説明

未精製ガスフィード流のための選択的水素化触媒

【課題】特にフロントエンド選択的水素化用の未精製ガスフィード流中における、アセチレン類及びジオレフィン類を選択的に水素化するための触媒。
【解決手段】触媒は、表面積が2〜20m2/gの低表面積の担体とパラジウムとIB族金属とを含有する。担体の細孔の細孔容積は0.4cc/g以上で、細孔の細孔容積の90%以上は細孔径が500Å以上の細孔中に含まれていて、全細孔容積の1〜2%は細孔径が500〜1000Åの細孔中に含まれる。パラジウムは触媒の0.01〜0.1重量%を占め、IB族金属は触媒の0.005〜0.6重量%を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択的水素化触媒、より詳しくは高細孔容積で特異な細孔容積分布を有する、IB族金属を助触媒とする改善されたパラジウム触媒に関する。本発明の触媒は、オレフィン系フィード流中、特にC3、C4、C5、及び痕跡量のC6以上の炭化水素を含有する未精製ガスフィード流中のブタジエン、アセチレン類、ジオレフィン類、及び痕跡量の他のかかる高不飽和炭化水素不純物の選択的水素化用に設計されている。本発明はまたこの触媒の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和炭化水素類の製造は通常は各種の炭化水素類のクラッキングを含む。この方法は、目的生成物より不飽和度が高い炭化水素不純物を含む粗生成物を生ずることが多い。これは特に、C2、C3、C4、C5、及び痕跡量のC6以上の炭化水素、並びに水素及びメタンを含有するクラッキング設備からの未精製ガスフィード流において問題となる。このような未精製ガスフィード流は1,3−ブタジエン、メチルアセチレン、プロパジエン、アセチレン、イソプレン、及び痕跡量の他のこの種の不飽和炭化水素不純物といった不飽和度の高い炭化水素不純物を含有することがある。
【0003】
このような不飽和炭化水素不純物を炭化水素フィード流から分留により完全に除去することはきわめて困難なことが多い。さらに、これらの高不飽和の炭化水素不純物を、目的物である不飽和炭化水素の著しい水素化も同時に起こさずに水素化することは、工業的には困難であることが多い。
【0004】
望ましくない高不飽和炭化水素類を除去するために一般に利用されている気相選択的水素化法は、「フロントエンド」水素化と「テールエンド」水素化の2種類に大別される。
「フロントエンド」水素化は、最初のクラッキング工程からの粗製ガスを、たいていは水蒸気及び凝縮性有機物だけを除去した後、水素化触媒上に送るものである。粗製ガスは比較的多量の水素及び不飽和炭化水素類の混合物を含んでいる。未精製ガスフィード流中のこれらの生成物としては、C2、C3、C4、C5、及び痕跡量のC6以上の炭化水素類が挙げられ、それらは乾燥状態又は湿った状態でよい。典型的には、水素ガス濃度は粗製ガス中に存在している不純物の完全な水素化に必要な化学量論量より多い。過剰の水素ガスがフィード流中のエチレンを水素化してしまう危険性を最小限にするため、使用する水素化触媒は非常に選択性でなければならない。また、フロントエンド反応では、エチレンの水素化が「ランナウェイ」と呼ばれる、高温に達する熱的暴走に至ることがあるため、触媒が損傷する危険性がある。ランナウェイはエチレンの著しい損失も生ずることがある。
【0005】
「テールエンド」水素化では、粗製ガスは水素化の前に分留されて、濃縮された生成物流とする。その後、必要なら、不純物の完全な水素化に必要な量より若干過剰の水素が存在するように、この生成物流に水素を添加する。テールエンド方式では、触媒が失活する傾向がより大きく、従って触媒の定期的な再生が必要となる。水素の添加量を調整して選択性を維持することができるものの、ポリマーの生成がこの方法の大きな問題点の1つとなる。
【0006】
選択的水素化反応に対して好ましい1つの触媒は、低表面積アルミナのような低表面積担体に担持させたパラジウムを含有する。しかし、担持パラジウム触媒の問題点の1つは、普通の操業条件下では不純物が水素化されるだけでなく、エチレンの実質部分もエタンに転化されてしまうことである。また、これらのアルミナ担持パラジウム触媒は、触媒表面上に多量のオリゴマーが生成するため、長期間にわたる安定性が比較的低い。オリゴマー化(低重合化)の速度はフィード流混合物中にブタジエンが存在していると特に高くなる。さらに、この種のパラジウム触媒の性能は、メチルアセチレン、ブタジエン、イソプレン及び他の高不飽和化合物が存在していると、許容レベルに達しないことがある。これらの理由から、フィード混合物を触媒と接触させる前に、これらのより高分子量の化合物を通常は蒸留により除去する。
【0007】
触媒の特性を改善するため、エンハンサ(助触媒)がパラジウムに添加されることが多い。銅、銀、金、ゲルマニウム、錫、鉛、レニウム、ガリウム、インジウム、及びタリウムがかかるパラジウム水素化触媒用の助触媒又は改質剤として提案されている。
【0008】
低表面積担体材料上に銀添加成分と共にパラジウムを含有するエチレン精製用のアセチレン水素化触媒が米国特許第4,404,124;第4,409,410;第4,484,015;第5,488,024;第5,489,565;第5,648,576;第6,054,409並びに中国特許1299858に開示されている。
【0009】
具体的には、米国特許第6,054,409は、炭素数2又は3のアセチレン性化合物の対応するエチレン性化合物への選択的気相水素化用の触媒を開示している。この触媒は、パラジウム、IB族からの少なくとも1種の金属、場合により少なくとも1種のアルカリ若しくはアルカリ土類金属並びにアルミナから構成され、パラジウムの少なくとも80%とIB族からの元素の少なくとも80%は触媒の外面に存在し、IB金属/パラジウムの比は重量で0.4〜3である。
【0010】
また、米国特許第6,797,669は、無機酸化物担体上にパラジウム及びIB族金属助触媒が担持されており、有効成分が表面から300μm以内の深さの部分に均一に分布している選択的水素化用触媒を開示している。この触媒は特にC2〜C3留分、水素及びCOを含有するフィード流に適用可能である。
【0011】
さらに、米国特許第5,648,576は、約0.01〜0.5重量%のパラジウムと約0.001〜0.02重量%の銀とを含有するアセチレン化合物類の選択的水素化触媒を開示している。銀の80%以上が担体物体の表面近傍の薄層内に位置している。
【0012】
アセチレン類及びジオレフィン類の水素化に使用される、アルミナに担持させたパラジウム及びIB族金属(Cu,Ag,Au)を含有する触媒は英国特許第802,100及び米国特許第2,802,889にも提案されている。
【特許文献1】米国特許第6,054,409号
【特許文献2】米国特許第6,797,669号
【特許文献3】米国特許第5,648,576号
【発明の開示】
【0013】
パラジウム及び銀添加成分を含有する従来技術の選択的水素化触媒は、往々にして必要な選択性を示さず、フィード流から有用なオレフィン類の著しい損失を引き起こすことが非常に多い。この損失は特に、水素、メタン、一酸化炭素、並びにC4、C5、C6及びそれ以上の炭化水素類を含有する、乾燥又は湿潤の未精製ガスフィード流中で従来技術の選択的水素化触媒を使用する場合に問題となる。
【0014】
従って、本発明の1目的は、多様なアセチレン性及びジオレフィン性不純物を含有するC2、C3、C4、C5、C6及びそれ以上のオレフィン性フィード流の選択的水素化に有用な触媒を開示することである。
【0015】
本発明の別の目的は、高細孔容積で特異な細孔容積分布を有する無機担体上にIB族添加成分と共に担持させたパラジウムを含有する選択的水素化触媒を開示することである。
上記及びその他の目的は、本発明により開示される、アセチレン性及びジオレフィン性不純物を含有するオレフィン系フィード流、特に未精製ガスフィード流、中でもフロントエンド選択的水素化反応に使用するための選択的水素化触媒並びに選択的水素化触媒の製造方法により達成することができる。
【0016】
本発明は、オレフィン含有炭化水素フィード流中に含まれる各種の高不飽和炭化水素不純物の選択的水素化用の触媒である。この触媒は、無機担体中に導入した0.01〜0.1重量%のパラジウム及び0.005〜0.6重量%のIB族金属、好ましくは銀からなり、IB族金属:パラジウムの重量比が0.5:1〜6:1である。担体の表面積は2〜20m2/gであり、担体の細孔容積(孔隙量)は0.4cc/g以上であり、この細孔容積の90%以上、好ましくは95%以上は、細孔径が500Å以上の細孔中に含まれていて、細孔径が500〜1000Åの細孔の細孔容積は全細孔容積の1〜2%を占める。
【0017】
本発明はまた、アセチレン系及びジオレフィン系不純物を含有するフィード流中のこれらの不純物の選択的水素化用触媒の製造方法にも関する。この方法は、表面積が2〜20m2/gで、細孔容積が0.4cc/g以上であり、この細孔容積の90%以上が500Å以上の細孔径の細孔中に含まれており、細孔径が500〜1000Åの細孔の細孔容積が全細孔容積の1〜2%を占めるような細孔を持つ、適当な形状の担体材料を調製し、この担体にパラジウム化合物を、触媒中のパラジウム化合物の含有量が還元後に0.01〜0.1重量%となるように含浸させることを含む。好ましくは、パラジウムの90%以上を触媒の表面から250μm以内に存在させる。この方法はさらに、パラジウムを含浸させた担体に、IB族金属添加成分、好ましくは銀を、触媒中のIB族金属添加成分の含有量が還元後に触媒の0.005〜0.6重量%となり、かつIB族金属:パラジウムの重量比が0.5:1〜6:1となるように含浸させることを含む。
【0018】
本発明はさらにアセチレン系及びジオレフィン系不純物を含有する未精製ガスフィード流を上記触媒に通すことを含む、好ましくは低温で、好ましくは個々の成分の分離をしていない未精製ガスフィード流中における、アセチレン系及びジオレフィン系不純物の選択的水素化方法も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、オレフィン含有炭化水素未精製ガスフィード流中に存在するアセチレン類及びジオレフィン類といった各種不純物の選択的水素化用の触媒である。本発明さらに、フィード流、好ましくは未精製ガスフィード流中に含まれている、アセチレン類及びジオレフィン類といったこれらの不純物の選択的水素化に有用な触媒の製造方法も含む。
【0020】
本発明の触媒の担体は、アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化亜鉛、ニッケルスピネル、チタニア、ジルコニア、セリア、クロミア−アルミナ、酸化マグネシウム、酸化セリウム及びこれらの混合物といった任意の低表面積触媒担体でよい。好ましい担体は低表面積アルミナ担体である。「低表面積」担体とは、担体の表面積が、窒素による表面積測定法を用いて測定して20m2/g以下であることを意味し、この表面積は好ましくは2〜20m2/g、より好ましくは2〜10m2/g、最も好ましくは3〜5m2/gである。担体の細孔容積は、好ましくは0.4cc/g以上であり、より好ましくは0.45cc/g以上、最も好ましくは0.5cc/g以上である。さらに、この担体は、この細孔容積の90%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上が、細孔径500Å以上の細孔中に含まれていて、細孔径が500〜1000Åの細孔の細孔容積は全細孔容積の1〜2%となるように選択される。特に選択的水素化反応に対して高性能の触媒、具体的には選択性が高く、かつ製品である炭化水素類の損失が少ない触媒、を製造するには、選択した担体がこの特定の細孔容積及び細孔容積分布を有していることが重要である。
【0021】
触媒担体は、球形、円筒形、トリローブ(trilob、三方突出体)、タブレット(錠剤型)などの任意の適当な形状に成形することができる。1好適態様において、触媒担体は球形に成形される。触媒担体はまた任意の適当なサイズ、好ましくは直径が1〜5mm、より好ましくは1〜3mmの球形に成形することができる。
【0022】
パラジウムは、適正なパラジウム含有量を生ずる任意の慣用の手法により触媒担体中に導入することができる。1つの好ましい方法は、塩化パラジウムのようなパラジウム化合物の水溶液を触媒担体に含浸させる方法である。好ましくは、担体中へのパラジウム化合物の浸透深さを、パラジウム化合物の90%以上が触媒担体の表面から250μm以内に存在するように制御する。パラジウムの浸透深さの制御には、米国特許第4,484,015及び4,404,124(その内容をここに援用する)に開示されているような任意の適当な方法を使用することができる。
【0023】
パラジウム含浸後、含浸した材料を100〜600℃の温度で好ましくは3時間程度仮焼する。その後、パラジウム含有触媒前駆体中に含まれているパラジウム化合物を還元する。この還元は、ギ酸ナトリウム、ギ酸、ヒドラジン、アルカリ金属ホウ水素化物、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、デキストロースその他の慣用の湿式還元剤といった適当な湿式還元媒体を用いて湿式還元により行うことが好ましい。
【0024】
触媒前駆体材料を還元した後、それを脱イオン水で洗浄して、塩素イオンのようなハロゲンイオンを約100ppm以下のレベルになるまで除去する。還元した触媒組成物を次いで100〜600℃で十分な時間乾燥する。
【0025】
パラジウムを含浸させた触媒前駆体に次いで、添加成分としてAg、Cu及びAuのような1又は2以上のIB族金属の化合物をさらに含浸させる。これらの化合物は好ましくは、銀塩、金塩及び/若しくは銅塩又はこれらの混合物から選ばれる。好ましくは、この金属添加成分は銀塩として含浸させた銀である。パラジウム含浸触媒前駆体へのIB族添加成分の含浸は、パラジウム含浸触媒前駆体をIB族金属化合物の水溶液に浸漬するか、この水溶液を噴霧するといった任意の慣用の方法により行うことができる。例えば、IB族金属が銀である場合、1好適態様では、水溶液は硝酸銀水溶液である。含浸後、IB族金属添加成分が付着したパラジウム含浸触媒材料を100〜600℃の温度で3時間程度仮焼する。その後、触媒を還元するが、この還元は好ましくは80〜120℃で1時間程度水素により熱処理することによって行われる。
【0026】
触媒中のパラジウムの含有量は、触媒の全重量に基づいて、0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、最も好ましくは0.01〜0.03重量%である。IB族金属添加成分、好ましくは銀の添加量は、触媒の全重量に基づいて、0.005〜0.6重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%、最も好ましくは0.01〜0.12重量%である。触媒中に存在するIB族金属添加成分:パラジウムの重量比は0.5:1〜6:1、好ましくは1:1〜6:1、最も好ましくは1:1〜4:1である。
【0027】
最後の乾燥を終えると、得られたIB族金属添加成分を含有するパラジウム触媒は、選択的水素化反応器内において、例えば、特に個々の成分への分離を行っていない未精製ガスフィード流中のブタジエン、アセチレン類及びジオレフィン類といった不純物の選択的水素化のためにすぐに使用できる。
【0028】
本発明のIB族添加成分を含有するパラジウム触媒は、特に未精製ガスフィード流中において他の炭化水素類、H2及びCOと共存して含まれているアセチレン類及びジオレフィン類といった不純物の選択的水素化用に主に意図されている。この水素化法が未精製ガスフィード流のフロントエンド選択的水素化である場合、分離が行われていないフィード流は通常は実質量の水素、メタン、C2、C3、C4、C5、及び痕跡量のC6以上の炭化水素類、少量の一酸化炭素及び二酸化炭素、並びに1,3−ブタジエン、アセチレン類及びジオレフィン類といった各種の不純物を含有し、乾燥ガス又は湿潤ガスのいずれでもよい。選択的水素化反応の目標は、フィード流中に存在する製品となる目的の炭化水素の量を実質的に減少させずに、それに含有される不純物の量を実質的に低減させることである。
【0029】
使用にあたっては、本発明のIB族金属を助触媒とするパラジウム触媒を反応器に入れる。反応器内のフィード流の入口温度をアセチレンの水素化に十分な温度まで上げる。任意の適当な反応圧力を使用することできる。一般に、全圧は600〜6750kPaの範囲内であり、気時空間速度(GHSV)は1000〜14000リットル/触媒リットル/hrの範囲内である。
【0030】
本発明の触媒は気相、液相、又は気液混合相の用途に使用することができる。触媒の再生は、触媒を空気中で好ましくは500℃を超えない温度に加熱して、有機物、ポリマー又は炭化物を焼いて除去することにより行うことができる。
【0031】
本発明の触媒は、従来の触媒に比べて、メチルアセチレン、ブタジエン及びイソプレンといった不純物の改善された水素化を示す。これらのより高級なアセチレン類及びジオレフィン類の存在はエチレンの回収率を改善させる。この改善された性能特性は、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタジエン、イソプレン等の不純物を存在させない性能試験からは明らかとはならないことがある。
【実施例】
【0032】
(実施例1)(比較例)
ズード・ヘミー社製の市販触媒(商品名G−83C)を入手した。分析結果は、この触媒がアルミナ担体上に0.018重量%のパラジウム及び0.07重量%の銀を含有することを示した。この触媒の担体のBET表面積は4.3m2/gであった。この担体の全細孔容積は0.295cc/gであり、細孔容積分布はÅで次の通りであった。
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例2)
窒素法をもちいたBET表面積が3.5m2/gの特定のアルミナ球状体25gを、本発明の触媒担体用の担体として選択した。選択した担体材料の全細孔容積は0.519cc/gであり、細孔容積分布はÅで次の通りであった。
【0035】
【表2】

【0036】
球状触媒を次のようにして調製した。上記の特定のアルミナ担体の球状体を、パラジウム含有量が0.018重量%となるような濃度の塩化パラジウム溶液中に浸漬する。浸漬は、パラジウムの90%以上が球状体の表面から250μm以内に存在するようにパラジウムの浸透深さを制御して行う。パラジウムの含浸後、触媒材料を250℃で3時間仮焼する。触媒材料を次いで76℃(170°F)の温度に加熱された5%ギ酸ナトリウム水溶液中で約1時間湿式還元する。触媒材料を次いで71℃(160°F)の脱イオン水で、塩素イオンが除去(100ppm以下まで)されるように洗浄する。触媒材料を次いで121℃(250°F)で約18時間乾燥する。得られたパラジウム含有触媒前駆体に次に銀を含浸させる。これは、触媒材料の球状体を銀含有量が0.05重量%となるような濃度の硝酸銀水溶液中に浸漬することにより行う。触媒材料をその後454℃で3時間仮焼する。
【0037】
性能試験:パート1
次の表3は、比較例である実施例1と発明例である実施例2の比較を示す。これらの実施例の比較は、1448ppmのC22、79ppmのC26、18.3%のH2、295ppmのCO、35%のCH4、及び45%のC24を含有するフィード流を触媒に通すことにより行った。触媒の評価は、内径3/4インチの反応管によるベンチスケールの実験で、実験用に調製された模擬フロントエンドフィード流を用いて行った。
【0038】
各触媒について、入口温度を変化させ、触媒の転化率及び選択率を記録した。次の表に結果を示す。
【0039】
【表3】

【0040】
上記の比較では、触媒活性を45℃〜51℃の温度範囲で評価している。転化率の値は、エチレンに転化されたアセチレンの割合(%)を示す。反応器入口温度が高くなるにつれて、水素化反応はより活性になり、より多量のC22が水素化され、従って製品流から除去された。しかし、同時に一部のC24の水素化が起こり、反応の選択率が低下したことが示された。各触媒の「選択率」は、次式により算出された値(%)である:
選択率=100×{(入口C22−出口C22)−(出口C26−入口C26)}/(入口C22−出口C22)。
【0041】
正の値がより大きいほど、触媒の選択率がより大きいことを意味する。データは、中程度のGHSV(7000)で得たものである。
比較例である実施例1の従来の触媒と実施例2の本発明の触媒の転化率及び選択率を比較すると、本発明の触媒の性能が高いことが実証された。選択率が従来の触媒に対して著しく向上している。さらに、本発明の触媒は、従来の触媒より、触媒が水素化に対して活性である温度範囲が広くなり、かつ低温側に広がっていることが実証された。
【0042】
以上に本発明の原理、好適態様及び作用について説明した。ただし、ここで保護を意図する本発明は、開示された特定の態様だけと解釈され、制限されるものではない。これらの開示は例示を目的とし、制限を意図していないからである。当業者であれば多くの変更をなしうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面積が20m2/g以下、好ましくは2〜20m2/g、より好ましくは2〜10m2/g、最も好ましくは3〜5m2/gの低表面積担体、
パラジウム、及び
IB族金属、好ましくは銀、
から構成されるアセチレンの選択的水素化用触媒であって、前記担体の細孔容積が0.4cc/g以上、好ましくは0.45cc/g以上、より好ましくは0.5cc/g以上であって、細孔の細孔容積の90%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上が、細孔径500Å以上の細孔に含まれていて、細孔容積の1〜2%が細孔径500〜1000Åの細孔に含まれている触媒。
【請求項2】
パラジウムが触媒の0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、最も好ましくは0.01〜0.03重量%を構成し、IB族金属が触媒の0.005〜0.6重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%、最も好ましくは0.01〜0.12重量%を構成し、IB族金属:パラジウムの重量比が0.5:1〜6:1、好ましくは1:1〜6:1、最も好ましくは1:1〜4:1である、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
担体中へのパラジウムの浸透深さが、パラジウムの少なくとも90%が触媒材料の表面から250μm以内に位置するような深さであり、重量%は触媒の全重量に基づく、請求項1〜2のいずれかに記載の触媒。
【請求項4】
担体の組成が、アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化亜鉛、ニッケルスピネル、チタニア、ジルコニア、セリア、クロミア−アルミナ、酸化マグネシウム、酸化セリウム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれ、好ましくはアルミナである、請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
球形、トリホール、モノリス、ペレット及びタブレットよりなる群から選ばれた形状、好ましくは直径が1〜5mm、好ましくは1〜3mmの球形に成形されている、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
アセチレンの選択的水素化用触媒の製造方法であって、
表面積が20m2/g以下、好ましくは2〜20m2/g、より好ましくは2〜10m2/g、最も好ましくは3〜5m2/gの担体であって、担体の細孔容積が0.4cc/g以上、好ましくは0.5cc/g以上であり、細孔の細孔容積の90%以上、好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上が、細孔径500Å以上の細孔中に含まれており、細孔容積の1〜2%が細孔径500〜1000Åの細孔中に含まれている、低表面積担体を調製し、
前記担体にパラジウム金属供給源を含浸させ、
パラジウム供給源を還元し
還元されたパラジウム含有触媒材料を洗浄及び乾燥し、
この触媒材料にIB族金属添加成分供給源、好ましくは銀添加成分供給源を含浸させ、
IB族金属添加成分供給源を還元し、そして
還元された触媒材料を洗浄及び乾燥して触媒を得る、
ことを含む方法。
【請求項7】
パラジウム金属供給源が触媒の0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、最も好ましくは0.01〜0.03重量%を構成し、触媒中のIB族金属添加成分の濃度が0.005〜0.6重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%、最も好ましくは0.01〜0.12重量%であり、IB族金属:パラジウムの重量比が0.5:1〜6:1、好ましくは1:1〜6:1、最も好ましくは1:1〜4:1である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
触媒担体中へのパラジウムの浸透深さが、パラジウムの少なくとも90%が触媒材料の表面から250μm以内に位置するような深さである、請求項6〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の触媒又は請求項6〜8のいずれかに記載の方法により製造された触媒上に未精製ガスフィード流を通すことを含む、アセチレン類及びジオレフィン類の選択的水素化方法。

【公表番号】特表2008−508089(P2008−508089A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523587(P2007−523587)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024089
【国際公開番号】WO2006/023142
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(595066733)ズード−ヘミー・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】