説明

末端官能基含有重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含んでなる組成物

【課題】片末端部位に官能基を有する重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含む樹脂添加剤を提供する。
【解決手段】次の(i)〜(iii)を同時に満たす一般式(I)の二重結合含有重合体と、一般式(II)のチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させて得られる末端官能基含有重合体。(i)エチレン単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位が0〜19mol%の範囲、(ii)分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜3.0、且つMwが400〜500000の範囲、(iii)末端ビニル基含有率(L)が50mol%以上、且つ末端不飽和率(M)が70mol%以上。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端にオレフィン性二重結合を有する重合体を変性して官能基を導入することにより得られる末端官能基含有重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含んでなる樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体あるいはα−オレフィン重合体は、コスト的、機械的特性に優れ、様々な樹脂製品の原料として最も幅広く使用されている。しかしながら、分子構造が非極性であり、他物質との親和性に乏しいため、各種の官能基を導入することが試みられている。例えば、片末端に二重結合を含有するα−オレフィン重合体の末端をヒドロキシル化、エポキシ化、マレイン化、スルホン化、シリル化、ハロゲン化変性した重合体などが報告されている(例えば特許文献1、2)。また、チオールを用いたラジカル反応による官能基化は、低分子の二重結合については多くの報告例があるが、重合物に対しては末端チオール体の合成法としてチオ酢酸を用いる反応はよく知られているが、その他のチオール体を用いた場合は変性率が低く十分なものではない(例えば非特許文献3、4)。
【特許文献1】特公平7−91338号公報
【特許文献2】特開2003−73412号公報
【非特許文献3】Macromolecules 2005, 38, 5538-5544
【非特許文献4】Polymer 2005, 46, 12057-12064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、重合体の片末端部位に官能基を有する重合体、及びそれを含む樹脂添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、オレフィン重合体の片末端に種々の官能基を有するチオール体を導入することにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次の(i)〜(iii)の特徴を同時に満たす一般式(I)で表される二重結合含有重合体と、一般式(II)で表されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させて得られることを特徴とする末端官能基含有重合体である。
【0006】
(i)エチレン単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単
位が0〜19mol%の範囲にあり、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布
(重量平均分子量と数平均分子量の比、Mw/Mn)が1.1〜3.0の範囲に
あり、且つ重量平均分子量(Mw)が400〜500000の範囲にあり、
(iii)H−NMRにより計算される末端ビニル基含有率(L)が50mol%以
上であり、且つH−NMRとGPCにより計算される末端不飽和率(M)が
70mol%以上である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Aは、炭素原子数2〜20のオレフィンの重合体を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Xは水素原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基またはヘテロ環式化合物残基を表す。)
本発明の末端官能基含有重合体は、H−NMRにより計算される二重結合の転化率が90%以上であることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、前記一般式(I)で表される二重結合含有重合体と、前記一般式(II)で表されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(III)で表される構造を有する末端官能基含有重合体の製造方法である。
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、A、R、RおよびXは、それぞれ一般式(I)および(II)と同様のものを表す。)
更に本発明は、上記の末端官能基含有重合体を含んでなる樹脂組成物にも関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により重合体の片末端部位に官能基を有する末端官能基含有重合体を提供することができる。該末端官能基含有重合体は高価なモノマー原料を使用しないため経済性の面においても有利である。また、様々な官能基が同一の手法を用いることで行うことができる点においても有効である。また、本発明の新規な末端官能基含有重合体により、樹脂添加剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の末端官能基含有重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含んでなる樹脂組成物について具体的に説明する。
【0016】
本発明の末端官能基含有重合体は、前記一般式(I)で表される二重結合含有重合体と、前記一般式(II)で表されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させて得られることを特徴としている。
【0017】
<二重結合含有重合体>
本発明の末端官能基含有重合体を形成する一方の原料である二重結合含有重合体は、下記一般式(I)で示される重合体である。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(I)中、Aは炭素原子数2〜20のオレフィンの重合体であり、Aを構成する炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィンが挙げられ、重合体としてはこれらオレフィンの単独あるいは相互の重合体あるいは、特性を損なわない範囲で、他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであっても良い。この中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0020】
一般式(I)中、R、Rとしては、Aを構成するオレフィンの二重結合に結合した置換基である水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基であり、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などである。
【0021】
一般式(I)で表される二重結合含有重合体は、エチレン単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位が0〜19mol%の範囲にある。好ましくは、エチレン単位が90〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位が0〜10mol%の範囲である。
【0022】
一般式(I)で表される二重結合含有重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)により測定した重量平均分子量(Mw)は、400〜500000であり、好ましくは800〜200000であり、さらに好ましくは1000〜100000である。ここで、Mwとは、ポリスチレン換算値である。
【0023】
一般式(I)で表される二重結合含有重合体のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜3.0であり、好ましくは1.1〜2.5である。
【0024】
(GPCによる分子量および分子量分布の測定方法)
一般式(I)で表される二重結合含有重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0025】
本発明の一般式(I)で表される二重結合含有重合体のH−NMRにより計算される末端ビニル基含有率(L)は、50mol%以上であり、好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上である。また、H−NMRとGPCにより計算される末端不飽和率(M)は、全片末端の70mol%以上であり、より好ましくは75mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0026】
(NMR測定方法、並びに末端ビニル基含有率(L)および末端不飽和率(M)の決定方法)
本発明で用いられる一般式(I)で表される二重結合含有重合体の、H−NMRで測定されたビニル、ビニレンおよびビニリデン型の二重結合のピークは、ビニル基に基づく3プロトン分のピークのうち2プロトン分のピーク(H1)が4.9〜5.0ppm付近、残りの1プロトン分が5.7〜5.9ppm付近に観測される。またビニレン基に由来する2プロトン分のピーク(H2)が5.0ppm付近に観測される。さらにビニリデン基に由来する2プロトン分のピーク(H3)が4.7ppm付近に観測される。これらの積分値(H1〜H3)から計算される、末端ビニル基含有率は(L)は下式(1)で定義される。
L(mol%)= (H1/Ho)×100 ・・・(1)
(但し、Ho=H1+H2+H3である)
【0027】
また、H−NMRで測定された全プロトン分のピークの積分値(Ha)とGPCにより得られた数平均分子量(Mn)から計算される末端不飽和率(M)は、下式(2)で定義される。
M(mol%)=[{Ho/Ha}/{2/(Mn/7)}]×100
={(Ho×Mn)/(Ha×14)}×100 ・・・(2)
(ここで、Mn/7は、二重結合含有重合体の分子式をC2nとし、分子量12×n+1×2n=14n=Mnとした時の全水素数2nである。)
【0028】
H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.91ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
【0029】
<二重結合含有重合体の製造方法>
本発明の一般式(I)で示される二重結合含有重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
(i)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(ii)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(iii)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(iv)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0030】
上記(i)〜(iv)の方法の中でも、特に(i)の方法によれば、上記二重結合含有重合体を収率よく製造することができる。(i)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したオレフィンを重合又は共重合することで上記二重結合含有重合体を製造することができる。
【0031】
(i)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、又は使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
【0032】
(i)の方法によるオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法又は気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
【0033】
<チオール化合物>
本発明の末端官能基含有重合体を形成する他方の原料であるチオール化合物は、下記一般式(II)で示される化合物である。
【0034】
【化5】

【0035】
一般式(II)中、Xは、水素原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基またはヘテロ環式化合物残基を表す。
【0036】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基; シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基; フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基; トリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0037】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0038】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ原子を含む官能基が結合していてもよい。ヘテロ原子を含む官能基としては、アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基; アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基; チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基; ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基; またはシリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などのケイ素含有基、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、メトキシシリル基、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基、トリメチルシロキシ基などを有していてもよい。
【0039】
酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基としては、上記炭化水素基の官能基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0040】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0041】
<末端官能基含有重合体およびその製造方法>
次に、本発明の末端官能基含有重合体の製造方法について説明する。
本発明の末端官能基含有重合体は、一般式(I)で示される二重結合含有重合体と一般式(II)で示されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させることで得られるものである。
【0042】
ラジカル開始剤としては、ラジカル開始剤としての機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、アゾ化合物であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、有機過酸化物である過酸化ベンゾイル、カヤレン6(化薬アクゾ株式会社製)、パーヘキサ25B(登録商標、日本油脂株式会社製)などを挙げることができる。
【0043】
ラジカル開始剤の使用量は、二重結合含有重合体に対して、0.0001〜10モル倍が好ましく、より好ましくは0.0001〜5モル倍、最も好ましくは0.0001〜1モル倍である。これらのラジカル開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても構わない。
【0044】
二重結合含有重合体とチオール化合物との反応は、溶媒の非存在下に実施することもできるし、また溶媒の存在下に実施することもできる。用いる場合の溶媒としては特に限定されないが、例えばn−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエタン、パークロルエタン等のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。原料の二重結合含有重合体がその溶媒に対して不溶でない限り、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の使用量は原料の溶解性に作用するが、二重結合含有重合体に対し0〜100質量倍が好ましく、より好ましくは0〜50質量倍、更に好ましくは0〜20質量倍である。
【0045】
反応させる二重結合含有重合体とチオール化合物との比は特に限定されないが、通常はチオール化合物過剰の条件下に行われ、過剰のチオール化合物を溶媒として用いることもでき、二重結合含有重合体に対し0.1〜100モル倍が好ましく、より好ましくは0.1〜5モル倍、更に好ましくは0.1〜2モル倍である。
【0046】
反応温度は、25〜300℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、更に好ましくは70〜150℃である。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は使用するラジカル開始剤の量、反応温度、重合体類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分から50時間の範囲である。
【0047】
反応後は晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、ラジカル開始剤、過剰のチオール化合物および反応溶媒を除去して、目的とする末端官能基含有重合体を得ることができる。
【0048】
上記のように、一般式(I)で示される二重結合含有重合体と一般式(II)で示されるチオール化合物との反応で得られる本発明の末端官能基含有重合体は、下記一般式(III)で示される構造を有している。
【0049】
【化6】

【0050】
二重結合含有重合体とチオール化合物との反応における二重結合の転化率は、反応生成物のH−NMRを用いて、(I)由来の二重結合由来のピーク(ビニル、ビニレン、ビニリデン)と、(III)中の2−3ppm付近に観測される硫黄元素のαプロトンのピーク、もしくはX中の官能基の特徴的なプロトンのピークを比較することで求めることができる。
【0051】
本発明の末端官能基含有重合体は、H−NMRにより計算される二重結合の転化率が通常80%以上であり、好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。二重結合の転化率は、二重結合含有重合体とチオール化合物とのモル比や、ラジカル開始剤の量、並びに反応条件を適宜変更することで調節することができる。
【0052】
<末端官能基含有重合体を含んでなる樹脂組成物>
本発明の別の態様である末端官能基含有重合体を含んでなる樹脂組成物は、前記一般式(III)で表される構造の末端官能基含有重合体を含む組成物である。
前記組成物中、前記一般式(III)で表される構造の末端官能基含有重合体の含有量は特に制限は無いが、使用目的・用途に応じて、通常0.1〜100質量%の範囲である。
【0053】
組成物として前記末端官能基含有重合体以外に含んでもよい成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂や、顔料、染料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの樹脂添加剤が挙げられる。 前記末端官能基含有重合体と上記の成分との混合方法としては、特に制限は無いが、両者を実質的に均一に分散できる方法であれば何ら限定されず、例えば固形状で混合してもよいし、溶融混合してもよい。ブラベンダープラストグラフ、一軸あるいは二軸押出機、強力スクリュー型混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られているいかなる混練機でも使用することができる。
【0054】
<末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物の用途>
本発明の末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、樹脂との相溶性に優れ、樹脂表面へのブリードアウトを抑制することができるので、例えば酸化防止性、紫外線吸収性、抗菌性、防曇性、感光性、発色性、キレート性等を有する各種化合物を導入することによって従来よりも持続性のよい樹脂添加剤として用いることが可能である。
【0055】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、ワックスなどの公知の低分子量ポリエチレンが用いられる用途に広く利用することができる。この際には、必要に応じて種々の添加剤を添加して用いることもできる。
【0056】
例えば、本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物を塗料改質剤として用いると、塗膜表面を改質することができる。例えば艶消し効果に優れ、塗膜の耐摩耗性を向上させることができ、木工塗料に高級感を付与することができ、耐久性を向上させることができる。また、カーワックス、フロアーポリッシュなどの艶出し剤として用いると、光沢に優れ、塗膜物性を向上させることができる。また、クレヨン、ローソクなどの天然ワックスへの配合剤としても好適であり、表面硬度および軟化点を向上させることができる。
【0057】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、樹脂成形用離型剤として好適であり、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に離型性を付与して成形サイクルを向上させることができる。
【0058】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、ゴムとの相溶性に優れており、ゴムに離型性を付与し、粘度調整をするゴム加工助剤として好適である。ゴム加工助剤として用いたときにはフィラーおよび顔料の分散性を向上させ、ゴムに離型性、流動性を付与するのでゴム成形時の成形サイクル、押出特性を向上させることができる。
【0059】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、紙の滑性、表面改質を改良する紙質向上剤として好適であり、紙質向上剤として用いたときには、防湿性、光沢、表面硬度、耐ブロッキング性、耐摩耗性を向上させることができ、紙に高級感を付与し、耐久性を向上させることができる。
【0060】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、インキ用耐摩耗性向上剤として好適であり、耐摩耗性向上剤として用いたときには、インキ表面の耐摩耗性、耐熱性を向上させることができる。
【0061】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、繊維加工助剤として好適であり、繊維を樹脂加工する際に繊維加工助剤として用いたときには、繊維に柔軟性、滑性を付与することができる。
【0062】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、ホットメルト添加剤として好適であり、ホットメルト接着剤に耐熱性、流動性を付与することができる。自動車、建材などの耐熱性が要求される分野でのホットメルト接着剤の品質を向上させることができる。
【0063】
本発明に係る末端官能基含有重合体およびそれを含んでなる樹脂組成物は、電気絶縁剤として好適であり、たとえばフィルムコンデンサーの電気絶縁性、耐熱性を向上させることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
なお、重量平均分子量Mw、およびMw/MnはGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。
融点(Tm)は、SHIMADZU社製、DSC−60を用いて測定した。測定条件は25〜300℃、10℃/分昇温で測定して得られたピークトップ温度を採用した。ピークが複数見られる場合は、ピーク面積が一番大きいもののピークトップ値を採用した。
H−NMRは、日本電子社製、EX−270を用い、本文中に記載した方法で測定した。
IRは、日本分光社製FT/IR−6100を用いて測定を行った。
5%減量温度は、SHIMADZU社製TGA−50で測定を行った。測定条件は25〜500℃、10℃/分で昇温させた時のサンプル重量変化を測定した。
また、以下において、Phはフェニル基を、Etはエチル基を表す。
【0065】
[合成例1]
原料の二重結合含有重合体(P−1)を、特開2008−31426号公報の調製例2に従って合成した。
物性は以下の通り。
1H-NMR δ(C6D6) 0.81(t, 3H, J= 6.9 Hz), 1.10 - 1.45 (m), 1.95 (m, 2H), 4.84 (dd, 1H, J = 9.2, 1.6 Hz), 4.91 (dd,1H, J = 17.2, 1.6 Hz), 5.67 - 5.78 (m, 1H)
融点(Tm)116℃(DSC)
Mw=1490, Mw/Mn=2.5(GPC)
末端ビニル化率(L)=94mol%(H−NMRから計算)
末端不飽和率(M)=100mol%
【0066】
[合成例2]
原料の二重結合含有重合体(P−2)を、特開2003−73412号公報の合成例9に従って合成した。
重合物はホモポリエチレンで、Mw=1,900、Mw/Mn=2.24(GPC)、末端ビニル化率(L)=92mol%、末端不飽和率(M)=98mol%、融点(Tm)=123℃(DSC)であった。
H-NMR :δ(C6D6) 0.81 (t, 3H, J = 6.9 Hz), 1.10 - 1.45 (m), 1.93 (m, 2H), 4.80 (dd, 1H, J = 9.2, 1.6 Hz), 4.86 (dd, 1H, J = 17.2, 1.6 Hz), 5.60 - 5.72 (m, 1H)
【0067】
[合成例3]
原料の二重結合含有重合体(P−3)を、特開2006−137873号公報の合成例3に従って合成した。
生成物はMw=1310、Mw/Mn=1.66、融点が97.5℃、H−NMRで測定した末端ビニル化率(L)=71mol%(ビニル基/ビニレン基/ビニリデン基=70.6/24.6/4.8)であり、末端不飽和率(M)=77mol%であった。
【0068】
[実施例1]
50 mLフラスコに、合成例1で得られた重合体(P−1) 1.0 g、α−トルエンチオール 510μL、トルエン 5mLを仕込み、95℃で撹拌しながら重合体を完全に溶解させた。ついで、AIBN 21.5mgを添加して、95℃で7時間撹拌した。その後アセトン水溶液を加え、反応生成物を晶析させ、固体をろ取した。得られた固体をメタノール水溶液、メタノール、アセトンで各1回撹拌洗浄した後、固体をろ取した。その後、60℃にて減圧下乾燥させることにより、反応生成物の固体 1.0gを得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は単一であり一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHPh)であった。生成物の物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 1.10 - 1.40 (m), 1.42 - 1.62 (2H, m), 2.43 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.68 (2H, s), 7.12 - 7.36 (5H, m)
IR: 4322, 4250, 2870, 2634, 1495, 1459, 714, 695 (cm-1)
融点(Tm)116℃(DSC)
5%減量温度 355℃(TGA)
【0069】
[実施例2]
実施例1において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例2で得られた重合体(P−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R:水素原子、X:CHPh)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J = 6.9 Hz), 0.95 - 1.65 (m), 2.43 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.68 (2H, s), 7.10 - 7.32 (5H, m)
IR: 4322, 4250, 2840, 2635, 1495, 1471, 730, 720, 694 (cm-1)
融点(Tm)120℃(DSC)
【0070】
[実施例3]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりにチオフェノールを用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:Ph)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 1.00 - 1.55 (m), 1.57 - 1.72 (2H, m), 2.88 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.07 - 7.35 (5H, m)
IR: 4322, 4250, 2839, 2635, 1462, 1439, 909, 730, 718, 688 (cm-1)
融点(Tm)116℃(DSC)
【0071】
[実施例4]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに2−メルカプトエタノールを用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCHOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 1.00 - 1.65 (m), 2.50 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.68 (2H, t, J = 5.9 Hz), 3.68 (2H, t, J = 5.9 Hz)
IR: 4322, 4250, 3370, 2839, 2635, 1463, 1048, 1013, 730, 718, (cm-1)
融点(Tm)117℃(DSC)
【0072】
[実施例5]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCH(OH)CHOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 1.10 - 1.42(m), 1.50 - 1.72(2H, m), 2.38 - 2.73(4H, m), 3.48 - 3.58(1H, m), 3.62 - 3.72(2H, m)
IR: 4322, 4250, 3370, 2897, 2635, 1471, 1070, 1033, 730, 719 (cm-1)
融点(Tm)119℃(DSC)
【0073】
[実施例6]
実施例5において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例2で得られた重合体(P−2)を用いた以外は実施例5と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R:水素原子、X:CHCH(OH)CHOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 0.95 - 1.74(m), 2.38 - 2.72(4H, m), 3.47 - 3.58(1H, m), 3.63 - 3.80(2H, m)
IR: 4322, 4250, 3370, 2838, 2634, 1471, 1069, 1033, 730, 720 (cm-1)
融点(Tm)121℃(DSC)
【0074】
[実施例7]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりにメルカプト酢酸を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCOOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87 (3H, t J = 6.6 Hz), 0.92 - 1.65 (m), 2.62(2H, t, J = 7.3 Hz), 3.23(2H, s)
IR: 4322, 4250, 3370, 2839, 2661, 1703, 1471, 1424, 1300, 1199, 730, 721(cm-1)
融点(Tm)120℃(DSC)
【0075】
[実施例8]
実施例7において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例3で得られた重合体(P−3)を用いた以外は実施例7と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンとプロピレンの重合により形成される基(Mw=1310)、R、R:水素原子またはメチル基、X:CHCOOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.80 - 1.70 (m), 2.62(2H, t, J = 6.9 Hz), 3.23(2H, s)
IR: 4322, 4251, 2836, 2662, 1706, 1463, 1424, 1296, 1197, 729 (cm-1)
融点(Tm)108℃(DSC)
【0076】
[実施例9]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに3−メルカプトプロピオン酸を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCHCOOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 0.92 - 1.50(m), 1.50 - 1.72(2H, m), 2.52(2H, t, J = 6.9 Hz), 2.57 - 2.77(m, 2H), 2.77(2H, t, J = 6.3 Hz)
IR: 4322, 4250, 2837, 2662, 1708, 1469, 1267, 1197, 721 (cm-1)
融点(Tm)119℃(DSC)
【0077】
[実施例10]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに3−メルカプロプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCHCHSi(OCH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.72(2H, t, J = 6.9 Hz), 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 1.20 - 1.40(m), 1.50 - 1.60(2H, m), 1.61 - 1.74(2H, m), 2.49(4H, dd, J = 7.9, 15.22 Hz), 3.53(s, 9H)
IR: 4322, 4250, 2840, 2634, 1464, 1191, 1091, 819, 730, 721 (cm-1)
融点(Tm)116℃(DSC)
【0078】
[実施例11]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに3−メルカプロプロピルトリエトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCHCHSi(OEt))であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.69(2H, t, J = 7.9 Hz), 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 1.15 - 1.40(m), 1.50 - 1.75(4H, m), 2.47 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.51(2H, t, J = 7.3 Hz), 3.78(6H, q, J = 6.9 Hz)
IR: 4322, 4250, 2848, 2635, 1473, 1463, 1167, 1104, 1081, 960, 730, 720 (cm-1)
融点(Tm)114℃(DSC)
【0079】
[実施例12]
実施例11において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例2で得られた重合体(P−2)を用いた以外は実施例11と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R:水素原子、X:CHCHCHSi(OEt))であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.70(2H, t, J = 7.6 Hz), 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 1.15 - 1.40(m), 1.50 - 1.60(2H, m), 1.61 - 1.74(2H, m), 2.43 - 2.54(4H, m), 3.79(6H, q, J = 6.9 Hz)
IR: 4322, 4250, 2840, 2634, 1463, 1167, 1083, 961, 731, 719 (cm-1)
融点(Tm)119℃(DSC)
【0080】
[実施例13]
実施例11において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例3で得られた重合体(P−3)を用いた以外は実施例11と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンとプロピレンの重合により形成される基(Mw=1310)、R、R:水素原子またはメチル基、X:CHCHCHSi(OEt))であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.69(2H, t, J = 7.9 Hz), 0.78 - 0.90(m), 1.05 - 1.45(m), 1.45 - 1.72(4H, m), 2.47 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.51(2H, t, J = 7.3 Hz), 3.78(6H, q, J = 6.9 Hz)
IR: 4322, 4250, 2835, 2634, 1464, 1070, 960, 719 (cm-1)
融点(Tm)103℃(DSC)
【0081】
[実施例14]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりに2−アミノエタンチオール塩酸塩を用い、さらにトルエンとn−ブチルアルコールの混合溶媒を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCHNH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.9 Hz), 0.95 - 1.65(m), 2.54 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.89(2H, t, J = 6.9 Hz), 3.18(2H, t, J = 6.9 Hz)
IR: 4322, 4250, 3287, 2838, 2635, 1577, 1472, 1317, 718 (cm-1)
融点(Tm)118℃(DSC)
【0082】
[実施例15]
実施例14において、合成例1で得られた重合体の代わりに合成例2で得られた重合体(P−2)を用いた以外は実施例14と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R:水素原子、X:CHCHNH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 0.95 - 1.70(m), 2.49(2H, t, J = 7.3 Hz), 2.60(2H, t, J = 6.3 Hz), 2.87(2H, t, J = 6.3 Hz)
IR: 4322, 4250, 3402, 2872, 1598, 1463, 1377, 718 (cm-1)
融点(Tm)124℃(DSC)
【0083】
[実施例16]
実施例1において、α−トルエンチオールの代わりにメルカプトこはく酸を用い、さらにトルエンとt−ブチルアルコールの混合溶媒を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、末端官能基含有重合体を得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1490)、R、R:水素原子、X:CHCH(COOH)CHCOOH)であり、物性は以下の通り。
1H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.87(3H, t, J = 6.6 Hz), 0.95 - 1.70(m), 2.60 - 2.82(3H, m), 3.02(1H, dd, J = 8.9, 16.8 Hz), 5.69(1H, dd, J = 5.9, 16.8 Hz)
IR: 4322, 4250, 2831, 1701, 1462, 1425, 1235, 917, 721 (cm-1)
融点(Tm)119℃(DSC)
【0084】
[実施例17]
200mLセパラブルフラスコに合成例2で得られた重合体(P−2)を20g、トルエン60gを仕込み、30分間窒素バブリングをさせた後、トルエン還流下でポリマーを溶解させた後、80℃まで冷却し、チオ作酸4.0g添加後、カヤレン6(化薬アグゾ社製)0.2g添加して80℃で5時間反応させ、FT−IR、およびH−NMRにより変性率100%を確認した。その後、アセトニトリル30gで得られた重合体を晶析後、室温まで冷却させ、ろ過、濾取した固体を、メタノールにて攪拌洗浄を行い、濾取した固体を60℃にて減圧乾燥を行い、反応生成物の白色固体18.4gを得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は単一であり一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R:水素原子、X:COCH)であった。生成物の物性は以下の通り。
1H-NMR δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.30 (3H, s), 3.20 (2H, m)
融点(Tm)122℃(DSC)
【0085】
[実施例18]
実施例17で得られた重合体10g、トルエン10gを100mLセパラブラスコに仕込み、100℃まで昇温してポリマーを溶解させた後、5%KOH/n−ブチルアルコール溶液20gを添加し、還流下で2時間反応させた後、室温まで冷却させた析出したポリマーをメタノールに排出して洗浄、ろ過後、ろ取した固体を60℃にて減圧乾燥を行い、反応生成物の白色固体9.0gを得た。原料のオレフィンの転化率は100%であり、生成物は単一であり一般式(III)で示される末端官能基含有重合体(一般式(III)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mw=1900)、R、R、X:水素)であった。生成物の物性は以下の通り。
1H-NMR d(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J = 6.92 Hz), 1.10- 1.85 (m), 2.65 (2H, m)
融点(Tm)122℃(DSC)
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の末端官能基含有重合体は、様々な官能基を有する重合体であって、同一の手法を用いて経済的に製造することができるものであり、工業的に極めて価値がある。また、本発明の末端官能基含有重合体により、種々の用途に好適な樹脂添加剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(i)〜(iii)の特徴を同時に満たす一般式(I)で表される二重結合含有重合体と、一般式(II)で表されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させて得られることを特徴とする末端官能基含有重合体。
(i)エチレン単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単
位が0〜19mol%の範囲にあり、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布
(重量平均分子量と数平均分子量の比、Mw/Mn)が1.1〜3.0の範囲
にあり、且つ重量平均分子量(Mw)が400〜500000の範囲にあり、
(iii)H−NMRにより計算される末端ビニル基含有率(L)が50mol%以
上であり、且つH−NMRとGPCにより計算される末端不飽和率(M)が
70mol%以上である。
【化1】


(式中、Aは、炭素原子数2〜20のオレフィンの重合体を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。)
【化2】


(式中、Xは水素原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基またはヘテロ環式化合物残基を表す。)
【請求項2】
H−NMRにより計算される二重結合の転化率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の末端官能基含有重合体。
【請求項3】
次の(i)〜(iii)の特徴を同時に満たす一般式(I)で表される二重結合含有重合体と、一般式(II)で表されるチオール化合物とを、ラジカル開始剤の存在下で反応させることを特徴とする一般式(III)で表される構造を有する末端官能基含有重合体の製造方法。
(i)エチレン単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単
位が0〜19mol%の範囲にあり、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布
(重量平均分子量と数平均分子量の比、Mw/Mn)が1.1〜3.0の範囲
にあり、且つ重量平均分子量(Mw)が400〜500000の範囲にあり、
(iii)H−NMRにより計算される末端ビニル基含有率(L)が50mol%以
上であり、且つH−NMRとGPCにより計算される末端不飽和率(M)が
70mol%以上である。
【化3】


(式中、Aは、炭素原子数2〜20のオレフィンの重合体を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。)
【化4】


(式中、Xは水素原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基またはヘテロ環式化合物残基を表す。)
【化5】


(式中、A、R、RおよびXは、それぞれ一般式(I)および(II)と同様のものを表す。)
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の末端官能基含有重合体を含んでなる樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−13566(P2010−13566A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175291(P2008−175291)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】