めた異物混入のない未加硫ゴム部材の接合方法を提供すること。
【解決手段】第1未加硫ゴム部材40の一端部の端面40Aと第2未加硫ゴム部材44の他端部の端面44Aを重ね合せ、重ね合せ部46を高周波誘電により加熱し、加熱された重ね合せ部72をプレスして第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44とを接合することで、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に要する時間を短縮し、且つ接合力を高め、さらに、異物の混入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム部材、特には、空気入りタイヤに用いられる未加硫ゴム部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の未加硫ゴム部材を接合一体化して形成された厚肉複層構造ゴム物品を、高周波誘電加熱で予備加熱した後、加硫成形する厚肉複層構造ゴム物品の加硫成形方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−309725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、未加硫ゴム部材同士の接合は、未加硫ゴム部材を互いに重ね、重ねた部分をプレスして圧着させたり、未加硫ゴム部材に接着剤を塗布し、塗布部分を互いに重ねて接着させたり、未加硫ゴム部材を互いに重ね、重ねた部分を外側から加熱しプレスして圧着させたり、などしてなされている。
【0005】
しかし、未加硫ゴム部材同士を圧着で接合した場合には、未加硫ゴム部材の接合力が不足し、未加硫ゴム部材同士を接着剤で接合した場合には、接着剤が異物となることがある。さらに、未加硫ゴム部材同士を外側から加熱して圧着接合した場合には、圧着のみで接合したものと比べて接合力が向上するが、熱伝導率が低い未加硫ゴム材料を十分に加熱するには、時間がかかり生産性が低下する問題がある。
【0006】
以上のことから、本発明は、未加硫ゴム部材の接合に要する時間を短縮し、且つ接合力を高めた異物混入のない未加硫ゴム部材の接合方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の未加硫ゴム部材の接合方法は、第1の未加硫ゴム部材の少なくとも一部と第2の未加硫ゴム部材の少なくとも一部を重ね合せ、この重ね合せ部を高周波誘電により加熱し、加熱された前記重ね合せ部をプレスして前記第1の未加硫ゴム部材と前記第2の未加硫ゴム部材とを接合する。
【0008】
請求項1の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、第1の未加硫ゴム部材の少なくとも一部と第2の未加硫ゴム部材の少なくとも一部を重ね合せた重ね合せ部が高周波誘電により加熱される。ここで、高周波誘電による加熱は、未加硫ゴム部材を内部から発熱(自己発熱)させる加熱方式のため、未加硫ゴム部材を外部から加熱する加熱方式のものと比べて、上記重ね合せ部が急速且つ均一に加熱される。そして、加熱されて溶融(初期状態よりも軟化した状態も含む)した重ね合せ部がプレスされて、この重ね合せ部の第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材とが溶着され、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材とが接合される。
すなわち、高周波誘電による加熱で重ね合せ部を急速且つ均一に加熱してからプレスして、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材を接合するため、接合に要する時間が短縮され、且つ、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材を圧着のみで接合するものと比べて、接合力が高められる。また、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材の接合に接着剤などを用いないため、異物の混入が防止される。
【0009】
請求項2の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項1の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスする。
【0010】
請求項2の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスすることから、重ね合せ部を十分に加熱した後でプレスするものと比べて、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材の接合に要する時間が短縮される。
【0011】
請求項3の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項1又は請求項2の未加硫ゴム部材の接合方法において、高周波電圧が印加される一対の電極部材を用いて前記重ね合せ部をプレスする。
【0012】
請求項3の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、一対の電極部材に高周波電圧が印加されると、電極部材間に電界が形成される。ここで、電極部材間に重ね合せ部を配置することで、重ね合せ部は電界の影響を受けて誘電損により発熱する(すなわち高周波誘電により加熱される)。そして、加熱された重ね合せ部が一対の電極部材でプレスされる。従って、一対の電極部材で重ね合せ部の加熱とプレスが行なえるため、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材の接合に用いる設備のコストを抑えられる。
【0013】
請求項4の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項1〜請求項3の何れか1項の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記重ね合せ部は、帯状の前記第1の未加硫ゴム部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜する帯状の前記第2の未加硫ゴム部材の端面と、を重ね合わせて形成される。
【0014】
請求項4の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、帯状の第1の未加硫ゴム部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜する帯状の第2の未加硫ゴム部材の端面と、を重ね合わせて重ね合せ部が形成されることから、第1の未加硫ゴム部材の端部と第2の未加硫ゴム部材の端部を上下に重ね合せたものと比べて、重ね合せ部の段差が低くなる。
【0015】
請求項5の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項1〜請求項4の何れか1項の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記第1の未加硫ゴム部材及び前記第2の未加硫ゴム部材は、同じゴム材料で構成されている。
【0016】
請求項5の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材とが同じゴム材料で構成されていることから、第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材は、略同一の温度で溶融状態となる。このため、重ね合せ部を効率よく溶着させて第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材を接合させられる。
【0017】
請求項6の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項1〜請求項5の何れか1項の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記第1の未加硫ゴム部材及び前記第2の未加硫ゴム部材は、タイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材である。
【0018】
請求項6の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、第1の未加硫ゴム部材及び第2の未加硫ゴム部材がタイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材であることから、タイヤの製造工程において、未加硫のタイヤ構成部材としての第1の未加硫ゴム部材及び第2の未加硫ゴム部材の接合に要する時間が短縮されて、生産性が向上する。
【0019】
請求項7の未加硫ゴム部材の接合方法は、帯状の未加硫ゴム部材の一端部と他端部とを重ね合せ、この重ね合せ部を高周波誘電により加熱し、加熱された前記重ね合せ部をプレスして前記一端部と前記他端部とを接合する。
【0020】
請求項7の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、未加硫ゴム部材の一端部と他端部とを重ね合せた重ね合せ部が高周波誘電により加熱される。ここで、高周波誘電による加熱は、未加硫ゴム部材を内部から発熱(自己発熱)させる加熱方式のため、未加硫ゴム部材を外部から加熱する加熱方式のものと比べて、上記重ね合せ部が急速且つ均一に加熱される。そして、加熱されて溶融(初期状態よりも軟化した状態も含む)した重ね合せ部がプレスされて、この重ね合せ部の未加硫ゴム部材の一端部と他端部とが溶着され、未加硫ゴム部材の一端部と他端部とが接合される。
すなわち、高周波誘電による加熱で重ね合せ部を急速且つ均一に加熱してからプレスして、未加硫ゴム部材の一端部と他端部とを接合するため、接合に要する時間が短縮され、且つ、未加硫ゴム部材の端部同士を圧着のみで接合するものと比べて、接合力が高められる。また、未加硫ゴム部材の端部同士の接合に接着剤などを用いないため、異物の混入が防止される。
【0021】
請求項8の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項7の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスする。
【0022】
請求項8の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスすることから、重ね合せ部を十分に加熱した後でプレスするものと比べて、未加硫ゴム部材の端部同士の接合に要する時間が短縮される。
【0023】
請求項9の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項7又は請求項8の未加硫ゴム部材の接合方法において、高周波電圧が印加される一対の電極部材を用いて前記重ね合せ部をプレスする。
【0024】
請求項9の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、一対の電極部材に高周波電圧が印加されると、電極部材間に電界が形成される。ここで、電極部材間に重ね合せ部を配置することで、重ね合せ部は電界の影響を受けて誘電損により発熱する(すなわち高周波誘電により加熱される)。そして、発熱した(加熱された)重ね合せ部が一対の電極部材でプレスされる。従って、一対の電極部材で重ね合せ部の加熱とプレスが行なえるため、未加硫ゴム部材の端部同士の接合に用いる設備のコストを抑えられる。
【0025】
請求項10の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項7〜請求項9の何れか1項の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記重ね合せ部は、前記一端部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜した前記他端部の端面と、を重ね合わせて形成される。
【0026】
請求項10の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、一端部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜した他端部の端面と、を重ね合わせて重ね合せ部が形成されることから、未加硫ゴム部材の端部同士を上下に重ね合せたものと比べて、重ね合せ部の段差が低くなる。
【0027】
請求項11の未加硫ゴム部材の接合方法は、請求項7〜請求項10の何れか1項の未加硫ゴム部材の接合方法において、前記未加硫ゴム部材は、タイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材である。
【0028】
請求項11の未加硫ゴム部材の接合方法によれば、未加硫ゴム部材がタイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材であることから、タイヤの製造工程において、未加硫のタイヤ構成部材としての未加硫ゴム部材の端部同士の接合に要する時間が短縮されて、生産性が向上する。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明の未加硫ゴム部材の接合方法は、未加硫ゴム部材の接合に要する時間を短縮し、且つ接合力を高めることができ、さらに異物の混入も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の接合装置を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の接合装置を用いて第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材との重ね合せ部を高周波誘電により加熱している状態を示す側面図である。
【図3】接合装置を用いて第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材との重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスしている状態を示す側面図である。
【図4】接合装置を用いて第1の未加硫ゴム部材と第2の未加硫ゴム部材とが接合された状態を示す側面図である。
【図5】第2の実施形態の接合装置を示す側面図である。
【図6】その他の実施形態の接合装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための第1の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、後述する第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44とを接合するための接合装置10の側面図が示されている。なお、ここで言う「未加硫」とは、完全加硫状態に至っていない状態を意味している。
【0032】
図1に示すように、接合装置10は、上プレスユニット12とこれに対向して配置される下プレスユニット22とを有している。
【0033】
上プレスユニット12は、装置筐体(図示省略)に固定される固定部14と、固定部14に固定された複数のシリンダ16と、シリンダ16から押し出されるロッド18と、このロッド18の先端に固定された電極プレート20(電極部材の一例)と、を有している。電極プレート20は、幅が後述する重ね合せ部46の幅よりも広く設定されている。
【0034】
下プレスユニット22は、装置筐体(図示省略)に固定される固定部24と、固定部24に固定された複数のシリンダ26と、シリンダ26から押し出されるロッド28と、このロッド28の先端に固定された電極プレート30(電極部材の一例)と、を有している。この電極プレート30は、電極プレート20に対向して配置され、且つ電極プレート20と同形状とされている。
【0035】
また、接合装置10は、高周波電源ユニット32を有している。この高周波電源ユニット32は、上プレスユニット12及び下プレスユニット22へそれぞれ逆極性の高周波電源を供給するようになっている。なお、接合装置10は、制御ユニット(図示省略)を有しており、この制御ユニットはシリンダ16及びシリンダ26の押出し量(電極プレート20と電極プレート30によるプレス力)や高周波電源ユニット32の出力を制御している。
【0036】
次に、接合装置10を用いて接合される第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44について説明する。
第1未加硫ゴム部材40は、帯状とされ、長手方向の一端部の端面40Aが厚み方向に対して傾斜している。
第2未加硫ゴム部材44は、帯状とされ、第1未加硫ゴム部材40と幅及び厚みが略同一とされている。また、第2未加硫ゴム部材44は、長手方向の他端部の端面44Aが厚み方向に対して端面40Aの傾斜方向と同じ方向に傾斜している。
【0037】
また、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44は、同じゴム材料で構成されている。なお、本発明はこれに限らず、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44は、異なるゴム材料で形成されていてもよい。
【0038】
次に、接合装置10を用いて第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44とを接合する手順について説明する。
【0039】
まず、図2に示すように、接合装置10の上プレスユニット12と下プレスユニット22の間に第1未加硫ゴム部材40の一端部と第2未加硫ゴム部材44の他端部とを配置し、一端部の端面40Aと他端部の端面44Aとを重ね合せる。なお、端面40Aと端面44Aとを重ね合わせたときの第1未加硫ゴム部材40の一端部と第2未加硫ゴム部材44の他端部とが重なり合う部分を、以下では重ね合せ部46として説明する。
【0040】
次に、上プレスユニット12と下プレスユニット22を稼動させて、電極プレート20と電極プレート30とで重ね合せ部46を挟む。このとき、電極プレート20と電極プレート30で重ね合せ部46をプレスしていなくてもよい。
【0041】
次に、高周波電源ユニット32を稼動させて電極プレート20と電極プレート30に高周波電圧を印加する。電極プレート20と電極プレート30に高周波電圧が印加されると、電極プレート20と電極プレート30との間に電界が形成される。重ね合せ部46は、上記電界の影響を受けて誘電損により発熱する(すなわち高周波誘電により加熱される)。つまり、重ね合せ部46の第1未加硫ゴム部材40及び第2未加硫ゴム部材44がそれぞれ内部から発熱するため、重ね合せ部46が急速且つ均一に加熱される。
【0042】
そして、重ね合せ部46が所定温度(第1未加硫ゴム部材40及び第2未加硫ゴム部材44が溶融する温度(本実施形態では90°C程度))まで加熱されると、制御ユニットは上プレスユニット12と下プレスユニット22とを稼動させて、加熱されて溶融した重ね合せ部46を電極プレート20と電極プレート30でプレスさせる(図3参照)。これにより、重ね合せ部46の第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44がプレスされて溶着され、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44が接合される(図4参照)。
【0043】
ここで、重ね合せ部46を高周波誘電により加熱するため、例えば、重ね合せ部46を外部から加熱するものと比べて、重ね合せ部46の昇温時間が短縮され、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に要する時間が短縮される。さらに、重ね合せ部46の第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44を溶着させるため、例えば、重ね合せ部46の第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44を圧着のみで接合するものと比べて、接合力が高められる。またさらに、重ね合せ部46の第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44とが溶着により接合されるため、接合部分に第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44との境界がなくなり、両者が強固に接合される。そして、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に接着剤などを使用しないため、重ね合せ部46への異物などの混入が防止される。
【0044】
また、重ね合せ部46のプレス中も電極プレート20と電極プレート30に高周波電圧を印加して重ね合せ部46を加熱しておくことで、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に要する時間を短縮することができる。
【0045】
さらに、接合装置10は、電極プレート20と電極プレート30を用いて重ね合せ部46の加熱とプレスを行なえるため、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に用いる設備のコストを抑えられる。
【0046】
そして、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合部分となる重ね合せ部46を、端面40Aと端面44Aとを重ね合わせたときの第1未加硫ゴム部材40の一端部と第2未加硫ゴム部材44の他端部とが重なり合う部分としたことから、例えば、第1未加硫ゴム部材40の一端部と第2未加硫ゴム部材44の他端部を上下に重ね合せたものと比べて、重ね合せ部46の段差が低くなる。これにより、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合部分の段差が低くなり、外観がきれいに仕上がる(図4参照)。
【0047】
また、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44を、同じゴム材料で構成したことから、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44は、略同一の温度で溶融状態となるため、一方が先に溶融し、他方が後で溶融するなどの時間的ロスが少なく、重ね合せ部46を効率よく溶着させられる。
【0048】
なお、本実施形態の第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44を、それぞれタイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材としてもよい。タイヤ構成部材としては、例えば、インナーライナー、カーカスプライ、ビードフィラー、ベルトプライ、及びサイドゴム、トレッドゴムなどが挙げられる。このような未加硫のタイヤ構成部材に本発明を適用することで、タイヤ製造工程において、未加硫のタイヤ構成部材同士を接合する時間が短縮され、且つ、接合部分が加硫工程に至る前に外れるのが防止される。これにより、タイヤ製造工程における生産性が向上する。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、本発明を実施するための第2の実施形態を図面に基づき説明する。
図5には、後述する未加硫ゴム部材70の一端部と他端部とを接合するための接合装置50の側面図が示されている。なお、第1の実施形態と同一部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、接合装置50は、プレスユニット52と、これに対向して配置される回転ドラム62(電極部材の一例)とを有している。また、第1の実施形態の高周波電源ユニット32と、制御ユニット(図示省略)とを有している。
【0051】
プレスユニット52は、装置筐体(図示省略)に固定される固定部54と、固定部54に固定された複数のシリンダ56と、シリンダ56から押し出されるロッド58と、このロッド58の先端に固定された電極プレート60(電極部材の一例)と、を有している。なお、電極プレート60は、幅が後述する重ね合せ部72の幅よりも幅広とされている。
【0052】
回転ドラム62は、図示しないモータによって回転可能とされており、幅が電極プレート60の幅よりも幅広とされている。
【0053】
高周波電源ユニット32は、プレスユニット52及び回転ドラム62へそれぞれ逆極性の高周波電源を供給するようになっている。
また、制御ユニットはシリンダ56の押出し量(電極プレート60と回転ドラム62によるプレス力)、高周波電源ユニット32の出力、及び回転ドラム62の回転速度や回転位置を制御する。
【0054】
次に、接合装置50を用いて端部同士が接合される未加硫ゴム部材70について説明する。
未加硫ゴム部材70は、帯状とされ、長手方向の一端部の端面70A及び他端部の端面70Bが厚み方向に対して同じ方向に傾斜している。
【0055】
次に、接合装置50を用いて未加硫ゴム部材70の一端部の端面70A及び他端部の端面70Bを接合する手順について説明する。
【0056】
まず、図5に示すように、回転ドラム62の外周面に未加硫ゴム部材70を巻き付ける。そして、一端部の端面70Aと他端部の端面70Bを重ね合せる。なお、一端部の端面70Aと他端部の端面70Bとを重ね合わせたときの未加硫ゴム部材70の一端部と他端部とが重なり合う部分を、以下では重ね合せ部72として説明する。
次に、回転ドラム62を回転させて、この重ね合せ部72を電極プレート60と回転ドラム62との間に位置させる。
【0057】
次に、プレスユニット52を稼動させて、電極プレート60を回転ドラム62側へ押し出し、重ね合せ部72を回転ドラム62と電極プレート60で挟む。このとき、電極プレート60と回転ドラム62で重ね合せ部72をプレスしていなくてもよい。
【0058】
次に、高周波電源ユニット32を稼動させて電極プレート60と回転ドラム62に高周波電圧を印加する。電極プレート60と回転ドラム62に高周波電圧が印加されると、電極プレート60と回転ドラム62との間に電界が形成される。重ね合せ部72は、上記電界の影響を受けて誘電損により発熱する(すなわち高周波誘電により加熱される)。つまり、重ね合せ部72の未加硫ゴム部材70が内部から発熱するため、重ね合せ部46が急速且つ均一に加熱される。
【0059】
そして、重ね合せ部72が所定温度(未加硫ゴム部材70が溶融する温度(本実施形態では90°C程度))まで加熱されると、制御ユニットはプレスユニット52を稼動させて、加熱されて溶融した重ね合せ部72を電極プレート60と回転ドラム62でプレスさせる(図4参照)。これにより、重ね合せ部72の未加硫ゴム部材70の一端部と他端部がプレスされて溶着され、未加硫ゴム部材70の一端部と他端部とが接合される。
【0060】
ここで、重ね合せ部72を高周波誘電により加熱するため、例えば、重ね合せ部72を外部から加熱するものと比べて、重ね合せ部72の昇温時間が短縮され、未加硫ゴム部材70の端部同士の接合に要する時間が短縮される。さらに、重ね合せ部72の未加硫ゴム部材70の端部同士を溶着させるため、例えば、重ね合せ部72の未加硫ゴム部材70の端部同士を圧着のみで接合するものと比べて、接合力が高められる。またさらに、重ね合せ部72の未加硫ゴム部材70の一端部と他端部とが溶着により接合されるため、接合部部分に一端部と他端部との境界がなくなり、両者が強固に接合される。そして、第1未加硫ゴム部材40と第2未加硫ゴム部材44の接合に接着剤などを使用しないため、重ね合せ部72への異物などの混入が防止される。
【0061】
また、重ね合せ部72のプレス中も電極プレート60及び回転ドラム62に高周波電圧を印加して重ね合せ部72を加熱しておくことで、未加硫ゴム部材70の端部同士の接合に要する時間を短縮することができる。
【0062】
さらに、接合装置50は、電極プレート60及び回転ドラム62で重ね合せ部72の加熱とプレスを行なえるため、未加硫ゴム部材70の端部同士の接合に用いる設備のコストを抑えられる。
【0063】
そして、未加硫ゴム部材70の端部同士の接合部分となる重ね合せ部72を、端面70Aと端面70Bとを重ね合わせたときの未加硫ゴム部材70の一端部と他端部が重なり合う部分としたことから、例えば、未加硫ゴム部材70の一端部と他端部を上下に重ね合せたものと比べて、重ね合せ部72の段差が低くなる。これにより、未加硫ゴム部材70の接合部分の段差が低くなり、外観がきれいに仕上がる。
【0064】
なお、本実施形態の未加硫ゴム部材70を、タイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材としてもよい。タイヤ構成部材としては、例えば、インナーライナー、カーカスプライ、ビードフィラー、ベルトプライ、及びサイドゴム、トレッドゴムなどが挙げられる。そして、本実施形態の回転ドラム62をタイヤ製造工程で未加硫のタイヤ構成部材を巻き付けるタイヤ成形ドラムとした場合、タイヤ製造工程において、回転ドラム62に巻き付けられた未加硫のタイヤ構成部材の周方向の端部同士が溶着により接合されることから、未加硫のタイヤ構成部材同士を接合する時間が短縮され、且つ、タイヤ構成部材の周方向端部を接合した接合部分が加硫工程に至る前に外れるのが防止される。これにより、タイヤ製造工程における生産性が向上する。また、タイヤ製造工程において、回転ドラム62に巻き付けられた未加硫のタイヤ構成部材の上にさらに別の未加硫のタイヤ構成部材を巻き付けて周方向の端部同士を溶着により接合して、未加硫のタイヤ構成部材を多層化してもよい。
【0065】
(その他の実施形態)
上述の第2の実施形態では、図5に示すように、回転ドラム62に巻き付けた未加硫ゴム部材70の重ね合せ部72をプレスユニット52の電極プレート60と回転ドラム62とでプレスする構成としたが、本発明はこの構成に限らず、図6に示すように、プレスユニット52の代わりに、回転ドラム62の回転軸方向に移動する移動プレスユニット82を用い、この移動プレスユニット82のローラ90(電極部材の一例)と回転ドラム62とでプレスする構成としてもよい。具体的には、移動プレスユニット82を、装置筐体(図示省略)にスライド可能に取り付けられたスライドベース84と、スライドベース84に固定されたシリンダ86と、シリンダ86から押し出されるロッド88と、このロッド88の先端部に回転自在に支持されたローラ90と、で構成し、高周波電源ユニット32とローラ90とを電気的に接続する。そして、未加硫ゴム部材70の一端部と他端部の接合は、ローラ90を重ね合せ部72に押し付けて、ローラ90と回転ドラム62との間で重ね合せ部72をプレスした状態で、重ね合せ部72を高周波誘電により加熱させながら、移動プレスユニット82を回転ドラム62の回転軸方向に移動させることでなされる。これにより、未加硫ゴム部材70の端部同士の接合に要する時間を効率よく短縮することができる。
【0066】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10 接合装置
20 電極プレート(一対の電極部材)
30 電極プレート(一対の電極部材)
40 第1未加硫ゴム部材
40A 端面
44 第2未加硫ゴム部材
44A 端面
46 重ね合せ部
50 接合装置
60 電極プレート(一対の電極部材)
62 回転ドラム(一対の電極部材)
70 未加硫ゴム部材
70A 端面
70B 端面
72 重ね合せ部
90 ローラ(一対の電極部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の未加硫ゴム部材の少なくとも一部と第2の未加硫ゴム部材の少なくとも一部を重ね合せ、この重ね合せ部を高周波誘電により加熱し、加熱された前記重ね合せ部をプレスして前記第1の未加硫ゴム部材と前記第2の未加硫ゴム部材とを接合する未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項2】
前記重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスする請求項1に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項3】
高周波電圧が印加される一対の電極部材を用いて前記重ね合せ部をプレスする請求項1又は請求項2に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項4】
前記重ね合せ部は、帯状の前記第1の未加硫ゴム部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜する帯状の前記第2の未加硫ゴム部材の端面と、を重ね合わせて形成される請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項5】
前記第1の未加硫ゴム部材及び前記第2の未加硫ゴム部材は、同じゴム材料で構成されている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項6】
前記第1の未加硫ゴム部材及び前記第2の未加硫ゴム部材は、タイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材である請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項7】
帯状の未加硫ゴム部材の一端部と他端部とを重ね合せ、この重ね合せ部を高周波誘電により加熱し、加熱された前記重ね合せ部をプレスして前記一端部と前記他端部とを接合する未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項8】
前記重ね合せ部を高周波誘電により加熱しながらプレスする請求項7に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項9】
高周波電圧が印加される一対の電極部材を用いて前記重ね合せ部をプレスする請求項7又は請求項8に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項10】
前記重ね合せ部は、前記一端部の厚み方向に対して傾斜した端面と、該端面と同じ方向に傾斜した前記他端部の端面と、を重ね合わせて形成される請求項7〜請求項9の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項11】
前記未加硫ゴム部材は、タイヤの製造に用いられる未加硫のタイヤ構成部材である請求項7〜請求項10の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37102(P2011−37102A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185732(P2009−185732)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】