説明

材料組成物およびそれを用いた光学素子

【課題】本発明は、成形不良を生じず、高屈折率である材料組成物およびそれを用いた光学素子を提供することを目的とする。
【解決手段】化学式(1)で表される金属アルコキシド、その加水分解物、及び前記加水分解物の重合物から選ばれる少なくとも1種類からなる無機成分5〜50質量%と、重合性官能基を有する非シリコン系有機成分50〜99質量%と、重合開始剤0.05〜5質量%を含み、表面張力が45mN/m以下である材料組成物により、上記課題の解決を図る。
R1aR2bM(OR3)c ・・・ (1)
(R1及びR2は、同一あるいは異なる有機基であり、R3は炭素数1から6のアルキル基またはアリール基であり、Mは金属元素であり、a及びbはそれぞれ0〜2であり、金属元素Mは価数mであり、c=m−(a+b)である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を形成するのに適した光学用の材料組成物及びその硬化物を用いた光学素子に関するものであり、特に高屈折率であり、成形性に優れる材料組成物と前記材料組成物の硬化物からなる光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像モジュールが、銀塩フィルム用やデジタル用のカメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどに用いられている。この撮像モジュールなどに用いられる光学系では、小型軽量、低コスト化が大きな課題となっている。
【0003】
そこでこれらの光学系では、高屈折率の光学材料を多用するようになってきた。これは、高屈折率の光学材料を用いると、光学系全体の大きさや光学素子のそのものの大きさを小さくしやすいからである。このような高屈折率の光学材料として、無機化合物と有機化合物を用いた有機無機複合材料が多数提案されてきた。しかし、有機無機複合材料は無機化合物を含んでいることに起因する成形加工性の悪さに課題が残っていた。
【0004】
そこで、特許文献1では多官能モノマーと、単官能モノマーと、光重合開始剤及びインジウム錫酸化物微粒子とを含有す光硬化型樹脂組成物が開示されている。ここでは、多官能モノマーの含有量を20〜70wt%にする、あるいは単官能モノマーの含有量を15〜65wt%にする、さらには微粒子の導入量を15〜65質量%とする。これにより、樹脂組成物の粘度を約50,000mPa・s以下に制御することで実用上十分な成型性を確保している。
【0005】
また、特許文献2では、(メタ)アクリロイル基含有化合物、光重合開始剤および型離型性付与剤を含有している活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。ここでは、リン酸エステルと3級アミンの塩からなる型離型性付与剤を0.001〜5%含有する。これにより、型(とくに金型)からの離型性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−308792号公報
【特許文献2】特開2009−7567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2で示されるような樹脂組成物では、型に対する転写性や、型から離型のしやすさといった成形性については向上しているといえる。しかし、成形時の泡の巻き込みに関しては考慮されていない。したがって、成形時に金型表面と樹脂組成物が接触したときに泡が発生した場合、この泡が抜けず、泡を巻き込んだまま成形および硬化を行ってしまうことになる。その結果、成形不良が生じるという問題が発生する。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、成形不良を生じず、高屈折率である材料組成物およびそれを用いた光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る材料組成物は、化学式(1)で表される金属アルコキシド、その加水分解物、及び前記加水分解物の重合物から選ばれる少なくとも1種類からなる無機成分5質量%以上50質量%以下と、重合性官能基を有する非シリコン系有機成分50質量%以上99質量%以下と、重合開始剤0.05質量%以上5質量%以下を含み、表面張力が45mN/m以下である。
R1aR2bM(OR3)c ・・・ (1)
R1およびR2は、同一あるいは異なる有機基であって、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、シクロアルキル基、アシル基あるいはエポキシ基含有有機基である。R3は炭素数1から6のアルキル基またはアリール基である。MはAl、Bi、Ge、Hf、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。aおよびbはそれぞれ、0、1または2である。金属元素Mは価数mである。c=m−(a+b)である。
【0009】
また、前記材料組成物に、さらにポリオルガノシロキサン0.5質量%以上5質量%以下を含む材料組成物である。前記ポリオルガノシロキサンは、化学式(2)で表される材料組成物である。
【化1】

R4は、炭素数1以上10以下のアルキル基である。R5は、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基のいずれかである。dおよびeはそれぞれ、1以上の26以下の整数である。d+eは2以上30以下である。
【0010】
前記重合性官能基は、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、及びオキセタン基から選ばれる官能基の少なくとも1つである材料組成物である。
【0011】
前記無機成分の化学式(1)におけるMが、Bi、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種である材料組成物である。
また、本発明に係る光学素子は、前記材料組成物の硬化物からなる。
【0012】
前記光学素子は、少なくとも1つの光学基材の表面に前記材料組成物の硬化物を積層した複合型光学素子である。
前記光学素子は、2枚の同種あるいは異種の光学基材との中間に前記材料組成物の硬化物を積層した複合型光学素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形不良を生じず、高屈折率である材料組成物およびそれを用いた光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における光学素子の成形装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における複合型光学素子の実施例1の断面図である。
【図3】本発明の実施形態における複合型光学素子の製造装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態における材料組成物の展延状態を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態における複合型光学素子の実施例2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の材料組成物は、化学式(1)で表される金属アルコキシド、その加水分解物、あるいは前記加水分解物の重合物から選ばれる少なくとも1種類からなる無機成分と、重合性官能基を有し金属元素を含まない有機成分と、重合開始剤を含む材料組成物である。この材料組成物の表面張力は、45mN/m以下である。
R1aR2bM(OR3)c ・・・ (1)
【0016】
無機成分は、化学式(1)で表される金属アルコキシド、その加水分解物、あるいはその加水分解物の重合物である。
【0017】
R1およびR2は、同一あるいは異なる有機基で、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、シクロアルキル基、アシル基あるいはエポキシ基含有有機基である。具体例としてはメチル基、イソブチル基、トリフルオルメチル基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フェニル基、スチリル基、エポキシプロピル基、フェニル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基などがあげられる。好ましくはメチル基、エチル基、イソブチル基、フェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などをR1およびR2として挙げることができる。
【0018】
R3は、炭素数1から6のアルキル基またはアリール基である。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、フェニル基などをR3として挙げることができる。
【0019】
Mは、Al、Bi、Ge、Hf、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。
aおよびbは、0、1、または2である。金属元素Mの価数をmで表すと、c=m−(a+b)である。
【0020】
例えばMをZrとした場合、化学式(1)で表されるジルコニアアルコキシドの例としては、テトラメトキシジルコニア、テトラエトキシジルコニア、テトラプロポキシジルコニア、テトラブトキシジルコニア、メチルトリメトキシジルコニア、メチルトリエトキシジルコニア、メチルトリブトキシジルコニア、フェニルトリメトキシジルコニア、フェニルトリエトキシジルコニアなどがあげられる。
【0021】
例えばMをTiとした場合、化学式(1)で表されるチタンアルコキシドの例としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンメチルトリメトキシド、チタンメチルトリエトキシド、チタンメチルトリブトキシド、チタンフェニルトリメトキシド、チタンフェニルトリエトキシドなどがあげられる。
【0022】
それらの加水分解物は、上記アルコシキドを溶剤と酸あるいは塩基によって加水分解反応させることで得ることができる。そして、この加水分解物を脱水縮合反応させることで重合物を得ることができる。
【0023】
加水分解反応あるいは脱水縮合反応における溶剤の種類や量、反応触媒の種類や量、反応温度、時間を適宜調整することで、分子量や結晶性、密度は調整可能となる。
【0024】
選ばれる無機成分は、単独あるいは複数種類の混合物として用いることができる。このため、光学設計上で求められる屈折率や透明性などの光学特性に併せて、混合する無機成分の組成比を決めることができる。特に高屈折率の材料組成物を得る場合は、化学式(1)におけるMがBi、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。より好ましくはMがBi、Nb、Ti、Y、Zrでなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
無機成分の含有量は、酸化物換算で5質量%以上50質量%以下が好ましい。無機成分の含有量が5質量%以下では、無機成分を添加した効果が小さくなる。一方、無機成分の含有量が50質量%以上では、光散乱性が悪化したり、粘度が高くなりすぎて成形することが難しくなるなど問題が発生する。無機成分の含有量は、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0026】
重合性官能基を有する非シリコン系有機成分は、分子内に、Si元素を有してなくかつ重合してポリマーになることができる官能基を有しているモノマー、オリゴマーあるいは重合性ポリマーである。重合性官能基として、好ましくはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基から選ばれる官能基の少なくても1つである。硬化のしやすさ、化合物の選択の自由度からより好ましくはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基である。
【0027】
特に高屈折率の材料組成物を得る場合は、分子内に芳香環、ナフタレン環やアントラセン環などの縮合多環、カルバゾール環、フルオレン環を有するものが特に好ましい。
材料組成物の表面張力を45mN/m以下にするためには、水酸基やカルボキシル基などの親水性基が少なく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基などの疎水性基が多く有しているものが特に好ましい。
【0028】
有機成分の具体例としては、メタクリル酸、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルロールトリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−フェニルーフェニル(メタ)アクリレート、1−アクリロイルオキシ−4−メトキシナフタレンやなどの縮合多環(メタ)アクリレート、9−フルオレニルアクリレートや9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン環を有する(メタ)アクリレート、アリルカルバゾールなどのカルバゾール(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素化(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、3−エチル−3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンや3−エチル−3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンなどのオキセタン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、9−アントラセンカルボン酸ビニル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシナネートなどを挙げることができる。
【0029】
なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレートの少なくもといずれか一方を含むものを意味する。これらの化合物から一種、もしくは複数の成分を選択し、混合して用いてもよい。
【0030】
有機成分の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましい。有機成分の含有量が50質量%以下では、無機成分の含有量が高くなるので光散乱性が悪化したり、粘度が高くなりすぎて成形することが難しいなど問題が発生する。
【0031】
重合開始剤としては光重合開始剤あるいは熱重合開始剤があげられる。具体的には有機成分が(メタ)アクリレートの場合および無機成分の金属アルコキシドの有機基R1あるいはR2がビニル基、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基である場合は、光重合開始剤あるいは熱重合開始剤は次のようになる。
【0032】
熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスカルボアミド、イソプロピルヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビスヘキサンなどを挙げることができる。
【0033】
光重合開始剤としてはベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オンなどを挙げることができる。
【0034】
また有機成分の重合性官能基がエポキシ基あるいはオキセタニル基の場合は、触媒型硬化剤として芳香族系3級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸類などを挙げることができる。重付加型硬化剤としては、ポリアミン系硬化剤、変性ポリアミン系硬化剤、カルボン酸無水物系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、硫黄含有化合物系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ポリエステル系硬化剤などを挙げることができる。
【0035】
重合開始剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。なぜなら、重合開始剤の含有量が0.1質量%未満では、十分な硬化性を有する材料組成物が得られず硬化度の低い硬化物になってしまうからである。また、重合開始剤の含有量が5質量%を超えると、硬化物の透明性が低下したり、太陽光による黄変が大きくなるという問題が生じる。
【0036】
材料組成物の表面張力は45mN/m以下であることが好ましい。表面張力が小さいほど、泡を巻き込んだまま成形してしまうということがなくなるので、成形不良を抑える効果が高い。しかし、表面張力は、有機化合物の中で最も小さいものでもおよそ15mN/m程度となるので、本実施形態の材料組成物の表面張力の最低値もおよそ15mN/m程度が限界となる。表面張力を小さくするには、重合性官能基を有する有機成分のすべてを表面張力45mN/m以下のものから選択するか、あるいは2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素化(メタ)アクリレートなど表面張力が低い25mN/m以下のものを添加することで実現できる。
【0037】
あるいは、ジアルキルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン添加することで材料組成物の表面張力を下げることができる。ポリオルガノシロキサンは、材料組成物に、0.5質量%以上5質量%以下含まれるのが好ましい。ポリオルガノシロキサンの例としては、化学式(2)で表される鎖状ポリオルガノシロキサンをあげることができる。
【化2】

【0038】
R4は、炭素数1以上10以下のアルキル基である。R5は、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アクリロイル基またはメタクリロイル基のいずれかである。dおよびeはそれぞれ、1以上の26以下の整数である。d+eは、2以上30以下である。d+eが2より小さいと添加する効果が出ない。一方、d+eが30より大きくなると他の無機成分や有機成分との相溶性が低下し白濁する不具合がある。またR4あるいはR5の炭素数が大きすぎると表面張力を下げる能力が低下するので好ましくない。なお、R4は炭素数1のメチル基が表面張力を下げる能力が高いので好ましい。
【0039】
また、R5は、アリール基、アクリル基またはメタクリロイル基であり、他の無機成分や有機成分と共有結合を取ることができる。R5を適切にすることによって、表面張力を下げることができるばかりでなく、高温時や高湿時に硬化物表面にブリードアウトすることがないためより好ましい。
【0040】
本実施形態の光学用の材料組成物には、上記の成分の他に、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系あるいはベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン酸エステル系、あるいは硫黄系などの酸化防止剤を添加して耐久性を向上させることができる。
【0041】
図1は、本実施形態における光学素子を成形する成形装置の一例を示す図である。この光学素子は、本実施形態の材料組成物を重合させた硬化物のみから構成される両凹形状の光学素子である。光学素子成形装置1は、筒状の金属製胴型2、上型3、下型4、駆動ロッド5、離型筒6を備えている。
【0042】
上型3は、所望の光学面3aを有する金属製の上型である。下型4は、所望の光学面4aを有する紫外線を透過するガラスで構成されている。駆動ロッド5は、上型3を上下に駆動するために用いられる。離型筒6は、下型4から硬化した光学素子を離型するために用いられる。
【0043】
筒状の金属製胴型2には、注入口7と、排出口8が設けられている。注入口7は、材料組成物を注入するために用いられる、排出口8は、過剰の材料組成物を排出するために用いられる。駆動ロッド5は、図示しない駆動源によって、金属製胴型2内で上型3を上下に摺動する。また離型筒6は、金属製胴型2の内周面に接して上下に摺動する。上型3および下型4の各光学面と、金属製胴型2の内周面とで光学素子成形用の成形室9が形成されている。
【0044】
光学素子の成形は以下の手順で行う。金属製の上型3とガラス製の下型4を、光学面3a、4aが対向するように金属製胴型2内に載置する。この時、上型3を、駆動ロッド5によって第一段階の所定高さに保持する。この第一段階の所定高さは、上型3が排出口8より上部に位置する高さである。上型3をこの高さに保持することによって、成形室9を形成する。
【0045】
次に光重合開始剤を含有させた本実施形態の材料組成物を、注入口7より注入して成形室9内に充填していく。この時、成形室9内を負圧にしておくと、材料組成物の注入時における気泡の巻き込みや、成形室内の空気残りを防ぐことができる。また材料組成物を注入しやすい粘度になるように温度調整すると良い。排出口8から材料組成物があふれ出てきた時点で成形室9内が充填されたものと判断して、材料組成物の注入を停止する。
【0046】
注入口7を塞ぎ、上型3を下方に押圧して第二段階の高さにする。このとき、さらに過剰の材料組成物が排出口8から流出する。次に下型4の下方より、紫外線を照射し材料組成物を硬化させる。なお、紫外線照射装置は離型筒6の下方に配置されているが、図示を省略している。
【0047】
材料組成物の硬化に伴う収縮にあわせて、上型3を下方にゆっくりと移動させる。収縮に連動させて上型3を下降させることで、硬化後の光学素子の内部応力を低減できる。材料組成物が十分に硬化した後、駆動ロッド5を上昇させて上型3を離型させる。
【0048】
次に離型筒6を上に移動させて、下型4から硬化物を離型させる。このようにして材料組成物の硬化物を、所望の形状を有する光学素子として取り出すことができる。
なお、図1において、光学面3a、4aがいずれも球面であれば、光学素子として球面レンズを製造することができる。また、光学面3a、4aのいずれかあるいは両方が非球面であれば、光学素子として非球面レンズを製造することができる。また、光学面3a、4aのいずれかあるいは両方が回折面であれば、光学素子として回折レンズを製造できる。
【0049】
図2は、本実施形態における複合型光学素子の断面図である。複合型光学素子10は、光学基材11の表面に本実施形態の材料組成物13の硬化物が一体に形成されている。複合型光学素子10は、材料組成物13を光学基材11の表面に載置した状態で硬化させて、光学基材11と材料組成物13の硬化物とを積層させることによって製造することができる。この複合型光学素子10は、光学基材11と材料組成物13の硬化物の界面が、球面、非球面、自由曲面あるいは回折面である複合型光学素子となる。
【0050】
L1は、光学基材11のレンズ径を示す。L2は、材料組成物の口径を示す。L3は、光学基材11のレンズ厚さを示す。R1は、底面側の光学基材11の曲率半径を示す。R2は、上面側の光学基材11の曲率半径を示す。R3は、材料組成物の曲率半径を示す。
【0051】
複合型光学素子10に用いる光学基材11としては、通常の光学用ガラス、光学用樹脂あるいは透明セラミックスを用いることができる。光学基材11は、所望の形状に加工するときに欠け、表面変色、失透あるいは濁り等の問題が起きないもの(基材)であることは言うまでも無い。
【0052】
光学用ガラスとしては、石英、S−BSL7(OHARA)、BACD11(HOYA)、BAL42、LAH53(OHARA)等を挙げることができる。
光学用樹脂としては非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン)、ARTON(JSR)、アペル(三井化学)等、アクリル樹脂であるアクリペット(三菱レイヨン)、デルペット(旭化成)等を挙げることができる。
【0053】
図3は、本実施形態における複合型光学素子を成形する成形装置の一例を示す図である。光学基材の表面に本実施形態の材料組成物を塗布等の方法によって載置し、所望の形になるようにその上面に型を接触させる。この際に用いる型は、金属製でもガラス製でも良い。しかしながら、光学基材の反対面から紫外線を照射して前記材料組成物を硬化させる場合には、ガラス製の型を用いることとする。また、金属製の型を用いた場合は、光学基材の側から紫外線を照射して材料組成物を硬化させることとする。以下、複合型光学素子の製造方法について説明する。
【0054】
図3において、光軸39から左側は断面を示す。複合型光学素子の製造装置20は、支持枠(図示しない)、支持台21、受け部22および保持筒23を備えている。支持台21は、支持枠により支持されている。受け部22は筒状の形状であって、支持台21に取り付けられている。受け部22には、ベアリングを内蔵した軸受け24が設けられている。
【0055】
保持筒23は、この軸受24を介して受け部22に取り付けられている。保持筒23は、この軸受24の作用によって受け部22に対して回転自在になっている。また、保持筒23には、その内周上部に、光学基材11の外縁部を受ける環状の係合縁25が設けられている。また、保持筒23の下部には、プーリ26が一体に形成されている。
【0056】
一方、支持台21の下側には、モータ27が固定されている。モータ27の駆動軸28には、プーリ29が取り付けられている。そして、プーリ29とプーリ26の間にベルト30が巻き掛けられている。これらにより、保持筒23を回転する回転機構を構成している。
【0057】
なお、軸受24は、それぞれ押さえリング31,32によって固定されている。すなわち、押さえリング31は受け部22のねじ部22aに螺合している。また押さえリング32は、保持筒23のねじ部23aに螺合している。これにより、受け部22と保持筒23の間に、軸受24を固定することができる。
【0058】
また、支持台21の上方には、支持手段35が設けられている。支持手段35には、上部金型3を上下動して、上部金型3を所望の位置に支持する支持手段35の支持柱36が支持台21の上面に固定されている。支持柱36には、シリンダ37が設けられている。そして、シリンダ37には、シリンダロッド38が取り付けられている。さらに、シリンダロッド38の先端には、上部金型3が取り付けられている。
【0059】
また、保持筒23の係合縁25に光学基材11を載置した状態で、光学基材11の光軸39と上部金型3の軸が一致するように、上部金型3が支持されている。
以上に説明した複合型光学素子の製造装置を使用した複合型光学素子の製造方法を説明する。所望の光学特性を有するレンズからなる光学基材11を、保持筒23の係合縁25によって位置決めされるように載置する。なお、光学基材11の表面11aの材料組成物形成面には、材料組成物とガラス製の光学基材との密着性を向上させるためのカップリング処理を施しても良い。
【0060】
次いで、光学基材11の表面11aに、材料組成物12を吐出手段(図示しない)によって所要量を吐出する。この時、材料組成物を吐出しやすい粘度になるように温度調整しておくと良い。
【0061】
次に、シリンダ37を作動させて、上型3を下降させて、上型3の光学面3aを、光学基材11の表面11aに吐出された材料組成物12に当接させる。さらに下降を続けることで、材料組成物12は所定の形状に展延される。
【0062】
所定の形状まで展延する前に、上型3の下降を停止させる。この状態で、モータ27を作動させて保持筒23を回転させることによって、光学基材11を少なくとも1回転させる。
【0063】
図4は、材料組成物の展延状態を説明する図である。光学基材11の表面11aに載せられた材料組成物12に、光学基材11の光軸39と上型3の軸が一致するように上型3を押し当てて、光学基材11側を少なくとも1回転させる。このようにすることで、材料組成物12は光学基材11の表面11aと上型3との間の空間を均一に延びて材料組成物層が形成される。
【0064】
その後、再びシリンダ37を作動させて、再び上型3を下降させる。そして、材料組成物12の層が所望の厚みと直径に達して所定の形状となったところで、上型3の下降を停止する。その後、光学基材11の下側から紫外線照射装置(図示しない)にて紫外線を照射する。
【0065】
その結果、上型3と光学基材11の間にある材料組成物が硬化し、材料組成物の硬化生成物13を光学基材11の表面11aに一体に形成することができる。このとき、材料組成物13の硬化生成物の表面には、上型3の光学面3aが転写された光学面が形成される。そして、材料組成物13の硬化生成物の表面から上型3の光学面3aから硬化生成物を離型することにより、所望の形状を有する複合型光学素子を得ることができる。
【0066】
図5は、本実施形態における、2枚の同種あるいは異種の光学基材との中間に前記材料組成物の硬化物を積層した3層構造の複合型光学素子の断面図である。複合型光学素子40は、2枚の光学基材41、42の中間に、本実施形態に係る材料組成物43の硬化物が一体に形成されている。複合型光学素子40は、上記の材料組成物43を光学基材41の表面に載置した状態で光学基材42を積層し、材料組成物43を硬化させることによって製造することができる。
【0067】
3層構造の複合型光学素子に用いる光学基材としては、2層構造の複合型光学素子と同様な光学用ガラス、光学用樹脂あるいは透明セラミックスを用いることができる。
3層構造の複合型光学素子の製造方法は、2層構造の複合型光学素子と同様な装置を用いて同様な方法で作製できる。つまり、図3の複合型光学素子を成形する製造装置20において、上型3を光学基材42に置き換えることで2層構造の複合型光学素子10と同様な方法で作製できる。
【実施例】
【0068】
[材料組成物の処方実施例1]
無機成分としてテトラエトキシスズをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてSnO2と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)、N−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)およびイソボルニルメタクリレート(表1においてIBMと記載)を用いた。重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分酸化スズ換算での配合比率である。
【0069】
すべての成分を湿式ビーズミルを用いて均一に混合し、材料組成物13を得た。得られた材料組成物について、以下の方法で屈折率と表面張力を測定した。測定結果を表1に示した。
【0070】
(1)屈折率の測定
上記材料組成物のd線(波長587.5nm)における屈折率を精密屈折率計KPR−200(島津デバイス製造)を用いて測定した。測定環境は20℃60%RHであった。
【0071】
(2)表面張力
上記材料組成物の表面張力を表面張力測定器DCAT21(英弘精機)を用いて、ウイルフェルミ法によって測定した。測定環境は20℃60%RHであった。
【0072】
(複合型光学素子の実施例1)
図2に示すような形状の複合型光学素子10を作製した。
図2において、光学基材11はS−BSL7(OHARA製)ガラスレンズで曲率半径R1=16mm、曲率半径R2=16mm、L1=20mm、L3=5mmである。この基材上に曲率半径R3=26mm、口径L2=16mmとなるように、実施例1の材料組成物13を積層して複合型光学素子を作製した。
【0073】
(3)加工性の評価
作製した複合型光学素子において、材料組成物13の硬化物を顕微鏡にて観察した。硬化物中に直径50ミクロン以上の気泡あるいは欠けがない場合は「良好」、気泡あるいは欠けが存在した場合は「不良」と評価した。測定結果を表1に示した。
【0074】
[材料組成物の処方実施例2]
無機成分としてテトラエトキシチタンをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてTiO2と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)およびN−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)およびジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)を、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。ポリシロキサンとして化学式(3)で示されるもの(ポリジメチルシロキサン(表1においてPDMS))を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分は酸化チタン換算での配合比率である。配合方法は処方実施例1と同様である。
【0075】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
【化3】

【0076】
[材料組成物の処方実施例3]
無機成分としてニオブペンタエトキシドをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてNb25と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)、N−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)および2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(表1においてTFEMと記載)を用いた。重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分は酸化ニオブ換算での配合比率である。配合方法は処方実施例1と同様である。
【0077】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
【0078】
[材料組成物の処方実施例4]
無機成分としてジルコニアエトキシドをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてZrO2と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)、N−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)および1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(表1においてOFPMと記載)を用いた。重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分は酸化ジルコニア換算での配合比率である。配合方法は処方実施例1と同様である。
【0079】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
【0080】
[材料組成物の処方実施例5]
無機成分としてテトラエトキシチタンをゾルゲル法にてさせた重合物とニオブペンタエトキシドをゾルゲル法にてさせた重合物の質量比1:1の混合物を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)およびイソボルニルメタクリレート(表1においてIBMと記載)を用いた。重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。ポリシロキサンとして化学式(3)で示されるもの(ポリジメチルシロキサン(表1においてPDMS))を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分は酸化チタンおよび酸化ニオブ換算での配合比率である。
【0081】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
【0082】
[材料組成物の処方実施例6]
無機成分としてテトラエトキシチタンをゾルゲル法にてさせた重合物を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)と9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)とN−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)を用いた。ポリシロキサンとして化学式(4)で示されるもの(アクリル変形ポリシロキサン(表1においてACRS))を用いた。重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。各成分の配合比率を表1に示した。なお、無機成分は酸化ニオブ換算での配合比率である。配合方法は処方実施例1と同様である。
【0083】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
【化4】

【0084】
(複合型光学素子の実施例2)
図5に示すような形状の複合型光学素子40を作製した。図5において、基材41はS−BSL7(OHARA製)ガラスからなる両凹形状の非球面ガラスレンズで、近似曲率半径R11=8mm、近似曲率半径R12=38mm、L11=10mm、L12=3mmである。基材42はポリカーボネートからな凸メニスカス形状のプラスチック成形レンズで、近似曲率半径R13=6.4mm、近似曲率半径R14=16mm、L11=10mm、L13=2mmである。基材41と基材42の間に実施例1の材料組成物43を積層して複合型光学素子を作製した。
複合型光学素子の実施例1と同様に材料組成物43中に泡が入ることがなく成形できた。
【0085】
[材料組成物の処方比較例1]
無機成分として処方実施例1と同様なテトラエトキシスズをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてSnO2と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分としてN−ビニルカルバゾール(表1においてBCZと記載)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)およびビスフェノールAジメタクリレートEO6モル付加物(表1においてBP6EOと記載)を用いた。重合開始剤として処方実施例1と同様な2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。
【0086】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
表面張力が45mN/m以上あったため、材料組成物の硬化物中に直径800ミクロンの気泡が存在し、成形不良となった。
【0087】
[材料組成物の処方比較例2]
無機成分として処方実施例4と同様なジルコニアエトキシドをゾルゲル法にてさせた重合物(表1においてZrO2と記載)を用いた。重合性官能基を有する非シリコン系有機成分として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(表1においてBPEPAと記載)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(表1においてDMTCAと記載)およびビスフェノールAジメタクリレートEO6モル付加物(表1においてBP6EOと記載)を用いた。重合開始剤として処方実施例1と同様な2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(表1においてHMFPOと記載)を用いた。
【0088】
得られた材料組成物について、処方実施例1と同様の方法で屈折率と表面張力、加工性を評価した。測定結果を表1に示した。
表面張力が45mN/m以上あったため、材料組成物の硬化物中に直径600ミクロンの気泡が存在し、成形不良となった。
【表1】

【0089】
以上より本実施形態によれば、成形不良を生じず、高屈折率である材料組成物およびそれを用いた光学素子を得ることができる。
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 光学基材
2 金属製胴型
3 上型
4 下型
5 駆動ロッド
10 複合光学素子
11 光学基材
12 材料組成物
13 材料組成物
20 製造装置
39 光軸
40 複合光学素子
41 光学基材
42 光学基材
43 材料組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)で表される金属アルコキシド、その加水分解物、及び前記加水分解物の重合物から選ばれる少なくとも1種類からなる無機成分5質量%以上50質量%以下と、
重合性官能基を有する非シリコン系有機成分50質量%以上99質量%以下と、
重合開始剤0.05質量%以上5質量%以下を含み、
表面張力が45mN/m以下であることを特徴とする材料組成物。
R1aR2bM(OR3)c ・・・ (1)
(R1およびR2は、同一あるいは異なる有機基であって、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、シクロアルキル基、アシル基あるいはエポキシ基含有有機基であり、R3は炭素数1から6のアルキル基またはアリール基であり、MはAl、Bi、Ge、Hf、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、aおよびbはそれぞれ、0、1または2であり、金属元素Mは価数mであり、c=m−(a+b)である。)
【請求項2】
前記材料組成物は、さらに、ポリオルガノシロキサン0.5質量%以上5質量%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の材料組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンは化学式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載の材料組成物。
【化5】

(R4は炭素数1以上10以下のアルキル基であり、R5は炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アクリロイル基、またはメタクリロイル基のいずれかであり、dおよびeはそれぞれ、1以上の26以下の整数であり、d+eは2以上30以下である。)
【請求項4】
前記重合性官能基は、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、及びオキセタン基から選ばれる官能基の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の材料組成物。
【請求項5】
前記無機成分の化学式(1)におけるMは、Bi、La、Nb、Sn、Ta、Ti、Y、Zn、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の材料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の材料組成物の硬化物からなることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
前記光学素子は少なくとも1つの光学基材の表面に前記材料組成物の硬化物を積層した複合型光学素子であることを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記光学素子が2枚の同種あるいは異種の光学基材との中間に前記材料組成物の硬化物を積層した複合型光学素子であることを特徴とする請求項6に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−13601(P2011−13601A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159591(P2009−159591)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】