説明

未焼成リング成形体の製造方法

【課題】歩留まりを悪化させたり、強度を低下させることなく高精度に未焼成リング成形体を形成する。
【解決手段】第1、第2板状体の重ね合わせ面を重ね合わせた閉状態で、貫通孔21cから収納空間12に貴金属粘土Wを配置した後に、板状押圧体13の先端部13aの両側面13e、13eを貫通孔の内周面に摺接させつつ収納空間に差し込みながら回転軸線Oを中心に回転させることによって、貴金属粘土のうち板状押圧体の前記回転により先端面13fがなす円形軌跡面に対向する部分を、板状押圧体の先端部で押圧しながら、収納空間の内周面側に向けて押し退けて未焼成リング成形体を形成した後に、板状押圧体の先端部を収納空間および貫通孔から抜き出し、その後、パッケージPに蓋体を取り付けて貫通孔を塞ぎ、パッケージに封入された未焼成リング成形体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未焼成リング成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば銀等の貴金属からなる焼結リングは、貴金属粘土を成形して貴金属粉末がバインダーで固められた未焼成リング成形体を形成した後に、これを焼成することにより形成され、指に嵌める等されて装飾品として広く用いられている。
【0003】
このような未焼成リング成形体を形成するための装置および方法としては、例えば下記特許文献1から3に示されるような、帯状に成形された貴金属粘土を芯材等に巻き付け、この成形体の端部同士を接合して形成する方法(以下、「第1従来例」という)や、帯状に成形された貴金属粘土を打ち抜いて形成する方法(以下、「第2従来例」という)、あるいは筒状に成形した貴金属粘土を所定長さで切断して形成する方法(以下、「第3従来例」という)が知られている。
【特許文献1】特開2002−177025号公報
【特許文献2】特開平11−78396号公報
【特許文献3】特許第3067402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の未焼成リング成形体の製造方法のうち、前記第1従来例では、帯状とされた成形体の端部同士を接合するので、焼成時にこの接合部が割れたり、焼成後の焼結リングにおいてこの接合部に亀裂が生じ易くなったりするおそれがあり、また、前記第2従来例では、帯状とされた成形体を打ち抜くので、歩留まりが悪くなったり、さらに、前記第3従来例では、筒状とされた成形体を所定長さで切断するので、この切断時に歪みが発生する等し、形状を安定させて未焼成リング成形体を形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、歩留まりを悪化させたり、強度を低下させることなく高精度に未焼成リング成形体を形成することができる未焼成リング成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の未焼成リング成形体の製造方法は、貴金属粘土を成形して貴金属粉末がバインダーで固められたリング成形体を形成する未焼成リング成形体の製造方法であって、第1板状体と第2板状体とがそれぞれの一端部に連結部を介して連結されて、これらの板状体の各重ね合わせ面が開閉可能とされ、これらの重ね合わせ面を重ね合わせた閉状態で両重ね合わせ面間に収納空間が形成され、少なくとも第1板状体には、前記収納空間に開口し、かつこの収納空間の内径よりも小径とされた貫通孔が形成される一方、第2板状体の重ね合わせ面には、前記収納空間を構成する収納凹部が形成されたパッケージを用い、前記閉状態とされたパッケージの前記貫通孔から前記収納空間に貴金属粘土を配置した後に、平面視矩形状の板状押圧体の長手方向における一端部の両側面を、前記貫通孔の内周面に摺接させつつ前記収納空間に差し込みながら、この板状押圧体を、前記長手方向と平行に延び、かつこの板状押圧体の幅方向中央部を通る回転軸線を中心に回転させることによって、前記貴金属粘土のうち板状押圧体の前記回転により前記一端部側の端面がなす円形軌跡面に対向する部分を、板状押圧体の一端部で押圧しながら、前記収納空間の内周面側に向けて押し退けて未焼成リング成形体を形成した後に、前記板状押圧体の一端部を前記収納空間および前記貫通孔から抜き出し、その後、蓋体をパッケージに取り付けて前記貫通孔を塞ぎ、パッケージに封入された前記未焼成リング成形体を形成することを特徴とする。
【0007】
この発明では、収納空間に貴金属粘土を配置した後に、板状押圧体の一端部を収納空間に差し込み、板状押圧体を収納空間の内部に向けて前進移動させながら前記回転軸線を中心に回転させることによって、貴金属粘土のうち板状押圧体の前記回転により前記一端部側の端面がなす円形軌跡面と対向する部分を、板状押圧体の一端部で押圧しながら、収納空間の内周面側に向けて押し退けることが可能になる。したがって、収納空間に配置した貴金属粘土のうち前記円形軌跡面と対向する部分が貫通する内径部とされる一方、収納空間の内周面側に向けて押し退けられた部分がこの内周面側に押付けられて外径部とされることによって型成形された未焼成リング成形体が形成されることになる。
以上より、接合部を有しない一体的な未焼成リング成形体が得られ、その全域に亙って均一な強度を有するとともに、高密度かつ表面欠陥のない高精度な未焼成リング成形体を形成することができる。また、未焼成リング成形体を切断や切削等することなく型成形により形成するので、このような未焼成リング成形体を歩留まりおよび生産効率を向上させて形成することができる。
さらに、以上のような成形をパッケージの収納空間内で行い、成形後に板状押圧体を収納空間および貫通孔から抜き出し、その後、蓋体をパッケージに取り付けて前記貫通孔を塞ぐことにより、パッケージに封入された未焼成リング成形体が得られることになるので、例えば成形後に未焼成リング成形体を成形型等から取り出して、この成形体をパッケージに封入するといった一連の工程を別途設ける必要がないため、生産効率をより一層向上させることができる。
さらにまた、前記パッケージに封入する工程を別途設ける必要がないことから、未焼成リング成形体を形成した後、パッケージに封入するまでの間に、その成分や物性がばらつくのを防ぐことが可能になり、高品質の未焼成リング成形体を形成することができる。
【0008】
ここで、前記板状押圧体は、前記回転軸線を中心として左回り若しくは右回りに回転可能に設けられ、前記板状押圧体の表面の平面視において前記一端部のうち前記回転中心軸線を基準として左側の部分若しくは右側の部分には、この部分に連なる板状押圧体の側面から前記回転軸線に向かうに従い漸次深さが浅くなる傾斜凹み部が形成されてもよい。
【0009】
この場合、収納空間に配置された貴金属粘土を板状押圧体の一端部で押圧しながら、この板状押圧体を前記回転軸線回りに回転させたときに、貴金属粘土のうち前記円形軌跡面と対向する部分を、板状押圧体の一端部に形成された傾斜凹み部により、収納空間の内周面側に向けて案内させることが可能になる。したがって、成形時に収納空間の内周面の全域に亙って貴金属粘土を密接させて、この粘土と収納空間の内周面との間に隙間を生じさせることなく型成形することが可能になり、高精度かつ高密度でしかも表面欠陥のない未焼成リング成形体を確実に形成することができる。また、未焼成リング成形体を成形する際に、板状押圧体に大きな回転駆動力を作用させなくても、前記傾斜凹み部により貴金属粘土のうち前記円形軌跡面と対向する部分を収納空間の内周面に向けて良好に押し退けることが可能になり、この成形を自動化する阻害要因を軽減させることができる。
【0010】
また、前記閉状態のパッケージを、互いに接近離間可能に設けられた一対の型の型面により、第1、第2板状体における重ね合わせ面と反対側の裏面側からそれぞれ挟み込むとともに、前記型面のうち前記貫通孔の開口部と対向する位置に形成された導入孔を介して、前記貫通孔と外部とを連通させた状態で、前記導入孔および前記貫通孔を介して前記収納空間に貴金属粘土を配置し、その後、前記板状押圧体の一端部を、その両側面を前記導入孔および前記貫通孔の各内周面に摺接させつつ前記収納空間に差し込み、パッケージに封入された前記未焼成リング成形体を形成してもよい。
【0011】
この場合、前記パッケージを一対の型で挟み込んだ状態で未焼成リング成形体を成形するので、成形時にパッケージの配置位置を板状押圧体に対して安定させることが可能になり、前記の作用効果が確実に奏効されることになる。
【0012】
さらに、前記収納凹部は、前記第2板状体において重ね合わせ面と反対側の裏面側に膨出して形成され、前記一対の型の型面により、前記パッケージを、第1、第2板状体の重ね合わせ面と反対側の裏面側からそれぞれ挟み込む際、前記第2板状体の裏面の前記膨出した部分を、前記型面に形成された凹部に収納してもよい。
この場合、前記成形時に、型面と第2板状体の裏面との接触面積を大きくすることが可能になり、パッケージの配置位置を板状押圧体に対してさらに安定させることができる。
【0013】
さらにまた、前記収納凹部は第1、第2板状体の各重ね合わせ面にそれぞれ形成され、前記閉状態で、これらの収納凹部が互いに対向することによって前記収納空間が形成されるパッケージを用いてもよい。
【0014】
この場合、パッケージを開いて収納空間を半割にしたときに、第1、第2板状体の収納凹部のうち、一方の収納凹部に未焼成リング成形体が配置されて、この収納凹部の形成されている重ね合わせ面から未焼成リング成形体の少なくとも一部が突出していることになる。したがって、この突出部分を引張ることで収納凹部から未焼成リング成形体を容易に取り出すことが可能になる。特に、例えば収納空間の内周面が、径方向外方へ凹とされた凹曲面状とされて、前記未焼成リング成形体が、その外周面が径方向外方へ凸の曲面状とされた、いわゆる甲丸リング用の未焼成リング成形体であっても、これをパッケージから容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る未焼成リング成形体の製造方法によれば、歩留まりを悪化させたり、強度を低下させることなく高精度に未焼成リング成形体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。本実施形態の未焼成リング成形体の製造装置10は、図1から図5に示されるように、互いに接近離間可能に設けられ、互いに対向した金型面11a、14aにより後述するパッケージPを挟み込み可能とされた一対の金型11、14と、平面視矩形状とされてその長手方向の一端部(以下、「先端部」という)13aがパッケージPの収納空間12に差し込まれる板状押圧体13とを備え、パッケージPを金型面11a、14aにより挟み込んだ状態で、貴金属粘土Wが配置されたパッケージPの収納空間12内で未焼成リング成形体W3が成形されるようになっている。
【0017】
一対の金型11、14は固定型11と可動型14とを備え、これらの金型11、14の金型面11a、14aには、各面11a、14aに沿った方向における中央部にそれぞれ、凹部11b、14bが形成されている。また、固定型11の金型面11aには、この面11aに沿った方向における外周縁部に可動型14に向けて凸とされた複数の位置決めピン11cが立設されている。一方、可動型14の金型面14aには、位置決めピン11cと対向する位置に、これらのピン11cより大径の孔14cが穿設されており、型締め時に位置決めピン11cが孔14cに挿入されるようになっている。さらに可動型14には、金型面14aと反対側の裏面から凹部14bに開口する導入孔14dが穿設されている。
以上の固定型11および可動型14に形成された凹部11b、14b、および導入孔14dは全て平面視円形状とされ、それぞれの円形状の中心軸は後述する板状押圧体13の回転中心軸線Oに略一致している。
【0018】
板状押圧体13は平面視長方形の板状体とされ、この板状押圧体13の長手方向と平行に延び、かつ板状押圧体13の幅方向中央部を通る回転軸線O回りに回転可能に支持されている。そして、板状押圧体13は、その先端面13fが導入孔14dに対向し、かつその他端部が図示されない駆動部に連結され、この駆動部により回転軸線O回りに回転可能とされるとともに、型締め時の金型面11a、14aに対して進退可能とされている。また、先端部13aの、板状押圧体13の表面13bおよび裏面13cに沿った方向における前記長手方向に直交する方向の大きさ、つまり幅は、導入孔14dの内径と同等とされている。
【0019】
ここで、本実施形態では、板状押圧体13は、前記回転軸線Oを中心として左回り若しくは右回りに回転可能に設けられ、板状押圧体13の表裏面13b、13cそれぞれの平面視においてその先端部13aのうち前記回転中心軸線Oを基準として左側の部分若しくは右側の部分に、この部分に連なる板状押圧体13の側面13eから前記回転軸線Oに向かうに従い漸次深さが浅くなる傾斜凹み部15が形成されている。
【0020】
本実施形態では、板状押圧体13は前記回転軸線Oを中心として右回りに回転可能とされ、この板状押圧体13の表裏面13b、13cそれぞれの平面視においてその先端部13aのうち前記回転中心軸線Oを基準として右側の部分13dに傾斜凹み部15が形成されている。また、この傾斜凹み部15は、板状押圧体13の先端面13fおよび前記側面13eの双方に開口している。さらに、この傾斜凹み部15の深さは前記長手方向の全域で同等とされている。
【0021】
この傾斜凹み部15の前記回転軸線Oが延びる方向における大きさは、後述するパッケージPの収納空間12の高さ以上、つまり成形する未焼成リング成形体W3の中心軸線方向の大きさ以上とされている。また、傾斜凹み部15は、前記表面13bおよび裏面13cの前記右側の部分13dにおける板状押圧体13の幅方向において、板状押圧体13の側面13e側の端から前記回転軸線Oが位置する部分にまで至って形成されている。さらに、傾斜凹み部15の最深部としての前記側面13e側の端における深さは、この板状押圧体13の表面13bと裏面13cとの距離、つまり板状押圧体13の厚さの約半分の大きさとされている。さらにまた、傾斜凹み部15の前記長手方向における後端部15aは、先端側に向かうに従い漸次その深さが深くなる傾斜面とされている。
【0022】
ここで、パッケージPは、第1板状体21と第2板状体22とがそれぞれの一端部にヒンジ(連結部)23を介して連結されて、これらの第1、第2板状体21、22の重ね合わせ面21b、22bが開閉可能とされ、これらの重ね合わせ面21b、22bを重ね合わせた閉状態で両重ね合わせ面21b、22b間に収納空間12が形成され、少なくとも第1板状体21には、収納空間12に開口し、かつこの収納空間12の内径よりも小径とされた貫通孔21cが形成される一方、第2板状体22の重ね合わせ面22bには、収納空間12を構成する収納凹部22cが形成されている。このパッケージPは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料により一体的に形成されている。
【0023】
本実施形態では、第1、第2板状体21、22は、互いの重ね合わせ面21b、22bがその厚さ方向で接近離間するようにヒンジ23を中心に回動自在とされている。また、貫通孔21cは、第1板状体21のみならず、第2板状体22にも形成され、さらに、収納凹部22cは、第2板状体22のみならず、第1板状体21にも形成され、前記閉状態で、これらの収納凹部22c、22cが互いに対向することによって収納空間12が形成されるようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態では、収納凹部22c、22cの内周面は、第1、第2板状体21、22における重ね合わせ面21b、22bと反対側の裏面21d、22d側から重ね合わせ面21b、22bに向かうに従い漸次、凹曲面状に拡径されている。すなわち、この収納凹部22c、22cの内周面は、重ね合わせ面21b、22bに位置する部分が最も内径が大きい凹曲面状とされている。これにより、前記閉状態で収納凹部22c、22cが対向して形成される収納空間12の内周面は、重ね合わせ面21b、22bに位置する部分において内径が最大となる凹曲面状とされている。
【0025】
収納空間12および貫通孔21c、21cは平面視円形状とされ、前記閉状態で、それぞれの円形状の中心軸が同軸上に位置されるようになっている。これにより、収納空間12が貫通孔21c、21cを介して外部に連通されるようになっている。また、貫通孔21c、21cの内径は、可動型14の導入孔14dの内径と同等とされている。さらに、収納凹部22c、22cは、第1、第2板状体21、22の裏面21d、22d側に膨出しており、第1、第2板状体21、22の板厚は、その表裏面の全域において略同等とされている。
【0026】
なお、このパッケージPには、前記閉状態で、収納空間12の外方位置にその厚さ方向に貫通する孔P1が複数形成されている。
以上の各構成要素のうち、少なくとも貴金属粘土Wに接触する部分、すなわち板状押圧体13の先端部13aの外表面、固定型11の凹部11bの底面およびパッケージPは、摩擦係数の小さい離型性の優れた材質によりコーティング若しくは形成されている。このような材質として、例えば摩擦係数が約0.09とされた超高分子量ポリエチレンあるいはシリコン等が挙げられる。
【0027】
すなわち、固定型11、板状押圧体13およびパッケージPを摩擦係数の小さい離型性に優れた材質、例えば超高分子量ポリエチレン等により一体的に形成してもよく、また、固定型11、板状押圧体13およびパッケージPを他の材料により一体的に形成し、少なくとも貴金属粘土Wが接触する表面を、摩擦係数の小さい離型性に優れた材質、例えばシリコン等によりコーティングするようにしてもよい。
【0028】
次に、以上のように構成された未焼成リング成形体の製造装置10により未焼成リング成形体を成形する方法について説明する。
まず、図1に示されるように、第1、第2板状体21、22の重ね合わせ面21b、22bを重ね合わせて閉じたパッケージPを、第2板状体22の裏面22dにおいて収納凹部22cと対応する膨出部分を固定金型面11aの凹部11b内に配置し、かつ孔P1に位置決めピン11cを挿入した状態で、この金型面11a上に載置する。
【0029】
次に、図2に示されるように、可動型14を固定型11に向けて前進移動して型締めすることによって、パッケージPを、第1、第2板状体21、22の裏面21d、22d側から金型面11a、14aにより挟み込むとともに、第1板状体21の裏面21dにおいて収納凹部22cと対応する膨出部分を可動金型面14aの凹部14b内に配置し、かつ位置決めピン11cを可動金型面14aの孔14cに挿入する。
【0030】
以上より、可動型14の導入孔14dと、パッケージPの収納空間12および貫通孔21c、21cとが、前記回転軸線O上に同軸的に配置され、導入孔14dおよび第1板状体21の貫通孔21cを介して収納空間12が外部と連通される。
【0031】
そして、導入孔14dから第1板状体21の貫通孔21cを介して貴金属粘土Wを収納空間12に配置した後に、板状押圧体13を収納空間12に向けて前進移動して、この板状押圧体13の先端部13aを、その両側面13e、13eを導入孔14dおよび第1板状体21の貫通孔21cの各内周面に摺接させつつ収納空間12に差し込む。このように、板状押圧体13の先端部13aを収納空間12に差し込みながら、板状押圧体13を前記回転軸線Oを中心に回転させることによって、貴金属粘土Wのうち前記回転により板状押圧体13の先端面13fがなす円形軌跡面と対向する部分を、この先端部13aで押圧しながら、収納空間12の内周面側に向けて押し退ける(図3)。
【0032】
この際、板状押圧体13の先端面13fによってこの板状押圧体13の他端部側に向けて掻き取られた貴金属粘土Wが、板状押圧体13の傾斜凹み部15により、この傾斜凹み部15に連なる前記側面13e側、つまり収納空間12の内周面に向けて流されることになる。したがって、板状押圧体13が前進移動される過程において、貴金属粘土Wのうち前記円形軌跡面と対向する部分が収納空間12の内周面側に向けて押し退けられて貫通する内径部W1とされる一方、収納空間12に向けて押し退けられた部分がこの収納空間12の内周面側に押付けられて外径部W2とされる。以上より、貴金属粉末がバインダーで固められるとともに、貴金属粘土Wが型成形されて周方向に一体的に連続したリング状とされ、かつ外周面が径方向外方へ凸の曲面状とされた、いわゆる甲丸リング用の未焼成リング成形体W3が形成される。
【0033】
この未焼成リング成形体W3が形成される過程において、板状押圧体13の両側面13e、13eは、第1板状体21の貫通孔21cおよび導入孔14dの各内周面に摺接し続ける。また、板状押圧体13の先端面13fが第2板状体22の貫通孔21cを通過し固定型11の凹部11bの底面に当接してこの底面に貴金属粘土Wが略なくなったときに、板状押圧体13の前進移動および回転を停止させる。
【0034】
そして、図4に示されるように、板状押圧体13を収納空間12に対して後退移動させるとともに、可動型14を固定型11に対して後退移動させて型開きした後に、収納空間12に未焼成リング成形体W3が配置されたパッケージPを可動型14側に移動して、位置決めピン11cから外し、未焼成リング成形体W3をパッケージPごと金型11、14から取り外す。
【0035】
その後、パッケージPに図示されない蓋体を取り付けて、貫通孔21c、21cを塞ぎ、パッケージPに封入された未焼成リング成形体W3を形成する。ここで、蓋体として例えばピンの一端部に鍔部が形成されたもの採用し、これを貫通孔21c、21cおよび未焼成リング成形体W3の内径部W1に連続的に嵌合させるようにしてもよく、あるいは単なるピンをこのように嵌合させるようにしてもよい。さらに、第1、第2板状体21、22の裏面21d、22dにおける貫通孔21c、21cの開口部に粘着テープを着脱自在に貼り付けてもよい。
【0036】
そして、このパッケージPを開封するには、前記蓋体をパッケージPから取り外し、その後、第1、第2板状体21、22を、互いの重ね合わせ面21b、22bがその厚さ方向で離間するようにヒンジ23を中心に回動させて、図6に示されるように、収納空間12をその高さ方向で半割にする。そして、第1、第2板状体21、22の各収納凹部22cのうち、未焼成リング成形体W3が配置されている方の収納凹部22cから、未焼成リング成形体W3のうちこの収納凹部22cの形成された重ね合わせ面21b、22bに対して突出している部分を引張り、この未焼成リング成形体W3を取り出す。
【0037】
なお、このようにパッケージPから取り出された未焼成リング成形体W3は、例えばその外周面に人手によりデザイン画が描かれた後に、そのデザイン画に沿ってナイフ、ドリル、リュータ等で削られて彫りが入れられ、その後、焼成される。そして、この焼成後のリング成形体W3の外表面に研磨加工等が施されることによって焼結リングが形成される。
【0038】
ここで、貴金属粘土Wとしては、例えば銀粉末と有機系バインダーと油脂とを含有する銀粘土を採用することができる。
銀粉末としては、例えば平均粒径:2μm以下のAg微細粉末:15〜50質量%を含有し、残部が平均粒径:2μmを越え100μm以下のAg粉末からなる混合粉末で構成された第1の銀粉末、あるいは平均粒径:0.5〜1.5μmのAg微細粉末:15〜50質量%を含有し、残部が平均粒径:3〜20μmのAg粉末からなる混合粉末で構成された第2の銀粉末を採用することができる。そして、銀粘土としては、第1の銀粉末または第2の銀粉末:95〜99質量%、有機系バインダ−:0.8〜4.8質量%、油脂:0.1〜0.5質量%を含有する構成を採用することができる。
【0039】
ここで、平均粒径:2μm以下のAg微細粉末は、化学還元法等により製造した球状のAg微細粉末であることが一層好ましい。このAg微細粉末の含有量を15〜50質量%に限定した理由は、平均粒径:2μm以下のAg微細粉末の含有量が15質量%未満であると、得られる焼結リングの機械的強度が弱くなるので好ましくなく、一方、平均粒径:2μm以下のAg微細粉末の含有量が50質量%を越えると、粘土状にするための有機系バインダーの量が増加し、焼成時の収縮率が大きくなるので好ましくないことによるものである。平均粒径:2μm以下を有するAg微細粉末の含有量の一層好ましい範囲は20〜45質量%である。さらに第1、第2の銀粉末に含まれる残りのAg粉末を平均粒径:2μmを越え100μm以下のAg粉末としたのは、2μm以下では、得られる焼結リングの機械的強度が弱くなり、100μmを越えると、例えば未焼成リング成形体W3の外周面に彫刻等を施したときに、この加工部分のみならずその周辺部までを含めた広い部分が削り落とされる場合があり微細な模様等を彫刻し難くなる等、粘土としての造形性が悪くなるという理由によるものである。
【0040】
また、銀粘土に含まれる第1、第2の銀粉末の量を95〜99質量%に限定したのは、95質量%未満では焼成時の収縮率が大きくなるので好ましくなく、一方、99質量%を越えて含有すると未焼成リング成形体W3の形状保持性が悪くなり、未焼成リング成形体W3を流通過程においたときに変形し易くなったり、その取り扱い性が悪化するおそれがあるので好ましくないからである。
【0041】
銀粘土に含まれる有機系バインダーは、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉などいかなるバインダーを使用してもよいが、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースが最も好ましい。これらバインダーは、加熱すると速やかにゲル化して未焼成リング成形体W3の形状保持を容易にするために添加するが、その添加量は0.8質量%未満では効果がなく、一方、4.8質量%を越えて含有すると、未焼成リング成形体W3に微細なひび割れが発生し、焼結リングの光沢も減少するので好ましくない。したがって、銀粘土に含まれるバインダーは、0.8〜4.8質量%に定めた。
【0042】
さらに、銀粘土に含まれる油脂の添加量は0.1〜0.5質量%が好ましい。添加する油脂は有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン、)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)などがある。
【0043】
なお、貴金属粘土Wとして前述した銀粘土を採用した場合には、未焼成リング成形体W3を例えば電気釜、バーナ、電子レンジあるいはガスコンロ等により約600℃〜900℃で5分〜30分間加熱することで焼成することができる。また、未焼成リング成形体W3は焼成前であれば、その外周面に彫りを入れたときに失敗したとしても、貴金属粘土Wをその部位に埋め込んだり、水で濡らして馴染ませる等してその部位を平滑面に修復した後に、再度彫りを入れることができる。
【0044】
以上説明したように本実施形態に係る未焼成リング成形体の製造方法によれば、収納空間12に貴金属粘土Wを配置した後に、板状押圧体13の先端部13aを収納空間12に差し込み、板状押圧体13を収納空間12の内部に向けて前進移動させながら前記回転軸線Oを中心に回転させることによって、貴金属粘土Wのうち板状押圧体13の前記回転により先端面13fがなす円形軌跡面と対向する部分を、板状押圧体13の先端部13aで押圧しながら、収納空間12の内周面側に向けて押し退けることが可能になる。したがって、収納空間12に配置した貴金属粘土Wのうち前記円形軌跡面と対向する部分が貫通する内径部W1とされる一方、収納空間12の内周面側に向けて押し退けられた部分がこの内周面側に押付けられて外径部W2とされることによって型成形された未焼成リング成形体W3が形成されることになる。
【0045】
以上より、接合部を有しない一体的な未焼成リング成形体W3が得られ、その全域に亙って均一な強度を有するとともに、高密度かつ表面欠陥のない高精度な未焼成リング成形体W3を形成することができる。また、未焼成リング成形体W3を切断や切削等することなく型成形により形成するので、このような未焼成リング成形体W3を歩留まりおよび生産効率を向上させて形成することができる。
【0046】
さらに、以上のような成形をパッケージPの収納空間12内で行い、成形後に板状押圧体13を収納空間12および貫通孔21cから抜き出し、その後、前記蓋体をパッケージPに取り付けて貫通孔21cを塞ぐことにより、パッケージPに封入された未焼成リング成形体W3が得られることになるので、例えば成形後に未焼成リング成形体を成形型等から取り出して、この成形体をパッケージに封入するといった一連の工程を別途設ける必要がないため、生産効率をより一層向上させることができる。
【0047】
さらにまた、このようにパッケージPに封入する工程を別途設ける必要がないため、未焼成リング成形体W3を形成した後、パッケージPに封入するまでの間に、その成分や物性がばらつくのを防ぐことが可能になり、高品質の未焼成リング成形体W3を形成することができる。
【0048】
また、本実施形態では、板状押圧体13に傾斜凹み部15が形成されているので、収納空間12に配置された貴金属粘土Wを板状押圧体13の先端部13aで押圧しながら、この板状押圧体13を前記回転軸線O回りに回転させたときに、貴金属粘土Wのうち前記円形軌跡面と対向する部分を、傾斜凹み部15により収納空間12の内周面に向けて案内させることが可能になる。したがって、成形時に収納空間12の内周面の全域に亙って貴金属粘土Wを密接させて、この粘土Wと収納空間12の内周面との間に隙間を生じさせることなく型成形することが可能になり、高精度かつ高密度でしかも表面欠陥のない未焼成リング成形体W3を確実に形成することができる。
【0049】
また、未焼成リング成形体W3を成形する際に、板状押圧体13に大きな回転駆動力を作用させなくても、傾斜凹み部15により貴金属粘土Wのうち前記円形軌跡面と対向する部分を収納空間12の内周面に向けて良好に押し退けることが可能になり、この成形を自動化する阻害要因を軽減させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、傾斜凹み部15の前記後端部15aが前記傾斜面とされているので、板状押圧体13により貴金属粘土Wを押圧等したときに、傾斜凹み部15の前記後端部15aに貴金属粘土Wが食い込むことによって、板状押圧体13に多大な回転駆動力を付与する必要が生ずるのを回避することができるとともに、この後端部15aに貴金属粘土Wが密着して離れ難くなるのを防ぐことができる。したがって、以上の成形を自動化する阻害要因をさらに軽減させることができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態では、パッケージPを固定型11および可動型14で挟み込んだ状態で未焼成リング成形体W3を成形するので、成形時にパッケージPの配置位置を板状押圧体13に対して安定させることが可能になり、前記の作用効果が確実に奏効されることになる。
【0052】
また、成形時に、第2板状体22の裏面22dにおいて収納凹部22cと対応する膨出部分を固定金型面11aの凹部11b内に配置するとともに、第1板状体21の裏面21dにおいて収納凹部22cと対応する膨出部分を可動金型面14aの凹部14b内に配置するので、この成形時に、金型面11a、14aと第1、第2板状体21、22の裏面21d、22dとの接触面積を大きくすることが可能になり、パッケージPの配置位置を板状押圧体13に対してさらに安定させることができる。
【0053】
さらに、パッケージPは、収納凹部22cが第1、第2板状体21、22の各重ね合わせ面21b、22bにそれぞれ形成され、これらの重ね合わせ面21b、22bが重ね合わされたときに、これらの収納凹部22cが互いに対向することによって収納空間12が形成される構成とされているので、パッケージPを開いて収納空間12を半割にしたときに、第1、第2板状体21、22の収納凹部22c、22cのうち、一方の収納凹部22cに未焼成リング成形体W3が配置されて、この収納凹部22cの形成されている重ね合わせ面21b、22bから未焼成リング成形体W3の一部が突出していることになる。したがって、この突出部分を引張ることでこの収納凹部22cから未焼成リング成形体W3を容易に取り出すことが可能になる。これにより、未焼成リング成形体W3が本実施形態で示した前記甲丸リング用のものであっても、このリング成形体W3を収納凹部22cから容易に取り出すことができる。
【0054】
さらにまた、本実施形態では、第1、第2板状体21、22の収納凹部22c、22cの双方に、前記閉じた状態で同軸上に位置される貫通孔21c、21cが形成され、前記成形の最後の段階で板状押圧体13の先端面13fは、固定型11に形成された凹部11bの底面に当接するようになっているので、パッケージPが損傷したりするのを防ぐために、パッケージPおよび板状押圧体13の材質や、板状押圧体13の前進駆動力および回転駆動力等といった成形条件が制限されるのを防ぐことが可能になり、以上の成形を自動化する阻害要因をより一層低減させることができる。
【0055】
そして、以上のように形成された未焼成リング成形体W3は、全域に亙って均一な強度を有し、しかも高精度とされ、さらに、前述の銀粘土により形成された場合には、未焼成リング成形体W3に微細なひび割れを発生させることなく、良好な形状保持性や造形性を具備させることができるとともに、焼成時の収縮率を小さくすることも可能になる。さらに、このような未焼成リング成形体W3を焼成して得られた焼結リングでは、良好な機械的強度や光沢を具備させることができる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、板状押圧体13に傾斜凹み部15を形成したが、この傾斜凹み部15は必ずしも形成しなくてもよい。すなわち、表裏面13b、13cの先端部13aが平坦面とされた板状押圧体13を採用してもよい。
さらに、前記実施形態では、いわゆる甲丸リング用の未焼成リング成形体W3を形成する装置10および方法について説明したが、この成形体の外周面形状は特に限定されるものではなく、例えば外周面が前記回転軸線Oと平行に延びる、いわゆる平打ちリング用の未焼成リング成形体を形成してもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、凹部11b、14bに第1、第2板状体21、22の裏面21d、22dにおける前記膨出部分を配置して、パッケージPを前記裏面21d、22dの全域に亙って固定金型面11aおよび可動金型面14aにより挟み込んだ状態で未焼成リング成形体W3を形成したが、例えば、第1、第2板状体21、22の裏面21d、22dにおける外周縁部のみを挟み込んだり、あるいはパッケージPの側面を支持した状態で未焼成リング成形体W3を形成してもよい。
【0058】
さらに、前記実施形態では、収納凹部22cを第2板状体22のみならず第1板状体21にも形成したが、第2板状体22にのみ形成するようにしてもよい。この場合において、第1、第2板状体21、22は、各重ね合わせ面21b、22bに直交する軸線を中心としてこれらの面21b、22bに沿った方向にスライド回動可能に連結部を介して連結されてもよい。
また、収納凹部22cを、第1、第2板状体21、22の裏面21d、22d側に膨出させたが、これに代えて、重ね合わせ面21b、22bに対して凹み、その裏面21d、22dは平坦面とされたパッケージPを採用してもよい。
【0059】
さらに、固定型11および可動型14は、金属により形成された金型に限らず、例えば樹脂材料により形成されたプラスチック型を採用してもよい。
さらにまた、前記実施形態では、貫通孔21cを第1板状体21のみならず第2板状体22にも形成したが、パッケージPのうち、板状押圧体13の先端面13aと対向する第1板状体21にのみ形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
歩留まりを悪化させたり、強度を低下させることなく高精度に未焼成リング成形体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した未焼成リング成形体の製造方法を実施する装置を縦断面視したときの概略構成図であって、この製造方法の第1工程図を示すものである。
【図2】図1に示す未焼成リング成形体の製造装置を用いた製造方法の第2工程図を示すものである。
【図3】図1に示す未焼成リング成形体の製造装置を用いた製造方法の第3工程図を示すものである。
【図4】図1に示す未焼成リング成形体の製造装置を用いた製造方法の第4工程図を示すものである。
【図5】図1から図4に示す未焼成リング成形体の製造装置の板状押圧体の先端面の平面図である。
【図6】図1から図4に示す未焼成リング成形体の製造装置に設置されたパッケージを開いた状態を示す(a)平面図、および(b)断面側面図である。
【符号の説明】
【0062】
11 固定型(一対の型)
11a 固定金型面(型面)
12 収納空間
13 板状押圧体
13a 板状押圧体の先端部(一端部)
13b 板状押圧体の表面
13c 板状押圧体の裏面
13e 板状押圧体の側面
13f 板状押圧体の先端面(一端面)
14 可動型(一対の型)
14a 可動金型面(型面)
14d 導入孔
15 傾斜凹み部
21 第1板状体
21b、22b 重ね合わせ面
21c 貫通孔
21d 第1板状体の裏面
22 第2板状体
22c 収納凹部
22d 第2板状体の裏面
23 ヒンジ(連結部)
O 回転軸線
P パッケージ
W 貴金属粘土
W3 未焼成リング成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粘土を成形して貴金属粉末がバインダーで固められたリング成形体を形成する未焼成リング成形体の製造方法であって、
第1板状体と第2板状体とがそれぞれの一端部に連結部を介して連結されて、これらの板状体の各重ね合わせ面が開閉可能とされ、これらの重ね合わせ面を重ね合わせた閉状態で両重ね合わせ面間に収納空間が形成され、少なくとも第1板状体には、前記収納空間に開口し、かつこの収納空間の内径よりも小径とされた貫通孔が形成される一方、第2板状体の重ね合わせ面には、前記収納空間を構成する収納凹部が形成されたパッケージを用い、
前記閉状態とされたパッケージの前記貫通孔から前記収納空間に貴金属粘土を配置した後に、
平面視矩形状の板状押圧体の長手方向における一端部の両側面を、前記貫通孔の内周面に摺接させつつ前記収納空間に差し込みながら、この板状押圧体を、前記長手方向と平行に延び、かつこの板状押圧体の幅方向中央部を通る回転軸線を中心に回転させることによって、前記貴金属粘土のうち板状押圧体の前記回転により前記一端部側の端面がなす円形軌跡面に対向する部分を、板状押圧体の一端部で押圧しながら、前記収納空間の内周面側に向けて押し退けて未焼成リング成形体を形成した後に、
前記板状押圧体の一端部を前記収納空間および前記貫通孔から抜き出し、その後、蓋体をパッケージに取り付けて前記貫通孔を塞ぎ、パッケージに封入された前記未焼成リング成形体を形成することを特徴とする未焼成リング成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の未焼成リング成形体の製造方法において、
前記板状押圧体は、前記回転軸線を中心として左回り若しくは右回りに回転可能に設けられ、前記板状押圧体の表面の平面視において前記一端部のうち前記回転中心軸線を基準として左側の部分若しくは右側の部分には、この部分に連なる板状押圧体の側面から前記回転軸線に向かうに従い漸次深さが浅くなる傾斜凹み部が形成されていることを特徴とする未焼成リング成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の未焼成リング成形体の製造方法において、
前記閉状態のパッケージを、互いに接近離間可能に設けられた一対の型の型面により、第1、第2板状体における重ね合わせ面と反対側の裏面側からそれぞれ挟み込むとともに、前記型面のうち前記貫通孔の開口部と対向する位置に形成された導入孔を介して、前記貫通孔と外部とを連通させた状態で、前記導入孔および前記貫通孔を介して前記収納空間に貴金属粘土を配置し、その後、前記板状押圧体の一端部を、その両側面を前記導入孔および前記貫通孔の各内周面に摺接させつつ前記収納空間に差し込み、パッケージに封入された前記未焼成リング成形体を形成することを特徴とする未焼成リング成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の未焼成リング成形体の製造方法において、
前記収納凹部は、前記第2板状体において重ね合わせ面と反対側の裏面側に膨出して形成され、前記一対の型の型面により、前記パッケージを、第1、第2板状体の重ね合わせ面と反対側の裏面側からそれぞれ挟み込む際、前記第2板状体の裏面の前記膨出した部分を、前記型面に形成された凹部に収納することを特徴とする未焼成リング成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の未焼成リング成形体の製造方法において、
前記収納凹部は第1、第2板状体の各重ね合わせ面にそれぞれ形成され、前記閉状態で、これらの収納凹部が互いに対向することによって前記収納空間が形成されるパッケージを用いることを特徴とする未焼成リング成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186768(P2007−186768A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6943(P2006−6943)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】