説明

未加硫トレッドに非貫通状態の溝を形成する方法及び装置

本発明は、非貫通状態の半径方向溝がトレッドパターンを形成するトレッドブロックに設けられたトレッドを有するタイヤの製造方法であって、タイヤのブランクを覆う加硫済みトレッド(3)に溝(33)を形成するステップを有する、方法において、トレッド(3)の構成材料の加硫温度よりも高い温度に加熱された1枚又は2枚以上のブレード(22)を十分な時間をかけてトレッド(3)の半径方向内面(32)中に挿入してブレード(22)に接触している溝の壁を表面的に加硫し、それにより、ブレードを溝からいったん取り出しても、半径方向内面が互いに再びくっつくのを阻止することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、タイヤの製造の技術分野、特にトレッドストリップの製造の技術分野である。
【背景技術】
【0002】
公知のように、タイヤトレッドストリップは、種々の性状の表面へのタイヤの路面保持具合を向上させることを目的としてこれらの半径方向外面上に彫刻パターン又はトレッドパターンを有している。一般に、トレッドパターンは、周方向に差し向けられた溝、横方向溝及び切れ目を含むトレッドパターンのブロックを有している。これら切れ目の種々の目的のうちの1つは、タイヤに濡れた路面に対する良好なグリップを提供することにある。
【0003】
アレイ状に配置された切れ目は、対応のアレイ状に配置されたサイプ形成ブレードを硬化モールド内に配置することによって得られる。これら切れ目は、所与の深さのものであって、外部又は開口切れ目と呼ばれており、これら切れ目は、成形作業中に作られてトレッドストリップの半径方向外面からトレッドストリップの内部に向かって半径方向に延びる。
【0004】
しかしながら、外部切れ目の有効性は、タイヤトレッドブロックが摩耗状態になるとこれら外部切れ目の深さの相対的減少により低下することが分かっている。
【0005】
さらに、トレッドストリップの半径方向内面から所与の高さにわたって半径方向に延び、ゴムのブロックと整列して配置される切れ目を形成することが提案された。これら内部切れ目の高さは、タイヤが摩耗していないとき、これら内部の又は非貫通状態の切れ目がトレッドストリップの半径方向外面に通じることがないよう定められている。ブロックが或る特定の摩耗レベルに達すると、外部切れ目は、トレッドストリップが完全に摩耗する時点まで、タイヤに追加のグリップを与えるためにトレッドストリップの表面のところに現れる。
【0006】
一例を挙げると、欧州特許第335694号明細書は、トレッドストリップの内面から半径方向に作られた内部切れ目を有するトレッドストリップを記載している。
【0007】
これら内部切れ目の形成の仕方については数多くの特許文献の開示が存在する。
【0008】
日本国特開平11‐147403号公報は、トレッドストリップの耐摩耗性よりも劣っている耐摩耗性を有し、部分的摩耗に続き、トレッドストリップの半径方向外面上に開口する材料で作られたインサートの使用を提案している。
【0009】
日本国特開平04‐113905号公報は、内部切れ目をあらかじめ硬化されたトレッドストリップ中に形成する技術を提案している。このように改造されたトレッドストリップを一般に更生(リトレッド)作業に続き、タイヤの半径方向外面に被着される。
【0010】
独国特許出願公開第102006036509号明細書は、内部切れ目を加硫済みトレッドストリップ中に形成する方法を記載している。非粘着性材料を切れ目中に導入して切れ目が加硫作業中に閉じるのを阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第335694号明細書
【特許文献2】日本国特開平11‐147403号公報
【特許文献3】日本国特開平04‐113905号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第102006036509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
内部切れ目を加硫済みトレッドストリップに形成し、次にこのトレッドストリップを最終のタイヤ成型段階中に生タイヤに張り付けるときに生じる課題は、次の2つである。即ち、第1の課題は、上記記載内容から理解できるように、切れ目の面がタイヤ加硫中に互いに溶着するように戻るのを阻止できるかどうかという課題である。第2の課題は、内部切れ目がトレッドパターンのブロックと整列して位置するように内部切れ目を位置決めできるかどうかという課題である。というのは、内部切れ目が周方向又は横方向溝の底部中に開口するのを回避する措置が講じられるからである。
【0013】
本発明の目的は、これら両方の課題の解決手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、非貫通状態の半径方向切れ目がトレッドパターンを形成するゴムのブロックに設けられたトレッドストリップを有するタイヤの製造方法は、生タイヤを覆うようになった加硫済みトレッドストリップに切れ目を入れるステップを有する。
【0015】
この方法の特徴によれば、トレッドストリップの構成材料の加硫温度よりも高い温度まで加熱された1枚又は2枚以上のブレードが、ブレードがブレード(22)と接触状態にある切れ目の壁を表面的に加硫するのに十分な期間の間、トレッドストリップの半径方向内面を穿通しているようにし、それにより、ブレードを切れ目からいったん引っ込めても、半径方向内面が互いにくっつくよう戻るのを阻止する。
【0016】
ブレードの温度及びブレードが切れ目を穿通している時間を適切に調節することにより、内部切れ目の各々の2つの面がこれら面を互いにくっつくように戻るのを阻止する表面的な又は見掛け上の加硫を受けるようにすることが可能である。
【0017】
したがって、トレッドストリップの加硫及び成形ステップ中、トレッドパターンのブロックと整列して位置決めされる切れ目が、再び互いに溶着するように戻ることのない面を有し、溝又は外部切れ目と整列して位置決めされた切れ目が見えなくなることが判明した。
【0018】
この現象は、外部切れ目を作るようになった溝又はサイプと整列して位置決めされたトレッドストリップの領域が、この材料が成形段階中に相当な移動量を生じる領域であるということの結果である。これにより、切れ目の面は、位置ずれ状態になり、その結果、加硫中、ゴム結合部の形が変えられる。
【0019】
これとは対照的に、トレッドブロックと整列して位置決めされた切れ目は、かかる問題を生じず、このことは、加硫されない面を備え、トレッドストリップの根元部から、タイヤの半径方向外面と面一をなすことなく、この半径方向外面に向かって半径方向に延びる内部切れ目を有するタイヤを製作することができるということを意味している。
【0020】
注目されるように、加熱ブレードの温度及びこれら加熱ブレードがトレッドストリップを穿通している時間の選択は、上述の現象を明らかにするうえで決定的に重要である。具体的には、切れ目の面の予備加硫は、切れ目のこれら面から見て遠くに位置した材料の層に悪影響を及ぼさないで本質的に表面的又は見掛け上であることが必要である。
【0021】
本発明の別の目的は、本発明の方法を実施するのに適した装置を提案することにある。
【0022】
加硫済みトレッドストリップに内部切れ目を形成する装置は、広く知られており、一般に、トレッドストリップの半径方向外面を支持するようになった第1の表面を備えた第1の手段と、トレッドストリップの半径方向内面に接触するようになっていて、第1の表面に対向して位置決めされると共にトレッドストリップを穿通するようになったアレイ状のブレードが設けられている第2の表面を備えた第2の手段とを有する。第1の表面と第2の表面は、装置が作動状態にあるときにブレードがトレッドストリップの半径方向内面を穿通するよう協調することができる。
【0023】
公知のように、これら装置は、ブレードがトレッドストリップを形成するゴム状材料中へのこれらブレードの穿通状態を向上させるように加熱することができる手段を有する。これら手段は、一般に、ブレードのベースと接触状態に置かれる抵抗電気素子で形成される。
【0024】
しかしながら、加熱装置がトレッドストリップの他の部分を望ましくない仕方で乱すのを回避するための措置が講じられるべきである。特に、トレッドストリップの根元部と接触状態にある第2の表面が根元部を加硫状態にしがちな温度まで昇温されないようにする措置が講じられるべきである。注目されるように、伝統的な手段は、第2の表面を過度の温度まで昇温させるという作用効果をも発揮する。
【0025】
本発明の目的は、この第2の課題の解決手段を提供することにある。
【0026】
この目的のため、本発明に従って切れ目を形成する装置は、強磁性を備えた材料で作られたブレード及び切れ目を穿通しているブレードにのみ作用効果を及ぼす誘導装置を有する。
【0027】
その結果、熱エネルギーの投与は、インダクタの精度及び更にインダクタの冷却の影響の及ぶ範囲の外側に位置したブレードの精度を調節することによって正確に制御できる。
【0028】
第2の手段の構成材料、例えば強磁性である材料及び熱の不良導体の適切な選択により、第2の表面の温度の上昇を回避することができる。
【0029】
更に、第2の表面が円筒形のものである場合、第2の表面の周囲の一部分のみがトレッドストリップの根元部と接触状態にある。この場合に必要なことは、トレッドストリップを穿通しているブレードだけが所定温度まで昇温されるようにこの部分のみに作用するインダクタを設計することだけである。周囲の残りの部分に位置したブレードは、もはやインダクタの作用を受けず、従って、冷えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好ましい実施形態としての装置を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明は、本発明の好ましい実施形態及び図1に関する。しかしながら、以下の説明で理解されるように、実施形態の多くの均等範囲の形態も又、上述したような本発明の一般的原理を具体化することができる。
【0032】
図1に示された本発明の装置は、軸線XX′を中心として回転する全体として円筒形の形をした第1の手段1を有する。
【0033】
第2の手段2も又、その軸線YY′を中心として回転する筒体で形成されている。
【0034】
筒体の各々の半径方向外面は、それぞれ、第1の表面11及び第2の表面21を形成している。第2の表面21は、実質的に半径方向に延びるアレイ状に配置されたブレード22を有している。筒体1及び筒体2の周速度は、互いに同一であり且つ互いに逆方向である。第1の表面と第2の表面は、装置が作動しているとき、トレッドストリップ3を挿通させるニップ4を形成している。
【0035】
本発明のこの好ましい実施形態では、加熱手段23は、筒体2の周囲の一部分と整列して位置決めされると共にニップ4の下流側に配置された1組の誘導コイルで形成されている。ブレードは、強磁性材料で作られている。これとは対照的に、筒体2の本体及び第2の表面21を構成する材料は、強磁性を備えておらず、好ましくは、熱の不良導体である。
【0036】
トレッドストリップの半径方向外面31は、ニップ4のところでは、第1の表面11と接触状態にあり、トレッドストリップの半径方向内面32は、ニップ4のところでは、第2の表面21と接触状態にある。このことは、ブレード22がトレッドストリップ3の半径方向内面32を穿通することを意味する。
【0037】
トレッドストリップをニップ4の下流側で筒体2の周囲の一部にわたって第2の表面21と接触状態に保つための手立てが取られる。これを行うため、トレッドストリップを本発明の装置の上流側に案内したり下流側に案内したりする手段としての案内バー(図示せず)が設けられている。
【0038】
筒体2の周速度及びブレード22をトレッドストリップ内に埋め込み状態に保つ周囲の部分の長さを調節することにより、ブレード22とこれらブレードと直接的な接触状態にある切れ目33の面との接触時間が定められる。
【0039】
ブレード22は、トレッドストリップ3の構成材料の加硫温度よりも高く且つ実質的に170℃〜250℃の温度まで昇温される。ブレード温度が低すぎると、その結果として、接触時間が長くなる。これとは逆に、温度が高すぎると、材料が破壊されると共にこれらブレードと接触状態にある切れ目の面の加硫段階が促進されることになり、かかる加硫段階の促進は、上述したように、トレッドストリップに溝及び外部切れ目をそれぞれ成形するようになったリブ及びサイプ形成ブレードと整列状態にあるコンパウンドの再構成にとって有害である。
【0040】
実験により、乗用車向きのトレッドストリップの場合、直径が1.5mであり、3m/分の周速度で回転し、220℃の温度まで昇温されるブレードを備えたローラ2を形成する第2の手段を有する装置について良好な結果が得られた。この構成では、トレッドストリップを円筒形ローラ2の周囲の半分にわたって巻くと、ブレードは、30秒のオーダの時間の間、切れ目の面と接触した状態のままである。
【0041】
ブレードの温度を180℃に減少させると、ローラ2の周速度を0.4m/分に減少させることが必要である。この場合、ブレードは、3分の時間の間、切れ目の面と接触した状態を保つ。
【0042】
実際には、ブレードの穿通時間は、0.3分〜5分であり、温度が高ければ高いほど、この時間は、それだけ一層短くなる。
【0043】
上述した本発明の実施形態は、本質的に同一の結果を生じさせる非常に多くの仕方で変形可能である。
【0044】
かくして、第2の手段は、2つのローラ相互間に延びるコンベヤベルトの形態を採用することができる。この実施形態では、第1の手段は、上述した円筒形ローラの形態を取っても良く、或いは、第2の手段を形成するコンベヤベルトに向いたコンベヤベルトの形態を取っても良い。
【0045】
多くのインダクタを必要とする実施形態の別の形態では、アレイ状のブレードを有する固定された第2の表面上にトレッドストリップの一部分を配置する。これらブレードは、第1の手段、例えばローラを用いてトレッドストリップの半径方向内面に埋め込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非貫通状態の半径方向切れ目がトレッドパターンを形成するゴムのブロックに設けられたトレッドストリップを有するタイヤの製造方法であって、生タイヤを覆うようになった加硫済みトレッドストリップ(3)に前記切れ目(33)を入れるステップを有する方法において、
前記トレッドストリップ(3)の構成材料の加硫温度よりも高い温度まで加熱された1枚又は2枚以上のブレード(22)が、前記ブレード(22)が前記ブレード(22)と接触状態にある前記切れ目の壁を表面的に加硫するのに十分な期間の間、前記トレッドストリップ(3)の半径方向内面(32)を穿通しているようにし、それにより、前記ブレードを前記切れ目からいったん引っ込めても、前記半径方向内面が互いにくっつくよう戻るのを阻止する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加熱ブレード(22)の温度は、170℃〜250℃である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ブレードが前記加硫済みトレッドストリップを穿通している時間は、0.3分〜5分である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記加熱ブレード(22)は、前記加硫済みトレッドストリップ(3)を実質的に半径方向に穿通するよう構成されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレード(22)は、前記加硫済みトレッドストリップの全厚寸法よりも小さい深さ寸法にわたって前記トレッドストリップ(3)を穿通する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記生タイヤは、硬化プレスで加硫される、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
加硫済みトレッドストリップに内部切れ目(33)を形成する装置であって、前記トレッドストリップ(3)の半径方向外面(31)を支持するようになった第1の表面(11)を備えた第1の手段(1)と、前記トレッドストリップ(3)の半径方向内面(32)に接触するようになっていて、前記第1の表面(11)に対向して位置決めされると共に前記トレッドストリップ(3)を穿通するようになったアレイ状のブレード(22)が設けられている第2の表面(21)を備えた第2の手段(2)とを有し、前記第1の表面(11)と前記第2の表面(21)は、前記装置が作動状態にあるときに前記ブレード(22)が前記トレッドストリップの前記半径方向内面(32)を穿通するよう協調することができる装置において、
前記ブレード(22)は、強磁性を有する材料で作られていて、誘導装置(23)によって所与の温度まで昇温される、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記ブレード(22)は、前記第2の表面(22)に実質的に垂直に配置されている、
請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記ブレード(22)は、熱伝導率の高い材料で作られている、
請求項7又は8記載の装置。
【請求項10】
前記第2の手段(2)の前記第2の表面(22)は、非磁性の且つ熱の不良導体である材料で作られている、
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の手段(1)及び前記第2の手段(2)は、互いに平行な軸線を備えた円筒形ローラで形成され、前記トレッドストリップ(3)は、前記ローラ相互間を通る、
請求項7記載の装置。
【請求項12】
前記誘導装置は、前記第2の手段を形成する前記円筒形ローラの周囲の一部に設けられている、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記トレッドストリップ(3)が前記第2の手段を形成する前記円筒形ローラ(2)の前記周囲の所与の一部にわたり、前記第2の手段(2)を形成する前記円筒形ローラ(2)の前記第2の表面(21)と接触状態のままであるようにすることができるようにする手段が設けられている、
請求項12記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−520187(P2012−520187A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553412(P2011−553412)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052899
【国際公開番号】WO2010/102975
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】