説明

末端置換を含むsiRNA化合物

本発明は、標的遺伝子発現を下方制御する修飾siRNA化合物、かかる化合物を含む薬学的組成物、ならびに前記遺伝子と関連する様々な疾患もしくは状態、および/またはかかる疾患もしくは状態と関連する症状の発生または重症度を治療および/または防止する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月26日に出願された米国特許仮出願第61/264668号、2010年1月17日に出願された同第61/295721号、および2010年8月9日に出願された同第61/372072号の利益を主張し、当該出願は、全ての目的のために、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。

本発明は、修飾siRNA化合物、それを含む薬学的組成物、および遺伝子発現の阻害のためのその使用方法に関する。本化合物および組成物は、標的遺伝子のノックダウン活性を含む有益な特性を示し、疾患もしくは状態およびまたはかかる疾患もしくは状態に随伴する症状に苦しんでいる、あるいは遺伝子発現が悪影響を与える疾患もしくは状態にかかる危険性がある、対象の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
本発明の譲受人の、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、PCT特許公開WO第2008/104978号およびWO第2009/044392号は、新規のsiRNA構造を開示する。
【0003】
ノックダウン活性の増強、安定性の増加、およびまたはオフターゲット効果の軽減を示す、活性かつ有効なsiRNA治療剤の必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される二本鎖RNA(dsRNA)化合物は、例えば、活性を増加し、安定性を増加し、免疫原性を軽減し、RISC複合体中への取り込みを強化し、かつまたは毒性を最小化し得る、構造および修飾を有し、siRNAの新規の修飾は、標的遺伝子発現を防止または軽減するのに有用な二本鎖RNAに有益に適用される。
【0005】
遺伝子発現の下方制御に有用な二本鎖(二重鎖)オリゴヌクレオチド化合物が、本明細書に提供される。本開示は、部分的には、センス鎖および相補的なアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドと標的RNAのヌクレオチドとの間にミスマッチを有する、二本鎖核酸分子が、標的遺伝子を下方制御する際に強力な活性を示すという予想外の観察に基づいている。好ましい実施形態において、本dsRNAは、シチジンまたはグアニンの代わりというよりもむしろ、アンチセンス鎖の1位(5′末端)で置換される、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはチミジンを含む。
【0006】
一態様によれば、以下に説明される構造(A)を有する修飾二本鎖核酸分子が提供され、
(A)5′ N−(N)x−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−N−(N′)y−z′′ 5′(センス鎖)
式中、N、N、およびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって隣接するNまたはN′と連結するオリゴヌクレオチドであり、
xおよびyのそれぞれは、独立して、17〜39の整数であり、
(N′)yの配列は、(N)xの配列に相補性があり、(N)xは、標的RNAの連続する配列に相補性があり、
は、(N)xに共有結合し、該標的RNAとミスマッチするか、または前記標的RNAに相補的なDNA部分であり、
は、天然もしくは修飾された、ウリジン、デオキシリボウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、またはデオキシアデノシンから成る群から選択される部分であり、式中、z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、N−(N′)yの5′末端に共有結合するキャッピング部分であり、
ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、存在するか、あるいは存在しないが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3′末端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチド、連続する非ヌクレオチド部分、またはその組み合わせである。
【0007】
いくつかの実施形態において、(N′)yの配列は、(N)xの配列に対して完全に相補的である。種々の実施形態において、N−(N′)yの配列は、N−(N)xの配列に対して相補的である。いくつかの実施形態において、(N)xは、標的RNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して完全に相補的であるアンチセンスを含む。他の実施形態において、(N)xは、標的RNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して実質的に相補的であるアンチセンスを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、NおよびNは、ワトソンクリック塩基対を形成する。いくつかの実施形態において、NおよびNは、非ワトソンクリック塩基対を形成する。いくつかの実施形態において、塩基対は、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの間に形成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、x=y=18、x=y=19、またはx=y=20である。好ましい実施形態において、x=y=18である。
【0010】
いくつかの実施形態において、Nは、(N)xに共有結合し、該標的RNAとミスマッチする。種々の実施形態において、Nは、(N)xに共有結合して、該標的RNAに対して相補的なDNA部分である。
【0011】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位のウリジンは、アデノシン、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択されるNで置換される。種々の実施形態において、Nは、アデノシン、デオキシアデノシン、またはデオキシウリジンから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位のグアノシンは、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択されるNで置換される。種々の実施形態において、Nは、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位のシチジンは、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択されるNで置換される。種々の実施形態において、Nは、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1位のアデノシンは、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択されるNで置換される。種々の実施形態において、Nは、デオキシアデノシンまたはデオキシウリジンから選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、NおよびNは、ウリジンまたはデオキシウリジンとアデノシンまたはデオキシアデノシンとの間で塩基対を形成する。他の実施形態において、NおよびNは、デオキシウリジンとアデノシンとの間で塩基対を形成する。
【0016】
いくつかの実施形態において、二本鎖核酸分子は、siRNA、siNA、またはmiRNAである。

下表は、N1および対応するN2の例を提供する。
表1
【表1】

【0017】
構造(A)のいくつかの実施形態において、Nは、ウリジンまたはアデノシンを含む。構造(A)のある実施形態において、Nは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。構造(A)のいくつかの実施形態において、Nは、2′OMe糖修飾リボウリジンを含み、Nは、アデノシンまたは修飾アデノシンを含む。構造(A)のいくつかの実施形態において、Nは、アデノシンを含み、Nは、リボウリジンまたは修飾リボウリジンを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′は存在しない。他の実施形態において、ZまたはZ′のうちの1つが存在する。
【0019】
いくつかの実施形態において、NおよびN′のそれぞれは、非修飾リボヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、NまたはN′のうちの少なくとも1つは、化学的に修飾されたリボヌクレオチドまたは非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくは、L−DNA部分である。いくつかの実施形態において、NまたはN′のうちの少なくとも1つは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、(N′)yの配列は、(N)xの配列に対して完全に相補的である。他の実施形態において、(N′)yの配列は、(N)xの配列に対して実質的に相補的である。
【0021】
いくつかの実施形態において、(N)xは、標的mRNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して完全に相補的であるアンチセンス配列を含む。他の実施形態において、(N)xは、標的mRNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して実質的に相補的であるアンチセンスを含む。いくつかの実施形態において、x=y=18である。
【0022】
ある好ましい実施形態によれば、修飾ヌクレオチドが、糖部分、塩基部分、またはヌクレオチド間連結部分において修飾を有する1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、siRNA化合物が、提供される。
【0023】
構造(A)モチーフは、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子に対して任意のオリゴヌクレオチド対(センス鎖およびアンチセンス鎖)とともに有用である。いくつかの実施形態において、哺乳動物遺伝子は、ヒト遺伝子である。
【0024】
いくつかの実施形態において、構造(A)を有する修飾siRNA化合物は、対照化合物、すなわち、siRNA化合物と比較して、活性の増強(例えば、IC50の減少、ノックダウンの増加、残留mRNAの減少)を含む有益な特性を示し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的mRNAのヌクレオチド配列に対して完全に相補的である(5′末端ヌクレオチド塩基対、例えば、A−U、U−A、C−G、G−Cを含む)。いくつかの実施形態において、活性は、対照化合物と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%またはそれ以上増強される。
【0025】
別の態様において、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖から成る二本鎖RNA分子を生成する方法を提供し、本方法は、

a)標的RNAの連続する17〜25個のヌクレオチド配列を選択し、該標的mRNAの該連続する17〜25個のヌクレオチド配列に対して相補性を含むアンチセンス鎖を合成するステップであって、アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドは、ウリジン、修飾ウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、または修飾デオキシアデノシンで置換されるが、但し、rG:rUのゆらぎは、アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドと標的mRNAの3′末端ヌクレオチドとの間に生成されないことを条件とする、ステップと、

b)アンチセンス鎖に対して相補性を有する17〜25個のヌクレオチドのセンス鎖を合成するステップであって、該センス鎖の3′末端ヌクレオチドは、該ガイド鎖の5′末端ヌクレオチドとのワトソンクリック塩基対を形成する、ステップと、

c)アンチセンスおよびセンス鎖をアニーリングし、それによって、二本鎖RNA分子を生成するステップと、を含む。
【0026】
一態様によれば、本発明は、非修飾二本鎖RNA分子と比較して、RNAi活性の増強を示す、センス鎖およびアンチセンス鎖から成る二本鎖RNA分子を生成する方法を提供し、本方法は、

a)標的mRNAの連続する17〜25個のヌクレオチド配列を選択し、該標的mRNAの該連続する17〜25個のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を合成するステップであって、該3′末端ヌクレオチドは、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、または修飾デオキシアデノシンで置換される、ステップと、

b)該センス鎖に対して相補性を有する17〜25個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を合成するステップであって、該5′末端ヌクレオチドは、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、または修飾デオキシリボウリジン、およびパッセンジャー鎖の3′末端ヌクレオチドとの塩基対を含む、ステップと、

c)該センス鎖を該アンチセンス鎖にアニーリングし、
それによって、増強したRNAi活性を有する二本鎖RNA分子を生成する、ステップと、を含む。いくつかの実施形態において、修飾二本鎖RNA分子は、非修飾siRNA二重鎖、すなわち、標的mRNAに対して完全な一致を有する二重鎖と比較して、RNAi活性の増強を示す。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、非修飾二本鎖RNA分子と比較して、RNAi活性の増強を示す、センス鎖およびアンチセンス鎖から成る修飾二本鎖RNA分子を生成する方法を提供し、本方法は、

a)標的mRNAの連続する17〜25個のヌクレオチド配列を選択し、該標的mRNAの該連続する17〜25個のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を合成するステップであって、該3′末端ヌクレオチドは、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、または修飾デオキシアデノシンで置換される、ステップと、

b)該センス鎖に対して相補性を有する17〜25個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を合成するステップであって、該5′末端ヌクレオチドは、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、または修飾デオキシリボウリジン、およびセンス鎖の3′末端ヌクレオチドとの塩基対を含む、ステップと、

c)該センス鎖を該アンチセンス鎖にアニーリングし、

それによって、増強したRNAi活性を有する二本鎖RNA分子を生成するステップと、を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、ステップa)は、標的細胞において、標的RNAの連続する17〜25個のヌクレオチド、または17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、もしくは25個のヌクレオチド配列を選択するステップを含み、ここで、3′末端ヌクレオチドは、アデノシン以外である。
【0029】
別の態様において、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子発現を示すのに有効な量の、構造(A)に従う化合物、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態において、哺乳動物遺伝子は、ヒト遺伝子である。いくつかの実施形態において、非哺乳動物遺伝子は、哺乳動物疾患、好ましくは、ヒト疾患に関与する。
【0030】
必要とする対象において、疾患または状態の発生または重症度を治療または防止するため、および/または疾患または状態の危険性または重症度を軽減するための方法をさらに提供し、疾患または状態および/またはそれと関連する症状および/または危険性は、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子の発現と関連する。好ましい実施形態において、対象は、ヒト対象である。
【0031】
いくつかの実施形態において、疾患または状態は、聴力損失、急性腎不全(ARF)、腎臓移植後の臓器機能障害(DGF)、緑内障、眼虚血状態(前部虚血性視神経症、加齢性黄斑変性症(AMD)、虚血性視神経障害(ION)およびドライアイ症候群を含む)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、ならびに他の急性肺および呼吸器傷害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、一次移植不全、虚血再灌流傷害、再灌流傷害、再灌流浮腫、同種移植片機能不全、肺の再移植応答および/または臓器移植後、特に、肺移植、臓器移植(肺、肝臓、心臓、膵臓、および腎臓移植を含む)の移植後の一次移植機能不全(PGD)、腎毒性および神経毒性、脊髄損傷、脳損傷、神経変性疾患もしくは状態、褥瘡、口腔粘膜炎、繊維性疾患(肝線維症、肺線維症を含む)、ならびに癌等の群から選択される。かかる方法は、予防的または治療的に有効な量の1つ以上のかかる化合物を、かかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含み、これは、少なくとも1つのかかる遺伝子の発現または活性を阻害または軽減する。
【0032】
現在説明されている化合物、方法、物質、および例は、例示的のみのものであり、限定することを意図するものではなく、本明細書に記載のものと類似または同等の物質および方法は、本発明の実践または試験において使用することができる。本発明の他の特性および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本明細書に提供されるdsRNA分子の略図である。一実施形態において、アンチセンス鎖の5′末端GまたはCヌクレオチドは、U、dU、rA、dA、rT、dTで置換されるか、あるいはアンチセンス鎖の5′末端Uヌクレオチドは、dU、rA、dA、rT、dTで置換されるか、あるいはアンチセンス鎖の5′末端Aヌクレオチドは、U、dU、dA、rT、dTで置換される。一実施形態において、アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドは、標的mRNAとミスマッチする。別の実施形態において、アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドは、標的mRNAに対して相補的なデオキシリボヌクレオチドである。
【図2】19位(アンチセンスの1位)で、個々に、4つのリボヌクレオチドを含むように修飾された標的に対する、アンチセンス鎖の1位に異なるヌクレオチドを有するdsRNA分子の活性(残りの残留標的の割合(%))の棒グラフを示す。
【図3】同上
【図4】同上
【図5】同上
【図6】同上
【図7】同上
【図8】同上
【図9】同上
【図10】同上
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、概して、様々な遺伝子の発現を下方制御するオリゴヌクレオチド化合物、特に、低分子干渉RNA(siRNA)、具体的には、修飾siRNA化合物、ならびに薬学的組成物の調製および様々な病状に苦しんでいる対象の治療における、これらの修飾siRNA化合物の使用に関する。
【0035】
本化合物および組成物は、標的遺伝子の強力なノックダウン活性を含む有益な特性を示し、疾患もしくは状態およびまたはかかる疾患もしくは状態に随伴する症状に苦しんでいる、あるいは遺伝子発現が悪影響を与える疾患もしくは状態にかかる危険性がある、対象の治療に有用である。
【0036】
したがって、ある態様において、遺伝子発現を下方制御するのに有用な修飾siRNA化合物、およびそれを含む薬学的組成物が提供される。
【0037】
別の態様において、本発明は、微小血管疾患、眼疾患もしくは障害、聴覚障害(聴力損失を含む)、呼吸器系(肺を含む)疾患、神経変性疾患もしくは障害、脊髄損傷、脳損傷 血管形成およびアポトーシス関連状態に苦しんでいる、またはこれらにかかりやすい対象の治療法を提供し、これには、該対象に、遺伝子の発現を下方制御するのに十分な量の哺乳動物もしくは非哺乳動物遺伝子を標的にする少なくとも1つの低分子干渉RNAを含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0038】
ある実施形態において、対象化合物は、とりわけ、呼吸器疾患、微小血管疾患、または眼疾患の治療のために、標的遺伝子の発現を阻害するのに有用である。特に、治療すべき疾患および状態は、ARDS;COPD;ALI;肺気腫;糖尿病性ニューロパシー、ネフロパシー、および網膜症;DMEおよび他の糖尿病状態;緑内障;AMD;BMT網膜症;脳卒中を含む虚血状態;OIS;パーキンソン病、アルツハイマー病、ALS等の神経変性障害;腎障害:ARF、DGF、移植片拒絶反応;聴覚障害;脊髄損傷;口腔粘膜炎;癌、ドライアイ症候群、ならびに褥瘡である。
【0039】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲で用いられる特定の用語を、本明細書において説明する。
【0040】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形を含むことに留意されたい。本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の代替の群に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それによって、任意の個々の要素または群の要素の亜群に関しても記載されていることを認識するであろう。
【0041】
「阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで(部分的または完全に)減少させることができる化合物である。本明細書で使用する「阻害剤」という用語は、siRNA阻害剤を指す。「siRNA阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで減少させることができる化合物である。本明細書で使用する「siRNA阻害剤」という用語は、siRNA、shRNA、siNA、合成shRNA、およびmiRNAのうちの1つ以上を指す。阻害はまた、下方制御、またはRNAiについてはサイレンシング、と称されてもよい。
【0042】
本明細書で使用する「阻害する」という用語は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで減少させることを指す。阻害は、完全または部分的のいずれかである。
【0043】
本明細書で使用される場合、標的遺伝子の「阻害」という用語は、遺伝子発現(転写もしくは翻訳)または標的遺伝子の産物のポリペプチド活性の阻害を意味する。本明細書で使用する「遺伝子の産物」とは、RNAの転写またはポリペプチド等の遺伝子の産物を指す。「RNAの転写」、「mRNAポリヌクレオチド配列」、「mRNA配列」、および「mRNA」という用語は、交換可能に使用される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、交換可能に使用されてもよく、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチドを指す。この用語は、ヌクレオチドの類似体から作られるRNAまたはDNAのいずれかの類似体を均等物として含むことも理解されたい。本開示全体を通して、mRNA配列は、対応する遺伝子を表すものとして記載される。
【0045】
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、約2〜約50個のヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指す。それぞれのDNAまたはRNAヌクレオチドは、独立して、天然もしくは合成、およびまたは修飾もしくは非修飾であってもよい。修飾は、糖部分、塩基部分、およびまたはオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間の連結に対する変更を含む。本発明の化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド類似体、非従来的および脱塩基部分、ならびにこれらの組み合わせを含む、分子を包含する。
【0046】
実質的に相補的であるとは、別の配列に対する約84%を超える相補性を指す。例えば、19個の塩基対から成る二重鎖領域において、1つのミスマッチは、94.7%の相補性をもたらし、2つのミスマッチは、約89.5%の相補性をもたらし、3つのミスマッチは、約84.2%の相補性をもたらし、該二重鎖領域を実質的に相補性にする。したがって、実質的に同一であるとは、別の配列に対する約84%を超える同一性を指す。
【0047】
「ヌクレオチド」とは、天然もしくは合成、および修飾もしくは非修飾であり得る、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することを意味する。ヌクレオチドには、合成、天然に生じる、および天然に生じない、公知のヌクレオチド類似体が含まれる。かかる類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホラミダイト、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2′−O−メチルリボヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。修飾は、糖部分、塩基部分、およびまたはオリゴリボヌクレオチドにおけるリボヌクレオチド間の連結に対する変更を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語は、合成、天然に生じる、および転々に生じない、天然および合成、非修飾および修飾リボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド類似体を包含する。修飾は、糖部分、塩基部分、および/またはオリゴヌクレオチドにおけるリボヌクレオチド間の連結に対する変更を含む。
【0048】
ヌクレオチドは、天然に生じるまたは合成的に修飾される塩基から選択される。天然に生じる塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが含まれる。ヌクレオチドの修飾された塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピル、および他のアルキルアデニン類、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、擬似ウラシル、デオキシ擬似ウラシル、4−チオウラシル、リボ−2−チオウリジン、リボ−4−チオウリジン、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオアルキルアデニン類、8−ヒドロキシルアデニンおよび他の8−置換アデニン類、8−ハログアニン類、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン類、8−ヒドロキシルグアニンおよび他の置換グアニン類、他のアザおよびデアザアデニン類、他のアザおよびデアザグアニン類、5−メチルリボウリジン、5−トリフルオロメチルウラシル、5−メチルリボシトシン、ならびに5−トリフルオロシトシンが含まれる。いくつかの実施形態において、オリゴマーにおける1つ以上のヌクレオチドは、イノシンで置換される。
【0049】
いくつかの実施形態において、siRNA化合物は、糖修飾、塩基修飾、またはヌクレオチド間連結修飾を有するリボヌクレオチドから成る群から選択される少なくとも1つの修飾リボヌクレオチドをさらに含み、DNA、ならびにLNA(ロックされた核酸)、ENA(エチレン架橋核酸)、PNA(ペプチド核酸)、アラビノシド、ホスホノカルボキシレート、またはホスフィノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)、または6炭素糖を有するヌクレオチド等の修飾ヌクレオチドを含有し得る。
【0050】
修飾デオキシリボヌクレオチドには、例えば、5′末端位置(位置番号1)におけるヌクレオチドとして有用であり得る5′OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3′−ホスフェート);PACE(デオキシリボアデノシン3′ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3′ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3′ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3′ホスホノアセテート)が含まれる。
【0051】
架橋核酸には、LNA(2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸アデノシン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸グアノシン3′モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3′モノホスフェート);およびENA(2′−O,4′−C−エチレン架橋核酸アデノシン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−エチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−エチレン架橋核酸グアノシン3′モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3′モノホスフェート)が含まれる。
【0052】
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドのすべての類似体、またはその修飾は、本発明で用いられるが、但し、該類似体または修飾は、例えば、ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能等の特性に実質的に悪影響を及ぼさない。許容される修飾には、糖部分の修飾、塩基部分の修飾、ヌクレオチド間連結における修飾、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0053】
糖修飾には、糖残基の2′部分における修飾が含まれ、とりわけ、欧州特許EP第0 586 520 B1号またはEP第0 618 925 B1号に記載されるような、アミノ、フルオロ、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アルキル、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、イミダゾール、カルボキシレート、チオエート、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、もしくはアラルキル、OCF、OCN、O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;SOCH;SOCH;ONO;NO、N;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノもしくは置換シリルを包含する。
【0054】
一実施形態において、修飾siRNA化合物は、糖部分上の2′修飾(「2′糖修飾」)を含む少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む。ある実施形態において、siRNA化合物は、2′O−アルキルまたは2′−フルオロまたは2′O−アリル、またはあらゆる他の2′修飾、任意に、交互の位置に含む。他の安定化する修飾もまた可能である(例えば、末端修飾)。いくつかの実施形態において、好ましい2′O−アルキルは、2′O−メチル(メトキシ)糖修飾である。
【0055】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの骨格が修飾され、ホスフェート−D−リボース実体を含むが、チオホスフェート−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2′−5′架橋骨格(5′−2′とも称され得る)、PACE等も含有し得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「非対合ヌクレオチド類似体」という用語は、6デスアミノアデノシン(ネブラリン)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me dCが含まれるが、これらに限定されない、非塩基対合部分を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態において、非塩基対合ヌクレオチド類似体は、リボヌクレオチドである。他の実施形態において、非塩基対合ヌクレオチド類似体は、デオキシリボヌクレオチドである。加えて、1つ以上のヌクレオチドの構造が、本質的に変更されており、治療的または実験的試薬としてより良好に適している、ポリヌクレオチドの類似体を調製することができる。ヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチド中で見出されるものに類似のポリアミド骨格で置き換えられる、ペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に対して耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロにおいて安定性を増強することを示している。他の修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオホスフェート−D−リボース骨格、トリエステル骨格、チオエート骨格、2′−5′架橋骨格、人工核酸、モルホリノ核酸、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、およびミラーヌクレオシド(例えば、ベータ−D−デオキシリボヌクレオシドの代わりにベータ−L−デオキシリボヌクレオシド)が含まれる。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmenら(NAR 2005,33(1):439−447)に開示されている。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の逆位ヌクレオチド、例えば、逆位チミジンまたは逆位アデノシンを用いて合成される(例えば、Takei,et al,2002,JBC 277(26):23800−06を参照のこと)。
【0058】
他の修飾には、キャッピング部分としても知られている3′末端修飾が含まれる。かかる末端修飾は、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脂質、ペプチド、糖、および逆位脱塩基部分から選択される。かかる修飾は、例えば、センスおよび/またはアンチセンス鎖の3′末端で組み込まれる。
【0059】
本発明において「脱塩基ヌクレオチド」または「脱塩基ヌクレオチド類似体」と称されることもあるものは、より正確には、擬似ヌクレオチドまたは非従来的部分と称される。ヌクレオチドは、リボースまたはデオキシリボース糖、リン酸、および塩基(DNA中ではアデニン、グアニン、チミン、またはシトシン;RNA中ではアデニン、グアニン、ウラシル、またはシトシン)から成る、核酸の単量体単位である。修飾ヌクレオチドは、糖、リン酸、およびまたは塩基のうちの1つ以上の修飾を含む。脱塩基擬似ヌクレオチドは塩基を欠き、したがって、厳密にはヌクレオチドではない。
【0060】
本明細書で使用される「キャッピング部分」という用語には、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、ならびに2′Oアルキル修飾を含む修飾脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分;逆位脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分およびそれらの修飾;C6−イミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAを含むミラーヌクレオチド;5′O−Meヌクレオチド;および4′,5′−メチレンヌクレオチドを含むヌクレオチド類似体;1−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4′−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5′−アミノ−アルキルホスフェート;1,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;12−アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;スレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環状3′,4′−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5′−5′−逆位脱塩基部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;5′−アミノ;ならびに架橋および非架橋メチルホスホネートおよび5′−メルカプト部分が含まれる。
【0061】
ある好ましいキャッピング部分は、脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;逆位脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAを含むミラーヌクレオチドである。
【0062】
「炭化水素部分」またはその誘導体とは、直鎖もしくは分枝鎖アルキル部分およびそれ自体の部分、またはさらに、アルコール類、リン酸ジエステル、ホスホロチオエート、ホスホノアセテートを含む官能基を含み、これには、アミン、カルボン酸、エステル類、アミド類、アルデヒド類も含まれる。「炭化水素部分」および「アルキル部分」は、交換可能に使用される。
【0063】
「末端官能基」には、ハロゲン基、アルコール基、アミン基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、ケトン基、エーテル基が含まれる。
【0064】
本明細書で使用する「非従来的部分」という用語は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体、および2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接するヌクレオチドに連結するヌクレオチド;ロックされた核酸(LNA)およびエチレン架橋核酸(ENA)を含む架橋核酸を指す。
【0065】
脱塩基デオキシリボース部分には、例えば、脱塩基デオキシリボース−3′−ホスフェート;1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−ホスフェート;1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−ホスフェートが含まれる。
【0066】
逆位脱塩基デオキシリボース部分には、逆位デオキシリボ脱塩基、3′,5′逆位デオキシ脱塩基5′−ホスフェートが含まれる。
【0067】
「ミラー」ヌクレオチドは、天然に生じるかまたは一般に用いられるヌクレオチドと逆のキラリティーを有するヌクレオチド、すなわち、天然に生じる(D−ヌクレオチド)の鏡像(L−ヌクレオチド)であり、ミラーリボヌクレオチドの場合にはL−RNA、および「スピーゲルマー(spiegelmer)」とも称される。ヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドであり得、少なくとも1つの糖、塩基、または骨格修飾をさらに含み得る。米国特許第6,586,238号を参照のこと、また、米国特許第6,602,858号は、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒を開示する。ミラーヌクレオチドには、例えば、L−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3′−ホスフェート(ミラーdA)、L−デオキシリボシチジン−3′−ホスフェート(ミラーdC)、L−デオキシリボグアノシン−3′−ホスフェート(ミラーdG)、L−デオキシリボチミジン−3′−ホスフェート(ミラーdT)およびL−RNA(L−リボアデノシン−3′−ホスフェート(ミラーrA)、L−リボシチジン−3′−ホスフェート(ミラーrC)、L−リボグアノシン−3′−ホスフェート(ミラーrG)、L−リボウリジン−3′−ホスフェート(ミラーdU)が含まれる。
【0068】
一態様によれば、本発明は、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、および/または非従来的部分を含む、阻害修飾siRNA化合物を提供する。いくつかの実施形態において、修飾siRNA化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間連結修飾から成る群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、LNA(ロックされた核酸)等の修飾ヌクレオチドを含み得、これには、ENA(エチレン架橋核酸;PNA(ペプチド核酸);アラビノシド;PACE(ホスホノアセテートおよびその誘導体)、または脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは非修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、ならびに2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接するヌクレオチドに連結するヌクレオチドから選択される6炭素糖もしくは非従来的部分を有するヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態において、修飾リボヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、siRNAは、化合物の3′末端で平滑末端化される、すなわち、siRNAは、センスまたはパッセンジャー鎖の3′末端およびアンチセンスまたはガイド鎖の5′末端によって定義される末端上で平滑末端化される。
【0069】
他の実施形態において、2つの鎖のうちの少なくとも1つは、3′末端で少なくとも1つのヌクレオチドの3′オーバーハングを有し、該オーバーハングは、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含む。鎖のうちの少なくとも1つは、任意に、3′末端で少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含む。該オーバーハングは、約1個〜約5個のヌクレオチドから成る。
【0070】
種々の実施形態において、該オーバーハングは、独立して、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、およびこれらの組み合わせから選択される。ある実施形態において、それぞれのオーバーハングは、存在する場合、独立して、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、脱塩基デオキシリボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、C3−アミノ−Pi、C4−アミノ−Pi、C5−アミノ−Pi、C6−アミノ−Pi、ミラーヌクレオチドから選択される。
【0071】
いくつかの実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、独立して、C2、C3、C4、C5、またはC6アルキル部分、任意に、プロパノール(C3−OH)、プロパンジオール、およびプロパンジオールのリン酸ジエステル誘導体(「C3Pi」)を含む、C3[プロパン、−(CH2)−]部分またはその誘導体が含まれる。好ましい実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、2つの炭化水素部分を含み、いくつかの実施例において、C3Pi−C3OHまたはC3Pi−C3Piである。それぞれのC3は、共有結合、好ましくはリンをベースとする結合によって、隣接するC3に対して、共有結合的に共役している。いくつかの実施形態において、リンをベースとする結合は、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合である。
【0072】
特定の実施形態において、x=y=19であり、Zは、C3−C3を含む。いくつかの実施形態において、C3−C3オーバーハングは、共有結合、例えば、リン酸ジエステル結合によって、(N)xまたは(N′)yの3′末端に共有結合する。いくつかの実施形態において、第1のC3と第2のC3との間の結合は、リン酸ジエステル結合である。いくつかの実施形態において、3′非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Piである。いくつかの実施形態において、3′非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Psである。いくつかの実施形態において、3′非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OHである(OHは、ヒドロキシである)。いくつかの実施形態において、3′非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OHである。
【0073】
種々の実施形態において、アルキル部分は、末端ヒドロキシル基、末端アミノ基、または末端ホスフェート基を含む、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、またはC6アルキル部分を含むアルキル誘導体を含む。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、C3アルキル部分またはC3アルキル誘導体部分である。いくつかの実施形態において、C3アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0074】
C3アルキル部分は、リン酸ジエステル結合によって、(N′)yの3′末端および/または(N)xの3′末端に共有結合している。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスファート、またはプロピルホスホロチオエートを含む。
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、プロパノール、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、これらの組み合わせ、またはこれらの複数の組み合わせ、特に、2もしくは3個の共有結合しているプロパノール、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、これらの組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、プロピルホスホプロパノール;プロピルホスホプロピルホスホロチオエート;プロピルホスホプロピルホスファート;(プロピルホスファート)、(プロピルホスファート)−プロパノール、(プロピルホスファート)−プロピルホスホロチオエートから選択される。任意のプロパンまたはプロパノールの共役した部分は、ZまたはZ′に含まれ得る。
【0075】
例示的な3′末端非ヌクレオチド部分の構造は、以下の通りである。
【化1】

【0076】
さらなる実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、脱塩基部分と非修飾デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの組み合わせ、または炭化水素部分と非修飾デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの組み合わせ、または脱塩基部分(デオキシリボもしくはリボ)と炭化水素部分の組み合わせを含む。かかる実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、C3Pi−rAbまたはC3Pi−dAbを含む。
【0077】
RNA二重鎖の長さは、約18〜約40リボヌクレオチド、好ましくは、19〜23リボヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、それぞれの鎖の長さ(オリゴマー)は、独立して、約18〜約40塩基、好ましくは、18〜23塩基、およびより好ましくは、19、20、もしくは21リボヌクレオチドから成る群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、修飾siRNA化合物および標的核酸のアンチセンス鎖間の相補性は、完全である。他の実施形態において、修飾siRNA化合物および標的核酸のアンチセンス鎖は、実質的に相補的である、すなわち、該アンチセンス鎖と標的核酸との間に1つ、2つ、または3つまでのミスマッチを有する。
【0079】
ある実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物のアンチセンス鎖とセンス鎖との間の相補性は、完全である。いくつかの実施形態において、該鎖は、実質的に相補的である、すなわち、該アンチセンス鎖と該センス鎖との間に1つ、2つ、または3つまでのミスマッチを有する。
【0080】
本発明のsiRNA化合物は、標的mRNAのヌクレオチドとミスマッチするアンチセンス鎖の5′末端で、共有結合する末端部分を有する。種々の実施形態において、アンチセンス鎖の5′末端での部分は、リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾リボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、擬似ウラシル、デオキシ擬似ウラシル、デオキシリボチミジン、修飾デオキシリボチミジン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、修飾デオキシリボシトシン、5−メチルリボシトシン、修飾5−メチルリボシトシン、5−メチルリボウリジン、リボ−2−チオウリジン、リボ−4−チオウリジン、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から成る群から選択される。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、5′末端ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖が、標的mRNAの連続する配列に対して完全に相補的である、siRNA化合物と比較して、活性の増強を示す。
【0082】
本発明のsiRNA構造は、哺乳動物および非哺乳動物遺伝子発現を阻害または軽減するのに有用な二本鎖RNAに有益に適用する。
【0083】
siRNAオリゴヌクレオチド
一態様において、本発明は、以下に説明される構造(A)を有する化合物を提供し、
(A) 5′ N−(N)x−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−N−(N′)y−z′′ 5′(センス鎖)
式中、N、N、およびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、

(N)xおよび(N′)yのそれぞれは、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって隣接するNまたはN′と連結するオリゴヌクレオチドであり、

xおよびyのそれぞれは、独立して、17〜39の整数であり、

(N′)yの配列は、(N)xの配列に相補性があり、(N)xは、標的RNAの連続する配列に相補性があり、

は、(N)xに共有結合し、該標的RNAとミスマッチするか、または該標的RNAに相補的なDNA部分であり、

は、天然もしくは修飾された、ウリジン、デオキシリボウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、またはデオキシアデノシンから成る群から選択される部分であり、式中、Z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、N−(N′)yの5′末端に共有結合するキャッピング部分であり、

ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、存在するか、あるいは存在しないが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3′末端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチド、連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせである。
【0084】
いくつかの実施形態において、Nは、(N)xに共有結合し、該標的RNAとミスマッチする。
【0085】
種々の実施形態において、Nは、(N)xに共有結合し、該標的RNAに対して相補的なDNA部分である。
【0086】
いくつかの実施形態において、NおよびNは、ワトソンクリック塩基対を一緒に形成する。他の実施形態において、NおよびNは、非ワトソンクリック塩基対を一緒に形成する。
【0087】
いくつかの実施形態において、x=y=18である。他の実施形態において、x=y=19である。なお他の実施形態において、x=y=20である。好ましい実施形態において、x=y=18である。
【0088】
いくつかの実施形態において、Nは、修飾リボシトシンまたは修飾リボウリジンである。Nのある実施形態において、修飾リボシトシンまたは修飾リボウリジンは、5−メチルリボシトシン、修飾5−メチルリボシトシン、5−メチルリボウリジン、リボ−2−チオウリジン、およびリボ−4−チオウリジンを含む群から選択される。
【0089】
ある実施形態において、Nは、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、修飾デオキシリボシトシン、5−メチルリボシトシン、および修飾5−メチルリボシトシンから成る群から選択される。他の実施形態において、Nは、リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾リボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、擬似ウラシル、デオキシ擬似ウラシル、5−メチルリボウリジン、リボ−2−チオウリジン、およびリボ−4−チオウリジンから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、Nは、デオキシリボチミジンまたは修飾デオキシリボチミジンである。
【0090】
いくつかの実施形態において、Nは、修飾リボヌクレオチドまたは非修飾リボヌクレオチドである。ある実施形態において、Nは、リボグアニン、修飾リボグアニン、デオキシグアニン、修飾デオキシグアニン、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、修飾デオキシアデノシン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、および修飾デオキシリボシトシンから成る群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、N2は、リボグアニン、修飾リボグアニン、デオキシグアニン、リボウリジン、デオキシリボウリジン、アデノシン、デオキシアデノシン、リボシトシン、およびデオキシリボシトシンから成る群から選択される。他の実施形態において、N2は、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、修飾デオキシアデノシン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、および修飾デオキシリボシトシンから成る群から選択される。なお他の実施形態において、N2は、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、修飾デオキシアデノシン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、および修飾デオキシリボシトシンから成る群から選択される。
【0092】
ある実施形態において、Nは、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、修飾デオキシリボシトシン、5−メチルリボシトシン、および修飾5−メチルリボシトシンから成る群から選択され、Nは、リボグアニン、修飾リボグアニン、デオキシグアニン、リボウリジン、デオキシリボウリジン、アデノシン、デオキシアデノシン、リボシトシン、およびデオキシリボシトシンから成る群から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態において、Nは、リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾リボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、擬似ウラシル、デオキシ擬似ウラシル、5−メチルリボウリジン、リボ−2−チオウリジン、およびリボ−4−チオウリジンから成る群から選択され、Nは、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、修飾デオキシアデノシン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、および修飾デオキシリボシトシンから成る群から選択される。
【0094】
ある実施形態において、Nは、デオキシリボチミジンまたは修飾デオキシリボチミジンであり、Nは、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、修飾デオキシアデノシン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、および修飾デオキシリボシトシンから成る群から選択される。
【0095】
構造(A)のいくつかの実施形態において、Nは、2′OMe糖修飾リボウリジンまたは2′OMe糖修飾リボシトシンである。構造(A)のある実施形態において、Nは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′は存在しない。他の実施形態において、ZまたはZ′のうちの1つが存在する。
【0097】
種々の実施形態において、ZおよびZ′は、独立して、ヌクレオチド、非ヌクレオチド、およびこれらの組み合わせから選択される。ある実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、存在する場合、独立して、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、脱塩基デオキシリボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、C3−アミノ−Pi、C4−アミノ−Pi、C5−アミノ−Pi、C6−アミノ−Pi、ミラーヌクレオチドから選択される。いくつかの実施形態において、Zが存在する。他の実施形態において、Z′が存在する。さらなる実施形態において、ZおよびZ′の双方が存在する。いくつかの実施形態において、ZおよびZ′が存在し、これらは同一である。さらなる実施形態において、ZおよびZ′が存在し、これらは異なる。いくつかの実施形態において、ZおよびZ′は、独立して、1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つの非ヌクレオチド部分であるか、または2つ、3つ、4つ、もしくは5つの非ヌクレオチド部分およびヌクレオチドの組み合わせである。いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、リン酸ジエステル結合によって、siRNA鎖の3′末端に共有結合する2つの非ヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態において、ZおよびZ′が存在し、それぞれの1つは、独立して、1つ以上のアルキル部分およびまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態において、Nは、リボアデノシンを含み、Nは、ウリジン(リボウリジン)を含む。
【0098】
非ヌクレオチド部分は、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、アルキル部分、またはその誘導体、および無機ホスフェードから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、非ヌクレオチド部分は、アルキル部分またはその誘導体である。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、アルコールを含む末端官能基、末端アミン、末端ホスフェード、または末端ホスホロチオエート部分を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、Zが存在し、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、炭化水素部分、またはその誘導体、および無機ホスフェードから成る群から選択される、1つ以上の非ヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態において、Zが存在し、1つ以上のアルキル部分およびまたはその誘導体を含む。
【0100】
さらなる実施形態において、Z′が存在し、脱塩基部分、逆位脱塩基部分、炭化水素部分、および無機ホスフェードから成る群から選択される、1つ以上の非ヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態において、Z′が存在し、1つ以上のアルキル部分およびまたはその誘導体を含む。
【0101】
さらなる実施形態において、x=y=18であり、ZあるいはZ′のいずれかが存在し、独立して、2つの非ヌクレオチド部分を含む。
【0102】
さらなる実施形態において、x=y=18であり、ZおよびZ′が存在し、それぞれ、独立して、2つの非ヌクレオチド部分を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、脱塩基部分、例えば、デオキシリボ脱塩基部分(「dAb」として本明細書で称される)またはリボ脱塩基部分(「rAb」として本明細書で称される)を含む。いくつかの実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、2つの共有結合する脱塩基部分を含み、これは、例えば、dAb−dAbまたはrAb−rAbまたはdAb−rAbまたはrAb−dAbである。それぞれの部分は、共有結合、好ましくは、リンをベースとする結合によって、隣接する部分に対して、共有結合的に共役している。いくつかの実施形態において、リンをベースとする結合は、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合である。
【0104】
いくつかの実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、独立して、アルキル部分、任意に、プロパン[(CH2)]部分、またはその誘導体を含み、これには、プロパノール(C3−OH)およびプロパンジオールのホスホ誘導体(「C3−3′Pi」)が含まれる。いくつかの実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、2つの炭化水素部分を含み、いくつかの実施例において、これは、C3−C3である。それぞれのC3は、共有結合、好ましくは、リンをベースとする結合によって、隣接するC3に対して、共有結合的に共役している。いくつかの実施形態において、リンをベースとする結合は、ホスホロチオエート、ホスホノアセテート、またはリン酸ジエステル結合である。
【0105】
特定の実施形態において、x=y=18であり、Zは、C3Pi−C3OHまたはC3Pi−C3Piを含む。特定の実施形態において、x=y=18であり、Zは、C3Pi−C3OHまたはC3Pi−C3Piを含む。いくつかの実施形態において、C3−C3オーバーハングは、共有結合、例えば、リン酸ジエステル結合によって、(N)xまたは(N′)yの3′末端に共有結合する。いくつかの実施形態において、第1のC3と第2のC3との間の結合は、リン酸ジエステル結合である。
【0106】
種々の実施形態において、アルキル部分は、末端ヒドロキシル基、末端アミノ基、末端ホスフェート基を含む、C3アルキルからC6アルキル部分である。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、C3アルキル部分である。いくつかの実施形態において、C3アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0107】
C3アルキル部分は、リン酸ジエステル結合によって、(N′)yの3′末端およびまたは(N)xの3′末端に共有結合している。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、プロパノール、プロピルホスファート、またはプロピルホスホロチオエートを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、プロパノール、プロピルホスフェード、プロピルホスホロチオエート、これらの組み合わせ、またはこれらの複数の組み合わせから選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、プロピルホスファート、プロピルホスホロチオエート、プロピルホスホプロパノール;プロピルホスホプロピルホスホロチオエート;プロピルホスホプロピルホスファート;(プロピルホスファート)、(プロピルホスファート)−プロパノール、(プロピルホスファート)−プロピルホスホロチオエートから選択される。任意のプロパンまたはプロパノールの共役した部分は、ZまたはZ′に含まれ得る。
【0110】
さらなる実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、脱塩基部分と非修飾デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの組み合わせ、または炭化水素部分と非修飾デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの組み合わせ、または脱塩基部分(デオキシリボもしくはリボ)と炭化水素部分の組み合わせを含む。かかる実施形態において、Zおよび/またはZ′のそれぞれは、C3−rAbまたはC3−dAbを含む。
【0111】
好ましい実施形態において、x=y=18であり、Z′が存在せず、Zは存在し、かつリン酸ジエステル結合によって互いに共有結合する2つのアルキル部分を含み、Nは、リボアデノシンを含み、Nは、ウリジンを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、NおよびN′は、非修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、NまたはN′のうちの少なくとも1つは、化学的に修飾されたリボヌクレオチドまたは非従来的部分を含む。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対ヌクレオチド類似体、架橋核酸、および2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合によって隣接するヌクレオチドに連結するヌクレオチドから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくは、L−DNA部分である。いくつかの実施形態において、NまたはN′のうちの少なくとも1つは、糖、塩基、またはリンカーのうちの1つ以上で修飾される。ある実施形態において、NまたはN′のうちの少なくとも1つは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む。
【0113】
ある実施形態において、(N)xおよび(N′)yは、完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yは、実質的に相補的である。ある実施形態において、(N)xは、標的配列に対して完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xは、標的配列に対して実質的に相補的である。ある好ましい実施形態によれば、本発明は、修飾ヌクレオチドが、糖部分、塩基部分、またはヌクレオチド間結合部分において修飾を有する、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む修飾siRNA化合物を提供する。
【0114】
構造(A)に従う化合物のある実施形態において、(N)および(N′)のそれぞれにおいて、交互に現れるリボヌクレオチドは、2′−OMe糖修飾リボヌクレオチドである。構造(A)のいくつかの実施形態において、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、非修飾であるか、または(N)xは、交互に現れる2′OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび非修飾リボヌクレオチドを含み、N−(N)xの中央の位置に位置するリボヌクレオチドは、修飾または非修飾であり、好ましくは非修飾であり、(N′)yは、末端または末端から2番目の位置において、1つの修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含む。
【0115】
特定の実施形態において、x=y=18であり、Nは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含み、(N)xは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含み、N−(N)xの中央位置に位置するリボヌクレオチドは、非修飾である。いくつかの実施形態において、(N′)yの5′および3′末端のいずれか、または両方にある少なくとも1つのヌクレオチドは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。いくつかの実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N)xの5′末端に連結される。いくつかの実施形態において、(N′)yの5′および3′末端のいずれか、または両方にある少なくとも1つのヌクレオチドは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。いくつかの実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N)yの3′末端に連結される。ある実施形態において、x=y=18であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互に現れ、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび非修飾であるN−(N)xの中央位置で位置するリボヌクレオチドであり、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N)yの3′末端に連結され、(N′)yの3′末端で少なくとも2つのヌクレオチドは、2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。他の好ましい実施形態において、x=y=18であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互に現れ、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドおよび非修飾であるN−(N)xの中央位置で位置するリボヌクレオチドであり、(N′)yの5′末端で少なくとも3つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。さらなる実施形態において、N−(N)yの中央位置に位置するヌクレオチド、すなわち、10位のヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドである。別の好ましい実施形態において、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2′−OMe糖修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間に交互に現れ、(N′)yにおいて、5′末端で4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結され、5′末端ヌクレオチドまたは5′末端で2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、3′−OMe糖修飾を含む。
【0116】
ある好ましい実施形態において、x=y=18であり、(N′)yにおいて、少なくとも1つの位置におけるヌクレオチドは、ミラーヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および2′−5′ヌクレオチド間連結によって隣接するヌクレオチドに連結するヌクレオチドを含む。
【0117】
ある実施形態において、x=y=18であり、(N′)yは、ミラーヌクレオチドを含む。種々の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−DNAヌクレオチドである。ある実施形態において、L−DNAは、L−デオキシリボシチジンである。いくつかの実施形態において、(N′)yは、17位にL−DNAを含む。他の実施形態において、(N′)yは、16位および17位にL−DNAを含む。ある実施形態において、(N′)yは、1位に、ならびに16位および17位のうちの1つまたは両方に、L−DNAヌクレオチドを含む。
【0118】
なお他の実施形態において、(N′)yは、14位にDNA、ならびに16位および17位のうちの1つまたは両方に、L−DNAヌクレオチドを含む。その構造において、1位は、さらに、L−DNAまたは脱塩基非従来的部分を含み得る。
【0119】
x=y=20である他の実施形態において、上で考察された(N′)yに対する修飾は、14位、15位、16位、17位の代わりに、17位、18位、19位、20位上である。16位および17位のうちの1つまたは両方における修飾は、20量体については、18位または19位のうちの1つまたは両方である。18量体における全ての修飾は、20量体よび22量体に同様に適応される。
【0120】
−(N′)yの様々な実施形態によれば、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N)yの3′末端に連結され、(N′)yにおいて、3′末端での1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合によって結合される。一実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N)yの3′末端に連結され、(N′)yの3′末端における3つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′リン酸ジエステル結合に連結され、2′−5′リン酸ジエステル結合を形成する2′−5′ヌクレオチドのうちの1つ以上は、さらに、3′−OMe糖修飾を含む。いくつかの実施形態において、Nは、2′−OMe糖修飾を含む。さらなる実施形態において、(N′)yの3′末端ヌクレオチドは、2′−OMe糖修飾を含む。ある実施形態において、x=y=18であり、(N′)yにおいて、14位、15位、16位、17位、および18位における2つまたは3つの連続するヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合によって隣接するヌクレオチドに連結するヌクレオチドを含む。種々の実施形態において、2′−5′ヌクレオチド間結合を形成するヌクレオチドは、3′デオキシリボースヌクレオチドまたは3′メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、16位および17位におけるヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合によって連結される。他の実施形態において、(N′)yにおいて、15〜16位、16〜17位、または15〜17位におけるヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合によって連結される。
【0121】
ある実施形態において、(N′)yは、2位にL−DNA、および15〜16位、16〜17位、または15〜17位における2′−5′ヌクレオチド間結合を含む。
【0122】
一実施形態において、3′末端ヌクレオチド、または(N′)yの3′末端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、L−デオキシリボヌクレオチドである。
【0123】
他の実施形態において、N−(N′)yにおいて、Nは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y(N′)yにおいて、いずれの末端における12、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個の連続するリボヌクレオチド、または5′および3′末端のそれぞれにおける1〜7個の修飾ヌクレオチドは、独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−OMe)を含む。一連の実施形態において、(N′)yの5′末端における3つ、4つ、または5つの連続するヌクレオチドは、2′−OMe修飾を含む。別の実施形態において、Nおよび(N′)yの3′末端における2つの連続するヌクレオチドは、2′−OMe修飾を含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、いずれの末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個の連続するリボヌクレオチド、または5′末端および3′末端のそれぞれにおける1〜7個の修飾ヌクレオチドは、独立して、二環式ヌクレオチドである。種々の実施形態において、二環式ヌクレオチドは、ロックされた核酸(LNA)であるか、またはLNA種であり、例えば、2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)は、LNA種である。
【0125】
種々の実施形態において、(N′)yは、5′末端において、または3′末端および5′末端の両方において、修飾ヌクレオチドを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、(N′)yの5′末端における少なくとも2つのヌクレオチドは、P−エトキシ骨格修飾で連結される。いくつかの実施形態において、(N′)yの3′末端におけるNは、P−エトキシ骨格修飾で連結される。ある実施形態において、x=y=18であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互に現れ、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチド、および非修飾であるN−(N)xの中央位置で位置するリボヌクレオチドであり、N1は、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドであり、3′末端における3つの連続するヌクレオチドは、2つのP−エトキシ骨格修飾によって連結されるか、または(N′)yの5′末端における4つの連続するヌクレオチドは、3つのP−エトキシ骨格修飾によって連結される。さらなる実施形態において、(N′)yの3′末端におけるNは、P−エトキシ骨格修飾によって連結される。
【0127】
いくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、5′末端および3′末端のそれぞれにおける1、2、3、4、5、6、または7個の連続するリボヌクレオチドは、独立して、ミラーヌクレオチド、2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結されるヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、または二環式ヌクレオチドである。一実施形態において、(N′)yの5′末端および3′末端における修飾は、同一である。一実施形態において、(N′)yの5′末端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′リン酸ジエステル結合は、(N′)yの3′末端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。さらなる実施形態において、(N′)yの3′末端におけるNは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N′)yの3′末端において連結される。別の実施形態において、(N′)yの5′末端における修飾は、(N′)yの3′末端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、(N′)yの5′末端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)yの3′末端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。別の特定の実施形態において、(N′)yの5′末端における3つの連続するヌクレオチドは、LNAヌクレオチドであり、(N′)yの3′末端における2つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互に現れ、N−(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは、非修飾である。
【0128】
種々の実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N′)yの3′末端において連結され、(N′)xの3′末端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、1つもしくは2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結される。いくつかの実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって(N′)yの3′末端において連結され、(N′)xの3′末端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、1つもしくは2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結され、3′末端における1つもしくは2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、3′−OMe糖修飾を含む。さらなる実施形態において、Nは、3′−OMe糖修飾を含む。
【0129】
別の実施形態において、本発明は、x=y=18であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドが、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互に現れる、化合物を提供し、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチド、および非修飾であるN−(N)xの中央で位置するリボヌクレオチドであり、(N′)yの3′末端における2つのヌクレオチドは、2つの2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結され、(N′)yの5′末端における3つのヌクレオチドは、ENA等のLNAである。さらなる実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって、(N′)yの3′末端において連結される。
【0130】
別の実施形態において、(N′)yの5′末端における5つの連続するヌクレオチドは、2′OMe糖修飾を含み、(N′)yの3′末端における2つの連続するヌクレオチドは、L−DNAである。
【0131】
なお別の実施形態において、本発明は、x=y=18であり、(N)xが非修飾リボヌクレオチドからなり、(N′)yの3′末端における2つの連続するヌクレオチドは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって連結され、(N′)yの5′末端における3つの連続するヌクレオチドは、ENA等のLNAである、化合物を提供する。さらなる実施形態において、Nは、2′−5′リン酸ジエステル結合によって、(N′)yの3′末端において連結される。
【0132】
他の実施形態によれば、(N′)yにおいて、5′末端もしくは3′末端ヌクレオチド、またはいずれかの末端における2、3、4、5、もしくは6つの連続するヌクレオチド、または5′末端および3′末端のそれぞれにおける1〜4つのヌクレオチドは、独立して、ホスホノカルボキシレートまたはホスホノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、PACEヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。いくつかの好ましい実施形態において、(N′)yにおいて、5′末端および3′末端のそれぞれにおける1つもしくは2つの連続するヌクレオチドは、PACEヌクレオチドである。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物の鎖はいずれも、3′末端および5′末端においてリン酸化されてない。他の実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、3′末端でリン酸化されている。なお別の実施形態において、アンチセンス鎖は、切断可能なリン酸基または切断可能でないリン酸基を用いて末端の5′末端位置においてリン酸化されている。なお別の実施形態において、アンチセンスおよびセンス鎖のいずれかまたは両方は、切断可能なリン酸基または切断可能でないリン酸基を用いて3′末端位置においてリン酸化されている。
【0134】
構造(A)は、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子に対して任意のオリゴヌクレオチド対(センス鎖およびアンチセンス鎖)とともに有用である。いくつかの実施形態において、哺乳動物遺伝子は、ヒト遺伝子である。オリゴヌクレオチド配列対の例は、本発明の譲渡人が譲り受けたPCT特許公開WO第2006/023544号、WO第2007/084684号、WO第2008/050329号、WO第2007/141796号、WO第2009/044392号、WO第2008/106102号、WO第2008/152636号、WO第2009/001359号、WO第2009/090639号に提供されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0135】
別途指示がない限り、本明細書に考察される構造の好ましい実施形態において、それぞれの連続するNとN′との間の共有結合は、リン酸ジエステル結合である。別途指示がない限り、本明細書に考察される構造の好ましい実施形態において、Nと(N)xとの間およびNと(N′)yとの間の共有結合は、リン酸ジエステル結合である。いくつかの実施形態において、共有結合のうちの少なくとも1つは、ホスホロチオエート結合である。
【0136】
上記の構造の全てについて、いくつかの実施形態において、(N)xのオリゴヌクレオチド配列は、(N′)yのオリゴヌクレオチド配列に対して完全に相補的である。他の実施形態において、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、実質的に相補的である。ある実施形態において、(N)xは、哺乳動物mRNAまたは微生物RNAまたはウイルスRNAに対して完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xは、哺乳動物mRNAまたは微生物RNAまたはウイルスRNAに対して実質的に相補的である。
【0137】
いくつかの実施形態において、構造(A)を有する修飾siRNA化合物は、siRNA化合物と比較して、少なくとも増強した活性を含む有益な特性を示し、Nは、標的mRNA中のヌクレオチドに対して相補的である。
【0138】
本発明は、さらに、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子発現を阻害するのに有効な量で、構造(A)に従う本発明の化合物、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物、ならびに本明細書に開示される疾患および障害のうちのいずれか1つを治療擦るためのその使用を提供する。いくつかの実施形態において、哺乳動物遺伝子は、ヒト遺伝子である。いくつかの実施形態において、非哺乳動物遺伝子は、哺乳動物疾患、好ましくは、ヒト疾患に関与する。
【0139】
本発明は、さらに、本明細書に開示される疾患もしくは状態のうちのいずれか1つの発生もしくは重症度を治療または防止するための方法、またはそれを必要とする対象における、本明細書に開示される疾患もしくは状態の危険性もしくは重症度を軽減するための方法に関し、それに随伴する疾患もしくは状態および/または症状もしくは危険性は、哺乳動物または非哺乳動物遺伝子の発現と関連する。好ましい実施形態において、対象は、ヒト対象である。
【0140】
siRNA合成
公開および特許アルゴリズムを用いて、潜在的なsiRNAのセンスおよびアンチセンス配列を生成し、siRNAのNおよび/またはNを置換して、構造(A)に従う修飾siRNA化合物を生成する。
【0141】
上記の明細書に従うsiRNA分子は、本明細書に記載されるように、基本的に調製される。本発明の修飾siRNA化合物は、リボ核酸(またはデオキシリボ核酸)オリゴヌクレオチドの合成のために、当技術分野で公知である方法のいずれかによって合成される。合成は、一般に、市販品である合成装置(とりわけ、Applied Biosystemsから入手可能である)において行われる。オリゴヌクレオチド合成は、例えば、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1992;48:2223−2311、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1993;49:6123−6194、およびCaruthers,et.al,Methods Enzymol.1987;154: 287−313に記載されており、チオエートの合成は、とりわけ、Eckstein,Ann.Rev.Biochem.1985;54:367−402に記載されており、RNA分子の合成は、Sproat, in Humana Press 2005 edited by Herdewijn P.; Kap.2: 17−31に記載されており、それぞれの下流プロセスは、とりわけ、Pingoud et al,in IRL Press 1989 edited by Oliver R.W.A.;Kap. 7:183−208に記載されている。
【0142】
他の合成手順は、当技術分野で既知であり、例えば、Usman et al,1987,J.Am.Chem.Soc,109,7845、Scaringe et al,1990,NAR.,18,5433、Wincott et al,1995,NAR.23,2677−2684、およびWincott et al,1997,Methods Mol.Bio.,74,59に記載される手順は、5′端でのジメトキシトリチルおよび3′端でのホスホラミダイト等の一般的な核酸の保護およびカップリング基を利用し得る。修飾(例えば、2′−O−メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドは、所望により組み込まれる。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、別々に合成し、合成後に、例えば、ライゲーション(Moore et al.,1992,Science 256,9923、Draperらの国際特許公開WO第93/23569号、Shabarova et al,1991,NAR 19,4247、Bellon et al,1997,Nucleosides & Nucleotides,16,951、Bellon et al,1997,Bioconjugate Chem.8,204)、または合成および/または脱保護後のハイブリダイゼーション等によって一緒に連結される。
【0144】
化学的に合成した断片のオーバーラップペアは、当技術分野で公知の方法を用いて連結することができる(例えば、米国特許第6,121,426号を参照のこと)。鎖は、別々に合成し、チューブ中で互いにアニーリングされる。次いで、二本鎖siRNAは、アニールしなかった一本鎖のオリゴヌクレオチド(例えば、そのうちの一方の過剰のため)からHPLCで分離される。本発明の修飾siRNA化合物に関して、2つまたはそれ以上のかかる配列を合成し、本発明で使用するために一緒に連結することができる。
【0145】
本発明のsiRNA化合物は、標的mRNAのヌクレオチドとミスマッチするアンチセンス鎖の5′末端で、共有結合する末端部分を有する。種々の実施形態において、アンチセンス鎖の5′末端における部分は、リボウリジン、デオキシリボウリジン、修飾リボウリジン、修飾デオキシリボウリジン、擬似ウラシル、デオキシ擬似ウラシル、デオキシリボチミジン、修飾デオキシリボチミジン、リボシトシン、修飾リボシトシン、デオキシリボシトシン、修飾デオキシリボシトシン、5−メチルリボシトシン、修飾5−メチルリボシトシン、5−メチルリボウリジン、リボ−2−チオウリジン、リボ−4−チオウリジン、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から成る群から選択され、センス鎖の3′末端における部分は、リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドまたは非従来的部分から選択される。本発明のsiRNA構造は、哺乳動物および非哺乳動物遺伝子発現を阻害または軽減するのに有用な二本鎖RNAに有益に適用する。
【0146】
薬学的組成物
本発明の化合物が原末(raw chemical)として投与される可能性があるが、それらが薬学的組成物として存在することが好ましい。したがって、本発明は、1つ以上の本発明の修飾siRNA化合物、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、2つ以上の本発明の修飾siRNA化合物を含む。
【0147】
本発明は、さらに、標的遺伝子を阻害するのに有効な量の1つ以上の本発明の化合物に共有結合するか、または共有結合しない本発明の少なくとも1つの化合物、および薬学的に許容する担体を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、修飾siRNA化合物は、細胞内で内因性の細胞の複合体でプロセスされ、1つ以上の本発明のオリゴリボヌクレオチドを産生する。
【0148】
本発明は、さらに、哺乳動物の標的遺伝子の細胞における発現を下方制御するのに有効な量で、薬学的に許容される担体および1つ以上の本発明の修飾siRNA化合物を含む薬学的組成物を提供し、該化合物は、標的mRNAの配列に対して実質的に相補的な配列を含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、本発明に従う修飾siRNA化合物は、薬学的組成物における主な活性成分である。他の実施形態において、本発明に従う修飾siRNA化合物は、2つ以上のsiRNAを含有する薬学的組成物の活性成分の1つであり、該薬学的組成物は、さらに、1つ以上の標的遺伝子を標的とする1つ以上のsiRNA化合物から成る。
【0150】
本発明はまた、薬学的組成物を調製するプロセスを提供し、これには、
1つ以上の本発明の二本鎖の修飾siRNA化合物を提供することと、該化合物を薬学的に許容される担体と混合することと、を含む。
好ましい実施形態において、薬学的組成物の調製のために使用される修飾siRNA化合物は、薬学的に有効な用量で担体と混合される。いくつかの実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、ステロイドまたは脂質または別の適切な分子、例えば、コレステロールと共役される。
【0151】
RNA干渉
RNAi事象に関する多くのPCT出願が最近、公開されている。これらには、PCT公開WO第00/44895号、PCT公開WO第00/49035号、PCT公開WO第00/63364号、PCT公開WO第01/36641号、PCT公開WO第01/36646号、PCT公開WO第99/32619号、PCT公開WO第00/44914号、PCT公開WO第01/29058号、およびPCT公開WO第01/75164号が含まれる。
【0152】
RNA干渉(RNAi)は、dsRNA種が細胞質タンパク質複合体内に入る能力に基づき、次いで、相補的細胞RNAに対して標的化され、それを特異的に分解する。RNA干渉応答は、一般的には相補的誘発性サイレンシング複合体(RISC)と称される、siRNAを含有するエンドヌクレアーゼ複合体を特長とし、これは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に対して相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に対して相補的な領域の中央で起こり得る(Elbashir et al,Genes Dev.,2001,15(2):188−200)。より詳細には、より長いdsRNAは、III型RNAse(DICER、DROSHA等;Bernstein et al,Nature,2001,409(6818):363−6、Lee et al,Nature,2003,425(6956):415−9)によって、短い(17〜29bp)dsRNA断片(短期阻害性RNA「siRNA」とも称される)へと消化される。RISCタンパク質複合体は、これらの断片および相補的mRNAを認識する。プロセス全体は、標的mRNAのエンドヌクレアーゼ切断という結果となる(McManus & Sharp, Nature Rev Genet, 2002, 3(10):737−47、Paddison & Hannon, Curr Opin Mol Ther.2003, 5(3):217−24)。(これらの用語および提案された機構のさらなる情報には、例えば、Bernstein et al,RNA 2001,7(11):1509−21、Nishikura,Cell 2001,107(4):415−8、およびPCT公開WO第01/36646号を参照のこと)。
【0153】
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成は、幅広く報告されている;例えば、Ui−Tei et al., J Biomed Biotechnol.2006; 2006: 65052、Chalk et al, BBRC.2004, 319(1): 264−74、Sioud & Leirdal, Met.Mol Biol; 2004, 252:457−69、Levenkova et al, Bioinform.2004, 20(3):430−2、Ui−Tei et al, Nuc.Acid Res. 2004, 32(3):936−48を参照のこと。修飾siRNAの使用、およびその産生の例には、Braasch et al, Biochem., 2003, 42(26):7967−75、Chiu et al, RNA, 2003, 9(9):1034−48、PCT公開WO第2004/015107号(Atugen)、WO第02/44321号(Tuschl et al)、および米国特許第5,898,031号および同第6,107,094号を参照のこと。
【0154】
siRNAおよびRNA干渉
RNA干渉(RNAi)とは、二本鎖(ds)RNA依存性の遺伝子特異的な転写後サイレンシングに関与する現象である。この現象を研究し、哺乳動物細胞を実験的に操作した初期の試みは、長いdsRNA分子に応答して活性化された、活性のある、非特異的な抗ウイルス防御機構によって妨げられた(Gil et al.Apoptosis,2000.5:107−114)。後に、21個のヌクレオチドのRNAの合成二重鎖が、哺乳動物細胞において一般的な抗ウイルス防御機構を刺激せずに遺伝子特異的RNAiを媒介できることが発見された(Elbashir et al.Nature 2001,411:494−498およびCaplen et al.PNAS USA 2001,98:9742−9747を参照のこと)。その結果、低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子機能を理解する試みにおける強力なツールとなっている。
【0155】
哺乳動物におけるRNA干渉(RNAi)は、低分子干渉RNA(siRNA)(Fire et al,Nature 1998,391:806)またはマイクロRNA(miRNA)(Ambros,Nature 2004,431(7006):350−355、Barrel,Cell 2004,116(2):281−97)によって媒介される。植物における対応するプロセスは、一般的に特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)またはRNAサイレンシングと称され、真菌ではクエリング(quelling)とも称される。
【0156】
siRNAとは、その内因性(細胞性)対応物の遺伝子/mRNAの発現を下方制御またはサイレンシングする(防止する)、二本鎖RNAまたは修飾RNA分子である。RNA干渉の機構を以下に詳述する。
【0157】
いくつかの研究により、siRNA治療剤が、哺乳動物およびヒトのどちらにおいてもインビボで有効であることが明らかとなっている。Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ムクレオカプシドのN遺伝子に向けられた特異的siRNA分子が、鼻腔内投与した場合にマウスの治療に有効であることを示している(Nat.Med.2005,11(1):50−55)。siRNA治療剤を論じている最新の総説が入手可能である(Barik,et al,J.Mol.Med 2005,83:764−773、Dallas and Vlassov,Med.Sci.Monitor 2006,12(4):RA67−74、Chakraborty,Current Drug Targets 2007,8(3):469−82、Dykxhoorn et al,Gene Therapy 2006.13:541−552)。
【0158】
Mucke(IDrugs 2007 10(1):37−41)は、眼疾患、例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)および緑内障を治療するための、様々な標的に対するsiRNAを含む最新の治療剤の総説を提示する。
【0159】
siRNA構造
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成は、幅広く報告されている(例えば、Ui−Tei et al, J Biomed Biotech.2006; 2006: 65052、Chalk et al, BBRC.2004, 319(1): 264−74、Sioud & Leirdal, Met.Mol Biol; 2004, 252:457−69、Levenkova et al, Bioinform.2004, 20(3):430−2、Ui−Tei et al, NAR.2004, 32(3):936−48、De Paula et al, RNA 2007, 13:431−56を参照のこと)。
【0160】
修飾siRNAの使用、およびその産生の例には、例えば、Braasch et al, Biochem.2003, 42(26):7967−75、Chiu et al, RNA, 2003, 9(9):1034−48、PCT公開WO第2004/015107号(atugen AG)およびWO第02/44321号(Tuschl et al)を参照のこと。米国特許第5,898,031号および同第6,107,094号は、化学的に修飾されたオリゴマーを記載している。米国特許公開第2005/0080246号および同第2005/0042647号は、それぞれ、交互に現れるモチーフを有するオリゴマー化合物および化学的に修飾されたヌクレオシド間結合を有するdsRNA化合物に関する。
【0161】
他の修飾が開示されている。5′−リン酸部分の含有は、ショウジョウバエ胚においてsiRNAの活性を増強することが示され(Boutla,et al.,Curr.Biol.2001,11:1776−1780)、ヒトHeLa細胞中でのsiRNA機能に必要である(Schwarz et al,Mol.Cell,2002,10:537−48)。Amarzguiouiら(NAR, 2003, 31(2):589−95)は、siRNA活性が2′−O−メチル修飾の位置に依存することを示している。Holenら(NAR.2003,31(9):2401−07)は、少数の2′−O−メチル修飾ヌクレオシドを有するsiRNAは、野生型と比較して良好な活性を与えたが、2′−O−メチル修飾ヌクレオシドの数が増加するにつれて活性が低下したことを報告している。ChiuおよびRana(RNA.2003,9: 1034−48)は、センスまたはアンチセンス鎖中に2′−O−メチル修飾ヌクレオシドを取り込むことで(完全に修飾された鎖)、非修飾siRNAと比較してsiRNA活性が激しく低下したことを記載している。2′−O−メチル基をアンチセンス鎖上の5′末端に配置することにより、活性が大幅に制限されたが、一方で、アンチセンスの3′末端およびセンス鎖の両末端に配置することは許容されたことが報告されている(Czauderna et al, NAR.2003, 31(11):2705−16、WO第2004/015107号)。本発明の分子は、安定性があり、活性であり、様々な疾患を治療するための薬学的組成物の調製に有用であるという利点を提供する。
【0162】
本発明の譲渡人の、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO第2008/104978号およびWO第2009/044392号は、新規のsiRNA構造を開示する。
【0163】
本発明の譲渡人の、PCT公開WO第2008/050329号および米国特許出願第11/978,089号は、アポトーシス促進遺伝子の阻害剤に関し、これは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0164】
PCT特許公開WO第2004/111191号およびWO第2005/001043号は、RNAiを増強するための方法に関する。
【0165】
本発明は、対照と比較して、標的遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、または50%下方制御する方法を提供し、本方法には、標的遺伝子のmRNA転写物を、1つ以上の本発明の化合物と接触させることが含まれる。
【0166】
さらに、本発明は、哺乳動物における標的遺伝子の発現を、対照と比較して少なくとも20%、30%、40%、または50%下方制御する方法を提供し、本方法には、1つ以上の本発明の化合物を哺乳動物に投与することが含まれる。本発明の好ましい実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0167】
種々の実施形態において、構造(A)の二本鎖核酸分子は、標的遺伝子の発現を下方制御し、標的遺伝子の発現の下方制御は、遺伝子機能の下方制御(例えば、とりわけ、ネイティブ遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用を用いた酵素アッセイまたは結合アッセイによって検査し得る)、遺伝子のポリペプチド産物の下方制御(例えば、とりわけ、ウエスタンブロッティング、ELISA、または免疫沈降によって検査し得る)、および遺伝子のmRNA発現の下方制御(例えば、とりわけ、ノーザンブロッティング、定量的RT−PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションによって検査し得る)を含む群から選択される。
【0168】
送達
本発明の修飾siRNA化合物は、化合物それ自体として(すなわち、裸のsiRNA)または薬学的に許容される塩として投与され、単独で、または1つ以上の薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせて、活性成分として投与される。いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、担体または希釈剤で調製される裸分子(naked molecule)の直接の適用によって標的組織に送達される。
【0169】
「裸のsiRNA」という用語は、ウイルス性の配列、ウイルス性の粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、または沈殿剤等を含む、細胞への進入を補助、促進(promote)、または増進(facilitate)するように作用する送達ビヒクルを全く含まないsiRNA分子を指す。例えば、PBS中のsiRNAは、「裸のsiRNA」である。
【0170】
薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクル、ならびに移植担体とは、一般に、本発明の活性修飾siRNA化合物と反応しない、不活性かつ無毒性な固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル封入物質を指し、これらにはリポソームおよびミクロスフェアが含まれる。例えば、本発明のsiRNA化合物は、ポリエチレンイミン(PEI)、PEI誘導体、例えば、分枝PEIのオレイン酸およびステアリン酸修飾誘導体、キトサン、またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を用いて製剤化され得る。例えば、リポソーム、マイクロスフェア、またはナノスフェア中の組成物の製剤化により、安定性を増強し、吸収性をもたらし得る。
【0171】
さらに、本組成物は、ペルフルオロカーボン(PFC)、例えば、臭化ペルフルオロオクチル(ペルフルブロン)等の人口酸素担体を含み得る。
【0172】
本発明に有用な送達系の例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196号が含まれる。多くのこのような移植、送達系、および分子は、当業者に周知である。本発明の1つの特定の実施形態において、局所および経皮製剤が選択される。
【0173】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、リポソーム製剤およびリポフェクチン製剤中等で送達され、当業者に周知の方法によって調製することができる。かかる方法は、例えば、米国特許第5,593,972号、第5,589,466号、および第5,580,859号に記載されており、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0174】
哺乳動物細胞内への増強および改善されたsiRNAの送達を具体的に目的とする送達系が、開発されている(例えば、Shen et al FEBS Let.539: 111−114 (2003)、Xia et al, Nat. Biotech. 20:1006−1010 (2002)、Reich et al, Mol.Vision 9:210−216 (2003)、Sorensen et al, J. Mol. Biol. 327:761−766 (2003)、Lewis et al, Nat. Gen. 32:107−108 (2002)、およびSimeoni et al,NAR31,11:2717−2724(2003))。siRNAは、最近、霊長類における遺伝子発現の阻害での使用が成功している(詳細については、例えば、Tolentino et al.,Retina 2004.24(1): 132−138を参照のこと)。
【0175】
本発明の化合物の送達を改善するためのさらなる製剤は、非製剤化化合物、コレステロールに共有結合する化合物、および標的抗体に結合する化合物を含むことができる(Song et al, Antibody mediated in vivo delivery of small interfering RNAs via cell−surface receptors, Nat Biotechnol.2005. 23(6):709−17)。コレステロール共役siRNA(および他のステロイドおよび脂質共役siRNA)は、送達のために使用することができる(例えば、Soutschek et al Nature.2004. 432: 173−177、およびLorenz et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2004.14:4975−4977を参照のこと)。
【0176】
裸のsiRNAまたは本発明の化学的に修飾されたsiRNAを含む薬学的組成物は、個々の患者の臨床状態、治療すべき疾患、投与の部位および方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、体重ならびに医療従事者に知られている他の要素を考慮して、良好な医療行為に従って、投与および投薬する。
【0177】
本明細書の目的のための「治療上有効な用量」は、当技術分野で知られているそのような検討事項によって決定される。用量は、生存率の改善もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは排除、および当業者によって適切な手段によって選択される他の指標が含まれるが、これらに限定されない、改善を達成するために有効なものでなければならない。本発明のsiRNAは、単回投与または複数回投与で投与することができる。
【0178】
通常、ヒトにおける化合物の活性用量は、1日につき体重1kgあたり1ng/kg〜約20〜100mg/kgの範囲、好ましくは1日につき体重1kgあたり約0.01mg〜約2〜10mg/kg、単回投与または1日1回または1日2回もしくは3回の用量のレジメンで、1〜4週間またはそれより長い期間である。
【0179】
本発明の修飾siRNA化合物は、従来の投与経路のうちのいずれかによって投与することができる。修飾siRNA化合物は、経口、皮下、または非経口投与され、これには、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、眼球内、耳、トランス鼓室(transtympanic)および鼻腔内の投与、気管内点滴注入および気管内吸入、同様に輸液技術が含まれる。化合物の移植も有用である。
【0180】
液体形態は、侵襲的投与、例えば、注射、または局所(topical)もしくは局部的(local)もしくは非侵襲的投与用に調製される。注射という用語には、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、眼球内、および他の非経口投与経路(が含まれる。液体組成物には、有機共溶媒、水性もしくは油性の懸濁液、食用油を用いた乳濁液、および同様の製薬ビヒクルを用いた、ならびに用いない、水溶液が含まれる。特定の実施形態において、投与は、静脈内投与を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、非侵襲的投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、耳への局所投与用の点耳剤として製剤化される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、眼の表面への局所投与用の点眼剤として製剤化される。本発明の化合物の投与におけるさらなる情報は、Tolentino et al., Retina 2004. 24:132−138、およびReich et al., Molecular Vision, 2003. 9:210−216に見出すことができる。加えて、ある実施形態において、本発明の治療で用いる組成物は、例えば、鼻腔内投与用に、エアロゾルとして形成される。ある実施形態において、本発明の治療で用いる組成物は、例えば、鼻腔内点滴注入用の点鼻剤として形成される。
【0182】
本発明の治療組成物は、好ましくは、これらの組成物/化合物を含有するエアロゾルの吸入によって、または該組成物の鼻腔内もしくは気管内点滴注入によって、肺に投与される。薬学的組成物の肺送達におけるさらなる情報については、Weiss et al.,Human Gene Therapy 1999.10:2287−2293、Densmore et al,Molecular therapy 1999.1:180−188、Gautam et al,Molecular Therapy 2001.3:551−556、およびShahiwala & Misra,AAPS PharmSciTech 2004.24;6(3):E482−6を参照のこと。さらに、siRNAのための呼吸器製剤は、米国特許出願第2004/0063654号に記載されている。siRNAのための呼吸器製剤は、米国特許出願第2004/0063654号に記載されている。
【0183】
ある実施形態において、経口組成物(錠剤、懸濁液、溶液等)は、口腔粘膜炎の治療のためのマウスウォッシュに適している経口組成物等の口腔への局部的送達に有効であり得る。
【0184】
特定の実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、腎臓疾患、例えば、急性腎不全(ARF)、臓器移植後臓器機能障害(DGF)、および糖尿病性網膜症等の治療における、腎臓への送達のための静脈内投与用に製剤化される。腎臓の近位細管中の標的細胞への本発明に従う修飾siRNA化合物の送達は、特に、ARFおよびDGFの治療に有効であることに留意されたい。
【0185】
脳への化合物の送達は、とりわけ、脳外科的移植、血液脳関門分裂、脂質媒介性輸送、担体媒介性流入もしくは流出、血漿タンパク質媒介性輸送、受容体媒介性トランスサイトーシス、吸収性媒介性トランスサイトーシス、血液脳関門での神経ペプチド輸送、および薬物標的のための遺伝的に改変する「トロイの木馬」等の幾つかの方法によって達成される。上記の方法は、例えば、“Brain Drug Targeting:the future of brain drug development”,W.M. Pardridge, Cambridge University Press, Cambridge, UK (2001)に記載されるように、行われる。
【0186】
加えて、ある実施形態において、本発明の治療で用いる組成物は、例えば、鼻腔内投与用のエアロゾルとして形成される。
【0187】
CNS疾患の治療用の鼻腔内送達は、例えば、米国特許出願公開第2006003989号およびPCT出願公開WO第2004/002402号およびWO第2005/102275号に記載されるような、ガランタミンおよび様々な塩およびガランタミンの誘導体等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を用いて達成している。例えば、点鼻剤の鼻腔内点滴注入によるCNS疾患の治療のための核酸の鼻腔内送達は、例えば、PCT出願公開WO第2007/107789号に記載されている。
【0188】
治療方法
一態様において、本発明は、標的遺伝子発現と関連する疾患に苦しんでいる対象を治療する方法に関し、本方法は、対象に、治療有効量の本発明の修飾siRNA化合物を投与することを含む。好ましい実施形態において、治療すべき対象は、温血動物であり、特に、ヒトを含む哺乳動物である。
【0189】
「対象を治療する」とは、対象に、疾患と関連する症状を改善する、重症度を軽減するか、もしくは該疾患を治す、該疾患の進行を遅延させる、該疾患が発生するのを防止する、または該疾患の発症を遅らせるのに有用な治療物質を投与することを指す。「治療」とは、治療上の治療および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)な手段の両方を指し、その目的は、障害を防止する、該障害の発症を遅延させるか、あるいは障害の症状を軽減することである。治療を必要とするものは、既に疾患または状態を経験しているもの、疾患または状態を有する傾向にあるもの、および疾患または状態が防止されるものが含まれる。本発明の化合物は、疾患または状態が発症する前、その間、またはその後に投与する。
【0190】
「治療上有効な用量」とは、生存率の改善もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは排除、疾患の発症の遅延、疾患の進行の遅延、および当業者によって適切な決定手段によって選択される他の指標が含まれるが、これらに限定されない、対象またはその生理学的系の改善を達成するために有効な、薬学的化合物または組成物の量を指す。
【0191】
「呼吸器疾患」とは、とりわけ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、慢性気管支炎、喘息、および肺癌を含む、全てのタイプの肺疾患が含まれるが、これらに限定されない、呼吸器系の状態、疾患、または症候群を指す。肺気腫および慢性気管支炎は、COPDの一部として、または独立して、発生し得る。種々の実施形態において、本発明は、一次移植不全、虚血再灌流傷害、再灌流傷害、再灌流浮腫、同種移植片機能不全、肺の再移植応答および/または臓器移植後、特に、肺移植の一次移植機能不全(PGD)を防止または治療するのに有用な方法および組成物を、それを必要とする対象に提供する。
【0192】
「微小血管疾患」とは、微小毛細血管およびリンパ管に影響を及ぼす任意の状態、特に、血管攣縮性疾患、脈管炎疾患、およびリンパ管閉塞性疾患を指す。微小血管疾患の例には、とりわけ、眼の障害、例えば、一過性黒内障(塞栓性またはSLE続発性)、抗リン脂質抗体症候群(apla syndrome)、Prot CSおよびATIII欠乏症、静注薬使用に起因する微小血管病変、タンパク異常血症、側頭動脈炎、虚血性視神経障害(ION)、前部虚血性視神経症(AION)、(原発性または自己免疫疾患に続発性の)視神経炎、緑内障、フォンヒッペル・リンダウ症候群、角膜疾患、角膜移植拒絶反応白内障(corneal transplant rejection cataracts)、イールズ病、霜状分枝血管炎、輪状バックリング手術(encircling buckling operation)、毛様体扁平部炎を含むブドウ膜炎、脈絡膜黒色腫、脈絡膜血管腫、視神経形成不全;網膜の状態、例えば、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、未熟児網膜症、HIV網膜症、プルチャーの網膜症、全身性血管炎および自己免疫疾患の網膜症、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、放射線網膜症、網膜動脈分枝閉塞または網膜静脈分枝閉塞、特発性網膜血管炎、動脈瘤、視神経網膜炎、網膜塞栓形成、急性網膜壊死、バードショット網膜脈絡膜症(birdshot retinochoroidopathy)、長期的網膜剥離;全身性の状態、例えば、真性糖尿病、糖尿病性網膜症(DR)、糖尿病関連微小血管病変(本明細書中に詳述されるような)、過粘稠度症候群、大動脈弓症候群および眼虚血症候群、頚動脈海綿静脈洞瘻、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、SS−A自己抗体を伴う細動脈炎、急性多病巣性出血性血管炎(acute multifocal hemorrhagic vasculitis)、感染に起因する血管炎、ベーチェット病に起因する血管炎、サルコイドーシス、凝固障害、ニューロパシー、ネフロパシー、腎臓の微小血管疾患、ならびに虚血性微小血管状態が挙げられる。
【0193】
微小血管障害は、血管新生的要素を含み得る。「血管新生障害」という用語は、血管の形成(新生血管形成)が患者に有害である状態を指す。眼の新生血管形成の例には、網膜疾患(糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、慢性緑内障、網膜剥離、および鎌状赤血球網膜症);虹彩血管新生(rubeosis iritis);増殖性硝子体網膜症;炎症性疾患;慢性ブドウ膜炎;腫瘍(網膜芽腫、偽神経膠腫、および黒色腫);フックス紅彩異色性虹彩毛様体炎(Fuchs’heterochromic iridocyclitis);新生血管緑内障;角膜血管新生(虹彩の炎症性、移植、および発達性の形成不全);水晶体切除術と併せた硝子体切除術後の新生血管形成、血管疾患(網膜虚血、脈絡膜血管不全、脈絡膜血栓、および頸動脈虚血);視神経の新生血管形成;ならびに眼の穿通または挫傷性の(contusive)眼外傷に起因する新生血管形成が含まれる。種々の実施形態において、これら全ての血管新生状態は、本発明の化合物および薬学的組成物を用いて治療される。
【0194】
「眼の疾患」とは、脈絡膜血管新生(CNV)、滲出型および萎縮型加齢性黄斑変性症、眼ヒストプラスマ症候群、網膜色素線条症(angiod streaks)、ブルッフ膜における破裂、近視性変性、眼腫瘍、網膜変性疾患、および網膜静脈閉塞症(RVO)を含むいずれかの状態が含まれるが、これらに限定されない、眼の状態、疾患、または症候群を指す。種々の実施形態において、本明細書中に示される定義の下では、微小血管障害および眼疾患のいずれか、またはその両方とされている、DR等の本明細書中に開示される状態は、本発明の方法に従って治療される。
【0195】
より具体的には、本発明は、成人呼吸促迫症候群(ARDS);慢性閉塞性肺疾患(COPD);急性肺傷害(ALI);気腫;糖尿病性ニューロパシー、ネフロパシー、および網膜症;糖尿病性黄斑浮腫(DME)および他の糖尿病性状態;緑内障;加齢性黄斑変性(AMD);骨髄移植(BMT)網膜症;虚血性状態;眼の虚血性症候群(OIS);腎障害:急性腎不全(ARF)、臓器移植後臓器機能障害(DGF)、移植拒絶反応;聴覚障害(聴覚損失を含む);脊髄損傷;口腔粘膜炎;ドライアイ症候群および褥瘡;虚血性または低酸素状態から生じる神経障害、例えば高血圧、高血圧性脳血管疾患、血栓または塞栓の場合に起こるような−血管の狭窄または閉塞、血管腫、血液疾患(blood dyscrasias)、心停止または心不全を含む心機能不全のいずれかの形態、全身性低血圧;脳卒中、中枢神経系の疾患、障害、および損傷(てんかん、脊髄損傷、脳損傷が含まれるが、これらに限定されない)、ならびに神経変性障害(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病)、アルツハイマー病、ハンチントン病および他のいずれかの疾患により誘導される認知症(例えば、HIV関連認知症)が含まれるが、これらに限定されない)に罹患しているか、またはこれらに感受性である対象の治療において有用な方法および組成物を提供する。
【0196】
本発明は、癌の治療に有用な化合物、組成物、および方法に関する。「癌」および「癌性」という用語は、一般に、非制御の細胞増殖によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、あるいは記載する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。このような癌の他の例には、腎臓癌(kidney or renal cancer)、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、扁平上皮癌(例えば、扁平上皮細胞癌)、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric or stomach cancer)(消化管癌、消化管間質腫瘍(GIST)を含む)、膵臓癌、頭頸部癌、グリア芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む血液悪性腫瘍、多発性骨髄腫および急性の血液系悪性腫瘍、子宮内膜もしくは子宮カルチノーマ、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛膜癌、唾液腺カルチノーマ、外陰部癌、甲状腺癌、食道カルチノーマ、肝癌、肛門部のカルチノーマ、陰茎カルチノーマ、上咽頭癌、喉頭のカルチノーマ、カポシ肉腫、メラノーマ、皮膚カルチノーマ、シュワン腫、乏突起細胞腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉種、平滑筋肉腫、尿路カルチノーマ、甲状腺カルチノーマ、ウィルムス腫瘍、ならびにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;およびワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);へアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連するもの等)、およびメイグス症候群と関係している異常な血管性増殖が含まれる。本明細書で使用される「腫瘍」とは、悪性または良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長および増殖、および全ての前癌性および癌性細胞および組織を意味する。
【0197】
線維性疾患には、肝線維症、肝硬変、肺線維症(ILFを含む)を含む肺の線維症、任意の状態から起因する腎臓の線維症(例えば、ESRDを含むCKD)、腹膜線維症、慢性肝障害、原線維発生(fibrillogenesis)、他の臓器における線維症、偶発性および医原性(手術)の全ての可能な皮膚損傷のタイプと関連する異常な瘢痕化(ケロイド);硬皮症;心臓線維症、緑内障濾過手術の失敗;および腸管癒着症が含まれる。
【0198】
さらに、本発明は、対照と比較して、標的遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、または50%下方制御する方法を提供し、本方法は、標的mRNAを、1つ以上の本発明の修飾siRNA化合物と接触させることを含む。種々の実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、標的遺伝子を下方制御し、この下方制御は、遺伝子機能の下方制御、ポリペプチドの下方制御、およびmRNA発現の下方制御を含む群から選択される。
【0199】
本発明は、対照と比較して、標的遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、または40%、好ましくは、50%、60%、または70%、さらに好ましくは75%、80%、または90%阻害する方法を提供し、本方法は、標的遺伝子のmRNA転写物を、1つ以上の本発明の修飾siRNA化合物と接触させることを含む。
【0200】
一実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、標的遺伝子ポリペプチドを阻害し、この阻害は、機能の阻害(例えば、、とりわけ、ネイティブ遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用を用いた酵素アッセイまたは結合アッセイによって検査される)、標的タンパク質の阻害(例えば、とりわけ、ウエスタンブロッティング、ELISA、または免疫沈降によって検査される)、および標的mRNA発現の阻害(例えば、とりわけ、ノーザンブロッティング、定量的RT−PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションによって検査される)を含む群から選択される。
【0201】
さらなる実施形態において、本発明は、哺乳動物または非哺乳動物標的遺伝子の上昇したレベルを伴う任意の疾患または障害に苦しんでいるまたは影響を受けやすい対象を治療する方法を提供し、本方法は、対象に、本発明の修飾siRNA化合物または組成物を治療上有効な用量で投与し、それによって対象を治療することを含む。
【0202】
本発明は、哺乳動物標的遺伝子の発現を下方制御する化合物、特に、哺乳動物標的遺伝子の発現の阻害が、有益である、以下の疾患または状態の治療の際に、構造(A)に従う修飾RNA化合物の使用に関する。ARDS;COPD;ALI;肺気腫;糖尿病性ニューロパシー、ネフロパシー、および網膜症;DMEおよび他の糖尿病状態;緑内障;AMD;BMT網膜症;脳卒中を含む虚血状態;OIS;パーキンソン病、アルツハイマー病、ALS等の神経変性障害;腎障害:ARF、DGF、移植片拒絶反応;聴覚障害;脊髄損傷;口腔粘膜炎;造血および固形腫瘍癌を含む癌、ドライアイ症候群、ならびに褥瘡である。別の実施形態において、本発明の化合物は、移植前の臓器保存および/または貯蔵に有用である。
【0203】
「毒物への曝露」とは、毒物を哺乳動物に使用可能にするか、または哺乳動物と接触させることを意味する。毒物は、神経系に対して毒性であり得る。毒物への曝露は、直接投与、例えば、植物、医薬品、もしくは治療剤(例えば、化学療法剤)の摂取もしくは投与により、偶発的な混入により、または環境曝露、例えば、空気中もしくは水の曝露により起こり得る。
【0204】
他の実施形態において、本発明の化学的に修飾されたsiRNA化合物および方法は、対象における他の疾患および状態の発生または重症度を治療または防止するのに有用である。これらの疾患および状態としては、脳卒中および脳卒中様の状況(例えば、脳、腎臓、心臓の不全)、神経細胞死、再灌流を伴うか伴わない脳損傷、慢性変性疾患、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病を含む)、多発性硬化症、球脊髄性筋萎縮症(spinobulbar atrophy)、プリオン病、および外傷性脳損傷(TBI)に起因するアポトーシスが含まれるが、これらに限定されない。追加の実施形態において、本発明の化合物および方法は、神経保護、およびまたは脳保護を提供することを対象とする。
【0205】
制限することなく、標的遺伝子は、p53(TP53)、TP53BP2、LRDD、CYBA、ATF3、CASP2(カスパーゼ2)、NOX3、HRK;C1QBP、BNIP3、MAPK8;Rac1、GSK3B、CD38、STEAP4、BMP2a;GJA1、TYROBP、CTGF、SPP1、RTN4R、ANXA2、RHOA、DUOX1、SLC5A1、SLC2A2、AKR1B1、SORD、SLC2A1、MME、NRF2、SRM、REDD2(RTP801L)、REDD1(RTP801)、NOX4、MYC、PLK1、ESPL1、HTRA2、KEAP1、p66、ZNHIT1、LGALS3、CYBB(NOX2)、NOX1、NOXO1、ADRB1、HI95、ARF1、ASPP1、SOX9、FAS、FASLG、ヒトMLL、AF9、CTSD、CAPNS1、CD80、CD86、HES1、HES5、CDK1B、ID1、ID2、ID3、CDK2A、カスパーゼ1、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ12、カスパーゼ14、Apaf−1、Nod1、Nod2、Ipaf、DEFCAP、RAIDD、RICK、Bcl10、ASC、TUCAN、ARC、CLARP、FADD、DEDD、DEDD2、クリオピリン、PYC1、パイリン、TRADD、UNC5a、UNC5b、UNC5c、ZUD、p84N5、LRDD、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK9、PITSLRE A、CHK2、LATS1、Prk、MAP4K1、MAP4K2、STK4、SLK、GSK3アルファ、GSK3ベータ、MEKK1、MAP3K5(Ask1)、MAP3K7、MAP3K8、MAP3K9、MAP3K10、MAP3K11、MAP3K12、DRP−1、MKK6、p38、JNK3、DAPK1、DRAK1、DRAK2、IRAK、RIP、RIP3、RIP5、PKR、IRE1、MSK1、PKCアルファ、PKCベータ、PKCデルタ、PKCイプシロン、PKCイータ、PKCミュー、PKCシータ、PKCゼータ、CAMK2A、HIPK2、LKB1、BTK、c−Src、FYN、Lck、ABL2、ZAP70、TrkA、TrkC、MYLK、FGFR2、EphA2、AATYK、c−Met、RET、PRKAA2、PLA2G2A、SMPD1、SMPD2、SPP1、FAN、PLCG2、IP6K2、PTEN、SHIP、AIF、AMID、チトクロムc、Smac、HtrA2、TSAP6、DAP−1、FEM−1、DAP−3、グランザイムB、DIO−1、DAXX、CAD、CIDE−A、CIDE−B、Fsp27、Apel、ERCC2、ERCC3、BAP31、Bit1、AES、ハンチンチン、HIP1、hSir2、PHAP1、GADD45b、GADD34、RAD21、MSH6、ADAR、MBD4、WW45、ATM、mTOR、TIP49、ジユビキチン/FAT10、FAF1、p193、Scythe/BAT3、Amida、IGFBP−3、TDAG51、MCG10、PACT、p52/RAP、ALG2、ALG3、プレセネリン−1、PSAP、AIP1/Alix、ES18、mda−7、pl4ARF、ANT1、p33INGl、p33ING2、p53AIPl、p53DINPl、MGC35083、NRAGE、GRIM19、リポカリン2、グリコデリンA、NADE、ポリミン、STAG1、DAB2、ガレクチン−7、ガレクチン−9、SPRC、FLJ21908、WWOX、XK、DKK−1、Fzd1、Fzd2、SARP2、アキシン1、RGS3、DVL1、NFkB2、IkBアルファ、NF−ATC1、NF−ATC2、NF−ATC4、zO/ZNF319、Egrl、Egr2、Egr3、Sp1、TIEG、WT1、Zacl、イカルス、ZNF148、ZK1/ZNF443、ZNF274、WIG1、HIVEP1、HIVEP3、Flizl、ZPR9、GAT A3、TR3、PPARG、CSMF、RXRa、RARa、RARb、RARg、T3Ra、Erベータ、VDR、GR/GCCR、p53、p73アルファ、p63(ヒト[taアルファ、taベータ、taガンマ、daアルファ、aベータ、daガンマ]、53BP2、ASPP1、E2F1、E2F2、E2F3、HIF1アルファ、TCF4、c−Myc、Max、Mad、MITF、Id2、Id3、Id4、c−Jun、c−Fos、ATF3、NF−IL6、CHOP、NRF1、c−Maf、Bach2、Msx2、Csx、Hoxa5、Ets−1、PU1/Spi1、Ets−2、ELK1、TEL1、c−Myb、TBX5、IRF1、IRF3、IRF4、IRF9、AP−2アルファ、FKHR、FOXO1A、FKHRL1、FOXO3a、AFX1、MLLT7、Tip60、BTG1、AUF1、HNRPD、TIA1、NDG1、PCBP4、MCG10、FXR2、TNFR2、LTbR、CD40、CD27、CD30、4−1BB、TNFRSF19、XEDAR、Fn14、OPG、DcR3、FAS、TNFR1、WSL−1、p75NTR、DR4、DR5、DR6、EDAR、TNFアルファ、FASリガンド、TRAIL、リンフォトキシンアルファ、リンフォトキシンベータ、4−1BBL、RANKL、TL1、TWEAK、LIGHT、APRIL、IL−1−アルファ、IL−1−ベータ、IL−18、FGF8、IL−2、IL−21、IL−5、IL−4、IL−6、LIF、IL−12、IL−7、IL−10、IL−19、IL−24、IFNアルファ、IFNベータ、IFNガンマ、M−CSF、プロラクチン、TLR2、TLR3、TLR4、MyD88、TRIF、RIG−1、CD14、TCRアルファ、CD3ガンマ、CD8、CD4、CD7、CD19、CD28、CTLA4、SEMA3A、SEMA3B、HLA−A、HLA−B、HLA−L、HLA−Dmアルファ、CD22、CD33、CALL、DCC、ICAM1、ICAM3、CD66a、PVR、CD47、CD2、Thy−1、SIRPa1、CD5、E−カドヘリン、ITGAM、ITGAV、CD18、ITGB3、CD9、IgE Fc Rベータ、CD82、CD81、PERP、CD24、CD69、KLRD1、ガレクチン1、B4GALT1、Clqアルファ、C5R1、MlP1アルファ、MlP1ベータ、RANTES、SDF1、XCL1、CCCKR5、OIAS/OAS1、INDO、MxA、IFI16、AIM2、iNOS、HB−EGF、HGF、MIF、TRAF3、TRAF4、TRAF6、PAR−4、IKKガンマ、FIP2、TXBP151、FLASH、TRF1、IEX−1S、Dok1、BLNK、CIN85、Bif−1、HEF1、Vav1、RasGRP1、POSH、Rac1、RhoA、RhoB、RhoC、ALG4、SPP1、TRIP、SIVA、TRABID、TSC−22、BRCA1、BARD1、53BP1、MDC1、Mdm4、Siah−1、Siah−2、RoRet、TRIM35、PML、RFWD1、DIP1、Socs1、PARC、USP7、CYLD、SERPINH1(HSP47)から成る群から選択される。他の有用な標的遺伝子は、微生物起源の遺伝子である。
【0206】
併用療法
本明細書に開示される疾患を治療する方法には、本明細書に開示される修飾二本鎖核酸分子を、修飾siRNA化合物の薬理学的特性を改善する物質、または本明細書で上述された疾患および障害(微小血管障害、眼の疾患および状態(例えば黄斑変性症)、難聴(聴覚損失を含む)、呼吸器障害、腎臓障害、臓器移植、神経変性障害、脊髄損傷、脳損傷、血管新生関連状態、およびアポトーシス関連状態を含む)のいずれかに罹患しているか、あるいは感受性である対象の治療において有効であることが公知であるさらなる化合物と、併用してまたは組み合わせて投与することを含む。
【0207】
したがって、本発明は、別の態様において、本発明の治療のための修飾siRNA化合物と、少なくとも1つのさらなる治療活性薬剤との組み合わせを含む薬学的組成物を提供する。「と併用して」または「と組み合わせて」とは、前に、同時に、または後に、を意味する。したがって、このような組み合わせの個々の構成要素は、同じか、または別々の薬学的製剤から、順次または同時のいずれかで投与される。
【0208】
修飾siRNA化合物および本明細書に記載される療法と併用して、微小血管障害、眼の疾患および状態(例えば黄斑変性症)、難聴(聴覚損失を含む)、呼吸器障害、腎臓障害、臓器移植、神経変性障害(例えば脊髄損傷)、血管新生関連状態およびアポトーシス関連状態を治療するための公知の治療を含む併用療法は、本発明の一部であると見なされる。
【0209】
したがって、本発明の別の態様において、さらなる薬学的に有効な化合物は、本発明の薬学的組成物と併用して投与される。加えて、本発明の修飾siRNA化合物は、かかる状態を治療するための第2の治療活性化合物との補助的療法としての使用のための医薬品の調製において使用される。本発明の化学的に修飾されたsiRNA化合物と組み合わせた使用のために公知の第2の治療剤の適切な用量は、当業者により容易に理解される。
【0210】
いくつかの実施形態において、上で言及された組み合わせは、単一の薬学的製剤の形態での使用について示される。
【0211】
本発明に従う薬学的に活性なsiRNA共役体のうちのいずれか1つを含む薬学的組成物の投与は、医療従事者によって決定されるような、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または脳室内を含む、多くの公知の投与経路のいずれかによって行なわれる。特殊化された製剤を使用して、経口で、または吸入により、または鼻腔内点滴注入により、組成物を投与することは可能である。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、点耳剤、点眼剤、皮膚製剤、経皮製剤等を含む局所性投与用に製剤化される。
【0212】
「と併用して」とは、さらなる薬学的に有効な化合物を、本発明の化合物または薬学的組成物の投与前、その投与と同時に、またはその投与の後に投与することを意味する。したがって、上で言及されるこのような組み合わせの個々の要素を、同じか、または別々の薬学的製剤から、順次または同時のいずれかで投与することができる。本発明の修飾siRNA化合物の場合のように、第2の治療剤は、任意の適切な経路、例えば、経口、頬腔、吸入、舌下、直腸、膣、経尿道、鼻腔、局所、耳、眼球、局所、経皮(percutaneous)(すなわち、経皮性(transdermal))、または非経口(静脈内、筋内、皮下、および冠動脈内を含む)投与により、投与することができる。
【0213】
いくつかの実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物および第2の治療剤は、同じ経路により、単一の組成物か、2つ以上の異なる薬学的組成物としてのいずれかで提供されて、投与される。しかしながら、他の実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物および第2の治療剤のための異なる投与経路が、可能であるか、または好ましい。当業者は、単独でも、組み合わせのどちらでも、各治療剤についての投与の最良の形態を認識する。
【0214】
種々の実施形態において、本発明の修飾siRNA化合物は、薬学的組成物における主な活性成分である。
【0215】
別の態様において、本発明は、本明細書に記述される疾患および状態のいずれかの治療のための、2つ以上のsiRNA分子を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、2つ以上のsiRNA分子または該分子を含む製剤は、等しい活性またはそうでなければ有益な活性を生じる量で薬学的組成物において混合される。ある実施形態において、2つ以上のsiRNA分子は、共有結合または非共有結合であるか、または2〜100、好ましくは、2〜50、または2〜30個のヌクレオチドの長さの範囲の核酸リンカーにより一緒に結合されている。
【0216】
いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、1つ以上のさらなる遺伝子を標的とする、1つ以上のさらなるsiRNA分子をさらに含む。いくつかの実施形態において、該さらなる遺伝子の同時阻害は、本明細書に開示される疾患の治療に、相加的または相乗的な効果をもたらす。
【0217】
本発明に従う治療レジメンは、本明細書において開示される状態の有害事象からの患者の機能的回復が改善されるように、または障害の発症を遅らせるように、投与様式、投与のタイミング、および投薬量の観点から実行される。
【0218】
本発明は、例示的な様式において記載されており、使用される用語は、限定ではなく、本来の説明の言葉の範疇にあることを意図されることを理解されたい。
【0219】
本発明の改変および変形が、上記の教示を考慮すれば可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明が、特定的に記載される以外の方法で実行され得ることを理解されたい。
【0220】
本発明は、実施例を参照して以下で詳細に説明されるが、それらに限定するとは解釈されるべきではない。
【0221】
本明細書におけるいずれの文献の引用も、そのような文献が関連する従来技術または本出願のいずれかの請求項の特許性に対して考慮される材料であると是認することを意図されない。いずれの文献の内容または日付に関する記述も、出願時に出願人に入手可能な情報に基づくものであり、上記記述の正確性に関する是認を構成するものではない。
【実施例】
【0222】
当業者は、さらに詳述することなく、前述の説明を使用して、本発明を完全に利用することができると考えられる。したがって、以下の好ましい特定の実施形態は、例示としてのみ解釈されるべきであり、特許請求される本発明を多少なりとも制限するものではない。
【0223】
当該技術分野で知られる標準的な分子生物学プロトコルは、本明細書に具体的に記載されず、概して、Sambrook et al, Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New−York (1989, 1992)、およびAusubel et al, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1988)、およびAusubel et al, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、およびPerbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, New York (1988)、およびWatson et al, Recombinant DNA, Scientific American Books, New York、およびBirren et al (eds) Genome Analysis: A Laboratory Manual Series, Vols. 1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)に本質的に従い、米国特許第 4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に記載され、参照することによって本明細書に組み込まれる方法論に従う。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、概して、PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA (1990)にあるように行われた。フローサイトメトリーと組み合わせた原位置(細胞内)PCRは、特定のDNAおよびmRNA配列を含有する細胞の検出に有用である(Testoni et al, Blood 1996, 87:3822)。RT−PCRを実施する方法も、当該技術分野でよく知られている。
【0224】
実施例1.標的遺伝子に対するsiRNAの配列の生成および修飾siRNA化合物の産生

独自のアルゴリズム、および任意の遺伝子、任意で本明細書で開示されるアポトーシスを促進する遺伝子の知られている配列を使用して、多数の可能性のあるsiRNAのt19−merの配列を生成した。このアルゴリズムに加えて、19−merの配列の5′および/または3′延長によって、いくつかの23−merのオリゴマー配列を生成した。本方法を使用して生成されたアンチセンス鎖配列は、標的mRNA配列の一区分に完全または実質的に相補的である。いくつかの実施形態において、本アンチセンス配列は、対応するmRNA配列の一区分に完全に相補的である。本発明の修飾siRNA化合物を生成するために、アンチセンス鎖の5′末端位置のヌクレオチド(N)x(1位、N)を、構造(A)の実施形態の二本鎖核酸分子を生成するように置換した。他の実施例では、アンチセンス鎖の5′末端位置のヌクレオチド(N)x、およびセンス鎖の3′末端位置のヌクレオチド(N′)yを、構造(A)の実施形態の二本鎖核酸分子を生成するように置換した。
【0225】
表Aは、いくつかの実施例で使用された化合物のセンス鎖およびアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を提供する。表A1は、構造(A)の実施形態に従う修飾siRNA化合物を提供するように、記載のように生成された、例示的な二本鎖核酸分子を提供する。本明細書に示される化合物は、限定的であることを意図しておらず、本明細書に記載される二本鎖核酸分子を特定するために、いかなる標的RNAが使用されてもよい。表A2は、比較試験のために生成された修飾siRNA化合物を提供する。表A1およびA2の修飾siRNA化合物は、TLR2(ヒトtoll様受容体2(TLR2)、mRNA、gi|68160956|ref|NM_003264.3|、配列番号4)遺伝子、ならびにCAPNS1(カルパイン、小サブユニット1変異体、gi|51599152|ref|NM_001749.2|、配列番号1、またはカルパイン、小サブユニット1変異体2、gi|51599150|ref]NM_001003962.11、配列番号2)遺伝子を標的とする。さらなる化合物は、ヒトRhoA mRNA(ras相同体遺伝子ファミリー、メンバーA(RhoA)、mRNA、gi|50593005 |ref|NM_001664.21、配列番号3)を標的とする。哺乳動物標的遺伝子のmRNA配列は、例えば、NCBIウェブサイト[http ://www.ncbi.nlm.nih.gov/]で入手可能である。

表A
【表2】


表A1:本発明の例示的なTLR2二本鎖分子
【表3】


表A1(続き)
【表4】


表A2:比較試験のために合成された化合物
【表5】

【0226】
表A3は、以下に、表A1およびA2のsiRNAオリゴヌクレオチドの調製に利用された、修飾ヌクレオチド/非従来的部分のコードを提供する。
表A3:本明細書の表で使用された修飾ヌクレオチド/非従来的部分のコード
【表6】

【0227】
実施例2:修飾siRNA化合物のインビトロ試験

siRNA活性を試験するためのプロトコル
【0228】
本発明に従う修飾siRNA化合物を、以下のように活性について試験する。6ウェルプレートに、ウェルあたり約1×10個のラットREF52(TLR2のsiRNA活性のため)、または0.6×10個のヒトPC3細胞(CAPNS1のsiRNA活性のため)を播種した(30〜70%集密)。約24時間のインキュベーション後、細胞に、TLR2 dsRNAについては1〜40nMの最終濃度、およびCAPNS1 dsRNAについては5〜40nMの最終濃度で、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogene)を使用して、dsRNAオリゴ(以下の表A4およびA5を参照)を形質移入した。

表A4:TLR2_16 siRNA化合物(配列番号6および11)
【表7】


表A5:CAPNS1_23 siRNA化合物(配列番号5および10)
【表8】

【0229】
細胞形質移入の効率性の正の対照として、REDD14−Cy3.5を標識したオリゴを使用した。siRNA活性の負の対照として、スクランブル(CNL)オリゴを使用した(1.2の項で言及したものと同じ濃度)。形質移入の効率性を、細胞形質移入の24時間後、蛍光顕微鏡検査で試験した。
【0230】
siRNA試料調製:それぞれの形質移入したウェルについて、3μLのLipofectamine2000試薬を250μLの無血清培地中に希釈し、5分間室温でインキュベートした。
【0231】
siRNA分子は以下のように調製した。

siRNA使用液:

REDD14−Cy3.5原液1.5×10nM(PBSで10μΜの最終濃度になるように1:150に希釈)

CNL原液1.6×10nM(PBSで10μΜの最終濃度になるように1:160に希釈)

標的遺伝子原液100μΜ(PBSで10μΜの最終濃度になるように1:10に希釈)

試料を、上述(1.2および1.4の項)のように、TLR2、CAPNS1、およびCNL siRNAオリゴについては最終濃度、ならびにウェルあたり2mLの最終容量に計算される、250 DMEM培地中で20nMのREDD14−Cy3.5 siRNAに希釈した。Lipofectamine(商標)2000をsiRNAと合わせ(1:1容量)、試料を穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。
【0232】
形質移入:Lipofectamine/siRNA複合体を細胞に添加し(ウェルあたり500μL)、そのプレートを前後に揺動させた(各ウェルに2mLの最終容量)。細胞を、COインキュベーター中37℃でインキュベートした。
【0233】
qPCRによるmRNAレベルの定量化:細胞形質移入の48時間後、細胞を回収し、RNAを、EZ−RNA(商標)キット[Biological Industries(#20−410−100)を使用して単離した。cDNA合成を実施し、mRNAレベルをqPCRによって測定した。測定されたmRNAの数量を、参照遺伝子であるペプチジルプロリルイソメラーゼA(シクロフィリンA、CycloA)のmRNA数量に対して正規化した。
【0234】
siRNA活性結果:
TLR2_16 siRNA活性:TLR2_16 siRNA形質移入後の、内因性遺伝子を発現するREF52細胞中のラットTLR2発現のqPCR分析(表A6のデータは、残留(対照−非形質移入細胞の%)ラットTLR2発現を示す。

表A6
【表8】

【0235】
最も活性な化合物は、標的mRNAに対するアンチセンスミスマッチおよび完全に相補的な二重鎖を有するTLR2_16_S938であった。TLR2_16_S938では、N=Uであり、N=Aであり、Nは、標的mRNA中のCとミスマッチする。

CAPNS1_23 siRNA活性

CAPNS1_23 siRNA形質移入後の、内因性遺伝子を発現するヒトPC−3細胞中のCAPNS1発現のqPCR分析(表A7のデータは、PC−3細胞中の残留(対照−非形質移入細胞の%)ヒトCAPNS1発現を示す。

表A7
【表9】

【0236】
最も活性な化合物は、標的mRNAに対するアンチセンスミスマッチおよび完全に相補的な二重鎖を有するCAPNS1_23_S938であった。CAPNS1_23_S938では、N=Uであり、N=Aであり、Nは、標的mRNA中のCとミスマッチする。
【0237】
構造(A)の構造に従う試験化合物は、アンチセンス鎖が標的mRNAと完全に相補的である対照化合物より、少なくとも10%より活性である。

二本鎖RNA分子のオンターゲットおよびオフターゲット試験
【0238】
本研究の目的は、対照(非修飾)および試験(化学的に修飾)二本鎖核酸分子のオンターゲット活性および可能性のあるオフターゲット活性を評価することであった。
【0239】
siRNA分子の2本の鎖は、標的遺伝子mRNAに対してセンスおよびアンチセンスである構成を持つ配列を有する。細胞内では、ガイド鎖(GS)として知られるsiRNAのアンチセンス鎖が、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の中に取り込まれ、標的mRNA中の相補的配列へとRNAi機構をガイドするように機能する。パッセンジャー鎖(PS)として知られるセンス鎖が破壊される。GSと標的mRNAとの間に正確な相補性が存在する場合、後者はRISCのRNaseH様スライサー活性によって切断される。
【0240】
場合によっては、siRNA分子は、転写物が、3′−UTR内のGSシード領域(2〜8位のヌクレオチド[5′>3′])に対する相補性を有する、意図されない遺伝子を下方制御することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、このオフターゲット効果は、マイクロRNA(miRNA)による標的サイレンシングのものと類似の機構によって媒介される場合がある。siRNAの別の種類のオフターゲット活性は、RISCの中へのセンス鎖(PS)の取り込みによって生じる場合がある。合成siRNAの意図されないオフターゲット効果は、siRNA二重鎖内の初期siRNA配列の化学修飾により、軽減または抑止することができる。試験分子はそれに応じて設計された。
【0241】
試験分子を、psiCHECK(商標)(Promega)のプラスミド構築物を使用する「ガイドシード配列およびパッセンジャー鎖に基づく活性アッセイ」で、オンターゲット活性(標的mRNAに対する活性)およびオフターゲット活性(標的mRNA以外のmRNAに対する活性)の双方について評価した。試験分子および対照分子の活性を、完全標的配列(試験分子のGSまたはPSのいずれかの19塩基配列全体に完全に相補的なヌクレオチド配列)、またはシード標的配列(試験分子のGSまたはPSのいずれかのヌクレオチド1〜8[5′>3′]に相補的な配列)のいずれかに対して試験した。
【0242】
試験分子は、少なくとも非修飾対照siRNAに対してと同程度、GS完全標的部位に対して活性であった。試験分子がPS完全標的部位に対して不活性である一方で、対照の非修飾siRNAは、同一部位に対する活性を示した。双方のsiRNAが、GSシード標的配列部位およびPSシード標的配列部位に対して不活性であった。
【0243】
ガイド鎖(GS)は、RISC複合体に進入し、標的RNAのサイレンシングをガイドすることができる、二本鎖RNAのアンチセンス鎖を指す。
【0244】
パッセンジャー鎖(PS)は、二本鎖RNAのセンス鎖を指す。
【0245】
シード配列は、GSのヌクレオチド2〜8(5′>3′)を指し、オフターゲット認識に関係する。
【0246】
CM(完全マッチ)は、二本鎖RNA分子のガイド鎖と完全に相補的なヌクレオチド配列を有する合成DNA断片を指す。このDNA断片は、レポーター遺伝子の3′UTRでクローン化され、RNAサイレンシングの標的として機能する (Castanotto & Rossi(2009). Nature, 22:426−33)。
【0247】
SM(シードマッチ)は、試験分子siRNAのガイド鎖のヌクレオチド1〜8(5′>3′)に対する完全な相補性を持つヌクレオチド配列を有する、合成DNA断片を指す(最初のヌクレオチド+シード)。このDNA断片は、レポーター遺伝子の3′UTRでクローン化され、シードに基づく「オフターゲット」サイレンシングに対する標的として機能する。
【0248】
psiCHECK(商標)システムは、標的配列の発現レベルにおける変化をモニタリングすることにより、標的化およびオフターゲット効果を誘発する、GS(アンチセンス)およびPS(センス鎖)の評価を可能にする。各試験分子のGSおよびPS鎖の標的活性および可能性のあるオフターゲット活性の評価のために、4つのpsiCHECK(商標)−2に基づく(Promega)構築物を調製した。構築物のそれぞれにおいて、試験分子のPSまたはGSの、完全標的またはシード標的配列のいずれかの、1つのコピーまたは3つのコピーを、3′−UTR領域内のウミシイタケルシフェラーゼ翻訳停止コドンの下流に位置する複数のクローン部位にクローン化した。得られたベクターを以下のように命名した。

1−完全標的配列の1つのコピーまたは3つのコピーを含有する、GS−CM(ガイド鎖(uide trand)、完全マッチ(omplete−atch))ベクター(試験分子のGSの19塩基配列全体に完全に相補的なヌクレオチド配列)、

2−完全標的配列の1つのコピーまたは3つのコピーを含有する、PS−CM(パッセンジャー鎖(assenger trand)、完全マッチ(omplete−atch))ベクター(試験分子のPSの19塩基配列全体に完全に相補的なヌクレオチド配列)、

3−シード領域標的配列の1つのコピーまたは3つのコピーを含有する、GS−SM(ガイド鎖(uide trand)、シードマッチ(eed−atch))ベクター(試験分子のGSのヌクレオチド1〜8に相補的な配列)、

4−シード領域標的配列の1つのコピーまたは3つのコピーを含有する、PS−SM(パッセンジャー鎖(assenger trand)、シードマッチ(eed−atch))ベクター(試験分子のPSのヌクレオチド1〜8に相補的な配列)。
【0249】
標的配列は、19位(アンチセンスの1位)にヌクレオチド置換があるなしに関わらず、ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子のコード領域の下流でクローン化された。これらの配列のうちのいずれかに対する試験分子のRNAiまたはシードによって媒介される活性は、融合mRNA(GS)の切断およびその後の分解、または翻訳阻害(PS)のいずれかをもたらす。双方の場合において、タンパク質発現が減弱される。
【0250】
試験分子GSおよびPSのシードおよび完全標的部位のクローン化
該当する標的の単一コピーを、レポーターmRNA、すなわちpsiCHECK(商標)−2(Promega)ベクター中のウミシイタケルシフェラーゼの3′UTRにクローン化した。このベクターには複数のクローン化部位がある。使用された典型的なクローン化部位は、XhoIおよびNotIである。ベクターは、標準的な分子生物学技術を使用してクローン化するために調製された。CMおよびSMの各鎖を化学的に合成し、100℃で加熱し、室温に冷却することによってアニーリングした。連結は、標準的な分子生物学技術を使用して3時間行った。連結したプラスミドを、大腸菌DH5a細胞に形質転換した。

得られたコロニーを、関連するプライマーを使用するコロニーPCRによって、プラスミド構築物の存在についてスクリーニングした。プラスミド(ベクター)のそれぞれを1つの陽性コロニーから精製し、その配列を検証した。
【0251】
ベクターのヒトHeLa細胞への形質移入。
10cm皿あたり、約1.3〜2×10個のヒトHeLa細胞(ATCC、カタログ番号CCL−2)を接種した。次いで、細胞を37±1℃、5%のCOで24時間インキュベートした。成長培地を、接種後1日に、8mLの新しく調製された成長培地と交換した。それぞれの細胞を含有するプレートに、以下のように、Lipofectamine(商標)2000試薬(Invitrogen)を使用して、ベクターのうちの1つを形質移入した。

エッペンドルフチューブ内で、15μLのLipofectamine(商標)2000試薬を1000μLのDMEM培地に希釈し、室温(RT)で5分間インキュベートした。第2のエッペンドルフチューブ内で、ベクターを、1000μLのDMEM培地中で15μgの最終濃度に達するように希釈した。希釈したLipofectamine(商標)2000試薬を、希釈したDNAベクター試料と穏やかに混合し、20〜40分間室温でインキュベートした。インキュベーション後、DNA/Lipofectamine(商標)2000を、(2000μLの最終容量に達するように)細胞に添加した このプレートを穏やかに揺動させた。プレートを、37±1℃および5%のCOで5時間インキュベートした。5時間のインキュベーション後、細胞を、80μLの成長培地中、ウェルあたり5×10個の細胞の最終濃度で、96ウェルプレートに再度播種した。16時間後、細胞に、Lipofectamine(商標)2000を使用して、試験または対照分子を形質移入した。以下に記載するように、各siRNA濃度の二重の形質移入を行った。

Lipofectamine(商標)2000は、170個のウェルに十分であるように余分に調製した:85μLのLipofectamine(商標)2000を3400μL(3.4mL)のDMEM培地と混合し、5分間室温でインキュベートした。
【0252】
試験および対照分子の使用液の調製:種々の濃度の使用液を、10μΜの原液を希釈することにより調製した。この希釈系列は、100μLのDMEM形質移入培地中0.0095nM〜100nM(0.0095、0.019、0.039、0.07、0.15、0.31、0.625、1.25、2.5、5.0、20.0、100.0)の範囲の最終形質移入濃度を生成するように調製された。
【0253】
希釈したLipofectamine 2000の100μLのアリコートを、100μLの希釈した試験分子または対照分子の使用液(上記)のそれぞれと穏やかに混合し、混合物を20〜40分間室温でインキュベートした。インキュベーション後、20μLのsiRNA/Lipofectamine(商標)2000混合物を、細胞(80μLの上記の細胞培養培地と予備インキュベートした)にさらに添加した。このプレートを穏やかに揺動させた。細胞を、37±1℃および5%のCOで48時間インキュベートした。
【0254】
形質移入細胞中のウミシイタケルシフェラーゼ活性の判定
psiCHECK(商標)−2ベクターによって、ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合させた標的配列の発現における変化をモニタリングすることができる。試験/対照分子標的配列を、ウミシイタケルシフェラーゼの3′−非翻訳領域(3′−UTR)にクローン化する。したがって、ウミシイタケルシフェラーゼ活性の減少の測定は、活性をモニタリングする簡便な方法を提供する。さらに、psiCHECK(商標)−2ベクターは、異なるプロモーターの下で転写される、第2のレポーター遺伝子であるホタルルシフェラーゼを含有し、これは、ウミシイタケルシフェラーゼ発現の正規化を可能にする。
【0255】
試験または対照分子の形質移入の48時間後、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼ活性を、製造業者の以下の手順に従いDual−Luciferase(登録商標)Assayキット(Promega)を使用して、siRNAを形質移入した試料のそれぞれにおいて測定した。
培地を細胞から完全に除去し、次いで、細胞を、40μL/ウェルの1Xルシフェラーゼ溶解液の添加により溶解した。次いで、プレートを凍結(−80℃)させ、室温で解凍した。細胞溶解液を数回ピペットで取ることにより懸濁させて、各試料の12.5μLのアリコートを別個の96ウェルプレートに移した。50μLのルシフェラーゼ基質(LARII)を各抽出物に添加し、ホタルルシフェラーゼ活性を、Absorbance,Fluorescence and Luminescence Reader(Perkin Elmer、Victor(商標)1240)によって測定した。50μLのStop&Glo試薬を試料のそれぞれに添加し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性をすぐに測定した。各試料についてウミシイタケルシフェラーゼ活性値をホタルルシフェラーゼ活性値で割り(正規化)、最後にウミシイタケルシフェラーゼ活性を、試験または対照分子の不在下で、対応するpsiCHECK(商標)−2プラスミドを形質移入した細胞中で得られた正規化値に対する、試験試料中の正規化された活性値の割合として表した。
【0256】
IC50の計算
GS_CM部位に対する試験および対照分子活性IC50値は、種々の最終siRNA濃度で得られた活性結果を使用して、用量反応曲線を構築することによって判定した。用量反応曲線は、形質移入siRNA濃度の対数に対するウミシイタケルシフェラーゼ活性の相対的正規化値をプロットすることにより構築した。曲線は、最良のS字形曲線を測定されたデータに当てはめることによって計算した。S字形当てはめのための方法は、3点曲線当てはめと呼ばれる。
【数1】

式中、
Yは、残留カスパーゼ2 mRNA反応であり、
Xは、形質移入siRNA濃度の対数であり、
Botは、底部プラトーでのY値であり、
LogIC50は、Yが底部プラトーと頂部プラトーとの中間にある時のX値であり、HillSlopeは、曲線の勾配である。
【0257】
結果
二本鎖RNA分子鎖の各鎖の可能性のあるオフターゲット活性の評価のために、psiCHECK(Promega)プラスミド構築物を使用する、「ガイドシード配列およびパッセンジャー鎖に基づく活性アッセイ」を用いた。ウミシイタケ活性の測定は、二本鎖RNA活性をモニタリングする簡便な方法を提供する。
【0258】
標的ウミシイタケルシフェラーゼタンパク質活性の測定
4つの標的配列(GS−CM、ガイド鎖完全マッチ;GS−SM、ガイド鎖シードマッチ;PS−CM、パッセンジャー鎖完全マッチ;およびPS−SM、パッセンジャー鎖シードマッチ)に対する試験分子および対照分子の双方の活性を、種々の濃度の分子を形質移入した細胞中のウミシイタケルシフェラーゼレポータータンパク質の相対的活性を測定することにより、タンパク質レベルで評価した。それぞれのアッセイを3回繰り返した。GS−CM標的部位に対する試験分子活性のIC50値を、濃度反応プロットを構築することにより判定した。
【0259】
試験分子および対照分子の双方が、用量反応で標的GS−CM部位に対して活性であった。
【0260】
双方のsiRNAが、GS−SMおよびPS−SM部位に対して不活性であった。
【0261】
以下の図2〜10および表2〜10は、リボヌクレオチド、アデノシン(AもしくはrA)、シチジン(CもしくはrC)、グアノシン(GもしくはrG)、リボチミジン(rT、また5′メチルウリジン)、およびウリジン(UもしくはrU)、またはデオキシアデノシン(dA)、デオキシチジン(dC)、デオキグアノシン(dG)、チミジン(dT)、およびデオキシウリジン(dU)、あるいは2′Oメチル化アデノシン(mA)、2′Oメチル化シチジン(mC)、2′Oメチル化グアノシン(mG)、2′Oメチル化ウリジン(mU)のうちの1つを組み込むように、19位(アンチセンスの1位に相当)に置換を有する標的配列の完全マッチを標的とする二本鎖分子の残留標的によって測定される活性を示す。「1st pos AS」は、アンチセンス鎖の1位(5′末端ヌクレオチド)を指す。

表2:TLR2_16 siRNA(双方の鎖上で交互の2′−OMeで平滑末端化)
【表10】

【0262】
表2に示されるデータは、図2に提示される。アンチセンス鎖の1位のメチル化ヌクレオチドは、塩基対合に関わりなく標的ノックダウンの減少を示す。

表3:C3−C3オーバーハングまたはdTdTオーバーハングで修飾されないTLR2_37 siRNA
【表11】

【0263】
表3のデータは、図3に提示される。表3および図3は、アンチセンスの1位の2′OMeリボヌクレオチドが、標的のマッチ位置のヌクレオチドに関わらず、siRNA活性を減少させることを示す。

表4:C3−C3オーバーハングまたはdTdTオーバーハングで修飾されないTLR2_37 siRNA
【表12】

【0264】
表4のデータは、図4に提示される。表4および図4は、以下であることを示す。

1. 最大活性を有するsiRNAは、アンチセンスの1位のU(dUまたはdT)が標的中のCとミスマッチするか、標的中のAとミスマッチする時に観察される。

2. siRNAのアンチセンスの1位のU(またはdUもしくはdT)が、標的中のUとミスマッチする場合、siRNA活性が減少する。

3. アンチセンスの1位のUが標的中のGとゆらぎ対合する場合、siRNA活性が減少する。

表5 TLR2_37 siRNA(dTdTオーバーハングで修飾されない)−0.04nM
【表13】

【0265】
表5のデータは、図5に提示される。表5および図5は、以下のことを示す。

1. アンチセンスの1位のUは、マッチしたAミスマッチしたCで、ミスマッチしたUまたはゆらぎ対合したGとよりも良好な結果を出した。

2. アンチセンスの1位のGは、マッチ標的位置の全ての可能性のあるヌクレオチドで、同様の結果を示し、ミスマッチまたはゆらぎ対合は活性を改善しなかった。

表6:TLR2_46 siRNA(C3−C3またはdTdTオーバーハングで修飾されない)
【表14】

【0266】
表6のデータは、図6に提示される。表6および図6は、UのmUとの置換が活性を減少させることを示す。

表7 TLR2_46 siRNA(dTdTオーバーハングで修飾されない)
【表15】

【0267】
表7のデータは、図7に提示される。表7および図7は、マッチする標的位置のヌクレオチドの種類に関わらず、アンチセンスの1位のUが、より良好なKD(ノックダウン)を生成したことを示す。全ての場合、ガイド鎖の1位のsiRNAと標的との間の相補性、またはミスマッチ、あるいはゆらぎ対合にかかわらないことを意味する。
表8 RHOA_61 siRNA(非修飾/C3−C3またはdTdTオーバーハング)
【表16】

【0268】
表8のデータは、図8に提示される。

表9 RHOA_61 siRNA(非修飾/C3−C3またはdTdTオーバーハング)
【表17】

【0269】
表9のデータは、図9に提示される。表9および図9は、アンチセンスの1位にUを持つsiRNAが、標的のマッチ位置のヌクレオチドに関わらず(マッチ、ミスマッチ、ゆらぎ)、その1位にGを持つものよりも活性であることを示す。この結果は、siRNA中にGおよび標的中にUを有することが、siRNA中にUおよび標的中にGを有することと等しくないため、ゆらぎ塩基対合によって説明することはできない。
表10 RhoA_61 siRNA(dTdTオーバーハングで修飾されない)
【表18】

【0270】
表10のデータは、図10に提示される。
【0271】
実施例3:急性腎不全(ARF)のモデル系
ARFは、数日以内に生じる腎機能の迅速な悪化によって特徴付けられる臨床症候群である。理論に拘束されるものではないが、急性腎傷害は、大規模な心臓手術等の大手術を受けている患者における腎虚血再灌流傷害等の腎虚血再灌流傷害の結果であり得る。ARFの主な特徴は、糸球体濾過率(GFR)の急激な低下であり、それは窒素廃棄物(尿素、クレアチニン)の貯留をもたらす。最近の研究は、ARFのほとんどのヒト症例において、腎組織におけるアポトーシスが顕著であることを支持する。アポトーシス細胞死の主な部位は、遠位ネフロンである。虚血性傷害の初期相中、アクチン細胞骨格の完全性の欠如は、刷子縁の欠如、細胞接着斑の欠如、およびその後の根底の基層からの細胞の遊離化を伴う、上皮扁平化をもたらす。

虚血再灌流誘発性ARFの動物モデルにおける虚血再灌流傷害を治療する際の有効性について、本発明の化合物を試験する。
【0272】
実施例4:褥瘡または圧迫潰瘍のモデル系
糖尿病性潰瘍を含む褥瘡または圧迫潰瘍は、持続的な(通常、ベッドまたは車椅子からの)圧迫が身体の弱い部分、特に殿部、腰、および踵の皮膚への循環を遮断するとき発症する、損傷した皮膚および組織の領域である。十分な血流の不足は、罹患した組織の虚血性壊死および潰瘍をもたらす。褥瘡は、感覚の障害もしくは欠如を有する、または衰弱した、痩せ衰えた、麻痺した、もしくは長く寝たきりの患者において最も頻繁に生じる。仙骨、座節、大転子、外側果、および踵を覆う組織が特に影響を受けやすいが、患者の状況に応じて他の部位が含まれる場合もある。
【0273】
とりわけ、Reid et al,J Surg.Res.116:172−180,2004に記載されるマウスモデルにおける、またはMustoe et al,JCI,1991.87(2):694−703、Ahn and Mustoe,Ann PI Surg,1991.24(1): 17−23によって記載されるウサギモデルにおける、褥瘡、潰瘍、および類似した創傷を治療する際の有効性について、本発明の化合物を試験する。
【0274】
実施例5:慢性閉塞性肺疾患(COPD)のモデル系
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に、末端細気管支の遠位にある末梢気腔の永久的破壊である、肺気腫によって特徴付けられる。肺気腫はまた、細気管支および肺胞構造における、マクロファージおよび好中球等の炎症性細胞の蓄積によっても特徴付けられる。肺気腫および慢性気管支炎は、COPDの一部として、または独立して生じる可能性がある。
【0275】
とりわけ、次の通り開示されるモデル等の動物モデルにおける、COPD/肺気腫/慢性気管支炎を治療する際の有効性について、本発明の化合物を試験する:
Starcher and Williams,1989.Lab. Animals,23:234−240; Peng,et al,2004.、Am J Respir Crit Care Med,169: 1245−1251、Jeyaseelan et al,2004.Infect. Immunol,72: 7247−56。さらなるモデルは、本出願の譲渡人に譲渡されるPCT特許公開WO第2006/023544号に記載され、当該出願は、これにより参照によって本明細書に組み込まれる。
【0276】
実施例6:脊髄損傷のモデル系
脊髄損傷、または脊髄症は、感覚および/または可動性の欠如をもたらす脊髄の障害である。脊髄損傷の2つの一般的なタイプは、外傷および疾患に起因する。外傷的損傷は、とりわけ、自動車事故、落下、銃撃、飛込み事故、ならびにポリオ、二分脊椎、腫瘍、およびフリードライヒ失調症を含む、脊髄を侵し得る疾患に起因する可能性がある。
【0277】
siRNAを脊髄挫傷後の脊髄中に、および損傷していないラットに注射する。矢状凍結切片を生成し、取り込みがニューロン、アストログリア、オリゴデンドログリア、および/またはマクロファージ/ミクログリアにおいて生じたのかを決定するために、4つの異なる群の抗体を使用して免疫染色を行う。ニューロンに対するマーカーには、NeuN、またはGAP43が含まれ、アストログリアおよび潜在的な神経幹細胞に対するマーカーには、GFAP、ネスチン、またはビメンチンが含まれ、オリゴデンドログリアに対するマーカーには、NG2またはAPCが含まれ、マクロファージ/ミクログリアに対するマーカーには、EDIまたはIba−1が含まれる(Hasegawa et al.,2005.Exp Neurol 193:394−410)。
【0278】
ラットに、2つの異なる用量のsiRNA(1μg/μL、10μg/μL)を注射し、1日および3日間放置した後、屠殺する。結果は、脊髄損傷標的遺伝子に対するsiRNAが運動ニューロン回復を増加させることを示す。
【0279】
実施例7:緑内障のモデル系
例えば、Pease et al.,J.Glaucoma,2006,15(6):512−9(Manometric calibration and comparison of TonoLab and TonoPen tonometers in rats with experimental glaucoma and in normal mice)によって記載される、動物モデルにおける緑内障を治療または予防する際の有効性について、本発明の化合物を試験する。
【0280】
実施例7A:虚血性視神経症(ION)のモデル系

視神経挫滅損傷のプロトコルを使用して、成熟Wistarラットにおける虚血性視神経症に対する動物モデルを確立した。視神経挫滅の7日前、逆行性トレーサフルオロゴールド(2%、Fluorochrome,Englewood,CO)の上丘への適用によって、網膜神経節細胞(RGC)を選択的に標識する。蛍光トレーサの注射後1週間以内に全てのRGCの完全なおよび特異的な標識化をもたらす、RGC軸索に沿った逆行性輸送によって、トレーサを輸送する。逆行性トレーシングの7日後、動物を視神経挫滅損傷に供する。眼窩上アプローチを通じて眼窩視神経を曝露し、視神経内の全ての軸索を、鉗子を用いて10秒間挫滅することによって、篩板から2mm横切した。神経挫滅に際して、20μg/5μLの単回用量の試験修飾したsiRNA化合物のPBSを、ガラスマイクロピペットを使用して、神経頭の2mm前の硝子体中に微量注射する。
【0281】
視神経挫滅の7日後、平坦に封入した網膜上のフルオロゴールド標識化RGCを数えることによって、RGCの生存を決定する。視神経挫の1週間後、4%パラホルムアルデヒドを用いて実験動物を経心腔的に灌流する。両方の網膜を解剖し、さらに30分間固定し、神経節細胞層定量化のためにガラススライド上に平坦に封入する。各網膜中の16個の異なる領域における蛍光RGCの数を数え、視神経挫滅損傷を全く受けなかったラットから得た試料、または視神経挫滅損傷と共に、PBS、対照siRNA、もしくはGFP siRNAを注射したラットから得た試料と比較したRGCの生存の割合を決定する。染色RGCの食作用後に、フルオロゴールドを組み込んだ可能性があるミクログリア細胞を、それらの特徴的な形態によって識別し、定量分析から除外した。
【0282】
眼の近くの視神経を横切することによってRGCの全集団を軸索切断した、視神経軸索切断の別のモデルを利用する。(Cheng L,et al.J.Neurosci.2002;22:3977−3986)。
【0283】
実施例8:ラットにおける肺移植後の虚血/再灌流損傷のモデル系
例えば、Mizobuchi et al.,2004.J.Heart Lung Transplant,23:889−93、Huang,et al,1995.J.Heart Lung Transplant. 14: S49、Matsumura,et al,1995.Transplantation 59: 1509−1517、Wilkes,et al,1999.Transplantation 67:890−896、Naka,et al,1996.Circulation Research,79: 773−783によって記載される実験動物モデルのうちの1つ以上における肺移植後の虚血/再灌流損傷または低酸素性損傷を治療する際の有効性について、本発明の化合物を試験する。
【0284】
実施例9:急性呼吸窮迫症候群のモデル系
とりわけ、Chen et al (J Biomed Sci.2003;10(6 Pt 1):588−92によって記載される動物モデルにおける急性呼吸窮迫症候群を治療する際の有効性について、本発明の化合物を試験する。CYBA、HRK、BNIP3、MAPK8、MAPK14、RAC1、GSK3B、P2RX7、TRPM2、PARG、SPP1、およびDUOX1を含む遺伝子を標的とする修飾siRNA化合物を、この動物モデルにおいて試験した。
【0285】
実施例10:聴力損失病態のモデル系
(i)カルボプラチン誘発性またはシスプラチン誘発性蝸牛有毛細胞死のチンチラモデル
食塩水中の特異的siRNAを各動物の左耳に直接投与することによって、チンチラを前処置する。プラセボとして、食塩水を各動物の右耳に与える。本発明の特異的修飾siRNA化合物の投与の2日後、動物をカルボプラチン(75mg/kg腹腔内)またはシスプラチン(30分間にわたる13mg/kgの腹腔内注入)で処置する。チンチラの(カルボプラチン処置の2週間後の)屠殺後、左耳(siRNA処置)および右耳(食塩水処置)における、内有毛細胞(IHC)および外有毛細胞(OHC)の死細胞の%を算出する。内有毛細胞(IHC)および外有毛細胞(OHC)の死細胞の%は、左耳(siRNA処置)において、右耳(食塩水処置)におけるそれらよりも低いことが算出される。

(ii)音響誘発性蝸牛有毛細胞死のチンチラモデル
【0286】
音響外傷モデルにおける特異的siRNAの活性をチンチラにおいて研究する。動物を、4kHzを中心とするオクターブバンドの騒音に105dBで2.5時間曝露する。騒音曝露されたチンチラの左耳を、約10μLの食塩水中30μgのsiRNAで前処置(音響外傷の48時間前)し、右耳をビヒクル(食塩水)で前処置する。化合物活動電位(CAP)は、蝸牛殻から伝達される神経活性を測定するための簡便かつ確実な電気生理学的方法である。クリックまたはトーンバースト等の音刺激が突然に作動されたとき生成される局所電場電位を検出するために、蝸牛殻の底部近くに電極を置くことによって、CAPを記録する。各耳の機能状態を査定する。具体的には、siRNA処置された耳における閾値が、無処置(食塩水)の耳よりも低い(良い)かどうかを決定するために、音響外傷の2.5週間後に、円窓から記録した化合物活動電位の平均閾値を決定する。加えて、内有毛細胞および外有毛細胞減少のレベルを、siRNA処置された耳および対照耳において決定する。
【0287】
類似したモデルをマウスおよびラットにおいて使用する。BNIP3、CAPNS、HES1、HES5、NOX3、ID1−3、HRK、ASPP2(TP53BP)、CASP2、RAC1、HTRA2、CDKN1Bを含む遺伝子を標的とする修飾siRNA化合物を、聴力損失および聴力再生の、これらのおよび他の動物モデルにおいて試験する。
【0288】
実施例11.骨関節炎(OA)の動物モデル
コラーゲン誘発関節炎(CIA):マウスにおけるCIAは、Trentham et al.(1977.J.Exp.Med.146: 857−868)に記載される。アジュバント誘発関節炎(AA):AAは、Kong et al,(1999.Nature,402:304−308)に記載される。半月板切除モデルは、Han et al,(1999.Nagoya J Med Sci 62(3−4): 115−26)に記載される。
【0289】
当該技術分野で既知のインビトロモデルに加えて、上のモデルのうちの1つ以上を使用して、軟骨細胞増殖、最終分化、および関節炎の発症等のOAに関連する異なるパラメータに及ぼす、SSP1に対するsiRNA等の異なるsiRNA阻害剤の効果を評価する。アポトーシス促進性遺伝子、特にSSP1を対象とする修飾siRNA化合物を、修飾siRNA化合物がOAを治療および/または予防することを示し、したがってこの病態を治療するために使用され得るこれらの動物モデルにおいて試験する。
【0290】
実施例12:移植関連急性腎傷害についてのラットモデル系
温虚血−試験ラットにおいて、左腎摘除を行い、続いて45分間の温腎移植片保存期間をもたらす自家移植を行う。自家移植後、同じ動物に対して右腎摘除を行う。腎移植片(ドナー処置を模倣する)の採集前(「前」)、もしくは腎自家移植(レシピエント処置を模倣する)後のいずれかに、または採集前および移植後の両方(ドナーおよびレシピエント処置の組み合わせ)(「前−後」)で、標的に対する化学的修飾siRNAを、大腿静脈を介して静脈投与する。
【0291】
冷虚血−ドナー動物に対して左腎摘除を行い、続いて採集した腎臓の冷保存(氷上)を5時間の期間行う。期間の終了時に、レシピエントラットに両側腎摘除を受けさせ、続いて冷保存された腎移植片の移植を行うことになる。温虚血の総時間(外科手術を含む)は、約30分である。化学修飾siRNAを、腎臓採集前(「前」)のドナー動物に、または移植の15分(「15分後」)もしくは4時間(「4時間後」)後のレシピエント動物に、大腿静脈を介して静脈投与する。
【0292】
移植後の腎機能を改善させる際の本発明の修飾siRNA化合物の有効性を査定するために、移植後1、2、および7日目に、温および冷虚血モデルの両方において血清クレアチニンレベルを測定する。
【0293】
当業者であれば、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。かかる等価物は、次の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に記載される構造(A)を有する二本鎖核酸分子であって、
(A) 5′ N−(N)x−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−N−(N′)y−z′′ 5′(センス鎖)
式中、N、N、およびN′のそれぞれは、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非従来的部分であり、
(N)xおよび(N′)yのそれぞれは、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって隣接するNまたはN′と連結するオリゴヌクレオチドであり、
xおよびyのそれぞれは、独立して、17〜39の整数であり、
前記(N′)yの配列は、(N)xの配列に対して相補性があり、(N)xは、標的RNAの連続する配列に対して相補性があり、
は、(N)xに共有結合して、前記標的RNAとミスマッチするか、または前記標的RNAに相補的なDNAヌクレオチドであり、
は、天然もしくは修飾された、ウリジン、デオキシリボウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、またはデオキシアデノシンから成る群から選択される部分であり、式中、z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、N−(N′)yの5′末端に共有結合するキャッピング部分であり、
ZおよびZ′のそれぞれは、独立して、存在するか、あるいは存在しないが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3′末端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチド、連続する非ヌクレオチド部分、またはそれらの組み合わせである、二本鎖核酸分子。
【請求項2】
前記(N′)yの配列は、前記(N)xの配列に対して完全に相補的である、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項3】
前記N−(N′)yの配列は、前記N−(N)xの配列に対して相補的である、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項4】
(N)xは、標的RNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して完全に相補的であるアンチセンスを含む、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項5】
(N)xは、標的RNAの約17個〜約39個の連続するヌクレオチドに対して実質的に相補的であるアンチセンスを含む、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項6】
およびNは、ワトソンクリック塩基対を形成する、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項7】
およびNは、非ワトソンクリック塩基対を形成する、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項8】
x=y=18、x=y=19、またはx=y=20である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項9】
x=y=18である、請求項8に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項10】
は、(N)xに共有結合し、前記標的RNAとミスマッチする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項11】
は、(N)xに共有結合し、前記標的RNAに対して相補的なDNA部分である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項12】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択され、前記標的RNAの対合ヌクレオチドのヌクレオチドは、アデノシンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項13】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、またはデオキシウリジンから選択される、請求項12に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項14】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択され、前記標的RNAの対合ヌクレオチドのヌクレオチドは、シチジンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項15】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される、請求項14に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項16】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択され、前記標的RNAの対合ヌクレオチドのヌクレオチドは、グアノシンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項17】
は、アデノシン、デオキシアデノシン、ウリジン、またはデオキシウリジンから選択される、請求項16に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項18】
は、デオキシアデノシン、デオキシウリジン、リボチミジン、またはデオキシチミジンから選択され、前記標的RNAの対合ヌクレオチドのヌクレオチドは、ウリジンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項19】
は、デオキシアデノシンまたはデオキシウリジンから選択される、請求項18に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項20】
およびNは、ウリジンまたはデオキシウリジンと、アデノシンまたはデオキシアデノシンとの間で塩基対を形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖酸性分子。
【請求項21】
およびNは、デオキシウリジンとアデノシンとの間で塩基対を形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二本鎖酸性分子。
【請求項22】
Z′′が、存在する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の二本鎖酸性分子。
【請求項23】
ZおよびZ′が、存在しない、請求項1〜22のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項24】
ZまたはZ′のうちの1つが存在する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項25】
ZまたはZ′は、非ヌクレオチド部分を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項26】
NまたはN′のうちの少なくとも1つは、2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項27】
Nは、単一の交互の非修飾リボヌクレオチドと2′OMe糖修飾リボヌクレオチドとを含む、請求項26に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項28】
は2′OMe糖修飾リボヌクレオチドを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項29】
前記二本鎖核酸分子は、siRNA、siNA、またはmiRNAである、請求項1〜28のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項30】
x=y=18であり、Z′は存在せず、Zは存在し、かつリン酸ジエステル結合によって互いに共有結合している2つのアルキル部分を含み、Nはアデノシンを含み、Nはウリジンを含む、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項31】
x=y=18であり、Z′は存在せず、Zは存在し、かつリン酸ジエステル結合によって互いに共有結合している2つのアルキル部分を含み、Nはウリジンまたはデオキシウリジンを含み、Nはアデノシンを含む、請求項1に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項32】
前記標的RNAは哺乳動物遺伝子のmRNAである、請求項1〜31のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項33】
前記標的RNAはヒト遺伝子のmRNAである、請求項32に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項34】
療法で用いる、請求項1〜33のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の少なくとも1つの二本鎖核酸分子、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
疾患または状態の発生または重症度の治療または防止を必要とする対象において、疾患または状態の発生または重症度を治療または防止するための方法であって、前記対象に、前記疾患または前記状態の発病を防止、治療、または遅延させるのに有効な量で、請求項1〜33のいずれか1項に記載の二本鎖核酸分子または請求項35に記載の薬学的組成物を投与することを含み、それに随伴する前記疾患または前記状態および/または症状は、聴力損失、急性腎不全(ARF)、腎臓移植後の臓器機能障害(DGF)、緑内障、眼虚血状態(非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)、前部虚血性視神経症、加齢性黄斑変性症(AMD)、虚血性視神経障害(ION)およびドライアイ症候群を含む)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および他の急性肺および呼吸器傷害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、一次移植不全、虚血再灌流傷害、再灌流傷害、再灌流浮腫、同種移植片機能不全、肺の再移植応答および/または臓器移植後、特に、肺移植、臓器移植(肺、肝臓、心臓、膵臓、および腎臓移植を含む)の移植後の一次移植機能不全(PGD)、腎毒性および神経毒性、脊髄損傷、脳損傷、神経変性疾患もしくは状態、褥瘡、口腔粘膜炎、繊維性疾患、ならびに癌から成る群から選択される、方法。
【請求項37】
センス鎖およびアンチセンス鎖から成る二本鎖RNA分子を生成する方法であって、
a)標的RNAの連続する17〜25個のヌクレオチド配列を選択し、前記標的mRNAの前記連続する17〜25個のヌクレオチド配列に対して相補性を含むアンチセンス鎖を合成するステップであって、前記アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドは、ウリジン、修飾ウリジン、リボチミジン、デオキシリボチミジン、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、または修飾デオキシアデノシンで置換されるが、但し、rG:rU鎖オリゴヌクレオチドおよび前記標的mRNAの3′末端ヌクレオチドという条件である、ステップと、
b)前記アンチセンス鎖に対して相補性を有する17〜25個のヌクレオチドのセンス鎖を合成するステップであって、前記センス鎖の3′末端ヌクレオチドは、前記アンチセンス鎖の5′末端ヌクレオチドとのワトソンクリック塩基対を形成する、ステップと、
c)前記センスおよびアンチセンス鎖をアニーリングし、それによって、二本鎖RNA分子を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項38】
非修飾siRNA二重鎖と比較して、RNAi活性の増強を示す、センス鎖およびアンチセンス鎖から成る修飾siRNA二重鎖を生成する方法であって、
a)標的mRNAの連続する17〜25個のヌクレオチド配列を選択し、前記標的mRNAの前記連続する17〜25個のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を合成するステップであって、3′末端ヌクレオチドは、アデノシン、修飾アデノシン、デオキシアデノシン、または修飾デオキシアデノシンで置換される、ステップと、
b)前記センス鎖に対して相補性を有する17〜25個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を合成するステップであって、5′末端ヌクレオチドは、リボウリジン、修飾リボウリジン、デオキシリボウリジン、または修飾デオキシリボウリジン、およびパッセンジャー鎖の3′末端ヌクレオチドとの塩基対を含む、ステップと、
c)前記センス鎖を前記アンチセンス鎖にアニーリングし、
それによって、増強したRNAi活性を有するsiRNA二重鎖を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項39】
前記3′末端ヌクレオチドは、アデノシン以外である、請求項37または38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511990(P2013−511990A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541211(P2012−541211)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/058123
【国際公開番号】WO2011/066475
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509294070)クォーク ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (8)
【氏名又は名称原語表記】QUARK PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】6501 Dumbarton Circle,Fremont,California U.S.A.
【Fターム(参考)】