説明

本質的にpHに非依存的に血清タンパク質に結合するアミノ酸配列、それを含む化合物、およびその使用

本発明は、血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合できるアミノ酸配列;そのようなアミノ酸配列を含む、またはそれから本質的になる化合物、タンパク質、およびポリペプチド;そのようなアミノ酸配列、タンパク質、またはポリペプチドをコードする核酸;そのようなアミノ酸配列、タンパク質、およびポリペプチドを含む組成物および具体的には医薬組成物;ならびにそのようなアミノ酸配列、タンパク質、およびポリペプチドの使用に関するものであり、pH範囲5〜8において本質的に非依存的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合できるアミノ酸配列;そのようなアミノ酸配列を含む、またはそれから本質的になる化合物、タンパク質、およびポリペプチド;そのようなアミノ酸配列、タンパク質、またはポリペプチドをコードする核酸;そのようなアミノ酸配列、タンパク質、およびポリペプチドを含む組成物および具体的には医薬組成物;ならびに、そのようなアミノ酸配列、タンパク質、およびポリペプチドの使用に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、生理的pH値で、本質的にpHに非依存的に(本明細書に定義する)血清タンパク質に結合するアミノ酸配列(およびそれを含む化合物)に関する。
【0003】
本発明により、該アミノ酸配列(ならびに、本明細書にさらに記述する、少なくとも一種の該アミノ酸配列を含む化合物)が、本質的にpHに非依存的ではなく同じ血清タンパク質に結合するアミノ酸配列と比較して好ましい(つまり、より長い)循環での半減期を有することが見出された。
【0004】
本発明の他の態様、実施態様、利点、および適用は、本明細書のさらなる記載から明らかとなるであろう。
【背景技術】
【0005】
ヒト血清アルブミンなどのヒト血清タンパク質に結合できるアミノ酸配列、ならびに治療関連のタンパク質およびポリペプチドの半減期を増大するためのポリペプチドコンストラクトにおけるその使用は、当技術分野において公知である。
【0006】
例えば、国際公開第91/01743号(特許文献1)、国際公開第01/45746号(特許文献2)、および国際公開第02/076489号(特許文献3)には、その半減期を増大するために、治療用のタンパク質ならびに他の治療用の化合物および物質に融合できる血清アルブミンに結合するペプチド成分について記載されている。しかし、これらのペプチド成分は細菌または合成に由来し、治療での使用にはあまり好まれない。
【0007】
Ablynx N. V.による国際公開第04/041865号(特許文献4)には、前記タンパク質の半減期を増大させるために、他のタンパク質(所望の標的に対して向けられた一種以上の他のナノボディ(登録商標)など)に連結できる血清アルブミンに対して向けられた(および、具体的にはヒト血清アルブミンに対して向けられた)ナノボディ(登録商標)が記載されている。
【0008】
新生児Fc受容体(FcRn)は、「Brambell受容体」とも呼ばれ、循環中のアルブミンの寿命の延長に関与する(Chaudhury et al., The Journal of Experimental Medicine, vol. 3, no.197, 315-322 (2003) (非特許文献1)参照)。FcRn受容体は、3つの細胞外ドメインで43kDのα鎖に非共有結合したβ2ミクログロブリン、膜貫通領域および約50個のアミノ酸の細胞質テールからなる可溶性軽鎖からなる膜内在性糖タンパクである。細胞質テールは、受容体の内在化に関与するジヌクレオチドモチーフベースのエンドサイトーシスシグナルを含む。α鎖は、タンパク質の非古典的MHCIファミリーのメンバーである。α鎖に付随するβ2mは、FcRnの正確なフォールディング、ならびにエンドソームおよび細胞表面への経路選択のための小胞体から抜け出るために決定的に重要な意味を持つ。
【0009】
FcRnの全体構造は、クラスI分子の構造に似ている。α1およびα2の領域は、8つの逆平行βストランドで構成されるプラットフォームに似ており、2つの逆平行αヘリックスにより覆われた単一のβシートを形成し、MHCI分子におけるペプチド溝に非常に酷似している。Pro162の存在により導入されたヘリックスにおける切断に起因するα1ヘリックスの全体的な再配置およびα2ヘリックスのC末端部分の屈曲のため、FcRnヘリックスが大幅に接近し、ペプチド結合を塞ぐ。FcRnのArg164の側鎖もペプチドN末端のMHCポケットとの潜在的な相互作用を塞ぐ。さらに、α1およびα2のヘリックスの間の塩橋および疎水的相互作用も溝閉鎖に寄与しうる。
【0010】
したがって、FcRnは抗原提示に関与せず、ペプチド溝は空である。
【0011】
FcRnはIgGと結合し、母体循環から胎児循環まで胎盤シンシチウム栄養芽層を越えて輸送し、成体における分解からIgGを保護する。ホメオスタシスに加えて、FcRnは組織中のIgGのトランスサイトーシスを調節する。FcRnは上皮細胞、内皮細胞、および肝細胞に局在する。
【0012】
Chaudhuryら(上記)によると、アルブミンはFcRnに結合してIgGと三分子複合体を形成する。アルブミンおよびIgGのいずれもFcRn上の別々の部位に非協同的に結合する。セファロースHSAおよびセファロースhIgGへのヒトFcRnの結合はpH依存的であり、pH5.0で最大であり、pH7.0からpH8まででゼロに近づく。IgGを結合するのと同じpH依存的な様式でFcRnがアルブミンを結合するとの知見は、アルブミンがFcRnと相互作用して、これにより分解から保護される機構がIgGのそれと同じであり、pHに敏感なFcRnとの相互作用により同様に媒介されることを示唆する。SPRを使用して個々のHSAドメインが固定化された可溶性hFcRnを結合する能力を測定し、Chaudhuryは、FcRnとアルブミンがIgG結合部位とは別の部位上において、pH依存的にアルブミンのD−IIIドメインを介して相互作用することを示した(Chaudhury, PhD dissertation, http://www.andersonlab.corn/biosketchCC.htm(非特許文献2)を参照;Chaudhury et al., Biochemistry,ASAP Article 10.1021/bi052628y S0006-2960(05)02628-0 (ウェブ公開日:2006年3月22日)(非特許文献3);Chaudhury,Biochemistry, 2006, vol. 45, 4983-4990(非特許文献4)も参照)。
【0013】
当技術分野において公知のアルブミン結合剤の主な欠点は、霊長類におけるインビボで半減期が限定的であることにある。マウスにおいて、血清アルブミンの自然半減期は約2日間であり、異なる血清アルブミン結合剤が、同等の半減期、つまり約2日間を呈することが示された。一方、公知の血清アルブミン結合剤が霊長類(つまり、アカゲザルおよびカニクイザルなどのマカク属)においてテストされた限りでは、それらは約3日間の血清半減期を呈した。例えば、2006年6月1日のIBC会議「Antibodiesand Beyond」中に2006年6月1日に提示された「Tailoring Human Domain Antibodies for Best Practices」におけるDomantis社のLucy Holt博士によるいわゆる「AlbudAb(商標)」(AlbudAb(商標)は英国ケンブリッジのDomantis社の商標である)のデータを参照する。換言すれば、霊長類における半減期データが当技術分野で公知のものに関する血清アルブミン結合剤は、霊長類のインビボにおいて短い血清半減期を呈するという点で不十分である。これらの半減期は、これらの動物における血清アルブミンの自然半減期、例えばその25%よりも大幅に短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第91/01743号
【特許文献2】国際公開第01/45746号
【特許文献3】国際公開第02/076489号
【特許文献4】国際公開第04/041865号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Chaudhury et al., The Journal of Experimental Medicine, vol. 3, no.197, 315-322 (2003)
【非特許文献2】インターネットURL;http://www.andersonlab.com/biosketchCC.htm
【非特許文献3】Chaudhury etal., Biochemistry, ASAP Article 10.1021/bi052628y S0006-2960(05)02628-0 (ウェブ公開日:2006年3月22日)
【非特許文献4】Chaudhury,Biochemistry, 2006, vol. 45, 4983-4990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
多くの治療薬、具体的には生物学的製剤(つまり、ペプチドまたはポリペプチド薬剤、ポリヌクレオチドなど)には、インビボでの血清半減期が不十分であるという欠点がある。このために、治療効果に必要な血清レベルを維持するために、高頻度および/または高用量での治療薬の投与、または徐放性製剤の使用が必要となる。高頻度の薬の全身投与は、かなりの負の副作用を伴う。例えば、高頻度の、例えば連日の全身注射は、被験体へのかなりの不快感を伴い、投与に伴う感染の高リスクをもたらし、具体的には治療薬を静脈内投与する場合には入院または頻繁な通院を必要とする。さらに、長期処置において、連日の静脈内注射も、血管の反復穿刺が原因となる組織瘢痕および血管病理といったかなりの副作用を招きうる。同様の問題は、例えば、糖尿病患者に対するインシュリンの投与、または多発性硬化症を患う患者におけるインターフェロン薬など、治療薬のすべての頻繁な全身投与について公知である。これらすべての因子は、患者のコンプライアンスの低下および健康システムの費用増加を招く。
【0017】
したがって、霊長類、具体的にはヒトにおいて治療薬の血清半減期を延長する手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、生理的pH値で、本質的にpH(本明細書に定義する)に非依存的に血清タンパク質に結合するアミノ酸配列(およびそれを含む化合物)を提供することにより、この要求を解決する。
【0019】
本発明のアミノ酸配列が結合する(または生理的条件下で結合できる)血清タンパク質は、前記血清タンパク質が自然に生じるヒトまたは動物の身体において再循環または再循環機構にさらされる特に、任意の血清タンパク質であり得る。そのような血清タンパク質の例は、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、典型的なELISAの結果の説明図である。選択されたクローンからのhisタグ付きナノボディタンパク質フラグメントを含むペリプラズム調製物のヒト血清アルブミン特異的ELISA分析。可溶性ナノボディタンパク質フラグメントのペリプラズム調製物をELISAプレートのウェルに加えて、それをHSA抗原でコーティングし、さらにPBS+1%カゼインでブロッキングする。検出は、モノクローナルビオチン化抗his抗体、続いてホースラディッシュ抱合ストレプトアビジンにより実施する。ELISAは、実施例2に記載する通り、TMB基質により発現させる。OD値(Y軸)は、ELISAリーダーにより450nmで測定する。各バーは、個々のペリプラズム調製物を表す。
【図2】代表的なクローンのセンサーグラムを示したものである。異なるpHでのアルブミン結合ナノボディとヒト血清アルブミンの間の相互作用の表面プラズモン共鳴測定値。可溶性ナノボディフラグメントのペリプラズム調製物を、pH5、pH6またはpH7で固定化したヒト血清アルブミン上に注入する。図2Aはナノボディ4A1の相互作用を示す。
【図2B】代表的なクローンのセンサーグラムを示したものである。2Bはナノボディ4C3の相互作用を示す。
【図3】本発明のアミノ酸配列を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
より詳細には、本発明のアミノ酸配列が結合する(または生理的条件下で結合できる)血清タンパク質は、血清アルブミン、IgGなどの免疫グロブリン、およびトランスフェリンからなる群から選んでよい。好ましいが、しかし、非限定的な実施態様によると、本発明のアミノ酸配列は血清アルブミンに結合する。
【0022】
血清タンパク質は、好ましくはヒト血清タンパク質である。しかし、当然のことながら、本発明のいくつかの特定であるが、非限定的な態様によると、本発明のアミノ酸配列は、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたは霊長類などの少なくとも別の哺乳類種からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質と交差反応を起こし得る。具体的には、これらの態様によると、本発明のアミノ酸配列は、本明細書にさらに記載するように、少なくとも別の霊長類種からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質と交差反応を起こし得る。
【0023】
「本質的にpHに非依存的」である結合によるとは、本明細書において、動物またはヒトの身体の細胞において生じるpH値(本明細書にさらに記載する)での血清タンパク質(血清アルブミンなど)に関するアミノ酸配列の会合定数(K)が、前記細胞の外で生じるpH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上、またはさらに150%超、またはさらに200%超)であることを一般的に意味する。
【0024】
あるいは、「本質的にpHに非依存的」である結合によるとは、本明細書において、動物またはヒトの身体の細胞内で生じるpH値(本明細書にさらに記載する。例えば約pH5.5、例えば5.3〜5.7)での血清タンパク質(血清アルブミンなど)に関するアミノ酸配列のkoff速度(Biacoreにより測定。例えば実施例2を参照)が、前記細胞の外で生じるpH値(例えばpH7.2から7.4)での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列のkoff速度の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上、またはさらに150%超、またはさらに200%超)であることを一般的に意味する。
【0025】
「動物またはヒトの身体の細胞において生じるpH値」によるとは、細胞内部、具体的には血清タンパク質の再循環に関与する細胞中で生じ得るpH値を意味する。具体的には、「動物またはヒトの身体の細胞において生じるpH値」によるとは、エンドソーム、リソソームまたはピノソームなど、(例えば、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス、トランスサイトーシス、エクソサイトーシス、およびファゴサイトーシス、または細胞中への取込みまたは内在化の同様の機構の結果としての)血清タンパク質の再循環に関与する細胞(内)コンパートメントまたは小胞の中で生じ得るpH値を意味する。
【0026】
例えば、特に、本発明のアミノ酸配列がFcRnに結合する血清タンパク質に対して向けられる場合、細胞はFcRn受容体を含む、またはFcRn受容体を発現する細胞であり得る。本明細書のさらなる記載から明らかとなるように、そのような細胞は血清アルブミンなどのFcRnおよびIgGなどの免疫グロブリンに結合できる特定の血清タンパク質の再循環に関与する。また、例えば、限定はされないが、特に、本発明のアミノ酸配列がトランスフェリンに対して向けられる場合、細胞はトランスフェリン受容体を含む、またはトランスフェリン受容体を発現する細胞であり得る。
【0027】
「前記細胞の外で生じるpH値」によるとは、前記細胞が存在する、前記細胞の細胞表面またはすぐ周辺もしくは近辺などの前記細胞の外部であるが、ヒトまたは動物の身体の内部で生じ得るpH値を一般的に意味する。具体的には、「前記細胞の外で生じるpH値」によるとは、前記細胞が血(流)またはリンパ系などにおいて存在するヒトまたは動物の身体を循環する際に生じ得るpH値を意味する。
【0028】
具体的には、アミノ酸配列は、pH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値でアミノ酸配列が血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する会合定数(K)が、pH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である。
【0029】
「生理的pH値」によるとは、ヒトまたは動物の身体(つまり、健常な動物またはヒトあるいは病気または疾患を患う動物またはヒト)において自然に生じる任意のpH値を一般的に意味する。そのような生理的pH値は、当業者に明らかであろう。異なる生理的pH値は、異なる部位、組織、体液(血液またはリンパ液など)、細胞、細胞内コンパートメントで生じうることも当業者に明らかであろう。
【0030】
具体的には、アミノ酸配列は、pH7.2〜7.4の範囲(7.2、7.3または7.4など)のpHでの同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5から5.5の範囲(6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7または5.6など)のpH値でそれらが血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0031】
別の実施態様では、本発明のアミノ酸配列は、pH6.8〜7.4の範囲(6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4など)のpHでの同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH5.5から4.5の範囲(5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7または4.6など)のpH値でそれらが血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0032】
別の実施態様では、本発明のアミノ酸配列は、pH6.8〜7.4の範囲(6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4など)のpHでの同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列のkoff速度の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超、150%超、170%超、200%超または250%以上)であるoff速度(koff速度)で、pH5.5から4.5の範囲(5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7または4.6など)のpH値でそれらが血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0033】
別の実施態様では、本発明のアミノ酸配列は、pH6.8〜7.4の範囲(6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4など)のpHでの同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列のkoff速度のおよそ50%(つまり、50%から150%の間)であるkoff速度で、pH5.5から4.5の範囲(5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7または4.6など)のpH値で前記アミノ酸配列が血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。より好ましくは、pH6.8〜7.4の範囲(6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4など)のpHでのアミノ酸配列(例えば、本発明の多価ナノボディ、例えば、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンに一価で、および、標的タンパク質に一価または多価で結合する本発明のナノボディ)のkoff速度が、pH5.5〜4.5の範囲(5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7または4.6など)のpHでの前記アミノ酸配列のkoff速度のおよそ40%である。
【0034】
より好ましくは、pH6.8〜7.4の範囲(6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4など)のpHでの前記アミノ酸配列(例えば、本発明の多価ナノボディ、例えば、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンに一価で、および、標的タンパク質に一価または多価で結合する本発明のナノボディ)のkoff速度が、pH5.5〜4.5の範囲(5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7または4.6など)のpHでの前記アミノ酸配列のkoff速度のおよそ30%、より好ましくは20%、より好ましくは10%である。
【0035】
会合定数は、当業者に明らかなように、実際の、または見掛け上の会合定数であり得る。特定のpH値で会合定数を決定する方法は、当業者に明らかであり、例えば、本明細書に言及する技術を含む。任意に、やはり当業者に明らかなように、(実際の、または見掛け上の)会合定数は、関係[K=1/K]によって、(実際の、または、見掛け上の)会合定数に基づいて算出できる。この目的のために、特定のpH値で会合定数を決定するための方法は、当業者に明らかであり、例えば、本明細書に言及する技術を含む。
【0036】
親和性は、分子間相互作用の強度または安定性を表示する。親和性は通例Kd、または解離定数で与えられ、これはmol/lの単位を有し、簡単にMで示される。親和性は会合定数Kaでも表わされ、これは1/Kdと等しく、(mol/liter)-1、簡単にM-1の単位を有する。本明細書を通じて、分子間相互作用の安定性をそのKd値により表わす。しかし、当然のことながら、関係Ka=1/Kdに照らして、そのKd値により分子間相互作用の強度を特定することは、自動的にKa値も特定する。Kdは、それが周知の関係DG=RT・ln(Kd)(同等にDG=−RT・ln(K))による結合の自由エネルギー(DG)に関連するため、熱力学的な意味でも分子間相互作用の強度を特性付けし、ここでRは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を表示する。有意義な生物学的複合体のKdは、典型的に、10−10 M(0.1nM)から10−5 M(10000nM)の範囲内である。相互作用が強いほど、そのKdは低くなる。
【0037】
Kdは、koffで表示される複合体の解離速度定数とkonで表示されるその結合の比としても表わせる。換言すると、Kd=koff/konで表せる。当然、Ka=kon/koffで表せる。off速度koffは単位s−1を有する(sは秒のSI単位表記である)。on速度konは単位M-1s-1を有する。on速度は10M-1S-1から約10M-1s-1の間で変動し、二分子間相互作用についての拡散律速の解離速度定数に近づきうる。off速度は、関係t1/2=ln(2)/koffによる任意の分子間相互作用の半減期に関連する。off速度は、10−6s-1(複数日のt1/2で不可逆的複合体に近い)から1s-1(t1/2=0.69s)の間で変動しうる。
【0038】
2つの分子の間での分子間相互作用の親和性は、周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術(例えば、Ober et al., Intern. Immunology, 13, 1551-1559, 2001では、Biacore 3000 SPRバイオセンサーを使用し、様々なpH条件下でFcRnへのアルブミンの親和性が研究された)などの異なる技術を介して測定でき、ここでは一種の分子をバイオセンサーチップ上に固定し、他の分子を流動条件下で固定化した分子を越えて通し、kon、koffの測定値、ひいてはKd(またはKa)値をもたらす。
【0039】
測定プロセスが暗に含まれた分子、例えば一種の分子のバイオセンサー上のコーティングに関連するアーティファクトにより、内因性の結合親和性に何らかの形で影響を与える場合、注目すべきは、測定したKdが見掛け上のKdに対応することである。また、見掛け上のKdは、一種の分子が他の分子に対する一種より多い認識部位を含む場合に測定されうる。そのような状況において、測定される親和性は2つの分子による相互作用の結合力により影響を受けうる。例えば、固定化したヒトFcRnでのSPR実験は、固定化したIgGとのFcRn相互作用の親和性と比較し、ヒトIgGに対する有意に高い親和性(結合力)を示し、FcRn−IgG相互作用の2:1の化学量論に匹敵する(Sánchez et al., Biochemistry, 38, 9471-9476,1999)。
【0040】
親和性を評価するために使用できる別のアプローチは、Priguetらの2工程ELISA(酵素結合免疫測定法)法である(J. Immunol.Methods, 77, 305-19, 1985)。この方法によって、液相結合平衡測定が確立され、プラスチックなどの担体上の分子の一種の吸着に関連する起こりうるアーティファクトが回避される。
【0041】
例えば、Nguyenら(Protein Eng Des SeL, 19, 291-297, 2006)は、最近、Friguetアッセイを使用して、Fabコンストラクトのアルブミンに対する親和性を測定した。しかし、Kdの正確な測定は多大の労力を要し、結果として、見掛け上のKd値が測定され、2つの分子の結合強度が評価されることが多い。注目すべきは、すべての測定値が一貫した方法で(例えば、アッセイ条件を不変に保って)出される限り、見掛け上のKd測定値を真のKdの近似値として使用できることであり、それゆえに本明細書ではKdと見掛け上のKdを等しく重要に、または関連付けて取り扱われる。
【0042】
最後に、注目すべきは、多くの場合、経験豊かな科学者は、ある基準分子に対する結合親和性を測定することは便利であると判断する可能性があることである。例えば、分子AとBの間の結合強度を評価するために、例えば、Bに結合することが知られており、フルオロフォアもしくは発色団の基または他の化学成分、例えば、ELISAまたはFACS(蛍光標示式細胞分取器)または他のフォーマット(蛍光検出のためのフルオロフォア、光吸収検出のための発色団、ストレプトアビジン媒介性ELISA検出のためのビオチン)での容易な検出のためのビオチンなどで適切に標識される基準分子Cを使用できる。典型的に、基準分子Cは一定濃度に保たれ、Bの濃度はBの任意の濃度または量について変動する。結果として、Aの非存在下においてCについて測定されたシグナルが半分になるAの濃度に対応してIC50値が得られる。Kdref、基準分子のKd、ならびに基準分子の総濃度crefが既知であるという条件で、相互作用A−Bについての見掛け上のKdは以下の式から得ることができる:Kd=IC50/(l+cref/Kdref)。cref<<Kdrefの場合にはKd≒IC50であることに注目すること。一貫した方法で(例えば、crefを一定に保って)IC50測定を実施するという条件で、分子間相互作用の強度または安定性はIC50により評価でき、この測定値は本文を通じてKdまたは見掛け上のKdに等しいと判断される。
【0043】
本発明によると、本質的にpHに非依存的な方法で血清タンパク質に結合するアミノ酸配列(ならびに、本明細書にさらに記載する、少なくとも一つのそのようなアミノ酸配列を含む化合物)は、循環中において、本質的にpHに非依存的ではない血清タンパク質に結合するアミノ酸配列よりも好ましい(つまり、より長い)半減期を有することが見出されている。任意の機構または説明に限定されることなく、このpH非依存性によって、循環中でのpHの変化中に、アミノ酸配列が血清タンパク質に対するその結合活性を保持するという事実に起因して、再循環される最大量のアミノ酸配列が本質的に提供されることが推測される。アミノ酸配列の血清タンパク質との相互作用がpHに敏感である場合、これによって相互作用の低下または消失が招かれ、そのためにアミノ酸配列が循環中の血清タンパク質から脱離し、エンドソームおよびリソソームのコンパートメント中での分解の標的となるであろう。
【0044】
具体的には、本発明のアミノ酸配列(ならびに、本明細書に定義する、これを含む化合物)は、アミノ酸配列が霊長類において血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、それは、霊長類における血清アルブミンなどの血清タンパク質の自然半減期の少なくとも約50%(約50%〜70%など)、好ましくは少なくとも60%(約60%〜80%など)または好ましくは少なくとも70%(約70%〜90%など)、より好ましくは少なくとも約80%(約80%〜90%など)または好ましくは少なくとも約90%の血清半減期を呈するように、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、そうでなければ付随しうる。例えば、本発明のアミノ酸配列は、アミノ酸配列が血清アルブミンなどのヒト血清タンパク質に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、アミノ酸配列は、血清タンパク質(血清アルブミンなど)の自然半減期の少なくとも約50%(約50%〜70%など)、好ましくは少なくとも60%(約60%〜80%など)または好ましくは少なくとも70%(約70%〜90%など)、より好ましくは少なくとも約80%(約80%〜90%など)または好ましくは少なくとも約90%の血清半減期を呈するように、血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合する、そうでなければ付随しうる。また、好ましくは、本発明のアミノ酸配列は、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)に結合する。ヒトにおいて、血清アルブミンの半減期は約19日である(Peters T (1996) All About Albumin. Academic Press、 San Diego)。
【0045】
霊長類のこのインビボの半減期により、本発明のアミノ酸配列は、それを伴う治療薬の血清半減期を延長するための理想的な候補となる。本発明のアミノ酸配列および治療薬の併用での長い血清半減期は、次に投与頻度の減少および/または投与量の減少を可能にし、処置される被験体に対して有意な利益をもたらす。
【0046】
本発明は、したがって、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在するアミノ酸配列のヒトにおける半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じであるヒトにおける半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0047】
特定の一態様では、本発明のアミノ酸配列は、それらが、少なくともさらに1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)、および、具体的には、マカク属(具体的には、カニクイザル(Macaca fascicularis)および/またはアカゲザル(Macaca mulatto)など)およびヒヒ(チャクマヒヒ)からのサルからなる群から選択される少なくとも1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質と交差反応を起こし得る。好ましくは、そのような交差反応を起こし得るアミノ酸配列は、さらに、霊長類における対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)の自然半減期の少なくとも約50%(約50%〜70%など)、好ましくは少なくとも60%(約60%〜80%など)または好ましくは少なくとも70%(約70%〜90%など)、より好ましくは少なくとも約80%(約80%〜90%など)または好ましくは少なくとも約90%の血清半減期を前記霊長類において呈する。本発明のそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で前記霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)にも結合する。
【0048】
本発明は、本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在する本発明のアミノ酸配列のヒトおよび/または前記霊長類種における半減期のそれぞれ少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである、ヒトおよび/または前記少なくとも1つの霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0049】
本発明の好ましいが、非限定的な別の態様によると、本発明のアミノ酸配列は、アミノ酸配列が前記血清タンパク質に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、アミノ酸配列が少なくとも約9日(約9日〜14日など)、好ましくは少なくとも約10日(約10日〜15日など)または少なくとも11日(約11日〜16日など)、より好ましくは少なくとも約12日(約12日〜18日以上など)または14日超(約14日〜19日など)のヒトにおける血清半減期を呈するように、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、そうでなければ付随しうる。本発明のそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で前記ヒト血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合できる。
【0050】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在するアミノ酸配列のヒトにおける半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じであるヒトにおける半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0051】
特定であるが、非限定的な一態様では、本発明のアミノ酸配列は、それらが、少なくともさらに1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)、および、具体的には、マカク属(アカゲザルまたはカニクイザルなど)およびヒヒからのサルからなる群から選択される少なくとも1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)と交差反応を起こし得る。好ましくは、そのような交差反応を起こし得るアミノ酸配列は、霊長類における対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)の自然半減期の少なくとも約50%(約50%〜70%など)、好ましくは少なくとも60%(約60%〜80%など)または好ましくは少なくとも70%(約70%〜90%など)、より好ましくは少なくとも約80%(約80%〜90%など)または好ましくは少なくとも約90%の血清半減期を前記霊長類において呈する。本発明のそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で前記霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)にも結合する。
【0052】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在するアミノ酸配列のヒトおよび/または少なくとも1つの霊長類種における半減期のそれぞれ少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである、ヒトおよび/または前記霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0053】
特定であるが、非限定的な別の態様では、本発明のアミノ酸配列は、少なくとも1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、そうでなければ付随し、および、霊長類における対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質の半減期が少なくとも約10日、例えば10日と15日の間、例えば約11日から13日(例として、アカゲザルにおいて、血清アルブミンの期待半減期が約11日と13日の間、具体的には約11日〜12日である)の場合、霊長類において少なくとも約5日(約5日〜9日など)、好ましくは少なくとも約6日(約6日〜10日など)または少なくとも7日(約7日〜11日など)、より好ましくは少なくとも約8日(約8日〜12日)または9日超(約9日〜12日以上など)の血清半減期を有する。本発明のそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、さらに、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で前記霊長類種からの血清タンパク質に結合する。特定の好ましい一態様では、そのようなアミノ酸配列はヒト血清アルブミンと交差反応を起こし得るし、より好ましくは本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0054】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および、前記化合物中に存在するアミノ酸配列の前記霊長類種における半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである前記少なくとも1つの霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0055】
別の特定の、しかし、非限定的な態様によると、本発明のアミノ酸配列は、さらに、少なくとも1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、そうでなければ付随し、および、霊長類における対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)の半減期が少なくとも約13日、例えば13日と18日の間(例として、ヒヒにおいて、血清アルブミンの半減期が少なくとも約13日、通常は約16〜18日である)の場合、霊長類において少なくとも約7日(約7日〜13日など)、好ましくは少なくとも約8日(約8〜15日など)または少なくとも9日(約9日〜16日など)、より好ましくは少なくとも約10日(約10日〜16日以上)または13日超(約13日〜18日など)の血清半減期を有する。本発明のそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、さらに、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)で前記霊長類種からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0056】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在するアミノ酸配列の前記霊長類種における半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである前記少なくとも1つの霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0057】
別の特定の、しかし、非限定的な態様において、本発明のアミノ酸配列は:
a)アミノ酸配列が血清タンパク質に結合している、あるいはそうでなければ付随している場合、アミノ酸配列が少なくとも約9日(約9日〜14日など)、好ましくは少なくとも約10日(約10日〜15日など)または少なくとも11日(約11日〜16日など)、より好ましくは少なくとも約12日(約12日〜18日以上など)または14日超(約14日〜19日など)のヒトにおける血清半減期を呈するように、ヒト血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合し、あるいはそうでなければ付随し;および
b)マカク属の種より選択される少なくとも1種の霊長類からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)(具体的には、カニクイザルおよび/またはアカゲザルからの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質)と交差反応を起こし得るし;および
c)前記霊長類において少なくとも約5日(約5日〜9日など)、好ましくは少なくとも約6日(約6日〜10日など)または少なくとも7日(約7日〜11日など)、より好ましくは少なくとも約8日(約8日〜12日)または9日超(約9日〜12日以上など)の血清半減期を有し得る。
【0058】
好ましくは、そのようなアミノ酸配列は、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)でヒトのタンパク質(ヒト血清アルブミンなど)および/または前記霊長類種からの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0059】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および前記化合物中に存在するアミノ酸配列のヒトおよび/または前記霊長類種における半減期のそれぞれ少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである、ヒトおよび/または前記少なくとも1つの霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0060】
特定であるが、非限定的な別の態様では、本発明のアミノ酸配列は:
a)アミノ酸配列がヒト血清タンパク質に結合している、あるいはそうでなければ付随している場合、アミノ酸配列が少なくとも約9日(約9日〜14日など)、好ましくは少なくとも約10日(約10日〜15日など)または少なくとも11日(約11日〜16日など)、より好ましくは少なくとも約12日(約12日〜18日以上など)または14日超(約14日〜19日など)のヒトにおける血清半減期を呈するように、ヒト血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合し、あるいはそうでなければ付随し;および
b)ヒヒからの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)と交差反応を起こし得るし;および
c)ヒヒにおいて少なくとも約7日(約7日〜13日など)、好ましくは少なくとも約8日(約8日〜15日など)または少なくとも9日(約9日〜16日など)、より好ましくは少なくとも約10日(約10日〜16日)または13日超(約13日〜18日など)の血清半減期を有し得る。
【0061】
好ましくは、そのようなアミノ酸配列は、本明細書に定義する解離定数(K)および/または結合親和性(K)でヒト血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)および/またはヒヒからの対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する。
【0062】
本発明は、そのようなアミノ酸配列を含む本発明の化合物、および、前記化合物中に存在するアミノ酸配列のヒトおよび/または前記霊長類種における半減期のそれぞれ少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである、ヒトおよび/または前記少なくとも1つの霊長類種における半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0063】
好ましくは、また、本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列を含む化合物、コンストラクト、融合タンパク質などの半減期は、好ましくは、その中での(つまり、同じ霊長類における)アミノ酸配列の半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである。
【0064】
本発明の特定であるが、非限定的な態様では、本発明のアミノ酸配列(または、それを含む化合物)は、(例えば、血清タンパク質の再循環の一部として)FcRn受容体に結合する、またはそれに結合できる血清タンパク質に対して向けられ、それらは、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトが前記血清タンパク質分子に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、前記血清タンパク質分子のFcRnに対する結合が(有意に)低下または阻害されないように、前記血清タンパク質に結合する、あるいはそうでなければ付随する。FcRnに結合できるいくつかの特定であるが、非限定的な血清タンパク質には、血清アルブミンおよび特別なIgGなどの免疫グロブリンが含まれる。
【0065】
さらなる実施態様では、本発明のアミノ酸配列(または、それを含む化合物)は、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトが血清タンパク質分子に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、前記血清タンパク質分子の半減期が(有意に)減少しないように、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、あるいはそうでなければ付随する。
【0066】
さらなる実施態様では、本発明のアミノ酸配列(または、それを含む化合物)は、前記血清タンパク質のFcRnに対する結合に関与しない血清タンパク質上のアミノ酸残基に結合できる。例えば、血清タンパク質が血清アルブミンである場合、本発明のアミノ酸配列(または、それを含む化合物)は、血清アルブミンのドメインIIIの一部を形成しないアミノ酸残基に結合できる。
【0067】
本発明の一実施態様では、アミノ酸配列は免疫グロブリン配列またはそのフラグメント、より具体的には免疫グロブリン可変ドメインまたはそのフラグメント、例えばVH−、V−、VHH−配列またはそのフラグメントである。本発明のアミノ酸配列は、ドメイン抗体、「dAb」、単一ドメイン抗体またはナノボディ、またはこれらの任意の一種のフラグメントであり得る。本発明のアミノ酸配列は、完全なヒト、ヒト化、ラクダ、ラクダ化ヒトまたはヒト化ラクダの配列であり、より具体的には、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1からFR4)および3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)を含みうる。
【0068】
より具体的には、本発明によるアミノ酸配列は、(単一)ドメイン抗体またはナノボディである。
【0069】
他の態様では、本発明は、本発明のアミノ酸配列を作製するため、具体的には、所望の、または目的とする血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)に対して向けられる本発明のアミノ酸配列を作製するための方法に関する。一態様では、前記方法は少なくとも以下の工程を含む:
a)アミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;
b)pH7.2から7.4の範囲のpH値などpH7.0超の少なくとも一種の生理的pH値で所望の、または、目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)pH7.2から7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一種の生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一種の生理的pH値で所望の、または、目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
d)pH7.2から7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列を単離する工程。
【0070】
詳細には、そのような方法は以下の工程を含むことができる:
a)所望の、または、目的とする血清タンパク質に対して向けられるアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;
b)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一種の生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0超の少なくとも一つの生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;
および
d)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一種の生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列を単離する工程。
【0071】
より詳細には、そのような方法は以下の工程を含むことができる:
a)目的とする、または所望の血清タンパク質に対して向けられるアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;
b)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%を超える、例えば110%を超える、120%を超えるまたはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または、目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;
および
d)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(またはさらに100%を超える、例えば110%を超える、120%を超えるまたはさらに130%以上)である会合定数(K)で、pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または、目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列を単離する工程。
【0072】
一般に、これらの方法において、b)pH7.0を超える生理的pH値(pH7.2〜7.4の範囲のpH値など)での少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーををスクリーニングする工程は、pH7.0超の生理的pH値(pH7.2〜7.4の範囲のpH値など)でのスクリーニングにより実施される。同様に、c)pH6.7未満の生理的pH値(pH6.5〜5.5の範囲のpH値など)での所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程は、pH6.7未満の生理的pH値(pH6.5〜5.5の範囲のpH値など)でのスクリーニングにより実施される。
【0073】
当業者に明らかなように、スクリーニング工程は選択工程としても実施できる。例えば、抗体−抗原相互作用はバッファー条件、pH、およびイオン強度の変化にしばしば敏感であることが知られているが、しかし、それらの変化はスコア化または検討されないことがほとんどで、変化が全般的に予想できないため、それらは薬剤治療法の設計には使用されないことが多い。望ましい結合特性を有する結合タンパク質は、例えば、敏感な相互作用の発生について結合タンパク質のレパートリーをスクリーニングすることにより、例えば、2つの代表的な条件(例えば、pH7.4およびpH6.0)および相対的結合強度が決定された結合アッセイを実施することにより見出される。相対的相互作用のそのような強度は、ELISA、Biacore法、スキャッチャード解析などを含む、任意の適切な結合テストにより測定できる。そのようなテストによって、どの結合タンパク質が選ばれたパラメーター(pH)に敏感である相互作用を表示するのか、およびその程度を明らかになる。望ましい結合特性を有する結合タンパク質は、また望ましい感受性について優先的に濃縮する選択条件を使用して、例えばファージ、リボソーム、酵母、または細胞のライブラリーから結合タンパク質のレパートリーを選択することにより見出される。ファージ抗体ライブラリーを塩基性pH(例えば、pH7.4)でインキュベートし、結合したファージ粒子をより低いpH(例えば、pH6.0)で十分に洗浄して、その後に酸溶出(pH2.0)することによって、本質的にpHに非依存的な抗原を認識するファージ抗体が濃縮される。望ましい結合特性を伴う結合タンパク質は、さらに、推定結合部位を操作して、特定の「敏感な」相互作用において好ましいアミノ酸残基または配列、例えば、pHに敏感なヒスチジンを含まないように操作したデザイナータンパク質ライブラリーから単離できる。例えば、FcRnとIgGの間の相互作用は精巧にpHに敏感であり、pHがpH6.0〜7.0まで上昇するにつれて2桁を超えて低下することが知られている。親和性転移の主な機構的基礎は、結合部位のヒスチジン含量である:ヒスチジン残基のイミダゾール側の変化は通常pH範囲6.0〜7.0にわたり脱プロトン化する。推定結合部位中のヒスチジンの明確な除外(例えば、トリヌクレオチドおよび当技術分野において公知の、例えば、Knappik et al., J. Mol.Biol 2000, vol 296: 57-86での使用と同様、ライブラリーにおいてこの残基を優先的に回避するオリゴヌクレオチドを使用して)は、本質的にpHに非依存的に結合するアミノ酸配列を高頻度にもたらすと予測される。
【0074】
したがって、本明細書の記載中で使用する「スクリーニング」という用語は、選択、スクリーニング、または選択および/またはスクリーニングの技術の任意の適切な組み合わせを含むことができる。
【0075】
一般に、工程b)およびc)は、単一または別々のスクリーニング工程として、または単一のスクリーニング工程の一部として実施できる。工程b)およびc)を単一のスクリーニング工程の一部として実施する場合、そのようなスクリーニング工程は、例えば、以下の工程を含み得る:
i)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値でアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを血清タンパク質に接触させる工程;
ii)血清タンパク質に結合するアミノ酸配列のセット、またはコレクションが残るように、工程i)において結合しないアミノ酸配列(つまり、本明細書に記載する所望の会合定数で血清タンパク質に結合しないアミノ酸配列)を除去する工程;
iii)pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値にアミノ酸配列のセットまたはコレクションをさらし、前記pH値で、所望の会合定数で血清タンパク質に結合するアミノ酸配列は血清タンパク質に結合した状態を継続し、前記pH値で、所望の会合定数で血清タンパク質に結合しないアミノ酸配列は血清タンパク質に結合した状態を継続しないようにする工程;
iv)工程iii)において結合しないアミノ酸配列(つまり、本明細書に記載する前記pH値で、所望の会合定数で血清タンパク質に結合しないアミノ酸配列)を除去する工程;
および、場合により
v)工程iii)において血清タンパク質に結合したままのアミノ酸配列を回収する工程。
【0076】
上記の方法において使用されるアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、任意の適切なアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーであり得る。例えば、アミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、免疫グロブリン可変ドメイン配列またはそのフラグメントのセット、コレクションまたはライブラリー、例えば、VH−、VL−、またはVHH−配列またはそれらのフラグメントのセット、コレクションまたはライブラリーなどの免疫グロブリン配列または免疫グロブリン配列のフラグメントのセット、コレクションまたはライブラリーであり得る。特定であるが、非限定的な一態様では、アミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、ドメイン抗体の、ドメイン抗体として使用できるタンパク質の、「dAb」の、単一ドメイン抗体の、単一ドメイン抗体として使用できるタンパク質の、またはナノボディの(または先のいずれかの適切なフラグメントの)セット、コレクションまたはライブラリーであり得る。
【0077】
アミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、未処置のセット、コレクションまたはライブラリーであり得る;合成または半合成のアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリー(例えば、限定はされないが、親和性成熟により作製されたアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリー)であり得る、もしくは、免疫セット、コレクションまたはライブラリーであり得る。一実施態様において、セット、コレクションまたはライブラリーは、哺乳動物(ウサギ、ラット、マウス、ブタまたはイヌ、もしくはラクダ)を抗原(哺乳動物が抗原に対して抗体を形成するように)適切に免疫し、次に哺乳動物から得られた生物学的サンプル(血液またはB細胞サンプルなど)から開始して免疫グロブリン配列のセット、コレクションまたはライブラリーを作製することにより得られた免疫セット、コレクションまたはライブラリーである。そのような免疫セット、コレクションまたはライブラリーを得て、スクリーニングするための方法および技術は、例えば、本明細書に引用する先行技術から、当業者に明らかである。好ましい一態様において、免疫グロブリン配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、目的とする血清タンパク質で(例えば、血清アルブミンで)適切に免疫化された哺乳動物から得られる。別の好ましい態様において、セット、コレクションまたはライブラリーは、ラクダから得られたVHH配列のセット、コレクションまたはライブラリー、具体的には、目的とする血清タンパク質で(例えば、血清アルブミンで)適切に免疫化されたラクダから得られたVHH配列の免疫セット、コレクションまたはライブラリーである。
【0078】
セット、コレクションまたはライブラリーは、任意の適切な数のアミノ酸配列、例えば、1、2、3または約5、10、50、100、500、1000、5000、10、10、10、10、10またはそれ以上の配列を含み得る。
【0079】
上記のアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、例えば、仮にこれらの配列が一種以上の任意のアミノ酸配列のランダム化工程の(例えば、エラープローンPCRまたは他の手段による)結果である場合、選択および/またはスクリーニングのプロセスより前には知られていない一種以上の配列を含みうる。また、上記のアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーにおける一種以上またはすべては、コンピュータモデリング技術または生物静力学またはデータマイニング技術などの合理的な、または、半経験的なアプローチにより得ることができる、または定義できるが、ここでは安定性の上昇、最適pH、プロテアーゼ感受性または他の特性もしくはそれらの組み合わせなどの特定の特性により予測される、または賦与されると期待されるアミノ酸が定義または提示されうる。
【0080】
そのようなセット、コレクションまたはライブラリー(および/または本明細書に記載されるスクリーニング中)において、セット、コレクションまたはライブラリー中に存在するアミノ酸配列を適切な宿主または宿主細胞、例えば、ファージ粒子、リボソーム、細菌、酵母細胞などの上に適切にディスプレイすることもできる。ここでも、適切な宿主または宿主細胞、そのような宿主または宿主細胞の上にアミノ酸配列をディスプレイするための適切な技術、およびそのような宿主または宿主細胞の上にディスプレイされたアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングするための適切な技術は、例えば、本明細書に引用する先行技術から当業者に明らかである。アミノ酸配列が適切な宿主または宿主細胞の上にディスプレイされた場合、最初に前記宿主または宿主細胞から、所望のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を単離し、次に適切な宿主生物においてヌクレオチド配列を発現させることにより所望のアミノ酸配列を得ることも可能(および習慣的)である。ここでも、これは、当業者に明らかなように、それ自体公知の任意の適切な方法より実施できる。
【0081】
非限定的な例として、そのようなセット、コレクションまたはライブラリーは、互いに変異体であり(例えば、デザインされた点突然変異またはランダム化位置を伴う)、多様なセットの自然多様化アミノ酸配列(例えば、免疫ライブラリー)に由来する複数のアミノ酸配列を損なう、1、2またはそれ以上のアミノ酸配列、または多様なアミノ酸配列の任意の他の供給源(例えば、Hoogenboom et al., Nat Biotechnol 23: 1105, 2005 and Binz et al.,Nat Biotechnol 2005, 23: 1247において記載される)を含むことができる。そのようなアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーは、ファージ粒子、リボソーム、細菌、酵母細胞、哺乳動物細胞の表面上にディスプレイでき、これらの担体内においてアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に連結できる。これによって、本発明の所望のアミノ酸配列を単離するための選択手順に適した、そのようなセット、コレクションまたはライブラリーが作製される。
【0082】
本発明のアミノ酸配列を作製するための方法は以下の工程をも含むことができる:
a)pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;および
b)pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合する会合定数(K)が、pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、アミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;
および
c)pH6.5〜5.5の範囲のpH値など6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合する会合定数(K)が、pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、アミノ酸配列を単離する工程。
【0083】
具体的には、そのような方法は以下の工程を含むことができる:
a)10〜1012L/mole以上、好ましくは10〜1012L/mole以上およびより好ましくは10〜1012L/moleの会合定数(K)で、pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;および
b)pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合する会合定数(K)が、pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%を超える、例えば110%を超える、120%を超えるまたはさらに130%以上)である、アミノ酸配列についてのアミノ酸配列の前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)pH6.5〜5.5の範囲のpH値などpH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合する会合定数(K)が、pH7.2〜7.4の範囲のpH値などpH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列の会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、アミノ酸配列を単離する工程。
【0084】
本発明のアミノ酸配列を作製するための方法は以下の工程をも含むことができる:
a)pH7またはpH7.2〜7.4の範囲などのpH6.5〜7.5の範囲での少なくとも一つの生理的pH値で所望の、または目的とする血清タンパク質に結合するアミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;および
b)pH5.5またはpH5.3〜5.7の範囲などのpH5〜6の間の少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列のoff速度が、pH5.5またはpH5.3〜5.7の範囲などのpH5〜6の間の少なくとも一つの生理的pH値での同じ血清タンパク質に関するアミノ酸配列のoff速度の5%〜200%の間、例えば10%〜190%、例えば50%〜150%、例えば70%〜130%のoff速度である、所望の、または目的とする血清タンパク質と相互作用する、アミノ酸配列についてのアミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)上記のoff速度プロファイルでの前記アミノ酸配列を単離する工程;および任意で
d)インビボでの前記アミノ酸配列の半減期を評価する工程。
【0085】
本発明のアミノ酸配列を作製するための方法であって、異なるpH条件における前記アミノ酸配列のoff速度が50%と150%内(より好ましくは80%〜120%)、つまり、実質的にpHに非依存的である。
【0086】
一実施態様において、本発明は、本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列を含む化合物(本明細書に「本発明の化合物」とも呼ぶ)に関し、化合物は、任意に、小分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはペプチドからなる群の少なくとも一種から選択される治療成分を含む少なくとも一種の治療成分をさらに含みうる。本発明の化合物は、前記霊長類における血清タンパク質(血清アルブミンなど)の自然半減期の50%未満(約50%〜70%)、好ましくは少なくとも60%(約60%〜80%)または好ましくは少なくとも70%(約70%〜90%)、より好ましくは少なくとも80%(約80%〜90%)または好ましくは少なくとも90%に対応する頻度で、または、代わりに、少なくとも4日(約4日〜12日以上)、好ましくは少なくとも7日(約7日〜15日以上)、より好ましくは少なくとも9日(約9日〜17日以上)、例えば少なくとも15日(具体的にはヒトへの投与において約15日〜19日以上)または少なくとも17日(具体的にはヒトへの投与において約17日〜19日以上)霊長類への投与に適し;そのような投与は、具体的には、化合物で処置される被験体の血清中の所望の化合物レベル(当業者に明らかなように、とりわけ、使用される化合物および/または処置される病気に依存する)を維持するためになされる。臨床医または医師は、本発明の化合物が本明細書に記載される頻度で投与される場合、所望の血清レベルを選択し、前記被験体において所望の血清レベルを達成および/または維持するために、処置される被験体に投与される用量および/または量を選択できる。例えば、そのような用量は、所望の血清レベルの1倍と10倍の間、例えば所望の血清レベルの2倍と4倍の間の範囲であり得る(ここで、所望の血清レベルは、投与される対応する用量を提供するように、それぞれ自体公知の方法で再計算される)。
【0087】
本発明の化合物は、上記の頻度での投与を目的とする、および/または投与のために包装される(例えば、適切な使用説明書とともに)単位用量として製剤化してもよく、そのような単位用量およびパッケージ製品は本発明のさらなる態様を形成する。本発明の別の態様は、そのような単位用量または包装製品を提供する際の(つまり、前記化合物を適切に製剤化および/または包装することによる)本発明の化合物の使用に関する。
【0088】
特定の一実施態様では、本発明の化合物は、融合タンパク質またはコンストラクトである。前記融合タンパク質またはコンストラクトにおいて、本発明のアミノ酸配列は、少なくとも一種の治療成分に直接的に連結していてよく、またはリンカーもしくはスペーサーを介して少なくとも一種の治療成分に連結していてよい。特定の一実施態様は、免疫グロブリン配列またはそのフラグメント、より具体的には(単一)ドメイン抗体またはナノボディを含む治療成分に関する。
【0089】
本発明は、ナノボディである本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列および少なくとも一種のさらなるナノボディを含む、多価および多特異的なナノボディにも関する。ナノボディは、少なくとも一種のさらなるナノボディに直接的に連結しており、またはリンカーもしくはスペーサーを介して少なくとも一種のさらなるナノボディに連結しており、好ましくはアミノ酸配列のリンカーもしくはスペーサーを介して少なくとも一種のさらなるナノボディに連結している。
【0090】
さらに、本発明は、本発明による化合物のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列または核酸、または本発明による化合物のアミノ酸配列、または本発明の多価および多特異的なナノボディに関する。本発明は、本発明のヌクレオチド配列または核酸を含み、および/または、本発明のアミノ酸配列、または本発明による化合物のアミノ酸配列、または本発明の多価および多特異的なナノボディを発現する(または発現できる)宿主または宿主細胞も提供する。
【0091】
さらに、本発明は、宿主細胞が前記産物を産生または発現するような条件下での本発明の宿主細胞を培養する、または維持する工程を含む、本発明のアミノ酸配列、化合物、または多価および多特異的なナノボディを調製するための方法に関するもので、場合によりこのようにして産生された前記産物をさらに含む。
【0092】
一実施態様では、本発明は、本発明のアミノ酸配列、化合物、または多価および多特異的なナノボディからなる群から選択される一種以上を含む医薬組成物に関するもので、前記医薬組成物は、前記霊長類における血清タンパク質の自然半減期の少なくとも約50%の間隔での霊長類への投与に適する。医薬組成物は、少なくとも一種の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤をさらに含みうる。
【0093】
本発明は、本発明のアミノ酸配列、化合物、多価および多特異的なナノボディを包含する医学的な用途および方法も包含し、前記医学的な用途または方法は、前記医薬品が霊長類における血清タンパク質の自然半減期の少なくとも約50%の間隔での投与に適し、方法が前記霊長類における血清タンパク質の自然半減期の少なくとも約50%の頻度での投与を含む。
【0094】
本発明は、治療薬の血清半減期を延長または増加させるための方法にも関する。方法は、治療薬を本発明の前記のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクト(多価および多特異的なナノボディを含む)のいずれかと接触させる工程を含み、治療薬は本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合している、あるいはそうでなければ付随している。いくつかの実施態様では、治療薬は、生物学的治療薬、好ましくはペプチドまたはポリペプチドであり、この場合において、治療薬を接触させる工程は、ペプチドまたはポリペプチドを本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに連結することにより融合タンパク質を調製する工程を含むことができる。
【0095】
これらの方法は、治療薬が本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合させた、そうでなければ付随させた後に、霊長類に治療薬を投与することをさらに含むことができる。そのような方法において、霊長類における治療薬の血清半減期は、治療薬それ自体の半減期の少なくとも1.5倍、または治療薬それ自体の半減期と比較して少なくとも1時間増大する。いくつかの好ましい実施態様では、霊長類における治療薬の血清半減期は、対応する治療薬成分それ自体の半減期よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または20倍超である。他の好ましい実施態様では、霊長類における治療薬の血清半減期は、対応する治療薬成分それ自体の半減期と比較して2時間超、6時間超または12時間超増大する。
【0096】
好ましくは、霊長類における治療薬の血清半減期は増大し、治療薬が本発明の化合物について本明細書に定義される(つまり、ヒトにおいて、および/または、少なくとも1つの霊長類種における)半減期を有する。
【0097】
別の態様では、本発明は、前記所望の治療レベルを達成ように前記治療薬の適切な投与時に、前記治療薬の所望の治療レベルが長期間持続されるように、治療薬を改変するための方法に関する。
【0098】
方法は、治療薬を、前記の本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクト(多価および多特異的なナノボディを含む)のいずれかと接触させることを含み、治療薬は本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合している、あるいはそうでなければ付随している。いくつかの実施態様では、治療薬は、生物学的治療薬、好ましくはペプチドまたはポリペプチドであり、この場合、治療薬を接触させる工程は、ペプチドまたはポリペプチドを本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに連結することにより融合タンパク質を調製する工程を含むことができる。
【0099】
これらの方法は、そのような投与時に所望の治療レベルが達成できるように、治療薬を本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合させ、あるいはそうでなければ付随させた後に霊長類に治療薬を投与する工程をさらに含むことができる。そのような方法において、治療薬の所望の治療レベルがそのような投与時に維持される時間は、治療薬それ自体の半減期の少なくとも1.5倍である、または治療薬それ自体の半減期と比較して少なくとも1時間増大する。いくつかの好ましい実施態様では、治療薬の所望の治療レベルがそのような投与時に維持される時間は、対応する治療成分それ自体の半減期よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または20倍超である。他の好ましい実施態様では、治療薬の所望の治療レベルがそのような投与時に維持される時間は、対応する治療成分それ自体の半減期と比較し、2時間超、6時間超または12時間超増大する。
【0100】
好ましくは、前記治療薬の所望の治療レベルがそのような投与時に維持される時間が増大され、治療薬は本発明の化合物について本明細書に定義される頻度で投与できる。
【0101】
別の態様では、本発明は、患者の血清中での前記化合物またはコンストラクト中の治療剤のレベルを増大および/または延長する医薬品の産生のための本発明の化合物(本明細書に定義する)の使用に関するもので、前記化合物またはコンストラクト中の前記治療剤は治療剤単独と比較してより低用量で(つまり、本質的に同じ投与頻度で)投与できる。
【0102】
発明の詳細な説明
一態様では、本発明は、生理的pHで本質的にpHに非依存的に血清タンパク質に結合する(本明細書に定義する)、アミノ酸配列、具体的には免疫グロブリン配列、さらに具体的には免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供することにより本目的を達成する。
【0103】
前記アミノ酸配列は、また好ましくは、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトが霊長類において血清タンパク質分子に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、それらは前記霊長類における血清タンパク質の自然半減期の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%および最も好ましくは少なくとも約90%の血清半減期を呈するように、血清タンパク質(アルブミンなど)に結合する、あるいはそうでなければ付随する。
【0104】
霊長類への投与後の本発明のアミノ酸配列の血清半減期は、霊長類における血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または少なくとも100%であり得る。
【0105】
「霊長類における血清タンパク質の自然血清半減期」によるとは、以下に定義するとおり、血清タンパク質が生理的条件下の健康な個体において有する血清半減期を意味する。血清アルブミンを血清中タンパク質の例として取ると、ヒトにおける血清アルブミンの自然半減期は19日である。より小さな霊長類は、血清アルブミンのより短い自然半減期、例えば、8から19日の範囲を有することが知られている。血清アルブミンの特定の半減期は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19以上であり得る。
【0106】
このことから、例えばヒトの個体において、本発明のアミノ酸配列は、19日の少なくとも約50%、つまり7.6日の血清アルブミンに関連する血清半減期を示す。より小さな霊長類において、血清半減期は、これらの種における血清アルブミンの自然半減期に依存して日数が短くなりうる。
【0107】
本説明では、「霊長類」という用語は、サルおよび類人猿のいずれの種も指し、マカク属からのサル(具体的には、カニクイザル(Macaca fascicularis)および/またはアカゲザル(Macaca mulatto)など)およびヒヒ(チャクマヒヒ)、ならびにマーモセット(カリスリクス属からの種)、リスザル(サイミリ属からの種)およびタマリン(サグイヌス属からの種)などのサルの種、ならびにチンパンジー(Pan troglodytes)などの類人猿の種が挙げられ、またヒトも挙げられる。ヒトは、本発明による好ましい霊長類である。
【0108】
アミノ酸配列または化合物の半減期は、一般的に、例えば、自然の機構による配列または化合物の分解および/または配列または化合物のクリアランスまたは隔離に起因してインビボでポリペプチドの血清中濃度が50%低下するために必要な時間と定義できる。関連する霊長類の種における本発明のアミノ酸配列の(およびそれを含む化合物の)半減期は、医薬品動態解析などによる、それ自体公知の方法により測定できる。適切な技術は当業者に明らかであり、例えば、一般的に以下の工程を含む:処置されるアミノ酸配列または化合物の適切な量を霊長類に適切に投与する工程;規則的間隔での霊長類からの血液サンプルまたは他のサンプルを採取する工程;血液サンプル中での本発明のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を測定する工程;および、このようにして得られたデータ(のプロット)から、本発明のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が、投与時の最初のレベルと比較し、50%低下されるまでの時間を計算する工程。例えば、標準的なハンドブック、Kenneth, A et al.: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbookfor Pharmacists and in Peters et al., Pharmacokinete analysis: A PracticalApproach (1996)などを参照する。"Pharmacokinetics", M Gibaldi & D Perron, published byMarcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982)も参照する。
【0109】
国際公開第04/003019号の6および7ページおよび本明細書に引用するさらなる参考文献に記載しているように、半減期はt1/2アルファ、t1/2ベータおよび濃度曲線下面積(AUC)などのパラメータを使用して表現できる。本明細書に、「半減期の増大」は、これらのパラメータのいずれか一種、例えば、これらのパラメータのいずれか2つ、または本質的にこれらのパラメータの3つすべてにおける増大を指す。具体的には「半減期の増大」は、t1/2アルファおよび/またはAUCあるいは両方における増大の有無にかかわらず、t1/2ベータにおける増大を指す。
【0110】
別の態様では、血清タンパク質(血清アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミンなど)に対して向けられる本発明のアミノ酸配列、および具体的には本発明の免疫グロブリン配列、およびさらに具体的には本発明の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、それらがアカゲザルにおいて少なくとも約4日、好ましくは少なくとも約7日、より好ましくは少なくとも約9日の半減期を有する。
【0111】
さらに別の態様では、本発明のアミノ酸配列は、ヒトにおいて少なくとも約7日、好ましくは少なくとも約15日、より好ましくは少なくとも約17日の半減期を有する。本発明は、ヒトにおいて、化合物中に存在する本発明のアミノ酸配列の半減期の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば95%以上または本質的に同じである半減期を有する本発明の化合物にも関する。さらに具体的には、本発明は、ヒトにおいて少なくとも約7日、好ましくは少なくとも約15日、より好ましくは少なくとも約17日の半減期を有する本発明の化合物にも関する。
【0112】
本発明は、本発明のアミノ酸配列を含む化合物、具体的には本発明のアミノ酸配列に加えて少なくとも一種の治療成分を含む化合物も提供する。本発明の化合物は、霊長類において本発明のアミノ酸配列と同等の血清半減期、より好ましくは本発明のアミノ酸配列の少なくとも血清半減期である半減期、より好ましくは霊長類における本発明のアミノ酸配列の半減期よりも高い半減期を呈することにより特性付けられる。
【0113】
一態様では、本発明は、FcRnに結合できる血清タンパク質に結合できる、本明細書に開示するアミノ酸配列を提供することによりこの目的を達成し、アミノ酸配列はさらに、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトが血清タンパク質に結合する、あるいはそうでなければ付随する場合、血清タンパク質分子のFcRnへの結合は(つまり、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトがそれに結合していない場合での血清タンパク質分子のFcRnへの結合と比較して)(有意に)低下または阻害されないように、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、あるいはそうでなければ付随する。本発明の本態様において、「有意に低下または阻害されない」とは、血清タンパク質のFcRnに対する結合親和性(SPRなどの適切なアッセイを使用して測定される)が50%超低下されず、好ましくは30%超低下されず、さらに好ましくは10%超低下されず、例えば5%超低下されず、または本質的にまったく低下されないことを意味する。本発明の本態様において、「有意に低下または阻害されない」とは、血清タンパク質分子の半減期が有意に低下されない(以下に定義する)ことも意味する(または追加で意味する)。
【0114】
本記載では、結合を参照する場合、当業者が通常理解するように、そのような結合は特異的結合である。
【0115】
本明細書に記載するアミノ酸配列は一価免疫グロブリン配列(例えば、一価ナノボディ)である場合、一価免疫グロブリン配列は、好ましくは、10−5から10−12moles/liter以下、より好ましくは10−7から10−12moles/liter以下およびより好ましくは10−8から10−12moles/literの解離定数(K)で(つまり、10から1012liter/moles以上、好ましくは10から1012liter/moles以上およびより好ましくは10から1012liter/molesの会合定数(K)で)、および/または少なくとも10M-1、好ましくは少なくとも10 M-1、より好ましくは少なくとも10M-1、例えば少なくとも1012M-1の結合親和性(K)で血清アルブミンに結合する。10mol/literより高い任意のK値(または10M-1liters/molより低い任意のK値)は、一般に、非特異的結合を指示すると考えられる。好ましくは、本発明の一価免疫グロブリン配列は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で所望の血清タンパク質に結合する。抗原結合タンパク質の抗原または抗原決定基への特異的結合は、例えば、スキャッチャード解析および/または競合結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイ、および当技術分野においてそれ自体公知の様々な異なる変法を含む、それ自体公知の任意の適切な方法で測定できる。
【0116】
別の態様では、本発明のアミノ酸配列(および具体的には免疫グロブリン配列、およびさらに具体的には免疫グロブリン可変ドメイン配列)は、さらに、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトが血清タンパク質に結合している、あるいはそうでなければ付随している場合、血清タンパク質分子の半減期が(つまり、アミノ酸配列またはポリペプチドコンストラクトがそれに結合していない場合における血清タンパク質分子の半減期と比較して)(有意に)減少しないように、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する、あるいはそうでなければ付随する。本発明の本態様では、「有意に減少しない」は、血清タンパク質分子の半減期(それ自体公知の適切な技術を使用して測定される)が、50%超減少せず、好ましくは30%超減少せず、さらに好ましくは10%超減少せず、例えば5%超減少せず、または本質的にまったく減少しないことを意味する。
【0117】
別の態様では、本発明のアミノ酸配列(および具体的には免疫グロブリン配列、およびさらに具体的には免疫グロブリン可変ドメイン配列)は、FcRnに結合できる血清タンパク質に対して向けられ得るが、さらに血清タンパク質のFcRnへの結合に関与しない血清タンパク質分子上のアミノ酸残基(血清アルブミン上のアミノ酸残基など)に結合できるようになりうる。具体的には、本発明の本態様によると、本発明のアミノ酸配列が血清アルブミンに対して向けられる場合、それらは血清アルブミンのドメインIIIの一部を形成しない血清アルブミンのアミノ酸配列に結合できる。例えば、それに限定されないが、本発明の本態様は、ドメインIおよび/またはドメインIIの一部を形成する血清アルブミンのアミノ酸配列に結合できるアミノ酸配列を提供する。
【0118】
本発明のアミノ酸配列は、好ましくは(単一)ドメイン抗体または(単一)ドメイン抗体としての使用に適切であり、そのようなものとして、重鎖可変ドメイン配列(VH配列)または軽鎖可変ドメイン配列(VL配列)があり得るが、好ましくはVH配列である。アミノ酸配列は例えばいわゆる「dAb」であり得る。
【0119】
しかし、特別に好ましい一実施態様によると、本発明のアミノ酸配列はナノボディである。ナノボディ、ならびに本説明で使用するさらなる用語の一部(例えば、限定はされないが、「向けられた」という用語など)のさらなる説明および定義については、Ablynx N. V.(国際公開第06/040153号および同時係属中の国際出願PCT/EP2006/004678など))による同時係属特許出願;ならびに本明細書に引用するさらなる先行技術を参照する。
【0120】
そのようなものとして、それらは「KERE」クラス、「GLEW」クラスまたは「103−P,R,S」クラスに属するナノボディ(これもAblynx N.V.による同時係属特許出願において定義される)であり得る。
【0121】
好ましくは、本発明のアミノ酸配列はヒト化ナノボディ(これもAblynx N.V.による同時係属特許出願において定義される)である。
【0122】
本明細書に開示しているアミノ酸配列は、タンパク質、化合物(限定はされないが、小分子を含む)または他の治療用物質などの治療成分の半減期を増大させるために、融合パートナーとして有利に使用できる。
【0123】
このように、別の態様では、本発明は、本明細書に開示しているアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなるタンパク質またはポリペプチドを提供する。具体的には、本発明は、任意に一種以上の適切なリンカーまたはスペーサーを介して少なくとも一種の治療成分に連結している少なくとも一種の本発明のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるタンパク質またはポリペプチドを提供する。そのようなタンパク質またはポリペプチドのコンストラクトは、例えば(限定はされないが)、本明細書にさらに記載される融合タンパク質であり得る。
【0124】
本発明は、さらに、タンパク質またはポリペプチドコンストラクトの治療的使用、および、そのようなタンパク質またはポリペプチドまたは融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。
【0125】
いくつかの実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、治療用のタンパク質、ポリペプチド、化合物、因子または他の物質を含む、またはそれから本質的になる。好ましい実施態様では、治療成分は、所望の抗原または標的に対して向けられ、所望の抗原に結合でき(具体的には所望の抗原に特異的に結合でき)、および/または所望の標的と相互作用できる。別の実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、治療用のタンパク質またはポリペプチドを含む、またはそれから本質的になる。さらなる一実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、抗体または抗体フラグメント(限定はされないが、ScFvフラグメントを含む)などの免疫グロブリンまたは免疫グロブリン配列(限定はされないが、免疫グロブリンのフラグメントを含む)を含む、またはそれから本質的になる。さらに別の実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインなどの抗体可変ドメインを含む、またはそれから本質的になる。
【0126】
好ましい一実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、少なくとも一種のドメイン抗体または単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディ(登録商標)を含む、またはそれから本質的になる。本実施態様によると、本発明のアミノ酸配列は好ましくはドメイン抗体または単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディでもあり、結果として得られるコンストラクトまたは融合タンパク質は、少なくとも一種が本発明のアミノ酸配列である少なくとも2つのドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディ(登録商標)(またはその組み合わせ)を含む多価コンストラクト(本明細書に記載)および好ましくは多特異的コンストラクト(同じく本明細書に記載)である。
【0127】
特定の一実施態様では、少なくとも一種の治療成分は、少なくとも一種の一価ナノボディ(登録商標)または二価、多価、二特異的または多特異的ナノボディ(登録商標)コンストラクトを含む、またはそれから本質的になる。この実施態様によると、本発明のアミノ酸配列は好ましくはナノボディでもあり、結果として得られるコンストラクトまたは融合タンパク質は、少なくとも一種が本発明のアミノ酸配列である少なくとも2つのナノボディを含む多価ナノボディコンストラクト(本明細書に記載)および好ましくは多特異的ナノボディコンストラクト(同じく本明細書に記載)である。
【0128】
本発明の一実施態様によると、本発明のアミノ酸配列はヒト化ナノボディである。
【0129】
また、本発明のアミノ酸配列、タンパク質、ポリペプチドまたはコンストラクトが医薬的または診断的な使用を目的としている場合、前記のものは好ましくはヒト血清アルブミンなどのヒト血清タンパク質に対して向けられる。
【0130】
アミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメイン配列などの免疫グロブリン配列である場合、そのような配列の適切な(つまり、本明細書で言及する目的とするために適切な)フラグメントも使用できる。例えば、アミノ酸配列がナノボディである場合、そのようなフラグメントは本質的に国際公開広報第04/041865号に記載している通りであり得る。
【0131】
本発明は、本明細書に記載するアミノ酸配列、またはその適切なフラグメントを含む、またはそれから本質的になるタンパク質またはポリペプチドにも関する。
【0132】
本発明のアミノ酸配列は、一種以上の他の抗原、抗原決定基、タンパク質、ポリペプチド、または他の化合物について一種以上の追加の結合部位も含みうる。
【0133】
本明細書で述べた通り、本明細書に記載するアミノ酸配列は、タンパク質、化合物(限定はされないが、小分子を含む)または他の治療用物質などの治療成分の半減期を増大させるために、融合パートナーとして有利に使用できる。このように、本発明の一実施態様は、本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列および少なくとも一種の治療成分を含むコンストラクトまたは融合タンパク質に関する。そのようなコンストラクトまたは融合タンパク質は、好ましくは、治療成分それ自体と比較し、増大した半減期を有する。一般に、そのような融合タンパク質およびコンストラクトは、上に引用した先行技術に記載している通り(調製し使用)できるが、先行技術に記載している半減期を増大させる成分の代わりに本発明のアミノ酸配列を有する。
【0134】
一般に、本明細書に記載するコンストラクトまたは融合タンパク質は、好ましくは、対応する治療成分自体の半減期より少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または20倍を超える、半減期を有する。
【0135】
また、好ましくは、任意のそのような融合タンパク質またはコンストラクトは、対応する治療成分それ自体の半減期と比較し、1時間を超える、好ましくは2時間を超える、より好ましくは6時間を超える、例えば12時間を超え増大した半減期を有する。
【0136】
また、好ましくは、任意の融合タンパク質またはコンストラクトは、1時間を超える、好ましくは2時間を超える、より好ましくは6時間を超える、例えば12時間を超える、および例えば、約1日、2日、1週間、2週間または3週間、好ましくは2ヵ月以下の半減期を有し、もっとも後者はそれほど重要ではない。
【0137】
また、上で述べた通り、本発明のアミノ酸配列がナノボディである場合、それを用いて、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディなどの他の免疫グロブリン配列の半減期を増大できる。
【0138】
このように、本発明の一実施態様は、本発明の少なくとも一種のアミノ酸配列およびドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」またはナノボディなどの少なくとも一種の免疫グロブリン配列を含むコンストラクトまたは融合タンパク質に関する。免疫グロブリン配列は、好ましくは、所望の標的(それは好ましくは治療標的である)ならびに/または治療、予防および/もしくは診断の目的に有用な、もしくは適切な別の免疫グロブリン配列に向けられる。
【0139】
このように、別の態様において、本発明は、本明細書に記載する少なくとも一種のナノボディ、および好ましくは所望の標的(それは好ましくは治療標的である)に向けられる少なくとも一種の他のナノボディ、ならびに/または治療、予防および/もしくは診断の目的に有用、もしくは適切な別のナノボディ、を含む多特異的(および特に二重特異的)ナノボディコンストラクトに関する。
【0140】
ナノボディならびに一種以上のナノボディおよびそれらの調製物を含む多価および多特異的ポリペプチドの一般的な説明については、国際公開広報第06/040153号および同時係属の国際出願PCT/EP2006/004678などのAblynx N. V.による同時係属出願PCT/EP2006/004678(ならびにこれらの出願において引用されるさらなる先行技術)ならびに例えばConrath et al., J. Biol Chem., Vol. 276, 10. 7346-7350, 2001;Muyldermans, Reviews in Molecular Biotechnology 74 (2001), 277-302;ならびに例えば国際公開第96/34103号および国際公開第99/23221号を参照する。本発明のある特定の多特異的および/または多特異的ポリペプチドの他のいくつかの例は、Ablynx N. V.による同時係属出願において見出せる。具体的には、半減期を増大させるための血清タンパク質に対する少なくとも一種のナノボディを含む多価および多特異的コンストラクト、それをコードする核酸、それを含む組成物、前記の調製物、および前記の使用の一般的な説明については、Ablynx.N. V.による国際公開第04/041865号を参照する。本明細書に記載するアミノ酸配列は、一般的に、本明細書に記載する半減期を増大するナノボディと同じように使用できる。
【0141】
非限定的な一実施態様では、前記他のナノボディは、単量体および/または多量体(つまり、三量体)の形で腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)に対するものである。そのようなナノボディコンストラクトのいくつか例は、Ablynx N. V.による同時係属の国際出願、表題「ImprovedNanobodies (商標) againstTumor Necrosis Factor-alpha」で見出すことができ、これは本出願と同じ優先権および同じ国際出願日を有する。
【0142】
本発明は、本明細書に記載するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列または核酸、化合物、融合タンパク質およびコンストラクトにも関する。本発明は、先のヌクレオチド配列または核酸およびそれ自体公知の遺伝子コンストラクトのための一種以上のエレメントを含む遺伝子コンストラクトをさらに含む。遺伝子コンストラクトはプラスミドまたはベクターの形であり得る。ここでも、そのようなコンストラクトは、一般的に、Ablynx N. V.による同時係属特許出願および本明細書で言及する先行技術、ならびに本明細書に引用するさらなる先行技術において記載する通りであり得る。
【0143】
本発明は、そのようなヌクレオチド配列または核酸を含み、および/または本明細書に記載するアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質およびコンストラクトを発現する(または発現できる)宿主または宿主細胞にも関する。ここでも、そのような宿主細胞は、一般的に、Ablynx N. V.による同時係属特許出願および本明細書に言及する先行技術、ならびに本明細書に引用するさらなる先行技術に記載する通りであり得る。
【0144】
本発明は、本明細書に記載するアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトを調製するための方法にも関するもので、その方法は、前記宿主細胞が本明細書に記載するアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトを産生または発現する条件下で本明細書に記載する宿主細胞を培養または維持することを含み、場合によりこのようにして産生したアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトを単離することをさらに含む。ここでも、そのような方法は、Ablynx N.V.による同時係属特許出願および本明細書に言及する先行技術、ならびに本明細書に引用するさらなる先行技術に一般的に記載するように実施できる。
【0145】
本発明は、本明細書に記載する少なくとも一種のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクト、および場合により少なくとも一種の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物にも関する。そのような製剤、担体、賦形剤および希釈剤は、一般的に、Ablynx N.V.による同時係属特許出願および本明細書に言及する先行技術、ならびに本明細書に引用するさらなる先行技術に記載する通りである。
【0146】
しかし、本明細書に記載するアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトは半減期が増大しているため、それらは好ましくは循環に投与される。そのようなものとして、それらは、アミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトが循環中に入ることができる任意の適切な方法、例えば静脈内、注射または注入を介して、またはアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトが循環中に入ることができる他の任意の適切な方法(経口投与、皮膚を通した投与、経粘膜投与、経鼻投与、肺を通した投与などを含む)により投与できる。投与の適切な方法および経路は、ここでも、例えば、国際公開広報第04/041862号の教示から当業者に明らかであろう。
【0147】
このように、別の態様において、本発明は、本明細書に記載する化合物、融合タンパク質またはコンストラクトの使用により予防または処置できる少なくとも一種の病気または疾患の予防および/または処置のための方法に関するもので、この方法は、医薬的活性量の本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクト、および/またはそれを含む医薬的組成物を必要とする被験体に投与することを含む。本明細書に記載する化合物、融合タンパク質またはコンストラクトの使用により予防または処置できる病気または疾患は、一般的に、本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに存在する治療成分の使用により予防または処置できる病気および疾患と同じであろう。
【0148】
処置される被験体は、任意の霊長類であり得るが、具体的にはヒトである。当業者に明らかなように、被験体は、具体的には、本明細書に言及する病気および疾患を患う、またはそのリスクを伴うヒトである。
【0149】
より具体的には、本発明は治療の方法に関するもので、ここで本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトを投与する頻度は、本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトが向けられる血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%および最も好ましくは少なくとも90%である。
【0150】
本発明の範囲内にある霊長類への特定の投与頻度は、本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトが向けられる血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または少なくとも100%である。
【0151】
換言すると、本発明の範囲内にある特定の投与頻度は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19日毎である。
【0152】
限定はされないが、上に指す投与頻度は、場合により所望の血中濃度を規定することを意図した一以上の(初期)用量の投与後に、アミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトで治療された被験体の血清中でのアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトの所望の濃度を維持するために特に適切である。当業者には明らかなように、所望の血中濃度は、とりわけ、使用されるアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトおよび/または処置される病気に依存しうる。臨床医または医師は、本発明のアミノ酸、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトを本明細書に言及する頻度で投与する場合、前記被験体中の所望の血中濃度を達成および/または維持するために、所望の血清レベルを選択でき、治療する被験体に投与する用量および/または量を選択できる。
【0153】
本発明との関連で、「予防および/または処置」という用語は、病気の予防および/または処置のみでなく、一般的に、病気の発症の予防、病気の進行の緩徐化または逆転、病気に伴う一種以上の症状の発症の予防または緩徐化、病気に関連する一種以上の症状の低減または軽減、病気および/またはそれに関連する症状の重症度および/または期間の低減および/または病気および/またはそれに伴う症状の重症度におけるさらなる増大の予防、病気が原因となる任意の生理学的損傷の低減または逆転、および一般的に、治療中の患者に有益な薬理作用を含む。
【0154】
処置される被験体は任意の霊長類であり得るが、しかし、具体的にはヒトである。当業者には明らかなように、処置される被験体は、具体的には、本明細書に言及する治療成分により治療可能な病気および疾患を患う、またはそのリスクを伴うヒトである。
【0155】
別の実施態様では、本発明は、免疫療法の方法、具体的には受動免疫療法に関するもので、その方法は、本明細書に言及する病気および疾患を患う、またはそのリスクを伴う被験体への、医薬的活性量の本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクト、および/またはそれを含む医薬組成物の投与を含む。
【0156】
本発明は、治療薬の血清半減期を延長または増大させるための方法にも関する。これらの方法では、治療薬は、多価および多特異的なナノボディを含む、本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトのいずれかに接触させ、治療薬がアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合する、あるいはそうでなければ付随する。
【0157】
治療薬およびアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトは、当業者に公知の様々な方法で結合できる、そうでなければ付随できる。ペプチドまたはポリペプチドなどの生物学的治療薬の場合、治療薬は、当技術分野において公知の方法により、アミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに融合できる。治療薬は直接融合でき、またはスペーサーまたはリンカーの分子または配列を使用して融合できる。スペーサーまたはリンカーは、好ましい実施態様では、アミノ酸で作製されるが、当技術分野において公知の通り、他の非アミノ酸のスペーサーまたはリンカーを使用できる。このように、治療薬を接触させる工程は、ペプチドまたはポリペプチドを、多価および多特異的なナノボディを含む本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに連結させることによる融合タンパク質の調製を含むことができる。
【0158】
治療薬は本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトにより直接結合することもできる。一例として、多価および多特異的なナノボディは、血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合する少なくとも一種の可変ドメインおよび治療薬に結合する少なくとも一種の可変ドメインを含むことができる。
【0159】
治療薬の血清半減期を延長または増大するための方法は、本発明のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトに結合させ、あるいはそうでなければ付随させた後に治療薬を霊長類に投与することをさらに含むことができる。そのような方法では、治療薬の半減期は、本明細書に別の個所に記載する通り、相当量を延長または増大する。
【0160】
アミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトおよび/またはそれを含む化合物は、予防または処置される病気または疾患を予防および/または処置するために適切である処置計画に従って投与される。臨床医は、一般的に、予防または処置される病気または疾患、処置される病気の重症度および/またはその症状の重症度、使用する本発明の特定のナノボディまたはポリペプチド、使用する特定の投与経路および医薬製剤または組成物、年齢、性別、体重、食事、患者の全身状態などの因子、および臨床医に周知の同様の因子に応じて、適切な処置計画を決定できる。
【0161】
一般的に、処置計画は、一種以上の医薬的な有効量または用量において、本発明の一種以上のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質もしくはコンストラクト、またはそれを含む一種以上の組成物の投与を含む。投与される特定の量または用量は、ここでも上に引用する因子に基づいて、臨床医が決定できる。
【0162】
一般的に、本明細書に言及する病気および疾患の予防および/または処置のために、および処置される特定の病気または疾患、使用する特定のアミノ酸配列、化合物、融合タンパク質またはコンストラクトの効力および/または半減期、使用する特定の投与経路および特定の医薬製剤または組成物に応じて、本発明のナノボディおよびポリペプチドは一般的に1g/kg体重/日と0.01μg/kg体重/日の間、好ましくは0.1g/kg体重/日と0.1μg/kg体重/日の間、例えば約1、10、100、1000μg/kg体重/日の量で、1日1回投与で連続的に(例えば注入により)または1日複数回分割用量で投与される。臨床医は、一般的に、本明細書に言及する因子に応じて、適切な1日用量を決定できる。特定の場合には、臨床医は、例えば、上に引用した因子および自身の判断に基づき、これらの量から逸脱することを選択できる。一般的に、投与される量に関するある種のガイダンスは、しかし、親和性/結合力、効力、体内分布、半減期および当業者に公知の同様の因子における差を考慮して、本質的に同じ経路を介して投与される同じ標的に対する同等の従来の抗体または抗体フラグメントについて通常投与される量から得ることができる。
【0163】
通常、上の方法において、本発明の単一のナノボディまたはポリペプチドを使用する。しかし、本発明の2種以上のナノボディおよび/またはポリペプチドを併用することは本発明の範囲内である。
【0164】
本発明のナノボディおよびポリペプチドは、一種以上のさらなる医薬的活性化合物または原理、すなわち相乗効果を招く、または招かない可能性のある併用処置計画と併用してもよい。ここでも、臨床医は、上に引用した因子および自身の判断に基づき、そのようなさらなる化合物または原理、ならびに適切な併用処置計画を選択できる。
【0165】
具体的には、本発明のナノボディおよびポリペプチドは、本発明の融合タンパク質またはコンストラクトで予防または処置できる病気または疾患の予防および/または処置のためである、またはそのために使用できる他の医薬的活性化合物または原理と併用でき、その結果、相乗効果が得られる、または得られないことがある。
【0166】
本発明に従って使用される処置計画の有効性は、臨床医に明らかなように、関与する病気または疾患についてそれ自体公知の任意の方法で判断および/または追跡調査できる。臨床医は、適宜および/またはケースバイケースで、特別な処置計画を変更または改変して、所望の治療効果を達成し、不要な副作用を回避、制限または低減し、および/または一方では所望の治療効果を達成すること、他方で望ましくない副作用を回避、制限または低減することの間の適当なバランスを達成することもできる。
【0167】
一般的に、処置計画は、所望の治療効果が達成されるまで、および/または所望の治療効果が維持される限り、追跡調査される。ここでも、処置計画は臨床医により判断できる。
【0168】
用いてきた用語および表現は、説明の用語として使用され、限定されるものでなく、そのような用語および表現を使用する際に、示し、記載した特徴またはその一部の任意の同等物を除外する意図はないので、本発明の範囲内において様々な改変が可能であることが認識されている。
【0169】
本明細書に記載する参考文献すべては、特に本明細書の上で参照された教示について、参照により組み入れられる。
【実施例】
【0170】
実験の部
実施例1:血清アルブミン特異的ナノボディの同定
獣医学部倫理委員会(UniversityGhent、ベルギー)の承認後、標準的プロトコールに従って、2匹のラマ(117、118)にヒト血清アルブミンならびにマウス血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミンおよびヒヒ血清アルブミンの混合物を6回の筋内注射により、1週間間隔で交互に免疫する。
【0171】
ライブラリー構築
ラマにおいて適当な免疫反応が誘発される場合、最後の抗原注射から4日後、150mlの血液サンプルを採取し、製造業者の指示に従って末梢血リンパ球(PBL)をFicoll-Paque(商標)により、密度勾配遠心分離法により精製する。次に、全RNAをこれらの細胞から抽出し、RT−PCRのための出発材料として使用し、遺伝子フラグメントをコードするナノボディを増幅する。これらのフラグメントをファージミドベクターpAX50中にクローニングする。ファージを標準方法(例えば、本明細書に引用する先行技術および出願者が出願する出願書類を参照する)に従って調製し、さらなる使用のために4℃で保存する。
【0172】
選択
血清アルブミンへの結合についてのレパートリーの選択
第1選択において、ヒト血清アルブミン(SigmaA-8763)をMaxisorp 96ウェルプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)上に100μg/mlで、室温で一晩コーティングする。プレートをPBS中の4%Marvelで、室温で2時間ブロッキングする。PBSTで3回洗浄後、ファージを4% Marvel/PBS中に加え、室温で1時間インキュベートする。十分な洗浄に続き、結合したファージを0.1Mトリエタノールアミン(TEA)で溶出し、1M Tris−HCl pH7.5で中和する。
【0173】
ナノボディのアルブミンへのpH非依存的結合についてのスクリーニング
1.ELISAによるナノボディのpH非依存的結合についてのスクリーニング
pHに鈍感な、またはコンディショナルなアルブミンへの結合についてナノボディをスクリーニングするために、2つの代表的な条件、pH5.8およびpH7.3ならびに測定された相対的結合強度で結合ELISAを実施する。Maxisorbマイクロタイタープレート(Nunc,Article No 430341)を重炭酸バッファー(50mM、pH9.6)中の1μg/mlヒト血清アルブミン溶液100μlにより4℃で一晩コーティングする。コーティング後、プレートを0.05% Tween 20を含むPBS(PBST)により3回洗浄し、2%Marvelを含むPBS(PBSM)により室温(RT)で2時間ブロッキングする。ブロッキング工程後、コーティングしたプレートをPBST pH5.8で2回洗浄し、PBSM pH5.8(100μl)中の各ペリプラズムサンプルの10倍希釈の一定分量をコーティングしたプレートに移し、RTで1時間結合させる。サンプルのインキュベート後、プレートをPBSTで5回洗浄し、2% PBSM中の1:1000希釈マウス抗myc抗体100μlによりRTで1時間インキュベートする。RTでの1時間後、プレートをPBSTで5回洗浄し、西洋わさびペルオキシダーゼで抱合したヤギ抗マウス抗体の1:1000希釈液100μlとインキュベートする。1時間後、プレートをPBSTで5回洗浄し、Slow TMB(Pierce, ArticleNo. 34024)100μlとインキュベートする。20分後、反応を100μlのHSOで停止する。各ウェルの吸光度を450nmで測定する。
【0174】
2.表面プラズモン共鳴(Biacore)を介した動態学的off速度定数のスクリーニング
活性化のためのNHS/EDCおよび非活性化のためのエタノールアミンを使用し、アミン結合を介してCM5センサーチップ(Biacore amine coupling kit)表面上にヒト血清アルブミンを固定化する。
【0175】
約1000RUのヒト血清アルブミンを固定化する。実験は25℃で実施する。ナノボディのアルブミン(Biacore)へのpH依存的結合のために使用するバッファーは以下の通りである:10mMクエン酸ナトリウム(Na)+ 10mMリン酸ナトリウム(NaHPO)+10mM酢酸ナトリウム(CHCOONa)+ 115mM NaCl。HClまたはNaOHを加えることにより、この混合物をpH7、pH6、およびpH5にする(測定する混合物のpHに依存する)。
【0176】
ペリプラズム抽出物をpH7、pH6、およびpH5のランニングバッファー中に希釈する。活性化およびレファレンスの表面全体に流速45μl/分で1分間サンプルを注射する。それらの表面は、グリシン−HCl pH1.5 + 0.1% P20の3sパルスで再生する。BiacoreT100評価ソフトウェアを使用して評価を行う。
【0177】
二重特異的ALB8ナノボディの構築
C末端抗HSAナノボディ(ALB 8)、9アミノ酸Gly/SerリンカーおよびN末端抗IL6Rナノボディからなる二重特異的ナノボディも作製される。コンストラクトはさらにIL6R202と呼ばれる。このコンストラクトをc−myc、His6タグ付きタンパク質として大腸菌内で発現させ、続いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)および分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)により培養液から精製する。
【0178】
すべての選択において、濃縮が観察される。各選択からの産出物を、発現ベクターpAX51中にプールとしてリクローニングする。コロニーを選定し、96ディープウェルプレート(容積1ml)中において増殖させ、ナノボディ発現のためにIPTGを加えることにより誘導させる。ペリプラズム抽出物(容積:〜80μl)を標準方法に従って調製する(例えば、本明細書に引用する、先行技術および本出願人による出願を参照する)。
【0179】
ELISAによるライブラリー評価
アルブミン特異性について、ヒト血清アルブミンでコーティングした固相上でELISAにより個々のナノボディのペリプラズム抽出物をスクリーニングする。固定化ヒト血清アルブミンに結合したナノボディの検出は、ビオチン化マウス抗His抗体(Serotec MCA1396B)を使用して行い、ストレプトアビジンHRP(DakoCytomation #PO397)で検出する。TMB基質溶液(Pierce 34021)を加えることによりシグナルを発現させ、波長450nmで検出する。1回のパニング後、陽性クローンの高いヒット率をすでに得ることができる。図1は、典型的なELISAの結果の説明図である。
【0180】
実施例2:表面プラズモン共鳴(Biacore)を使用した同定したナノボディのヒト血清アルブミンへのpH依存的結合
活性化のためのNHS/EDCおよび非活性化のためのエタノールアミンを使用し、アミン結合を介してCM5センサーチップ(Biacore amine coupling kit)表面上にヒト血清アルブミンを固定化する。
【0181】
約1000RUのカニクイザルおよびヒトの血清アルブミンをそれぞれ固定化する。実験は25℃で実施する。ナノボディのアルブミン(Biacore)へのpH依存的結合のために使用するバッファーは以下の通りである:10mMクエン酸ナトリウム(Na)+ 10mMリン酸ナトリウム(NaHPO)+10mM酢酸ナトリウム(CHCOONa)+ 115mM NaCl。HClまたはNaOHを加えることにより、この混合物をpH7、pH6、およびpH5にする(測定する混合物のpHに依存する)。標準バッファーHBS−EP + ペリプラズム抽出物または精製ナノボディをpH7、pH6、およびpH5のランニングバッファー中に希釈する。活性化およびレファレンスの表面全体に流速45μl/分で1分間サンプルを注射する。それらの表面は、グリシン−HCl pH1.5 + 0.1% P20の3sパルスで再生する。BiacoreT100評価ソフトウェアを使用して評価を行う。
【0182】
pH7およびpH5での異なるナノボディのoff速度をテーブル1(表4)に記録する。ナノボディの大半(4A2、4A6、4B5、4B6、4B8、4C3、4C4、4C5、4C8、4C9、4D3、4D4、4D7および4D10)は、pH7と比較し、pH5でより速いoff速度を有する。ナノボディ4A9は、pH7と比較し、pH5でより遅いoff速度を有する。IL6R202、Alb−8、4C11、4B1、4B10および4D5を含む他のナノボディについて、抗原への結合は異なるpHで変化しない。
【0183】
代表的なクローンのセンサーグラムを図2aおよび2Bに示す。
【0184】
実施例2a:アルブミン結合ナノボディALB8の治療標的IL6R(IL6R202)に向けたナノボディへの融合は、ヒトまたはカニクイザルの血清アルブミンへのそのpH依存的結合に影響を及ぼさない
IL6R202のpH非依存的結合特性は、表面プラズモン共鳴(Biacore)を介して評価される。活性化のためのNHS/EDCおよび非活性化のためのエタノールアミンを使用し、アミン結合を介してCM5センサーチップ(Biacore amine coupling kit)表面上にヒトおよびカニクイザルの血清アルブミンを固定化する。
【0185】
約1000RUのカニクイザルおよびヒトの血清アルブミンをそれぞれ固定化する。実験は25℃で実施する。ナノボディのアルブミン(Biacore)へのpH依存的結合のために使用するバッファーは以下の通りである:10mMクエン酸ナトリウム(Na)+ 10mMリン酸ナトリウム(NaHPO)+10mM酢酸ナトリウム(CHCOONa)+ 115mM NaCl。HClまたはNaOHを加えることにより、この混合物をpH7、pH6、およびpH5にする(測定される混合物のpHに依存する)。
【0186】
ペリプラズム抽出物または精製ナノボディをpH7、pH6、およびpH5のランニングバッファー中に希釈する。活性化およびレファレンスの表面全体に流速45μl/分で1分間サンプルを注射する。それらの表面は、グリシン−HCl pH1.5 + 0.1% P20の3sパルスで再生する。BiacoreT100評価ソフトウェアを使用して評価を行う。IL6R202の結合特性を以下に示す。ALB 8が二重特異的ナノボディフォーマットIL6R202中に取り込まれる場合、pH非依存的な結合特性は、一価ナノボディとしてのそのpH非依存的な結合特性と比較し、違わない。さらに、二重特異的コンストラクト内におけるALB8は、カニクイザルの血清アルブミンに交差反応性を表示し、同様の結合特性を伴う。
【0187】
【表1】

【0188】
実施例3:カニクイザルにおける薬物動態プロファイル
ナノボディ(ナノボディはIL6R202と呼ばれる)は、ヒト化抗IL6R構成要素およびヒト化抗血清アルブミン構成要素(ヒト化抗血清アルブミン構築要素=Alb−8)を使用して二価コンストラクトとして構築される。9アミノ酸GlySerリンカーを使用して、異なる構成要素を連結する。このコンストラクトを大腸菌において発現させ、ProtAを使用して精製し、その後に分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)が続く。IL6R202の薬物動態試験(pHに非依存的なkoff速度‐上を参照する)をカニクイザルにおいて実施する。IL6R202を左または右腕の橈側皮静脈におけるボーラス注入(1.0ml/kg、約30秒)により静脈内投与して、2.0mg/kgの用量を得る。表2にはすべてのサルにおける投与計画をまとめている。
【0189】
【表2】

【0190】
血漿サンプル中のIL6R202濃度を以下の通りに測定する:
Maxisorbマイクロタイタープレート(Nunc, Article No. 430341)を重炭酸バッファー(50mM、pH 9.6)中の5μg/ml 12B2−GS9−12B2(B2#1302nr4.3.9)溶液100μlにより4℃で一晩コーティングする。コーティング後、プレートを0.1% Tween 20を含むPBSにより3回洗浄し、1%カゼインを含むPBS(250μl/ウェル)により室温(RT)で2時間ブロッキングする。血漿サンプルおよびナノボディスタンダードの連続希釈液(100%プールブランクカニクイザル血漿中でスパイクする)を別々のコーティングしていないプレート(Nunc, Article No. 249944)においてPBS中に希釈し、PBS中の10%プールカニクイザル血漿からなる最終サンプルマトリクスにおいて所望の濃度/希釈を得る。すべての前希釈物を未コーティングプレートにおいてRTで30分間インキュベートする。ブロッキング工程後、コーティングしたプレートを3回洗浄し(0.1% Tween 20を含むPBS)、各サンプル希釈物の一定分量(100μl)をコーティングしたプレートに移し、RTで1時間結合させる。サンプルのインキュベート後、プレートを3回洗浄し(0.1% Tween 20を含むPBS)、PBS中の100ng/ml sIL6R溶液(Peprotech, Article No. 20006R)100μlによりRTで1時間インキュベートする。RTでの1時間後、プレートをPBSTで3回洗浄し(0.1% Tween 20を含むPBS)、1%カゼインを含むPBS中のビオチン化ポリクローナル抗IL6R抗体の250ng/ml溶液100μlとインキュベートする。30分間(RT)のインキュベート後、プレートを3回洗浄し(0.1% Tween 20を含むPBS)、西洋わさびペルオキシダーゼで抱合したストレプトアビジン(DaktoCytomation, Article No. P0397)の1/5000希釈液(1%カゼインを含むPBS中)100μlとインキュベートする。30分後、プレートをPBSTで3回洗浄し(0.1% Tween 20を含むPBS)、Slow TMB(Pierce, ArticleNo. 34024)100μlとインキュベートする。20分後、反応を100μlのHCl(1N)で停止する。各ウェルの吸光度を450nmで測定し(TecanSunrise分光光度計)、620nmの吸光度で補正する。このアッセイでは、遊離ナノボディならびにsIL6Rおよび/またはカニクイザル血清アルブミンに結合したナノボディを測定する。各血漿サンプルにおける濃度は、各ナノボディの複合法面を伴うシグモイド型標準曲線に基づいて測定する。IL6R202のLLOQおよびULOQは7.00ng/mlである。
【0191】
それぞれの個々の血漿サンプルを2つの独立したアッセイにおいて解析し、薬物動態データ解析のために平均血漿濃度を算出する。
【0192】
雄および雌のカニクイザルにおける2.00mg/kgでの単回静脈内投与後のIL6R202の基本薬物動態パラメータを表3に列挙する。すべてのパラメータは、ツーコンパートメントモデリング(two−compartmental modeling)により算出され、中心コンパートメントから除外する。
【0193】
測定されたIL6R202の半減期は6.8 +/− 0.226日間であり、これはカニクイザルにおけるカニクイザル血清アルブミンの半減期と近似している。
【0194】
表3:雄および雌のカニクイザルにおける2.00mg/kgでの単回静脈内投与後のIL6R202の基本薬物動態パラメータ
【表3】

【0195】
【表4】

テーブル1.pH7およびpH5での異なるナノボディ(登録商標)のoff速度(Biacoreにより測定)を記録する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理的pH値で、本質的にpHに非依存的に血清タンパク質に結合するアミノ酸配列。
【請求項2】
動物またはヒトの身体の細胞内で生じるpH値でのアミノ酸配列の血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)が、前記細胞の外で生じるpH値での該アミノ酸配列の同じ血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、請求項1に記載のアミノ酸配列。
【請求項3】
前記細胞が該血清タンパク質の再循環に関与する、請求項1〜2のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項4】
前記細胞がFcRn受容体を含むか、またはFcRn受容体を発現する、請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項5】
動物またはヒトの身体の細胞の細胞(内)コンパートメントまたは小胞の中で生じるpH値でのアミノ酸配列の血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)が、前記細胞が存在する該ヒトまたは動物の身体の循環中、例えば血(流)またはリンパ系などにおいて生じるpH値での該アミノ酸配列の同じ血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超、またはさらに130%以上)である、請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項6】
前記細胞が該血清タンパク質の再循環に関与する、請求項5に記載のアミノ酸配列。
【請求項7】
該細胞の前記細胞(内)コンパートメントまたは小胞が該血清タンパク質の再循環に関与する、請求項6に記載のアミノ酸配列。
【請求項8】
前記細胞がFcRn受容体を含むか、またはFcRn受容体を発現する、請求項5〜7のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項9】
pH6.7未満の少なくとも一つの生理的pH値でのアミノ酸配列の血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)が、pH7.0を超える少なくとも一つの生理的pH値での前記アミノ酸配列の同じ血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、請求項1に記載のアミノ酸配列。
【請求項10】
pH6.5〜5.5の範囲(6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、5.7または5.6など)のpH値でのアミノ酸配列の血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)が、pH7.2〜7.4の範囲(7.2、7.3または7.4など)のpHでの前記アミノ酸配列の同じ血清タンパク質への結合に関する会合定数(K)の少なくとも5%、例えば少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、例えばさらにより好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または90%以上(または、さらに100%超、例えば110%超、120%超またはさらに130%以上)である、請求項1に記載のアミノ酸配列。
【請求項11】
前記血清タンパク質が自然に生じるヒトまたは動物の身体において、再循環または再循環機構にさらされる血清タンパク質に結合する、請求項1〜10のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項12】
ヒト血清タンパク質へ結合する、請求項1〜11のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項13】
マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または霊長類の、少なくとも別の哺乳類の種由来の、対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質と交差反応性を起こし得る、請求項12に記載のアミノ酸配列。
【請求項14】
カニクイザル(Macaca fascicularis)および/またはアカゲザル(Macaca mulatto)のマカク属並びにヒヒ(チャクマヒヒ)からの、少なくとも別の霊長類の種由来の、対応する(つまり、オルソロガスな)血清タンパク質と交差反応を起こし得る、請求項13に記載のアミノ酸配列。
【請求項15】
該アミノ酸配列が前記血清タンパク質分子に結合している、あるいはそうでなければ付随している場合、前記血清タンパク質分子の半減期が(有意に)低下しないように、前記血清タンパク質に結合できる、あるいはそうでなければ付随できる、請求項1〜14のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項16】
FcRnに結合できる血清タンパク質に結合する、請求項1〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項17】
アミノ酸配列が前記血清タンパク質分子に結合している、あるいはそうでなければ付随している場合、前記血清タンパク質分子のFcRnへの結合が(有意に)低下または阻害しないように、前記血清タンパク質に結合できる、あるいはそうでなければ付随できる、請求項15記載のアミノ酸配列。
【請求項18】
前記血清タンパク質のFcRnへの結合に関与しない前記血清タンパク質上のアミノ酸残基に結合できる、請求項16または17に記載のアミノ酸配列。
【請求項19】
血清アルブミン、IgGなどの免疫グロブリンまたはトランスフェリンからなる群から選択される血清タンパク質へ結合する、請求項1〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項20】
血清アルブミンへ結合する、請求項1〜19のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項21】
前記アミノ酸配列が前記霊長類において前記血清タンパク質と結合している、あるいは付随している場合、前記アミノ酸配列が前記霊長類において前記血清タンパク質の自然血清半減期の少なくとも50%の血清半減期を呈するような、少なくとも1つの霊長類種の血清タンパク質に結合する、あるいはそうでなければ付随する、請求項1〜20のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項22】
前記アミノ酸配列が前記霊長類において前記血清タンパク質の自然血清半減期の少なくとも60%の血清半減期を呈する、請求項21記載のアミノ酸配列。
【請求項23】
前記アミノ酸配列が前記霊長類において前記血清タンパク質の自然血清半減期の少なくとも80%の血清半減期を呈する、請求項21または22記載のアミノ酸配列。
【請求項24】
前記アミノ酸配列が前記霊長類において前記血清タンパク質の自然血清半減期の少なくとも90%の血清半減期を呈する、請求項21〜23のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項25】
前記アミノ酸配列が少なくとも4日間の血清半減期を呈する、請求項21〜24のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【請求項26】
前記アミノ酸配列が少なくとも7日間の血清半減期を呈する、請求項25記載のアミノ酸配列。
【請求項27】
前記アミノ酸配列が少なくとも9日間の血清半減期を呈する、請求項25または26記載のアミノ酸配列。
【請求項28】
免疫グロブリン配列またはそのフラグメントである、請求項1〜27のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【請求項29】
免疫グロブリン可変ドメイン配列またはそのフラグメントである、請求項28に記載のアミノ酸配列。
【請求項30】
−、V−またはVHH−配列またはそのフラグメントである、請求項28に記載のアミノ酸配列。
【請求項31】
前記免疫グロブリン配列がドメイン抗体、「dAb」、単一ドメイン抗体もしくはナノボディ、またはこれらの任意の一種のフラグメントである、請求項28〜30のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【請求項32】
完全なヒト、ヒト化、ラクダ、ラクダ化ヒトまたはヒト化ラクダの配列である、請求項1〜31のいずれか一項に記載のアミノ酸配列。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含む化合物。
【請求項34】
前記化合物が少なくとも一種の治療成分をさらに含む、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
前記治療成分が、小分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはペプチドからなる群の少なくとも一種から選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
融合タンパク質またはコンストラクトである、請求項33〜35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
前記融合タンパク質またはコンストラクトにおいて、請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列が、少なくとも一種の治療成分に直接的に連結している、またはリンカーもしくはスペーサーを介して少なくとも一種の治療成分に連結している、または少なくとも一種の治療成分を取り込む、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
該治療成分が免疫グロブリン配列またはそのフラグメントを含む、請求項33〜37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
該治療成分が(単一)ドメイン抗体またはナノボディを含む、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
請求項1〜32のいずれかに記載の少なくとも一種のアミノ酸配列であるナノボディおよび少なくとも一種のさらなるナノボディを含む、多価および多特異的なナノボディコンストラクト。
【請求項41】
請求項1〜32のいずれかに記載の少なくとも一種のアミノ酸配列であるナノボディが、該少なくとも一種のさらなるナノボディに直接的に連結している、またはリンカーもしくはスペーサーを介して少なくとも一種のさらなるナノボディに連結している、請求項40に記載の多価および多特異的なナノボディコンストラクト。
【請求項42】
請求項1〜32のいずれかに記載の少なくとも一種のアミノ酸配列であるナノボディが、リンカーまたはスペーサーを介して該少なくとも一種のさらなるナノボディに連結しており、該リンカーがアミノ酸配列である、請求項41に記載の多価および多特異的なナノボディコンストラクト。
【請求項43】
請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列、または請求項33〜35のいずれかに記載の化合物のアミノ酸配列、または請求項40〜42のいずれかに記載の多価および多特異的なナノボディ、をコードするヌクレオチド配列または核酸。
【請求項44】
請求項43記載のヌクレオチド配列または核酸を含み、および/または請求項1〜21のいずれかに記載のアミノ酸配列、もしくは請求項22〜28のいずれか一項に記載の化合物のアミノ酸配列、もしくは請求項30〜32のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディを発現する(または発現できる)、宿主または宿主細胞。
【請求項45】
請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列、または請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物のアミノ酸配列、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディを調製するための方法であって、その方法が、前記宿主細胞が請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列、または請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物のアミノ酸配列、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディを産生もしくは発現する条件下で、請求項44に記載の宿主細胞を培養または維持する工程を含み、任意で、このようにして産生された請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列、または請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物のアミノ酸配列、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディを単離する工程をさらに含む、調製方法。
【請求項46】
前記医薬組成物は前記霊長類における前記血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%の間隔での霊長類への投与に適している、請求項1〜32のいずれかに記載のアミノ酸配列、請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディからなる群から選択される一種以上を含む医薬組成物。
【請求項47】
少なくとも一種の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記医薬品が前記霊長類における前記血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%の間隔で投与される、霊長類への投与のための医薬品の製造のための請求項1〜32のいずれか一項に記載のアミノ酸配列、請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディのいずれかの使用。
【請求項49】
該霊長類がヒトである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
該医薬品が少なくとも7日間の間隔で投与される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記投与が前記霊長類における前記血清タンパク質の自然半減期の少なくとも50%の頻度で起こる、処置を必要とする霊長類への、請求項1〜32のいずれか一項に記載のアミノ酸配列、または請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物、または請求項40〜42のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディのいずれかを投与する工程を含む、処置方法。
【請求項52】
該霊長類がヒトである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
該医薬品が少なくとも7日間の間隔で投与される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
該治療薬がアミノ酸配列、化合物、または多価および多特異的なナノボディに結合している、あるいはそうでなければ付随しているように、該治療薬を、請求項1〜32のいずれか一項に記載のアミノ酸配列、または請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物、または請求項40〜52のいずれか一項に記載の多価および多特異的なナノボディと接触させる工程を含む、治療薬の血清半減期を延長または増大する方法。
【請求項55】
該治療薬が生物学的治療薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
該生物学的治療薬がペプチドまたはポリペプチドであり、該治療薬を接触させる工程が、該ペプチドまたはポリペプチドを該アミノ酸配列、化合物、または多価および多特異的なナノボディと連結させることにより該融合タンパク質を調製する工程を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該治療薬が該アミノ酸配列、化合物、または多価および多特異的なナノボディに結合させ、あるいはそうでなければ付随させた後に霊長類へ該治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項54〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
該霊長類における該治療薬の血清半減期が、治療薬それ自体の半減期の少なくとも1.5倍である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
該霊長類における該治療薬の血清半減期が、治療薬それ自体の半減期と比較し、少なくとも1時間増大する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
血清タンパク質へのkoff速度をpH5〜8の範囲において測定した場合に+/−70%の範囲内であるアミノ酸配列。
【請求項61】
血清タンパク質へのkoff速度が+/−60%の範囲内である、請求項60に記載のアミノ酸配列。
【請求項62】
pH5.5〜4.5の範囲の値での血清タンパク質に対するkoff速度、すなわちpH6.5〜7.5の範囲における同じ血清タンパク質に対する該koff速度の20%〜180%、を有するアミノ酸配列。
【請求項63】
pH5.5〜4.5の範囲の値での血清タンパク質に対するkoff速度、すなわちpH6.5〜7.5の範囲における同じ血清タンパク質に対する該koff速度の40%〜160%、を有するアミノ酸配列。
【請求項64】
該アミノ酸配列がナノボディである、請求項60〜63のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項65】
該アミノ酸配列がdAbである、請求項60〜63のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項66】
該アミノ酸配列が前記血清タンパク質および少なくとも一種のタンパク質標的に結合する、請求項60〜65のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項67】
前記血清タンパク質がヒト血清アルブミンであり、前記アミノ酸配列が前記ヒト血清アルブミンおよび少なくとも一種のタンパク質標的に結合する、請求項60〜65のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項68】
インビボでの該半減期が、それが結合する該血清タンパク質の該インビボでの半減期の70%以上である、請求項60〜67のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項69】
インビボでの該半減期が、それが結合する該血清タンパク質の該インビボでの半減期の80%以上である、請求項60〜68のいずれかに記載のアミノ酸配列。
【請求項70】
インビボでの該半減期が、それが結合する該血清タンパク質の該インビボでの半減期の90%以上である、請求項60〜69のいずれかに記載のアミノ酸配列。

【図1】
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【図2】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505435(P2010−505435A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531850(P2009−531850)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060849
【国際公開番号】WO2008/043821
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(509104997)
【Fターム(参考)】