説明

杭圧入機及び杭圧入方法

【課題】精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することができる杭圧入機及び杭圧入方法を実現する。
【解決手段】地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭Pの上端側にクランプ装置11を介して設置された杭圧入機10の姿勢を、アウトリガー装置17によって既設の斜杭Pと同じ角度に維持した状態で、チャック装置15により新たな杭を地面に対して所定の角度をもって圧入することによって、複数の斜杭Pを連続的に埋設してなる、複数の斜杭Pが並んだ斜杭列を精度よく形成することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入機及びその杭圧入機を用いる杭圧入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込んで埋設する装置として、既設の杭から反力を取って杭を地中に圧入する杭圧入機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この杭圧入機は、装置本体と、装置本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ部と、装置本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック部とを備えている。
そして、クランプ部に既設杭の上端側を掴ませることで杭圧入機を既設杭の上端に設置するとともに、その既設杭から反力を取らせた状態で杭を把持するチャック部を降下させることによって、杭圧入機は杭を既設杭に並べて地中に圧入する。次いで、新たに埋設された既設杭をクランプ部で掴み、その新たな既設杭上に杭圧入機を移動させ設置する。
このような杭の圧入と杭圧入機の移動を繰り返すことで、複数の杭を連続的に埋設し、複数の杭が並んだ杭列を形成することが可能になっている。
【0003】
また、土留め壁等に使用される杭は、通常、地面に対して垂直に埋設されるが、地面に対して所定の角度をもって斜めに埋設される斜杭といわれるものが知られている。
【特許文献1】特開2004−11337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の杭圧入機は、地面に対して垂直に埋設された既設の杭を基準に複数の杭を地中に連続的に圧入して、地面に垂直な杭列を形成するものであって、連続的に複数の斜杭を地中に圧入して埋設する装置や工法は知られていない。
そのため、複数の斜杭を並べて埋設して斜杭列を形成する場合は、1本ずつ斜杭を地中に圧入することを繰り返さなければならなかった。
そして、1本ずつ斜杭を埋設してなる斜杭列では、その斜杭列における各斜杭間の間隔や角度にずれが生じてしまいやすいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することができる杭圧入機及び杭圧入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば、図1、図3に示すように、
地中に圧入された既設杭(例えば、斜杭P)の上端側を掴んで支持するクランプ装置(11)によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置(15)で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に隣接する位置に杭を圧入する杭圧入機(10)であって、
地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭(P)の上端側に前記クランプ装置を介して当該杭圧入機が設置された際に、当該杭圧入機の姿勢を所定の角度に支える姿勢制御手段(例えば、アウトリガー装置17)を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、杭圧入機は、複数並んだ既設杭の上を自走可能なことが好ましい。
例えば、杭圧入機は、杭の上端部を掴むクランプ装置を有する圧入機本体と、圧入機本体に対して相対的に水平方向に移動自在で、かつ、昇降自在なチャック装置とを備えることが好ましい。また、杭圧入機は、圧入機本体をクランプ装置で杭上に固定した状態で、チャック装置を前側に移動させてから下降させることにより、前側に前後に二本以上並べて杭を圧入できる構成とされることが好ましい。そして、例えば、2本目の杭を圧入している途中でチャック装置により圧入途中の杭を掴んだ状態のまま、クランプ装置による杭の上端部の把持を解除して、圧入機本体部を上昇させてから前方に移動させた後に再び下降させてクランプ装置により杭を把持させることで、杭圧入機が、連続的に杭を圧入していく際の先の方向(前方向)に移動可能となっていることが好ましい。
また、杭が隣接する位置とは、各杭が接触して隣り合う位置に配されて杭列が形成される状態であっても、各杭は接触しないものの極近くに隣り合う位置に配されて杭列が形成される状態であってもよい。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、杭圧入機は、地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭の上端側にクランプ装置を介して設置された場合、姿勢制御手段によって杭圧入機の姿勢を所定の角度に支えることができるので、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す姿勢を維持することができる。
そして、杭圧入機は、既設の斜杭の上端側に設置され、その斜杭と同じ角度の姿勢に維持された状態で、チャック装置によって新たな杭を既設の斜杭に隣接した位置に、地面に対して所定の角度をもって圧入することができるので、複数の斜杭を連続的に埋設してなる、複数の斜杭が並んだ斜杭列を形成することができる。
特に、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す既設の斜杭であって、杭圧入機が設置された斜杭を基準にするようにして、その斜杭に並べて新たな杭を所定の角度で地中に圧入することができるので、各斜杭間の間隔や角度を一定にして、精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の杭圧入機であって、例えば、図2に示すように、
前記斜杭の上端側に設置された当該杭圧入機の傾きを検出する傾斜検出手段(例えば、傾斜センサ20)を備え、
前記姿勢制御手段は、前記傾斜検出手段によって検出された当該杭圧入機の傾きに応じて、当該杭圧入機の姿勢を一定に維持することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、杭圧入機は、傾斜検出手段によって検出された杭圧入機の傾きに応じて、その杭圧入機の姿勢を一定に維持するように、姿勢制御手段によって支えられている。
つまり、杭圧入機が、既設の斜杭が地面と成す角度と同じ角度に傾いた姿勢を維持するように、姿勢制御手段が杭圧入機の姿勢を支えることができる。
よって、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す姿勢をより安定して維持することができ、より精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することが可能になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の杭圧入機であって、例えば、図2に示すように、
前記斜杭の上端側に設置された当該杭圧入機を支える前記姿勢制御手段に作用する荷重を検出する荷重検出手段(例えば、荷重センサ30)を備え、
前記姿勢制御手段は、前記荷重検出手段によって検出された前記姿勢制御手段に作用する荷重に応じて、当該杭圧入機の姿勢を一定に維持することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、杭圧入機は、荷重検出手段によって検出された姿勢制御手段に作用する杭圧入機などによる荷重に応じて、その杭圧入機の姿勢を一定に維持するように、姿勢制御手段によって支えられている。
つまり、杭圧入機が、既設の斜杭が地面と成す角度と同じ角度に傾いた姿勢を維持するように、姿勢制御手段が杭圧入機の姿勢を支えることができる。
よって、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す姿勢をより安定して維持することができ、より精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図1〜図3に示すように、
請求項1〜3の何れか一項に記載の杭圧入機(10)を用いて、杭を地中に圧入する杭圧入方法であって、
地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭(P)の上端側に前記クランプ装置(11)を介して設置された前記杭圧入機の姿勢を、前記姿勢制御手段(例えば、アウトリガー装置17)によって所定角度に維持した状態で、前記チャック装置(15)により新たな杭を地面に対して所定の角度をもって圧入することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭の上端側にクランプ装置を介して設置された杭圧入機の姿勢を、姿勢制御手段によって所定角度(例えば、既設の斜杭と同じ角度)に維持した状態で、チャック装置により新たな杭を地面に対して所定の角度をもって圧入することによって、複数の斜杭を連続的に埋設してなる、複数の斜杭が並んだ斜杭列を形成することができる。
特に、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す既設の斜杭であって、杭圧入機がその上端側に設置された斜杭を基準にするようにして、その既設の斜杭に並べて新たな杭を所定の角度で地中に圧入することができるので、その斜杭列における各斜杭間の間隔や角度を一定にして、精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、杭圧入機が、地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭の上端側にクランプ装置を介して設置された場合、姿勢制御手段によってその杭圧入機の姿勢を所定の角度に支えることができるので、杭圧入機は、地面に対して所定の角度を成す姿勢を維持することができる。そして、杭圧入機は、既設の斜杭の上端側に設置され、その斜杭と同じ角度の姿勢に維持された状態で、チャック装置によって新たな杭を既設の斜杭に隣接した位置に、地面に対して所定の角度をもって圧入することができるので、複数の斜杭を連続的に埋設してなる、複数の斜杭が並んだ斜杭列を形成することができる。
つまり、この杭圧入機を用いた杭圧入方法であれば、地面に対して所定の角度を成す既設の斜杭であって、杭圧入機がその上端側に設置された斜杭を基準にするようにして、その既設の斜杭に並べて新たな杭を所定の角度で地中に圧入することができるので、その斜杭列における各斜杭間の間隔や角度を一定にして、精度よく連続的に斜杭を地中に埋設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る杭圧入機及び杭圧入方法の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
杭圧入機10は、図1(a)、(b)に示すように、所定の杭(例えば、鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板など)を地中に圧入する圧入機であり、既に地中に圧入された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数(例えば、3つ)のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダマスト14と、リーダマスト14の前面に昇降可能に取り付けられるチャック装置15と、リーダマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16と、サドル12の一方の側面に取り付けられる姿勢制御手段としてのアウトリガー装置17等を備えている。
【0018】
クランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の杭である鋼管杭や鋼管矢板の上端部に挿入された状態で、図示しない油圧シリンダにより水平方向に広げられるようにしてその鋼管杭や鋼管矢板の内面を押圧して、既設杭(鋼管杭、鋼管矢板)の上端部を掴むことや、先に圧入された既設の杭である鋼矢板の上端部を挟持して掴むことによって、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に支持させる。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに杭を圧入することができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に設置するようになっている。
なお、クランプ装置11…は、例えば、先頭の基準となるクランプ装置11を除いて、サドル12に対して左右や前後に移動可能となっており、これにより円弧等の湾曲した線に沿って並んで圧入された複数の杭の上端を複数のクランプ装置11でそれぞれ掴むことが可能となっているとともに、杭列の各杭の間隔を多少変えても対応できるようになっている。
【0019】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動してチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭の先に、二本の杭を前後方向に並べて順次圧入可能となっている。
リーダマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回可能とされることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角にまげたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
これらスライドベース13とリーダマスト14とにより、圧入機本体のクランプ装置11…を備えたサドル12に対してチャック装置15を水平方向に移動可能となっている。
【0020】
チャック装置15は、その背面側がリーダマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダマスト14とチャック装置15に接続された左右のメイン油圧シリンダ16,16により昇降駆動されるようになっている。
また、チャック装置15の内部には、油圧シリンダの駆動により作動して、上下に貫通した状態の杭を外側の四方から押圧して把持する図示しない杭把持部が設けられている。
そして、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭を把持してチャック装置15を下降させることと、杭を離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、1ストローク分ずつ杭を圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭を地中に圧入することが可能になっている。
【0021】
なお、杭圧入機10は、順次杭を圧入する際に、新たに圧入した杭に対してクランプ装置11を備えるサドル12を移動させるようにして、杭の一本分に対応して前進することができる。この杭圧入機10の杭上の移動に関する動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0022】
アウトリガー装置17は、サドル12の側面に固定された基部171と、基部171の先端部171aに軸支された脚部172と、基部171に取り付けられ、脚部172を移動させる駆動を行う姿勢制御用油圧シリンダ173と、を備えている。
姿勢制御用油圧シリンダ173は、進退可能なロッド部173aを有しており、そのロッド部173aの先端は脚部172に連結されている。
この姿勢制御用油圧シリンダ173がロッド部173aを進退させることにより、基部171の先端部171aで脚部172を回動させるように、その脚部172の角度を切り替えて、脚部172を移動させるようになっている。
そして、アウトリガー装置17は、杭圧入機10の傾きなどに応じて、姿勢制御用油圧シリンダ173によって配置が切り替えられた脚部172を地面に当接させることで、杭圧入機10を支えて、杭圧入機10の姿勢を安定させる。
【0023】
また、杭圧入機10は、図2に示すように、杭圧入機10の各部(クランプ装置11、スライドベース13、リーダマスト14、チャック装置15、アウトリガー装置17等)を統括制御する制御部100と、杭圧入機10の傾きを検出する傾斜検出手段としての傾斜センサ20と、アウトリガー装置17に作用する荷重を検出する荷重検出手段としての荷重センサ30と、を備えている。
【0024】
傾斜センサ20は、例えば、杭圧入機10のサドル12の内部に備えられており、杭圧入機10の姿勢である傾き(角度)を検出し、検出した傾斜データを制御部100に出力する。
なお、傾斜センサ20は、例えば、地面に対して垂直に埋設された既設杭上に杭圧入機10が設置された場合など、杭圧入機10が地面に対して垂直な姿勢であって、重力方向に沿った姿勢をとる状態を標準姿勢「0°」とし、その標準姿勢から左右に傾いた角度(傾斜データ)を検出する。
【0025】
荷重センサ30は、例えば、アウトリガー装置17の脚部172に備えられており、杭圧入機10を支えるアウトリガー装置17に作用する荷重を検出し、検出した荷重データを制御部100に出力する。
なお、荷重センサ30は、例えば、傾いた姿勢の杭圧入機10を支えるアウトリガー装置17(脚部172)にかかる杭圧入機10の自重などの荷重や負荷に対応する圧力(荷重データ)を検出する。
【0026】
制御部100は、所定の制御プログラムに従って杭圧入機10の各部に対して各種処理や制御を実行するCPUと、各種の処理及び制御を実行するためのプログラムや、その処理や制御に要するデータが格納されたROMと、各種データを格納するとともに各種処理の作業領域となるRAM等を備えている。
そして、制御部100が所定の制御プログラムを実行することによって、杭圧入機10の各部がそれぞれ駆動され、杭圧入機10は杭圧入に関する動作を実行する。
【0027】
特に、制御部100は、傾斜センサ20が検出した、傾斜した姿勢の杭圧入機10の傾き(角度)に応じて、その杭圧入機10の姿勢を一定に維持するように、アウトリガー装置17の姿勢制御用油圧シリンダ173を動作させて、脚部172を好適な配置に切り替える制御を実行する。
また、制御部100は、荷重センサ30が検出した、杭圧入機10を支えるアウトリガー装置17に作用する圧力(荷重)に応じて、その杭圧入機10の姿勢を一定に維持するように、アウトリガー装置17の姿勢制御用油圧シリンダ173を動作させて、脚部172を好適な配置に切り替える制御を実行する。
【0028】
なお、杭圧入機10の制御部100は、杭圧入の施工に関し、予め入力された杭圧入機10本体の自重、杭の質量や長さ、杭を地中に圧入する角度や深さ、埋設された杭における地上に露出する部分の長さ等の各種データに基づき、傾斜した姿勢の杭圧入機10に作用する転倒モーメント(側方傾倒モーメント)を算出するなどして取得し、その転倒モーメントを打ち消すようにアウトリガー装置17が杭圧入機10を支える状態とするため、アウトリガー装置17の姿勢制御用油圧シリンダ173を動作させ、脚部172の配置を切り替える制御を実行する。
【0029】
次に、本発明に係る杭圧入方法であって、斜杭列を形成する杭圧入方法について説明する。
【0030】
まず、施工箇所における所定の位置に、地面に対して所定の角度を成すように杭を圧入して、地面に対して所定の角度をもって埋設されてなる既設の斜杭Pを、基準となる既設杭として施す。
なお、基準となる斜杭Pは、例えば、地面に設置した所定の架台に、所定の角度をもって斜めに配設した杭圧入機によって、杭を地中に斜めに圧入することにより施すことができる。
【0031】
次いで、基準の杭として埋設された既設杭である斜杭Pの上端部に、クランプ装置11を介して杭圧入機10を設置する。
ここで、この既設の斜杭Pの上端部に設置される杭圧入機10に対して、杭圧入機10本体の自重、杭の質量、杭を地中に圧入する角度など、斜杭の施工に関する様々なデータを、予め入力部(図示省略)を介して入力し、その各種データを制御部100に設定することによって、アウトリガー装置17の姿勢制御用油圧シリンダ173が動作し、斜杭Pの上端部に設置された杭圧入機10であって、傾斜した姿勢の杭圧入機10をアウトリガー装置17が好適に支えるための配置に脚部172が移動されて切り替えられている。
そして、既設の斜杭Pの上端部に設置された杭圧入機10は、図3に示すように、その斜杭Pが地面と成す角度と同じ角度に傾いた姿勢となっており、アウトリガー装置17が傾いた杭圧入機10の姿勢を一定に維持するように支えている。
【0032】
次いで、クレーンなどによって吊り込んで搬入した所定の杭を、杭圧入機10のチャック装置15に供給する。チャック装置15は、供給された杭を把持するとともに、その杭を地面に対して所定の角度をもって圧入する。
ここで、杭圧入機10は、既設の斜杭Pの上端部に、その斜杭Pが地面と成す角度と同じ角度に傾いた姿勢で設置されているので、既設の斜杭Pと同じ角度で、その斜杭Pに隣接した位置に新たな杭を並べて圧入して埋設することができる。
そして、杭圧入機10は、新たな斜杭Pが埋設される度に、その斜杭列をなす斜杭P上を前進し、次の杭を既設の斜杭Pに並べて地中に圧入する。
【0033】
なお、杭圧入機10が斜杭Pの上端部に設置されて杭の圧入を行っている際に、傾斜センサ20が杭圧入機10の傾斜の角度を検出することで、杭圧入機10の姿勢を監視している。また、杭圧入機10が斜杭Pの上端部に設置されて杭の圧入を行っている際に、荷重センサ30が杭圧入機10を支えるアウトリガー装置17に作用する圧力(荷重)を検出することで、杭圧入機10の状態を監視している。
つまり、傾斜センサ20や荷重センサ30は、斜杭Pの上端部に設置された杭圧入機10による杭の圧入作業中であって、チャック装置15が供給された杭を把持する際や、杭を把持したチャック装置15が下降して杭を圧入する際や、杭を離したチャック装置15が上昇する際や、杭圧入機10が斜杭列をなす斜杭P上を移動する際など、常に杭圧入機10の姿勢や状態の監視を行っている。
そして、傾斜センサ20が検出した杭圧入機10の傾き(角度)や、荷重センサ30が検出した杭圧入機10を支えるアウトリガー装置17に作用する圧力(荷重)に応じて、姿勢制御用油圧シリンダ173が駆動して脚部172の配置を調整することによって、アウトリガー装置17は、杭圧入機10の姿勢を一定に維持するように支える。
【0034】
このように、本発明に係る杭圧入機10は、地面に対して所定の角度を成す斜杭Pの上端部に設置された際に、その杭圧入機10の傾斜した姿勢を安定させるようにアウトリガー装置17によって支えることができるので、杭圧入機10は、地面に対して所定の角度を成す姿勢を維持することができる。
特に、杭圧入機10は、傾斜センサ20や荷重センサ30によって、杭圧入作業中の杭圧入機10の姿勢などを常時監視することにより、その杭圧入機10の姿勢を一定に維持するようにアウトリガー装置17を制御しているので、杭圧入機10は、その傾斜した姿勢をより安定した状態で維持することができる。
【0035】
そして、杭圧入機10は、既設の斜杭Pの上端部に設置され、その斜杭Pと同じ角度の姿勢に維持された状態で、チャック装置15によって新たな杭を既設の斜杭Pに隣接した位置に、地面に対して所定の角度をもって圧入することができるので、複数の斜杭Pを連続的に埋設してなる、複数の斜杭Pが並んだ斜杭列を形成することができる。
特に、杭圧入機10は、地面に対して所定の角度を成す既設の斜杭Pを基準にして、その既設の斜杭Pに並べて新たな杭を所定の角度で地中に圧入することができるので、この杭圧入機10を用いた杭圧入方法によって、その斜杭列における各斜杭P間の間隔や角度を一定にして、精度よく連続的に斜杭Pを地中に埋設することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4に示すように、杭圧入機10aの側面に2つのアウトリガー装置17を備えるようにしてもよい。
杭圧入機10aの側面に2つのアウトリガー装置17を備えることによって、傾斜した姿勢の杭圧入機10aを、より安定した状態で支えることが可能になる。
【0037】
なお、以上の実施の形態においては、杭圧入機は、1つ又は2つのアウトリガー装置17を備える構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、杭圧入機は、3つ以上のアウトリガー装置17を備えるようにしてもよい。
また、以上の実施の形態においては、杭圧入機の一方の側面にアウトリガー装置17を備える構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、杭圧入機の両側面にアウトリガー装置17を備えるようにしてもよい。
【0038】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る杭圧入機を示す正面図(a)と、側面図(b)である。
【図2】本発明に係る杭圧入機の制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る杭圧入機が斜杭の上端に設置された状態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る杭圧入機の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 杭圧入機
11 クランプ装置
12 サドル
13 スライドベース
14 リーダマスト
15 チャック装置
16 メイン油圧シリンダ
17 アウトリガー装置(姿勢制御手段)
171 基部
171a 先端部
172 脚部
173 姿勢制御用油圧シリンダ
173a ロッド部
20 傾斜センサ(傾斜検出手段)
30 荷重センサ(荷重検出手段)
100 制御部
P 既設杭(斜杭)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に圧入された既設杭の上端側を掴んで支持するクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に隣接する位置に杭を圧入する杭圧入機であって、
地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭の上端側に前記クランプ装置を介して当該杭圧入機が設置された際に、当該杭圧入機の姿勢を所定の角度に支える姿勢制御手段を備えることを特徴とする杭圧入機。
【請求項2】
前記斜杭の上端側に設置された当該杭圧入機の傾きを検出する傾斜検出手段を備え、
前記姿勢制御手段は、前記傾斜検出手段によって検出された当該杭圧入機の傾きに応じて、当該杭圧入機の姿勢を一定に維持することを特徴とする請求項1に記載の杭圧入機。
【請求項3】
前記斜杭の上端側に設置された当該杭圧入機を支える前記姿勢制御手段に作用する荷重を検出する荷重検出手段を備え、
前記姿勢制御手段は、前記荷重検出手段によって検出された前記姿勢制御手段に作用する荷重に応じて、当該杭圧入機の姿勢を一定に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載の杭圧入機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の杭圧入機を用いて、杭を地中に圧入する杭圧入方法であって、
地面に対して所定の角度をもって埋設された既設の斜杭の上端側に前記クランプ装置を介して設置された前記杭圧入機の姿勢を、前記姿勢制御手段によって所定角度に維持した状態で、前記チャック装置により新たな杭を地面に対して所定の角度をもって圧入することを特徴とする杭圧入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−19610(P2008−19610A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191718(P2006−191718)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】