杭基礎の改良体とその構築工法
【課題】 本発明は、杭基礎の改良体に関し、従来の杭基礎の改良体のコスト低減と工期の短縮を図り、更に、改良体の設置自由度を増すようにすることが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】 軟弱な表層地盤5の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体3において、前記改良体3は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭2の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体3と非連続的に形成されている杭基礎の改良体3とするものである。
【解決手段】 軟弱な表層地盤5の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体3において、前記改良体3は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭2の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体3と非連続的に形成されている杭基礎の改良体3とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎において杭を囲む軟弱な地盤を改良する工法で、更に施工性を良くしてコストの嵩まない改良体とその構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱な表層地盤の下方に支持地盤がある地盤において、杭基礎の水平剛性を高めたものとして、図8に示すように、前記支持層に先端部が支持された支持杭21が配設され、地盤に配設された支持杭21の通り芯に沿った表層地盤に、セメント系固化材を混合した高剛性な浅層改良体22が設けられたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記浅層改良体は、格子状に配設された改良体による改良工法を効率的に行うようにしている。前記支持杭21を、表層地盤の下の支持層に杭先端部を支持させるようにして打設する。該支持杭21の通り芯に沿って格子状の浅層改良体22を浅層混合処理工法で形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の杭基礎の浅層改良体とその構築工法においては、隣接する杭21同士のスパンが長いと、改良体22を連続的に施工するにはコストが嵩み、施工の工期も長くなる。また、深層改良体の場合は、多軸(3軸または5軸)オーガでのSMW工法(Soil Mixing Wall) において、隣接の穿孔をセミラップさせる場合などでは、連続する部分を2日間に亘って施工する必要があって工期が長期化するものである。更に、軟弱地盤の水平抵抗力を改良させる際の設置状況に応じた改良体の配置の自由度も低いものである。本発明に係る杭基礎の改良体とその構築工法は、このような課題を解決するとともに杭の水平抵抗の改良効果を従来よりも低下させないようにするために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る杭基礎の改良体の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、軟弱な表層地盤の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体において、前記改良体は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体と非連続的に形成されていることである。
【0007】
前記改良体で深層改良する場合には、単軸若しくは多軸の掘削機で表層地盤を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体が形成されていること、;
十字状の改良体の長さ:(2B)を、支持杭間のスパン:(L)に対して、浅層改良の場合には30%≦(2B/L)×100≦55%にすること、若しくは、深層改良の場合には16%≦(2B/L)×100≦80%にすることを含むものである。
【0008】
本発明に係る改良体の構築工法における上記課題を解決して目的を達成する要旨は、支持杭の頭部に十字状の上記の改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、前記支持杭を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭の対角線と前記改良体の張出し部の軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体を形成し、隣接の改良体同士が非連続になるように配設したことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の杭基礎の改良体とその改良体を用いた構築工法によれば、改良体を隣接するものに連続させないので、表層地盤の水平変位は連続させた改良体に対しては減少するものの、改良長さの減少の割には表層地盤の水平変位の減少の割合が大きい。よって、改良長さ当たりの改良効果が大きく、それにより改良体を形成する材料費が低減され及び工期が短縮されてコストダウンとなる。
改良体を単軸もしくは多軸のオーガで連続壁に形成する場合、隣接させる連続壁とラップさせて格子状にしないので、効率的な施工が可能となる。
十字状の改良体を、各支持杭毎に形成するので、例えば、図7−B(a)に示すように、支持杭の通り芯a方向にこだわることなく施工が可能となり、軟弱地盤の改良状況に応じて、改良体の配置の自由度が高まる。例えば、改良体3,4を支持杭2,2の対角線b方向に沿って前記改良体の張出し部3a,4aの軸芯とが略平行になるように配設することで、この対角線b方向のせん断力に抵抗することになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る浅層の地盤改良の場合における、杭基礎の改良体の概略斜視図である。
【図2】同本発明に係る杭基礎の改良体の浅層地盤モデルに一定の水平力を加えた場合の境界条件及び解析用斜視図(a),その平面図(b),その立面図(c)である。
【図3】浅層の改良体3による変位低減効果とコストダウン効果とを示した特性図(a)、曲げ低減効果とその曲げのコストダウン効果とを示した特性図(b)である。
【図4】同本発明に係る深層の地盤改良の場合における、杭基礎の改良体の概略斜視図である。
【図5】同本発明に係る杭基礎の改良体の深層地盤モデルに一定の水平力を加えた場合の境界条件及び解析用斜視図(a),その平面図(b),その立面図(c)である。
【図6】深層の改良体4による変位低減効果とコストダウン効果とを示した特性図(a)、曲げ低減効果とその曲げのコストダウン効果とを示した特性図(b)である。
【図7−A】本発明の改良体3,4におけるスパンLが縦,横で異なっていて正方形でない場合の配置を示す平面図である。
【図7−B】本発明の改良体3,4を、その張出し部3a,4aの軸芯が対角線上に平行に配置した場合の平面図(a)と、支持杭の通り芯aに沿って配置した場合の平面図(b)とである。
【図8】従来例に係る杭基礎の改良体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る杭基礎の改良体と改良体の構築工法は、図1に示すように、軟弱地盤の改良に当たり、各支持杭の頭部に表層地盤にセメント系固化材を混合した高剛性な十字状の改良体を設けて、当該改良体の材料費の削減と施工の工期短縮を図ると共に、併せて改良体の配置の自由度を高めるものである。
【実施例1】
【0012】
本発明に係る杭基礎1の改良体3について説明する。図1に示すように、軟弱な表層地盤5の下方における支持層に先端部が支持された支持杭2が配設され、前記表層地盤5における前記支持杭2の通り芯に沿って形成される、表層地盤にセメント系固化材を混合した高剛性な改良体3において、前記改良体3は、支持杭2,2…毎に個別に設けられ、支持杭2の頭部から水平方向に所要深さで十字状に張り出してバットレス状にし、隣接の改良体3と非連続的に形成されている。
【0013】
前記十字状の改良体3は、浅層改良の場合のものである。該改良体3の大きさは、バットレス長さBが、4.05m,2.25m,1.2m,0.6m及び0mの5ポイントを解析用に用意し、幅Wが1.2m(幅Wが杭径の2倍以上)、深さHが0.9m(深さHは杭径の2倍かつ2m以内、50cm以上)である。解析的検討のモデルは図2に示すように、支持杭2は、その杭径が0.6m(杭径は主として0.3m〜1.2m)で、杭長さが10mであり、杭定数としてヤング係数が4×107 kN/m2、中実断面である。支持杭2,2間のスパンLは9mである。また、軟弱な表層地盤5の剛性は5MN/m2で、浅層の改良体3の剛性は80MN/m2(改良体の剛性は表層地盤の10倍以上の剛性)である。
【0014】
上記のような条件で、杭頭に水平力として荷重100kNを加える。3次元有限要素法(FEM)による解析結果を、図3(a),(b)に示す。横軸は、改良体3の改良長であるバットレス長さBの2倍がスパンLに占める割合(%)であり、縦軸は、上記バットレス長さBの5ポイントにおける、変位低減効果、変位低減におけるコストダウン効果、曲げ低減効果、曲げ低減におけるコストダウン効果を表したものである。
【0015】
例えば、図3(a)に示すように、バットレス長さBを4.05mとすると、(2B/L)は90%であり、そのときの変位低減効果は80%程度となり、90%よりも低く、下図のコストダウン効果もマイナスになっていて、手間が掛かる割には材料費の低減効果が発揮されず、効率的な効果を上げていない。
【0016】
次に、改良体3のバットレス長さBを2.25mにすると、(2B/L)は50%であり、そのときの変位低減効果は60%以上となり、50%よりも遙かに高く、下図のコストダウン効果も10%以上になっている。よって、バットレス長さBを短くした割には、水平抵抗力が強く、コストダウンも図れているものである。
【0017】
このようにして考察すると、図3(b)に示す曲げの場合の効果も参酌して、低減効果が50%以上でコストダウン効果が10%以上となるような範囲を条件とすると、バットレス長さBは、30%≦(2B/L)×100≦55%にすることが最も好ましいものである。
【0018】
また、図4に示すように、十字状の改良体4で深層改良する場合には、多軸(図示の場合は5軸の場合を示す)の掘削機で表層地盤5を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体4が形成される。3軸や5軸のオーガを使用すれば、一つの改良体4を一度に穿孔することができて、隣接の改良体4にセミラップさせる必要がないので、工期短縮される。
【0019】
解析的検討のモデルは、図5に示すように、前記改良体4の大きさは、孔径が600mm(施工径は550〜900mm)、深さHが5m(深さHは3m以上で10m以内)、支持杭2は前記と同様。支持杭2,2間のスパンLは9mである。また、軟弱な表層地盤5の剛性は、5MN/m2で、深層の改良体4の剛性は350MN/m2(改良体の剛性は100MN/m2以上)である。
【0020】
前記改良体4に前述と同様に杭頭に水平力として荷重100kNを加える。深層改良体の解析において、改良体が杭を押す影響を考慮した、通常の単杭の境界とは相違した研究成果を踏まえた図4に示す境界条件を用いている。解析結果は図6(a),(b)に示すようになる。変位について検討すると、低減効果が50%以上でコストダウン効果が5%以上となるような範囲を条件とすると、バットレス長さBは、16%≦(2B/L)×100≦80%にすることが最も好ましいものである。これに、杭に生じる曲げモーメントも同様なコストダウンと変位低減効果を参酌すると、バットレス長さBは、38%≦(2B/L)×100≦50%にすることが最も好ましいものとなる。
【0021】
一連の解析結果はスパンLが9mのケースであるが、スパンLが6m〜10mでも同様な結果となる。スパンLは一連の説明では正方形スパンLを用いたが、図7−Aに示すように、構造物の形状に対応させた結果、改良体の張出し部の長さが異なる場合における、横L1、縦L2でも同様に、2B1/L1,2B2/L2により、上記と同様な結果となる。
【0022】
前記改良体3,4において、変位低減効果やコストダウンの効果を参酌して、バットレス長さBを技術的に最も好ましい範囲として、浅層の場合と深層の場合の当該バットレス長さBを技術的に範囲限定するものである。
【0023】
また、本発明の改良体3,4は、隣接の改良体と連続していないので、設置回転角度が自由になり、例えば、図7−B(a)に示すように、支持杭の頭部に十字状の張出し部3a,4aでなる改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して、杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、前記支持杭2を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭2の対角線bと前記改良体の張出し部3a,4aの軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体3,4を形成し配設することができる。これにより、軟弱な表層地盤5の水平抵抗力を増強したい方向が、格子状に配設された支持杭2の対角線b上にあるような場合に、主せん断面に抵抗するように配置することができるなど、図7−B(b)に示す格子状配置ばかりでなく、設計自由度が高まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の杭基礎の改良体と改良体の構築工法は、コスト低減と工期短縮の効率的な施工を求める地盤改良工事に適している。また、改良体の自由度が大きいので、複雑な地形の軟弱地盤にも適した工法である。
【符号の説明】
【0025】
1 杭基礎、
2 支持杭、
3 浅層の改良体、 3a 張出し部、
4 深層の改良体、 4a 張出し部、
5 軟弱な表層地盤、
21 支持杭、
22 浅層改良体、
B バットレス長さ、
W 幅、
H 深さ、
a 通り芯、
b 対角線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎において杭を囲む軟弱な地盤を改良する工法で、更に施工性を良くしてコストの嵩まない改良体とその構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱な表層地盤の下方に支持地盤がある地盤において、杭基礎の水平剛性を高めたものとして、図8に示すように、前記支持層に先端部が支持された支持杭21が配設され、地盤に配設された支持杭21の通り芯に沿った表層地盤に、セメント系固化材を混合した高剛性な浅層改良体22が設けられたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記浅層改良体は、格子状に配設された改良体による改良工法を効率的に行うようにしている。前記支持杭21を、表層地盤の下の支持層に杭先端部を支持させるようにして打設する。該支持杭21の通り芯に沿って格子状の浅層改良体22を浅層混合処理工法で形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の杭基礎の浅層改良体とその構築工法においては、隣接する杭21同士のスパンが長いと、改良体22を連続的に施工するにはコストが嵩み、施工の工期も長くなる。また、深層改良体の場合は、多軸(3軸または5軸)オーガでのSMW工法(Soil Mixing Wall) において、隣接の穿孔をセミラップさせる場合などでは、連続する部分を2日間に亘って施工する必要があって工期が長期化するものである。更に、軟弱地盤の水平抵抗力を改良させる際の設置状況に応じた改良体の配置の自由度も低いものである。本発明に係る杭基礎の改良体とその構築工法は、このような課題を解決するとともに杭の水平抵抗の改良効果を従来よりも低下させないようにするために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る杭基礎の改良体の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、軟弱な表層地盤の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体において、前記改良体は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体と非連続的に形成されていることである。
【0007】
前記改良体で深層改良する場合には、単軸若しくは多軸の掘削機で表層地盤を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体が形成されていること、;
十字状の改良体の長さ:(2B)を、支持杭間のスパン:(L)に対して、浅層改良の場合には30%≦(2B/L)×100≦55%にすること、若しくは、深層改良の場合には16%≦(2B/L)×100≦80%にすることを含むものである。
【0008】
本発明に係る改良体の構築工法における上記課題を解決して目的を達成する要旨は、支持杭の頭部に十字状の上記の改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、前記支持杭を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭の対角線と前記改良体の張出し部の軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体を形成し、隣接の改良体同士が非連続になるように配設したことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の杭基礎の改良体とその改良体を用いた構築工法によれば、改良体を隣接するものに連続させないので、表層地盤の水平変位は連続させた改良体に対しては減少するものの、改良長さの減少の割には表層地盤の水平変位の減少の割合が大きい。よって、改良長さ当たりの改良効果が大きく、それにより改良体を形成する材料費が低減され及び工期が短縮されてコストダウンとなる。
改良体を単軸もしくは多軸のオーガで連続壁に形成する場合、隣接させる連続壁とラップさせて格子状にしないので、効率的な施工が可能となる。
十字状の改良体を、各支持杭毎に形成するので、例えば、図7−B(a)に示すように、支持杭の通り芯a方向にこだわることなく施工が可能となり、軟弱地盤の改良状況に応じて、改良体の配置の自由度が高まる。例えば、改良体3,4を支持杭2,2の対角線b方向に沿って前記改良体の張出し部3a,4aの軸芯とが略平行になるように配設することで、この対角線b方向のせん断力に抵抗することになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る浅層の地盤改良の場合における、杭基礎の改良体の概略斜視図である。
【図2】同本発明に係る杭基礎の改良体の浅層地盤モデルに一定の水平力を加えた場合の境界条件及び解析用斜視図(a),その平面図(b),その立面図(c)である。
【図3】浅層の改良体3による変位低減効果とコストダウン効果とを示した特性図(a)、曲げ低減効果とその曲げのコストダウン効果とを示した特性図(b)である。
【図4】同本発明に係る深層の地盤改良の場合における、杭基礎の改良体の概略斜視図である。
【図5】同本発明に係る杭基礎の改良体の深層地盤モデルに一定の水平力を加えた場合の境界条件及び解析用斜視図(a),その平面図(b),その立面図(c)である。
【図6】深層の改良体4による変位低減効果とコストダウン効果とを示した特性図(a)、曲げ低減効果とその曲げのコストダウン効果とを示した特性図(b)である。
【図7−A】本発明の改良体3,4におけるスパンLが縦,横で異なっていて正方形でない場合の配置を示す平面図である。
【図7−B】本発明の改良体3,4を、その張出し部3a,4aの軸芯が対角線上に平行に配置した場合の平面図(a)と、支持杭の通り芯aに沿って配置した場合の平面図(b)とである。
【図8】従来例に係る杭基礎の改良体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る杭基礎の改良体と改良体の構築工法は、図1に示すように、軟弱地盤の改良に当たり、各支持杭の頭部に表層地盤にセメント系固化材を混合した高剛性な十字状の改良体を設けて、当該改良体の材料費の削減と施工の工期短縮を図ると共に、併せて改良体の配置の自由度を高めるものである。
【実施例1】
【0012】
本発明に係る杭基礎1の改良体3について説明する。図1に示すように、軟弱な表層地盤5の下方における支持層に先端部が支持された支持杭2が配設され、前記表層地盤5における前記支持杭2の通り芯に沿って形成される、表層地盤にセメント系固化材を混合した高剛性な改良体3において、前記改良体3は、支持杭2,2…毎に個別に設けられ、支持杭2の頭部から水平方向に所要深さで十字状に張り出してバットレス状にし、隣接の改良体3と非連続的に形成されている。
【0013】
前記十字状の改良体3は、浅層改良の場合のものである。該改良体3の大きさは、バットレス長さBが、4.05m,2.25m,1.2m,0.6m及び0mの5ポイントを解析用に用意し、幅Wが1.2m(幅Wが杭径の2倍以上)、深さHが0.9m(深さHは杭径の2倍かつ2m以内、50cm以上)である。解析的検討のモデルは図2に示すように、支持杭2は、その杭径が0.6m(杭径は主として0.3m〜1.2m)で、杭長さが10mであり、杭定数としてヤング係数が4×107 kN/m2、中実断面である。支持杭2,2間のスパンLは9mである。また、軟弱な表層地盤5の剛性は5MN/m2で、浅層の改良体3の剛性は80MN/m2(改良体の剛性は表層地盤の10倍以上の剛性)である。
【0014】
上記のような条件で、杭頭に水平力として荷重100kNを加える。3次元有限要素法(FEM)による解析結果を、図3(a),(b)に示す。横軸は、改良体3の改良長であるバットレス長さBの2倍がスパンLに占める割合(%)であり、縦軸は、上記バットレス長さBの5ポイントにおける、変位低減効果、変位低減におけるコストダウン効果、曲げ低減効果、曲げ低減におけるコストダウン効果を表したものである。
【0015】
例えば、図3(a)に示すように、バットレス長さBを4.05mとすると、(2B/L)は90%であり、そのときの変位低減効果は80%程度となり、90%よりも低く、下図のコストダウン効果もマイナスになっていて、手間が掛かる割には材料費の低減効果が発揮されず、効率的な効果を上げていない。
【0016】
次に、改良体3のバットレス長さBを2.25mにすると、(2B/L)は50%であり、そのときの変位低減効果は60%以上となり、50%よりも遙かに高く、下図のコストダウン効果も10%以上になっている。よって、バットレス長さBを短くした割には、水平抵抗力が強く、コストダウンも図れているものである。
【0017】
このようにして考察すると、図3(b)に示す曲げの場合の効果も参酌して、低減効果が50%以上でコストダウン効果が10%以上となるような範囲を条件とすると、バットレス長さBは、30%≦(2B/L)×100≦55%にすることが最も好ましいものである。
【0018】
また、図4に示すように、十字状の改良体4で深層改良する場合には、多軸(図示の場合は5軸の場合を示す)の掘削機で表層地盤5を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体4が形成される。3軸や5軸のオーガを使用すれば、一つの改良体4を一度に穿孔することができて、隣接の改良体4にセミラップさせる必要がないので、工期短縮される。
【0019】
解析的検討のモデルは、図5に示すように、前記改良体4の大きさは、孔径が600mm(施工径は550〜900mm)、深さHが5m(深さHは3m以上で10m以内)、支持杭2は前記と同様。支持杭2,2間のスパンLは9mである。また、軟弱な表層地盤5の剛性は、5MN/m2で、深層の改良体4の剛性は350MN/m2(改良体の剛性は100MN/m2以上)である。
【0020】
前記改良体4に前述と同様に杭頭に水平力として荷重100kNを加える。深層改良体の解析において、改良体が杭を押す影響を考慮した、通常の単杭の境界とは相違した研究成果を踏まえた図4に示す境界条件を用いている。解析結果は図6(a),(b)に示すようになる。変位について検討すると、低減効果が50%以上でコストダウン効果が5%以上となるような範囲を条件とすると、バットレス長さBは、16%≦(2B/L)×100≦80%にすることが最も好ましいものである。これに、杭に生じる曲げモーメントも同様なコストダウンと変位低減効果を参酌すると、バットレス長さBは、38%≦(2B/L)×100≦50%にすることが最も好ましいものとなる。
【0021】
一連の解析結果はスパンLが9mのケースであるが、スパンLが6m〜10mでも同様な結果となる。スパンLは一連の説明では正方形スパンLを用いたが、図7−Aに示すように、構造物の形状に対応させた結果、改良体の張出し部の長さが異なる場合における、横L1、縦L2でも同様に、2B1/L1,2B2/L2により、上記と同様な結果となる。
【0022】
前記改良体3,4において、変位低減効果やコストダウンの効果を参酌して、バットレス長さBを技術的に最も好ましい範囲として、浅層の場合と深層の場合の当該バットレス長さBを技術的に範囲限定するものである。
【0023】
また、本発明の改良体3,4は、隣接の改良体と連続していないので、設置回転角度が自由になり、例えば、図7−B(a)に示すように、支持杭の頭部に十字状の張出し部3a,4aでなる改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して、杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、前記支持杭2を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭2の対角線bと前記改良体の張出し部3a,4aの軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体3,4を形成し配設することができる。これにより、軟弱な表層地盤5の水平抵抗力を増強したい方向が、格子状に配設された支持杭2の対角線b上にあるような場合に、主せん断面に抵抗するように配置することができるなど、図7−B(b)に示す格子状配置ばかりでなく、設計自由度が高まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の杭基礎の改良体と改良体の構築工法は、コスト低減と工期短縮の効率的な施工を求める地盤改良工事に適している。また、改良体の自由度が大きいので、複雑な地形の軟弱地盤にも適した工法である。
【符号の説明】
【0025】
1 杭基礎、
2 支持杭、
3 浅層の改良体、 3a 張出し部、
4 深層の改良体、 4a 張出し部、
5 軟弱な表層地盤、
21 支持杭、
22 浅層改良体、
B バットレス長さ、
W 幅、
H 深さ、
a 通り芯、
b 対角線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱な表層地盤の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体において、
前記改良体は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体と非連続的に形成されていること、
を特徴とする杭基礎の改良体。
【請求項2】
改良体で深層改良する場合には、単軸若しくは多軸の掘削機で表層地盤を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の杭基礎の改良体。
【請求項3】
十字状の改良体の長さ:(2B)を、支持杭間のスパン:(L)に対して、
浅層改良の場合には30%≦(2B/L)×100≦55%にすること、若しくは、
深層改良の場合には16%≦(2B/L)×100≦80%にすること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の杭基礎の改良体。
【請求項4】
支持杭の頭部に十字状の張出し部でなる請求項1乃至3に記載の改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、
前記支持杭を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭の対角線と前記改良体の張出し部の軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体を形成し配設したこと、
を特徴とする改良体の構築工法。
【請求項1】
軟弱な表層地盤の下方における支持層に先端部が支持された支持杭が配設され、前記表層地盤における前記支持杭の通り芯に沿って形成される改良体において、
前記改良体は、支持杭毎に個別に設けられ、支持杭の頭部から所要深さで水平方向に十字状に張り出して隣接の改良体と非連続的に形成されていること、
を特徴とする杭基礎の改良体。
【請求項2】
改良体で深層改良する場合には、単軸若しくは多軸の掘削機で表層地盤を掘削して連続壁を十字状に配設して前記改良体が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の杭基礎の改良体。
【請求項3】
十字状の改良体の長さ:(2B)を、支持杭間のスパン:(L)に対して、
浅層改良の場合には30%≦(2B/L)×100≦55%にすること、若しくは、
深層改良の場合には16%≦(2B/L)×100≦80%にすること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の杭基礎の改良体。
【請求項4】
支持杭の頭部に十字状の張出し部でなる請求項1乃至3に記載の改良体を有した杭基礎を軟弱地盤に配設して杭頭部の水平剛性によって地盤の水平変位を低減させる改良体の構築工法において、
前記支持杭を支持層に支持させて格子状に配設した後に、前記支持杭の対角線と前記改良体の張出し部の軸芯とが略平行になるようにして、前記改良体を形成し配設したこと、
を特徴とする改良体の構築工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−A】
【図7−B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−A】
【図7−B】
【図8】
【公開番号】特開2011−21344(P2011−21344A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165562(P2009−165562)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【出願人】(000179915)ジェコス株式会社 (27)
【出願人】(509199018)成幸利根株式会社 (5)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【出願人】(000179915)ジェコス株式会社 (27)
【出願人】(509199018)成幸利根株式会社 (5)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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