説明

末端にヒドロキシル基を有するまたは末端にカルボン酸を有する反応性モノマー組成物、それらの調整および使用

本発明は、多数の反応性官能性部分、例えば、ヒドロキシル部分またはカルボン酸部分の一方または両方を有する新規反応性モノマー組成物に関する。さらに、本発明は、硬化性コーティング組成物、特に、硬化性粉末コーティング組成物の成分としてのそのような反応性モノマー組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、多数の反応性官能性部分、例えば、ヒドロキシル部分またはカルボン酸部分の一方または両方を有する、新規反応性モノマー組成物に関する。具体的には、本発明は、少なくとも(at least)1個の末端(モノマー末端に近位の)反応性部分、および場合によっては、1個から3個もの内部(モノマー末端から一定間隔、離れている)反応性部分を有する、反応性モノマー組成物に関する。前記反応性モノマー組成物は、少なくとも1個の末端反応性部分および少なくとも1個の内部反応性部分を有する反応性モノマー(全反応性モノマー組成物重量に基づき、少なくとも70重量パーセント(70重量%))と、少なくとも1個の末端反応性部分を有し、内部反応性部分を有さない反応性モノマー(全反応性モノマー組成物重量に基づき、30重量%まで(up to))の混合物を含むことができる。本発明は、前記反応性モノマー組成物、特に、再生可能な原料源、例えば、天然油または遺伝子修飾植物からの油いずれかの不飽和種子または植物油、から誘導された反応性モノマー組成物を調整するために用いる方法にも関する。さらに、本発明は、硬化性コーティング組成物、特に、硬化性粉体コーティング組成物としてのそのような反応性モノマー組成物の使用に関する。
【0002】
本出願は、2007年1月12日に出願された米国特許仮出願第60/880,332号および2007年3月29日に出願された同第60/920,599号の利益を請求するものである。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,744,531号およびその特許協力条約対応出願、国際公開第97/49772号(合わせて、Kerrら)は、特定のクラスのベータ(β)−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤のうちの少なくとも1つに加えてその硬化剤で架橋することができる電着可能なポリマーを含有する、アニオン性電気コーティング組成物を開示している。この硬化剤は、a)8から60個の炭素原子(C−C60)を含有する、b)置換または非置換脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素ラジカルから誘導される、およびc)n個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基に結合している(nは、1から4の整数である)、有機ラジカルを含む。Kerrらは、触媒を用いてまたは用いずにカルボン酸エステルの混合物の低級アルキル(例えば、メチル)エステルとβ−ヒドロキシアルキルアミンを反応させることによる、β−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤の調整を教示している。この電着可能ポリマーは、酸官能性ポリマー、例えば、乾性油または半乾性油脂肪酸エステルとジカルボン酸または酸無水物との反応生成物または付加体であり得る。例示的な酸官能性ポリマーとしては、酸官能性アクリルポリマー、ポリスチレンポリマー、ポリエステルポリマー、エポキシポリマーまたはこれらの組み合わせが挙げられる。β−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤の例としては、N,N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド;N,N−(2−ヒドロキシエチル)ココアミド;N,N−(2−ヒドロキシエチル)12−ヒドロキシステアルアミド;N,N−(2−ヒドロキシエチル)ステアルアミド;ビス[N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)]2−[CHCH(CH)15]スクシンアミド;ビス[N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)]2−[CH(CH16]−スクシンアミド;ビス[N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)]2−[CH(CH)13]スクシンアミド;[(CH18(COOH)]のビス[N,N,−ジ(2−ヒドロキシエチル)]アミド;ビス[N,N,−ジ(2−ヒドロキシエチル)]エイコサンアミド;ビス[N,N,−ジ(2−ヒドロキシエチル)ダイマーアミド;およびダイマー酸[(CH)(CH24(CH(COOH)]のビス[N,N,−ジ(2−ヒドロキシエチル)]アミドが挙げられる。
【0004】
米国特許第5,216,090号(Merrittら)は、カルボン酸基含有ポリエステルまたはポリアクリレート、脂肪酸ヒドロキシアルキルアミド基含有材料およびβ−ヒドロキシルアルキルアミド硬化剤の反応性混合物を含む、熱硬化性粉体組成物を教示している。
【0005】
米国特許第4,101,606号(Cenciら)は、1個またはそれ以上のカルボキシまたは酸無水物官能基を含有するポリマーのための硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミドポリマーを論じている。例示的なβ−ヒドロキシアルキルアミドポリマーとしては、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]マレイミド、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]フマリド、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]シトラコンアミド、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]マレイミド、およびビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]メサコンアミドが挙げられる。
【0006】
欧州特許第0698645号(Hoppeら)は、末端にカルボキシル基を有するポリエステル、および1分子につき少なくとも2個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド、および/または二官能性β−ヒドロキシアルキルアミドと多官能性β−ヒドロキシアルキルアミドの混合物を共押出することによる、熱硬化性でエポキシド不含の粉体塗料を調整するための方法を、特許請求している。
【0007】
国際公開第94/03545号(Stanssensら)は、ヒドロキシアルキルアミド架橋剤を伴う粉体コーティング組成物を論じている。この架橋剤は、β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する少なくとも2つの化合物の組み合わせを含み、この場合、それぞれの化合物が異なるヒドロキシアルキルアミド官能基を有する。ある化合物は、少なくとも3個のβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基を有し、他の化合物は、わずか3個のβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基しか有さない。
【0008】
欧州特許第0471409号(Schippersら)は、1個またはそれ以上の遊離カルボン酸基を有するポリマーと1個またはそれ以上のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物とを含む、粉体コーティング組成物に関する。
【0009】
塗料配合または組成の改善が引き続き必要とされている。改善の望まれる点としては、1つまたはそれ以上の環境的容認、例えば、非常に低い毒性、好ましくは無毒性、コスト、再生可能な資源の選択、および物理的特性性能(例えば、塗膜の柔軟性、靭性、接着性、硬度、防湿性または耐薬品性)がある。
【0010】
米国特許第5,312,889号(Frischeら)は、第1欄、23〜28行目に、「天然脂肪および天然油中のヒドロキシ脂肪酸およびそれらの誘導体、または反応性脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸)から製造することができるヒドロキシ脂肪酸もしくはアミノ脂肪酸は、技術的に有用な製品、とりわけポリマーおよびプラスチックの製造に特に適する」と開示している。第2欄、52〜57行目によると、「アミノ基含有脂肪酸残基・・・は、公知の化学的方法を用いて、例えば、臭化水素酸などのハロゲン化水素の二重結合への付加、およびその後のハロゲン化物のアンモニアでの求核置換によって、不飽和脂肪酸エステルから得られる」。
【0011】
第1欄、12〜21行に述べられているように、米国特許第6,174,948号(Thamesら)は、半および/または不乾性油に由来する長鎖オレフィンモノマーのビニルエーテル、ビニルエステルまたはアクリル酸エステルを含有する新規ラテックスまたはエマルジョン組成物、それらを製造するための方法、ならびに本質的に揮発性有機成分(VOC)を有さず、形状強化適用および動作特性を有する塗料、接着剤およびインクにおけるそのような組成物の有用性に関する。第5欄、5〜9行によると、半乾性油の実例としては、紅花油、ヒマワリ油、大豆油およびタバコタネ油が挙げられ、ならびに不乾性油の実例としては、綿実油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、およびレスクレラ油が挙げられる。第16欄、36〜43行にいおいて、米国特許第6,174,948号は、好ましい出発物質としては脂肪酸の置換または非置換ビニルエステル、脂肪アルコールのビニルエーテル、ならびに脂肪アルコールまたは脂肪アミンのアクリル酸エステルおよびアクリルアミドが挙げられると教示している。そのような出発物質の代表例としては、オレイン酸のビニルエステル、オレイルアクリレート、オレイルメタクリレート、オレイルアクリルアミド、オレイルメタクリルアミド、およびビニルオレイルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第6,174,948号の実施例1は、トリエチルアミンの存在下で塩化メタクリロイルとオレイルアルコールを反応させて、オレイルメタクリレートを生じさせるものである。米国特許第6,174,948号の実施例2は、実施例1を繰り返すものであるが、塩化メタクリロイルの代わりに塩化アクリロイルを用いている。米国特許第6,174,948号の実施例8は、UV硬化性配合物において実施例2のオレイルアクリレートを使用するものである。
【0012】
米国特許第6,245,829号(Meijら)は、β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物の一価または多価カルボン酸エステルを含む放射線硬化性組成物を論じており、このカルボン酸エステルは、α,β−エチレン不飽和カルボン酸から誘導される。このような組成物は、第2欄、47〜50行目によると、β−ヒドロキシアルキルアミドを不飽和カルボン酸塩化物、無水物またはエステルと反応させることによって調整することができる。第3欄、42〜48行は、そのような組成物から調整された塗料は、硬化後、多くの望ましい特性、例えば、良好な化学的特性(耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性および防湿性)、良好な光学特性および外観、良好な機械的特性(例えば、硬度、柔軟性、接着性、耐摩耗性、強度および耐久性)、良好な熱安定性ならびに良好な耐候性などを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,744,531号
【特許文献2】国際公開第97/49772号
【特許文献3】米国特許第5,216,090号
【特許文献4】米国特許第4,101,606号
【特許文献5】欧州特許第0698645号
【特許文献6】国際公開第94/03545号
【特許文献7】欧州特許第0471409号
【特許文献8】米国特許第5,312,889号
【特許文献9】米国特許第6,174,948号
【特許文献10】米国特許第6,245,829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本明細書全体を通して用いているこの段落、前の段落または本明細書中の他の箇所に提示する定義は、最初に定義された段落の定義を意味する。従って、「ヒドロカルビル」は、1から60個の炭素原子(C−C60)を有する一価の直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の主として炭化水素部分を意味する。「ヒドロカルビレン」は、1から60個の炭素原子(C−C60)を有する多価の直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の主として炭化水素部分である。
【0015】
「脂肪酸」は、8個より多くの炭素を有する、主として脂肪族の酸である。
【0016】
「脂肪酸エステル」は、8個より多くの炭素を有する、主として脂肪族のエステルを意味する。
【0017】
2から10の範囲のように、本明細書において範囲が述べられるとき、別様に特に除外されていない限り、その範囲の両方の端点(例えば、2および10)は、その範囲内に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様は、式Iによって表される、末端にヒドロキシル基を有するモノマーである。
【化1】


式I中、Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素(H)、ヒドロカルビル部分、または式IIによって表される部分:
【化2】


(この式中のRは、上で定義したとおりである)
であり;ならびにm、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする。
【0019】
本発明の第2の態様は、末端ヒドロキシル基を有するモノマー組成物を含み、この組成物は、式中のm、nおよびoの合計がゼロである式Iによって表される末端ヒドロキシル基を有する第2のモノマー量との混合物で、第1の態様の末端にヒドロキシル基を有するモノマーを含む。
【0020】
本発明の第3の態様は、硬化性組成物であり、この組成物は、第1の態様の末端にヒドロキシル基を有するモノマーまたは第2の態様の末端にヒドロキシル基を有するモノマー組成物のいずれか、末端にカルボン酸を有するモノマーおよび、場合によっては、第1の態様の末端ヒドロキシル基を有するモノマーまたは第2の態様の末端ヒドロキシル基を有するモノマー組成物以外のヒドロキシアルキルアミドと多官能性エポキシ樹脂のうちのいずれかまたは両方を含む。
【0021】
本発明の第4の態様は、反応性モノマー組成物を含み、この組成物は、式III:
【化3】


によって表される、アミドカルボン酸を含み、
式中、Rは、ヒドロカルビレン部分であり;
は、水素またはヒドロカルビル部分であり;
は、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;
は、ヒドロカルビレン部分であり;
は、H、ヒドロカルビル部分、または式IVによって表される部分:
【化4】


であり、この式中のRは、上で定義したとおりであり、Rは、式V:
【化5】


の部分であり、この場合のRは、ヒドロカルビレン部分であり;ならびに
m、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする。
【0022】
本発明の第5の態様は、硬化性樹脂組成物を含み、この硬化性樹脂組成物は、第4の態様の反応性モノマー組成物、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、末端カルボン酸部部分を有するモノマー(該モノマーは、前記反応性モノマー組成物以外のモノマーである)と硬化触媒のうちのいずれかまたは両方を含む。
【0023】
本発明の第6の態様は、末端カルボン酸部分を有する反応性モノマーを調整するための方法であって、この方法は、無水カルボン酸を次のうちの少なくとも1つと反応させることを含む、:
a.式VIによって表される開環エポキシ化油:
【化6】


b.式VIIによって表される、開環エポキシ化脂肪酸エステルまたは開環エポキシ化脂肪酸:
【化7】


(式中、Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;nおよびpは、0であるか、1〜20の範囲内の正の整数であり;a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、kおよびlは、独立して、0または1であるが、但し、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiの合計またはj、kおよびlの合計がゼロより大きいことを条件とし;ならびにXは、
【化8】


であり、この場合、R10は、独立して、水素、ヒドロキシルヒドロカルビル部分またはヒドロカルビル部分であり;およびR11は、独立して、水素またはヒドロカルビル部分である);または
c.ヒマシ油とポリオールとのアルコール分解反応の生成物。
【0024】
第6の態様に関する態様は、第6の態様の方法によって調整される反応性モノマーを含む。
【0025】
本発明の第7の態様は、第6の態様の方法によって調整された反応性モノマー、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、末端カルボン酸部分を有するモノマー(該モノマーは、第6の態様の方法によって生成された反応性モノマーとは異なる)と硬化触媒のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性組成物である。
【0026】
本発明の第8の態様は、コーティング組成物であり、このコーティング組成物は、本発明の第3、第5もしくは第7の態様のうちのいずれかの硬化性組成物、または第4の態様の反応性モノマー組成物、または第6の態様によって調整された反応性モノマーを含む。このような組成物に基づく粉体塗料は、建築用アルミニウムの塗装、家庭用または事務所用家具およびそのような家具に使用される硬質製品の塗装、建築用製品(例えば、下端、鼻隠し板、羽目板、戸および窓枠)および衛生器具の塗装、電気器具(例えば、変圧器または発電機)の塗装、工作機械またはパレットラックの塗装、家庭電化製品(例えば、洗濯機、乾燥機、温水器、スワンプクーラーおよび暖房炉)の塗装、自動車部品(特に、アンダーフード部品ならびに車内側ブラケットおよびフランジ、ならびにオイルフィルター)の塗装、ならびに車体用のプライマーサーフェーサー/アンチチップ用塗料、および一般的な金属用途(例えば、箱、玩具、スタンピング、フレーム、家庭用ジムセット、および運動器具)用の塗料としての使用をはじめとする様々な用途に利用することができる。
【0027】
上で述べたように、第1の態様の末端ヒドロキシル基を有するモノマーは、式Iによって表すことができる:
【化9】


式I中、Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素(H)、ヒドロカルビル部分、または式IIによって表される部分:
【化10】


(この式中のRは、上で定義したとおりである)
であり;ならびにm、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
このような末端ヒドロキシル基を有するモノマーの実例としては、N,N−(2−ヒドロキシエチル)12−ヒドロキシステアルアミド(12-hydroxystearmaide);N,N−(2−ヒドロキシエチル)12−ヒドロキシメチルステアルアミド;N,N−(2−ヒドロキシエチル)9,12−ヒドロキシメチルステアルアミド;N,N−(2−ヒドロキシエチル)9,12,15−ヒドロキシメチルステアルアミドおよび11−ヒドロキシウンデカノアミドが挙げられる。
【0029】
第2の態様の末端にヒドロキシル基を有するモノマー組成物は、上の式Iによって表される少なくとも2つの異なるモノマーの混合物である。1つのモノマーは、ゼロより大きいm、nおよびoの合計を有し、他のものは、ゼロであるm、nおよびoの合計を有する。ゼロであるm、nおよびoの合計を有するモノマーの実例は、N,N−(2−ヒドロキシエチル)ステアルアミドである。前記末端にヒドロキシル基を有するモノマー組成物は、好ましくは、ゼロより大きいm、nおよびoの合計を有するモノマーを70重量パーセント(重量%)であるかそれより多く、さらに好ましくは75重量%であるかそれより多く、およびさらにいっそう好ましくは90重量%であるかそれより多く含有し、それぞれの場合、重量%は、全組成物重量に基づく。
【0030】
第3の態様の硬化性組成物は、末端にカルボン酸を有するモノマーとの混合物中で、第1の態様のモノマーまたは第2の態様のモノマー組成物のいずれかを含む。前記硬化性組成物は、場合により、2つの追加成分のいずれかまたは両方を含む。1つの追加成分は、第1の態様のモノマーまたは第2の態様のモノマー組成物の任意の成分とは異なる、ヒドロキシルアミドである。存在する場合、このヒドロキシルアミドは、5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から75重量%、さらに好ましくは25重量%から50重量%の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、その末端にカルボン酸を有するモノマー中に存在するカルボン酸(−COOH)の当量に基づく。第2の追加成分は、多官能性エポキシ樹脂である。存在する場合、多官能性エポキシ樹脂は、5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から75重量%、さらに好ましくは25重量%から50重量%の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、その末端にカルボン酸を有するモノマー中に存在するカルボン酸(−COOH)の当量に基づく。末端にカルボン酸を有するモノマーは、本硬化性組成物の主硬化性成分として作用する。
【0031】
末端にカルボン酸を有する、適するモノマーとしては、本発明の第1および第2の態様の末端にヒドロキシ基を有するモノマーを、酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物および無水トリメリット酸と反応させることによって得られるものが挙げられる。末端にカルボン酸を有するさらに好ましいモノマーとしては、無水コハク酸、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸および1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物に基づくものが挙げられる。末端にカルボン酸を有する最も好ましいモノマーは、無水フタル酸と1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物の組み合わせに基づくものである。
【0032】
N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサンアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドおよびN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)スクシンアミドからヒドロキシルアミン追加成分を選択すると、満足な結果となる。ヒドロキシルアミドは、好ましくは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドおよびN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)スクシンアミドから選択され、最も好ましくは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドである。
【0033】
好ましくは、エポキシ樹脂は、150から4000のエポキシド当量を有する多官能性ビスフェノールグリシジルエーテルから選択される。さらに好ましくは、エポキシ樹脂は、150から2600のエポキシド当量を有する多官能性ビスフェノールグリシジルエーテルから選択され、最も好ましくは、150から1000のエポキシド当量を有する多官能性ビスフェノールグリシジルエーテルから選択される。
【0034】
第4の態様の反応性モノマー組成物は、式IIIによって表されるアミドカルボン酸を含む:
【化11】


(式中、Rは、ヒドロカルビレン部分であり;
は、水素またはヒドロカルビル部分であり;
は、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;
は、ヒドロカルビレン部分であり;
は、H、ヒドロカルビル部分、または式IVによって表される部分:
【化12】


であり、この式中のRは、上で定義したとおりであり、Rは、式V:
【化13】


の部分であり、この場合のRは、ヒドロカルビレン部分であり;ならびに
m、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする)。
【0035】
式IIIによって表される構造の範囲内に入る実例としてのアミドカルボン酸としては、上で説明したものが挙げられる。
【0036】
そのようなアミドカルボン酸は、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、そのアミドカルボン酸とは異なり、且つ、末端カルボン酸部分を有するモノマーと硬化触媒のうちのいずれかまたは両方と、組み合わせたとき、第5の態様の硬化性樹脂組成物を構成する。
【0037】
アミドカルボン酸と多官能性エポキシ樹脂のみを含む硬化性樹脂組成物は、80重量%から120重量%、好ましくは90重量%から110重量%、さらに好ましくは95重量%から105重量%の範囲内の多官能性エポキシ樹脂含有量を有し、それぞれの場合、重量%は、その末端にカルボン酸を有するモノマー中に存在するカルボン酸(−COOH)の当量に基づく。この多官能性エポキシ樹脂は、上で特定したもののうちのいずれかであってもよい。
【0038】
硬化性樹脂組成物が、アミドカルボン酸とは異なるモノマーを含み、且つ、末端カルボン酸部分を有するとき、そのモノマーは、5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から75重量%、さらに好ましくは25重量%から50重量%の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、その硬化性組成物中に存在するエポキシの当量に基づく。
【0039】
例示的なモノマーとしては、末端にカルボン酸を有するポリエステルが挙げられる。このモノマーは、好ましくは、URALAC(商標)P5271およびURALAC(商標)5998から選択される。
【0040】
硬化性樹脂組成物が硬化触媒を含むとき、その硬化触媒は、0.1重量%から5.0重量%、好ましくは0.1重量%から2.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%から1.0重量%の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、硬化性組成物重量に基づく。
【0041】
例示的な硬化触媒としては、イミダゾリンが挙げられる。好ましい硬化触媒は、2−フェニル−2−イミダゾリンである。
【0042】
第6の態様による末端反応性部分を有する反応性モノマーの調整は、無水カルボン酸を、次のうちの少なくとも1つと反応させることを含む:
a.式VIによって表される開環エポキシ化油:
【化14】


b.式VIIによって表される、開環エポキシ化脂肪酸エステルまたは開環エポキシ化脂肪酸:
【化15】


(式中、Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;nおよびpは、0であるか、1〜20の範囲内の正の整数であり;a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、kおよびlは、独立して、0または1であるが、但し、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiの合計またはj、kおよびlの合計がゼロより大きいことを条件とし;ならびにXは、
【化16】


であり、この場合、R10は、独立して、水素、ヒドロキシルヒドロカルビル部分またはヒドロカルビル部分であり;およびR11は、独立して、水素またはヒドロカルビル部分である);または
c.ヒマシ油とポリオールとのアルコール分解反応の生成物。
適する無水カルボン酸としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物および無水トリメリット酸が挙げられ、無水フタル酸が特に好ましい。
【0043】
式VIによって表される開環エポキシ化油としては、開環エポキシ化大豆油および開環エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。開環エポキシ化油が、開環エポキシ化大豆油であるとき、特に好ましい反応性モノマーが得られる。
【0044】
式VIIによって表される開環エポキシ化脂肪酸エステルとしては、開環エポキシ化オレイン酸メチル、開環エポキシ化リノレイン酸メチル、開環エポキシ化リノール酸メチル、開環エポキシ化リノール酸エチルおよび開環エポキシ化ウンデカン酸メチルが挙げられる。開環エポキシ化脂肪酸エステルが、開環エポキシ化オレイン酸メチルであるとき、特に好ましい反応性モノマーが得られる。
【0045】
式VIIによって表される開環エポキシ化脂肪酸としては、開環エポキシ化オレイン酸、開環エポキシ化リノール酸、開環エポキシ化リノレイン酸、開環エポキシ化ウンデシレン酸および開環エポキシ化10−ウンデカン酸が挙げられる。開環エポキシ化脂肪酸が、開環エポキシ化オレイン酸であるとき、特に好ましい反応性モノマーが得られる。
【0046】
アルコール分解反応生成物を調整する際の使用に適するポリオールとしては、グリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが挙げられる。
【0047】
米国特許出願公開第2002/0035282号(この関連のある教示が本明細書に組み込まれる)は、アルコール分解反応を開示している。一般に、そのような教示としては、ジエチレングリコールでの大豆油のアルコール分解が挙げられる。
【0048】
米国特許第3,291,764号(関連のある教示が本明細書に組み込まれる)には、開環エポキシ化油の調整が記載されている。一般に、そのような教示としては、エポキシ化大豆油の開環が挙げられる。
【0049】
第6の態様の方法が、開環エポキシ化油、開環エポキシ化脂肪酸エステルまたは開環エポキシ化脂肪酸のいずれかを利用するときの方法条件は、100℃から140℃の温度、大気圧、および2時間から6時間の範囲内の反応時間を含む。
【0050】
本発明の第7の態様は、第6の態様の反応性モノマー、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、第6の態様の反応性モノマーとは異なり、且つ、末端カルボン酸部分を有するモノマーと硬化性触媒のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性組成物である。
【0051】
前記硬化性組成物が、第6の態様の反応性モノマーと多官能性エポキシ樹脂のみを含むとき、その多官能性エポキシ樹脂は、80重量%から120重量%、好ましくは90重量%から110重量%、さらに好ましくは95重量%から105重量%の範囲内の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、末端にカルボン酸を有するモノマー中に存在するカルボン酸(−COOH)の当量に基づく。前記多官能性エポキシ樹脂は、上で特定したもののうちのいずれかであってもよい。
【0052】
第6の態様のモノマーとは異なるモノマーを含む硬化性組成物は、5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から75重量%、さらに好ましくは25重量%から50重量%の範囲内の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、その硬化性組成物中に存在するエポキシ部分の当量に基づく。
【0053】
例示的なモノマーとしては、末端にカルボン酸を有するポリエステルが挙げられる。特に好ましいモノマーとしては、URALAC(商標)P5271およびURALAC(商標)5998が挙げられる。
【0054】
前記硬化性樹脂組成物が硬化触媒を含むとき、その硬化触媒は、0.1重量%から5.0重量%、好ましくは0.1重量%から2.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%から1.0重量%の量で存在し、それぞれの場合、重量%は、硬化性組成物重量に基づく。
【0055】
例示的な硬化触媒としては、イミダゾリンが挙げられる。好ましい硬化触媒としては、2−フェニル−2−イミダゾリンが挙げられる。
【0056】
米国特許第4,243,818号(Rogier)(この教示が本明細書に参照により組み込まれる)は、第5欄、8〜12行において、「ヒドロホルミル化」を、触媒の存在下で水素と一酸化炭素を反応させることによる不飽和化合物からの無水物の生成と定義している。第5欄、36〜38行目によると、好ましい不飽和化合物は、オレイルアルコールであるが、リノレイルアルコールまたはリノレニルアルコールも不飽和化合物として使用することができる。第9欄、52〜58行目において、米国特許第4,243,818号は、アルコールをそれらの対応する不飽和エステル(例えば、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル)に転化させるための塩化アクリロイルなどの酸ハロゲン化物の使用を教示している。使用すると、ヒドロホルミル化が、出発物質中の不飽和のゼロパーセントより多く、且つ、そのような不飽和の100パーセントまでを官能基化するまたはそれらと反応するために十分な程度に発生する。このヒドロホルミル化は、好ましくは、その出発物質中に存在する不飽和の少なくとも(≧)20パーセント(%)、さらに好ましくは不飽和の≧50%、および最も好ましくは不飽和の≧80%と反応するために十分なものである。
【0057】
米国特許第3,787,459号(Frankel)は、不飽和植物油材料をヒドロホルミル化によりホルミル(アルデヒド)生成物に転化させる方法を開示している。例示的な植物油材料としては、大豆油、亜麻仁油および紅花油ならびにそれらに誘導体が挙げられる。
【0058】
ヒドロホルミル化を論じている、法律で許可される限り本明細書に組み込まれる、さらなる参考文献としては、米国特許第4,423,162号(Peermanら)(特に、実施例34)、米国特許第4,723,047号(Bahrmannら)、加国特許出願公開第2,162,083号、国際公開第2004/096744号(Lysenkoら)、米国特許第4,496,487号(Peermanら)、米国特許第4,216,344号(Rogier)、米国特許第4,304,945号(Rogier)および米国特許第4,229,562号(Rogier)が挙げられる。
【0059】
Peermanらの米国特許第4,423,162号の教示、特に、第3欄、50行目から第4欄、36行目にある教示は、還元ヒドロホルミル化を実施しようとする者に特に有益である。この部分では、ヒドロホルミル化された不飽和カルボン酸またはエステルを水素化することによって調整されるヒドロキシエステルモノマー出発物質を調整する。トリグリセリドをそれぞれの成分脂肪酸に分割することにより、適する不飽和酸を得ることができる。Peermanらの米国特許第4,423,162号は、脂肪酸源としては脂肪油、例えば、獣脂および大部分の植物源、特に、大豆、ゴマ、ヒマワリ、トール油および他の類似の材料が挙げられるが、メチルエステルの形態である出発脂肪酸が好ましいと述べている。
【0060】
Peermanらの米国特許第4,423,162号は、コバルトまたはロジウムいずれかの触媒を利用してヒドロホルミル化し、その後、触媒法によりまたは化学的還元によりそのホルミチル基を水素化してヒドロホルミル基を得る方法によって、ヒドロキシメチル基の導入を容易に果たすことができることを教示している。そうする場合、Peermanらの米国特許第4,423,162号は、米国特許第4,216,343号(Rogier)、米国特許第4,216,344号(Rogier)、米国特許第4,304,945号(Rogier)、および米国特許第4,229,562号(Rogier)に詳細に記載されている手順も参照し、また参照により組み込まれている。
【0061】
種子油は、飽和および不飽和両方の脂肪酸、脂肪酸エステルまたは脂肪酸と脂肪酸エステルの両方の混合物を含む。典型的な種子油は、約10重量パーセントを超えて約80重量パーセント未満(less than)のモノ不飽和脂肪酸、脂肪酸エステルまたは脂肪酸と脂肪酸エステルの両方、約1重量パーセントを超えて約45重量パーセント未満のジ不飽和脂肪酸、脂肪酸エステルまたは脂肪酸と脂肪酸エステルの両方、および約1重量パーセントを超えて約45重量パーセント未満のトリ不飽和脂肪酸、脂肪酸エステルまたは脂肪酸と脂肪酸エステルの両方を含み、それぞれの場合、重量%は、全種子油重量に基づく。
【0062】
種子油供給原料から得ることができる、適する不飽和脂肪酸の限定されない例としては、3−ヘキサン酸(ヒドロソルビン酸)、トランス−2−ヘプタン酸、2−オクテン酸,2−ノネン酸、シス−およびトランス−4−デセン酸、9−デセン酸(カプロレイン酸)、10−ウンデセン酸(ウンデシレン酸)、トランス−3−ドデセン酸(リンデル酸)、トリデセン酸、シス−9−テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、ペンタデセン酸、シス−9−ヘキサデセン酸(シス−9−パルミトレイン酸)、トランス−9−ヘキサデセン酸(トランス−9−パルミトレイン酸)、9−ヘプタデセン酸、シス−6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、トランス−6−オクタデセン酸(ペトロセライジン酸)、シス−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、トランス−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、シス−11−オクタデセン酸、トランス−11−オクタデセン酸(バクセン酸)、シス−5−エイコセン酸、シス−9−エイコセン酸(ゴトレイン酸)、シス−11−ドコセン酸(セトレイン酸)、シス−13−ドコセン酸(エルカ酸)、トランス−13−ドコセン酸(ブラシジン酸)、シス−15−テトラコセン酸(セラコレイン酸)、シス−17−ヘキサコセン酸(キシメン酸)、およびシス−21−トリアコンテン酸(ルメクエン酸(lumequeic))、ならびに2,4−ヘキサジエン酸(ソルビン酸)、シス−9−シス−12−オクタデカジエン酸(リノール酸)、シス−9−シス−12−シス−15−オクタデカトリエン酸(リノレイン酸)、エレオステアリン酸、12−ヒドロキシ−シス−9−オクタデカン酸(リシノール酸)、シス−5−ドコセン酸、シス−5,13−ドコサジエン酸、12,13−エポキシ−シス−9−オクタデセン酸(ベルノル酸)、および14−ヒドロキシ−シス−11−エイコセン酸(レスクエロール酸)が挙げられる。最も好ましい不飽和脂肪酸は、オレイン酸である。
【0063】
種子油中の脂肪酸エステルのアルコールセグメントは、グリセロール、三価アルコールである。一般に、本発明のアルデヒドまたはアルコール組成物の調整の際に利用する脂肪酸エステルは、種子油と低級アルカノールのエステル交換反応によって得られる。エステル交換反応は、低級アルカノールの飽和および不飽和脂肪酸エステルの対応する混合物を生じさせる。グリセライドは、加工および分離が難しい場合があるので、種子油と低級アルカノールのエステル交換反応は、より化学的変換および分離に適する混合物を生じさせる。典型的に、低級アルコールは、1から約15個の炭素原子を有する。アルコールセグメント中の炭素原子は、直鎖構造で配列されていることもあり、または分岐構造で配列されていることもあり、ならびに様々な置換基、例えば前に脂肪酸セグメントに関連して上文にて開示したもの、で置換されていることもある(但し、そうした置換基が、加工および下流の用途に干渉しないことを条件とする)。好ましくは、前記アルコールは、直鎖または分岐C1−8アルカノール、さらに好ましくはC1−4アルカノールである。さらにいっそう好ましくは、低級アルカノールは、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される。最も好ましくは、低級アルカノールは、メタノールである。
【0064】
いずれの公知エステル交換法も好適に利用することができるが、低級アルカノールのエステル生成物が得られることを条件とする。当分野では、種子油のエステル交換(例えば、メタノリシス、エタノリシス)が的確に開示されている;例えば、国際公開第2001/012581号、独国特許出願公開第19908978号、および伯国特許第953081号を参照のこと。典型的に、このような方法では、低級アルカノールを、約30℃と約100℃の間の温度でアルカリ金属、好ましくはナトリウムと接触させて、対応する金属アルコキシドを調整する。その後、種子油をそのアルコキシド混合物に添加し、結果として生ずる反応混合物を、エステル交換が果たされるまで、約30℃と約100℃の間の温度で加熱する。例えば相分離、抽出および/または蒸留をはじめとする当分野において公知の方法によって、その反応混合物から粗製エステル交換組成物を分離することができる。この粗生成物は、クロマトグラフィー、例えば、シリカゲルでのクロマトグラフィーを用いて、共生成物から分離するおよび/または脱色することもできる。上記の手順の変形例は、当分野において文書化されている。
【0065】
脂肪酸エステルではなく、脂肪酸の混合物を本発明の供給原料として利用することが望ましい場合には、選択された種子油を加水分解して、対応する脂肪酸混合物を得ることができる。種子油をそれらの成分脂肪酸に加水分解するための方法も当分野において周知である。
【0066】
本明細書における説明は、二者択一的に脂肪酸または脂肪酸エステルに言及しているが、この説明には、脂肪酸と脂肪酸エステルの混合物を使用するおよび得る可能性を除外する意図はない。好ましくは、実際のレベルで、本組成物は、本質的に酸または本質的にエステルを含むが、述べたように、それらの混合物も考えられる。
【0067】
好ましい出発物質としては、ヒドロキシメチル脂肪酸、ヒドロキシメチル脂肪酸エステル、ヒマシ油およびヒマシ油誘導体が挙げられる。特に好ましい出発物質としては、ステアリン酸ヒドロキシメチル、メチルステアリン酸ヒドロキシメチル、リシノール酸およびリシノール酸エステルから成る群より選択されるものが挙げられる。
【0068】
好ましいアルカノールアミンとしては、エタノールアミン、1,2−プロパノールアミンまたはジエタノールアミンのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0069】
第1反応体としての使用に適する好ましいエポキシ官能基化植物油としては、ヴェルノニア(vernonia)油、エポキシ化大豆油またはエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0070】
第1反応体としての使用に適する好ましいエポキシ化脂肪酸としては、エポキシ化ウンデセン酸、およびエポキシ化オレイン酸が挙げられる。
【0071】
第1反応体としての使用に適する好ましいエポキシ化脂肪酸エステルとしては、エポキシ化オレイン酸メチル、エポキシ化10−ウンデセン酸メチルおよびエポキシ化9−デセン酸メチルが挙げられる。
【0072】
第2反応体としての使用に適する好ましいカルボン酸としては、酢酸およびギ酸が挙げられる。
【0073】
第2反応体としての使用に適する好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールが挙げられる。
【0074】
好ましい酸性触媒としては、イオン交換標準物質、好ましくは、カチオン交換樹脂、例えばDOWEX(商標)カチオン交換樹脂MSC−1(The Dow Chemical Company)および無機酸(例えば、硫酸)が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物としては、コーティング組成物に従来添加される1つまたはそれ以上の非反応性成分が挙げられる。そのような非反応性成分としては、顔料、フィラー、安定剤および溶剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
分析手順
FTIRに用いられる分析手順は、Jack L.Koeningによる「Spectroscopy of Polymers」と題する米国化学会(American Chemical Society)(ACS)Professional Reference Bookに記載されているものなどの標準的な方法に基づく。本明細書で用いる他の試験法を以下で説明する。
【0077】
ガラス転移温度(Tg)
毎分10℃のプログラムされた加熱速度を用いて示差走査熱分析(DSC)により硬化塗膜のガラス転移温度(Tg)を測定する。
【0078】
塗膜厚
Fisher Multiscope塗膜計を使用して、強磁性物質上に堆積させた非磁性塗膜の厚さを測定する。Fisher Multiscopeは、プローブを具備し、そのプローブを塗膜に押しあて、Multiscopeを作動させると、磁気誘導によって動作して塗膜厚を示す。本明細書において報告する塗膜厚値は、15回の塗膜厚測定の平均値である。
【0079】
%ヒドロキシ(ヒドロキシ価としても公知)の決定(ASTM D 4274)
公知の過剰量の無水フタル酸のピリジンへの添加を行った後、1.0規定(N)水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を使用する電位差滴定により、ピリジン内で溶解したサンプルを評価する。
【0080】
%COOHの決定
0.1規定(N)のNaOH水溶液を滴定剤としておよびブロモチモールブルーを指示薬として使用する手動滴定により(アセトン中の)ポリマー溶液をカルボキシル基百分率(%COOH)について評価する。
【0081】
鉛筆試験による皮膜硬度−ASTM法 D 3363
堅い水平面上に被覆パネルを配置する。オペレータが公知の硬度の鉛筆を塗膜または皮膜に対して45°の角度で保持し、1/4インチ(6.5mm)のストロークでオペレータの体から鉛筆を押出す。最も柔らかい鉛筆(6B)でこの試験を開始し、そのストロークによって鉛筆が皮膜または塗膜に食い込むまたは穴をあけるまで、(9Hに向かって)段々堅い鉛の鉛筆を用いて試験を継続する。鉛筆が塗膜に食い込むまたは穴をあける直前のその鉛筆の鉛の硬度によって、塗膜鉛筆硬度を報告する。
【0082】
メチルエチルケトン(MEK)二重摩擦(Double Rubs)−ASTM法 D 5402
MEKに浸漬した8層のガーゼで覆った2ポンド(4.4キログラム(kg))のボールピーンハンマーの丸端または頭部を被覆パネルの表面でその塗膜が破損するまで前後に動かす。この試験では、ハンマーの重量と、そのガーゼで覆ったハンマーの頭部を塗膜の向こう側に導くために必要な力しか用いない。塗膜の破損は、その塗膜の真下のパネル支持体が露出すると同時に発生する。酸性硫酸銅を使用して、支持体の露出および塗膜の破損を検証する。試験を2回繰り返し、そうした試験の算術平均を求め、その平均を「塗膜MEK二重摩擦破損数」として報告する。
【0083】
1/8インチ円錐型マンドレル曲げ試験(ASTM法 D 522−93a)
Gardner Lab,Inc.提供の試験装置を使用して、わずか1/32インチ(0.8mm)の厚さしか有さない薄板金支持体に付いている有機塗膜の柔軟性(亀裂抵抗性)を測定する。この試験装置は、滑らかな金属の円錐型マンドレル(8インチ(20.3cm)の長さ、1/8インチ(3.2mm)の小末端直径および1.5インチ(38.1mm)の大末端直径)、パネルを曲げる回転アーム、およびパネルクランプから成り、これらすべてが金属基板上に搭載されている。被覆薄板金支持体をその器具にクランピングし、その被覆支持体を垂直から約135°に曲げる。その被覆金属支持体の湾曲部の近位を亀裂について検査し、存在する場合には、その垂直型マンドレルの小末端からの亀裂の長さを測定する。測定した亀裂の長さを「破損距離」として報告する。
【0084】
ウェッジ曲げ試験
パネルが無すず0.0089インチ(0.23ミリメートル(mm))薄鋼板であるときの被覆パネル変形のその塗膜に対する影響を評価する。1/16インチ(1.6mm)のマンドレルでその被覆薄板を曲げ、その後、Garner「Coverall」Impact Testerを使用して、その曲げる薄板に40フィート−ポンド(5.5キログラム−メートル(kg−m))の荷重を衝突させて0T曲げ(180°)を達成する。a)その湾曲部の上および近位に感圧接着テープを貼ること;b)均一で迅速な動きでそのテープをはがすこと;c)0.03モルの硫酸銅(CuSO)を含有する1規定(1N)の塩酸(HCl)溶液に、1分間、その曲がった薄板を浸漬すること;d)その曲がった薄板を水ですすぎ、すすいだ薄板をボルト乾燥させること;およびe)少なくとも12時間後、亀裂および接着喪失についてその曲がった薄板の0T湾曲部の近位を点検することによって、塗膜接着喪失を評価する。存在する場合には、0T湾曲部が始点で目に見える接着喪失が終わる場所が終点の接着喪失距離を測定する。
【0085】
示差走査熱分析
示差走査熱分析(DSC)試験には、冷蔵冷却システムを装備したTA Instrument DSC 2920を使用し、−60℃から275℃の温度範囲にわたって毎分10℃の加熱速度を用いる。
【0086】
温度に対する粘度測定
I.C.I.コーン・プレート型レオメーター(Cone and Plate Rheometer)を使用して、モノマーおよび塗料配合物の粘度を6つの温度で評価する:25℃、100℃、125℃、150℃、175℃および200℃。
【0087】
ゲル化時間反応性測定(Powder Coatings Institute Recommended Procedure PCI#6)
0.2gの粉体配合物をストロークキュアホットプレート(カリフォルニア州、サンディエゴのTetrahedron)の上に置き、そのホットプレートを150℃または204℃に加熱する。ストップウォッチを使用して、流動性溶融物が熱硬化性物質(別様には、硬質の固定された固体として公知)に変わるために必要な時間を測定する。
【0088】
クロスハッチ接着性(ASTM D 3359−90、試験法B)
11刃のナイフを使用して、パネル上に堆積された硬化塗膜を切断して、3つのクロスハッチ切片を作る。それぞれのクロスハッチ切片にマスキングテープのストリップをしっかりと押しつけ、その後、そのマスキングテープを素早く剥がし、塗膜を拡大鏡で検査して、もしあれば、そのマスキングテープでその塗膜がどの程度剥がされるかを測定する。切り口が完全に滑らかであるように見え、四角形のクロスハッチ切片の内側から取れる塗膜がない場合、その塗膜に「合格」の評価を与える。塗膜の少なくとも一部分が、切断の継ぎ目の近位に、もしくはクロスハッチ切片の内側の部分に、または両方にないように見える場合、その塗膜に「不合格」の評価を与える。
【0089】
急速変形の影響に対する有機塗膜の耐性(耐衝撃性)−ASTM法 D 2794(正面衝撃および裏面衝撃)
基準の錘(4ポンド(lbs)(8.8kg))を、硬化皮膜と硬化皮膜または塗膜の下にある支持体の両方を変形させるインデンター上へと、一定距離、落下させる。そのインデンターを、その硬化皮膜に押しあてて貫入させ、正面衝撃に対する耐性を評価することができ、または硬化塗膜が結合しているのとは反対の支持体もしくはパネル表面に押しあてて押出し力をかけて裏面衝撃に対する耐性を評価することができる。徐々に距離を増しながら、塗膜破壊が発生する距離に達するまで錘を落とす。硬化皮膜または塗膜は、一般に、亀裂によって破損し、これは、特に、変形後にその硬化皮膜または塗膜に酸性硫酸銅溶液を塗布した後、拡大鏡によって見ると、より目に見えて明らかになる。
【0090】
光沢度(ASTM D523)
Gardner Micro Tri Gloss Meterを使用して、水平位置からそれぞれ20°、60°および85°で分光光沢測定を行い、その後、そのような角度のそれぞれでの光沢測定値の平均を記録する。
【0091】
引掻き抵抗性(ASTM D7027−05)
Surface & Coatings Technology 201 (2006) 2970-2976に記載されているような、且つ、スクラッチチップを装備した、引掻硬度試験装置を使用して、100ミリメートル毎秒(mm/秒)の引掻き速度、引掻き長、および1ニュートン(N)から70Nの漸増加荷重を用いて、制御型計装化引掻き事象を被覆サンプルにかける。3200dpi(インチあたりのピクセル)(センチメートル(cm)あたり1260ピクセル)の解像度のEpson Perfection(商標)4990 Photoスキャナーを用いて引掻きの像をスキャンし、そのスクラッチチップが可視的に最初にパネル上の塗膜に貫入し、下にある金属パネル表面に接触する加荷重点として、エポキシ塗膜破壊を判定する。
【0092】
以下の実施例は、本発明を例証するものであるが、限定するものではない。すべての部および百分率は、別様に述べていない限り、重量に基づく。すべての温度は、℃である。本発明の実施例(Ex)をアラビア数字で示し、比較例(Comp Ex)を大文字のアルファベット文字で表す。本明細書では別様に述べていない限り、「室温」および「周囲温度」は、名目上25℃である。
【0093】
原料:
A.ヒマシ油(Aldrich、カタログ番号25,985−3)。
B.57℃のDSC結晶融点を得るために再結晶によって精製した、12−ヒドロキシメチルステアレート(PAPACIN(商標)、CasChem of Rutherford Chemicals)。
C.12−ヒドロキシメチルステアレート、ヒマワリ油のメチルエステルの還元ヒドロホルミル化(HF)生成物。
D.メチルエステル混合物、大豆油のメチルエステルの還元HF生成物。
E.11−ヒドロキシウンデカン酸メチル−米国特許第4,496,487号に記載されている手順に従ってメチルエステルのメタセシスに準じる大豆油メチルエステルの還元ヒドロホルミル化によって得、その後、蒸留によって精製した生成物。この生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析は、生成物が、全生成物重量に基づき94重量%の11−ヒドロキシウンデカン酸メチルを含有することを示す。
F.ジエタノールアミン(DEA)(Aldrich、カタログ番号39,817−9)。
G.固体エポキシ樹脂(D.E.R.(商標)663UおよびD.E.R.(商標)661、The Dow Chemical Company)。
H.ヒマシ油グリセロリシス生成物(FLEXRICIN(商標)13、Cas Chem of Rutherford Chemicals)。
I.ポリジメチルシロキサン表面改質剤(BYK(商標)310、BYK Chemie USA)。
J.エチレングリコールモノブチルエーテル(DOWANOL(商標)EB、The Dow Chemical Company)。
K.シクロヘキサノン(Aldrich、カタログ番号39,824−1)。
L.カルボン酸官能性ポリエステル(URALAC(商標)5271、DSM、720の滴定水素当量)。
M.アジピン酸とDEAから誘導されたヒドロキシアルキルアミド(グラムあたり620〜700ミリグラムの水酸化カリウム(mg KOH/g)のヒドロキシル値と報告されている、PRIMID(商標)XL−552、EMS−PRIMID)。
N.グリコール化エポキシ化大豆油(グリコール化エポキシ化大豆油の調製については実施例34を参照のこと)。
【実施例1】
【0094】
ジエタノールアミンおよび12−ヒドロキシステアリン酸メチルからのヒドロキシアルキルアミドの調製
100.5グラム(g)(0.32モル)の12−ヒドロキシステアリン酸メチル、139.4g(1.325モル)のジエタノールアミンおよび0.13g(0.002モル)の85重量%水酸化カリウム溶液(メタノール中)を、磁気攪拌棒および水冷式還流凝縮器を装備した500mL丸底フラスコに入れる。そのフラスコを電熱マントルに据える。フラスコの内容物に沈めた熱電対に接続した温度制御装置を用いて、フラスコの内容物の温度を制御する。攪拌しながらフラスコの内容物を110℃に加熱し、それによってフラスコの内容物は透明無色の溶液になる。
【0095】
攪拌を継続しながら110℃の温度を一晩(約14時間)かけて維持し、その後、その溶液のサンプルを採り、そのサンプルをフーリエ変換赤外線(FTIR)分析に付す。この分析は、1729cm−1での小さなピークが示すとおり、極微量のエステル吸収を示す。
【0096】
フラスコの内容物を放置して65℃の温度に冷却し、その後、400ミリリットル(mL)のクロロホルム(CHCl)を添加して、フラスコの内容物のCHCl溶液を生じさせる。そのCHCl溶液を250gの5重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液で、そのNaCl水溶液からCHCl溶液を分離しながら、4回洗浄して、洗浄されたCHCl溶液を得る。
【0097】
フラスコの内容物の洗浄されたCHCl溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させて残留水を除去し、その後、濾過によって無水硫酸マグネシウムから乾燥させたCHCl溶液を分離する。
【0098】
フラスコの内容物の乾燥し分離したCHCl溶液を、60℃の温度および4.6ミリメートル(mm)の水銀(Hg)の真空(600パスカル(Pa))で4時間、回転蒸発させて、フラスコの内容物からCHClを除去し、それによって1069.6g(理論収率の87%)の固体反応生成物を残す。これは、室温(名目上25℃)でワックスである。
【0099】
そのワックスのFTIR分析は、下の式VIIIに示すとおりの構造を有するヒドロキシルアミド(アミドポリオールとしても公知)としてそのワックスの特性を示す。
【化17】

【実施例2】
【0100】
実施例1のヒドロキシアルキルアミドを使用するコーティング組成物の調製
ドライアイスボックスの中に2時間、マイクロミル粉砕機(Bel−Art Products)を入れ、その後、1分間、そのミルを動作させて、3.56gの実施例1のヒドロキシルアミドと20gのカルボキシル化ポリエステル樹脂(DSMから市販されている、URALAC(商標)P 5271)を併せ、微細な非焼結用粉体を生じさせる。6.5gのその粉体をエチレングリコールモノブチルエーテル(DOWANOL(商標)EB、The Dow Chemical Company)とシクロヘキサンの80:20(容積:容積)混合物に溶解して、塗料溶液または組成物を生じさせる。
【0101】
ナンバー(No.)28 BYK−Gardner ドローダウンバーを使用して、2つの無すずステンレス無すず鋼製パネル(4インチ(10.2cm)×(12インチ(30.5cm)×0.03インチ(0.76mm))上にその塗料溶液を引くまたは堆積させる。同様に、No.48 BYK−Gardner ドローダウンバーを使用して、2つの粉砕冷間圧延鋼製パネル上にその塗料溶液を引く。
【0102】
10分間、204℃のセットポイント温度で動作する加熱した強制空気対流炉に被覆パネルを入れて、その併せたヒドロキシルアミドとカルボキシル化ポリエステル樹脂が硬化する。Fisherscope Film Thickness Meterは、それらのステンレス無すず鋼製パネル上の塗膜が、0.35ミル(0.89×10−5メートル(m))の平均厚を有することを示す。前記冷間圧延鋼製パネル上の塗膜は、0.459ミル(1.16×10−5m)の平均厚を有する。
【0103】
冷間圧延パネル上の塗膜は、ASTM D3363 鉛筆硬度Hを有する。
【0104】
無すず鋼製パネル上の塗膜のウェッジ曲げ試験は、4回の測定に基づき破損のないことを示した。
【0105】
冷間圧延パネル上の冷間圧延パネル塗膜は、以下のような物理的特性を有する:
鉛筆硬度(ASTM D 3363)=H
円錐型マンドレル曲げ(ASTM D 522−93a)=破損なし
クロスハッチ接着性(ASTM D 3359)=合格
直接衝撃強度(ASTM D 2784)=(>)160インチ−ポンド(メートル法換算値1.84キログラム−メートル)より大きい
間接衝撃強度(ASTM D 2784)=(>)160インチ−ポンド(メートル法換算値 キログラム−メートル)より大きい。
【0106】
(比較例A)
エポキシ樹脂および末端にカルボン酸を有するポリエステル樹脂からの粉体コーティング組成物の調製
実施例2を繰り返し、前記ミルを1分間、動作させて易流動性粉体を調製するが、カルボキシル化ポリエステル樹脂の量を10gに減少し、実施例1のヒドロキシアルキルミドの代わりに10gのエポキシ樹脂(D.E.R.(商標)663U、The Dow Chemical Company)を使用する。その粉体は、150℃で7.1分(min.)および204℃で1.25分のゲル化時間、ならびに80℃のTgを有する。
【0107】
7.3gの易流動性粉体、0.0365gの2−フェニル−2−イミダゾリン、17.03gの80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴のポリエステル変性ポリジメチルシロキサン表面改質剤(BYK(商標)310、BYK Chemie USA)をガラスビンの中で併せ、そのビンを振盪機にのせて、固体成分の溶解を増進させる。実施例2の場合のようにパネルを被覆する。被覆パネルを実施例2の場合のように試験に付し、試験結果を下の表1および2にまとめる。
【0108】
(比較例B)
比較例Aを繰り返すが、カルボキシル化ポリエステル樹脂の量を20gに増加し、エポキシ樹脂の代わりに2.21gのヒドロキシルアミド(PRIMID(商標)XL−552、EMS−Primid、グラムあたり620から700ミリグラムの水酸化カリウム(mg KOH/g)のヒドロキシル値)を使用する。この粉体ブレンドは、204℃で2.3分のゲル化時間および15℃(副ピーク)および61℃(主ピーク)のTgを有する。
【実施例3】
【0109】
DEAおよびヒマシ油からのアミドポリオールの調製
200.07gのヒマシ油および276.03g(2.62mol)のジエタノールアミン(DEA)を、攪拌機および還流凝縮器を装備した2リットル丸底フラスコに入れる。フラスコの内容物に沈める熱電対を有する温度制御装置によって制御する電熱マントルにそのフラスコを据える。攪拌しながらフラスコの内容物を120℃のセットポイント温度に加熱し、攪拌を継続しながら一晩(約14時間)かけてその温度を維持する。フラスコの内容物のFTIR分析は、1733cm−1での極微量のエステル吸収を示す。
【0110】
1キログラム(kg)までCHClの添加を増加し、水性洗浄溶液を400gアリコートの2重量%NaCl溶液に変更し、回転蒸発条件を5時間の継続時間および2.3mmHg(306.6Pa)に変更することによって、生成物回収量を修正する。濾液を5時間かけて、60℃および2.3ミリメートルのHgで回転蒸発させてCHClを除去する。最終生成物は、室温で液体であり、12.56の%OHを有する。FTIRおよびH NMR分析は、以下に示すリシノールアミドトリオール構造を支持する。
【化18】

【実施例4】
【0111】
実施例3のリシノールアミドの無水エステル化
232.7g(1.717 OH当量)の実施例3のアミドポリオールを、実施例3の場合のように装備した500mL丸底フラスコに入れ、そのフラスコの内容物を90℃のセットポイント温度に加熱し、その後、毎分400回転(rpm)の攪拌速度で攪拌を継続しながらそのフラスコに18.73gのピロメリット酸二無水物(PMDAまたは1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;0.172当量)を添加する。PMDAの添加完了後、攪拌を継続しながら228.89gの無水フタル酸(1.545当量)をそのフラスコに添加し、セットポイント温度を135℃に上昇させ、約3時間かけて、またはカルボキシル(−COOH)含有量が、滴定によって判定して、安定したまたは一致したレベルに達するまで、内容物をその温度で維持する。
【0112】
フラスコの内容物をアルミホイル上に注ぎ、その後、そのアルミホイルおよびその内容物を冷凍庫(−15℃)に入れて内容物を凝固させ、その内容物を複数の塊に砕き、それらの塊をビンに入れ、ビンおよびその内容物を、さらなる使用または試験に必要となるまで、冷凍庫に戻しておく。
【0113】
フラスコの内容物または樹脂は、16.1%の理論%COOHと比較して、15.4%の%COOHを有する。フラスコの内容物のFTIR分析は、1852cm−1での残留無水カルボニル吸収量を示す。この樹脂は、150℃で600センチポアズ(0.6Pa.s)および200℃で150センチポアズ(0.15Pa.s)の粘度(コーン・プレート型レオメーター)を有する。この樹脂は、6℃のTgも有する。
【実施例5】
【0114】
実施例2の場合と同じ器具を用い、1分の粉砕時間を利用するが、ドライアイスボックス内での時間を45分に短縮して、15.76g(0.0204当量)の比較例Bの場合と同じエポキシ樹脂と6.0gの実施例4において調製した樹脂との粉砕混合物を作製する。送風機を使用してその粉砕混合物を室温に温めて、12℃のTgおよび204℃で1.7分のゲル化時間を有する微細な易流動性の粉体を生じさせる。
【0115】
1gのその粉体をアルミニウムパンに入れ、そのパンを、204℃のセットポイント温度で動作する強制空気対流炉に11分間入れてその樹脂を架橋または硬化させて、透明な架橋ポリマー樹脂を生じさせる。この硬化樹脂のDSC分析は、63℃の第1のTgを示す。同じ硬化樹脂の第2のDSC分析は、73℃の第2のTgを示す。この第2のTgは、最も蓋然的にはさらなる硬化または架橋の結果として、第1のTgより高い。
【実施例6】
【0116】
19.7g(0.0254当量)の実施例5の場合と同じエポキシ樹脂、7.5g(0.0255当量)の実施例4において調製した樹脂および0.54gの2−フェニル−2−イミダゾリンを、実施例5の場合と同じ器具および手順を用いて微細な易流動性粉体に転化させる。この粉体は、204℃で1.0分のゲル化時間および12℃のTgを有する。実施例5の場合のように硬化した後、その透明な架橋ポリマー樹脂は、第1のDSC分析については79℃のTg、および同じ架橋ポリマー樹脂の第2のDSC分析については78℃のTgを有する。DSC測定値が+/−3℃の実験誤差を有することは、当業者には理解される。
【実施例7】
【0117】
比較例Aの手順を用いるが、比較例Aの粉体ではなく実施例6の粉体を用い、追加の2−フェニル−2−イミダゾリンを用いず、10分ではなく11分の204℃での時間で被覆パネルを作製する。塗膜厚および塗膜特性試験結果については表1を参照のこと。
【実施例8】
【0118】
実施例3のアミドポリオールをPMDAではなく無水マレイン酸(MAH)でエステル化するように変更して、実施例4を繰り返す。変更は、アミドポリオール添加を227.14g(1.673 OH当量)に減少すること、攪拌速度を350rpmに低減すること、164.02gのMAHを添加する前にフラスコの内容物を50℃に加熱すること、MAH添加後にフラスコの内容物の温度を100℃に上昇させること、および100℃で3時間後、アルミニウムホイルへの注入、冷凍、複数の塊への破壊およびその後の冷凍庫での保管を含む実施例4の手順を用いるのではなくビン中にフラスコの内容物を注入することを含む。
【0119】
フラスコの内容物または樹脂は、19.3%の理論%COOHと比較して、18.8%の%COOHを有する。フラスコの内容物のFTIR分析は、1849−1での残留無水カルボニル吸収量を示す。
【0120】
この樹脂は、150℃で440センチポアズ(cps)(1.1パスカル秒(Pa.s))の粘度(コーン・プレート型レオメーター)、および−19℃のTgを有する。
【実施例9】
【0121】
実施例7を繰り返すが、ビンの内容物を1.86g(0.0073当量)の実施例8の樹脂、5.67g(0.0073当量)の比較例Aにおいて使用したのと同じエポキシ樹脂、17.57gの比較例Aで述べた80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴の比較例Aで述べたポリエステル変性ポリジメチルシロキサン表面改質剤に変更する。塗膜特性については表1および2を参照のこと。
【実施例10】
【0122】
攪拌機、窒素パッド、凝縮器および温度制御装置を装備した100mL丸底フラスコの中で、5.66g(0.0229当量)の実施例8の樹脂、17.67g(0.229当量)の実施例9において使用したのと同じエポキシ樹脂、および60mLの無水トルエンを併せる。フラスコの内容物を100℃の温度に加熱し、その温度を3時間の期間にわたって維持して、希釈「B段階」生成物を生じさせる。その希釈B段階生成物を、4時間、60℃および4.5mmHg(600Pa)での回転蒸発に付してトルエンを除去し、2.99の%COOHを有する実質的に未希釈のB段階生成物を生じさせる。この%COOHは、その樹脂反応体中、すなわちエポキシ樹脂を伴うB段階に存在する32.2%のCOOHと解釈される。このB段階生成物は、4500cps(4.5Pa.s)のコーン・プレート粘度を有する。このB段階生成物の第1のDSC分析は、23℃のTgを示し、その後、それぞれ153℃および178℃の開始温度およびピーク温度を伴う5ジュール/グラムの発熱を示す。同じB段階の生成物(第1のDSC分析を経た生成物)の第2のDSCスキャンは、69℃のTgを示す。実施例5の場合と同様に、Tgの増加は、非常に蓋然的には追加の硬化および架橋量を表す。
【実施例11】
【0123】
実施例9を繰り返すが、実施例8の樹脂およびエポキシ樹脂の代わりに9g(0.0078当量)の実施例10のB段階生成物を用いる。ビンの内容物を1.86g(0.0073当量)の実施例8の樹脂、5.67g(0.0073当量)の比較例Aにおいて使用したのと同じエポキシ樹脂、17.57gの比較例Aで述べた80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴の実施例Aで述べたポリエステル変性ポリジメチルシロキサン表面改質剤に変更する。塗膜特性については、表1および表2を参照のこと。
【実施例12】
【0124】
幾つかの点を変更して実施例8を繰り返す。第一に、アミドポリオール量を25g(0.1846 OH当量)に減少する。第二に、すべてのMAHの代わりに18.59g(0.1846 COOH当量)の無水コハク酸を用いる。第三に、フラスコのサイズを50mLに変更する。第四に、フラスコの内容物の温度を100℃に上昇させた後、そのフラスコに0.14gの2−メチルイミダゾールを添加する。第五に、%COOHが実施例4の場合のような安定したレベルに達するまで、約2.75時間、そのフラスコの内容物を100℃で維持する。この生成物は、20.36の%COOHおよび150℃で50センチポアズ(0.05Pa.s)の粘度(コーン・プレート型レオメーター)を有する。
【実施例13】
【0125】
幾つかの点を変更して実施例9を繰り返す。第一に、実施例8の生成物の代わりに1.86g(0.0084 COOH当量)の実施例12の生成物を用いる。第二に、エポキシ樹脂の量を6.5g(0.0084 エポキシ当量)に、および80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサン混合物の量を19.5gに増加する。硬化塗膜特性については、表1および2を参照のこと。
【実施例14】
【0126】
幾つかの点を変更して実施例4を繰り返して、実施例1のヒドロキシアルキルアミドをエステル化する。第一に、フラスコのサイズを50mLに変更し、フラスコの内容物を25.8g(0.194 OH当量)の実施例14のアミドポリオール、25.86g(0.175当量)の無水フタル酸、2.12g(0.0194当量)のPMDAに変更する。フラスコの内容物または樹脂は、16.23%の理論%COOHと比較して、15.84%の%COOHを有する。この樹脂は、150℃で1000cps(1.0Pa.s)の粘度(コーン・プレート型レオメーター)、および6℃のTgを有する。
【実施例15】
【0127】
幾つかの点を変更して実施例5を繰り返して、実施例14の樹脂を含む粉砕粉体を調整する。第一に、45分ではなく0.5時間、ドライアイスボックス内に粉砕機を入れ、粉砕時間を1分から2分に増やし、粉砕する材料を15.0g(0.0194当量)の実施例5の場合と同じエポキシ樹脂、5.51g(0.0194当量)の実施例17の粉砕粉体、および0.41gの2−フェニル−2−イミダゾリン(URALAC(商標)5271、DSM)に変更する。この粉体は、204℃で0.8分のゲル化時間を有する。
【0128】
実施例5の場合と同じ方法を用いて、1.03gのその粉体を透明な架橋ポリマー樹脂に転化させる。その硬化樹脂のDSC分析は、83℃のTgを示す。同じ硬化樹脂の第2のDSC分析は、83℃のTgを示す。
【実施例16】
【0129】
実施例7を繰り返すが、実施例4の樹脂の代わりに実施例14の樹脂を用いる。硬化塗膜特性については、表1および2を参照のこと。
【実施例17】
【0130】
幾つかの点を変更して実施例1を繰り返して、DEAおよびメチルステアリン酸12−ヒドロキシメチルからアミドポリオールを調製する。フラスコを2リットル丸底フラスコに変更し、フラスコの内容物を400g(1.217mol)のメチルステアリン酸12−ヒドロキシメチル(基礎物質としてヒマワリ油のメチルエステルを使用する還元ヒドロホルミル化生成物)、511g(4.86mol)のDEAおよび0.915(0.014mol)の85%KOH(メタノール溶液中)に変更する。実施例14の場合のように65℃ではなく50℃に冷却し、生成物を回収する前のFTIR分析は、1729cm−1での極微量のエステル吸収を示す。還元ヒドロホルミル化の手順については、上で引用した教示、特に、米国特許第4,496,487号(Peermanら)および米国特許第4,423,162号(Peermanら)(両方とも、前に本明細書に参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0131】
生成物回収のために、実施例1において使用した400mLのCHClの代わりに780gのトルエンを用い、洗浄液を560gの3重量%炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液に変更する。さらに回転蒸発時間を1.5mmHg(200Pa.s)の真空での6時間に増やす。その生成物(室温で液体)は、450.3g(理論収量の92.1%)の重量であり、12.092の%OHを有する。FTIRおよびH NMR分析は、下に示すとおりの構造を有するアミドポリオールを支持する。
【化19】

【実施例18】
【0132】
幾つかの点を変更して実施例1を繰り返して、実施例17のアミドポリオール生成物を使用してエステル化生成物を作る。第一に、フラスコの内容物を25g(0.1777 OH当量)の実施例17のアミドポリオール生成物および17.89g(0.1777 COOH当量)の無水コハク酸に変更する。第二に、フラスコの内容物を100℃に加熱し、0.14gの2−メチルイミダゾールを添加し、その後、%COOHが安定するまで(約3時間)そのフラスコの内容物を100℃で維持する。この樹脂は、18.59%の理論%COOHと比較して、18.44%の%COOHを有し、150℃で70cps(0.07Pa.s)の粘度(コーン・プレート型レオメーター)を有する。
【実施例19】
【0133】
比較例Aの手順を用いて、ガラスビンの中で、1.85g(0.00758 COOH当量)の実施例18の樹脂、5.86g(0.00758 エポキシ当量)の実施例5の場合と同じエポキシ樹脂、18gの比較例Aで述べた80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物混合物および3滴の比較例Aの場合と同じポリシロキサン表面改質剤を併せ、同じく比較例Aの場合のように被覆パネルを作製する。塗膜特性については、表1および表2を参照のこと。
【実施例20】
【0134】
幾つかの点を変更して実施例3を繰り返して、DEAからアミドポリオールを調製し、大豆油メチルエステルを還元ヒドロホルミル化する。上の実施例14の場合のように、還元ヒドロホルミル化手順については、上で引用した教示、特に、米国特許第4,496,487号(Peermanら)および米国特許第4,423,162号(Peermanら)(両方とも、前に本明細書に参照により組み込まれる)を参照のこと。第一に、2リットル丸底フラスコではなく3リットル丸底フラスコを使用し、フラスコの内容物を400gの還元ヒドロホルミル化大豆油メチルエステルおよび514.33g(4.89mol)のDEAに変更する。第二に、温度を110℃に変更する。実施例3の場合のように攪拌しながら加熱した後のフラスコの内容物のFTIR分析は、1735cm−1での微量のエステル吸収を示す。
【0135】
生成物回収のために、実施例17の手順を用いるが、トルエン添加を1500mLに増加し、洗浄溶液の量を1000gアリコートに増加する。その生成物(室温で半固体)は、11.59の%OHを有する。FTIRおよび1H NMR分析は、その生成物についてアミドポリオール構造を示唆する。
【実施例21】
【0136】
幾つかの点を変更して実施例4を繰り返して、実施例20のアミドポリオールをエステル化する。第一に、実施例3のアミドポリオールではなく、252.16g(1.842 OH当量)の実施例20のアミドポリオールを、丸底フラスコに入れる。第二に、PMDAを添加する前にフラスコの内容物を70℃に加熱し、PMDAの量を20.09g(0.184当量)に変更する。第三に、無水フタル酸の量を245.55g(1.658当量)に増加する。この生成物は、16.02%の理論%COOHに対して15.78%の%COOHを有し、150℃で1100cps(1.1Pa.s)のコーン・プレート粘度、および12℃のTgを有する。
【実施例22】
【0137】
幾つかの点を変更して実施例6を繰り返して、実施例21の生成物に基づく粉体塗料配合物を調製する。第一に、粉砕機で加工する材料を7.63g(0.00987当量)の実施例6の場合と同じエポキシ樹脂、2.94g(0.00988当量)の実施例24の生成物、および0.21gの実施例6の場合と同じ2−フェニル−2−イミダゾリンに変更する。第二に、粉砕時間を2分に増加して、微細な微流動性粉体を生じさせる。この粉体のDSC分析は、60℃で融解吸熱を示し、その後、91℃および153℃のそれぞれ開始温度およびピーク温度を伴う66ジュール/グラムの発熱を示す。この粉体は、204℃で0.78分のゲル化時間、および12℃のTgを有する。実施例5の場合のような硬化の後、その透明な架橋ポリマー樹脂は、84℃のTgを有する。
【実施例23】
【0138】
実施例7を繰り返して、実施例22の粉体を使用して被覆パネルを作製する。塗膜特性については、表1および2を参照のこと。
【実施例24】
【0139】
幾つかの点を変更して実施例21を繰り返して、PMDAおよび無水フタル酸ではなく無水マレイン酸(MAH)を使用して実施例20のアミドポリオールをエステル化する。第一に、226.68g(1.640 OH当量)の実施例20のアミドポリオールを使用し、フラスコの内容物を70℃ではなく60℃に加熱し、その後、161.74gのMAHをフラスコに添加する。第二に、MAH添加後にフラスコの内容物を実施例24の場合のように135℃ではなく90℃に加熱する。この生成物は、19.10%の理論%COOHに対して、18.38%の%COOH、150℃で125cps(1.45Pa.s)のコーン・プレート粘度、および−28℃のTgを有する液体である。この生成物のFTIR分析は、1849cm−1での残留無水カルボニル吸収量を示す。
【実施例25】
【0140】
1.93g(0.00783 COOH当量)の実施例21の生成物、6.06g(0.99784 エポキシ当量)の実施例5の場合と同じエポキシ樹脂、0.303gの2−フェニル−2−イミダゾリン、14.13gの比較例Aで述べた80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴の比較例Aの場合と同じポリシロキサン表面改質剤をガラスビンに入れ、比較例Aの場合のようにビンの内容物を振盪して固体を溶解する。実施例7の場合のように被覆プレートを作製し、下の表1および2に結果を報告する。
【実施例26】
【0141】
幾つかの点を変更して実施例17を繰り返して、DEAおよび11−ヒドロキシウンデカン酸メチルからアミドポリオールを調製する。第一に、フラスコを1リットル丸底フラスコに変更し、フラスコの内容物を200g(0.9246mol)の11−ヒドロキシウンデカン酸メチル、388g(3.6903mol)のDEA、0.62g(0.009mol)の実施例20の場合と同じ85%KOH溶液に変更する。第二に、フラスコの内容物を攪拌しながら80℃に加熱して透明無色の溶液を生じさせ、20時間、その温度で攪拌を継続する。冷却前のその溶液のFTIR分析は、1729cm−1での極微量のエステル吸収を示す。第三に、その溶液を室温(名目上23℃)に冷却し、その後、フラスコの内容物を3時間かけて、60℃および4mmHg(533.3Pa)で回転蒸発させてメタノールを除去する。
【0142】
フラスコの内容物を400mLの2重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液と併せ、併せた内容物を3時間かけて攪拌する。併せた内容物を目の粗いガラスフリットブフナー漏斗によって真空濾過し、併せた内容物の固体部分を追加の400mLの2重量%NaCl水溶液ですすぐ。フラスコの内容物のすすいだ固体部分と500mLの新たな2重量%NaCl溶液を3時間かけて混合し、その後、目の粗いガラスフリットブフナー漏斗によって真空濾過する。濾過した固体を800mLの脱イオン水ですすぎ、その後、換気フード内で3日間、それらの固体を放置して空気乾燥させる。それらの固体を650mLのトルエンと3時間かけて混合し、その後、目の粗いガラスフリットブフナー漏斗による真空濾過によってトルエンから固体を分離する。分離した固体をトルエンの2つの別個のアリコートですすぎ、その後、それらの分離した固体を一定重量になるまで70℃で回転蒸発させる。回転蒸発させた固体または最終生成物は、231.8g(理論収量の88%)の重量の白色固体である。FTIRおよび1H NMR分析は、次のとおりのアミドポリオール(トリオール)構造を支持する:
【化20】

【実施例27】
【0143】
比較例Aの手順を繰り返して(但し、粉砕時間を2分に増やす)、15g(0.0208当量(COOH当量))の比較例Aの場合のようなカルボン酸官能性ポリエステルおよび1.96g(0.0194当量)の実施例26のアミドポリオールを、204℃で1分と46秒のゲル化時間を有する微細な易流動性粉体に転化させる。この粉体のDSC分析は、69℃および79℃の融解吸熱を示し、その後、180℃および230℃のそれぞれ開始温度およびピーク温度を伴う8.35ジュール/gの発熱を示す。比較例Aの場合のように204℃で11分間、1.4gの粉体を硬化させて、第1のDSCスキャンで56℃および第2または反復スキャンで65℃のTgを有する透明な硬化ポリマーを生じさせる。
【実施例28】
【0144】
幾つかの点を変更して実施例14を繰り返して、実施例26のアミドポリオールをエステル化する。第一に、17.53g(0.1733 OH当量)の実施例26のアミドポリオール、21.97g(0.1444当量)の無水シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、および3.15g(0.0289当量)のPMDAを50mL丸底フラスコに入れ、フラスコの内容物を120℃に加熱し、その後、0.14gの2−メチルイミダゾールをそのフラスコに添加する。実施例17の場合のように決定する%COOHが、18.2%の理論%COOHに対して17.2%で安定するまで(約2時間)、120℃で攪拌を継続する。フラスコの内容物(周囲温度(名目上23℃)で液体)をビンに注入する。多官能性の酸としても公知のこの液体は、150℃で650cps(0.65Pa.s)のコーン・プレート粘度を有する。
【実施例29】
【0145】
加熱ランプの下に振盪機を配置するが、実施例25の手順を繰り返して、2.2g(0.0077 COOH当量)の実施例28の多官能性の酸、5.97g(0.0077 エポキシ当量)の実施例25の場合と同じエポキシ樹脂、18.64gの比較例Aで述べたのと同じ80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴の比較例Aの場合と同じポリシロキサン表面改質剤を併せて振盪したものから被覆プレートを作製する。塗膜特性を下の表1にまとめる。
【実施例30】
【0146】
無水テトラヒドロフタル酸の代わりに無水フタル酸を用いることを含む変更を伴って実施例28を繰り返して、実施例26のアミドポリオールをエステル化する。第一に、フラスコの内容物を22g(0.2175 OH当量)の実施例26のアミドポリオール、28.99g(0.196当量)の無水フタル酸および2.37g(0.0217当量)のPMDAに変更し、滴定によって判定して%COOHが安定するまで(約3時間)、攪拌しながら、但し、2−メチルイミダゾールは添加せずに135℃に加熱して、18.34の理論%COOHに対して17.87%の%COOH、および150℃で2000cps(2Pa.s)のコーン・プレート粘度を有する液体を生じさせる。
【実施例31】
【0147】
幾つかの点を変更して実施例22を繰り返して、実施例30のエステル化アミドポリオールから粉体塗料配合物を調製する。15g(0.0194 エポキシ当量)の実施例29の場合と同じエポキシ樹脂、4.89g(0.0194 COOH当量)の実施例30のエステル化された液体、および0.1gの2−フェニル−2−イミダゾリンを粉砕機に入れ、その粉砕機を2時間、ドライアイスボックス内に入れ、その後、その粉砕機の内容物を2分間、粉砕する。送風機で周囲温度に温めると、それらの粉砕された内容物は、400℃で43秒のゲル化時間および13℃のTgを有する微細な易流動性粉体になる。この粉体のDSC分析は、60℃での融解吸熱、その後、110℃および168℃のそれぞれ開始温度およびピーク温度を伴う45ジュール/gの発熱も示す。1.34gの粉体の硬化によって、91℃の第1DSCスキャンTgおよび89℃の反復または第2スキャンTgを有する透明なポリマーが生ずる。
【実施例32】
【0148】
実施例30の場合と同じ器具を使用して、ヒマシ油(FLEXRICIN(商標)13、CasChem、165.3gの算出OH当量、約0.1515 OH当量)からの25gのグリセロリシス生成物、15.25g(0.1515 COOH当量)の無水コハク酸および0.14gの2−メチルイミダゾールを50mL丸底フラスコに入れ、フラスコの内容物を100℃に加熱し、攪拌を継続しながら2時間、その温度を維持する。FTIR分析は、ヒドロキシル基吸収の証拠を示さない。フラスコの内容物(液体無水エステル化生成物または多官能性の酸)をビン内に入れる。この内容物は、20.0%の理論%COOHに対して18.4%の%COOH、および150℃で30cps(0.03Pa.s)のコーン・プレート粘度を有する。
【実施例33】
【0149】
実施例25の手順を繰り返して、2.16g(0.0088 COOH当量)の実施例32の多官能性の酸、4.79g(0.0088 エポキシ当量)の実施例25の場合と同じエポキシ樹脂、16.2gの比較例Aで述べたのと同じ80:20 DOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物、および3滴の比較例Aの場合と同じポリシロキサン表面改質剤を併せて振盪したものから被覆プレートを作製する。塗膜特性を下の表1にまとめる。#22ドローダウンバーを使用して塗料を堆積させ、204℃での被覆パネル時間を10分に減少する。硬化後、それらの塗膜は、0.346ミル(8.79×10−6m)の厚さ、48℃の第2のDSCスキャンTg、0mmのウェッジ曲げ破損、および25のMEK二重摩擦破損数を有する。
【実施例34】
【0150】
グリコール化エポキシ化大豆油を次のとおり調製する。第一に、222g(3.58mol)のエチレングリコールおよび4.7gのナトリウムメトキシド(ナトリウムメトキシドとメタノールを併せた重量に基づき、メタノール中の25重量%の溶液)を、磁気攪拌機を装備した500mL三つ口丸底フラスコに入れる。フラスコをその内容物と共に加熱マントルに配置する。フラスコの口に、Thermowatch(温度制御装置)と、凝縮器および窒素導入口を具備するディーン・シュタルクトラップと、50g(0.053mol)のエポキシ化大豆油(ESO)を有する添加漏斗を取り付ける。窒素導入口を通して窒素流をおよび凝縮器に水流を出し、その後、フラスコの内容物を150℃のセットポイント温度に加熱し、その後、20分間かけてESOを1滴ずつ添加する。1時間、攪拌しながら加熱を継続し、その後、加熱マントルからフラスコおよびその内容物を取り外し、それらを放置して室温(名目上25℃)に冷却し、その後、内容物を(pH試験紙によって示されるように、内容物がまさに酸性に変わり始めるまで)酢酸で中和し、その後、ワイプフィルムエバポレータ(WFE)を使用して精製されたグリコール化ESOを回収する。WFE動作条件としては、ジャケット温度=90℃;コールドフィンガー温度=33.5℃;圧力=2.2トール(293.3パスカル(Pa));攪拌速度=530rpm;および添加量=6mL/分(ミリリットル毎分)が挙げられる。
【0151】
実施例33の器具および手順を用いて、グリコール化ESOをエステル化する。22.91g(0.2147当量)のグリコール化ESO、28.62g(0.1932当量)の無水フタル酸および2.34gのPMDAを50mL丸底フラスコに入れ、フラスコの内容物を実施例30の場合のように処理する。フラスコの内容物のFTIR分析は、ヒドロキシル基吸収を示さず、それによってヒドロキシル部分の完全反応を示唆する。フラスコ内容物の%COOHは、16.41%の理論%COOHに対して16.44%である。フラスコの内容物(液体)は、150℃で150センチポアズ(0.15Pa.s)のコーン・プレート粘度を有する。
【実施例35】
【0152】
実施例31の器具を用い、および実施例31の手順の変形(ドライアイスボックス内での時間を14時間に増やし、粉砕時間を1分に減少する)を用いて、12g(0,0155 エポキシ当量)の実施例34の場合と同じエポキシ樹脂、4.25g(0.0194 COOH当量)の実施例34の液体および0.08gの2−フェニル−2−イミダゾリンを、400℃で0.72分のゲル化時間を有する微粉に転化させる。この粉体のDSC分析は、13℃および30℃のTgと、60℃での融解吸熱、その後、101℃と167℃のそれぞれ開始温度およびピーク温度を伴う58ジュール/gの発熱を示す。この粉体は、70℃の第1通過DSC Tgおよび76℃の第2通過DSC Tgを有する透明なポリマーへと硬化する。
【実施例36】
【0153】
実施例33の器具を用いて、7.3gの実施例35からの粉体、17.03gのDOWANOL(商標)EB:シクロヘキサノン混合物の80:20ミックス、および3滴の比較例Aの場合と同じポリシロキサン表面改質剤を、振盪塗料溶液に転化させる。#46ドローダウンバーを使用して冷間圧延鋼製パネルを被覆し、#26ドローダウンバーを使用して無すず鋼製パネルを被覆する。硬化した冷間圧延鋼製パネル塗膜は、0.62ミル(1.57×10−5m)の厚さ、8mmで1/8インチのマンドレル曲げ破損評価、破損なしのクロスハッチ評価、インチポンドで140/10未満の耐衝撃性(正面/裏面)評価を有する。無すず鋼製パネルの塗膜は、0.389ミル(9.88×10−6m)の厚さおよび94mmのウェッジ曲げ破損評価を有する。
【表1】

【0154】
表1のデータは、本発明の組成物に基づく溶剤利用塗膜が、良好から非常に良好な柔軟性、靭性、接着性および硬度、ならびに、比較例Aに比べて、改善された耐溶剤性を示すことを示している。
【表2】

【0155】
表2に提示するデータは、本発明を代表する幾つかの組成物(例えば、実施例2、実施例7、実施例13、実施例16、実施例23および実施例33)に基づく溶剤利用塗膜が、ウェッジ曲げ試験に合格すること(卓越した接着性、柔軟性および靭性の指標)を明示している。実施例9、実施例11、実施例19および実施例25は、ウェッジ曲げ試験について所望の値より高い値を有するが、ウェッジ曲げ試験において起こる程度の曲げを必要としない用途では有用である。
【表3】

【0156】
表3に提示したデータは、本発明の酸官能基化組成物に基づく硬化塗膜が、末端にカルボン酸を有するポリエステルに基づく比較例Aのものに類似したTgを有することを明示している。従って、本発明の酸官能基化組成物は、末端にカルボン酸を有するポリエステルの許容可能な代替となる。本発明の酸官能基化組成物は、より短いゲル化時間(末端カルボン酸を有するポリマーに比べて、高い反応性および速い硬化の指標)を有するので、本発明の組成物は、従来の末端にカルボン酸を有するポリマーより好ましいものであり得る。
【0157】
表1、2および3のデータは、再生可能な資源(例えば、種子油)に基づく、本発明の組成物が、末端にカルボン酸を有するポリエステルなどの化石燃料由来材料に匹敵する性能を提供することを明示している。従って、本発明の組成物の使用により、コストおよび化石燃料系原料への依存を低減する可能性がある。
【表4】

【0158】
表4に提示するデータは、本発明の組成物が、従来の末端にカルボン酸を有するポリエステル(比較例AおよびB)よりはるかに低い粘度を有することを示している。これは、加工の利点、例えば、改善された混合および支持体湿潤と解釈される。
【実施例37】
【0159】
ハイブリッド粉体コーティング組成物の調製
上の実施例8において使用したフラスコおよび(実施例9および実施例10についての材料を除去した後の)その残存内容物を、60℃のセットポイント温度で動作するオーブンに2時間入れる。そのオーブンからフラスコを取り出し、内容物を高ガラス皿(長さ45センチメートル(cm)×幅30cm×深さ5cm)に注入する。内容物を放置して周囲温度(名目上25℃)に冷却し、その後、1時間、−109.3°F(−78.5℃)の温度を有するドライアイス容器に入れて、内容物を凝固させる。
【0160】
そのガラス皿から凝固した内容物を除去し、それらの凝固内容物を砕いて破片にし、16.4重量部(pbw)の破片を高速ミキサー(Prism Pilot(商標)、Thermo Electron Corporation)に入れる。54.21pbwの比較例Aにおいて使用したのと同じエポキシ樹脂、第1触媒として0.14pbwのエポキシ樹脂とイミダゾールの反応生成物(EPI−CURE(商標)P101、Hexioin Specialty Chemials,Inc.)、第2触媒として0.21pbwのトリフェニルホスフィン(Rhodia Inc.)、27.4pbwの二酸化チタン顔料(Ti−Pure(登録商標)R−706、E.I.du Pont de Nemours & Company)、流れ調整剤として1.32pbwのエチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマーと二酸化ケイ素のブレンド(MODAFLOW(登録商標)POWDER III Resin Modifier、Cytec Surface Specialties Inc.)、および脱ガス剤として0.49pbwのベンゾイン(Sigma Aldric)を添加する。ドライアイス以外のミキサーの内容物の100重量部あたり20重量部のドライアイスを添加する。200回転毎分(rpm)の速度で15秒間、ミキサーを動作させ、その混合物の内容物を放置して脱揮し、その後、途中で脱揮段階を入れながらミキサー速度を15秒増分で徐々に2300rpmに上昇させて、微粉砕混合物を生じさせる。
【0161】
3つの加熱ゾーン、冷却ロール、ならびにベルトフレーカーおよびチッパーを装備した二軸スクリューコンパウンド用押出機(PRISM(商標)TSE 24PC、Thermo Electron Corporation)を使用して、その微粉砕混合物を押出物に転化させる。加熱ゾーンおよびそれらそれぞれのセットポイント温度は、供給ゾーン=20℃;中間ゾーン=70℃;および加熱ゾーン=90℃である。この押出機は、24mmのスクリュー直径および400rpmのスクリュー速度を有する。
【0162】
凝固した押出物を砕いて破片またはフレークにし、それらの破片またはフレークをHosokawa MIKRO PUL(商標)ACM−2L粉砕機(Micron Powder Systems)に供給して、46マイクロメートル(μm)の平均粒径および204℃で51.4秒の平均ゲル化時間を有する粉砕粉体を生じさせる。
【0163】
2つの異なる金属製支持体上にその粉砕粉体のアリコートを静電吹付けして、2つの吹付被覆支持体を生じさせる。一方の吹付被覆支持体を20分間、130℃の硬化温度に付し、他方のまたは第2の吹付被覆支持体を20分間、180℃の硬化温度に付す。硬化した後、第1の吹付被覆支持体は、2.25ミル(5.7×10−5メートル(m))の塗膜厚、5Bの接着度(ASTM D3359)、および20°で26.8、60°で76.1および85°で80.3のASTM D523光沢度を有する。同様に、第2の吹付被覆支持体は、3.19ミル(8.1×10−5メートル(m))の塗膜厚、5Bの接着度(ASTM D3359)、および20°で7.1、60°で42および85°で63.9のASTM D523光沢度を有する。硬化した吹付被覆支持体は、両方とも、艶消しの外観を有する塗膜を有し、ASTM D522(円錐型マンドレル)によると不合格評価となる。第2の硬化した吹付被覆支持体は、やや黄色い色合いを有する塗膜を有する。両方の硬化した吹付被覆支持体の正面衝撃試験により、20インチ−ポンドのASTM D 2794評価が得られる。MEK二重摩擦試験により、第1の支持体は10未満および第2の支持体は100の塗膜二重摩擦破損数が得られる。両方の塗膜が3Hの鉛筆硬度を有する。
【0164】
実施例38〜41および比較例C
実施例38および40については実施例4のヒマシ油誘導体、実施例39および実施例41については実施例21の大豆油誘導体、ならびに比較例Cについてはどちらでもない誘導体を使用して下の表5に示す配合を用いて実施例37を繰り返す。すべてがエポキシ樹脂(DER 663U、The Dow Chemical Company)量を含有する。比較例Cならびに実施例38および39は、エポキシ樹脂硬化に使用する飽和カルボキシル化ポリエステル樹脂(URALAC(商標)5998、DSM Coating Resins Europe B.B.)量を含む。実施例38〜41および比較例Cのそれぞれは、28.1重量%の実施例37の場合と同じ二酸化チタン粉末、1.0重量%の実施例37の場合と同じ流れ調整剤、0.4重量%の実施例37の場合と同じ脱ガス剤、および0.18重量%の2−フェニル−2−イミダゾリン(Vestagon(登録商標)B 31、Degussa Corporation)を含有する。これらの重量%値ならびに下の表5における重量%値のそれぞれは、全コーティング組成物重量に基づく。硬化条件としては、200℃の温度および20分の時間が挙げられる。硬化した塗膜の物理的特性の試験結果も表5にまとめる。
【表5】

【0165】
表5に提示するデータは、種子油酸誘導体の使用が、従来のカルボン酸ポリエステルによって生じる引掻き抵抗性に比べて改善された引掻き抵抗性を生じさせる(比較例Cに比べて、実施例40および41)ことを示唆している。このデータは、従来のカルボン酸ポリエステルの一部(実施例38および39)または全部(実施例40および41)の代わりに種子油酸誘導体を使用すると、ゲル化時間と光沢低下の両方が起こることも示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによって表される、末端にヒドロキシル基を有するモノマー:
【化21】


[式中、
は、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、H、ヒドロカルビル部分、または式IIによって表される部分:
【化22】


(この式中のRは、上で定義したとおりである)
であり;ならびにm、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする]。
【請求項2】
式中のm、nおよびoの合計がゼロである式Iによって表される末端ヒドロキシル基を有する第2のモノマー量との混合物で、請求項1に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマーを含む、末端ヒドロキシル基含有モノマー組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマーの量が、全組成物重量に基づき70重量パーセントであるかそれより多い、請求項2に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマーの量が、全組成物重量に基づき75重量パーセントであるかそれより多い、請求項2に記載の末端ヒドロキシル基含有モノマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマー、末端にカルボン酸を有するモノマーおよび、場合によっては、請求項1に記載の末端にヒドロキシル基を有するモノマー以外のヒドロキシアルキルアミドと多官能性エポキシ樹脂のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性組成物。
【請求項6】
請求項2に記載の末端ヒドロキシル基含有モノマー、末端にカルボン酸を有するモノマーおよび、場合によっては、請求項2に記載のいずれかの末端ヒドロキシル基含有モノマー以外のヒドロキシアルキルアミドと多官能性エポキシ樹脂のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性組成物。
【請求項7】
式IIIによって表される、アミドカルボン酸を含む反応性モノマー組成物:
【化23】


[式中、Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、無いか、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、ヒドロカルビレン部分であり;Rは、H、ヒドロカルビル部分または式IVによって表される部分:
【化24】


(この式中のRは、上で定義したとおりであり、Rは、式V:
【化25】


の部分であり、この場合のRは、ヒドロカルビレン部分である)
であり;ならびにm、nおよびoは、独立して0または1であるが、但し、m、nおよびoの合計がゼロより大きいことを条件とする]。
【請求項8】
請求項7に記載の反応性モノマー組成物、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、前記反応性モノマー組成物以外のモノマーであって末端カルボン酸部分を有するモノマーと硬化触媒のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
無水カルボン酸を以下のうちの少なくとも1つとの反応させることを含む、末端カルボン酸部分を有する反応性モノマーを調整するための方法:
a.式VIによって表される開環エポキシ化油:
【化26】


b.式VIIによって表される、開環エポキシ化脂肪酸エステルまたは開環エポキシ化脂肪酸:
【化27】


(式中、Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;Rは、水素またはヒドロカルビル部分であり;nおよびpは、0であるか、1〜20の範囲内の正の整数であり;a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、kおよびlは、独立して、0または1であるが、但し、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiの合計またはj、kおよびlの合計がゼロより大きいことを条件とし;ならびにXは、
【化28】


であり、この場合、R10は、独立して、水素、ヒドロキシルヒドロカルビル部分またはヒドロカルビル部分であり;およびR11は、独立して、水素またはヒドロカルビル部分である);または
c.ヒマシ油とポリオールとのアルコール分解反応の生成物。
【請求項10】
前記ポリオールが、グリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールから成る群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法によって調整される反応性モノマー。
【請求項12】
請求項11に記載の反応性モノマー、多官能性エポキシ樹脂および、場合によっては、末端カルボン酸部分を有するモノマー(前記モノマーは、請求項12に記載の反応性モノマーとは異なる)と硬化触媒のうちのいずれかまたは両方を含む、硬化性組成物。
【請求項13】
請求項5、請求項6または請求項8のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含むコーティング組成物。
【請求項14】
請求項7に記載の反応性モノマー組成物または請求項11に記載の反応性モノマーを含むコーティング組成物。

【公表番号】特表2010−515730(P2010−515730A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545549(P2009−545549)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/087054
【国際公開番号】WO2008/088624
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】